(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6454451
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】シンチレータモジュール、シンチレータセンサユニット及びシンチレータモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
G21K 4/00 20060101AFI20190107BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
G21K4/00 A
G01T1/20 L
G01T1/20 C
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-550000(P2018-550000)
(86)(22)【出願日】2017年2月17日
(86)【国際出願番号】JP2017005831
【審査請求日】2018年9月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511113682
【氏名又は名称】野洲メディカルイメージングテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】国本 文亨
【審査官】
藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−095189(JP,A)
【文献】
特開2005−114397(JP,A)
【文献】
特開2003−098299(JP,A)
【文献】
特開2015−045615(JP,A)
【文献】
特開2014−153074(JP,A)
【文献】
特開2004−294137(JP,A)
【文献】
特開2016−136094(JP,A)
【文献】
中国特許第101900824(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 4/00
G01T 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶着性及び防湿性を有する材料で形成され、ファイバーオプティックプレートに積層されたシンチレータ層及び可視光反射層を前記ファイバーオプティックプレートの側面まで延在して密閉状態で覆う防湿溶着層と、
前記防湿溶着層を前記ファイバーオプティックプレートの側面に対し圧着状態で覆う樹脂製ケースと、
を備えたシンチレータモジュール。
【請求項2】
前記樹脂製ケースは、前記可視光反射層と前記防湿溶着層を介して対向する面及び前記ファイバーオプティックプレートの周面の形状に沿った周壁面を有する、
請求項1記載のシンチレータモジュール。
【請求項3】
前記樹脂製ケースは、前記周壁面及び前記防湿溶着層を介して前記ファイバーオプティックプレートに対向するように嵌め込まれている、
請求項2記載のシンチレータモジュール。
【請求項4】
前記樹脂製ケースは、収縮時に前記圧着状態となる所定の収縮率以上の収縮率を有する熱可塑性樹脂で形成されている、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載のシンチレータモジュール。
【請求項5】
前記樹脂製ケースは、前記収縮率が10/1000%以上である結晶性樹脂で形成されている、
請求項4記載のシンチレータモジュール。
【請求項6】
前記防湿溶着層は、ブチルゴム系溶着材により形成されている、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載のシンチレータモジュール。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6記載のいずれか一項記載のシンチレータモジュールと、
前記ファイバーオプティックプレートに対向する位置に配置されたフォトダイオードアレイユニットと、
を備えたシンチレータセンサユニット。
【請求項8】
ファイバーオプティックプレートにシンチレータ層及び可視光反射層を積層して形成する工程と、
前記可視光反射層に載置された溶着性及び防湿性を有する材料で形成されたシートに熱可塑性樹脂で形成された蓋形状を有する樹脂製ケースを当接させて覆う工程と、
金型により前記樹脂製ケース及び前記シートを加熱しつつ前記ファイバーオプティックプレート側に向けて前記樹脂製ケースを加圧し、前記シートを前記ファイバーオプティックプレートの側面まで延在させて防湿溶着層を形成する工程と、
前記金型を外して冷却する工程と、
を備えたシンチレータモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレータモジュール、シンチレータセンサユニット及びシンチレータモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療、工業用のX線撮影では、感光フィルムが用いられてきたが、リアルタイム性や維持管理費の観点から放射線イメージセンサを備えた放射線イメージングシステムが普及してきている。
【0003】
このような放射線イメージングシステムに適用可能な放射線イメージセンサとしては、様々考えられるが、一例として、フラットパネルディテクタが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなフラットパネルディテクタに用いられルシンチレータモジュールとして、ファイバーオプティックプレート(FOP)を用いたシンチレータモジュールが知られている。
【0005】
ファイバーオプティックプレートを用いたシンチレータモジュールにおいては、ファイバーオプティックプレート上にシンチレータ層を成膜した後、放射線入射側からの可視光を反射するためにアルミニウムなどの金属を真空蒸着して反射層を形成し、防湿性を持たせるために樹脂層(例えば、パリレンポリマー)でコーティングして防湿コーティング層を形成する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−116258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、反射層及び防湿コーティング層を形成するには、高度な真空蒸着装置が必要となり、製造工程が複雑化し、生産コストが高くなるという問題点があった。
また、防湿コーティング層の透湿性(WVTR:Water Vapor Transmission Rate)は、膜厚20μmの場合、4g/m
2・24h(=4g/m
2・day)程度であり、決して高いとは言えなかった。
【0008】
また防湿コーティング層の厚さは上述したように非常に薄いため、外部からの衝撃に対し弱く、キズや剥離が発生し防湿性を著しく悪化させ、ひいては、フラットパネルディテクタの性能を低下させてしまう虞があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、容易に製造可能で、機械的な衝撃に強く、防湿性を高く維持することが可能なシンチレータモジュール、シンチレータセンサユニット及びシンチレータモジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態のシンチレータモジュールは、溶着性及び防湿性を有する材料で形成され、ファイバーオプティックプレートに積層されたシンチレータ層及び可視光反射層を前記ファイバーオプティックプレートの側面まで延在して密閉状態で覆う防湿溶着層と、防湿溶着層を
ファイバーオプティックプレートの側面に対し圧着状態で覆う樹脂製ケースと、を備える。
【0011】
この場合において、樹脂製ケースは、
可視光反射層と防湿溶着層を介して対向する面及びファイバーオプティックプレートの周面の形状に沿った周壁面を有するようにしてもよい。
【0012】
また、樹脂製ケースは、周壁面及び防湿溶着層を介して前記ファイバーオプティックプレートに対向するように嵌め込まれているようにしてもよい。
【0013】
また、樹脂製ケースは、
収縮時に圧着状態となる所定の収縮率以上の収縮率を有する熱可塑性樹脂で形成されているようにしてもよい。
さらに樹脂製ケースは、
収縮率が10/1000%以上である結晶性樹脂で形成されているようにしてもよい。
【0014】
また、防湿溶着層は、ブチルゴム系溶着材により形成されているようにしてもよい。
【0015】
また、実施形態のシンチレータセンサユニットは、上記いずれかのシンチレータモジュールと、ファイバーオプティックプレートに対向する位置に配置されたフォトダイオードアレイユニットと、を備える。
【0016】
また、実施形態のシンチレータモジュールの製造方法は、ファイバーオプティックプレートにシンチレータ層及び可視光反射層を積層して形成する工程と、可視光反射層に載置された溶着性及び防湿性を有する材料で形成されたシートに熱可塑性樹脂で形成された蓋形状を有する樹脂製ケースを当接させて覆う工程と、金型により樹脂製ケース及びシートを加熱しつつファイバーオプティックプレート側に向けて樹脂製ケースを加圧し、シートをファイバーオプティックプレートの側面まで延在させて防湿溶着層を形成する工程と、金型を外して冷却する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態のシンチレータセンサユニットの概要構成図である。
【
図2】
図2は、シンチレータモジュールの概要構成断面図である。
【
図3】
図3は、シンチレータモジュールの作製手順のフローチャートである。
【
図4】
図4は、シンチレータモジュールの作製手順の説明図(その1)である。
【
図5】
図5は、シンチレータモジュールの作製手順の説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
図1は、実施形態のシンチレータセンサユニットの概要構成図である。
シンチレータセンサユニット10は、大別すると、入射面11A側から入射した放射線(例えば、X線)を可視光に変換して出射面11B側から出力するシンチレータモジュール11と、シンチレータモジュール11により変換された可視光を受光して画像データとして出力するフォトダイオードアレイユニット12と、を備えている。
【0019】
図2は、シンチレータモジュールの概要構成断面図である。
シンチレータモジュール11は、入射した放射線を可視光に変換するシンチレータ層21と、シンチレータ層21により変換された可視光をフォトダイオードアレイユニット12まで導く導光部材としてのファイバーオプティックプレート22と、シンチレータ層21に積層され放射線の入射面11A側から入射する可視光を反射して入射を妨げるとともにシンチレータ層21により変換された可視光をファイバーオプティックプレート22側に反射する可視光反射フィルム層23と、を備えている。
【0020】
さらにシンチレータモジュール11は、可視光反射フィルム層23の入射面11A側及び側面、シンチレータ層21の側面(周面)及びファイバーオプティックプレート22の側面の一部を覆って、ファイバーオプティックプレート22との間にシンチレータ層21及び可視光反射フィルム層23を防湿状態で収容するブチルゴム系溶着材層24と、ブチルゴム系溶着材層24の入射面11A側の面及び可視光反射フィルム層23、平面視長方形状の蓋形状を有し、シンチレータ層21及びファイバーオプティックプレート22の側面に対向している面の全てに対向して圧着状態を維持しブチルゴム系溶着材層(防湿溶着層)24を機械的に保護する樹脂製ケース(樹脂製カバー部材)25と、を備えている。
【0021】
上記構成において、シンチレータ層21は、ファイバーオプティックプレート22上に成膜されて形成され、例えば、CsI(Tl)[タリウム活性化ヨウ化セシウム]、CsI(Na)[ナトリウム活性化ヨウ化セシウム]、NaI(Tl)[タリウム活性化ヨウ化ナトリウム]等として構成されている。
【0022】
また、ファイバーオプティックプレート22は、多数本のシングルモード光ファイバと、シングルモード光ファイバの周囲に形成され漏れ光を吸収する吸収体ガラスと、によりプレート状に形成されて、入射光をダイレクトにフォトダイオードアレイユニット12まで導く。
【0023】
可視光反射フィルム層23は、例えば、アルミ薄膜等金属薄膜とポリエステル系樹脂を用いた多層膜構造を有するフィルムとして構成されている。
【0024】
ブチルゴム系溶着材層24としては、透湿性が低く(例えば、<<4g/m
2・24h)、すなわち、防湿性が高く、粘着性があり、ファイバーオプティックプレート22及び樹脂製ケース25との密着性が高い材料が用いられる。例えば、アイカ工業株式会社製HX−779BT等が用いられる。
【0025】
樹脂製ケース25としては、加工が容易で放射線の入射を妨げにくい樹脂材料である熱可塑性樹脂が用いられている。特に好ましくは、収縮率が10/1000%以上の結晶性樹脂が用いられる。例えば、ポリエチレン樹脂(収縮率20/1000〜60/1000%)、ポリプロピレン樹脂(収縮率10/1000〜25/1000%)が用いられる。
【0026】
ここで、樹脂製ケース25の厚さとしては、加工の容易さ、取り扱いの容易さおよび強度の観点、シンチレータセンサユニット10が搭載されるカセッテや機器の形状による厚み制限などのアプリケーションからの要求等から、厚さ0.1mm〜1.0mm程度のものが用いられるが、加工時に必要とされる強度(必要に応じてさらに形状)が確保されれば、基本的には任意である。
【0027】
そして、これらの樹脂は、金型成形によりその形状が、例えば、平面視長方形状の蓋形状とされて樹脂製ケース25として形成される。なお、平面視形状は、これに限るものでは無く、円形状、多角形状等シンチレータセンサユニット10に要求される形状であればいずれの形状でも可能である。
【0028】
ところで、上述したブチルゴム系溶着材層24は、粘着性及び軟質性のため、そのままでは物理的な接触や衝撃などに弱いが、樹脂製ケース25が覆っているため、ブチルゴム系溶着材層24への影響を低減している。
【0029】
ここで、実施形態のシンチレータモジュールの作製手順について説明する。
図3は、シンチレータモジュールの作製手順のフローチャートである。
図4は、シンチレータモジュールの作製手順の説明図(その1)である。
【0030】
まず、平面視長方形状のファイバーオプティックプレート22の一方の面に、
図4(A)に示すように、シンチレータ層21を成膜する(ステップS11)。
次に
図4(B)に示すように、シンチレータ層21に可視光反射用フィルムを貼り付けて、可視光反射フィルム層23を形成する(ステップS12)。
【0031】
次に
図4(C)に示すように、可視光反射フィルム層23の上面にブチルゴム系溶着材シート24Sを載置し(ステップS13)、さらに
図4(D)に示すように、樹脂製ケース25を被せる(ステップS14)。
【0032】
この状態においては、
図4(C)に示したように、ブチルゴム系溶着材シート24Sは可視光反射フィルム層23の上面に位置するだけであり、ファイバーオプティックプレート22の側面には至っておらず、可視光反射フィルム層23及びシンチレータ層21を収納する状態とはなっていない。
【0033】
図5は、シンチレータモジュールの作製手順の説明図(その2)である。
続いて、
図5(A)に示すように、樹脂製ケース25の上面側(ファイバーオプティックプレート22から遠い側)から、加熱、加圧可能な上部金型31Uが樹脂製ケース25の上面及び側面を覆い、下部金型31Lがファイバーオプティックプレート22を支持するように金型31を当接させ、加圧及び加熱するヒートプレス処理を行う(ステップS15)。
【0034】
この場合において、金型31の内寸は、樹脂製ケース25の加熱時の膨張分を考慮したサイズとするのが好ましい。これは、加工後のブチルゴム系溶着材層24の厚さが必要以上に薄くなり、防湿性が低下するのを抑制するためである。
【0035】
この結果、熱可塑性樹脂で形成されている樹脂製ケース25は加熱により膨張し、ブチルゴム系溶着材シート24Sは、硬度が低下し、流動性が高くなり、
図5(B)に示すように、樹脂製ケース25と、可視光反射フィルム層23、シンチレータ層21およびファイバーオプティックプレート22の側面との隙間に沿って流れて、可視光反射フィルム層23の入射面11A側及び側面、シンチレータ層21の側面(周面)並びにファイバーオプティックプレート22の側面の一部を覆って、ファイバーオプティックプレート22との間にシンチレータ層21及び可視光反射フィルム層23を収容した状態となる。
【0036】
この状態で金型31による加熱を停止し、離型し、冷却することにより熱可塑性樹脂で形成されている樹脂製ケース25を収縮させる(ステップS16)。
【0037】
これにより、可視光反射フィルム層23の入射面11A側及び側面、シンチレータ層21の側面(周面)並びにファイバーオプティックプレート22の側面の一部には、ブチルゴム系溶着材シート24Sが溶着されて、
図5(C)に示すように、ブチルゴム系溶着材層24として形成され、ファイバーオプティックプレート22との間にシンチレータ層21及び可視光反射フィルム層23を防湿状態で収容することとなる。
【0038】
この状態において、ブチルゴム系溶着材層24は、加熱、冷却時にほとんど寸法が変化しないファイバーオプティックプレート22と、加熱時に膨張し、冷却時に収縮する樹脂製ケース25との間に圧着状態で挟まれるため、確実に防湿性能を確保できるとともに、樹脂製ケース25により物理的に保護される。
【0039】
以上の説明のように、本実施形態によれば、シンチレータモジュールの防湿保護及びパッケージングを高度な真空蒸着装置を使用せずに低コストで行える。
【0040】
以上の説明においては、ブチルゴム系溶着材シート24Sを一枚のシート形状を有するものとして説明したが、シンチレータセンサユニット10の大きさが大きい場合等には、複数のシートを敷き詰めたり、テープ形状を有し、所定の幅を有するブチルゴム系溶着材テープを複数本敷き詰めて全体としてシート状として用いたりするように構成することも可能である。
また、以上の説明においては、防湿溶着層としてブチルゴム系溶着材を用いていたが、これに限られるものでは無く、加熱及び加圧して同様の性状をしめす材料であれば同様に適用が可能である。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【要約】
シンチレータモジュールは、溶着性及び防湿性を有する材料で形成され、ファイバーオプティックプレートに積層されたシンチレータ層及び可視光反射層をファイバーオプティックプレートの側面まで延在して密閉状態で覆う防湿溶着層と、防湿溶着層を覆う樹脂製ケースと、を備えるので、シンチレータモジュールを容易に製造可能で、機械的な衝撃に強く、防湿性を高く維持することが可能なシンチレータモジュールが得られる。