(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454258
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】乗客コンベアの踏板レール組立方法及び乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 23/14 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
B66B23/14 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-227764(P2015-227764)
(22)【出願日】2015年11月20日
(65)【公開番号】特開2017-95222(P2017-95222A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 直子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和彰
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−187556(JP,A)
【文献】
特開2000−016738(JP,A)
【文献】
特開2005−112602(JP,A)
【文献】
特開2003−336610(JP,A)
【文献】
特開2005−053660(JP,A)
【文献】
特開2011−026083(JP,A)
【文献】
特開2005−225600(JP,A)
【文献】
特開2012−012225(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/033637(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏板と、前記踏板が走行する踏板レールとを備えた乗客コンベアの踏板レール組立方法であって、
前記踏板レールは、前記踏板の走行方向に沿って並べられた複数のレール部材を有し、各レール部材は、前記踏板の走行面であるレール下面と、レール側面と、レール上面とを有する構造体から成り、
隣接する前記レール部材を、接続部材を介して繋いだ後、特殊ボルト及びナットを用いて前記レール部材を前記接続部材に固定することにより前記踏板レールが組み立てられ、
前記接続部材は、前記レール下面、前記レール側面、及び前記レール上面にそれぞれ当接する断面コ字状であり、
前記特殊ボルトは、一端側に前記ナットと締結するネジ部が形成され、他端側に鍔部が一体的に設けられた軸部を有し、
前記鍔部は、前記軸部の回転位置に応じて前記レール下面及び前記レール上面に同時に当接することが可能な形状から成り、
前記接続部材を前記隣接するレール部材の接続部に嵌めて、前記特殊ボルトの前記鍔部が前記レール側面の内側に位置するようにして、前記特殊ボルトを前記レール側面及び前記接続部材に貫通させるステップと、
前記特殊ボルトを前記ナットで締め付け、前記鍔部で前記レール下面及び前記レール上面を押圧して変形させながら、前記鍔部を前記レール下面、前記レール上面、及び前記レール側面にそれぞれ圧接させることで前記隣接するレール部材を前記接続部材に固定するステップと、により前記踏板レールを組み立てるようにしたことを特徴とする乗客コンベアの踏板レール組立方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記接続部材には、前記レール下面の高さを調整するための高さ調整機構が設けられ、
前記高さ調整機構により前記レール下面の高さを調整するステップをさらに含むことを特徴とする乗客コンベアの踏板レール組立方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記レール部材の板厚は前記接続部材の板厚より薄いことを特徴とする乗客コンベアの踏板レール組立方法。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記鍔部は、長辺が前記レール下面から前記レール上面までの高さより長く、短辺が前記レール下面から前記レール上面までの高さより短い、長方形あるいは平行四辺形の板状体から成り、
前記板状体から成る前記鍔部の角部が前記レール下面及び前記レール上面を押圧して変形させるようにしたことを特徴とする乗客コンベアの踏板レール組立方法。
【請求項5】
踏板と、前記踏板が走行する踏板レールとを備えた乗客コンベアであって、
前記踏板レールは、前記踏板の走行方向に沿って並べられた複数のレール部材を有し、各レール部材は、前記踏板の走行面であるレール下面と、レール側面と、レール上面とを有する構造体から成り、
隣接する前記レール部材の接続部に嵌合する接続部材と、
前記レール部材を前記接続部材に固定するための特殊ボルト及びナットと、
を有し、
前記接続部材は、前記レール下面、前記レール側面、及び前記レール上面にそれぞれ当接する断面コ字状であり、
前記特殊ボルトは、一端側に前記ナットと締結するネジ部が形成され、他端側に鍔部が一体的に設けられた軸部を有し、
前記鍔部は、前記軸部の回転位置に応じて前記レール下面及び前記レール上面に同時に当接することが可能な形状から成り、
前記特殊ボルト及び前記ナットによって前記レール部材が前記接続部材に固定された状態において、前記鍔部により前記レール下面、前記レール上面、及び前記レール側面がそれぞれ圧接されていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項6】
請求項5において、
前記接続部材は、前記レール下面の高さを調整するための高さ調整機構を有することを特徴とする乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターや動く歩道などの乗客コンベアと、乗客コンベアの踏板が走行する踏板レールの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターや動く歩道などの乗客コンベアは、建築構造物に設置され、複数の踏板が乗客コンベアの主枠内に設置された踏板レール上を走行する。踏板レールには、乗客が乗る踏板を案内する往路レールと乗客の乗った後の踏板を送る復路レールがある。これらレールは、主枠の長さによって予め定めた長さで切断されており、1台の乗客コンベアにおいて、複数のレール部材を踏板の走行方向に沿って並べ、隣接するレール部材同士を接続することで1つの往路レールあるいは復路レールが完成する。隣接するレール部材同士を接続する構造として、例えば特許文献1が公知である。
【0003】
この特許文献1には、「踏板レールに取付金具を第二種締結具により仮締結し主枠の中間材に対応した位置に配置して、仮締結した取付金具の取付部を中間材面に配置し、取付部を第一種締結具によって中間材に締結する。そして、取付金具に対する所定位置に踏板レールを第二種締結具により正式に締結して、主枠に対して踏板レールを所定位置に装着する」構成が記載されている(要約参照)。この特許文献1の構成によれば、主枠に対して踏板レールを所定位置に容易に装着することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−53660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、踏板レールを取付金具に締結具で締め付けて固定する構成であるため、踏板レールの走行面(踏板ローラが走行する面)が締結具により変形し、踏板の走行が滑らかでないといった課題がある。また、踏板レールが変形することで踏板レールの接続部に段差が生じてしまうと、その調整に手間が掛かり、踏板レールの組立作業効率が低下するという課題もある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、踏板が走行する踏板レールの走行面の変形を抑えることができ、かつ、踏板レールの組立作業効率の高い乗客コンベアの踏板レール組立方法及び乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、代表的な本発明は、踏板と、前記踏板が走行する踏板レールとを備えた乗客コンベアの踏板レール組立方法であって、前記踏板レールは、前記踏板の走行方向に沿って並べられた複数のレール部材を有し、各レール部材は、前記踏板の走行面であるレール下面と、レール側面と、レール上面とを有する構造体から成り、隣接する前記レール部材を、接続部材を介して繋いだ後、特殊ボルト及びナットを用いて前記レール部材を前記接続部材に固定することにより前記踏板レールが組み立てられ、前記接続部材は、前記レール下面、前記レール側面、及び前記レール上面にそれぞれ当接する断面コ字状であり、前記特殊ボルトは、一端側に前記ナットと締結するネジ部が形成され、他端側に鍔部が一体的に設けられた軸部を有し、前記鍔部は、前記軸部の回転位置に応じて前記レール下面及び前記レール上面に同時に当接することが可能な形状から成り、前記接続部材を前記隣接するレール部材の接続部に嵌めて、前記特殊ボルトの前記鍔部が前記レール側面の内側に位置するようにして、前記特殊ボルトを前記レール側面及び前記接続部材に貫通させるステップと、前記特殊ボルトを前記ナットで締め付け、前記鍔部で前記レール下面及び前記レール上面を押圧して変形させながら、前記鍔部を前記レール下面、前記レール上面、及び前記レール側面にそれぞれ圧接させることで前記隣接するレール部材を前記接続部材に固定するステップと、により前記踏板レールを組み立てるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、踏板が走行する踏板レールの走行面の変形を抑えることができ、しかも、踏板レールの組立作業の効率を高めることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例であるエスカレーターの側面図である。
【
図4】
図3に示す復路レール及びブラケットの接続部をC方向から見た断面図である。
【
図5】
図4に示す復路レール及びブラケットの寸法関係を示す図である。
【
図6】
図4に示す復路レール及びブラケットをX方向から見た側面図である。
【
図8】第2実施例に係る復路レールの接続部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る乗客コンベア及びその踏板レールの組立方法の実施例を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施例であるエスカレーターの側面図、
図2は
図1のA−A断面図である。
【0011】
エスカレーター(乗客コンベア)1は、建築構造物の上階床2と下階床3を跨ぐように設置される。上階床2と下階床3を上下に跨ぐ本体枠4には、無端状に連結された複数の踏板5が、上階と下階にわたって、斜め上方向、または斜め下方向に循環移動する。無端状に連結された踏板5は、本体枠4に取り付けた走行レール(7,8,9,10,11,12)上を走行する。
【0012】
走行レールは本体枠4の左右に配置され、複数の踏板5の往路側を案内する往路レール7,8と、複数の踏板5の復路側を案内する復路レール(踏板レール)9,10,11,12を有している。複数の踏板5は往路レール7,8と復路レール9,10,11,12を循環移動し、乗客は往路側を移動する踏板5によって輸送される。乗客を輸送した後の踏板5は本体枠4の一端に設置されたスプロケット6によって復路側へ送られる。
【0013】
次に、復路レール9,10,11,12の接続部の構造について説明する。なお、復路レール9,10,11,12の接続部の構造は何れも共通であるため、以下、復路レール9を例に挙げて説明する。
図3は復路レール9の接続部を示す斜視図、
図4は
図3に示す復路レール9及びブラケット19の接続部をC方向から見た断面図である。また、
図5は
図4に示す復路レール9及びブラケット19の寸法関係を示す図、
図6は
図4に示す復路レール9及びブラケット19をX方向から見た側面図、
図7は
図4のY−Y断面図である。
【0014】
図3に示すように、復路レール9は、踏板5の進行方向(長手方向)に沿ってレール部材9a,b・・・を一列に並べ、隣接するレール部材9a,9bの接続部(端部)をブラケット(接続部材)19で固定することにより組み立てられる。より具体的には、復路レール9は、本体枠4に固定したレール支持ユニット15に締結具によって固定され、互いに接する2本のレール部材(以下、レールという)9a,9bはレール支持ユニット15との固定部と離れた位置で、宙に浮いた状態で接続される。本体枠4の長さに準じて予め定められた長さに切断された複数のレール9a,9bが連続して長手方向に配置され、各レールの端部同士がブラケット19にて固定されることで1つの復路レール9となる。
【0015】
レール9a,9bの形状について
図5を用いて詳しく説明すると、レール9a,9bは、踏板5のローラ14a,14b(
図2参照)の走行面となるレール下面S1と、レール側面S2と、レール側面S2より内側に位置するガイド側面S4と、レール上面S3とを有し、全体としてL字形状を成していると共に、レール側面S2とレール上面S3とガイド側面S4とで仕切られた内部に空間SPが形成された中空の構造体となっている。なお、S1’はレール下面S1のうち空間SP内に形成される面のことである。ここで、レール9a,9bは、板厚t2の板材を折り曲げ加工して、
図5に示す形状に成形される。そして、空間SPに後述する特殊ボルト17a,17bの頭部21a,21bが収容される。
【0016】
また、レール9a,9bのレール側面S2には長手方向に沿って直線状にスリット30が形成され、後述するブラケット19のブラケット側面S12には、スリット30と対応する位置にボルト穴31が設けられている。スリット30の幅及びボルト穴31の直径は、何れも特殊ボルト17a,17bの軸部23a,23bの直径よりやや大きい寸法となっている。
【0017】
ブラケット19は、レール下面S1と当接するブラケット下面S11と、レール側面S2と当接するブラケット側面S12と、レール上面S3と当接するブラケット上面S13とを有して、断面コ字状に形成される。より詳細には、板厚t1の板材をコ字状に折り曲げ加工して、
図5に示す形状に成形される。なお、ブラケット19の板厚t1よりレール9a,9bの板厚t2の方が小さい(t1>t2)。
【0018】
そして、
図6に示すように、ブラケット側面S12には、2つのボルト穴31が設けられている。一方のボルト穴31はレール9aを接続するためのもので、他方のボルト穴31はレール9bを接続するためのものである。
【0019】
ここで、ブラケット19の高さ(開口部寸法)L1はマイナス公差で製作され、レール9a,9bの高さ(接続部寸法)L2はプラス公差で製作されている。つまり、製作公差を考慮すると、実際の寸法関係がL1≦L2となっている。これにより、ブラケット19をレール9a,9bに嵌め込んだ状態において、両者間のガタツキは防止される。すなわち、ブラケット19をレール9a,9bに嵌め込むだけで、ブラケット19の位置決めがなされる。
【0020】
また、ブラケット19を曲げ成形するときの曲げ半径R1とレール9a,9bの曲げ半径にレール厚みt2を加算した曲げ部分の半径R2が略一致するように製作されている。これにより、ブラケット19をレール9a,9bに嵌め込んだ際に、両者の曲げ部での密着が増し、部材同士の隙間をなくすことができる。なお、ブラケット19は、ブラケット下面S11と、ブラケット側面S12と、ブラケット上面S13とにより、断面形状が概ねコ字状に形成されていれば良く、切断箇所によっては断面形状が厳密にコ字状となっていなくても良い。例えば、表面の一部に切欠きが設けられていても良く、また、表面の一部に凹凸が設けられていても良い。
【0021】
次に、
図3,4,7を用いて、特殊ボルト17a,17bの構造について説明する。なお、特殊ボルト17aと特殊ボルト17bとは同じ構造であるため、以下では特殊ボルト17bについて説明し、特殊ボルト17aについての説明は省略する。
図4に示すように、特殊ボルト17bは、一端側にナット25bと締結するネジ部22bが形成され、他端側に鍔部18bが一体的に設けられた軸部23bと、この軸部23bの他端側に設けられた頭部21bと、を有する。この特殊ボルト17bは、頭部21bと鍔部18bがレール9bの空間SP内に位置した状態で、ブラケット側面S12のボルト穴31とレール側面S2のスリット30を貫通する。つまり、特殊ボルト17bは、
図3,4に示すように、レール側面S2及びブラケット側面S12に直交する方向に挿入される。
【0022】
鍔部18bの形状について
図7を用いて詳しく説明すると、鍔部18bは、長辺がレール下面S1’からレール上面S3までの高さからレールの板厚t2を除いた高さL2’より長く、短辺が高さL2’より短い、略平行四辺形の板状体で構成される。よって、鍔部18bの長辺が横方向を向く位置では鍔部18bはレール下面S1’及びレール上面S3に接触することはないが、鍔部18bの長辺が縦方向を向き位置では、鍔部18bの長辺が高さL2’より長いため、鍔部18bの下部と上部がそれぞれレール下面S1’とレール上面S3に接触することとなる。つまり、特殊ボルト17bの軸部23bの回転位置に応じて、鍔部18bがレール下面S1’、レール上面S3と接触する場合とそうでない場合とが生じる。なお、鍔部18bは特殊ボルト17bの軸部23bに溶接等により接合されている。そのため、特殊ボルト17bが回転すると、その回転に伴って一体的に回転する。
【0023】
次に、復路レール9の組立方法について説明する。特殊ボルト17a,17bの鍔部18a,18bの長辺が水平方向を向くようにした状態で、レール9a,9bの空間SPの開口(長手方向の端面)から特殊ボルト17a,17bの頭部21a,21bが空間SPに収容され、かつ、ネジ部22a,22bがスリット30内を移動するように、予め特殊ボルト17a,17bをレール9a,9bの空間SP内に装着する。
【0024】
そして、レール9aとレール9bとの接続部にブラケット19を外側から嵌め込む。このとき、特殊ボルト17a,17bのネジ部22a,22bがブラケット19のボルト穴31から突出するようにする。
【0025】
その後、ネジ部22a,22bに平座金27a,27b、バネ座金26a,26bを順に嵌めて、最後にナット25a,25bをネジ部22a、22bに嵌めて、特殊ボルト17a,17bをナット25a,25bで締め付けていく。そのうち、
図4,7に示すように、鍔部18a,18bの長辺が垂直方向を向いた状態となるが、所定の締付トルクとなるまでナット25a,25bを締め付ける。
【0026】
すると、鍔部18a,18bの長辺はL2’より長いため、鍔部18a,18bの角部118a,118bがレール9a,9bのレール下面S1’及びレール上面S3を押圧して変形させる。より詳細には、レール上面S3は
図4の矢印D方向に変形し、レール下面S1’は
図4の矢印E方向に変形する。これにより、レール9a,9bとブラケット19との上下方向の位置が固定される。ここで、角部118a,118bでレール下面S1’を押圧しているため、締付トルクを大きくしなくても、角部118a,118bの面圧を上げることができ、レール9a,9bとブラケット19との固定を強固にすることができる。
【0027】
また、ナット25a,25bで特殊ボルト17a,17bを締め付けることにより、レール側面S2は、
図4の矢印F方向に鍔部18a,18bの面圧がかかって変形する。その結果、レール9a,9bとブラケット19との左右方向の位置が固定される。
【0028】
このとき、ブラケット19の板厚t1がレールの板厚t2より厚いので、鍔部18a,18bによってレール9a,9bは変形するが、ブラケット19は変形しない。よって、レール9a,9bとブラケット19とは確実に固定される。しかも、踏板5のローラ14a,14bが走行するレール下面S1には鍔部18a,18bにより圧接されていない(特殊ボルト17a,17bにより圧接されるのはレール下面S1’である)から、レール下面S1は変形を防止できる。そのため、踏板5の走行は良好に維持される。
【0029】
以上のように、本実施例では、レール9a,9bの接続部にブラケット19を嵌め込んで、特殊ボルト17a,17bとナット25a,25bとにより締め付けるだけで、鍔部18a,18bがレール9a,9bを3方向(
図4のD,E,F方向)に変形させてレール9a,9bとブラケット19とが圧接されるため、レール9a,9bを確実にブラケット19に固定することができる。その結果、復路レール9の組立作業が簡単となり、作業効率が改善される。
【0030】
また、鍔部18a,18bにより変形されるレール下面S1’は実際に踏板5のローラが走行する面ではない(空間SP内である)ため、レール下面S1の変形の心配はない。よって、レール9a,9bの接続部に段差が生じることがなく、踏板5の走行が安定する。しかも、段差調整の必要がないため、復路レール9の組立作業の効率化が図れる。
【0031】
次に、第2実施例について説明する。第2実施例は、第1実施例に示すブラケット19に対してレール下面S1の高さ調整を可能とするためにジャッキボルト(高さ調整機構)20a,20bを設けた点に特徴がある。以下、この特徴を中心に説明する。
図8は、本発明の第2実施例に係る復路レール9の接続部を示す斜視図である。
図8に示すように、ブラケット19のブラケット下面にはジャッキボルト20a,20bが設けられている。このジャッキボルト20a,20bの先端部は、ジャッキボルト20a,20bを締め付けることで、レール9a,9bのレール下面S1を下方から押圧する。これにより、レール下面S1の高さを調整することができる。
【0032】
具体的には、レール9a,9bの接続部にブラケット19を嵌め込んだ後、特殊ボルト17a,17bをナットで締め付けている途中あるいはその前後に、レール9aのレール下面S1とレール9bのレール下面S1の高さが一致しているか確認し、必要に応じてジャッキボルト20a,20bを締め付けてレール下面S1の高さを調整する。これにより、製作上の理由で、レール9aとレール9bとの接続部に段差が生じている場合であっても、ジャッキボルト20a,20bを用いてその段差を調整することにより、良好な走行面を維持できる。また、エスカレーター1の設置後の経年変化により復路レール9の走行面に段差が生じることになっても、ジャッキボルト20a,20bを用いて段差をなくすように調整することができる。
【0033】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、これまでの実施例で説明した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。例えば、鍔部18a,18bの形状は平行四辺形状に限定されるものではない。例えば、平行四辺形の代わりに略長方形状の板状体を採用すれば、鍔部の加工が簡単になるといった利点がある。
【符号の説明】
【0034】
1 エスカレーター(乗客コンベア)
5 踏板
9,10,11,12 復路レール(踏板レール)
9a,9b レール(レール部材)
17a,17b 特殊ボルト
18a,18b 鍔部
19 ブラケット(接続部材)
20a,20b ジャッキボルト(高さ調整機構)
22a,22b ネジ部
23a,23b 軸部
118a,118b 鍔部の角部
S1,S1’ レール下面
S2 レール側面
S3 レール上面
t1 ブラケットの板厚(接続部材の板厚)
t2 レールの板厚(レール部材の板厚)