(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、飲料用等の容器においては、所謂「LID(リッド)」と呼ばれる合成樹脂製の蓋部材を容器の開口部側に被せることが行われている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
この蓋部材には、天板部の周縁から垂下する蓋環状周部が形成されており、容器の容器胴部の上端に形成された容器口部の外周に、蓋環状周部に形成された蓋嵌合部を外嵌させることにより、容器に内容液を入れた状態で、自動販売機や販売店等から容器を持ち運ぶ際に、容器外部に内容液が漏れ出ることを防止している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、蓋嵌合部の形状は、容器口部の形状に合わせて形成されているものの、容器に蓋部材を嵌合させた状態で、容器口部の外面と蓋嵌合部の内面との間には僅かな隙間が生じており、蓋付き容器を大きく傾けた場合には、前記隙間が内容液の漏出経路となり、容器外部に内容液が漏れ出てしまう。
【0006】
しかしながら、このような内容液の漏出は、蓋付き容器を大きく傾斜させた場合にのみ生じるものであることから、従来は甘受されてきたが、近年、コンビニエンスストア等においてコーヒー等を蓋付き容器に入れて販売することが普及してきたことから、蓋付き容器の需要が高まってきており、この需要の高まりに応じて、内容液の漏出防止に対する要求水準も高まってきている。また、同時に、このような蓋付き容器では、低価格で販売されるコーヒー等に用いられるものであることから、低コスト化に対する要求も強い。
【0007】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構成、低コスト、および、容器口部に対する蓋嵌合部の着脱の容易性を維持しつつ、内容液の漏出を抑制する蓋付き容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
紙基材層を含む紙コップとして形成された容器と、前記容器に被せられる蓋部材とを備えた蓋付き容器であって、前記容器は、ブランク材の両端を重ねて付着した筒状の容器胴部と、容器底部と、前記容器胴部の上端を外側に丸めた容器口部とを有し、前記容器口部は、前記ブランク材の両端が重なった重複部と、前記重複部の側方に形成された段差部に隣接する段差隣接部とを有し、前記蓋部材は、前記容器口部に着脱自在に外嵌する蓋嵌合部を有し、前記蓋嵌合部は、前記容器口部の口部内周面に対向して配置される内側対向部と、前記容器口部の口部外周面に対向して配置される外側対向部とを有し、前記外側対向部は、前記口部外周面の下部に対向して配置され、上方から下方に向けて縮径するアンダーカット部を有し、前記内側対向部の最内周部分の外径は、前記口部内周面の内径よりも0〜0.8mm大きく設定され、前記外側対向部の最外周部分の内径は、前記口部外周面の外径よりも0.4〜2.0mm小さく設定され、前記蓋嵌合部は、前記容器口部に嵌合した状態で、前記容器口部に対して、前記アンダーカット部および前記内側対向部の少なくとも2箇所で接触することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1に係る発明によれば、容器口部に着脱自在に嵌合する蓋嵌合部が、容器口部の口部内周面に対向して配置される内側対向部と、容器口部の口部外周面に対向して配置される外側対向部とを有し、外側対向部が、口部外周面の下部に対向して配置され、上方から下方に向けて縮径するアンダーカット部を有し、内側対向部の最内周部分の外径が、口部内周面の内径よりも0〜0.8mm大きく設定され、外側対向部の最外周部分の内径が、口部外周面の外径よりも0.4〜2.0mm小さく設定され、蓋嵌合部が、容器口部に嵌合した状態で、容器口部に対して、アンダーカット部および内側対向部の少なくとも2箇所で接触するように構成されている。
これにより、容器口部の重複部や、重複部および段差隣接部以外の容器口部の一般部において、蓋部材のアンダーカット部および内側対向部の少なくとも2箇所を容器口部に対して確実に接触させることが可能であるばかりでなく、容器口部の段差隣接部において容器口部の外面と蓋嵌合部の内面との間に生じがちな漏出経路(隙間)の大きさ(断面積)を小さく維持し、表面張力の作用によって内容液の漏出を阻止することが可能であるため、簡素な構成、低コスト、および、容器口部に対する蓋嵌合部の着脱の容易性を維持しつつ、内容液の漏出を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る蓋付き容器10について、図面に基づいて説明する。
【0012】
まず、蓋付き容器10は、紙基材層や樹脂フィルム層等を含むブランク材から成る紙コップとして構成され、
図1に示すように、上端側が開口した容器20と、容器20の開口側に被せられる蓋部材60とから構成されている。
【0013】
容器20は、
図2や
図3に示すように、ブランク材の両端を重ねて付着したサイドシーム部31を有した筒状の容器胴部30と、筒状の容器胴部30の下端側に形成された容器底部40とを有している。
【0014】
容器胴部30の上端には、
図2や
図3に示すように、容器胴部30の上端を外側に丸めた容器口部50が形成されている。容器口部50は、
図2に示すように、ブランク材の両端が重なった重複部51と、容器胴部30の胴部周方向において重複部51の側方に形成された段差部52と、胴部周方向において段差部52に隣接する段差隣接部53と、重複部51、段差部52、段差隣接部53以外の部分である一般部54とを有している。
【0015】
ここで、段差隣接部53の範囲は、容器20に蓋部材60を嵌合させた状態で、容器口部50に段差部52が形成されることに起因して、容器口部50の外面と蓋嵌合部63の内面との間に形成される漏出経路(隙間)を含む範囲であり、具体的には、容器口径:79mmの容器20(段差部52の寸法:約0.28mm)の場合に、段差部52から胴部周方向に約3mm〜7mmの範囲(換言すると、段差部52から胴部周方向に、容器口径に対して3.8%〜8.9%の範囲)である。
【0016】
蓋部材60は、所謂「LID(リッド)」と呼ばれる合成樹脂や紙などから成形された蓋として構成され、
図1や
図4に示すように、環状の外周縁を有した天板部61と、天板部61の外周縁から垂下する蓋環状周部62とから構成されている。蓋環状周部62には、容器口部50の外面に着脱自在に外嵌する蓋嵌合部63が形成されている。
【0017】
蓋嵌合部63は、
図4や
図5に示すように、内側対向部64と、上部66およびアンダーカット部67を含む外側対向部65とを有している。
内側対向部64は、下方から上方に向けて拡径した形状を有し、口部内周面55に対向して配置される。
外側対向部65の上部66は、上方から下方に向けて拡径した形状を有し、口部外周面56の上部に対向して配置される。
外側対向部65のアンダーカット部67は、上方から下方に向けて縮径した形状を有し、口部外周面56の下部に対向して配置される。
外側対向部65の上部66の上端は、内側対向部64の上端に連続し、アンダーカット部67の上端は、外側対向部65の上部66の下端に連続する。
【0018】
また、蓋嵌合部63の形状は、容器口部50の形状に対応して形成されており、すなわち、容器口部50に蓋嵌合部63を嵌合させた状態で、口部内周面55に内側対向部64が沿い、口部外周面56の上部に外側対向部65の上部66が沿い、口部外周面56の下部にアンダーカット部67が沿うように、蓋嵌合部63および容器口部50の形状が設定されている。
具体的には、内側対向部64の断面形状(上下方向を含む平面で切った断面形状)の少なくとも一部分が、口部内周面55の断面形状と同様の曲率(同一または相似の曲率)で形成され、外側対向部65の上部66の断面形状の少なくとも一部分が、口部外周面56の上部の断面形状と同様の曲率で形成され、アンダーカット部67の断面形状の少なくとも一部分が、口部外周面56の下部の断面形状と同様の曲率で形成されている。
これにより、容器口部50に蓋嵌合部63を嵌合させた状態で、容器口部50の外面と蓋嵌合部63の内面との間に生じる隙間を小さく維持することができる。詳しくは、隙間の断面積のうち、最小断面積が1.00mm
2以下、望ましくは0.75mm
2以下、更に望ましくは0.50mm
2以下であれば良い。これにより、内容物の漏出がさらに抑制される。
【0019】
次に、容器口部50および蓋嵌合部63の各部の寸法関係について、
図3および
図4に基づいて以下に説明する。
【0020】
まず、内側対向部64の最内周部分の外径D1は、口部内周面55(の最内周部分)の内径D2よりも、0〜0.8mm大きく設定されている。外径D1が内径D2よりも0.8mmより大きく設定されていると、蓋嵌合部63が容器口部50に嵌まらず、蓋部材60が容器20から浮いてしまう。
また、外側対向部65の最外周部分の内径D3は、口部外周面56(の最外周部分)の外径D4よりも、0.4〜2.0mm小さく設定されている。
また上下方向を含む平面で切った場合の、外側対向部65の周長L1は、口部外周面56の周長L2の0.5〜1.5倍で設定されている。
ここで、上述した各寸法は、ブランク材の厚みを考慮しない設計寸法である。
そして、容器口部50および蓋嵌合部63の各部の寸法関係を上述したように設定することにより、蓋部材60のアンダーカット部67および内側対向部64の少なくとも2箇所を容器口部50に対して良好に接触させることが可能になる。
【0021】
次に、蓋付き容器10における内容液の漏出防止効果を確認するために行った検査結果について、以下に説明する。
【0022】
<検査条件>
本検査では、検査液として80℃のコーヒーを使用し、内容液260mlの容器20に対して160mlの検査液を注入した後、検査液の液面を揺らし、蓋嵌合部63の内面および容器口部50の外面に検査液を触れさせ、その後、
図8に示すように、段差隣接部53を下方に向けた状態で蓋付き容器10を約45°傾け、液面が段差隣接部53よりも上になった状態で固定し、3分間での漏れの有無を確認した。
【0023】
<検査対象>
本検査では、
図6に示す改良後の蓋付き容器10と、
図7に示す改良前の蓋付き容器10の2種類の蓋付き容器10を使用した。
図6に示す改良後の蓋付き容器10は、内側対向部64の外径D1が口部内周面55の内径D2よりも0〜0.8mm大きく設定され、外側対向部65の内径D3が口部外周面56の外径D4よりも0.4〜2.0mm小さく設定され、外側対向部65の周長L1が口部外周面56の周長L2の0.8〜1.5倍で設定されている。
図7に示す改良前の蓋付き容器10は、内側対向部64の外径D1と口部内周面55の内径D2との差が0mm未満に設定され、外側対向部65の内径D3が口部外周面56の外径D4よりも0〜0.4mm未満小さく設定され、外側対向部65の周長L1が口部外周面56の周長L2の0.8倍未満で設定されている。
【0024】
<検査結果>
上記の検査の結果については、
図8に示す通りである。漏れの発生確率については、若干の改善が見られた。これに対して、漏れ発生までの時間については、時間が約10倍延長される等、大きな改善が確認された。
【0025】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
例えば、上述した実施形態では、容器口部の断面形状が略楕円形のものとして説明したが、容器口部の断面形状は、蓋嵌合部を良好に嵌合させることが可能なものであれば如何なるものでもよく、例えば、略円形のものや、略角形のものであってもよい。
また、上述した実施形態では、蓋嵌合部の内側対向部が、口部内周面の上部のみに対向するように形成されているが、内側対向部を口部内周面の下部に対向する位置まで形成してもよい。
また、段差隣接部において、容器口部の外面と蓋嵌合部の内面との間に生じる漏出経路(隙間)内に入り込んだ内容液を、表面張力の作用によって容器内側に後退させる力を発生させるために、段差隣接部の外面や蓋嵌合部の内面に、表面上に接した水との接触角が90°より大きくなる撥水性を付与してもよい。