特許第6454345号(P6454345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6454345重心/姿勢動揺検査のためのデータを収集する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454345
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】重心/姿勢動揺検査のためのデータを収集する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
   A61B5/11 210
   A61B5/11ZDM
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-537131(P2016-537131)
(86)(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公表番号】特表2016-529005(P2016-529005A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】DE2014000399
(87)【国際公開番号】WO2015027973
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年4月10日
(31)【優先権主張番号】102013014092.7
(32)【優先日】2013年8月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035448
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】キルランギク・メフメト・アイレム
(72)【発明者】
【氏名】ミンネロプ・マルティーナ
(72)【発明者】
【氏名】シュプロス・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ベッケム・ボーリス
(72)【発明者】
【氏名】パーウルツェン・マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ベドナーレク・マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】ルクス・ジルケ
(72)【発明者】
【氏名】アムンツ・カトリン
【審査官】 ▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−516059(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102012017219(DE,A1)
【文献】 特開2013−031538(JP,A)
【文献】 特開2001−008167(JP,A)
【文献】 J.E.Visser et al.,Dynamic Posturography in Parkinson's disease: diagnostic utility of the "first trial effect",Neuroscience,2010年 6月30日,Vol.168,No.2,p.387-394
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/107 − 5/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者を上に立たせることができる揺動可能なプラットフォームを用いた重心/姿勢動揺検査のためのデータを収集する装置において、
前記プラットフォーム(1)には、磁化可能体(3)と加速度センサ(2)があり、前記加速度センサは、A/Dコンバータ(4)を介してコンピュータ(5)に接続されており、
前記プラットフォーム(1)の下には、電磁石(11)があり、当該電磁石は、前記プラットフォーム(1)の面に対して平行に、二軸において移動可能に取り付けられており、前記電磁石(11)は、回路(9)を介して前記A/Dコンバータ(4)に接続されており、
前記A/Dコンバータに接続されている、時々刻々変化し得る表示を行う表示部(7)デジタルカメラ(14)とを有し、これらが前記コンピュータ(5)に接続され、
前記電磁石のための電源(10)を有し
前記プラットフォーム(11)の動きを前記加速度センサ(2)により記録するとともに前記A/Dコンバータ(4)を介して前記コンピュータ(5)へと転送し、時々刻々変化し得る前記表示部(7)の表示を行い、その時間情報を前記A/Dコンバータ(4)を介して前記コンピュータ(5)へと転送し、前記プラットフォーム(1)の位置、前記被験者の動き、及び前記時々刻々変化し得る表示部(7)の表示を前記デジタルカメラ(14)により撮影し、当該デジタルカメラ(14)のデータを前記コンピュータ(5)へと転送し、前記コンピュータ(5)により得られたデータをソフトウェアを用いて互いに時間的に対応付けることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
持上げ手段を具備し、当該持上げ手段は、前記電磁石(11)を前記プラットフォーム(1)の方に持ち上げることができることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置において、
前記プラットフォーム(1)は、少なくとも一つの位置マーカ(6)を具備することを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置において、
前記時々刻々変化し得る表示を行う表示部(7)は、少なくとも一つの位置マーカ(8)を具備することを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、
前記時々刻々変化し得る表示は、所定の時間間隔で変化するパターンを有する表示又は時計であることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置において、
前記磁化可能体(3)は、前記プラットフォーム(1)の下側に取り付けられている強磁性体の金属体であることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置において、
前記電磁石(11)のための前記回路(9)は、前記A/Dコンバータ(4)を介して前記コンピュータ(5)に接続されていることを特徴とする装置。
【請求項8】
重心/姿勢動揺検査のためのデータを収集する方法において、
動可能なプラットフォーム(1)上に被験者を立たせ、前記プラットフォーム(1)には、磁化可能体(3)が設けられ、前記プラットフォーム(1)の下には、前記電磁石(11)があり、当該電磁石は、前記プラットフォーム(1)の面に対して平行に、二軸において移動可能に取り付けられており、前記プラットフォーム(1)は、電流が供給される当該電磁石(11)により固定位置に保持され、前記電磁石(11)のスイッチが切られることで摂動が可能とされ、前記プラットフォーム(11)の動きを加速度センサ(2)により記録するとともにA/Dコンバータ(4)を介してコンピュータ(5)へと転送し、時々刻々変化し得る表示部(7)の表示を行い、その時間情報を前記A/Dコンバータ(4)を介して前記コンピュータ(5)へと転送し、前記プラットフォーム(1)の位置、前記被験者の動き、及び前記時々刻々変化し得る表示部の表示をデジタルカメラ(14)により撮影し、当該デジタルカメラ(14)のデータを前記コンピュータ(5)へと転送し、前記コンピュータ(5)により得られたデータをソフトウェアを用いて互いに時間的に対応付けることを特徴とする方法
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
前記プラットフォーム(1)の下側で前記電磁石(11)の位置をずらすことで、前記プラットフォーム(1)は、その位置がずらされ、前記被験者を前記プラットフォーム(1)の上に立たせたら、前記電磁石(11)のスイッチを切ることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記被験者は、眼を開けたまま或いは閉じたまま予め決められた姿勢をとることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか一項に記載の方法において、
前記コンピュータによる前記プラットフォーム(1)の位置の認識を、前記プラットフォーム(1)における位置マーカ(6)を用いることで容易にすることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか一項に記載の方法において、
前記コンピュータ(5)による前記時々刻々変化し得る表示を行う表示部(7)の位置の認識を、前記時々刻々変化し得る表示を行う表示部(7)における位置マーカ(8)によって容易にすることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれか一項に記載の方法において、
前記時々刻々変化し得る表示部の表示のパターンを画像上で認識することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項8乃至13のいずれか一項に記載の方法において、
同一時刻に関する前記プラットフォーム(1)の位置、前記被験者の動き、及び前記時々刻々変化し得る表示部の表示の画像の情報と前記加速度の情報とを互いに対応付けることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重心/姿勢動揺検査(ポスチュログラフィ)(Posturographie)のデータを収集する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
重心/姿勢動揺検査のための装置は、例えば、力を加えることで下肢に負荷が与えられる等して、立った姿勢でバランスを保つ能力が機能するか確かめるために用いられる。従来技術による装置は、例えば揺動可能なプラットフォームを備え、当該プラットフォーム上に、被験者として健康な人、患者或いは動物を立たせることができる。そのような揺動可能なプラットフォームは、コーナー部分においてバネに接続されている。代替的に、この種の装置は、機械的な摂動ユニット(Provokationseinheit)が装備されていてもよく、そのユニットは、プラットフォームの水平二軸のうちの一方に組み込むことができる。このような装置は、ハイダー・バイオスイング社のものが知られている。
【0003】
しかしながら、従来技術による装置は欠点を有している。
【0004】
従来技術による装置は、個人内及び個人間で研究目的での測定の対比・比較ができない。プラットフォームの動きの測定は、加速度センサを用いて行われ、その際に、測定を定量化するために移動距離が測定値から計算される。そのため、追加的に計算エラーが誘発される。被験者の向きに関して、横からか正面からの摂動しかできない。水平二軸におけるずらしの組み合わせを行うことはできない。摂動ユニットは、測定が始まるようにするのに、機械的に放されなければならない。従来技術による装置は、治療目的には使えるものの、診断の用に供されるようには構成されていないし、不向きでもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することにある。
特に、重心/姿勢動揺検査(ポスチュログラフィ)における測定の標準化を可能にする必要がある。さらに、加速度測定に同期して、位置特定によりプラットフォームの動きが検出できなければならない。空間位置認識障害(koordinative Stoerungen)に対する診断用パラメータや測定値を調べることができる装置を使えるようにしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1及び下位請求項の上位概念から出発して、上記課題は、本発明により、特徴部分に記載された特徴により解決される。
【0007】
本発明による方法及び装置を用いることで可能になるのは、測定のための開始点のゼロ点が標準化されることにより重心/姿勢動揺検査の測定(ポスチュログラフィック測定)が標準化されることであり、計算ミスを抑えることであり、また、被験者に対する横から、前から、対角方向からの摂動も、任意の方向からの任意の強さの摂動もできることである。摂動ユニットを機械的ないし手動で解放することはしなくてもよくなる。診断目的で測定データ及び/又はパラメータを求めるために本装置を用いることが可能となる。
【0008】
有利な本発明の発展態様は、下位請求項に記載されている。
【0009】
以下に、本発明を一般的な形態で記載する。
【0010】
本発明による装置及び方法を用いると、被験者の平衡機能を分析することができる。
被験者とは、本発明においては、健康な人、患者或いは動物を意味する。
【0011】
本発明による装置は、揺動可能なプラットフォームを備え、当該プラットフォームの上に被験者を立たせることができる。バネに吊下することで揺動可能にすることができる。
【0012】
プラットフォームは、電磁石と相互作用し、当該電磁石は、好ましくは、プラットフォームの下側に取り付けられており、電源により回路()を介してスイッチを入れたり切ったりすることができる。電磁石は、好ましくは互いに垂直に延在する二軸において、プラットフォームに対して平行に移動可能とされている。これにより、プラットフォームは振り出し可能(auslenkbar)とされている。これに関して、電磁石は、二つ積み重ねられた互いに垂直なレールの上に取り付けられていてもよく、これらのレールが、互いに垂直になっている二つの軸における電磁石の動きを可能にする。
【0013】
電磁石は、電源に接続された状態にある。電源は、例えば電源回路(Netzteil)やバッテリー(Batterie)とすることができる。
【0014】
特別な実施形態では、プラットフォームは、フレーム内或いは架台内にあってもよく、その内部では、プラットフォームがバネにより吊下されている。フレームの下側には、フレームないし架台に不動に結合されている一つのプレート(a)があり、その位置が動かないようになっている。このプレート(a)の上に、例えば複数のレールがあり、これらのレールの上にさらに他のプレート(b)がある。こうして、このプレート(b)は、プレート(a)上において互いに逆向きの二方向に移動可能になっている。この特別な実施形態では、プレート(b)の上には、さらに他のプレート(c)があり、プレート(b)の上でレールにより互いに逆向きの二方向に移動可能であり、その方向は、プレート(b)が動ける方向とは垂直に延びている。このプレート(c)上に電磁石がある。ここでは一例で示されたこのような配置により、プラットフォーム下側の所望の位置に電磁石を持来させることができる。
【0015】
プラットフォームは、磁石に反応する例えば金属プレート形態の強磁性体の金属体等といった磁化可能体を持つ。磁化可能体ないし強磁性体材料からなる金属プレートは、プラットフォームに接着されていてもよい。好ましくは、金属体は、プラットフォームの下側に固定されている。
【0016】
装置は、電磁石のスイッチのオン・オフを制御するコンピュータをさらに具備するものであってもよい。この制御は、アナログ‐デジタル・コンバータ・ボード(A/Dコンバータ・ボード)と回路により行われる。電源は、A/Dコンバータないし回路(スイッチ回路)()に接続することができる。
【0017】
A/Dコンバータは、本発明においては、A/D変換器及びD/A変換器とのインターフェースを有するコンバータを意味する。
【0018】
信号は、こうしてアナログからデジタルへ、デジタルからアナログへと変換することができる。
【0019】
さらに、装置は、電磁石が持ち上げられるようにする持上げ手段を持つのでもよい。この持上げ手段を用いることで、電磁石を磁化可能体或いは磁化可能なプレートの方に近付けることができる。
【0020】
プラットフォームには、加速度センサが取り付けられており、この加速度センサがA/Dボードを介してコンピュータに接続されている。
【0021】
プラットフォームは、好ましくは少なくとも一つの位置マーカが装備されており、この位置マーカにより、プラットフォームの位置の検出が可能になる。有利には、プラットフォーム上に複数の位置マーカ、例えば二つ、三つ或いは四つの位置マーカが取り付けられている。三つ、四つ或いはそれよりも多い位置マーカは、測定精度をより高くする一つの平面を決めることができる点で有利である。
【0022】
装置は、デジタルカメラを備えている。
【0023】
デジタルカメラは、プラットフォーム上の複数の位置マーカの位置を検出する。これらの位置から、イメージシーケンス上でのプラットフォームの動きが捉えられる。
【0024】
さらに、装置は、時々刻々変化し得る表示を行う表示部を備え、この表示部がデジタルカメラにより捉えられる。時々刻々変化し得る表示を行う表示部は、発光手段が上側に取り付けられているホルダとすることができ、この発光手段が異なる時点に異なるパターンを作り出し、そのパターンがデジタルカメラにより記録可能とされる。例えば、複数のLED電球が、所定の時間的な順序で異なるパターン及び/又は色により発光するのでもよい。時々刻々変化し得る表示は、時計でもよいし、或いは、表示盤により提示可能な時々刻々変化し得るパターンでもよい。
【0025】
時々刻々変化し得る表示を行う表示部は、A/Dボードを介してコンピュータに接続されている。
【0026】
時々刻々変化し得る表示を行う表示部には、好ましくは少なくとも一つの付加的な位置マーカが設けられており、この位置マーカがデジタルカメラにより撮影され、この位置マーカによって、変化する時間表示部の位置がコンピュータにとって認識しやすいものになる。
【0027】
デジタルカメラは、被験者の動きを撮影してもよい。
【0028】
図は、本発明に係る装置を概略的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、プラットフォーム1を示す。このプラットフォーム1は加速度センサ2が装備されているとともに、プラットフォーム1には強磁性体の金属プレートの形態とされた磁化可能体3が取り付けられている。加速度センサ2は、A/Dコンバータ4に接続されている。A/Dコンバータは、コンピュータ5と接続状態にある。プラットフォーム1には、位置マーカ6がある。A/Dコンバータ4には、さらに、時々刻々変化し得る表示を行う表示部7が接続されており、この表示部は、同じく位置マーカ8も有している。A/Dコンバータ4は、回路(スイッチ回路)9と接続状態にある。回路9は、電源回路10(Netzteil)と電磁石11とに接続されている。電磁石11は、二軸において可動なプレート12の上にあり、プレート12は、さらに他のプレート13に位置決めされている。さらに、装置は、コンピュータ5に接続されているデジタルカメラ14を備えている。
【0031】
本発明による方法では、プラットフォームは先ず固定される。そのために、電磁石は、電源及び回路を介して電流が供給される。好ましくは、電磁石は、持上機構によってプラットフォーム下側にある電磁気的な物体へと近付けられる。この結果、プラットフォーム上に搭乗する被験者は、大きな揺れに一切さらされない状態になる。従って、測定開始時においてゼロ点を定義することが保証される。これによって、測定の標準化が行われる。
【0032】
被験者は、プラットフォーム上において自らの位置・姿勢を定め、所望の姿勢をとる。
【0033】
測定が始まるとともに電流が止められ、その際に電磁石が消磁される。
【0034】
電流が消えると、プラットフォームが静止位置にあるときには、何らの摂動も起きない。測定プロセスのために、開始状態として何らかの摂動が欲しい場合には、電磁石は、スイッチが切られる前にその位置が変更されるので、プラットフォームは、磁化可能体と電磁石との間の相互作用によって所望の出発点に移動することとなる。プラットフォームの所望の最終位置において電磁石のスイッチが切られる。静止位置に対して一定の振幅(Elongation)があり、その振幅によりプラットフォームは振動できる。電磁石のスイッチのオン・オフは、コンピュータにより制御することができる。
【0035】
被験者は、プラットフォーム(1)が電磁石(11)により動かないようにされてから、プラットフォーム(1)に乗り込む。
【0036】
プラットフォームは、電磁石によりゼロ点で或いはずれた位置(振り出し位置)で固定される。ずれた位置で電磁石のスイッチを切ると、摂動が発生することになる。プラットフォームがゼロ点にあるときに電磁石のスイッチを切れば、何の摂動も起きない。
【0037】
プラットフォームを固定することによって、測定のための出発点が定義された状態となり、被験者は、静止位置から摂動の全く起きない状態へ、或いはそれとは異なって、何らかの摂動が引き起こされる状態へと至ることになる。これにより、本方法は、個人内及び個人間での比較が保証されるので、診断目的に利用できる。例えば、異なる年齢集団や病状の異なる集団(Personengruppe)を比較対象にすることができる。
【0038】
電磁石のスイッチを切るととともに測定が始まる。
【0039】
その際、加速度値は、加速度センサにより記録され、A/Dボードを介してコンピュータへと送られる。
【0040】
デジタルカメラは、被験者を撮影し、位置マーカとともにプラットフォームも撮影し、さらに、付属の位置マーカとともに時々刻々変化し得る表示を行う表示部をも撮影する。
【0041】
デジタルカメラの画像情報は、さらにコンピュータへと送られる。
【0042】
測定された加速度データと画像情報は、蓄積される。
【0043】
プラットフォームの加速度と位置が互いに独立に測定されることで、何の計算も行われない。そのため、計算ミスのおそれもなくなる。
【0044】
後続の工程では、コンピュータは、同時刻の加速度センサの測定データとデジタルカメラのデータとを互いに対応付ける。
【0045】
コンピュータは、好ましくは、画像上の位置マーカやプラットフォームを認識するパターン認識ソフトウェアを有している。パターン認識ソフトウェアによって認識可能な位置マーカは、プラットフォームに、時々刻々変化し得る表示を行う表示部に、及び/又は被験者にあってよい。代替的な実施形態では、パターン認識ソフトウェアは、プラットフォーム、時々刻々変化し得る表示を行う表示部、及び/又は被験者を位置マーカなしで認識できる。
【0046】
こうして、プラットフォームの位置が検出されている。
【0047】
時々刻々変化し得る表示を行う表示部の位置は、コンピュータにより認識される。時々刻々変化し得る表示を行う表示部を識別することで、コンピュータは、例えば、発光手段、LED、或いは時計等といった他の種類の表示部によってコード化されている時間情報を適切なソフトウエアを用いて取得する。時々刻々変化し得る表示を行う表示部としてLEDのような発光手段を用いる場合には、時々刻々変化し得るパターンで発光するとともに時間的な対応付けを可能にする複数の発光手段が、互いに隣り合うように配置されていてもよい。
【0048】
時々刻々変化し得る表示を行う表示部の認識は、表示部に付属の位置マーカにより、より簡単にされることが好ましい。その際、位置マーカは、コンピュータにより認識される。時間表示部の位置は、位置マーカとの関係において既知とされており、入力されている(programmiert.)。従って、時間情報がより簡単に識別され得る。
【0049】
これにより、画像データ上において、プラットフォームに関する位置データが、それに対応した時間情報とともに利用することができる。
【0050】
時々刻々変化し得る表示を行う表示部のデータは、加速度センサのデータとともにA/Dボードを介してさらにコンピュータへと送られ、蓄積される。こうして、時間データと加速度データとが互いに対応付けられた状態にある。
【0051】
これによって、或る時刻での画像情報と、同時刻での加速度データとが利用可能である。
【0052】
さらなる工程では、同一時刻での画像と加速度情報とが互いに対応付けられる。
【0053】
例えば、生物学的な信号(例として筋電図及び/又は心電図及び/又は脳波図)といった他の信号を補足的に測ることができる。さらに、非生物学的な信号、例えば音の信号、クロックの信号、及び/又はトリガ信号のような信号といった少なくとも一つの他の機器の信号を測ることができる。
【0054】
加速度センサのサンプリング周波数とデジタルカメラのサンプリング周波数が同じである場合は、値は1:1で対応付けられる。
【0055】
加速度センサのサンプリング周波数とデジタルカメラのサンプリング周波数とが異なる場合には、高い方の周波数にダウンサンプリングをかけるか、低い方の周波数が補間されなければならないであろう。大抵は、高い方の周波数を低い方の周波数にダウンサンプリングすることが行われる。
【0056】
同様に、被験者の動きもデジタルカメラで撮影することができ、さらにコンピュータへと送ることができる。その際に、被験者の特定の位置に、例えば特定の関節位置にマーカを配置することが可能であり、そのマーカの動きを同様にしてデジタルカメラにより撮影することができ、さらにコンピュータへと送ることができる。さらに、被験者は、眼を開けた状態ないし閉じた状態で所定の姿勢を取ることができる。
【0057】
このようにして得られたデータを分析することができる。
【実施例1】
【0058】
以下に、本発明を例示するが、限定するものではない。従来技術によるシステムが、電磁石と、A/Dコンバータと、キネクトカメラ(KinectKamera)と、ウェブカム(Webcam)と、4個の位置マーカとによって拡張されたことで、コンピュータ制御による標準化された測定開始が可能になり、プラットフォームの加速度が加速度センサにより検出できるとともに、その位置もデジタルカメラにより検出できる。被験者及び/又は患者は、重心/姿勢動揺検査用のプラットフォーム上で、いつもの運動メニューをこなさなければならない(例えば、眼を開けた状態と閉じた状態とで、或いは頭を後ろに傾けた状態で両足で立ったり、片足で立ったり、眼を開けた状態と閉じた状態とで発泡スチロールの下敷き(Schaumstoffunterlage)の上に両足で立ったりする。)。拡張を行う際には、プラットフォームの主要構成に対して構造上の不可逆的な変更は何ら加えられることがなかったので、全ての部品は、モジュール式に再び分解することができる。ただ単に、電磁石を固定するためにプラットフォームのフレームに追加でネジ穴(各隅に三つの穴、合計で12個の穴)が設けられたに過ぎない。電磁石は、二本のレール機構を持つプレート上に取り付けられており、二軸上でずらす(偏向する)ことができる。このプレートは、プラットフォームの下側にあり、プラットフォームに固定される。電磁石は、A/Dコンバータに接続されているので、電磁石の起動/停止がコンピュータにより制御できる。プラットフォームそのものは、磁化するものではないため、強磁性体のプレート(11.5cm×10cm×1cm)がプラットフォーム下側に取り付けられた(接着された)。磁化は、電源により回路を介して行われる。ビデオ画像を加速度・時間の順序と同期させるのは、順番にオン/オフされるLED列により行われる。これらのLEDは、固有の位置マーカと一緒されて、プラットフォームには固定されていない別体のホルダ上にある。このLEDは、ビデオ画像上で自動的に認識される。このLEDは、付加的なタイムスタンプを、A/Dコンバータ・ボードを介して記録コンピュータへと送るので、時間順序とビデオシーケンスとの同期化が可能とされている。
図1