(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454169
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】ボルテージレギュレータ
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
G05F1/56 310C
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-20601(P2015-20601)
(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-143341(P2016-143341A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 照夫
【審査官】
柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−248869(JP,A)
【文献】
特開2005−092693(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0210430(US,A1)
【文献】
特開2010−191885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧と帰還電圧の差を増幅し出力する差動増幅器と、
前記差動増幅器の出力端子がゲートに接続された出力トランジスタと、
前記出力トランジスタのゲートとドレインの間に設けられた位相補償容量と、
を備えたボルテージレギュレータであって、
前記出力トランジスタのゲートと前記位相補償容量の間に設けられた第一スイッチと、
入力端子に前記差動増幅器の出力端子が接続されたボルテージフォロアと、
前記位相補償容量と前記第一スイッチの接続点と前記ボルテージフォロアの出力端子との間に設けられた第二スイッチと、
前記基準電圧と前記帰還電圧を比較するコンパレータと、を備え、
前記第一スイッチと前記第二スイッチは、前記コンパレータの出力信号で制御される、ことを特徴とするボルテージレギュレータ。
【請求項2】
前記帰還電圧が前記基準電圧より高くなったときに、前記第一スイッチはオフして、前記第二スイッチはオンする、
ことを特徴とする請求項1記載のボルテージレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電圧を受けて一定の出力電圧を発生するボルテージレギュレータに関し、より詳しくは出力電圧のオーバーシュートを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ボルテージレギュレータは、入力端子に入力される入力電圧Vinを受けて、出力端子に一定の出力電圧Voutを発生する。
【0003】
図2は、従来のボルテージレギュレータの回路図である。
ブリーダ抵抗回路24は、出力電圧Voutを分圧して帰還電圧Vfbを生成する。基準電圧回路23は、基準電圧Vrefを出力する。差動増幅器21は、入力端子に基準電圧Vrefと帰還電圧Vfbが入力され、出力端子がMOSトランジスタ25のゲートに接続される。出力電圧検出回路26は、入力端子がボルテージレギュレータの出力端子に接続され、出力端子が差動増幅器21のバイアス電流を流す電流源22に接続される。
【0004】
従来のボルテージレギュレータの動作について説明する。
基準電圧Vrefが帰還電圧Vfbよりも大きい場合は、差動増幅器21の出力は低くなる。MOSトランジスタ25のON抵抗が小さくなるので、ボルテージレギュレータの出力電圧Voutは高くなる。従って、ボルテージレギュレータは、帰還電圧Vfbと基準電圧Vrefとが等しくなる様に働く。帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも大きい場合は、上記と逆の動作をして、出力電圧Voutが低くなる。ボルテージレギュレータは、常に、帰還電圧Vfbと基準電圧Vrefを等しく保つことで、一定の出力電圧Voutを出力する。
【0005】
入力電圧が過渡的に上昇した際に、MOSトランジスタ25のゲート電圧は時間t遅れて追従するため、MOSトランジスタ25のゲート電圧とソース電圧の電圧差が大きくなり、ボルテージレギュレータの出力電圧Voutにオーバーシュートが発生する。
【0006】
出力電圧検出回路26は、出力電圧Voutをモニタして、出力電圧Voutにオーバーシュートが発生すると、検出信号を電流源22に出力して、差動増幅器21のバイアス電流を増加させる。従って、差動増幅器21の過渡応答特性を向上することで、出力電圧Voutのオーバーシュートを抑制する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−280025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら従来のボルテージレギュレータは、増加した電流源22の電流によってMOSトランジスタ25のゲート電圧は、より高い電圧で制御されることとなる。
従って、従来のボルテージレギュレータでは、MOSトランジスタ25のゲート電圧が定常動作電圧以上に上昇するため、オーバーシュート抑制直後にアンダーシュートが発生するという課題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、アンダーシュートが発生しないオーバーシュート抑制回路を備えたボルテージレギュレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ボルテージレギュレータは、出力トランジスタのゲートと位相補償容量の間に設けられた第一スイッチと、入力端子に差動増幅器の出力端子が接続されたボルテージフォロアと、ボルテージフォロアの出力端子と位相補償容量の間に設けられた第二スイッチと、基準電圧と帰還電圧を比較するコンパレータと、を備え、第一スイッチと第二スイッチはコンパレータの出力信号で制御される構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態のボルテージレギュレータによれば、位相補償コンデンサを切り離すことで、出力電圧のオーバーシュートをすばやく抑制することが出来て、且つ、アンダーシュートを抑制することが可能となる。また、位相補償コンデンサは、切り離されている間、ボルテージフォロアによって差動増幅器の出力電圧と同電位になるようにプリチャージされているため、スイッチの切替え動作があっても、出力電圧が安定している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態のボルテージレギュレータを示す回路図である。
【
図2】従来のボルテージレギュレータを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施形態のボルテージレギュレータを示す回路図である。
本実施形態のボルテージレギュレータは、差動増幅器11と、基準電圧回路12と、出力MOSトランジスタであるMOSトランジスタ13と、ブリーダ抵抗回路14と、位相補償用のコンデンサ15と、ボルテージフォロア16と、コンパレータ17と、インバータ18と、スイッチ19及び20と、を備えている。
【0014】
MOSトランジスタ13は、ボルテージレギュレータの入力端子と出力端子の間に接続される。ブリーダ抵抗回路14は、ボルテージレギュレータの出力端子と接地端子の間に接続される。差動増幅器11は、反転入力端子に基準電圧回路12の出力端子が接続され、非反転入力端子にブリーダ抵抗回路14の出力端子が接続され、出力端子はボルテージフォロア16の非反転入力端子とMOSトランジスタ13のゲートに接続される。スイッチ19とスイッチ20は、差動増幅器11の出力端子とボルテージフォロア16の出力端子の間に直列に接続される。コンデンサ15は、スイッチ19とスイッチ20の接続点とボルテージレギュレータの出力端子の間に接続される。コンパレータ17は、非反転入力端子にブリーダ抵抗回路14の出力端子が接続され、反転入力端子に基準電圧回路12の出力端子が接続される。スイッチ19の制御端子は、コンパレータ17の出力端子が接続される。スイッチ20の制御端子は、コンパレータ17の出力端子がインバータ18を介して接続される。
【0015】
ブリーダ抵抗回路14は、出力電圧Voutを分圧して帰還電圧Vfbを生成する。基準電圧回路12は、基準電圧Vrefを出力する。差動増幅器11は、入力端子に基準電圧Vrefと帰還電圧Vfbが入力され、基準電圧回路12と帰還電圧Vfbとを比較する。
【0016】
次に、本実施形態のボルテージレギュレータの動作について説明する。
入力電圧Vinが急激に上昇をすると、MOSトランジスタ13のソース電圧も上昇をする。この時、MOSトランジスタ13のゲート電圧は、入力電圧Vinの変動に追従しない差動増幅器11の出力電圧となっている。従って、MOSトランジスタ13は、ゲート・ソース間電圧が大きくなるので、ON抵抗は小さくなる。そして、ボルテージレギュレータの出力電圧Voutは上昇して、帰還電圧Vfbも上昇する。
【0017】
ここで、コンパレータ17は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも大きい場合にSW回路19をオープンに制御し、SW回路20をショートに制御する。従って、ボルテージフォロア16は、SW回路20を介してコンデンサ15に差動増幅器11の出力電圧と同電位になるようにプリチャージをおこなう。
【0018】
また、MOSトランジスタ13のゲート電圧は、SW回路20がオープンとなってコンデンサ15が切り離されているため、差動増幅器11の出力電圧にすばやく追従することが出来る。従って、ボルテージレギュレータの出力電圧Voutは、オーバーシュートがすばやく抑制される。このとき、MOSトランジスタ13のゲート電圧は、バイアス電流が通常状態と同じ差動増幅器11の出力電圧で制御されるため、ボルテージレギュレータの出力電圧Voutにアンダーシュートが発生しづらい。
【0019】
その後、ボルテージレギュレータの出力電圧Voutが所望の電圧になると、帰還電圧Vfbは基準電圧Vrefと等しい電圧になるため、コンパレータ17の出力信号は、SW回路19をショートに制御し、SW回路20をオープンに制御する。このとき、コンデンサ15には、ボルテージフォロア16によって予め差動増幅器11の出力電圧と同電位になるようにプリチャージをおこなっているため、SW回路19をショートした時にMOSトランジスタ13のゲート電圧は影響を受けることはない。従って、SW回路19とSW回路20の切替え動作があっても、ボルテージレギュレータの出力電圧Voutは安定して所望の電圧を出力することが出来る。
【0020】
以上説明したように、本実施形態のボルテージレギュレータによれば、位相補償コンデンサを切り離すことで、出力電圧のオーバーシュートをすばやく抑制することが出来て、且つ、アンダーシュートを抑制することが可能となる。また、位相補償コンデンサは、切り離されている間、ボルテージフォロアによって差動増幅器11の出力電圧と同電位になるようにプリチャージされているため、スイッチの切替え動作があってもボルテージレギュレータの出力電圧は安定している。
【符号の説明】
【0021】
11 差動増幅器
12 基準電圧回路
14 ブリーダ抵抗回路
16 ボルテージフォロア
17 コンパレータ