(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454334
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】空気処理及び空気調和のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
F24F 3/00 20060101AFI20190107BHJP
F24F 3/08 20060101ALI20190107BHJP
F24F 3/147 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
F24F3/00 A
F24F3/08
F24F3/147
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-519797(P2016-519797)
(86)(22)【出願日】2014年10月7日
(65)【公表番号】特表2016-532843(P2016-532843A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】EP2014071380
(87)【国際公開番号】WO2015052151
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2017年10月5日
(31)【優先権主張番号】1359815
(32)【優先日】2013年10月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリオット,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】コラソン,ステファン
【審査官】
佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−317990(JP,A)
【文献】
特開平09−053840(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/128150(WO,A1)
【文献】
特開2012−032134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/00
F24F 3/08
F24F 3/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエンタルピ交換器モジュール(Mi)を備えた、空気処理及び空気調和のためのシステム(100)であって、第1の空気流(F1)および前記第1空気流よりも低い温度及び絶対湿度を有する第2の空気流(F2)から成る2つの空気流間の熱伝達及び水蒸気移動を可能にする二重空気流を有するシステム(100)において、
前記システムは、
前記エンタルピ交換器モジュール(Mi)の入口における前記第1空気流(F1)の相対湿度(hri)を測定するための手段(20)と、
前記相対湿度(hri)が所定の値(hrr)を上回っている場合に、前記第1空気流(F1)が前記エンタルピ交換器モジュールに入る前に前記第1空気流(F1)への熱供給を命令するように構成されている制御手段(6)と、
前記第1空気流(F1)が前記エンタルピ交換器モジュール(Mi)から出た後に通過する蒸発器(10)及びコンデンサ(12)を具備する蒸気圧縮冷凍ユニット(4)とをさらに備え、
前記熱供給が前記蒸気圧縮冷凍ユニット(4)から行われるように前記システムが設計されていることを特徴とする、前記システム(100)。
【請求項2】
前記熱供給を前記第1の空気流(F1)に提供するように設計された第2の交換器(22)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の空気処理及び空気調和のためのシステム。
【請求項3】
直列に配列されると共に、前記第1空気流(F1)及び前記第2空気流(F2)を連続的に通過させる複数のエンタルピ交換器モジュール(M1,M2,Mi,Mn)を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の空気処理及び空気調和のためのシステム。
【請求項4】
前記相対湿度の測定は、少なくとも1つのエンタルピ交換器モジュール(M1,M2,Mi,Mn)のために実行可能であると共に、前記第1空気流(F1)が前記複数のエンタルピ交換器モジュールのうちの1つに入る前に少なくとも加熱され得るように、前記システムは設計されていることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の空気処理及び空気調和のためのシステム。
【請求項5】
前記エンタルピ交換器モジュールの入口にて測定された前記相対湿度が所定の値を上回る場合に、前記制御手段(6)は、前記第1空気流(F1)が前記複数のエンタルピ交換器モジュール(M1,M2,Mi,Mn)の各々に入る前に前記第1気流(F1)への熱供給を命令するように構成されていることを特徴とする、請求項3または4に記載の空気処理及び空気調和のためのシステム。
【請求項6】
前記システムは、前記第1空気流(F1)と前記第2空気流(F2)とを前記エンタルピ交換器モジュールにおいて対向流的に循環させるように設計されていることを特徴とする、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の空気処理及び空気調和のためのシステム。
【請求項7】
前記各エンタルピ交換器モジュールは、防水性且つ通気性膜タイプのモジュールであることを特徴とする、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の空気処理及び空気調和のためのシステム。
【請求項8】
スタッキング方向(30)に沿って連続的に配置された複数のエンタルピ交換器モジュール(M1,M2,Mi,Mn)を備え、
当該複数のエンタルピ交換器モジュールのうち直接連続している任意の2つは、接触領域(34)を有し、
当該接触領域(34)の両側に、前記空気流の2つの中間通過チャンバ(36,38)がそれぞれ配置され、
当該チャンバの各々は、前記2つのモジュールの一方の空気流出口と、前記2つのモジュールの他方の空気流入口とにより部分的に画成されていることを特徴とする、請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の空気処理及び空気調和のためのシステム。
【請求項9】
前記システムは、冷気を容積の内部に、好ましくは建造物(200)に供給することを好ましくは目的とし、
前記第1空気流(F1)は、前記容積内に導入されることを目的とした空気流、好ましくは外部空気流であって、
前記第2空気流(F2)は、前記容積の内部から排出される空気流であって、当該空気流は、前記容積が建造物である場合に汚れた空気流に相応する、ことを特徴とする、請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の空気処理及び空気調和のためのシステム。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか一項に記載のシステム(100)を用いて実行される、空気処理及び空気調和のための方法であって、
前記エンタルピ交換器モジュール(Mi)の入口における前記第1空気流(F1)の相対湿度(hri)を測定するステップと、
前記相対湿度(hri)が所定の値(hrr)を上回る場合、前記第1空気流(F1)が前記エンタルピ交換器モジュール(Mi)に入る前に前記第1空気流(F1)への熱供給を命令するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気処理及び空気調和ための、例えば、東南アジア地域の高温多湿型気候に晒される建造物のためのシステム及び方法に関する。しかし、その他の用途も可能である。例えば、本発明を、製紙業、食品産業、及び、マイクロ電子産業などにおける空気乾燥の課題を含む、産業用途に関連する空気容積にも適用できる。
【0002】
本発明は、より正確には、二重(dual)空気流交換器を具備するこのようなシステムであって、これらの交換器を通過する両空気流間の熱伝達、並びに、湿度/水蒸気移動を可能にするタイプのシステムに関する。
【0003】
従って、本発明は、建造物(好ましくは、住宅及びサービス産業用)のための空気処理及び空気調和に適用される。従って、交換器は、汚れた空気流と外部空気流との間の熱伝達を保証するだけでなく、最も湿度の高い環境から最も乾燥した環境への、両空気流間の水蒸気移動も保証する。
【背景技術】
【0004】
高温多湿型気候において、外部空気流(新鮮な空気流とも称す)は、高温(例えば約30℃〜35℃)及び高相対湿度(例えば約90%〜95%)を有し得る。従って、これらの条件下では、水蒸気移動が、外部空気流から汚れた空気流へと生じる。しかし、外部空気流の相対湿度が非常に高い場合、交換器内での凝結の危険性があり、これは、交換器の適切な動作、交換器の確実性及びプロセスの健全性に有害である。実際、交換器を通過する両空気流間の水蒸気移動が外部空気流の絶対湿度の低減に寄与するとしても、その一方で、相対湿度は、交換器内のこの同一の外部空気流を冷却することにより増大される。これに関し、絶対湿度が、乾燥空気1キログラムあたりの水蒸気密度に対応し、一方、相対湿度が、部分蒸気圧の、飽和蒸気圧(空気がもはやそれ以上蒸気を含むことが不可能で、そうでなくても蒸気が凝縮するという圧力)に対する比率に対応することに留意されたい。
【0005】
先行技術において、(例えば、蒸気圧縮冷凍ユニットの上流に設置できる)エンタルピ交換器の実装に関する幾つかの方法がある。例として、これらの方法は、乾燥ホイールの使用(これもまた先行技術から公知)の代替方法であるが、本発明の一つからかなり離れた分野に属する。
【0006】
エンタルピ交換器の解決方法に関し、これらの方法のうちほとんどが、交換器内での凝結リスクの問題を解決しない。しかし、1つの解決方法が特許文献1に提示されている。特許文献1は、外部空気流が過度に高い相対湿度を有する場合にエンタルピ交換器を迂回する可能性を開示している。しかし、外部空気流が交換器を通過することを否定することにより、汚れた空気流に関連付けられるエネルギーが使用されないままとなるため、システムに重大な効率損失が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第2498013号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、エンタルピ交換器を用いた空気処理及び空気調和のためのこれらのシステムを、特に高湿度外部空気流の凝結リスクに対処するように最適化する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この問題に対処するために、本発明の目的は、第1に、少なくとも1つの二重空気流エンタルピ交換器モジュールを備えた、空気処理及び空気調和のためのシステムであって、前記両方の空気流(それぞれ、第1の空気流および当該第1空気流よりも低い温度及び絶対湿度を有する第2の空気流から成る)間での熱伝達及び水蒸気移動を可能にするシステムを提供することである。
【0010】
本発明によれば、このシステムは、
前記エンタルピ交換器モジュールの入口における前記第1空気流の相対湿度を測定するための手段と、
前記相対湿度が所定の値を上回っている場合に、前記第1空気流が前記エンタルピ交換器モジュールに入る前に前記第1空気流への熱供給を命令するように構成されている制御手段と、をさらに備える。
【0011】
従って、本発明の新規性は、飽和カーブに過度に近い状態の第1の空気流を必要に応じて加熱することにある。従って、最高空気流温度への上昇が手際よく実行される。単にこの第1空気流の温度を上昇させることにより、その相対湿度が低減されるので、交換器モジュールにおける凝結リスクが生じにくくなる。この解決方法は、一方では、先行技術にて提示されたような交換器の迂回を回避するという点で有利であり、他方では、空気流を所定の値よりも低い相対湿度に維持するのに必要な熱供給を少なくできるという点で有利である。
【0012】
好ましくは、本発明のシステムは、さらに、前記第1気流が前記エンタルピ交換器モジュールから出た後に通過する蒸発器及びコンデンサを具備する蒸気圧縮冷凍ユニットを備える。このシステムは、前記熱供給が前記加熱ユニットから、好ましくは、このユニットを通過する冷媒流体の一部から行われるように設計されている。或いは、前記熱供給が、前記冷凍ユニットの前記コンデンサの動作中に発生される熱に由来することも可能である。この場合、熱供給は、コンデンサの冷媒流体(この流体は通常、空気である)により実行されることになる。
【0013】
この熱供給を提供するためのその他の解決方法も考慮すべきであり、好ましくは、再生可能エネルギーに由来する。それは、典型的にはソーラーコレクタ又は、抵抗素子であってもよい。冷凍ユニットにてエネルギーを引き出すことを目的とする上記の解決方法は、熱力学サイクルの不可避のエネルギーの全部又は一部がこのような冷凍ユニット内で回収されることを可能にするという点で特に有利である。
【0014】
好ましくは、本発明のシステムは、前記第1空気流、好ましくは外部空気流への前記熱供給を提供するように設計された第2の交換器を備えている。
【0015】
この第2交換器を作製するために、任意の技術が、使用される流体(すなわち、液体、ガス流体、又はこれらの両方の混合物)に応じて、及び、エネルギーのタイプ(すなわち、感受性エネルギー、潜在的エネルギー、又は、ジュール効果エネルギー)に応じて可能である。可能な実施形態において、前記第1空気流、及び、前記冷媒流体の、前記ユニットに流入する部分が前記第2交換器を通過し、この加熱された流体が前記コンプレッサから出て、必要なカロリーが前記第1空気流に運ばれることを実際に可能にする。しかし、本発明の範囲から逸脱せずに、前記冷凍ユニット内で発生した熱を引き出して、その熱を加熱されるべき前記第1空気流へと運ぶその他の任意の方法も可能である。
【0016】
好ましくは、前記システムは、直列に配列された複数のエンタルピ交換器モジュールを備え、これらの交換器モジュールは「、前記第1空気流及び前記第2空気流を連続的に通過させる。
【0017】
好ましくは、前記システムは、前記相対湿度の測定が複数のエンタルピ交換器モジュールのうちの少なくとも一つのために実行可能となる共に、前記第1空気流が前記複数のエンタルピ交換器モジュールの1つに入る前に少なくとも加熱され得るように設計されている。
【0018】
より好ましくは、前記制御手段は、前記エンタルピ交換器モジュールの入口にて測定された前記相対湿度が所定の値を上回っている場合の、前記第1空気流が前記モジュールの各々に入る前の前記第1空気流への熱供給を命令するように設計されている。
【0019】
従って、この例において、前記相対湿度は、前記エンタルピ交換器を共に形成している前記複数のモジュールの各々の入口にて測定される。そして、熱供給は、モジュールごとに個々に、所定の値と比較することにより制御される。この、所定の値は、優先的には、全ての交換器モジュールにおいて同一であるが、モジュールに応じて異なっていてもよい。
【0020】
別の代替方法も可能であり、本発明によりカバーされる。例えば、相対湿度の測定は、限られた個数n(1以上)のモジュールに対してのみ行われ得るが、熱供給は、m個(n以上の個数)のモジュールの入口にて与えられ得る。例として、第1のエンタルピ交換器モジュールの入口にて第1の空気流の相対湿度を測定することによってのみ、熱供給が、エンタルピ交換器を形成している1又は複数のモジュールの入口にて命令され得る。
【0021】
いずれの場合においても、熱供給が調整され、例えば、相対湿度が所定の値に達した場合にのみ停止され得る。又は、命令は、単に、決められた量の熱(おそらくは、相対湿度の測定値の関数)の供給をもたらすだけでよい。
【0022】
いずれの場合においても、交換器モジュールを増加し、外部空気流を、異なる交換器モジュールに入るときに連続的に加熱することは、外部空気流への熱供給を用いることの合理化、及び、前記モジュール内で許容される相対湿度の最大値の増大に寄与する。これに関し、異なるモジュールにおける、広く可変の入口条件に対し、カスケード構成が、使用されるべき熱量のより微細な調整、考慮されるべき安全性限界の最小化、従って、使用されるエネルギーの合理化の概念を可能にすることに留意されたい。これは、起こり得る全ての場合に適合可能なようにより大きい安全限界を用いなければならないような単一のモジュール構成とは対照的である。
【0023】
エネルギーが合理的に使用されることを可能にし、尚且つ、エンタルピ交換器における有害な凝結発生を回避するこのシステムにおいて、好ましくは、外部空気流と汚れた空気流とをエンタルピ交換器モジュール内で対向流的に再循環させる。並流式の解決方法が可能であっても、引き出されるエネルギーをより一層合理的に使用することで外部空気流を加熱するという理由で対向流式の本発明の解決方法が好ましい。
【0024】
各エンタルピ交換器モジュールは、プレート、管状、又は、その他の交換器であることに関わらず、液体水密性で且つ水蒸気透過性の、防水および通気性膜タイプのモジュールであることが好ましい。
【0025】
好ましくは、本発明のシステムは、スタッキング方向に沿って連続的に配置された複数のエンタルピ交換器モジュールを備えており、当該複数モジュールのうち直接連続している任意の2つが接触領域を有し、当該接触領域の両側に、前記空気流の2つの中間通過チャンバがそれぞれ配置され、当該チャンバの各々が、当該2つのモジュールの一方の空気流出口と、当該2つのモジュールの他方の空気流入口とにより部分的に画成されている。
【0026】
好ましくは、空気処理及び空気調和のための本発明のシステムは、冷気を、好ましくは建造物である容積の内部に供給することを目的としている。前記第1空気流は、前記容積内に導入される空気流、好ましくは外部空気流である。前記第2空気流は、前記容積の内部から排出され、前記容積が建造物である場合に汚れた空気流に相応する空気流である。
【0027】
また、本発明の目的は、上記システムを用いて実行される、空気処理及び空気調和のための方法であり、当該方法は、前記エンタルピ交換器モジュールの入口における前記第1気流の相対湿度を測定するステップと、前記相対湿度が所定の値を上回っている場合、前記第1空気流が前記エンタルピ交換器モジュールに入る前に前記第1空気流への熱供給を命令するステップとを含む。
【0028】
本発明のさらなる利点及び特徴が、以下の非限定的な詳細な説明において明らかになろう。この説明は、添付図面を参照しつつ行なわれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による、空気処理及び空気調和のためのシステムの概略図である。
【
図2】エンタルピ交換器が複数のモジュールを有する異なる設計を有する、
図1の概略図に類似の図である。
【
図3】
図2に示した空気処理及び空気調和のためのシステムに組み込まれた制御手段により提供される制御論理を概略的に示すチャートである。
【
図4】エンタルピ交換器が、直列に配置された4つのモジュールを含む、
図1の概略図に類似の図である。
【
図5】
図4の図に示された符号に対応するアルファベットの参照符号が記された湿度図表である。
【
図6】本発明による空気処理及び空気調和のためのシステムに組み込まれることを意図されているエンタルピ交換器の実施形態の、より詳細な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
最初に
図1を参照すると、建物200(好ましくは、東南アジア地域の高温多湿型気候に晒されるような建物)の内部に冷気を供給するための空気処理及び空気調和のためのシステム100が示されている。システム100は、第1にエンタルピ交換器2を備え、また、この交換器2と建物200との間に介在する蒸気圧縮冷凍ユニット4も備えている。制御手段がエンタルピ交換器2に関連付けられ、また蒸気圧縮冷凍ユニット4にも関連付けられ得る。
【0031】
エンタルピ交換器2は慣用のタイプの交換器である。すなわち、第1の外部空気流F1と、建物200内部から排出される第2の汚れた空気流F2とが、有利にはエンタルピ交換器2を対向流的に通過するように意図されており、且つ、第1の外部空気流F1よりも低い温度及び絶対湿度を有する。
【0032】
従って、交換器2は、汚れた空気流F2と外部空気流F1との間の熱伝達を保証する。すなわち、熱交換器は、汚れた空気流F2に含まれる冷たさを利用して熱い外部空気流F1を冷却するために設けられている。もちろん、空気流F1から、より冷たい空気流F2に顕熱が移動され、その結果、外部からの熱い空気流F1の温度が低下することが理解されよう。
【0033】
同時に、エンタルピ交換器2が設けられていることにより、外部空気流F1に含まれる水蒸気の一部が、汚れた空気流F2(乾燥空気1キログラムあたりの水蒸気密度(絶対湿度)がより低い)に、空気流F2が建物200から出ていくときに移動する。
【0034】
システム100のこの動作モード(建物200の冷却モードに対応する)において、エンタルピ交換器2から出た外部空気流F1は、蒸気圧縮冷凍ユニット4の蒸発器10及びコンデンサ(凝縮器)12を連続的に通過する。当業者により公知の慣用的な方法において、このユニット4は、冷却/冷媒流体14を含み、冷却/冷媒流体14は、コンプレッサ(圧縮器)16、コンデンサ(凝縮器)12、膨張弁18、及び蒸発器10に連続的に流入し、その後、コンプレッサ16に戻される。
【0035】
外部空気流F1は、最初に蒸発器10を通過し、それにより冷却、湿度飽和、凝縮され、それにより、空気処理のための適切な絶対湿度レベルに達する。その後、外部空気流F1は、コンデンサ12を通過することでコンデンサ12内で温度が増大され、それと共に相対湿度が低減され、絶対湿度は一定のままである。これは、外部空気流F1が建物200内部で良好な湿度及び温度状況にされることを可能にする。
【0036】
さらに
図1を参照すると、本発明の特徴の1つとして、本発明のシステムが、さらに、交換器2の入口での外部空気流F1の相対湿度の測定を可能にする手段20を含むことが理解されよう。これらの手段は、当業者より適切とみなされる任意の設計、例えば湿度センサであり得る。制御手段6に通信されるこの測定の関数として、手段20は、相対湿度のこの所定の値が所定の値を超えている場合に外部空気流F1への、エンタルピ交換器2に入る前の熱供給を命令するように構成されている。
【0037】
相対湿度の顕熱エネルギー供給が始動される予め決められた閾値は、エンタルピ交換器のサイジングデータに基づいて、及び、エンタルピ交換器のエンタルピ効率に関する情報に基づいて定められ得る。このエンタルピ効率は、動作条件、交換器の形状寸法データ、及び、用いられている技術に依存する。従って、防水−通気性の膜交換器の場合、エンタルピ効率は、前記膜の物理的特性、特には、水蒸気移動に関連する特性(例えば、フィック型拡散係数、膜の最大吸水、及び、吸収定数)に依存する。
【0038】
このように処理を進めることにより、外部空気流F1の温度を、外部空気流F1が交換器2に入る前に増大させ、それにより、交換器2の適切な動作に有害な凝結リスクを抑制することが可能である。
【0039】
図1に示されている好ましい実施形態において、熱供給は、コンプレッサ16を出た後にその一部が分流される冷媒流体によりもたらされる。この分流をつくるために、コンデンサ12の上流のタッピング26aを有する回路26が設けられ、冷媒流体14の一部が第2の交換器22の入口まで運ばれることを可能にしている。この交換器22の出口においては、冷媒流体は、回路26によりコンデンサ12の下流の第2のタッピング26bまで戻され、これにより、冷凍ユニット4に再導入される。
【0040】
従って、第2交換器22は、一方では外部空気流F1を通過させ、他方では、コンプレッサ16の下流にて引き出された冷媒流体14の一部を通過させる。回路26を通過する冷媒流体の流量は、手段6により制御される弁28により制御される。もちろん、第2交換器22に関し、適切とみなされるいずれの設計(例えば、フィン付き管交換器タイプ)も考えられる。
【0041】
第2交換器22の方向に引き出されたエネルギーが、膨張弁18における流体の膨張前に適切な熱力学的状況に達することを可能にしない場合、その上流に、補助コンデンサ(凝縮器)を形成しているユニットヒータ27が設けられることに留意されたい。従って、このユニットヒータ27は、一方では、コンデンサ12から出た後の冷媒流体14を通過させ、他方では、外部空気流F3を通過させる。
【0042】
第2交換器22に運ばれる熱の量は調整可能であり、これは、例えば、センサ20により測定された空気流F1の相対湿度値が所定の値(遭遇するニーズに応じて関数として操作者により入力され得る)に達した場合にのみ停止されることにより行われる。また、この値には、交換器の設計が、凝結リスクに関連する湿った空気流に対する感度に従って考慮される。この感度が、膜を通る水蒸気の移動効率に大いに関係していることに留意されたい。
【0043】
ここで
図2を参照すると、エンタルピ交換器2が複数のエンタルピ交換器モジュールM1,M2,…、Mi,…、Mnから成る別の実施形態が示されている。これらのモジュールは直列に配列され、モジュールの各々に、外部空気流F1と汚れた空気流F2とが常に対向流的に流入してモジュールを連続的に通過している。この例においては、第2交換器22は、各モジュールに関連付けられて外部空気流F1の入口の上流に存在している。これらの交換器は弁28を介して手段6により制御され、また、これらの第2交換器22は各々が相対湿度センサ20にも関連付けられており、センサ20は、測定された値をこれらの同一の手段6に伝達する。
【0044】
このような構成の利点は、熱を外部空気流F1に、外部空気流F1が各モジュールに入る前に運ぶことが可能であり、すなわち、外部空気流F1が各モジュールに流入する前の熱供給を連続的に行うことである。
【0045】
図3に図式的に示されているように、交換器モジュールの各々に関する制御論理が示されている。この制御論理は、例えば、各モジュールMiのために設けられて、関連する交換器モジュールMiの入口における相対湿度hriの、センサ20を用いた測定を実行する。この値hriが相対湿度の基準値hrr(上記の所定の値に対応する)よりも大きい場合、外部空気流F1は、関連する第2交換器22により加熱される。これは、冷媒流体14が第2交換器22に流入することを保証する弁28を制御することにより行われる。これとは逆の、すなわち、値hriが値hrrより低い状態を維持している場合には操作は実行されず、すなわち、外部空気流F1は、次のモジュールに導入される前に加熱されない。
【0046】
相対湿度hrrの基準値は、各交換器モジュールMiにおいて同一であっても、異なっていてもよい。例として、この値は、モジュールが同一の又は類似の設計である場合、優先的には、交換器モジュールの全てにおいて同一である。
【0047】
このような手順は、外部空気流F1を、基準相対湿度hrrよりも低い相対湿度を有するように永久的に保つことを可能にする。これは、エンタルピ交換器モジュールのために非常に重要とみなされ、少ないエネルギー量で連続的に熱供給することにより簡単に行われる。
【0048】
図4の実施形態は、直列に配置された複数の連続的なモジュールM1、M2、M3、M4を有するエンタルピ交換器2を有するという点で、
図2に示した実施形態と類似である。
【0049】
この
図4において、汚れた空気流F2、及び、外部空気流F1の複数の基準点が、エンタルピ交換器2と建物200との間のこれらの空気流の経路に沿った異なる場所にて特定されている。これらの同じ基準点が
図5の湿度図表に記されており、これらの場所の各々における空気調和に関する情報を示している。
【0050】
また、
図4及び
図5を参照すると、点A(交換器2の入口に対応)における外部空気流F1が高温及び高相対湿度を有することが示され、外気の高温多湿気象条件を表している。
【0051】
空気流F1は、空気流F1の相対湿度が基準相対湿度を上回っている場合、第1モジュールM1に導入される前に第2交換器22により加熱される。この加熱はチャート上の線AA’により示され、点A’は、第1交換器モジュールM1の入口に対応している。このモジュール内で空気流F1が冷却され、また、その絶対湿度を解除し、これは、湿度が飽和カーブ(
図5に点線で示す)に近づくことを促進する。点A1は、第1モジュールM1の出口における(空気流F1が第2モジュールM2に入る前の、及び、この同じモジュールM2への導入前の生じ得る加熱の前の)空気流F1の状態を示す。ここで、先に述べたのと同様に、空気流F1は、第2モジュールM2に入る前に点A’1にて再び加熱され、点A’1からこの第2モジュールM2を通過し、それによりモジュールM2内で冷却されてその湿度の一部が放出される。これは、空気流F1が点A2にてモジュールM2から出ていくまで続く。点A2においては、
図5に示されているように、空気流F1の飽和カーブに近づいた状態である。これと類似の現象が、この空気流F1が第3のモジュールM3及び第4のモジュールを通過する前及びその最中に観察され、点Aと点Bとの間のジグザグ/カスケードチャートに示されている。点A及び点Bは、それぞれ、エンタルピ交換器2への空気流F1の入口点、及び、同じ空気流F1の、交換器からの出口点に対応している。
【0052】
従って、空気流F1がこの交換器2から引き出されるとき、蒸発器10を通過して点Cまで移動する。この通過により、最初に空気流F1が温度低減され、その飽和カーブに近づく。これは、点Cにて空気流F1の最低温度に達するまで続く。また、点Cにおいて、空気流F1は所望の絶対湿度レベルも有する。次いで、空気流F1がコンデンサ12を通過することにより、空気流F1は、建物200に入るための所望の温度に加熱され、そして、所定の相対湿度レベルにされる。この相対湿度レベルは、空気調和されるべき空気容積のための所望のニーズ(快適温度仕様に関連)にも対応している。
【0053】
この動作モードを用いると、例として、外部空気は、エンタルピ交換器2に入る前に35℃の温度及び90%の相対湿度に到達でき、一方、点Eにおける、建物200から出てくる汚れた空気流は、約22℃の温度及び約50%の相対湿度を有し得る。また、
図5の湿度図表において、点Dと点Eとの間の線分は、建物200を通過している間の空気の、温度の増大及び絶対湿度レベルの増大を伴う変化を表し得る。汚れた空気流F2に関するこれらの値は点Eと点Fとの間で増大し続け、これは、この空気流F2がエンタルピ交換器2を外部空気流F1と共に対向流的に通過することに対応している。
【0054】
ここで
図6を参照すると、優れた設計を有する、直列に配置された5つのモジュール(M1〜M5)を含むエンタルピ交換器2の例示的な実施形態が示されている。先に記載したその他の実施形態と同様に、交換器モジュールM1〜M5は、当業者に公知の、プレート及び防水−通気性膜を有する設計である。このような交換器は、例えば、仏国特許第2965897号明細書に記載されている。
【0055】
実際、この設計は、モジュールが互いに連続している方向30に直交する方向31に沿ったプレートのスタッキングに依存している。この実施形態において、モジュールは、それらのスタッキング方向30に沿って2つが接触している。また、直接連続している2つのモジュールは、それらの中央部分において、共に接触領域34を画成し、接触領域34の両側に、空気流の2つの中間通路チャンバが配置されている。空気流F1の中間通路チャンバが最初に存在し(番号36で示す)また、空気流F2の中間通路チャンバ(番号38で示す)も存在する。
【0056】
図6に見られるように、チャンバ36が互い違いに配置され、チャンバ38もまた互い違いに配置されている。各チャンバ36は第2交換器22を収容しており、第2交換器22は、冷媒流体を供給及び排出するためのパイプ40を有する。冷媒流体は交換器2を通過して、システムの冷凍ユニットに取り付けられているコンデンサへと向かう。この場合、各エンタルピ交換器モジュールは、全体の形状が、六角形のベース又はダイヤモンド形状のベースを有する真直なプリズムの形状である。従って、各中間チャンバ36,38は、全体の形状が三角形断面の形状であり、三角形の斜辺の1つ(leg)がモジュールの一方の空気流入口により画成され、三角形の斜辺の別の1つが他方のモジュールの空気流出口により画成されている。そして、第3の辺が、方向30に沿った交換器に沿って横方向に延在するケーシング44に対応している。好ましくは、複数のケーシング44が同一の単一のプレートにより形成される。
【0057】
一方、図示されていないが、上側及び下側のケーシングもモジュールM1〜M5を覆っており、特に、中間チャンバ36,38が互いに独立することを可能にしている。
【0058】
もちろん、単に非限定的な例として以上に記載した本発明に、当業者が様々な改変を行い得る。具体的には、上記の用途は、任意の建造物の冷気供給に関するものであるが、本発明を、より広く適用することで、産業プロセスの分野、例えば製紙業、食品産業及びマイクロ電子産業において処理されるべき空気容積を供給できる。
【符号の説明】
【0059】
2 エンタルピ交換器
4 蒸気圧縮冷凍ユニット
6 制御手段
10 蒸発器
12 コンデンサ(凝縮器)
14 冷却/冷媒流体
16 コンプレッサ(圧縮器)
18 膨張弁
20 センサ
22 第2交換器
26 回路
26a タッピング
26b タッピング
28 弁
100 システム
200 建物
A 交換器入口
A’ モジュール入口
F1 外部空気流
F2 汚れた空気流
M1 エンタルピ交換モジュール