特許第6454139号(P6454139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立マクセル株式会社の特許一覧

特許6454139粘着組成物前駆体、粘着組成物及びその製造方法、粘着シート及びその製造方法、並びに粘着シートを含む電子機器
<>
  • 特許6454139-粘着組成物前駆体、粘着組成物及びその製造方法、粘着シート及びその製造方法、並びに粘着シートを含む電子機器 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454139
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】粘着組成物前駆体、粘着組成物及びその製造方法、粘着シート及びその製造方法、並びに粘着シートを含む電子機器
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20190107BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20190107BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20190107BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20190107BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   C09J4/02
   C09J133/00
   C09J11/04
   C09J7/38
   H01L23/36 M
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-239212(P2014-239212)
(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公開番号】特開2016-98366(P2016-98366A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】金野 公彦
(72)【発明者】
【氏名】大谷 紀昭
(72)【発明者】
【氏名】光本 欣正
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/102170(WO,A1)
【文献】 特開2018−028349(JP,A)
【文献】 特開2011−178852(JP,A)
【文献】 特開2012−064691(JP,A)
【文献】 特開平11−269438(JP,A)
【文献】 特開2013−177572(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/118927(WO,A1)
【文献】 特開2012−116885(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/172912(WO,A1)
【文献】 特開2013−087214(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/039081(WO,A1)
【文献】 特開2012−229392(JP,A)
【文献】 特開2011−162582(JP,A)
【文献】 特開2011−241329(JP,A)
【文献】 特表2007−513216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 −201/10
H01L23/373
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル共重合体と、(メタ)アクリルモノマーと、板状又は鱗片状の含水金属化合物とを含む粘着組成物前駆体であって、
前記含水金属化合物が、水酸化アルミニウム及び/又はベーマイトであり、
前記含水金属化合物の含有量は、前記粘着組成物前駆体の全質量に対して、30質量%以上70質量%以下であり、
前記含水金属化合物の平均粒子径が、2μm以上50μm以下であり、
前記含水金属化合物のアスペクト比が、5以上であり、
前記(メタ)アクリルモノマーの含有量は、前記(メタ)アクリル共重合体と前記(メタ)アクリルモノマーとの合計質量に対して、75質量%以上99質量%以下であることを特徴とする粘着組成物前駆体。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル共重合体は、酸性官能基を有する請求項1に記載の粘着組成物前駆体。
【請求項3】
前記(メタ)アクリルモノマーとして、酸性官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを含む請求項1又は2に記載の粘着組成物前駆体。
【請求項4】
光重合開始剤を更に含む請求項1〜のいずれか1項に記載の粘着組成物前駆体。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の粘着組成物前駆体に含まれる(メタ)アクリルモノマーを重合して形成したものであることを特徴とする粘着組成物。
【請求項6】
請求項に記載の粘着組成物をシート状に成形したものであることを特徴とする粘着シート。
【請求項7】
両面に剥離基材を更に備えた請求項に記載の粘着シート。
【請求項8】
請求項に記載の粘着シートを含むことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項1〜に記載の粘着組成物前駆体を調製する工程と、
前記粘着組成物前駆体に含まれる前記(メタ)アクリルモノマーを重合する工程とを含むことを特徴とする粘着組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜に記載の粘着組成物前駆体を調製する工程と、
前記粘着組成物前駆体に含まれる前記(メタ)アクリルモノマーを重合してシート状に成形する工程とを含むことを特徴とする粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着組成物前駆体、粘着組成物及びその製造方法、粘着シート及びその製造方法、並びに粘着シートを含む電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)、エレクトロルミネセンス(EL)のような半導体発光素子の実用化に伴い、これらの素子から発生する熱の対策が重要となってきている。これは、発光素子の輝度向上に伴い発熱量が増加する傾向にあり、発熱に対する対策が十分でないと、素子寿命が低下するなどの問題を生じるためである。また、他の電子機器においても部品の高集積化、高性能化に伴い、機器の内部温度が上昇する傾向にあり、発熱対策が重要となってきている。
【0003】
従来、電子機器等の発熱対策として、素子、部品等の発熱体と、ヒートシンク、放熱フィン等の放熱部材との間を、熱伝導率の高い熱伝導性シートを介して接合することが行われている。この熱伝導性シートに求められる特性としては、接着性、高熱伝導性、また、安全性の面から難燃性が求められることが多い。
【0004】
このため、上記特性を満足するため、種々の検討が行われており、その一例として、無機フィラーとアクリル系共重合体とを含む粘着テープが提案されている(特許文献1)。この提案では、熱伝導性及び難燃性が必要な用途では、熱伝導性及び難燃性を有する熱伝導難燃性フィラーを用いることが好ましく、その例として金属水酸化物を使用するとしている。また、粘着力の向上に関しては、アクリル系共重合体のモノマー成分として、炭素数が2以上の飽和炭化水素基を介してカルボキシル基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリレートを用いるとしている。特許文献1では、アクリル系共重合体のモノマー成分に炭素数が2以上の飽和炭化水素基を介してカルボキシル基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリレートを用いることにより、熱伝導性、難燃性向上のために無機フィラーを多量に配合しても粘着剤の凝集性と流動性とを両立させ、優れた粘着物性を示すとしている。このように、従来、熱伝導機能を有する粘着テープにおいては、熱伝導性及び難燃性に関しては無機フィラーの種類により調整し、粘着性の向上に関しては粘着剤組成により調整することが行われてきた。
【0005】
一方、熱伝導性の無機材料と有機高分子化合物とを含む熱伝導シートにおいて、無機粒子の形状を鱗片状、楕球状、板状又は棒状とし、無機粒子を熱伝導シートの厚み方向に配向させることが提案されている(特許文献2)。この提案では、膜厚方向に高熱伝導である熱伝導シートを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−87214号公報
【特許文献2】特開2010−114421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最近、粘着シートは、電子機器分野において部品の仮固定等の副次的な部材から、ビス止めとの併用をなくした単独接合に用いるための本格的な固定部材への展開が期待されている。このように粘着シートを本格的な固定部材とするため、更なる粘着力の向上が求められている。
【0008】
本発明は、上記状況を鑑みてなされたもので、熱伝導性が高く、難燃性を有し、従来より更に大きな粘着力を有する粘着シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粘着組成物前駆体は、(メタ)アクリル共重合体と、(メタ)アクリルモノマーと、板状又は鱗片状の含水金属化合物とを含む粘着組成物前駆体であって、前記含水金属化合物が、水酸化アルミニウム及び/又はベーマイトであり、前記含水金属化合物の含有量は、前記粘着組成物前駆体の全質量に対して、30質量%以上70質量%以下であり、前記含水金属化合物の平均粒子径が、2μm以上50μm以下であり、前記含水金属化合物のアスペクト比が、5以上であり、前記(メタ)アクリルモノマーの含有量は、前記(メタ)アクリル共重合体と前記(メタ)アクリルモノマーとの合計質量に対して、75質量%以上99質量%以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の粘着組成物は、上記本発明の粘着組成物前駆体に含まれる(メタ)アクリルモノマーを重合して形成したものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の粘着シートは、上記本発明の粘着組成物をシート状に成形したものであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の電子機器は、上記本発明の粘着シートを含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の粘着組成物の製造方法は、上記本発明の粘着組成物前駆体を調製する工程と、前記粘着組成物前駆体に含まれる前記(メタ)アクリルモノマーを重合する工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の粘着シートの製造方法は、上記本発明の粘着組成物前駆体を調製する工程と、前記粘着組成物前駆体に含まれる前記(メタ)アクリルモノマーを重合してシート状に成形する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱伝導性が高く、難燃性を有し、従来より更に大きな粘着力を有する粘着シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の粘着シートの一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(本発明の粘着組成物前駆体)
本発明の発明者らは、粘着剤の粘着力について鋭意検討した結果、粘着剤に含まれる無機フィラーの形状が粘着力に影響することを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
即ち、本発明の粘着組成物前駆体は、(メタ)アクリル共重合体と、(メタ)アクリルモノマーと、板状又は鱗片状の含水金属化合物とを含んでいる。また、上記含水金属化合物の含有量は、上記粘着組成物前駆体の全質量に対して30質量%以上70質量%以下であり、上記含水金属化合物の平均粒子径は2μm以上50μm以下であり、上記含水金属化合物のアスペクト比は5以上である。更に、上記(メタ)アクリルモノマーの含有量は、上記(メタ)アクリル共重合体と上記(メタ)アクリルモノマーとの合計質量に対して、75質量%以上99質量%以下である。
【0019】
本発明の粘着組成物前駆体は、含水金属化合物を含んでいるため、高い熱伝導性を有する粘着剤を提供できる。即ち、上記含水金属化合物は、高い熱伝導性を有する無機フィラーであり、粘着剤に上記含水金属化合物を含ませることにより、粘着剤に高い熱伝導性を付与できる。また、本発明において、含水金属化合物とは、加熱することにより水を放出する金属化合物であると定義する。このため、粘着剤に上記含水金属化合物を含ませることにより、粘着剤に難燃性を付与できる。
【0020】
上記含水金属化合物の含有量は、上記粘着組成物前駆体の全質量に対して30質量%以上70質量%以下に設定する必要があり、35質量%以上65質量%以下がより好ましい。上記含水金属化合物の含有量が上記粘着組成物前駆体の全質量に対して30質量%を下回ると、粘着剤の熱伝導性及び難燃性が低下し、上記含水金属化合物の含有量が上記粘着組成物前駆体の全質量に対して70質量%を超えると、粘着剤の粘着力が低下し、粘着剤の柔軟性が低下する。粘着剤の柔軟性が低下すると、接合部材への追従性が低下して好ましくない。
【0021】
また、上記含水金属化合物は、板状又は鱗片状の形状を有し、上記含水金属化合物の平均粒子径は2μm以上50μm以下であり、上記含水金属化合物のアスペクト比は5以上のものである。このため、従来の粒状の無機フィラーを用いた粘着剤に比べて大きな粘着力を得ることができる。
【0022】
更に、本発明の粘着組成物前駆体は、(メタ)アクリル共重合体と、(メタ)アクリルモノマーとを含み、上記(メタ)アクリルモノマーを重合させることにより、粘着力が発生する。従って、本発明の粘着組成物前駆体自体は、粘着力を有しないか、又は小さな粘着力しか有さないものである。
【0023】
また、上記(メタ)アクリルモノマーの含有量は、上記(メタ)アクリル共重合体と上記(メタ)アクリルモノマーとの合計質量に対して、75質量%以上99質量%以下に設定する必要がある。上記(メタ)アクリルモノマーの含有量が75質量%を下回ると、本発明の粘着組成物前駆体の流動性が低下し、上記(メタ)アクリルモノマーの含有量が99質量%を超えると、本発明の粘着組成物前駆体の流動性が高くなりすぎて、本発明の粘着組成物前駆体を用いた粘着シートの形成が困難となる。
【0024】
以下、本発明の粘着組成物前駆体の各成分について詳細に説明する。
【0025】
<含水金属化合物>
上記のとおり、本発明の板状又は鱗片状の含水金属化合物は、加熱することにより水を放出する金属化合物であり、特に水酸化アルミニウム又はベーマイトが好ましい。これらは、高い熱伝導性、難燃性及び電気絶縁性を有しているからである。本発明の粘着組成物前駆体は、水酸化アルミニウム及びベーマイトをともに含んでいてもよい。本発明の粘着組成物前駆体は、上記含水金属化合物を含んでいるため、高い熱伝導性と難燃性とを有する粘着剤を提供できる。
【0026】
上記含水金属化合物の平均粒子径は、2μm以上50μm以下であることが好ましく、2μm以上10μm以下がより好ましい。上記含水金属化合物の平均粒子径が2μmを下回ると、粘着剤の粘着力が低下し、上記含水金属化合物の平均粒子径が50μmを超えると、粘着剤の表面起伏が大きくなり、粘着剤の粘着力が低下する。本発明において上記含水金属化合物の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)で上記含水金属化合物の粒子を観察し、100個の粒子の長軸径を測定し、その算術平均値として求めるものとする。
【0027】
上記含水金属化合物のアスペクト比は、5以上であることが好ましく、8以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。上記アスペクト比が、5を下回ると、上記含水金属化合物の粒子形状が粒状に類似するためか、粘着剤の粘着力が低下する。本発明において上記含水金属化合物のアスペクト比は、SEM又はTEMで上記含水金属化合物の粒子を観察し、上記含水金属化合物の厚み方向の長さをtとし、その板面の最大の長さをdとし、d/tで算出される値を100個の粒子についてそれぞれ求め、その算術平均値として求めるものとする。
【0028】
本発明では、上記アスペクト比が5以上の場合には、板状の粒子とし、上記アスペクト比が15以上の場合には、鱗片状の粒子とする。
【0029】
上記含水金属化合物の含有量は、上記粘着組成物前駆体の全質量に対して30質量%以上70質量%以下に設定する必要があるが、粘着剤の難燃性がJIS K7201−2で規定する酸素指数において21以上を達成できるように調整することが好ましい。
【0030】
本発明の粘着組成物前駆体に含まれる含水金属化合物の含有量は、例えば、熱分析法により測定できる。即ち、上記粘着組成物前駆体を500℃付近まで加熱して、残渣(水が抜けた金属化合物)の質量を測定し、その残渣の質量から上記粘着組成物前駆体に含まれる含水金属化合物の質量を求めて、その含水金属化合物の質量から粘着組成物前駆体に含まれる含水金属化合物の含有率を求めることができる。
【0031】
<(メタ)アクリル共重合体>
本発明の粘着組成物前駆体に含まれる(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリルモノマーをモノマー成分とするポリマーである。上記モノマー成分となる(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル又はその誘導体が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数が1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが使用でき、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ステアリル等が使用できる。上記モノマー成分となる(メタ)アクリルモノマーは、1種又は2種以上を使用できる。
【0032】
本発明の粘着組成物前駆体に含まれる(メタ)アクリル共重合体は、官能基を有することが好ましい。上記(メタ)アクリル共重合体が官能基を有することにより、上記含水金属化合物との結合力が向上し、粘着力が向上するからである。上記官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。中でもカルボキシル基等の酸性官能基がより好ましい。カルボキシル基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体は、上記含水金属化合物との結合力がより向上するからである。
【0033】
本発明の粘着組成物前駆体に含まれる(メタ)アクリル共重合体に官能基を付与するためには、そのモノマー成分となる上記(メタ)アクリルモノマーに、官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを含めればよい。上記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2ヒドロキシエチル、アクリル酸2ヒドロキシプロピル、アクリル酸2ヒドロキシブチル、βカルボキシエチルアクリル酸、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。上記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーも1種又は2種以上を使用できる。
【0034】
上記官能基の効果を確保するために、上記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量は、上記モノマー成分となる上記(メタ)アクリルモノマーの全質量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。
【0035】
<(メタ)アクリルモノマー>
本発明の粘着組成物前駆体に含まれる(メタ)アクリルモノマーとしては、従来公知のものを好適に用いることができるが、特に前述の本発明の粘着組成物前駆体に含まれる(メタ)アクリル共重合体のモノマー成分となる(メタ)アクリルモノマーと同様のモノマーを用いることが好ましい。本発明の粘着組成物前駆体に含まれる(メタ)アクリルモノマーとしても、官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを含めることが好ましく、特に酸性官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを含めることがより好ましい。上記(メタ)アクリルモノマーが官能基を有することにより、上記含水金属化合物と上記(メタ)アクリルモノマーとが結合し、上記粘着組成物前駆体中での上記含水金属化合物の濡れ性が向上し、上記粘着組成物前駆体の組成の均質化を図ることができる。
【0036】
上記官能基の効果を確保するために、上記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量は、上記粘着組成物前駆体に含まれる(メタ)アクリルモノマーの全質量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。
【0037】
<アクリルシロップ>
本発明の粘着組成物前駆体に含まれる上記(メタ)アクリル共重合体と、上記(メタ)アクリルモノマーとは、それぞれ別々に準備してもよいが、当初から上記(メタ)アクリル共重合体と上記(メタ)アクリルモノマーとを含む市販のアクリルシロップを用いることが簡便で好ましい。上記アクリルシロップとしては、例えば、綜研化学社製の無溶剤型アクリル粘着剤“SKダインシロップシリーズ”、東亜合成社製のUV硬化型粘着剤“アロンタックUVAシリーズ”等が挙げられる。
【0038】
上記アクリルシロップには、本発明の粘着組成物前駆体の粘度又は特性を調整するため、(メタ)アクリルモノマーを更に加えてもよい。追加する(メタ)アクリルモノマーとしては、前述した本発明の粘着組成物前駆体に含まれる(メタ)アクリルモノマーと同様のモノマーを用いることができる。
【0039】
<分散剤>
上記含水金属化合物を上記アクリルシロップと混合すると、増粘することがある。これは、上記含水金属化合物と上記アクリルシロップ中の(メタ)アクリル共重合体との相互作用によると考えられる。このため、本発明の粘着組成物前駆体には、増粘現象を抑制するため、分散剤を添加してもよい。上記分散剤としては、上記(メタ)アクリル共重合体及び上記(メタ)アクリルモノマーとの親和性が良好な高分子系分散剤が好ましい。上記高分子系分散剤としては、例えば、アクリル系、ビニル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、エポキシ系、ポリスチレン系、アミノ系等の高分子化合物が挙げられる。上記分散剤は、1種類を単独で用いることもできるが、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0040】
上記分散剤は、分散機能を高めるために官能基を有していることが好ましい。上記官能基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、カルボン酸エステル基、リン酸エステル基、スルホン酸エステル基、ヒドロキシル基、アミノ基、四級アンモニウム塩基、アミド基等が挙げられるが、上記分散剤は、酸性官能基と塩基性官能基の両方を有している両性分散剤であることがより好ましい。
【0041】
上記分散剤の酸性度はその酸価を基準として決定し、上記分散剤の塩基性度はそのアミン価を基準として決定する。酸価が20mgKOH/g以上である分散剤を用いることで、上記粘着組成物前駆体の増粘現象を防止できる。また、アミン価が5mgKOH/g以上である分散剤を用いることで、粘着剤の保存時の粘着力の変化を防止できる。上記分散剤の酸性官能基は上記含水金属化合物の塩基性活性点を覆い、上記含水金属化合物と上記(メタ)アクリル共重合体との相互作用を抑制するため、上記粘着組成物前駆体の増粘現象を防止すると考えられる。また、上記分散剤中の塩基性官能基は上記(メタ)アクリル共重合体中の酸性官能基と相互作用し、上記分散剤が上記粘着組成物の界面に移行することを抑制するため、粘着剤の保存時の粘着力の変化を防止すると考えられる。
【0042】
上記分散剤の含有量は、上記含水金属化合物100質量部に対して0.1〜15質量部とすることが好ましく、0.3〜10質量部がより好ましい。上記分散剤の含有量が0.1質量部未満では充分な分散性が得られず、上記分散剤の含有量が15質量部を超えると、高温下での接着性が低下し易く、粘着力や保持力への影響が懸念される。
【0043】
<光重合開始剤>
本発明の粘着組成物前駆体は、光重合開始剤を更に含むことが好ましい。上記光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、べンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン化合物、ジスルフィド化合物、チウラム化合物、フルオロアミン化合物等を使用できる。これらの光重合開始剤は少なくとも1種を使用すればよい。上記光重合開始剤の使用量は特に限定されないが、樹脂成分である(メタ)アクリル共重合体と(メタ)アクリルモノマーとの合計100質量部に対して、0.01〜3質量部とすればよく、0.1〜2質量部が好ましい。
【0044】
<架橋剤>
本発明の粘着組成物前駆体は、架橋剤を更に含んでいてもよい。上記架橋剤としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。上記架橋剤の添加量は、樹脂成分である(メタ)アクリル共重合体と(メタ)アクリルモノマーとの合計100質量部に対して、0.05〜5質量部とすればよい。
【0045】
<その他の成分>
本発明の粘着組成物前駆体には、必要に応じ粘着付与剤を添加してもよい。上記粘着付与剤としては、例えば、テルペン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂、石油系樹脂(C5系石油樹脂、C9系石油樹脂)、フェノール系樹脂、マロン−インデン樹脂、脂環族系石油樹脂、脂環族系水添石油樹脂、スチレン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。上記粘着付与剤の配合量は、樹脂成分である上記(メタ)アクリル共重合体と上記(メタ)アクリルモノマーとの合計100質量部に対して、2〜200質量部が好ましい。
【0046】
本発明の粘着組成物前駆体の製造方法は特に限定されず、例えば、上記各成分を混合して、各固形成分を十分に分散すればよい。上記混合方法は特に限定されないが、例えば、ディスパー、ホモミキサー、リボンミキサー、パドルミキサー、プラネタリミキサー、ロールミル、ニーダー、ボールミル、サンドミル、超音波分散機等を用いて混合することができる。
【0047】
(本発明の粘着組成物)
本発明の粘着組成物は、上記本発明の粘着組成物前駆体に含まれる(メタ)アクリルモノマーを重合して形成したものである。上記(メタ)アクリルモノマーを重合することにより、上記粘着組成物前駆体が粘着力を有する粘着組成物、即ち粘着剤となる。本発明の粘着組成物は、上記本発明の粘着組成物前駆体に含まれる(メタ)アクリルモノマーを重合して形成したものであるため、熱伝導性が高く、難燃性を有し、従来より更に大きな粘着力を有する。
【0048】
従って、本発明の粘着組成物は、上記本発明の粘着組成物前駆体を調製する工程と、上記粘着組成物前駆体に含まれる上記(メタ)アクリルモノマーを重合する工程とを備える製造方法で製造できる。上記(メタ)アクリルモノマーを重合する方法は特に限定されないが、上記粘着組成物前駆体に紫外線等の電離放射線を照射する方法を用いることができる。
【0049】
上記電離放射線としては、例えば、紫外線、電子線、β線等を用いることができるが、簡便に利用できることから、紫外線が多用される。紫外線の光源としては、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、紫外線LEDランプ等が使用できる。上記電離放射線として紫外線を用いる場合には、上記粘着組成物前駆体には光重合開始剤を含めることが好ましい。
【0050】
(本発明の粘着シート)
本発明の粘着シートは、上記本発明の粘着組成物をシート状に成形したものである。本発明の粘着シートは、上記本発明の粘着組成物を成形したものであるため、熱伝導性が高く、難燃性を有し、従来より更に大きな粘着力を有する。
【0051】
本発明の粘着シートの厚さは特に限定されず、例えば、10〜800μmとすることができる。
【0052】
本発明の粘着シートは、両面に剥離基材を更に備えていてもよい。上記剥離基材を備えることにより、本発明の粘着シートの取り扱いが容易となる。
【0053】
また、本発明の粘着シートは、上記本発明の粘着組成物前駆体を調製する工程と、上記粘着組成物前駆体に含まれる上記(メタ)アクリルモノマーを重合してシート状に成形する工程とを備える製造方法で製造できる。
【0054】
上記(メタ)アクリルモノマーを重合してシート状に成形する方法は特に限定されないが、例えば、基材の上に上記粘着組成物前駆体を塗布して塗膜を形成した後に、更にその塗膜の上に基材を配置し、その後に上記塗膜に上記基材を通して、前述の紫外線等の電離放射線を照射する方法を用いることができる。その際には、上記基材として剥離基材を用いれば、剥離基材付き粘着シートを簡便に得ることができる。また。電離放射線に紫外線を用いる場合、上記基材の少なくとも一方である紫外線の照射側には透明基材を用いることが好ましい。
【0055】
また、上記粘着組成物前駆体を塗布する方法は、平滑な塗膜を形成しうる塗布方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、グラビアロール法、マイクログラビアロール法、マイクログラビアコータ法、スリットダイコート法、スプレイ法、スピン法、ナイフ法、キス法、スクイズ法、リバースロール法、ディップ法、バーコート法等が挙げられる。
【0056】
上記基材としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート等のセルロース系樹脂、ナイロン、アラミド等のアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホンエーテル等のポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、シクロオレフィンポリマー類、紙等の材料からなる、フィルム又はシートを用いることができる。
【0057】
また、上記基材に剥離性を付与するには、上記基材の少なくとも片面にシリコーン樹脂等からなる離形層を形成すればよい。
【0058】
次に、本発明の粘着シートを図面に基づき説明する。図1は、本発明の粘着シートの一例を示す模式断面図である。図1において、本発明の粘着シート10は、剥離フィルム11及び13の間にシート状の粘着剤12を備えている。粘着シート10を使用する場合には、剥離フィルム11及び13を除去して、シート状の粘着剤12を接合部材の間に配置して加圧等して接合すればよい。
【0059】
本発明の粘着シートの粘着力は、90°ピール試験による粘着力が5N/10mm以上であることが好ましい。上記粘着力が5N/10mm未満であると、例えば、発熱する電子部品等と、ヒートシンク、放熱フィン等の放熱部材との間で剥離が生じる懸念がある。
【0060】
本発明の粘着シートの熱伝導率は、熱伝達性を十分発現させるために、0.5W/m・K以上であることが好ましい。また、上記粘着シートの難燃性は、大気中での燃焼を抑制するためにJIS K7201−2で規定する酸素指数が21以上であることが好ましい。
【0061】
(本発明の電子機器)
本発明の電子機器は、上記本発明の粘着シートを備え、上記粘着シートにより、発熱する電子部品等と、ヒートシンク、放熱フィン等の放熱部材と接合している。本発明の電子機器は、本発明の粘着シートを用いて発熱部材と放熱部材とを接合しているため、上記電子機器の発熱が抑制できる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例では「部」は「質量部」を意味する。
【0063】
(実施例1)
<粘着組成物前駆体(粘着剤前駆体)の調製>
先ず、以下の成分(1)〜(6)をステンレス鋼製のビーカーに入れ、水冷下でディスパーを用いて攪拌して混合して混合液を調製した。
(1)アクリルシロップ(綜研化学社製、商品名“SKダインシロップB”、2エチルヘキシルアクリレート:90質量部/アクリル酸:9質量部/2ヒドロキシエチルアクリレート:1質量部からなる部分共重合物):58.39部
(2)2エチルヘキシルアクリレート:52.55部
(3)アクリル酸:5.84部
(4)架橋剤(トリメチロールプロパントリアクリレート):0.29部
(5)分散剤(ビックケミー社製、商品名“DISPERBYK145”、両性分散剤):2.34部
(6)光重合開始剤〔ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド〕:0.58部
【0064】
次に、上記混合液に下記成分(7)を配合して、更に15分間攪拌して粘着剤前駆体(粘着組成物前駆体)を得た。
(7)含水金属化合物(板状ベーマイト、平均粒子径:4μm、アスペクト比:10):100部
【0065】
<粘着シートの作製>
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(中本パックス社製、商品名“NS-38+A”)の上に、上記粘着剤前駆体を塗布して塗膜を形成した後、その塗膜の上に、厚さ50μmの離型PETフィルム(中本パックス社製、商品名“NS-50-ZW”)を重ねた後、コンマコーターで塗膜の厚さの調整を行い、その後に紫外線を照射して上記塗膜の硬化処理を行い、離型PETフィルム付き粘着シートを作製した。上記コンマコーターでの厚さ調整は、バックアップロールとナイフロールとのギャップ間隔を硬化処理後の粘着シートの厚さが250μmになるように行った。上記紫外線照射は、波長365nmにピークを持つブラックライトを用いて積算光量を300mJ/cm2とし、更に高圧水銀灯用いて積算光量を250mJ/cm2となるように行った。
【0066】
(実施例2)
含水金属化合物を板状ベーマイト(平均粒子径:2μm、アスペクト比:10):100部に変更した以外は、実施例1と同様にして離型PETフィルム付き粘着シートを作製した。
【0067】
(実施例3)
<粘着組成物前駆体(粘着剤前駆体)の調製>
先ず、以下の成分(1)〜(6)をステンレス鋼製のビーカーに入れ、水冷下でディスパーを用いて攪拌して混合して混合液を調製した。
(1)アクリルシロップ(綜研化学社製、商品名“SKダインシロップB”):32.53部
(2)2エチルヘキシルアクリレート:19.52部
(3)アクリル酸:2.17部
(4)架橋剤(トリメチロールプロパントリアクリレート):0.14部
(5)分散剤(ビックケミー社製、商品名“DISPERBYK145”):1.08部
(6)光重合開始剤〔ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド〕:0.27部
【0068】
次に、上記混合液に下記成分(7)を配合して、更に15分間攪拌して粘着剤前駆体(粘着組成物前駆体)を得た。
(7)含水金属化合物(板状ベーマイト、平均粒子径:2μm、アスペクト比:10):100部
【0069】
<粘着シートの作製>
上記粘着剤前駆体を用いた以外は、実施例1と同様にして離型PETフィルム付き粘着シートを作製した。
【0070】
(実施例4)
<粘着組成物前駆体(粘着剤前駆体)の調製>
先ず、以下の成分(1)〜(6)をステンレス鋼製のビーカーに入れ、水冷下でディスパーを用いて攪拌して混合して混合液を調製した。
(1)アクリルシロップ(綜研化学社製、商品名“SKダインシロップB”):40.33部
(2)2エチルヘキシルアクリレート:24.20部
(3)アクリル酸:2.69部
(4)架橋剤(トリメチロールプロパントリアクリレート):0.17部
(5)分散剤(ビックケミー社製、商品名“DISPERBYK145”):1.34部
(6)光重合開始剤〔ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド〕:0.34部
【0071】
次に、上記混合液に下記成分(7)を配合して、更に15分間攪拌して粘着剤前駆体(粘着組成物前駆体)を得た。
(7)含水金属化合物(鱗片状水酸化アルミニウム、平均粒子径:8μm、アスペクト比:15):100部
【0072】
<粘着シートの作製>
上記粘着剤前駆体を用いた以外は、実施例1と同様にして離型PETフィルム付き粘着シートを作製した。
【0073】
(比較例1)
含水金属化合物を粒状ベーマイト(平均粒子径:1μm、アスペクト比:1.2):100部に変更した以外は、実施例1と同様にして離型PETフィルム付き粘着シートを作製した。
【0074】
(比較例2)
含水金属化合物を板状ベーマイト(平均粒子径:1μm、アスペクト比:10):100部に変更した以外は、実施例3と同様にして離型PETフィルム付き粘着シートを作製した。
【0075】
(比較例3)
含水金属化合物を粒状水酸化アルミニウム(平均粒子径:5μm、アスペクト比:1.4):100部に変更した以外は、実施例4と同様にして離型PETフィルム付き粘着シートを作製した。
【0076】
(比較例4)
<粘着組成物前駆体(粘着剤前駆体)の調製>
先ず、以下の成分(1)〜(6)をステンレス鋼製のビーカーに入れ、水冷下でディスパーを用いて攪拌して混合して混合液を調製した。
(1)アクリルシロップ(綜研化学社製、商品名“SKダインシロップB”):195.45部
(2)2エチルヘキシルアクリレート:117.27部
(3)アクリル酸:13.03部
(4)架橋剤(トリメチロールプロパントリアクリレート):0.81部
(5)分散剤(ビックケミー社製、商品名“DISPERBYK145”):6.52部
(6)光重合開始剤〔ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド〕:1.63部
【0077】
次に、上記混合液に下記成分(7)を配合して、更に15分間攪拌して粘着剤前駆体(粘着組成物前駆体)を得た。
(7)含水金属化合物(鱗片状水酸化アルミニウム、平均粒子径:8μm、アスペクト比:15):100部
【0078】
<粘着シートの作製>
上記粘着剤前駆体を用いた以外は、実施例1と同様にして離型PETフィルム付き粘着シートを作製した。
【0079】
<粘着シートの評価>
実施例1〜4及び比較例1〜4で作製した離型PETフィルム付き粘着シートの粘着力と熱伝導率を下記のようにして評価した。
【0080】
<粘着力>
作製した離型PETフィルム付き粘着シートからPETフィルムを全て剥離し、PETフィルムを剥離した後の粘着シートを、厚さ50μmの離型処理していない通常のPETフォルムに貼り付け、そのPETフィルム付き粘着シートを幅25mm、長さ250mmに切断して評価サンプルを作製し、その評価サンプルの粘着シート側をステンレス鋼板に貼りつけて、質量2kgのローラーにて速度300mm/分で評価サンプルの上を1往復して、評価サンプルをステンレス鋼板に圧着し、24時間放置した。その後、評価サンプルをステンレス鋼板から剥離する90°ピール試験を剥離速度300mm/分で行い、測定した剥離荷重を10mm幅に換算して、粘着力の測定値とした。
【0081】
<熱伝導率>
作製した離型PETフィルム付き粘着シートからPETフィルムを全て剥離し、PETフィルムを剥離した後の粘着シートを、幅50mm、長さ150mmに切断して評価サンプルを作製し、その評価サンプルを5枚重ねて積層体とし、京都電子工業社製の迅速熱伝導率計“QTM−500”を用い、薄膜測定用ソフトと組み合わせて上記積層体の熱伝導率を測定した。本測定のレファランスには、シリコン樹脂、石英、ジルコニアを用いた。
【0082】
以上の結果を表1に示す。また、表1には、用いた含水金属化合物の種類、平均粒子径、アスペクト比及び含有率も示した。
【0083】
【表1】
【0084】
表1から、本発明の実施例1〜4の粘着シートは、粘着力が5N/10mmより大きく、熱伝導率も0.5W/m・K以上となり、粘着力及び熱伝導率がともに高いことが分かる。一方、含水金属化合物の平均粒子径が2μmを下回り、そのアスペクト比が5を下回った比較例1では、粘着力及び熱伝導率ともに劣り、含水金属化合物の平均粒子径が2μmを下回った比較例2では、粘着力が劣り、含水金属化合物のアスペクト比が5を下回った比較例3では、粘着力が劣り、含水金属化合物の含有率が30質量%に満たない比較例4では、熱伝導率が0.5W/m・Kを大きく下回ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、粘着力及び熱伝導性がともに優れた粘着シートを提供でき、発熱部材と放熱部材との間を大きな粘着力で高い熱伝導性を有しながら接合することができ、発熱部材と放熱部材とを備える電子機器の放熱性能を向上できるものである。
【符号の説明】
【0086】
10 粘着シート
11、13 剥離フィルム
12 粘着剤
図1