(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記経路推定結果出力部は、前記各ペアについてカウントされた前記一致リンク数から計算される、前記各ペアの最短経路が前記推定経路である確率を出力するよう構成されている請求項1に記載の経路推定装置。
前記マッチング部は、前記最短経路が経由する複数のリンクの順序によって表される経路方向が、前記捕捉リンク系列情報に含まれる複数のリンクの順序によって表される前記移動体の移動方向と逆向きの場合には、逆向きと特定された最短経路を前記推定経路の候補から除外するよう構成されている請求項1又は2に記載の経路推定装置。
前記経路推定結果出力ステップにおいて、前記各ペアについてカウントされた前記一致リンク数から計算される、前記各ペアの最短経路が前記推定経路である確率を出力する請求項5に記載の経路推定方法。
前記マッチングステップにおいて、前記最短経路が経由する複数のリンクの順序によって表される経路方向が、前記捕捉リンク系列情報に含まれる複数のリンクの順序によって表される前記移動体の移動方向と逆向きの場合には、逆向きと特定された最短経路を前記推定経路の候補から除外する請求項5又は6に記載の経路推定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の開示技術によれば、進行方向前方のあらかじめ設定された範囲内に存在する地点が目的地候補として推定される。しかしながら、車両の進行方向や進行方向前方の範囲は、車両の移動と共に時々刻々を変化するため、実際の目的地がその範囲内に常に入っているわけではなく、目的地候補から外れてしまう可能性がある。特に、道路の接続形状(地図形状)が複雑な道路ネットワークでは、目的地候補が頻繁に変化し、実際の目的地が検出されない状態が頻出する可能性がある。
【0006】
また、特許文献2の開示技術によれば、車両の進行方向の先に存在する登録地点が目的地候補として推定される。しかしながら、特許文献2では、進行方向に関する情報は、登録地点から目的地候補を大まかに選別するための条件として用いられることが示唆されているに過ぎない。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するために、本発明は、移動体の移動履歴及び道路の接続形状に基づいて、移動体の移動経路を推定する経路推定装置及び経路推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によれば、移動体の移動経路を推定する経路推定装置であって、
複数のノードと前記複数のノードのうちの任意のノード間を接続するリンクとによって表された道路ネットワークにおいて任意の2つのノードのペアを複数選択し、各ペアにおけるノード間の最短経路を形成する複数のリンクを記録した最短経路表を格納する最短経路表格納部と、
移動に伴って変化する前記移動体の位置を前記道路ネットワーク上におけるリンクの位置として記録した捕捉リンク系列情報を格納する捕捉リンク系列格納部と、
前記最短経路表に記録されている前記各ペアの最短経路を形成する複数のリンクのうち、前記捕捉リンク系列情報に含まれるリンクと同一である一致リンク数を、前記各ペアについてカウントするマッチング部と、
前記各ペアについてカウントされた前記一致リンク数に基づき、前記移動体の移動経路として推定される推定経路を出力する経路推定結果出力部とを、
有
し、
前記経路推定結果出力部は、前記各ペアについてカウントされた前記一致リンク数が最も大きいペアの最短経路を前記推定経路として出力するよう構成されている経路推定装置が提供される。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明によれば、移動体の移動経路を推定する経路推定方法であって、
複数のノードと前記複数のノードのうちの任意のノード間を接続するリンクとによって表された道路ネットワークにおいて任意の2つのノードのペアを複数選択し、各ペアにおけるノード間の最短経路を形成する複数のリンクを記録した最短経路表が格納された最短経路表格納部から、前記最短経路表を読み出すステップと、
移動に伴って変化する前記移動体の位置を前記道路ネットワーク上におけるリンクの位置として記録した捕捉リンク系列情報が格納された捕捉リンク系列格納部から、前記捕捉リンク系列情報を読み出すステップと、
前記最短経路表に記録されている前記各ペアの最短経路を形成する複数のリンクのうち、前記捕捉リンク系列情報に含まれるリンクと同一である一致リンク数を、前記各ペアについてカウントするマッチングステップと、
前記各ペアについてカウントされた前記一致リンク数に基づき、前記移動体の移動経路として推定される推定経路を出力する経路推定結果出力ステップとを、
有
し、
前記経路推定結果出力ステップにおいて、前記各ペアについてカウントされた前記一致リンク数が最も大きいペアの最短経路を前記推定経路として出力する経路推定方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の経路推定装置及び経路推定方法は、移動体の移動履歴及び道路の接続形状に基づいて、移動体の移動経路を推定できるという効果を奏する。特に、道路の接続形状(地図形状)が複雑な道路ネットワークで、移動体の移動経路を推定できるようにするという効果を奏する。また、移動体の移動経路と同時に、移動体が向かう目的地を推定できるようになるという効果も奏する。また、移動体の移動経路として任意の2地点間の最短経路を推定することができ、経路の選択時に最短経路を選択する傾向にある人間の特性を反映した、妥当な推定結果を提供するという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態における処理の一例を示すフローチャートである。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る処理は、事前準備として最短経路表を作成する最短経路表作成処理(ステップS11)と、作成した最短経路表を利用して経路推定を行う経路推定処理(ステップS12)とに大別される。以下、最短経路表作成処理及び経路推定処理のそれぞれについて説明する。
【0013】
<最短経路表作成処理>
まず、
図1のステップ11における経路表作成処理について説明する。経路表作成処理は、移動体の移動時に捕捉される移動体の位置情報に基づいて経路推定を行う際に参照すべき最短経路表を事前に作成する処理である。
図2は、
図1に示す最短経路表作成処理で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【0014】
図2に示すように、最短経路表作成処理では、まずノード及びリンクの設定を行う(ステップS1101)。具体的には、例えば対象とする地域の道路地図データを用意し、交差点や地物などの位置をノード、ノードに対応する位置を結ぶ道路をリンクとすることで、対象とする地域の道路地図からノードとリンクによって構成されるネットワーク(道路ネットワーク)を作成する。これにより、
図3に示すようなノード及びリンクによって構成されるネットワークが作成される。
【0015】
なお、本明細書で一例として挙げている
図3のネットワークは、説明のために単純な構造を有しており、直感的かつ定性的に経路の推定を行うことができてしまうが、実際に取り扱われるネットワーク(実際の道路の接続状況を用いて作成されるネットワーク)はより複雑な構造を有している。本発明は、このような複雑なネットワーク構造を定量的に解析して経路推定を行うことが可能であり、直感的に推定することが困難な経路に関しても定量的に評価することが可能である。
【0016】
図3は、本発明の実施の形態における最短経路表作成処理で作成された、ノード及びリンクによって構成されるネットワークの一例を示す図である。
図3には、9個のノード(ノードN1〜N9)と、これらのノードN1〜N9を結ぶ10本のリンク(L1〜L10)が図示されている。
図3の例では、各リンクはリンクIDによって識別されており、リンクL1はノードN1−N3間、リンクL2はノードN2−N3間、リンクL3はノードN3−N4間、リンクL4はノードN3−N5間、リンクL5はノードN4−N5間、リンクL6はノードN4−N6間、リンクL7はノードN6−N7間、リンクL8はノードN5−N7間のリンク、リンクL9はノードN7−N8間、リンクL10はノードN7−N9間のリンクである。なお、その他のノード及びリンクも多数存在し得るが、ここでは図示及び説明を省略する。
【0017】
次に、ノード及びリンクによって構成されるネットワークにおいて、複数のノードを選択する。この処理によって、ノード及びリンクによって構成されるネットワークに含まれるノードの一部又はすべてが選択される。例えば
図3に示すネットワーク(ノードN1〜N9及びその他のノードをつなぐリンクによって構成されるネットワーク)において、このネットワークの構成要素の一部であるノードN1〜N9が選択される。
【0018】
複数のノードが選択されると、これらの複数のノードの中から、出発点O(Origin)及び到着点D(Destination)とする2つのノードのペア(OD)を選択し(ステップS1103)、これら2つのノード間の最短経路を算出して(ステップS1104)、算出された最短経路を通るリンクを最短経路表に記録する(ステップS1105)。そして、すべての出発点O及び到着点Dのペアについて最短経路を通るリンクを算出して最短経路表に記録する処理を行い(ステップS1106)、すべての出発点O及び到着点Dのペアに係る処理が完了すると、最短経路表作成処理は終了となる。例えば
図3の例において複数のノードとしてノードN1〜N9が選択されている場合、ノードN1を出発点Oとしてその他のノードN2〜N9のそれぞれを到着点Dとしたペアの最短経路を通るリンク、ノードN2を出発点Oとしてその他のノードN1、N3〜N9のそれぞれを到着点Dとしたペアの最短経路を通るリンク、・・・、ノードN9を出発点Oとしてその他のノードN1〜N8のそれぞれを到着点Dとしたペアの最短経路を通るリンクが最短経路表に記録される。
【0019】
なお、ステップS1103で選択する2つのノードのペア(OD)は、方向(配列)の違う場合は、異なるペアとして取り扱う。すなわち、例えばノードN1を出発点OとしてノードN9を到着点Dとしたペアと、ノードN9を出発点OとしてノードN1を到着点Dとしたペアとは、同一のノードのペアが選択されているものの、出発点O及び到着点Dが異なることから異なるペアとして最短経路表に記録される。
【0020】
図4は、本発明の実施の形態における最短経路表作成処理で作成された最短経路表の一例を示す図である。上述した最短経路表作成処理(
図3に示すフローチャートの処理)によって、例えば、
図4に模式的に示されているような最短経路表が作成される。なお、
図4の最短経路表には、経路R1〜R5の情報のみが示されているが、実際にはさらに多数の経路(出発点Oと到着点Dとのペア)の情報が存在している。
【0021】
また、
図5は、
図4に示す最短経路表に経路の情報として含まれている経路R1〜R5を示す図である。経路R1は、ノードN2を出発点OとしてノードN8を到着点Dとした場合の経路であり、リンクL2、L3、L6.L7、L9を経由する。
図4に示す最短経路表には、経路R1の情報として、経由するリンク順が分かるように、リンクL2に「0」、リンクL3に「1」、リンクL6に「2」、リンクL7に「3」、リンクL9に「4」の各情報が記録される。また、経路R2は、ノードN2を出発点OとしてノードN9を到着点Dとした場合の経路であり、同様に、リンクL2に「0」、リンクL3に「1」、リンクL6に「2」、リンクL7に「3」、リンクL10に「4」の各情報が記録される。また、経路R3は、ノードN2を出発点OとしてノードN5を到着点Dとした場合の経路であり、同様に、リンクL2に「0」、リンクL4に「1」の各情報が記録される。また、経路R4は、ノードN1を出発点OとしてノードN5を到着点Dとした場合の経路であり、同様に、リンクL1に「0」、リンクL3に「1」、リンクL5に「2」の各情報が記録される。また、経路R5は、ノードN9を出発点OとしてノードN1を到着点Dとした場合の経路であり、同様に、リンクL10に「0」、リンクL7に「1」、リンクL6に「2」、リンクL3に「3」、リンクL1に「4」の各情報が記録される。
【0022】
なお、上述した最短経路表の作成処理において、ネットワーク内の多数のノードを選択して、これら多数のノードのペアについて経路計算を行う必要があるが、ノードの個数が多い場合にはペアの数が膨大となり、その計算に膨大な時間を要してしまう可能性がある。例えばフロイド−ワーシャル(Froyd-Warshall)法を用いて計算した場合には、ノードの個数をNとすると計算時間はN^3(ノード数の3乗のオーダー)となってしまう。このような膨大な計算量及び計算時間を低減させるための工夫を加えることが望ましく、例えばノード及びリンクによって構成されるネットワークを作成する際に、主要な交差点や地物などを選択してノードを設定したり、あるいは、経路計算を行う対象として選択されるノード(出発点O及び到着点Dとするノード)を主要な交差点や地物などが存在するノードのみに限定したりしてもよい。また、例えば特開2012−215571号公報に開示されているように、地図をブロック単位で粗視化して、ブロック単位の経路計算とブロック内の経路計算とを分けて行うことによって、経路計算の簡略化を図ってもよい。さらに、同一ノード間の経路であるが出発点O及び到着点Dが逆になっている経路は、同一リンクを反対方向にたどる対称性を有している。したがって、一方の最短経路を計算した後、リンクの順序を逆にすることでもう一方の最短経路を得るようにしてもよい。
【0023】
<経路推定処理>
次に、
図1のステップ12における経路推定処理について説明する。経路推定処理は、移動体の移動時に捕捉された位置情報と上述した最短経路表とを用いて、移動体が移動した経路を推定する処理である。また、推定された経路に基づいて、移動体の目的地や出発地並びに通過地点の推定、移動体が通過した前リンクや移動体がこれから通過する次リンクの推定、さらには、位置情報に関連付けられた時間情報を参照することで、移動体の現在位置の推定などを行うことも可能である。
図6は、
図1に示す経路推定処理で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【0024】
図6に示すように、経路推定処理では、まず移動体の位置捕捉リンク系列を取得する(ステップS1201)。位置捕捉リンク系列は、異なる時間において捕捉された移動体の位置情報から特定される、移動体によるリンク間の移動履歴(少なくとも2つの異なるリンクIDを含む)である。なお、本発明では、移動体の位置捕捉リンク系列の取得方法として、任意の方法を採用してもよい。例えば、移動体と共に移動する移動装置(移動体が車両の場合には車載装置、移動体が人の場合には携帯端末などによって実現可能)がGPS(Global Positioning System:グローバル・ポジショニング・システム)機能を備え、GPS機能によって取得した現在位置情報を蓄積することで、現在位置に至るまでに通ったリンクや現在位置しているリンクの特定ができるようにしてもよい。また、リンクと関連付けられている道路上にリンクIDを含む位置情報を出力する装置(基地局など)を設置し、移動体の移動装置が路側から受信した位置情報を蓄積することで位置捕捉リンク系列を作成できるようにしてもよい。さらには、リンクと関連付けられている道路上に移動体の移動装置の識別情報を受信する装置を設置し、当該移動装置からの識別情報の受信履歴を特定のセンタなどに集約させることで、移動体によるリンク間の移動を監視(トレース)できるようにしてもよい。
【0025】
次に、上述の最短経路表作成処理で作成された最短経路表を参照し、移動体の位置捕捉リンク系列とマッチングを行う(ステップS1202)。最短経路表は、
図4に示すように各ノード間の最短経路が経由するリンクの順序(リンク系列)が記載されており、一方、移動体の位置捕捉リンク系列にも移動体が通過したリンクの順序が記載されている。ステップS1202におけるマッチング処理では、移動体の位置捕捉リンク系列に合致する経路を最短経路表内から抽出する処理が行われる。そして、最短経路表内の各経路のリンク系列と移動体の位置捕捉リンク系列との一致率を計算する(ステップS1203)。以下、ステップS1202のマッチング処理及びステップS1203の一致率計算処理について具体的な例を挙げながら説明する。
【0026】
図7は、
図6のステップS1202のマッチング処理及びステップS1203の一致率計算処理の説明に用いられる、移動体の位置捕捉リンク系列の一例を示す図である。例えば、
図7に示すように、移動体がある時点でリンクL3上に存在し、その後、別の時点でリンクL6上に存在しているとする。すなわち、移動体の位置捕捉リンク系列Sは(P1,P2)=(L3,L6)と表せる。なお、ここでは、移動体の位置捕捉リンク系列Sが、2地点(リンクL3及びL6を通過)の情報を有する場合を一例として説明しているが、より多数の地点における情報を含んだ位置捕捉リンク系列Sを用いてもよい。より多数の地点における情報を用いることで経路推定の精度を向上させることが可能となる。
【0027】
また、
図8は、
図6のステップS1202のマッチング処理及びステップS1203の一致率計算処理によって得られる結果の一例を示す図である。最短経路表内の各経路のリンク系列と移動体の位置捕捉リンク系列との比較を行う際には、最短経路表内の各経路を構成するリンクが、移動体の位置捕捉リンク系列に含まれるリンクと合致するかどうかを判断する。経路のリンク系列のリンクと移動体の位置捕捉リンク系列のリンクに重なりがある場合には、移動体の移動軌跡が、その経路の一部(重なりのあるリンク)を移動していることを示しており、一致したリンクとしてカウントされる。さらに、合致したリンクが現れる順序を考慮することが重要である。経路のリンク系列のリンクの順序は経路の方向を表しており、位置捕捉リンク系列のリンクの順序は移動体の移動方向を表している。両者のリンクの順序が反対である場合には、経路と移動体の移動方向は逆向きであることを示唆しており、合致しないものと判断できる。
【0028】
経路R1、R2は、最短経路表内の各経路を構成するリンクが、移動体の位置捕捉リンク系列に含まれるリンクと合致し、リンクが現れる順序も一致している。したがって、移動体の位置捕捉リンク系列と経路R1、R2との一致率は高く見積もられる。また、経路R3は、移動体の位置捕捉リンク系列に含まれるリンクと合致するものはなく、一致率は低く見積もられる。また、経路R4は、移動体の位置捕捉リンク系列に含まれるリンクとP1=L3においてのみ合致しており、一致率は、経路R1、R2よりは低く、経路R3よりは高く見積もられる。また、経路R5は、リンクL6を通過してからリンクL3に侵入することを表している。一方、位置捕捉リンク系列Sは(P1,P2)=(L3,L6)であり、移動体はリンクL3を通過してからリンクL6に侵入していることを表しており、経路R5と移動体の位置捕捉リンク系列とは逆向きである。このように、位置捕捉リンク系列のいずれかの箇所において、最短経路表内の経路を構成するリンク系列の順序が逆になっている部分(時系列上、リンクに侵入した時間が逆)が見つかった場合には、一致率を0%(推定候補から除外)としてもよい。一致率の計算の一例として、例えば下記の計算式を用いることが可能である。
【0030】
上記の数式において、Sは位置捕捉リンク系列である。各要素P1,P2...には捕捉された移動体の位置情報(リンクID)が含まれる。また、Niは位置捕捉リンク系列Sと経路Riのリンク一致数であり、|S|はSに含まれるリンク数(要素数)である。したがって、Miは位置捕捉リンク系列に含まれているリンクの個数に対して、経路Riに含まれるリンクがどの程度合致しているかを示す割り合いを表している。上記の数式を用いると、
図8に示すように、経路R1、R2の一致率は100%、経路R3の一致率は0%、経路R4の一致率は50%と計算される。
【0031】
なお、移動体の移動時に捕捉される位置情報は、各リンク上で必ずしも取得できるわけではなく、不連続に捕捉される(例えば、リンクを1つ飛ばして次のリンクで捕捉)可能性がある。このように、移動体が、その移動を不連続にトレースされた場合であっても、リンクの順序に不整合が無い限り、移動体の位置捕捉リンク系列に含まれるリンクが、最短経路表内の経路を構成するリンクと合致していると判断することができる。
【0032】
上述のように、最短経路表内の各経路のリンク系列と移動体の位置捕捉リンク系列とのマッチング処理を行って各リンクに関する一致率が得られるが、この一致率に基づいて、最大一致率の経路を選択するか、あるいは経路確率を求めてもよい(ステップS1204)。ステップS1204の処理で得られた最大一致率の経路に関する情報、又は、各経路に係る経路確率に関しては、例えばユーザへの報知やナビゲーションシステムへの供給、メモリへの蓄積などが可能である。また、後述の本発明に係る応用例で説明する用途で2次利用されてもよい。
【0033】
最大一致率の経路を選択する場合には、上記の数式で各経路に関して得られた一致率を比較して、一致率が最も高い経路を選択して出力を行ってもよい。経路確率を求める場合には、例えば下記の数式を用いて、各経路に係る経路確率(下記の数式から分かるとおり、各経路Riに対する一致率が確率として計算された結果)を計算してもよい。また、最終的に候補として決定すべき経路の数や、経路確率に係る閾値などをあらかじめ設定しておき、これらの条件を満たす経路(条件を満たす経路が1つのみの場合もあり、複数存在する場合もある)を出力してもよい。
【0035】
なお、本発明の実施の形態によって得られる推定経路(移動体の移動経路として推定された推定経路)は、事前に準備された最短経路表の中から選択されたものである。最短経路表に含まれている経路は、任意の2つのノードのペアにおけるノード間の最短経路であり、最短経路表の中から経路を選択した場合、同時に、端点である2つのノードを選択することになる。したがって、本発明の実施の形態では、経路を推定することによって、同時に出発点及び到着点の推定も行っていると言える。
【0036】
ある特定の位置捕捉リンク系列のみを処理対象として、当該位置捕捉リンク系列から移動体の経路を推定する場合には、経路推定処理は終了となる(ステップS1205)。一方、例えば移動中の移動体に係る経路を推定することを目的とし、新たに位置捕捉リンク系列を取得できる場合には、位置捕捉リンク系列をアップデートして(ステップS1206)、再び、上述したステップS1201以降の処理を繰り返し行うようにしてもよい。
【0037】
<応用例>
次に、本発明に係る応用例について説明する。上述のように、本発明の実施の形態では、移動体の位置捕捉リンク系列を入力として、最短経路表内のリンク系列とのマッチングが行われ、その結果、最大一致率の経路(最も条件を満たすと推定される経路、ただし、1つのみではなく複数存在する場合もある)、あるいは経路確率(各経路の一致率の確率表現)が得られる。例えば、
図8に示すマッチングの例では、最大一致率の経路として、一致率100%の経路R1、R2が得られる。また、経路確率として、
図8の右側に記載されている各リンクの一致率から計算される各リンクに係る確率が得られ、例えば最も高い確率のリンクを選択した場合には、最大一致率の経路の選択と同様に経路R1、R2が得られる。このようにして得られた経路を利用して、移動体がこれから移動すると予測される経路を推定することが可能である。
【0038】
図7のネットワーク構造を参照すると、最後に移動体の位置が捕捉された地点P2(リンクL6上)から、ノードN6、リンクL7を通って、リンクL9及びノードN8、あるいはリンクL10及びノードN9へ向かうことが推定できる。また、このとき、移動体の目的地又は経由地点をノードN6、N7、N8、N9のいずれかであると推定することも可能である。また、最初に移動体の位置が捕捉された地点P1(リンクL3上)から遡った過去の経路を推定することも可能である。過去の経路として、移動体は、リンクL1及びノードN1、あるいは、リンクL2及びノードN2からノードN3を通って地点P1へ到来したことが推定できる。また、このとき、移動体の出発地又は経由地点をノードN1、N2、N3のいずれかであると推定することも可能である。さらに、移動体の位置が捕捉された地点P1から地点P2までの経路を推定することも可能である。移動体は、地点P1から地点P2までの間に、ノードN4を通過したことが推定できる。また、経路確率を利用することによって、移動体の現在の位置から次にどのリンクに進むかの確率を得ることも可能である。
【0039】
さらに、位置捕捉リンク系列に含まれる情報が時間情報と関連付けられている場合には、2点間の距離とその距離の移動に要した時間が把握できることから、所定の時間における移動体の位置を推定することも可能である。例えば
図7において、移動体は時刻T1に地点P1に位置し、時刻P2に時刻T2に位置していたとする。このとき、移動体の速さV=(P1とP2との距離)/(T2−T1)と推定でき、時刻T2からの経過時間T後には、移動体は、地点P2から距離V×Tだけ離れた地点(推定された経路上)に位置していると推定できる。
【0040】
なお、
図7を参照した場合、ノード数及びリンク数が少なく、ネットワーク構造が単純であり、また、位置捕捉リンク系列の要素数も少ない(2点のみ)なので、上述の応用例に係る推定結果を直感的に得ることができる。しかしながら、実際のネットワークは複雑であり、こうした推定結果を正確に把握することは容易ではない。本発明では、定量的な計算に基づいて経路推定を行うことで、直感的に経路推定が不可能な複雑なネットワーク構造における経路推定、要素数の多い位置捕捉リンク系列を用いた経路推定を実現可能としている。
【0041】
また、ネットワークが大きければ大きいほど、あるいは、位置捕捉リンク系列の要素数が少なければ少ないほど、推定される経路の数や推定される経由ノード及び経由リンクの数は膨大になる。膨大な数の経路を更に選別するために、例えば、ナビゲーションシステムに設定された目的地情報を参照してもよく、移動体の移動傾向(過去に経由したことのある立ち寄りポイントや過去に設定されたことのある目的地の履歴)などを参照してもよい。さらに、移動体の移動経路と推定される経路の候補を、移動体が現在存在していると推定される位置から所定の距離内に存在するランドマークを経由した経路に絞り込んでもよい。
【0042】
<システム構成例>
次に、本発明の実施の形態におけるシステム構成例について説明する。
図9は、本発明の実施の形態におけるシステム構成の一例を示すブロック図である。
図9に図示されているシステムは、最短経路表作成装置10、位置捕捉装置30、経路推定装置50によって構成されている。
【0043】
最短経路表作成装置10は、
図1のステップ11における経路表作成処理、及び
図2のフローチャートに係る処理を実行することが可能な装置であり、ノード及びリンク設定部11、ノードペア選択部12、最短経路計算部13、最短経路出力部14を有している。
【0044】
ノード及びリンク設定部11は、道路地図データなどを用いて、交差点や地物などの位置にノードを設定し、ノードに対応する位置を結ぶ道路をリンクと設定することで、ノード及びリンクによって構成されるネットワークを作成する機能を有する。ノードペア選択部12は、ノード及びリンクによって構成されるネットワークを参照して、任意の2点のノードのペアを選択する機能を有する。最短経路計算部13は、ノードペア選択部12で選択された2点のノードのペアのうちの一方を出発点、他方を到着点Dとして、これらのノード間を結ぶ最短経路を算出する機能を有する。最短経路出力部14は、最短経路計算部13で算出された最短経路に関する情報(最短経路が経由するリンクを識別するためのリンクIDと、経由するリンクの順序とが特定可能なリンク系列)を出力する機能を有する。最短経路出力部14から出力された最短経路に関する情報は、例えば不揮発性メモリなどを用いた最短経路表格納部20に記録される。ノード及びリンクによって構成されるネットワークは、多数のノード及びリンクによって構成されており、ノードペア選択部12は多数のノードの中から2点のノードのペアを順次選択し、最短経路計算部13は2点のノードのペアに関する最短経路を順次算出することが可能である。これによって、一方を出発点Oとし他方を到着点Dとするノードのペアの最短経路に関する情報が最短経路表として蓄積される。
【0045】
また、位置捕捉装置30は、移動体の位置を捕捉することが可能な装置であり、位置捕捉部31、位置捕捉リンク出力部32を有している。位置捕捉部31は、移動体が存在する位置を示す位置情報(移動体がどの道路上に位置しているかを特定できる情報)を取得する機能を有する。移動体の位置の特定には任意の技術を用いることが可能である。位置捕捉リンク出力部32は、位置捕捉部31によって取得された移動体の位置情報に対応するリンク(位置捕捉リンク)を示す情報を出力する機能を有する。位置捕捉リンク出力部32から出力された位置捕捉リンクを示す情報は、例えば不揮発性メモリなどを用いた位置捕捉リンク系列格納部40に記録される。位置捕捉装置30による移動体の位置の捕捉及び位置捕捉リンクを示す情報の出力は断続的に行われ、位置捕捉リンク系列格納部40には、少なくとも時系列の順序(位置が捕捉された順序)が特定できるような状態で、複数の位置捕捉リンク(移動体の移動軌跡を示す位置捕捉リンク系列)が蓄積される。なお、位置捕捉を行った時間を示す情報が位置捕捉リンクを示す情報に関連付けられていてもよい。
【0046】
また、経路推定装置50は、
図1のステップ12における経路推定処理、及び
図6のフローチャートに係る処理を実行することが可能な装置であり、マッチング部51、一致率計算部52、経路推定結果出力部53を有している。
【0047】
マッチング部51は、最短経路表格納部20に格納されている最短経路表と、位置捕捉リンク系列格納部40に記録されている位置捕捉リンク系列とを読み込んで、これらの情報の比較を行う機能を有する。最短経路表内の各最短経路には、各最短経路が経由するリンクを識別するリンクIDが含まれており、位置捕捉リンク系列には、移動体が位置していたリンクを識別するリンクIDが含まれている。マッチング部51は、各最短経路に関して、位置捕捉リンク系列と同一のリンクを経由する数(重なり合うリンクが存在する数)をカウントする。また、マッチング部51は、各最短経路のリンクの順序(経路方向に対応)と、位置捕捉リンク系列のリンクの順序(移動体の移動方向に対応)のマッチングを行うことが可能である。
【0048】
一致率計算部52は、マッチング部51によるマッチング結果を一致率として出力する機能を有する。各最短経路の一致率は、例えば、各最短経路と位置捕捉リンク系列との間で重なりのある一致リンク数から計算することが可能である。また、位置捕捉リンク系列のリンクの順序に対して逆向きのリンクの順序を有する最短経路に関しては、その一致率を低く見積もるようにしてもよい。
【0049】
経路推定結果出力部53は、位置捕捉リンク系列格納部40に記録されている位置捕捉リンク系列(移動体の移動軌跡)から推定された経路推定結果を出力する機能を有する。経路推定装置50は、最短経路表を用いた経路推定処理によって、移動体の移動軌跡の一部(移動体が存在していたリンク)から移動体の移動軌跡の全体を推定することが可能である。経路推定結果出力部53は、経路推定結果として、例えば最も一致していると推定される経路を選択して出力してもよく、あるいは、移動体の移動軌跡との一致率と共に多数の経路候補を共に出力してもよい。経路推定結果出力部53から出力された経路推定結果は、例えば、ユーザなどに報知されてもよく、2次利用のために別の機構(例えばナビゲーションシステム)に供給されてもよい。
【0050】
なお、最短経路表作成装置10、位置捕捉装置30、経路推定装置50はそれぞれ独立した装置によって実現されてもよく、あるいは、いずれか2つ以上(例えば、位置捕捉装置30と経路推定装置50)が同一の装置に実装されてもよい。また、
図9では機能ブロックを用いてシステム構成を表しているが、各機能ブロックに係るプログラムを作成してコンピュータのCPU(中央集積部:Central Processing Unit)に実行させることで実現されてもよく、各機能ブロックを集積回路によって構成してもよい。また、各装置に接続されている表示装置(ディスプレイなど)や入力装置(マウスやキーボードなど)を用いて、オペレータが各機能に係る設定や各機能における処理タイミングなどを適宜制御できるようにしてもよい。