(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態に係る電動アシスト装置、およびそれを用いた手押し移動体について、図面を参照して説明をする。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態における電動アシスト装置を備えた手押し移動体の一例を示す斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態における電動アシスト装置において、駆動力の伝達を解除した状態における半断面図である。
図3は、
図2の電動アシスト装置において、駆動力を伝達する状態おける半断面図である。
【0025】
(電動アシストシルバーカー)
図1に示すように、電動アシストシルバーカー(手押し移動体)10は、フレーム11と、収納部12と、車輪13と、を備えている。
【0026】
フレーム11は、収納部12を支持する座部フレーム11aと、座部フレーム11aの一端に設けられ、上方に向けて延びる背部フレーム11bと、座部フレーム11aから下方に向けて延びる脚部フレーム11cと、を備える。
ここで、以下の説明においては、平面視した状態で、座部フレーム11aに対して背部フレーム11bが設けられた側を後方、その反対側を前方、前後方向に向かって左右両側を側方と称することがある。
【0027】
収納部12は、内部に物品等を収容できる物品収容部12aと、物品収容部12aの上方を覆い、上面に物品を載置したり着座したりすることが可能な台部12bと、を備えている。
【0028】
車輪13は、脚部フレーム11cの下端部に設けられている。車輪13は、ホイール13hと、ホイール13hの外周部に装着されたタイヤ13tと、を備えている。
この実施形態において、脚部フレーム11cは、上方から下方に向かって、平面視した状態で電動アシストシルバーカー10の四隅に向けて延びている。これにより、車輪13は、電動アシストシルバーカー10の四隅に配されている。ここで、4つの車輪13のうち、フレーム11の前方の幅方向両側に設けられている車輪13fは、脚部フレーム11cを挟んでその両側に二個一対で設けられている。また、フレーム11の後方の幅方向両側に設けられている車輪13rは、脚部フレーム11cの側方に設けられている。
【0029】
電動アシストシルバーカー10は、例えば後方の幅方向両側の車輪13rを回転駆動させる電動アシスト機構を備えている。電動アシスト機構は、車輪13を回転駆動する駆動ユニット(電動アシスト装置)20A(
図2、
図3参照)と、収納部12内に収納され、駆動ユニット20Aの動作を制御する制御部30と、を備えている。
【0030】
(駆動ユニット)
図2、
図3に示すように、駆動ユニット20Aは、モータ21と、減速機22と、駆動軸23Aと、フリクションプレート(伝達部材)24と、付勢部材(移動機構)25と、押圧部材(移動機構)26と、を備えている。
【0031】
モータ21は、
図1に示した脚部フレーム11cの側方に設けられている。モータ21は、制御部30と共に収納部12内に収納された不図示のバッテリーからの給電を受けて、不図示の出力軸が回転駆動される。モータ21には、脚部フレーム11cとは反対側、すなわち電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに向けて突出する円筒状の支持スリーブ(筒状部)21sが一体に形成されている。
【0032】
減速機22は、モータ21の出力軸の回転を所定の減速比で減速して駆動軸23Aに伝達する。ここで、減速機22は、遊星歯車機構等、適宜の減速機構からなる。この減速機22は、支持スリーブ21sの内方に設けられている。
【0033】
駆動軸23Aは、大径部23aと小径部23bと、を備えている。大径部23aは、円盤状で、駆動軸23Aにおいて減速機22側に形成されている。大径部23aは、支持スリーブ21sの内方に、軸受27を介して回転自在に設けられている。
小径部23bは、その外径が大径部23aよりも小さい。小径部23bは、大径部23aに対し、支持スリーブ21sの内方から、電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに向けて突出するよう設けられている。
【0034】
小径部23bの外周側には、軸受28を介して、車輪13rを構成するホイール13hが嵌装されている。軸受28と駆動軸23Aの大径部23aとの間には、スペーサ31が設けられている。これにより、車輪13rは、駆動軸23Aと同心円上に配置され、駆動軸23Aに対し、回転自在に設けられている。ホイール13hには、電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに向けて突出する円筒状部(突き当たり部)29を一体に備えている。円筒状部29の先端部29sの内周縁部には、電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに向かうに従ってその内径が漸次拡大するテーパ面29tが形成されている。
【0035】
フリクションプレート24は、小径部23bよりも外径が大きな円板状をなしている。フリクションプレート24は、駆動軸23Aの小径部23bに対し、その中心軸方向に沿って移動可能に支持されている。これには、例えば、フリクションプレート24は、小径部23bに形成されたスプライン軸部23pに装着され、スプライン軸部23pの中心軸方向に沿って一定寸法の範囲内で往復動可能、かつスプライン軸部23pに対して相対回転不能とされている。
フリクションプレート24の外周部において、モータ21側の外周縁部には、モータ21側に向かってその外径が漸次縮小するテーパ面24tが形成されている。
【0036】
付勢部材25は、フリクションプレート24を、電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに向かって付勢する。このような付勢部材25としては、バネ部材等を適宜採用することができる。この実施形態では、付勢部材25として、円環状で、内周側25aに対して外周側25bが電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに突出した板バネを用いる。このような付勢部材25は、軸受28と、フリクションプレート24との間に、円環状のスラストプレート32を介して設けられている。
【0037】
図2に示すように、付勢部材25は、後述する押圧部材26によってフリクションプレート24が押圧されていない状態では、内周側25aが軸受28に接し、外周側25bがスラストプレート32を介してフリクションプレート24を電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに向けて付勢する。そして、この状態で、ホイール13hに形成されたテーパ面29tと、フリクションプレート24のテーパ面24tとは、隙間Cを隔てて対向し、非接触状態とされる。
【0038】
押圧部材26は、フリクションプレート24を、モータ21側に押圧する。押圧部材26は、ベース部材33と、摺接部材34と、レバー部材35と、を備えている。
【0039】
ベース部材33は、フリクションプレート24において電動アシストシルバーカー10の幅方向外方W側に一体に設けられている。
【0040】
摺接部材34は、ベース部材33と一体に設けられ、後述するレバー部材35のカム面35fに沿って摺接する摺接面34fを有している。
【0041】
レバー部材35は、駆動軸23Aの小径部23bと一体に設けられた回転軸36周りに回動自在に設けられている。レバー部材35は、カム面35fと、操作レバー35rと、を一体に備えている。カム面35fは、レバー部材35の外周面に形成され、回転軸36の中心からの半径が、周方向に沿って漸次大きくなるよう形成されている。また、レバー部材35の操作レバー35rは、外周側に向けて延びるよう形成され、この操作レバー35rを操作することで、レバー部材35が回転軸36周りに回転する。
【0042】
このようなレバー部材35は、操作レバー35rを操作することによって回転軸36周りに回動する。カム面35fにおいて、回転軸36の中心からの半径が漸次大きくなる方向にレバー部材35を回動操作すると、摺接部材34の摺接面34fがカム面35fに押圧される。これにより、
図3に示すように、摺接部材34、ベース部材33と共に、フリクションプレート24がモータ21側にスライド移動し、フリクションプレート24のテーパ面24tが、ホイール13hのテーパ面29tに突き当たる。このとき、付勢部材25は、スラストプレート32と駆動軸23Aの大径部23aとの間に挟み込まれた状態で押圧され、弾性変形する。
【0043】
上記レバー部材35の操作により、モータ21による回転力を車輪13に伝達しない「フリー状態」と、モータ21による回転力を車輪13に伝達して電動アシストシルバーカー10の走行をアシストする「アシスト状態」とを切り換えることができる。
【0044】
(フリー状態)
フリー状態においては、レバー部材35は、カム面35fによってフリクションプレート24を押圧しない。この状態では、フリクションプレート24は、テーパ面24tが、ホイール13hに形成されたテーパ面29tに対して隙間Cを隔てて対向し、非接触状態となる第二位置P2に位置する。
この状態でモータ21の駆動軸23Aと車輪13とが互いに独立している。車輪13は、駆動軸23Aに軸受28を介して支持されているので、駆動軸23A周りに回動自在となる。つまり、駆動軸23Aは、車輪13を枢支する固定軸として機能し、電動アシストシルバーカー10を使用者が手押ししたときに、車輪13がスムーズに回転する。
【0045】
(アシスト状態)
アシスト状態においては、レバー部材35を操作して、摺接部材34の摺接面34fをカム面35fに押圧すると、フリクションプレート24は、テーパ面24tが、ホイール13hのテーパ面29tに突き当たる第一位置P1に位置する。すると、テーパ面24t、29t間に生じる摩擦力により、フリクションプレート24とホイール13hとが一体に回転する。つまり、これにより、モータ21の回転力が車輪13に伝達され、電動アシストシルバーカー10の走行をアシストすることができる。
なお、上記のアシスト状態に移行する際には、制御部30が、レバー部材35の操作がなされたことを検出した後に、モータ21を作動させるよう、制御するようにしてもよい。
【0046】
(効果)
本実施形態によれば、フリクションプレート24を、車輪13に対して駆動軸23Aの回転を伝達する第一位置P1に移動することで、駆動軸23Aの回転が、フリクションプレート24を対して車輪13に伝達される。すなわち、この第一位置P1では、モータ21の駆動力によって車輪13が駆動軸23Aと一体に回転する。
また、フリクションプレート24を車輪13から離間させるよう第二位置P2に移動させると、フリクションプレート24による車輪13に対する駆動軸23Aの回転の伝達が解除される。これにより、モータ21の駆動力が車輪13に伝達されず、モータ21によるアシストを解除することができる。換言すれば、駆動軸23Aと車輪13は同心円上に配置され、モータ21を駆動させて車輪13を駆動する場合(アシスト状態の場合)、駆動軸23Aは車輪13を回転駆動させるための軸として機能する一方、車輪13をフリー回転(フリー状態)させる場合、駆動軸23Aは、車輪13を枢支する固定軸として機能する。
【0047】
また、モータ21によるアシストの有無を容易に切り換えることができる。しかも、アシストの有無を切り換えるための構成としては、フリクションプレート24と、フリクションプレート24を移動させる押圧部材26とを備えればよく、簡易な構成となる。したがって、モータ21によるアシストの断続を切り替え可能でありながら、低コスト化、軽量化および小型化を図ることが可能となる。
【0048】
また、板状のフリクションプレート24を円筒状部29に突き当てれば、フリクションプレート24と円筒状部29との間に生じる摩擦力により、モータ21の駆動力を、フリクションプレート24を介して車輪13に確実に伝達することができる。
【0049】
また、円筒状部29と、フリクションプレート24とが、テーパ面24t,29tを有している。さらに、フリクションプレート24は、外周部が円筒状部29に突き当たるようになっている。このように、フリクションプレート24が外周部で円筒状部29に突き当たることで、大きなトルクを効率よく車輪13に伝達することができる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明にかかる電動アシスト装置、およびそれを用いた手押し移動体の第2実施形態について説明する。なお、以下に説明する第2実施形態においては、上記第1実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する(以下の実施形態についても同様)。
図4は、本発明の第2実施形態における電動アシスト装置において、駆動力の伝達を解除した状態における半断面図である。
図5は、
図4の電動アシスト装置において、駆動力を伝達する状態おける半断面図である。
【0051】
本実施の形態において、電動アシストシルバーカー10は、例えば後方の幅方向両側の車輪13rを回転駆動させる電動アシスト機構を備えている。電動アシスト機構は、車輪13を回転駆動する駆動ユニット(電動アシスト装置)20Bと、収納部12内に収納され、駆動ユニット20Bの動作を制御する制御部30と、を備えている。
【0052】
図4、
図5に示すように、駆動ユニット20Bは、モータ21と、減速機22と、駆動軸23Bと、フリクションプレート(伝達部材)44と、付勢部材(移動機構)45と、押圧部材26と、を備えている。
【0053】
モータ21は、
図1に示した脚部フレーム11cの側方に設けられている。モータ21には、脚部フレーム11cとは反対側、すなわち電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに向けて突出する円筒状の支持スリーブ21sが一体に形成されている。
【0054】
減速機22は、支持スリーブ21sの内方に設けられている。
【0055】
駆動軸23Bは、大径部23aと小径部23bと、を備えている。大径部23aは、支持スリーブ21sの内方に、軸受27を介して回転自在に設けられている。
小径部23bは、大径部23aに対し、支持スリーブ21sの内方から、電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに向けて突出するよう設けられている。
【0056】
モータ21の支持スリーブ21sの外周側には、軸受48を介して、ホイール13hが嵌装されている。これにより、車輪13rは、駆動軸23Bと同心円上に配置されると共に、モータ21に対し、回転自在に設けられている。ホイール13hは、電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに向けて突出する円筒状部(突き当たり部)41を一体に備えている。円筒状部41の先端部41sは、支持スリーブ21sよりも、電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに突出している。円筒状部41の先端部41sの内周縁部には、電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに向かうに従ってその内径が漸次拡大するテーパ面41tが形成されている。
【0057】
フリクションプレート44は、小径部23bよりも外径が大きな円板状をなしている。フリクションプレート44は、駆動軸23Bの小径部23bに対し、その中心軸方向に沿って移動可能に支持されている。これには、例えば、フリクションプレート44は、小径部23bに形成されたスプライン軸部23pに装着され、スプライン軸部23pの中心軸方向に沿って一定寸法の範囲内で往復動可能かつスプライン軸部23pに対して相対回転不能とされている。
フリクションプレート44の外周部において、モータ21側の外周縁部には、モータ21側に向かってその外径が漸次縮小するテーパ面44tが形成されている。
【0058】
付勢部材45は、フリクションプレート44を、電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに向かって付勢する。このような付勢部材45としては、バネ部材等を適宜採用することができる。この実施形態では、付勢部材45として、円環状で、内周側45aに対して外周側45bが電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに突出した板バネを用いる。しかしながら、板バネに限らず、コイルバネ等、さまざまなバネ部材を適宜採用することができる。また、フリクションプレート44を、電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに向かって付勢できればよく、例えば、エアダンパ等を採用することも可能である。
この実施形態の付勢部材45は、駆動軸23Bの大径部23aと、フリクションプレート44との間に、円環状のスラストプレート42を介して設けられている。
【0059】
図4に示すように、付勢部材45は、押圧部材26によってフリクションプレート44が押圧されていない状態では、内周側45aが軸受48に接し、外周側45bがスラストプレート42を介してフリクションプレート44を電動アシストシルバーカー10の幅方向外方Wに向けて付勢する。そして、この状態で、ホイール13hに形成されたテーパ面41tと、フリクションプレート44のテーパ面44tとは、隙間Cを隔てて対向し、非接触状態とされる。
【0060】
押圧部材26は、フリクションプレート44をモータ21側に押圧する。押圧部材26は、ベース部材33と、摺接部材34と、レバー部材35と、を備えている。
【0061】
ベース部材33は、フリクションプレート44において電動アシストシルバーカー10の幅方向外方W側に一体に設けられている。
【0062】
摺接部材34は、ベース部材33と一体に設けられ、後述するレバー部材35のカム面35fに沿って摺接する摺接面34fを有している。
【0063】
レバー部材35は、駆動軸23Bの小径部23bと一体に設けられた回転軸36周りに回動自在に設けられている。レバー部材35は、カム面35fと、操作レバー35rと、を一体に備えている。
【0064】
このようなレバー部材35は、操作レバー35rを操作することによって回転軸36周りに回動する。カム面35fにおける回転軸36の中心からの半径が漸次大きくなる方向にレバー部材35を回動操作すると、摺接部材34の摺接面34fがカム面35fに押圧される。これにより、
図5に示すように、摺接部材34、ベース部材33と共に、フリクションプレート44がモータ21側にスライド移動し、フリクションプレート44のテーパ面44tが、ホイール13hのテーパ面41tに突き当たる。このとき、付勢部材45は、スラストプレート42と駆動軸23Bの大径部23aとの間に挟み込まれた状態で押圧され、弾性変形する。
【0065】
上記レバー部材35の操作により、モータ21による回転力を車輪13に伝達しない「フリー状態」と、モータ21による回転力を車輪13に伝達して電動アシストシルバーカー10の走行をアシストする「アシスト状態」とを切り換えることができる。
【0066】
(フリー状態)
フリー状態においては、レバー部材35は、カム面35fによってフリクションプレート44を押圧しない。この状態では、フリクションプレート44は、テーパ面44tが、ホイール13hに形成されたテーパ面41tと隙間Cを隔てて対向し、非接触状態となる第二位置P2に位置する。
この状態で、車輪13は、軸受48を介して支持スリーブ21sに回転自在に支持されている。換言すれば、支持スリーブ21sは、車輪13をフリー回転させるための固定軸として機能している。
【0067】
(アシスト状態)
アシスト状態においては、レバー部材35を操作して、摺接部材34の摺接面34fをカム面35fに押圧すると、フリクションプレート44のテーパ面44tが、ホイール13hのテーパ面41tに突き当たる。このようにしてテーパ面44t、29t間に生じる摩擦力により、フリクションプレート44とホイール13hとが一体に回転する。つまり、これにより、モータ21の回転力が車輪13に伝達され、電動アシストシルバーカー10の走行をアシストすることができる。
【0068】
(効果)
本実施形態によれば、車輪13はモータ21に形成された支持スリーブ21sに回転自在に支持されているので、駆動軸23Bとは別に、独立して回転可能である。このような構成において、フリクションプレート24を移動させることで、モータ21から車輪13への駆動力の伝達の有無を容易に切り換えることができる。しかも、これには、フリクションプレート24と、押圧部材26とを備えればよく、簡易な構成となる。このように、モータ21によるアシストの断続を切り替え可能でありながら、低コスト化および軽量化を図ることが可能となる。
【0069】
また、車輪13はモータ21に形成された支持スリーブ21sに回転自在に支持されている。したがって、駆動軸23Bで車輪13を支持する必要がない。これにより、上記第1実施形態に比較し、駆動軸23Bを短くすることが可能となり、駆動ユニット20Bの小型化、薄型化が可能となる。
【0070】
(第3実施形態)
次に、本発明にかかる電動アシスト装置、およびそれを用いた手押し移動体の第3実施形態について説明する。
図6は、本発明の第3実施形態における電動アシスト装置において、駆動力の伝達を解除した状態における半断面図である。
図7は、
図6の電動アシスト装置において、駆動力を伝達する状態おける半断面図である。
【0071】
図6、
図7に示すように、第1実施形態と第3実施形態との相違点は、駆動軸23Aから車輪13に駆動力を伝達する構成が異なっている点にある。すなわち、第3実施形態の駆動ユニット(電動アシスト装置)20Cは、第1実施形態のフリクションプレート24、付勢部材25、および押圧部材26に代わって、伝達プレート344および連結ピン311,312を備えている。
【0072】
より具体的には、伝達プレート344は、駆動軸23Aの先端側に、この駆動軸23Aと一体となって回転するように設けられている。伝達プレート344は、円板状のプレート本体344aと、プレート本体344aの幅方向外方W側に一体的に設けられたフランジ部344bと、を備えている。
【0073】
プレート本体344aの外径は、ホイール13hに設けられている円筒状部29の内径よりも若干小さく設定されている。そして、円筒状部29の径方向内側に、この円筒状部29に対して相対回転可能に配置されている。一方、フランジ部344bの外径は、円筒状部29の外径とほぼ同程度となるように設定されている。そして、フランジ部344bは、端面344cが円筒状部29の軸方向端面29uと隙間C1を隔てて軸方向で対向している。また、プレート本体344aの肉厚は、フランジ部344bの肉厚に対して肉厚に設定されている。
【0074】
ここで、プレート本体344aの外周面には、連結ピン311を挿入可能な挿入凹部344dが形成されている。一方、円筒状部29には、挿入凹部344dに対応する位置に、径方向に貫通し連結ピン311を挿入可能な貫通孔29vが形成されている。
また、フランジ部344bには、軸方向に貫通し連結ピン312を挿入可能な貫通孔344eが形成されている。一方、円筒状部29には、貫通孔344eに対応する位置に、連結ピン312を挿入可能な挿入凹部29wが形成されている。
【0075】
このような構成のもと、
図6に示すように、挿入凹部344dおよび貫通孔29vに連結ピン311を挿入すると共に、挿入凹部29wおよび貫通孔344eに連結ピン312を挿入すると、伝達プレート344とホイール13hとが連結される。これにより、モータ21による回転力を車輪13に伝達して電動アシストシルバーカー10の走行をアシストする「アシスト状態」となる。
一方、
図7に示すように、挿入凹部344dおよび貫通孔29vから連結ピン311を抜去すると共に、挿入凹部29wおよび貫通孔344eに連結ピン312を抜去すると、伝達プレート344とホイール13hとの連結が解除される。これにより、モータ21による回転力を車輪13に伝達しない「フリー状態」となる。すなわち、駆動軸23Aは、車輪13を枢支する固定軸として機能する。
【0076】
(効果)
したがって、上述の第3実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、第1実施形態の駆動ユニット20Aと比較して、さらに簡素な構造の駆動ユニット20Cとすることができる。
なお、上述の第3実施形態では、2つの連結ピン311,312を設けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、2つの連結ピン311,312のうち、何れか一方のみ設けるように構成してもよい。
【0077】
(第4実施形態)
次に、本発明にかかる電動アシスト装置、およびそれを用いた手押し移動体の第4実施形態について説明する。
図8は、本発明の第4実施形態における電動アシスト装置において、駆動力の伝達を解除した状態における半断面図である。
図9は、
図8の電動アシスト装置において、駆動力を伝達する状態おける半断面図である。
【0078】
図8、
図9に示すように、第1実施形態の駆動ユニット(電動アシスト装置)20Aと、は、第4実施形態の駆動ユニット(電動アシスト装置)20Dとの相違点は、駆動軸23Aから車輪13に駆動力を伝達する構成が異なっている点にある。
より具体的には、ホイール13hに形成されている円筒状部29の先端部29sには、内周縁部にクラッチリング411が内嵌固定されている。クラッチリング411の内周面には、スプライン411aが形成されている。
【0079】
一方、駆動軸23Aの先端側には、ホイール13hの円筒状部29と径方向で対向する位置に、二方取り部412が形成されており、この二方取り部412にクラッチプレート413が軸方向に往復動可能、かつ相対回転不能に取り付けられている。
クラッチプレート413は、略円板状に形成されたものであって、径方向略中央に二方取り部412を挿通可能な貫通孔413aが形成されている。これにより、二方取り部412に対してクラッチプレート413が往復動可能、かつ相対回転不能に取り付けられる。
【0080】
また、クラッチプレート413の外周部には、スプライン413bが形成されている。このスプライン413bは、ホイール13hの円筒状部29に内嵌固定されているクラッチリング411のスプライン411aと噛合可能になっている。
さらに、円筒状部29の径方向内側で、かつ軸受28とクラッチプレート413との間には、コイルバネ414が設けられている。コイルバネ414によって、クラッチプレート413には、常時軸方向外方Wに向かう力が付勢されている。
【0081】
(フリー状態)
このような構成のもと、
図8に示すように、フリー状態においては、レバー部材35は、カム面35fによってクラッチプレート413を押圧しない。この状態では、コイルバネ414によって、クラッチプレート413は、円筒状部29のクラッチリング411との噛合いが外れた状態となる第二位置P2に位置する。
この状態でモータ21の駆動軸23Aと車輪13とが互いに独立している。車輪13は、駆動軸23Aに軸受28を介して支持されているので、駆動軸23A周りに回動自在となる。つまり、駆動軸23Aは、車輪13を枢支する固定軸として機能し、電動アシストシルバーカー10を使用者が手押ししたときに、車輪13がスムーズに回転する。
【0082】
(アシスト状態)
図9に示すように、アシスト状態においては、レバー部材35を操作して、摺接部材34の摺接面34fをカム面35fに押圧すると、クラッチプレート413は、コイルバネ414の弾性力に抗して移動し、円筒状部29のクラッチリング411と噛合う状態となる第一位置P1に位置する。すると、クラッチプレート413とホイール13hとが一体に回転する。つまり、これにより、モータ21の回転力が車輪13に伝達され、電動アシストシルバーカー10の走行をアシストすることができる。
【0083】
(効果)
したがって、上述の第4実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、モータ21の回転力を、より効率よく車輪13に伝達することが可能になる。
【0084】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上述の各実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の各実施形態を組み合わせたり置き換えたりして構成することが可能である。
【0085】
また、上記第1、第2、第4実施形態において、押圧部材26によりフリクションプレート24を移動させるようにしたが、これに限らない。例えば、シリンダを用いてフリクションプレート24を移動させるように構成してもよいし、ヘリカルギヤや傾斜カム等を駆動軸に対して同軸で回転させ、フリクションプレート24を移動させるように構成してもよい。その他、適宜の機構により、フリクションプレート24を移動させることが可能である。
【0086】
また、上記第1、第2実施形態において、フリクションプレート44は、小径部23bに形成されたスプライン軸部23pに装着され、スプライン軸部23pの中心軸方向に沿って一定寸法の範囲内で往復動可能かつスプライン軸部23pに対して相対回転不能とされている場合について説明した。さらに、第4実施形態において、駆動軸23Aに二方取り部412を形成し、これに対応するようにクラッチプレート413に貫通孔413aを形成し、駆動軸23Aに対してクラッチプレート413を軸方向に往復動可能、かつ相対回転不能に設けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、駆動軸23A,23B(小径部23b)に対し、フリクションプレート44やクラッチプレート413が往復動可能、かつ相対回転不能に設けられていればよい。例えば、小径部23bにDカットを形成すると共に、フリクションプレート44に、Dカットに嵌合可能な孔を形成してもよい。
【0087】
さらに、上記第1、第2実施形態において、フリクションプレート24,44からホイール13hに動力を伝達するために、フリクションプレート24,44にテーパ面24t,44tを形成すると共にホイール13hにテーパ面29t,41tを形成し、両者の間で生じる摩擦力を利用する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、フリクションプレート24,44とホイール13hとを突き当てることにより、フリクションプレート24,44からホイール13hに動力が伝達されるように構成されていればよい。例えば、フリクションプレート24およびホイール13hの何れか一方に凸部を形成し、他方にこの凸部を挿入可能な凹部を形成してもよい。
【0088】
その他、上記第1、第2実施形態では、フリクションプレート24,44を用いてホイール13hに駆動軸23A,23Bの動力を伝達、解除する場合について説明した。また、上記第3実施形態では、連結ピン311,312を用いてホイール13hに駆動軸23Aの動力を伝達、解除する場合について説明した。さらに、上記第4実施形態では、クラッチリング411およびクラッチプレート413を用いてホイール13hに駆動軸23Aの動力を伝達、解除する場合について説明した。しかしながら、これらに限られるものではなく、ホイール13hに駆動軸23A,23Bの動力を伝達、解除できれば、さまざまな機構を採用することが可能である。
【0089】
また、上記各実施形態では、手押し移動体として電動アシストシルバーカー10を例に挙げたが、もちろん、これに限らず、ベビーカーや、ショッピングカート、リハビリテーション用歩行車、台車等にも本発明を同様に適用することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。