特許第6454480号(P6454480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6454480-船舶航行規制構造 図000002
  • 特許6454480-船舶航行規制構造 図000003
  • 特許6454480-船舶航行規制構造 図000004
  • 特許6454480-船舶航行規制構造 図000005
  • 特許6454480-船舶航行規制構造 図000006
  • 特許6454480-船舶航行規制構造 図000007
  • 特許6454480-船舶航行規制構造 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454480
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】船舶航行規制構造
(51)【国際特許分類】
   B63B 22/16 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
   B63B22/16 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-95553(P2014-95553)
(22)【出願日】2014年5月2日
(65)【公開番号】特開2015-212120(P2015-212120A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2017年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】三吉 正英
(72)【発明者】
【氏名】正城 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】石田 正利
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3033552(JP,U)
【文献】 実開平6−68777(JP,U)
【文献】 特開平11−221373(JP,A)
【文献】 特開2006−230571(JP,A)
【文献】 実開平03−058500(JP,U)
【文献】 米国特許第05330378(US,A)
【文献】 特開平06−228931(JP,A)
【文献】 実開平07−007671(JP,U)
【文献】 実開昭58−179199(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 22/16
A63B 69/12 − 69/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面上に設置されて、船舶の航行を規制する水域を区画する船舶航行規制構造において、
浮力を作用させて前記船舶航行規制構造を水面上に浮かせるフロートと、
隣接する前記フロートの間に設けられた、弾性材料からなるフロート間隔保持材と、
前記フロート及び前記フロート間隔保持材に挿通され、前記フロート及び前記フロート間隔保持材を線状に交互配列するロープ体と、を備え、
前記フロート間隔保持材は、端面に弾性変形可能な緩衝スペーサが介装された、順次径の大きなチューブ体が前記ロープ体を取り囲んだ複層チューブ体からなり、該複層チューブ体の最内側に位置する最小径のチューブ体が前記ロープ体に外周から締め付け固定されたことを特徴とする船舶航行規制構造。
【請求項2】
前記複層チューブ体は、前記緩衝スペーサと前記フロートとを密着させるように、最小径の前記チューブ体が前記緩衝スペーサの端面に向けて押圧された状態で前記ロープ体に固定されたことを特徴とする求項に記載の船舶航行規制構造。
【請求項3】
前記複層チューブ体において、最大径の前記チューブ体は、径の小さな他の前記チューブ体よりも長く、前記緩衝スペーサを両端部に収容したことを特徴とする請求項2に記載の船舶航行規制構造。
【請求項4】
前記フロートに形成された挿通孔は、最小径の前記チューブ体を前記ロープ体に締め付け固定する固定手段が通り抜けることができない大きさであることを特徴とする請求項に記載の船舶航行規制構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水面上に設置されて、小型船舶の航行を規制する水域を区画する船舶航行規制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
海、湖沼、河川において、小型船舶等が、水面上に構築された構造物へ侵入したり、衝突するのを防止するために、構造物の周囲に設置して、船舶が航行禁止水域へ進入するのを防止する船舶航行規制構造が供用されている。この船舶航行規制構造としては、浮体が配列されたロープやケーブルを、水面に線状に浮かせて設置するタイプが種々開発、実用化されている。このような船舶航行規制構造は、設置が容易であって、また船舶の侵入を確実に防止するため、船舶の乗員によって容易に回避あるいは除去されないことが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ロープやケーブルを浮体で水面上に浮かせた構造からなる、従来の船舶航行規制構造には、プレジャーボートやカヌーのような小型の船舶、舟艇に乗った乗員がデッキやコックピットから身を乗り出してロープやケーブルに手を引っ掛けることができる箇所が多数存在していた。そのため、乗員が、意図的に船舶航行規制構造を持ち上げて、それをくぐるようにして船舶等を航行禁止水域に侵入させることができた。
【0004】
そこで、本発明は、供用中に容易に回避あるいは除去することができない船舶航行規制構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本願に係る船舶航行規制構造は、水面上に設置されて、船舶の航行を規制する水域を区画する船舶航行規制構造において、浮力を作用させて前記船舶航行規制構造を水面上に浮かせるフロートと、隣接する前記フロートの間に設けられた、弾性材料からなるフロート間隔保持材と、前記フロート及び前記フロート間隔保持材に挿通され、前記フロート及び前記フロート間隔保持材を線状に交互配列するロープ体と、を備え、前記フロート間隔保持材は、端面に弾性変形可能な緩衝スペーサが介装された、順次径の大きなチューブ体が前記ロープ体を取り囲んだ複層チューブ体からなり、該複層チューブ体の最内側に位置する最小径のチューブ体が前記ロープ体に外周から締め付け固定されたことを特徴とする。
【0007】
前記複層チューブ体は、前記緩衝スペーサと前記フロートとを密着させるように、最小径の前記チューブ体が前記緩衝スペーサの端面に向けて押圧された状態で前記ロープ体に固定されることが好ましい。
【0008】
前記フロート間隔保持材において、最大径のチューブ体の長さは、径の小さな他のチューブ体よりも長くしてもよい。
【0010】
前記フロートに形成された挿通孔は、最小径の前記チューブ体を前記ロープ体に締め付け固定する固定手段が通り抜けることができない大きさであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、供用中に容易に回避あるいは除去することができない船舶航行規制構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る船舶航行規制構造が水面に設置された様子を示した模式図。
図2】本発明の実施形態に係る船舶航行規制構造を構成する船舶航行規制ラインを示した平面図。
図3】本発明の実施形態に係る船舶航行規制構造を構成する船舶航行規制ラインを示した図であり、(a)は全体を示した断面図、(b)は(a)中の矢視b−bで示した断面図。
図4】本発明の実施形態に係る船舶航行規制構造を構成する船舶航行規制ラインの製造過程を工程順((a)〜(b))に示した断面図。
図5】本発明の実施形態に係る船舶航行規制構造の製造過程を、図4に続いて工程順((a)〜(b))に示した断面図。
図6】本発明の実施形態に係る船舶航行規制構造を構成する船舶航行規制ラインの2種類の連結方法((a)、(b))を示した平面図。
図7】本発明の他の実施形態に係る船舶航行規制構造を構成する船舶航行規制ラインを示した図であり、(a)は平面図、(b)は断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る船舶航行規制構造について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る船舶航行規制構造が対象水域の水面に設置された様子を示した模式図である。船舶航行規制構造1は、対象水域を内側水域2と外側水域3とに区画する。ここで、内側水域2とは、例えば、埋め立て工事が行われる水域やその近傍の水域であって、船舶5の航行を禁止あるいは規制している水域である。船舶航行規制構造1は、複数本の船舶航行規制ライン10が線状に連結されて構成されている。
【0014】
船舶航行規制構造1には、図1に示したように、所定の間隔をあけて灯浮標4が連結されている。灯浮標4は、標識用の灯火を点灯する照明装置(不図示)を備えている。外側水域3を航行する船舶5の乗員は、夜間において、照明装置からの灯火を確認することで並んだ灯浮標4間に船舶航行規制構造1としての船舶航行規制ライン10が設置されていることを認識することができる。これにより、船舶5の乗員は、船舶航行規制ライン10よりも向こう側が、船舶5の航行が制限されている水域(内側水域2)であることを認識できる。
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係る船舶航行規制構造を構成する船舶航行規制ライン10の一部分を拡大して示した平面図である。また、図3は、本発明の実施形態に係る船舶航行規制構造を構成する船舶航行規制ラインを示した図であり、(a)は全体を示した断面図、(b)は(a)中の矢視b−bで示した断面図である。
【0016】
図2に示すように、船舶航行規制ライン10は、複数個のフロート20と、フロート20間を所定距離に保持するように配置されたフロート間隔保持材30と、フロート20とフロート間隔保持材30に挿通されたロープ40と、図中左右両端にあるフロート20の左右方向の移動を規制する端部スペーサ50とで、その外観が概略構成されている。
【0017】
フロート20は略球形状をなしており、図3に示すように、例えば、高密度ポリエチレンから構成された外皮体21と、発泡スチロールから構成され、その周囲を外皮体21に覆われた内部体22とから構成されている。このように、フロート20の外皮体21を高密度ポリエチレンから構成することにより、フロート20に適切な強度と耐久性が付与され、供用中にフロート20の船舶の接触等による破損や海水、日射による劣化を防止することができる。また、フロート20の内部体22を発泡スチロールから構成することで、水面上に設置された船舶航行規制ライン10に、適切な浮力を作用させることができる。なお、図3に示すように、フロート20の略中央には、ロープ40が挿通されるロープ挿通孔20aが形成されている。このロープ挿通孔20aは、ロープ40の径よりも若干の大きめの孔である。これにより、ロープ40に挿通されたフロート20は、ロープ40を中心に回転することができる。
【0018】
フロート間隔保持材30は、図3に示すように、径の異なる4つの樹脂ホース31、33、34、35と、ホースバンド32と、2つの緩衝スペーサ36とを有している。フロート間隔保持材30は、ロープ40に通され、隣接するフロート20の間に配置されている。フロート間隔保持材30は、長さ方向に沿って裁断された状態でホース40に巻きつけられた第1樹脂ホース31と、第1樹脂ホース31をロープ40に締め付けて固定するためのホースバンド32とを有している。第1樹脂ホース31は、例えば、内径が50mm(呼び径50)の塩化ビニル樹脂ホースである。一方、ホースバンド32は、例えばステンレス製である。間隔をあけて配置された3つのホースバンド32のそれぞれのねじ(不図示)を締めることで、第1樹脂ホース31をロープ40に締め付ける。
【0019】
なお、フロート20に形成されたロープ挿通孔20aは、ロープ40に第1樹脂ホース31を締め付けたホースバンド32が通り抜けることができない大きさで形成されている。これにより、ロープ40がいずれかの箇所で切断してしまったとしても、ホースバンド32でロープ40に取り付けられた第1樹脂ホース31がロープ挿通孔20aに引っ掛かるため、フロート20及びフロート間隔保持材30がロープ40の切断箇所から抜け落ちて、ばらばらになってしまうことを防止することができる。
【0020】
第2樹脂ホース33は、例えば、内径が75mm(呼び径75)の塩化ビニル樹脂ホースであり、図3(a)、(b)に示すように、ロープ40に第1樹脂ホース31を締め付けたホースバンド32を取り囲む。また、第3樹脂ホース34は、例えば、内径が125mm(呼び径125)の塩化ビニル樹脂ホースであり、図3(a)、(b)に示すように、第2樹脂ホース33を取り囲む。
【0021】
緩衝スペーサ36は、円板状に形成された3枚のゴム板36aが積層されて構成されており、その中央には、ロープ40を挿通するためのロープ挿通孔36bが形成されている。図3(a)に示すように、2つの緩衝スペーサ36の間には、弾性体である第1樹脂ホース31、第2樹脂ホース33、及び第3樹脂ホース34が介在している。
【0022】
第4樹脂ホース35は、例えば、内径が200mm(呼び径200)の塩化ビニル樹脂ホースであり、図3(a)、(b)に示すように、上述したフロート間隔保持材30の各構成部材を取り囲んでおり、フロート間隔保持材30の最も外側部を形成する。第4樹脂ホース35は、第1樹脂ホース31、第2樹脂ホース33、及び第3樹脂ホース34よりも長い。これにより、第1樹脂ホース31、第2樹脂ホース33、及び第3樹脂ホース34の端部に接触して配置された緩衝スペーサ36は、第4樹脂ホース35の端部よりも内側に位置し、第4樹脂ホース35内に収容された状態にある。なお、上述した第1樹脂ホース31、第2樹脂ホース33、及び第3樹脂ホース34、第4樹脂ホース35として、本実施形態では軟質塩化ビニル樹脂製ホースが用いられているが、合成ゴムホースの他、切断等の加工が容易で、適度の可撓性、耐候性を有する各種の材質のホースやその他の管材を利用することができる。
【0023】
ロープ40は、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維からなるロープである。ロープ40の両端部は、アイスプライス加工が施されてリング部40aが形成されている。このリング部40aは、後述するように、船舶航行規制ライン10を連結して長尺なものとするために用いられる。
【0024】
端部スペーサ50は、緩衝スペーサ36と同様、円板状に形成された3枚のゴム板50aが積層されて構成されており、その中央には、ロープ40を挿通するためのロープ挿通孔50bが形成されている。端部スペーサ50は、船舶航行規制ライン10の最も外側に配されたフロート20に、船舶航行規制ライン10の端部側から接するように配されている。すなわち、2つの端部スペーサ50は、一列に交互に配置されたフロート20及びフロート間隔保持材30の両端を挟むように配置されている。
【0025】
また、端部スペーサ50の外側には、長さ方向に沿って裁断されてロープ40に巻きつけられた第5樹脂ホース60と、第5樹脂ホース60をロープ40に締め付けるためのホースバンド61とを有している。第5樹脂ホース60は、例えば、内径が50mm(呼び径50)の塩化ビニル樹脂ホースである。一方、ホースバンド61は、例えばステンレス製である。間隔をあけて配置された3つのホースバンド61のそれぞれのねじ(不図示)を締めることで、ロープ40に第5樹脂ホース60を締め付ける。端部スペーサ50にあけられたロープ挿通孔50bの大きさは、第5樹脂ホース60や、ロープ40に第5樹脂ホース60を締め付けたホースバンド61が通り抜けることができない大きさである。これにより、船舶航行規制ライン10の両サイドに設けられた端部スペーサ50の左右方向の動きが制限されている。
【0026】
また、船舶航行規制ライン10は、ロープ40から分岐した枝ロープ71を有している。枝ロープ71は、ロープ40と同様に、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維から構成されている。枝ロープ71の一端には、アイスプライス加工が施されてリング部71aが形成されている。フロート間隔保持材30には、枝ロープ71を挿通させるための切欠き30bが形成されている。
【0027】
次に、船舶航行規制ライン10の製造方法について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る船舶航行規制構造を構成する船舶航行規制ラインの製造過程を工程順((a)〜(b))に示した断面図である。また、図5は、本発明の実施形態に係る船舶航行規制構造の製造過程を、図4に続いて工程順((a)〜(b))に示した断面図である。
【0028】
まず、図4(a)に示すように、一端にリング部40aが形成されたロープ40を準備する。そして、ロープ40のリング40aの近傍に、長さ方向に裁断された第5樹脂ホース60を巻きつけ、3つのホースバンド61で締め付ける。続いて、図4(a)に示すように、図中左方から右方に向けて、端部スペーサ50、フロート20、緩衝スペーサ36、第1樹脂ホース31、ホースバンド32を、これらの順にホース40に通していく。そして、図4(b)に示すように、ロープ40と第1樹脂ホース31とを3つのホースバンド32で締め付ける。この時、フロート20は、緩衝スペーサ36と端部スペーサ50とよって、左右から圧縮された状態にある。これは、緩衝スペーサ36を図中右方へ押圧した状態で、第1樹脂ホース31をホースバンド32で締め付けて緩衝スペーサ36の図中左方向の動きを制限することで実現している。これにより、緩衝スペーサ36がフロート20を右方向へ押圧した状態が維持されることになる。
【0029】
続いて、図4(b)に示すように、図中左方から右方に向けて、第2樹脂ホース33、第3樹脂ホース34、緩衝スペーサ36、第4樹脂ホース35を、これらの順にホース40に通していく。これにより、図5(a)に示すようにフロート20の図中左方にフロート間隔保持材30を形成する。
【0030】
続いて、図5(a)に示すように、図中左方から右方に向けて、フロート20、緩衝スペーサ36、第1樹脂ホース31、3つのホースバンド32を、これらの順にホース40に通していく。そして、図5(b)に示すように、3つのホースバンド32を用いてロープ40に第1樹脂ホース31を締め付ける。この時、図5(b)の左側のフロート20は、左右の緩衝スペーサ36に挟まれて軸方向に圧縮された状態にある。これは、緩衝スペーサ36を図中右方に押圧した状態で、3つのホースバンド32を締め付けることで、緩衝スペーサ36の押圧状態が維持されるからである。
【0031】
このように、フロート20とフロート間隔保持材30と交互にロープ40に通して固定していく。そして最後に、ホース40の他端に、アイスプライス加工を施してリング部40aを形成する。これにより、船舶航行規制ライン10が形成される。
【0032】
このように、船舶航行規制ライン10を製造するに際し、各構成要素を一の方向(例えば、図中右方向)に押圧しながらロープ40に取り付けるという作業を繰り返す。これにより、各フロート20は、隣接するフロート間隔保持材30及び端部スペーサ50を押圧し、密着した状態で保持される。また、フロート間隔保持材30及び端部スペーサ50は、弾性材料から構成されている。そのため、船舶航行規制ライン10を製造する際、各構成要素を一の方向に押圧すると、フロート間隔保持材30及び端部スペーサ50は圧縮エネルギーを溜め込むことになる。フロート間隔保持材30及び端部スペーサ50が圧縮エネルギーを溜め込んだ状態で、図中左右方向の動きを制限してロープ40に取り付けられる。そのため、各フロート20が、隣接するフロート間隔保持材30及び端部スペーサ50を押圧し、互いの部材が隙間なく当接した状態を確実に保持することができる。これにより、フロート20とフロート間隔保持材30との間、及びフロート20と端部スペーサ50との間には、手を入れことはできない。そのため、船舶5の乗員は、船舶航行規制ライン10を持ち上げることが困難となり、船舶航行規制構造1を回避あるいは除去して船舶5を内側水域に侵入させることが困難となる。
【0033】
また、第4樹脂ホース35を、第1樹脂ホース31、第2樹脂ホース33、及び第3樹脂ホース34よりも長くすることで、緩衝スペーサ36を第4樹脂ホース35の端部よりも内側に配置させている。これにより、フロート間隔保持材30の一番外側の第4樹脂ホース35がフロート20に強く押し付けられ当接するために、人の手が入る隙間を確実になくすことが可能となる。
【0034】
また、フロート間隔保持材30は、市販されている樹脂ホースやホースバンドを用いて製造することが可能である。そのため、製造コストを抑制することができるとともに、短期間で製造することが可能となる。
【0035】
また、フロート20に形成されたロープ挿通孔20aは、ロープ40の径よりも若干の大きめの孔であるため、ロープ40に挿通されたフロート20はロープ40を中心に回転する。そのため、水流による抵抗を低減することができるとともに、ロープがねじれてしまうことを防止することができる。また、フロート20上に人が乗ることができないため、意図的に船舶航行規制構造1を除去することを困難にすることができる。
【0036】
なお、船舶航行規制構造1を構成する船舶航行規制ライン10は、施工性を考慮して、例えば30m以下の長さに設定されている。そのため、外側水域3と内側水域2とに区画するべき範囲が大きい場合には、船舶航行規制ライン10を現場で連結して、長尺なものとして水面上に設置する。図6は、本発明の実施形態に係る船舶航行規制構造を構成する船舶航行規制ラインの2種類の連結方法(a)、(b))を示した平面図である。
【0037】
図6(a)に示すように、第1船舶航行規制ライン10aと第2船舶航行規制ライン10bとは、それぞれのロープ40の端部を突き合せるように直列的に配置されている。そして、シャックル70が、第1船舶航行規制ライン10aのリング部40aと、第2船舶航行規制ライン10bのリング部40aとに通されて、第1船舶航行規制ライン10aと第2船舶航行規制ライン10bが連結されている。なお、図6(a)に示すように、シャックル70を用いて第1船舶航行規制ライン10aと第2船舶航行規制ライン10bとを直列的に連結した箇所には、フロート20が設置されていない区間80が存在している。このようなフロート20が設置されていない区間80に並列させて、第3船舶航行規制ライン10cが設置されている。
【0038】
第3船舶航行規制ライン10cは、第1船舶航行規制ライン10a等と比べて短尺であるが、主要な構成は同じである。第3船舶航行規制ライン10cは、一方の端部が第1船舶航行規制ライン10aから延びる枝ロープ71に突き合される。そして、シャックル70が、第1船舶航行規制ライン10aの枝ロープ71に形成されたリング部71aと、第3船舶航行規制ライン10cのロープ40に形成されたリング部40aとに通されて、第1船舶航行規制ライン10aと第3船舶航行規制ライン10cとが連結されている。また、第3船舶航行規制ライン10cは、他方の端部が第2船舶航行規制ライン10bから延びる枝ロープ71に突き合わされる。そして、シャックル70が、第2船舶航行規制ライン10bの枝ロープ71に形成されたリング部71aと、第3船舶航行規制ライン10cのロープ40に形成されたリング部40aとに通されて、第2船舶航行規制ライン10bと第3船舶航行規制ライン10cとが連結されている。
【0039】
このように、第1船舶航行規制ライン10aと第2船舶航行規制ライン10bとの連結部に並列するように、第3船舶航行規制ライン10cを設けることで、船舶航行規制構造1が延在する方向の全域にわたってフロート20を設けることができる。これにより、第1船舶航行規制ライン10aと第2船舶航行規制ライン10bとの連結部である、フロート20aが設置されていない区間80から船舶5(図1)を進入させることを防止することができる。
【0040】
船舶航行規制ライン10の他の連結方法としては、図6(b)に示すように、第4船舶航行規制ライン10dの一部と、第4船舶航行規制ライン10eの一部とをラップさせて連結する。すなわち、シャックル70が、第4船舶航行規制ライン10dの一端に形成されたリング部40aと、第5船舶航行規制ライン10eから延びる枝ロープ71に形成されたリング部71aに通される。また、シャックル70が、第4船舶航行規制ライン10dから延びる枝ロープ71に形成されたリング部71aと、第5船舶航行規制ライン10eの一端に形成されたリング部40aとに通される。これにより、第4船舶航行規制ライン10dと第5船舶航行規制ライン10eとが、互いの一部をラップさせた状態で連結される。
【0041】
このように、第4船舶航行規制ライン10dと第5船舶防止浮標10eとを、互いの一部をラップさせた状態で連結することで、船舶航行規制構造1が延在する方向の全域にわたってフロート20を設けることができる。このように、フロート20が設置されない区間をなくすことで、船舶5の進入を確実に防止することができる。
【0042】
次に、本発明の他の実施形態に係る船舶航行規制構造について説明する。図7は、本発明の他の実施形態に係る船舶航行規制構造を構成する船舶航行規制ラインを示した図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。なお、本実施形態に係る船舶航行規制ライン110においては、上記の実施形態にかかる船舶航行規制ライン10と同様の構成要素を多数有している。そのため、以下の説明では、異なる構成要素を中心に説明するとともに、同様の構成要素については同じ符号を付すものとする。
【0043】
図7(a)、(b)に示すように、船舶航行規制ライン110を構成するフロート間隔保持材はフロート間隔保持ブロック130と端面プレート136とを有している。フロート間隔保持ブロック130は、弾性材料である略円柱形ゴム製ブロックからなる。図7(b)に示すように、フロート間隔保持ブロック130の中央には、ロープ40を挿通するためのロープ挿通孔130aが形成されており、ロープ40に挿通された状態で、フロート20のそれぞれの間に配置されている。また、フロート間隔保持ブロック130の図中左右の端面には、樹脂ホース131及びホースバンド132を収容するための凹部である収容部130bが形成されている。また、所定のフロート間隔保持ブロック130には、ロープ40から分岐した枝ロープ71を挿通させるための切欠き130cが形成されている。
【0044】
フロート20の両サイドに接触した端面プレート136は、円板状に形成された1枚のゴム板から形成されており、その中央にはロープ40を挿通するためのロープ挿通孔136aが形成されている。
【0045】
また、船舶航行規制ライン110においては、ホースバンド131によりロープ40に締め付けられた樹脂ホース132と、ホースバンド161によりロープ40に締め付けられた樹脂ホース160により、フロート20やフロート間隔保持ブロック130の図中左右方向の移動が制限されている。上述したように、樹脂ホース131及びホースバンド132は、フロート間隔保持ブロック130に形成された収容部130b内に収容され、収容部130bを覆うように端面プレート136が配置されている。なお、船舶航行規制ライン110を連結する方法としては、上述の実施形態で説明した方法と同様の方法を採用することができる。
【0046】
本実施形態に係る船舶航行規制ライン110においても、フロート20、端面プレート136、フロート間隔保持ブロック130をロープ40に通していく。そして、これらの各構成要素を一方向(例えば、図中右方向)に押圧した状態で、ホースバンド131やホースバンド161を締め付けて、各構成要素をロープ40に取り付けるという作業を繰り返す。そのため、上述した実施形態に係る船舶航行規制構造1と同様に、各フロート20は、隣接するフロート間隔保持ブロック130及び端面プレート136を押圧し、密着した状態で保持される。また、フロート20のそれぞれの間に配されたフロート間隔保持ブロック130及び端面プレート136は、弾性材料であるゴムから構成されている。そのため、各フロート20が、隣接するフロート間隔保持ブロック130及び端面プレート136を押圧し、密着した状態を確実に保持することができる。
【0047】
この発明は、上記実施の形態に限定されず、様々な変形及び応用が可能である。上記実施の形態においては、フロートの外面を構成する外皮体は、高密度ポリエチレンから構成されていると説明したが、例えば、外皮体をゴム体から構成してもよい。これにより、フロートとフロート間隔保持材との密着度合いを向上させることが可能となる。
【0048】
また、船舶航行規制構造の各構成要素の左右方向(船舶航行規制構造の長さ方向)の移動を制限する方法として、裁断した樹脂ホースをロープに巻きつけてホースバンドで締め付ける方法を説明した。しかしながら、この方法に限定されるものではなく、種々の公知の方法を採用することできる。
【0049】
また、フロート間隔保持材30の両端に配された緩衝スペーサは必須の構成ではなく、フロート20とフロート間隔保持材30との適切な当接状態を確保できれば、省略することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 船舶航行規制構造
2 内側水域
3 外側水域
4 灯浮標
5 船舶
10、110 船舶航行規制ライン
20 フロート
30 フロート間隔保持材
31 第1樹脂ホース
32 ホースバンド
33 第2樹脂ホース
34 第3樹脂ホース
35 第4樹脂ホース
36 緩衝スペーサ
40 ロープ
50、150 端部スペーサ
71 枝ロープ
130 フロート間隔保持ブロック
136 端面プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7