(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の蓄電素子では、電極本体部(蓄電要素)とラミネート外装材が別々に構成されており、ラミネート外装材で外装した蓄電デバイスとしての全体厚さは、電極本体部の厚さとラミネート外装材の厚さの合計になることから、厚さ制限や重量制限のある用途(ICカード、スマートフォン等)への搭載は、必ずしも適しているとは言えない場合も多い。
【0010】
また、電極から導出されるタブ(リード線)を蓄電要素毎に設ける必要があるので、その分部品点数が多くなるという問題があった。
【0011】
更に、このタブ(リード線)は、ラミネート外装材の周縁のヒートシール部分で固定させる必要があるので、その分製造時の工数が多くなって手間がかかるという問題があるし、電池としての重量(質量)もより大きくなるという問題があった。
【0012】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、軽量・薄型で、繰り返し折り畳み可能であると共に、タブリードの取り付けを要せず部品点数を低減できる蓄電デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0014】
[1]第一金属箔層と、該第一金属箔層の一方の面に積層された相互に独立した複数の正極活物質層と、を含む正極部と、
第二金属箔層と、該第二金属箔層の一方の面に積層された相互に独立した複数の負極活物質層と、を含む負極部と、
前記正極部と前記負極部の間に配置されたセパレーターと、を備え、
前記第一金属箔層と前記セパレーターとの間に前記正極活物質層が配置され、前記第二金属箔層と前記セパレーターとの間に前記負極活物質層が配置され、
前記第一金属箔層の前記一方の面における正極活物質層が形成されていない周縁部領域と、前記第二金属箔層の前記一方の面における負極活物質層が形成されていない周縁部領域とが、熱可塑性樹脂を含有してなる周縁封止部を介して接合され、
前記第一金属箔層の前記一方の面における隣り合う正極活物質層の間の区画領域と、前記第二金属箔層の前記一方の面における隣り合う負極活物質層の間の区画領域とが、熱可塑性樹脂を含有してなる区画封止部を介して接合され、
前記第一金属箔層、前記第二金属箔層および前記周縁封止部で取り囲まれる内部空間が、前記区画封止部によって複数の独立した個室に区画され、
前記各個室内において、前記セパレーターと前記正極活物質層の間に電解液が封入され、前記セパレーターと前記負極活物質層の間に電解液が封入されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【0015】
[2]前記第一金属箔層の他方の面に、前記複数の個室のうち一方の端の1つの個室に対応する領域の少なくとも一部に該第一金属箔層が露出した第一金属露出部を残した態様で、第一絶縁樹脂フィルムが積層されると共に、
前記第二金属箔層の他方の面に、前記複数の個室のうち他方の端の1つの個室に対応する領域の少なくとも一部に該第二金属箔層が露出した第二金属露出部を残した態様で、第二絶縁樹脂フィルムが積層されている前項1に記載の蓄電デバイス。
【0016】
[3]前記第一金属箔層の他方の面が略全面にわたって露出し、前記第二金属箔層の他方の面が略全面にわたって露出している前項1に記載の蓄電デバイス。
【0017】
[4]前記第一金属箔層がアルミニウム箔で形成され、
前記第二金属箔層が、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔またはチタン箔で形成されている前項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
【0018】
[5]前項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイスが、前記区画封止部で折り畳まれてなる積層化蓄電デバイス。
【0019】
[6]隣り合う2つの区画封止部のうち一方が谷折りされると共に他方が山折りされることによって折り畳まれている前項5に記載の積層化蓄電デバイス。
【0020】
[7]第一金属箔層と、該第一金属箔層の一方の面に積層された相互に独立した複数の正極活物質層と、前記第一金属箔層の前記一方の面における正極活物質層が形成されていない周縁部および隣り合う正極活物質層の間に設けられた第一熱可塑性樹脂層と、を備えた正極側シート体を準備する工程と、
第二金属箔層と、該第二金属箔層の一方の面に積層された相互に独立した複数の負極活物質層と、前記第二金属箔層の前記一方の面における負極活物質層が形成されていない周縁部および隣り合う負極活物質層の間に設けられた第二熱可塑性樹脂層と、を備えた負極側シート体を準備する工程と、
セパレーターを準備する工程と、
少なくとも前記正極側シート体の正極活物質層と前記負極側シート体の負極活物質層との間に前記セパレーターを挟み込んだ状態で、前記正極側シート体の第一熱可塑性樹脂層と前記負極側シート体の第二熱可塑性樹脂層とをヒートシール接合する工程と、を含むことを特徴とする蓄電デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0021】
[1]の発明では、正極部を構成する第一金属箔層および負極部を構成する第二金属箔層が、蓄電デバイスの外装材としての機能も果たすものであり、即ち、第一、二金属箔層が、電極及び外装材の両機能を果たすものであり、従って本構成にさらに外装材を要することはないから(外装材が不要になるから)、蓄電デバイスとして、軽量化、薄型化、省スペース化を図ることができると共に、コストも低減できる。また、内部空間が、区画封止部によって複数の独立した個室に区画され、各個室内に電解液が封入されているから、仮に1つの個室において液漏れが生じたとしても、そのことが他の残りの個室に影響を及ぼすことがないから、少ない被害で済むし、デバイス性能にも大きな影響を及ぼさなくて済む。また、本発明の蓄電デバイスは、区画封止部で折り曲げたり(
図6参照)、折り畳む(
図7参照)ことが可能であるところ、この区画封止部(領域)は、正極活物質層、負極活物質層及び電解液が存在しない領域であるので、このように折り曲げ(
図6参照)、折り畳み(
図7参照)を行っても、活物質の脱落や電解液漏れが生じない。更に、このように蓄電デバイスを折り畳むことによって、デバイスを更にコンパクト化することができる。
【0022】
[2]の発明では、絶縁樹脂フィルムがデバイスの両側に積層されていることにより、(金属露出部を除いて)絶縁性を十分に確保できると共に、物理的強度も確保できて折り曲げ操作を繰り返しても金属層が金属疲労を起こすことがない。従って、絶縁性を備えていることが要求される箇所や凹凸のある箇所への(本薄型蓄電デバイスの)搭載にも十分に対応できる。
【0023】
また、正極と電気的に導通している第一金属露出部および負極と電気的に導通している第二金属露出部が存在していることで、これら金属露出部を介して電気の授受を行うことができるので、従来のリード線を不要とすることができる利点がある。従って、蓄電デバイスの部品点数を少なくすることができるし、さらに軽量化を図ることができる。
【0024】
更に、従来のリード線が不要となるので、蓄電デバイスの充放電時の発熱がリード線周りに集中するような現象も生じないし、正極部を構成する第一金属箔層および負極部を構成する第二金属箔層を介して発熱を蓄電デバイスの全体にわたって(面的に)拡散させることができるので、蓄電デバイスの寿命を延ばすことができる(長寿命の蓄電デバイスを得ることができる)。また、リード線が不要となることで、その分製造コストを低減できる。また、乾電池のように、ホルダーに蓄電デバイスを嵌め込むという簡単な装着手法を採用することもできる。
【0025】
[3]の発明では、正極と電気的に導通している第一金属箔層が略全面にわたって露出し、負極と電気的に導通している第二金属箔層が略全面にわたって露出していることで、これら金属箔層を介して電気の授受を行うことができるので、従来のリード線を不要とすることができる利点がある。従って、蓄電デバイスの部品点数を少なくすることができるし、さらに軽量化を図ることができる。
【0026】
更に、従来のリード線が不要となるので、蓄電デバイスの充放電時の発熱がリード線周りに集中するような現象も生じないし、正極部を構成する第一金属箔層および負極部を構成する第二金属箔層を介して発熱を蓄電デバイスの全体にわたって(面的に)拡散させることができるので、蓄電デバイスの寿命を延ばすことができる(長寿命の蓄電デバイスを得ることができる)。また、リード線が不要となることで、その分製造コストを低減できる。また、乾電池のように、ホルダーに蓄電デバイスを嵌め込むという簡単な装着手法を採用することもできる。
【0027】
[4]の発明では、第一金属箔層がアルミニウム箔で形成されているので、正極活物質の塗布性が良くなるし、熱可塑性樹脂を含有してなる周縁封止部および区画封止部の第一金属箔層への積層を容易化できる。また、第二金属箔層が、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔またはチタン箔で形成されているので、電池やキャパシタ等の種々の蓄電デバイスに用途を広げることができる。
【0028】
[5]及び[6]の発明では、上記いずれかの蓄電デバイスが、区画封止部で折り畳まれてなる構成であるので、デバイスを更にコンパクト化することができる。
【0029】
[7]の発明では、上述した本発明の蓄電デバイスを効率よく製造できる。正極側シート体の第一熱可塑性樹脂層と負極側シート体の第二熱可塑性樹脂層とをヒートシール接合した領域(周縁封止部、区画封止部)のうちの一部に相当する区画封止部は、正極活物質層、負極活物質層及び電解液が存在しない領域であるので、この区画封止部で折り曲げ(
図6参照)、折り畳み(
図7参照)を行っても、正極活物質、負極活物質の脱落や、電解液漏れを生じることがない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る蓄電デバイスの一実施形態を
図1〜5に示す。この蓄電デバイス1は、正極部22と、負極部23と、セパレーター21と、を備えてなる(
図2〜5参照)。前記正極部22と前記負極部23の間にセパレーター21が配置されている(
図2〜5参照)。
【0032】
前記正極部22は、第一金属箔層2と、該第一金属箔層2の一方の面(セパレーター側の面)における一部の領域に積層された正極活物質層3と、を含む。本実施形態では、前記正極部22は、第一金属箔層2と、該第一金属箔層2の一方の面(セパレーター側の面)に積層された相互に独立した複数の正極活物質層3と、を含む(
図1参照)。前記正極活物質層3は、前記第一金属箔層2の周縁部には設けられていない。
【0033】
前記負極部23は、第二金属箔層12と、該第二金属箔層12の一方の面(セパレーター側の面)における一部の領域に積層された負極活物質層13と、を含む。本実施形態では、前記負極部23は、第二金属箔層12と、該第二金属箔層12の一方の面(セパレーター側の面)に積層された相互に独立した複数の負極活物質層13と、を含む(
図1参照)。前記負極活物質層13は、前記第二金属箔層12の周縁部には設けられていない。
【0034】
前記第一金属箔層2と前記セパレーター21との間に前記正極活物質層3が配置され、前記第二金属箔層12と前記セパレーター21との間に前記負極活物質層13が配置されている(
図2〜5参照)。
【0035】
前記正極部22の第一金属箔層2の前記一方の面(セパレーター21側の面)の周縁部には、正極活物質層が形成されていない領域が存在し、前記負極部23の第二金属箔層12の前記一方の面(セパレーター21側の面)の周縁部には、負極活物質層が形成されていない領域が存在する。しかして、前記正極部22の第一金属箔層2の前記一方の面における正極活物質層が形成されていない周縁部領域と、前記負極部23の第二金属箔層12の前記一方の面における負極活物質層が形成されていない周縁部領域とが、熱可塑性樹脂を含有してなる周縁封止部31を介して接合されて封止されている(
図1〜4参照)。前記セパレーター21の周縁部は、前記周縁封止部31の内周面の高さ方向(厚さ方向)の中間部に侵入して係合した態様になっている(
図2〜4参照)。
【0036】
本実施形態では、前記正極部22の第一金属箔層2の前記一方の面における正極活物質層が形成されていない周縁部領域に第一周縁接着剤層6が積層され、前記負極部23の第二金属箔層12の前記一方の面における負極活物質層が形成されていない周縁部領域に第二周縁接着剤層16が積層され、これら両接着剤層6、16同士が、前記周縁封止部31を介して接合されて封止された構成が採用されている(
図2〜4参照)。
【0037】
また、前記正極部22の第一金属箔層2の前記一方の面(セパレーター21側の面)における隣り合う正極活物質層3、3の間の区画領域(正極活物質層が積層されていない領域)と、前記負極部23の第二金属箔層12の前記一方の面に(セパレーター21側の面)における隣り合う負極活物質層13、13の間の区画領域(負極活物質層が積層されていない領域)とが、熱可塑性樹脂を含有してなる区画封止部32を介して接合されて封止されている(
図5参照)。
【0038】
しかして、前記第一金属箔層2、前記第二金属箔層12および前記周縁封止部31で取り囲まれる内部空間が、前記区画封止部32によって複数の独立した個室33に区画されている(
図1、5参照)。即ち、各個室33は、いずれも、第一金属箔層2、前記第二金属箔層12、周縁封止部31および区画封止部32によって取り囲まれた空間であり、液密状態に構成されている。本実施形態では、互いに平行に配列された8条の区画封止部32によって9個の独立した個室33に区画されている(
図1参照)。前記個室33の形成数は、特に限定されるものではなく、例えば、1条の区画封止部32によって2個の独立した個室33に区画された構成を採用しても良い。
【0039】
前記各個室33内において、前記セパレーター21と前記正極活物質層3の間に電解液5が封入されると共に、前記セパレーター21と前記負極活物質層13の間に電解液15が封入されている(
図2〜5参照)。即ち、前記各個室33内に、正極活物質層3、電解液5、セパレーター21、電解液15、負極活物質層13がこの順に配置されて封入されている(
図2〜5参照)。前記各個室33は、周縁封止部31および区画封止部32による封止によって液密状態に構成されているから、電解液5、15の漏出を防止することができる。
【0040】
本実施形態では、蓄電デバイス1に折り目が設けられている。即ち、
図1、6に示すように、隣り合う2つの区画封止部32のうち一方の区画封止部32に谷折りの折り目が形成され、他方の区画封止部32に山折りの折り目が形成されている。折り目43、44は、いずれも区画封止部32の幅方向の中央位置に形成されている。
図1、6では、デバイスの長さ方向の一端側(第一金属露出部9が設けられている側)から長さ方向の他端側(第二金属露出部19が設けられている側)に向けて順に、山折りの折り目44、谷折りの折り目43が交互に設けられている。従って、
図6、7に示すように、これら折り目43、44で折り畳むことによって、折り畳み蓄電デバイス(積層化蓄電デバイス)45を得ることができる。なお、
図7は、図面での理解の容易のために、完全に折り畳んだ状態の直前の略折り畳み状態を示しており、製品としての構成は、通常、完全に折り畳まれた構成が採用されるものである。
【0041】
本実施形態では、更に次のような構成を備えている。即ち、前記第一金属箔層2の他方の面(セパレーター側の面とは反対側の面)に、該第一金属箔層が露出した第一金属露出部9を残した態様で、第一絶縁樹脂フィルム8が積層されると共に、前記第二金属箔層12の他方の面(セパレーター側の面とは反対側の面)に、該第二金属箔層が露出した第二金属露出部19を残した態様で、第二絶縁樹脂フィルム18が積層されている。本実施形態では、前記第一金属箔層2の他方の面に、展開状態の蓄電デバイス1の長さ方向の一端側の個室33に対応する領域の一部に該第一金属箔層が露出した第一金属露出部9を残した態様で、第一絶縁樹脂フィルム8が積層されると共に、前記第二金属箔層12の他方の面に、展開状態の蓄電デバイス1の長さ方向の他端側の個室33に対応する領域の一部に該第二金属箔層が露出した第二金属露出部19を残した態様で、第二絶縁樹脂フィルム18が積層されている(
図1参照)。また、本実施形態では、前記第一金属箔層2の他方の面に、該第一金属箔層が露出した第一金属露出部9を残した態様で、第三接着剤層41を介して第一絶縁樹脂フィルム8が積層されると共に、前記第二金属箔層12の他方の面に、該第二金属箔層が露出した第二金属露出部19を残した態様で、第四接着剤層42を介して第二絶縁樹脂フィルム18が積層されている(
図2、3参照)。
【0042】
上記構成の蓄電デバイス1では、正極部22を構成する第一金属箔層2および負極部23を構成する第二金属箔層12が、蓄電デバイスの外装材としての機能も果たすものであり、即ち、第一、二金属箔層が、電極及び外装材の両機能を果たすものであり、従って本構成にさらに外装材を要することはないから(外装材が不要になるから)、蓄電デバイス1として、軽量化、薄型化、省スペース化を図ることができると共に、コストも低減できる。
【0043】
また、内部空間が、区画封止部32によって複数の独立した個室33に区画され、各個室33内に電解液5、15が封入されているから、仮に1つの個室において液漏れが生じたとしても、そのことが他の残りの個室に影響を及ぼすことがないから、少ない被害で済むし、デバイス性能にも大きな影響を及ぼさなくて済むという利点がある。
【0044】
また、上記蓄電デバイス1は、区画封止部32で折り曲げたり(
図6参照)、折り畳む(
図7参照)ことが可能である。この区画封止部(領域)32は、正極活物質層、負極活物質層及び電解液が存在しない部分であるので、折り曲げ(
図6参照)、折り畳み(
図7参照)等を行っても、正極活物質の脱落や負極活物質の脱落を生じることがないし、電解液漏れを生じることもない。このように蓄電デバイス1を折り畳むことで積層化蓄電デバイス45を得ることができ(
図7参照)、これによりデバイスを更にコンパクト化することができる。
【0045】
更に、上記実施形態では、絶縁樹脂フィルム8、18がデバイスの両側に積層されているので、(金属露出部を除いて)絶縁性を十分に確保できると共に、物理的強度も十分に確保できる。従って、本発明の薄型蓄電デバイス1を、絶縁性を備えていることが要求される箇所や凹凸のある箇所へ搭載することにも十分に対応できる。また、正極と電気的に導通している第一金属露出部9および負極と電気的に導通している第二金属露出部19が存在していることで、これら金属露出部9、19を介して電気の授受を行うことができるので、従来のリード線を不要とできる(使用しないで済む)利点がある。従って、蓄電デバイス1の部品点数を低減できるし、さらに軽量化を図ることができる。
【0046】
更に、従来のリード線が不要となるので、蓄電デバイスの充放電時の発熱がリード線周りに集中するような現象が生じないし、正極部を構成する第一金属箔層2および負極部を構成する第二金属箔層12を介して発熱を蓄電デバイス1の両面の全体にわたって拡散させることができるので、蓄電デバイス1の寿命を延ばすことができる(即ち長寿命の蓄電デバイスを得ることができる)。また、リード線が不要となることで、その分製造コストを低減できる。加えて、乾電池のように、ホルダーに本発明の蓄電デバイス1を嵌め込むという簡単な装着手法を採用することもできる。
【0047】
本発明において、前記第一金属箔層2は、特に限定されるものではないが、アルミニウム箔で形成されるのが好ましい。前記第一金属箔層2の厚さは9μm〜150μmに設定されるのが好ましい。中でも、折り曲げ時のクラック発生防止、重量、コストを総合的に考慮すると、第一金属箔層2は、厚さが15μm〜50μmの硬質のアルミニウム箔で形成されるのが好ましい。
【0048】
前記正極活物質層3は、特に限定されるものではないが、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩など)、PAN(ポリアクリロニトリル)等のバインダーに、塩(例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウム、マンガン酸リチウム等)を添加した混合組成物などで形成される。前記混合組成物は、リチウムイオン2次電池等で好適に使用されるものであるが、電気二重層キャパシタ等では正極活物質として炭素系活性炭を使用するのが好ましい。前記正極活物質層3の厚さは、2μm〜100μmに設定されるのが好ましい。
【0049】
前記正極活物質層3には、炭素繊維、カーボンブラック、CNT(カーボンナノチューブ)等の導電補助剤をさらに含有せしめてもよい。
【0050】
前記第一周縁接着剤層6としては、特に限定されるものではないが、2液硬化型のオレフィン系接着剤により形成された層であるのが好ましい。2液硬化型のオレフィン系接着剤を用いた場合には、電解液による膨潤で接着性が低下するのを十分に防止できる。前記第一周縁接着剤層6の塗布量(乾燥状態)は、1g/m
2〜5g/m
2に設定されるのが好ましい。
【0051】
本発明において、前記第二金属箔層12は、特に限定されるものではないが、アルミニウム箔(硬質のアルミニウム箔、軟質のアルミニウム箔)、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔またはチタン箔で形成されるのが好ましい。前記第二金属箔層12の厚さは、9μm〜150μmに設定されるのが好ましい。中でも、折り曲げ時のクラック発生防止、重量、コストを総合的に考慮すると、第二金属箔層12の厚さは、15μm〜50μmに設定されるのが好ましい。
【0052】
前記負極活物質層13としては、特に限定されるものではないが、例えば、PVDF、SBR、CMC、PAN等のバインダーに、添加物(例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、炭素系活性炭、黒鉛、チタン酸リチウム、Si系合金、スズ系合金等)を添加した混合組成物、等で形成される。前記負極活物質層13の厚さは、2μm〜100μmに設定されるのが好ましい。
【0053】
前記負極活物質層13には、炭素繊維、カーボンブラック、CNT(カーボンナノチューブ)等の導電補助剤をさらに含有せしめてもよい。
【0054】
前記第二周縁接着剤層16としては、特に限定されるものではないが、2液硬化型のオレフィン系接着剤により形成された層であるのが好ましい。2液硬化型のオレフィン系接着剤を用いた場合には、電解液による膨潤で接着性が低下するのを十分に防止できる。前記第二周縁接着剤層16の厚さは、0.5μm〜5μmに設定されるのが好ましい。
【0055】
上記実施形態では、前記周縁封止部(熱可塑性樹脂を含有してなる周縁封止部)31は、第一金属箔層2の一方の面の周縁部に積層された第一熱可塑性樹脂層4と、第二金属箔層12の一方の面の周縁部に積層された第二熱可塑性樹脂層14とが重ね合わされて熱により融着されて形成されたものである(
図2〜4参照)。また、上記実施形態では、前記区画封止部(熱可塑性樹脂を含有してなる区画封止部)32は、第一金属箔層2の一方の面の区画領域(隣り合う正極活物質層の間の領域)に積層された第一熱可塑性樹脂層4と、第二金属箔層12の一方の面の区画領域(隣り合う負極活物質層の間の領域)に積層された第二熱可塑性樹脂層14とがセパレーター21を介して重ね合わされて熱により融着されて形成されたものである(
図5参照)。前記第一熱可塑性樹脂層4としては、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成されるのが好ましい。また、前記第二熱可塑性樹脂層14としては、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成されるのが好ましい。
【0056】
前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム4、14は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムにより構成されるのが好ましい。
【0057】
前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム4、14の厚さは、それぞれ、15μm〜150μmに設定されるのが好ましい。中でも、絶縁性、折り曲げ性、コスト等を総合的に考慮すると、前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム4、14の厚さは、20μm〜80μmに設定されるのがより好ましい。
【0058】
前記セパレーター21としては、特に限定されるものではないが、例えば、
・ポリエチレン製セパレーター
・ポリプロピレン製セパレーター
・ポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとからなる複層フィルムで形成されるセパレーター
・上記のいずれかにセラミック等の耐熱無機物を塗布した湿式又は乾式の多孔質フィルムで構成されるセパレーター
等が挙げられる。前記セパレーター21の厚さは、5μm〜50μmに設定されるのが好ましい。
【0059】
前記電解液5、15としては、特に限定されるものではないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジメトキシエタンからなる群より選ばれる少なくとも2種の電解液と、リチウム塩と、を含む混合非水系電解液を用いるのが好ましい。前記リチウム塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム等が挙げられる。前記電解液5、15としては、前述の混合非水系電解液が、PVDF、PEO(ポリエチレンオキサイド)等とゲル化したものを用いてもよい。
【0060】
前記セパレーター21と前記電解液5、15は、前記個室33内に密閉状態に封入されているので(
図2〜5参照)、電解液の漏出を防止できる。
【0061】
前記周縁封止部31の幅は、0.5mm以上に設定されるのが好ましい。中でも、密封機能と省スペース化を考慮すると、前記周縁封止部31の幅は、1mm〜10mmに設定されるのが特に好ましい。
【0062】
前記区画封止部32の幅は、0.5mm以上に設定されるのが好ましい。中でも、密封機能と省スペース化を考慮すると、前記区画封止部32の幅は、1mm〜10mmに設定されるのが特に好ましい。
【0063】
前記第一絶縁樹脂フィルム8および第二絶縁樹脂フィルム18としては、特に限定されるものではないが、延伸ポリアミドフィルム(延伸ナイロンフィルム等)または延伸ポリエステルフィルムを用いるのが好ましい。中でも、二軸延伸ポリアミドフィルム(二軸延伸ナイロンフィルム等)、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたは二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記第一絶縁樹脂フィルム8および第二絶縁樹脂フィルム18は、いずれも、単層で形成されていても良いし、或いは、例えば延伸ポリエステルフィルム/延伸ポリアミドフィルムからなる複層(延伸PETフィルム/延伸ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0064】
前記第一絶縁樹脂フィルム8には、第一金属露出部9を確保するための開口部8Xが一部に設けられる(
図2参照)。上記実施形態では、開口部8Xは、第一絶縁樹脂フィルム8の端部に設けられているが、特にこのような位置に限定されるものではない。前記開口部8Xの平面視形状も矩形状に限定されない。
【0065】
同様に、前記第二絶縁樹脂フィルム18には、第二金属露出部19を確保するための開口部18Xが一部に設けられる(
図3参照)。上記実施形態では、開口部18Xは、第二絶縁樹脂フィルム18の端部に設けられているが、特にこのような位置に限定されるものではない。前記開口部18Xの平面視形状も矩形状に限定されない。
【0066】
前記第一絶縁樹脂フィルム8の厚さおよび前記第二絶縁樹脂フィルム18の厚さは、いずれも、0.02mm〜0.1mmに設定されるのが好ましい。
【0067】
前記第三接着剤層41、前記第四接着剤層42を設ける場合において、これら接着剤41、42としては、特に限定されるものではないが、ポリエステルポリウレタン系接着剤およびポリエーテルポリウレタン系接着剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の接着剤(2液硬化型接着剤がより好ましい)を用いるのが好ましい。前記第三接着剤層41の塗布量(乾燥状態)、前記第四接着剤層42の塗布量(乾燥状態)は、いずれも、1g/m
2〜5g/m
2に設定されるのが好ましい。前記第一金属箔層2の他方の面(セパレーター側と反対側の面)に上記第三接着剤41を塗布した後、第一絶縁樹脂フィルム8を貼り合わせて両者を接着一体化するのがよい。また、前記第二金属箔層12の他方の面(セパレーター側と反対側の面)に上記第四接着剤42を塗布した後、第二絶縁樹脂フィルム18を貼り合わせて両者を接着一体化するのがよい。
【0068】
本発明において、前記第一金属箔層2における少なくとも前記正極活物質層3が積層される側の面に化成皮膜が形成されているのが好ましい。また、同様に、前記第二金属箔層12における少なくとも前記負極活物質層13が積層される側の面に化成皮膜が形成されているのが好ましい。前記化成皮膜は、金属箔の表面に化成処理を施すことによって形成される皮膜であり、このような化成処理が施されていることによって、内容物(電解液等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば、次のような処理を行うことによって、金属箔に化成処理を施す。即ち、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)〜3)のうちのいずれかの水溶液を金属箔の表面に塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
【0069】
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m
2〜50mg/m
2が好ましく、特に2mg/m
2〜20mg/m
2が好ましい。
【0070】
本発明の蓄電デバイス1は、通常は、(折り畳み状態ではなく)展開状態における厚さが0.08mm〜0.3mmに設定される。中でも、蓄電デバイス1の厚さは、展開状態において、0.1mm〜0.2mmに設定されるのが好ましい。
【0071】
なお、上記実施形態では、第一金属箔層2の他方の面に第一絶縁樹脂フィルム8が積層されると共に、第二金属箔層12の他方の面に第二絶縁樹脂フィルム18が積層された構成が採用されているが(
図1〜5参照)、用途等に応じて、このような絶縁樹脂フィルム8、18を積層しない構成を採用することもできる。即ち、第一金属箔層2の他方の面が略全面又は全面にわたって露出し、第二金属箔層12の他方の面が略全面又は全面にわたって露出した構成を採用することもできる。
【0072】
また、上記実施形態では、個室33が9個設けられているが、特にこのような形成数に限定されるものではなく、2個〜8個のいずれかであってもよいし、10個以上設けられた構成であってもよい。
【0073】
次に、本発明に係る蓄電デバイス1の製造方法の一例を説明する。まず、正極側シート体61、負極側シート体62およびセパレーター21をそれぞれ準備する(
図10参照)。
【0074】
即ち、第一金属箔層2の一方の面に相互に独立した複数の正極活物質層3が積層され、前記第一金属箔層2の前記一方の面における正極活物質層が形成されていない「周縁部及び隣り合う正極活物質層3の間」に第一周縁接着剤層6を介して第一熱可塑性樹脂層4が積層されると共に、前記第一金属箔層2の他方の面に、第一金属箔層2が露出した第一金属露出部9を残した態様で、第三接着剤層41を介して第一絶縁樹脂フィルム層8が積層されてなる正極側シート体61を準備する(
図8、
図10参照)。前記第一熱可塑性樹脂層4は、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成されるのが好ましい。また、前記第一絶縁樹脂フィルム層8は、耐熱性樹脂延伸フィルムで形成されるのが好ましい。なお、正極側シート体61の製造手法の詳細は、後述する実施例1においてその一例を詳述している。
【0075】
また、第二金属箔層12の一方の面に相互に独立した複数の負極活物質層13が積層され、前記第二金属箔層12の前記一方の面における負極活物質層が形成されていない「周縁部及び隣り合う負極活物質層13の間」に第二周縁接着剤層16を介して第二熱可塑性樹脂層14が積層されると共に、前記第二金属箔層12の他方の面に、第二金属箔層12が露出した第二金属露出部19を残した態様で、第四接着剤層42を介して第二絶縁樹脂フィルム層18が積層されてなる負極側シート体62を準備する(
図9、
図10参照)。前記第二熱可塑性樹脂層14は、熱可塑性樹脂未延伸フィルムで形成されるのが好ましい。また、前記第二絶縁樹脂フィルム層18は、耐熱性樹脂延伸フィルムで形成されるのが好ましい。なお、負極側シート体62の製造手法の詳細は、後述する実施例1においてその一例を詳述している。
【0076】
また、セパレーター21を準備する。しかして、
図10に示すように、正極側シート体61の正極活物質層3の位置と、負極側シート体62の負極活物質層13の位置とを合わせた状態で、正極側シート体61の正極活物質層3と、負極側シート体62の負極活物質層13との間にセパレーター21を挟み込んで、これら重ね合わされた正極側シート体61、セパレーター21および負極側シート体62を熱シール装置74に送り込んで熱板等を用いて挟圧することにより、第一熱可塑性樹脂層4と第二熱可塑性樹脂層14とをヒートシール接合する。
【0077】
前記ヒートシール接合は、各個室33の周縁部に対応する4辺のうち3辺について先に行って仮封止を行うようにし、次いで残りの未封止の1辺部(
図10で上端部)から注液用シリンジ76を用いて、各個室33内におけるセパレーター21と正極活物質層3との間およびセパレーター21と負極活物質層13との間に電解液5、15をそれぞれ注入し、しかる後、未シール箇所の残りの1辺(
図10で上端部)を上下から一対の熱板等で挟圧することによって、各個室33の周縁部の4辺を完全に封止接合して、
図1〜5に示す本発明の蓄電デバイス1を得る。この蓄電デバイス1では、第一熱可塑性樹脂層4と第二熱可塑性樹脂層14とのヒートシール接合により、周縁封止部31及び区画封止部32が形成されて、複数の個室33が液密状態に区画されている(
図1参照)。また、得られた蓄電デバイス1では、前記複数の個室33のうち展開状態のデバイスの長さ方向の一方の端の1つの個室に対応する領域の一部において、第一絶縁樹脂フィルム層8の開口部8Xを介して第一金属露出部9が露出するとともに、前記複数の個室33のうち展開状態のデバイスの長さ方向の他方の端の1つの個室に対応する領域の一部において、第二絶縁樹脂フィルム層18の開口部18Xを介して第二金属露出部19が露出している(
図1〜3参照)。
【0078】
上記製造方法は、その一例を挙げたものに過ぎず、特にこのような製造方法に限定されるものではない。
【実施例】
【0079】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0080】
<実施例1>
(正極側シート体61の作成)
厚さ20μmで幅120mmの硬質アルミニウム箔(JIS H4160で分類されるA1N30の硬質アルミニウム箔)2の一方の面に、グラビアロール版を用いて、
図8(A)に示すように、長さ50mm×幅100mmの大きさで正極活物質を塗布した。隣り合う正極活物質層3、3の間隔Kは20mmに設定した(
図8(A)参照)。コバルト酸リチウムを主成分とする正極活物質60質量部、結着剤兼電解液保持剤としてのポリフッ化ビニリデン10質量部、アセチレンブラック(導電材)5質量部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(有機溶媒)25質量部が混練分散されてなるペーストを塗布して乾燥させることによって、乾燥厚さ30.2μmの正極活物質層3を形成した。
【0081】
次に、前記硬質アルミニウム箔(第一金属箔層)2における正極活物質が塗布されていない領域(未塗布領域)に、グラビアロールを用いて2液硬化型のオレフィン系接着剤(第一周縁接着剤層)6を厚さ2μmで塗布して100℃で10秒間乾燥せしめた(
図8(B)参照)。次いでさらにこの面の全面に厚さ25μmの未延伸ポリプロピレンフィルム4Aを貼り合わせ、40℃の恒温槽に3日間放置して養生を行った(
図8(C)参照)。しかる後、前記正極活物質層3の外縁に合わせた位置で未延伸ポリプロピレンフィルム層4Aのみにレーザー刃により切り込みを入れ、次いで未延伸ポリプロピレンフィルム(切り込みの内側部分4Zのみ)を除去することによって、正極活物質層3の表面を露出させた(
図8(D)参照)。
【0082】
次に、前記硬質アルミニウム箔2の他方の面(正極活物質層が積層された面とは反対側の面)に2液硬化型のポリエステルポリウレタン接着剤(第三接着剤層)41を厚さ2μmになるように塗布した(
図8(E)参照)。この時、前記独立した正極活物質層3の9個毎に1個の割合で、当該1個の正極活物質層3に対応する領域の一部において接着剤非塗布領域71を設けた(
図8(E)参照)。前記接着剤非塗布領域71のサイズは、5mm×5mmである。前記ポリエステルポリウレタン接着剤を乾燥させた後、厚さ12μmの延伸ポリエステルフィルム(第一絶縁樹脂フィルム)8を貼り合わせ、次いで40℃の恒温槽に3日間放置して養生を行った(
図8(F)参照)。しかる後、前記接着剤非塗布領域71の外縁に合わせた位置で延伸ポリエステルフィルム8のみにレーザー刃により切り込みを入れ、次いで切り込まれた延伸ポリエステルフィルム(切り込みの内側部分のみ)を除去することによって、アルミニウム箔2の表面を露出させて第一金属露出部9を形成せしめて、正極側シート体61を得た(
図8(G)参照)。
【0083】
(負極側シート体62の作成)
厚さ20μmで幅120mmの硬質銅箔(JIS H3100で分類されるC1100Rの硬質銅箔)12の一方の面に、グラビアロール版を用いて、
図9(A)に示すように、長さ50mm×幅100mmの大きさで負極活物質を塗布した。隣り合う負極活物質層13、13の間隔Lは20mmに設定した(
図9(A)参照)。カーボン粉末を主成分とする負極活物質57質量部、結着剤兼電解液保持剤としてのポリフッ化ビニリデン5質量部、ヘキサフルオロプロピレンと無水マレイン酸の共重合体10質量部、アセチレンブラック(導電材)3質量部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(有機溶媒)25質量部が混練分散されてなるペーストを塗布して乾燥させることによって、乾燥厚さ20.1μmの負極活物質層13を形成した。
【0084】
次に、前記硬質銅箔(第二金属箔層)12における負極活物質が塗布されていない領域(非塗布領域)に、グラビアロールを用いて2液硬化型のオレフィン系接着剤(第二周縁接着剤層)16を厚さ2μmで塗布して100℃で10秒間乾燥せしめた(
図9(B)参照)。次いでさらにこの面の全面に厚さ25μmの未延伸ポリプロピレンフィルム14Aを貼り合わせ、40℃の恒温槽に3日間放置して養生を行った(
図9(C)参照)。しかる後、前記負極活物質層13の外縁に合わせた位置で未延伸ポリプロピレンフィルム層14Aのみにレーザー刃により切り込みを入れ、次いで未延伸ポリプロピレンフィルム(切り込みの内側部分14Zのみ)を除去することによって、負極活物質層13の表面を露出させた(
図9(D)参照)。
【0085】
次に、前記硬質銅箔12の他方の面(負極活物質層が積層された面とは反対側の面)に2液硬化型のポリエステルポリウレタン接着剤(第四接着剤層)42を厚さ2μmになるように塗布した(
図9(E)参照)。この時、前記独立した負極活物質層13の9個毎に1個の割合で、当該1個の負極活物質層13に対応する領域の一部において接着剤非塗布領域72を設けた(
図9(E)参照)。前記接着剤非塗布領域72のサイズは、30mm×10mmである。前記ポリエステルポリウレタン接着剤42を乾燥させた後、厚さ12μmの延伸ポリエステルフィルム(第二絶縁樹脂フィルム)18を貼り合わせ、次いで40℃の恒温槽に3日間放置して養生を行った(
図9(F)参照)。しかる後、前記接着剤非塗布領域72の外縁に合わせた位置で延伸ポリエステルフィルム18のみにレーザー刃により切り込みを入れ、次いで切り込まれた延伸ポリエステルフィルム(切り込みの内側部分のみ)を除去することによって、銅箔12の表面を露出させて第二金属露出部19を形成せしめて、負極側シート体62を得た(
図9(G)参照)。
【0086】
(蓄電デバイス1の作成)
次に、
図10に示すように、供給ロールから連続して供給される正極側シート体61と、供給ロールから連続して供給される負極側シート体62との間に、供給ロールから連続して供給される厚さ8μmで幅102mmの多孔質の湿式セパレーター21を重ね合わせた状態で熱シール装置74に送り込んだ。重ね合わせは一対のロール73、73間に挟み込むことによって行った(
図10参照)。この時、正極側シート体61は、セパレーター21側に正極活物質層3が存在するように配置すると共に、負極側シート体62は、セパレーター21側に負極活物質層13が存在するように配置した。また、この重ね合わせの際、正極側シート体61の正極活物質層3の位置と、負極側シート体62の負極活物質層13の位置とが互いに合致するように両シート体61、62を重ね合わせた(
図10参照)。
【0087】
次に、上記のようにして正極側シート体61と負極側シート体62との間にセパレーター21を挟み付けた状態で、平面視における各正極活物質層3(即ち各負極活物質層13)の周囲の4辺のうちの3辺を熱シール装置74において上下の一対の200℃の熱板で0.2MPaの圧力で2秒間挟圧して熱シールを行うことによって、各正極活物質層3の周囲の3辺を封止接合した(周囲の3辺における正極側シート体61の未延伸ポリプロピレンフィルム層4と負極側シート体62の未延伸ポリプロピレンフィルム層14とを接合した)。即ち、
図10において、各正極活物質層3の周囲の4辺のうち、下側の1辺に相当する部位に周縁封止部31を形成し、左側の1辺に相当する部位に区画封止部32を形成し、右側の1辺に相当する部位に区画封止部32を形成せしめた。上側の1辺に相当する部位は、未だ封止されておらず開口している。
【0088】
次に、
図10に示すように、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が等量体積比で配合された混合溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)が濃度1モル/Lで溶解された電解液を、注液用シリンジ76を用いて未シール箇所(
図10で上側開口部)から、各個室33内におけるセパレーター21と正極活物質層3との間及びセパレーター21と負極活物質層13との間にそれぞれ0.5mL注入した。
【0089】
次に、
図10に示すように、長さ方向の一端側の第一金属露出部9から長さ方向の他端側の第二金属露出部19までの個室33が9個連なった単位が1セット(1個の蓄電デバイス)となるように、この9個連なった部分の両側を切断装置75の切断刃によって裁断した。この時、裁断位置は、前記区画封止部32の幅方向の中央位置(幅方向の二等分位置)とした(
図10参照)。
【0090】
しかる後、一端側の第一金属露出部9と、他端側の第二金属露出部19の間に4.2Vの電池電圧が発生するまで充電を行い、電極やセパレーター等からのガスを発生させた後、3.0Vの放電状態で且つ0.086MPaの減圧下で、未シール箇所の残りの1辺を上下から一対の200℃の熱板で0.2MPaの圧力で挟圧して3秒間熱シールを行うことによって、各個室の4辺を完全に封止接合して、
図1〜5に示す構成の電池容量200mAhの蓄電デバイス(模擬電池)1を得た。
【0091】
さらに
図6に示すように隣り合う2つの区画封止部32のうち一方を谷折りすると共に他方を山折りすることによって、即ちデバイス1の長さ方向の一端側から区画封止部32において交互に山折り44、谷折り43を繰り返すことによって、
図7に示すように折り畳まれた積層化蓄電デバイス(折り畳み蓄電デバイス)45を得た。
【0092】
<実施例2>
負極部23の第二金属箔層12として、硬質の銅箔に代えて、厚さ20μmの硬質のステンレス箔(SUS304)を使用した以外は、実施例1と同様にして、
図1〜5に示す構成の電池容量200mAhの蓄電デバイス(模擬電池)1を得た。次いで、実施例1と同様にして、
図7に示すように折り畳んで積層化蓄電デバイス(折り畳み蓄電デバイス)45を得た。
【0093】
<実施例3>
第一絶縁樹脂フィルム8として、厚さ12μmの延伸ポリエステルフィルムに代えて、厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムを使用し、第二絶縁樹脂フィルム18として、厚さ12μmの延伸ポリエステルフィルムに代えて、厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムを使用した以外は、実施例1と同様にして、
図1〜5に示す構成の電池容量200mAhの蓄電デバイス(模擬電池)1を得た。次いで、実施例1と同様にして、
図7に示すように折り畳んで積層化蓄電デバイス(折り畳み蓄電デバイス)45を得た。
【0094】
<比較例1>
(正極側シート体の作成)
長さ50mm×幅100mmの大きさの正極活物質層を20mmの間隔をあけて9個形成するのに代えて、長さ610mm×幅100mmの大きさの正極活物質層103を1個形成した以外は、実施例1と同様にして、正極側シート体を得た。この正極側シート体では、区画封止部が形成されておらず、大きな個室133が1個形成されている。正極活物質層103の組成は、実施例1と同一である。
(負極側シート体の作成)
実施例1と同様にして、負極側シート体を得た。即ち、この負極側シート体は、区画封止部が8個形成されていて、9個の個室が形成されている。
(蓄電デバイスの作成)
次に、上記正極側シート体と負極側シート体を用いて、実施例1と同様にして、
図11、12に示す構成の電池容量200mAhの蓄電デバイス(模擬電池)101を得た。なお、セパレーター121と正極活物質層103との間に電解液を4.5mL注入し、セパレーター121と負極活物質層113との間の9個の個室のそれぞれに電解液を0.5mLづつ注入した。この比較例1の蓄電デバイスでは、正極部122側には区画封止部は設けられていない(
図11、12参照)。さらに
図11に示すように交互に山折り144、谷折り143を繰り返すことによって(隣り合う山折りと谷折りの間隔は70mmである)、折り畳まれた積層化蓄電デバイス(折り畳み蓄電デバイス)を得た。
【0095】
なお、
図11、12において、102は第一金属箔層(硬質アルミニウム箔)、104は第一熱可塑性樹脂層(未延伸ポリプロピレンフィルム)、105は電解液、106は第一周縁接着剤層(オレフィン系接着剤)、108は第一絶縁樹脂フィルム(延伸ポリエステルフィルム)、109は第一金属露出部、112は第二金属箔層(硬質銅箔)、114は第二熱可塑性樹脂層(未延伸ポリプロピレンフィルム)、115は電解液、116は第二周縁接着剤層(オレフィン系接着剤)、118は第二絶縁樹脂フィルム(延伸ポリエステルフィルム)、119は第二金属露出部、122は正極部、123は負極部、131は周縁封止部(ポリプロピレン樹脂)、133は個室、141は第三接着剤層(ポリエステルポリウレタン接着剤)、142は第四接着剤層(ポリエステルポリウレタン接着剤)である。
【0096】
<比較例2>
(負極側シート体の作成)
長さ50mm×幅100mmの大きさの負極活物質層を20mmの間隔をあけて9個形成するのに代えて、長さ610mm×幅100mmの大きさの負極活物質層を1個形成した以外は、実施例1と同様にして、負極側シート体を得た。この負極側シート体では、区画封止部が形成されておらず、大きな個室が1個形成されている。負極活物質層の組成は、実施例1と同一である。
(正極側シート体の作成)
実施例1と同様にして、正極側シート体を得た。即ち、この正極側シート体は、区画封止部が8個形成されていて、9個の個室が形成されている。
(蓄電デバイスの作成)
次に、上記正極側シート体と負極側シート体を用いて、実施例1と同様にして、電池容量200mAhの蓄電デバイス(模擬電池)を得た。なお、セパレーターと負極活物質層との間に電解液を4.5mL注入し、セパレーターと正極活物質層との間の9個の個室のそれぞれに電解液を0.5mLづつ注入した。この比較例2の蓄電デバイスでは、負極部123側には区画封止部は設けられていない。さらに比較例1と同様に交互に山折り、谷折りを繰り返すことによって(隣り合う山折りと谷折りの間隔は70mmである)、折り畳まれた積層化蓄電デバイス(折り畳み蓄電デバイス)を得た。
【0097】
上記のようにして得られた実施例1〜3、比較例1、2の各蓄電デバイス(模擬電池)について下記評価法に基づいて評価を行った。
【0098】
<放電容量比率の評価法>
各蓄電デバイスについて(各実施例、各比較例毎に)それぞれサンプルを8個準備した。なお、表1において、各実施例、各比較例において、折り畳み操作を全く行っていないサンプル(4個)は「折り畳み操作の履歴なし」と記載し、折り畳み操作を行ったサンプル(4個)については「折り畳み操作の履歴有り(300回折り畳み操作)」と記載している。
【0099】
(充電直後の放電容量比率)
各蓄電デバイスの第1サンプル2個のそれぞれに対して10mAの充電電流で4.2Vになるまで充電した後、10mA電流値で3.0Vまで放電したときの放電容量(「折り畳み操作無しであって且つ充電直後の放電容量」という)を測定しておき、一方のサンプル(折り畳み履歴なし)についてはこのまま下記計算式で計算し、他方のサンプルについては
図6、7に示すような折り畳み操作を300回行う折り畳み試験を行った後に次の充電操作を行った。即ち、前記他方のサンプルに対して再度10mAの充電電流で4.2Vになるまで充電した後、10mA電流値で3.0Vまで放電したときの放電容量(40℃放置後の放電容量)を測定した。また、前記2個のサンプル(折り畳み履歴なし、折り畳み履歴有り)について内部抵抗測定器を用いて蓄電デバイスの内部抵抗値(充電直後の内部抵抗値)の測定を行った。
【0100】
なお、各実施例における前記「充電直後の放電容量比率」は、
充電直後の放電容量比率(%)=(各実施例の充電直後の放電容量測定値)÷(各実施例の折り畳み操作無しであって且つ充電直後の放電容量測定値)×100
上記計算式で計算される値であり、一方、
各比較例における前記「充電直後の放電容量比率」は、
充電直後の放電容量比率(%)=(各比較例の充電直後の放電容量測定値)÷(各比較例の折り畳み操作無しであって且つ充電直後の放電容量測定値)×100
上記計算式で計算される値である。
【0101】
(40℃放置後の放電容量比率)
各蓄電デバイスの第2サンプル2個のそれぞれに対して10mAの充電電流で4.2Vになるまで充電した後、10mA電流値で3.0Vまで放電したときの放電容量(「折り畳み操作無しであって且つ充電直後の放電容量」という)を測定しておき、一方のサンプルについては折り畳み操作を行うことなく次の充電操作を行い、他方のサンプルについては
図6、7に示すような折り畳み操作を300回行う折り畳み試験を行った後に次の充電操作を行った。即ち、前記第2サンプル2個のそれぞれに対して再度10mAの充電電流で4.2Vになるまで充電した後、40℃の恒温槽内に7日間放置し、次いでこれを取り出して、10mA電流値で3.0Vまで放電したときの放電容量(40℃放置後の放電容量)を測定した。
【0102】
なお、各実施例における前記「40℃放置後の放電容量比率」は、
40℃放置後の放電容量比率(%)=(各実施例の40℃放置後の放電容量測定値)÷(各実施例の折り畳み操作無しであって且つ充電直後の放電容量測定値)×100
上記計算式で計算される値であり、一方、
各比較例における「40℃放置後の放電容量比率」は、
40℃放置後の放電容量比率(%)=(各比較例の40℃放置後の放電容量測定値)÷(各比較例の折り畳み操作無しであって且つ充電直後の放電容量測定値)×100
上記計算式で計算される値である。
【0103】
(60℃放置後の放電容量比率)
各蓄電デバイスの第3サンプル2個のそれぞれに対して10mAの充電電流で4.2Vになるまで充電した後、10mA電流値で3.0Vまで放電したときの放電容量(「折り畳み操作無しであって且つ充電直後の放電容量」という)を測定しておき、一方のサンプルについては折り畳み操作を行うことなく次の充電操作を行い、他方のサンプルについては
図6、7に示すような折り畳み操作を300回行う折り畳み試験を行った後に次の充電操作を行った。即ち、前記第3サンプル2個のそれぞれに対して再度10mAの充電電流で4.2Vになるまで充電した後、60℃の恒温槽内に7日間放置し、次いでこれを取り出して、10mA電流値で3.0Vまで放電したときの放電容量(60℃放置後の放電容量)を測定した。なお、「60℃放置後の放電容量比率」の計算式は、上記「40℃放置後の放電容量比率」の計算式に準じる。
【0104】
(80℃放置後の放電容量比率)
更に、各蓄電デバイスの第4サンプル2個のそれぞれに対して10mAの充電電流で4.2Vになるまで充電した後、10mA電流値で3.0Vまで放電したときの放電容量(「折り畳み操作無しであって且つ充電直後の放電容量」という)を測定しておき、一方のサンプルについては折り畳み操作を行うことなく次の充電操作を行い、他方のサンプルについては
図6、7に示すような折り畳み操作を300回行う折り畳み試験を行った後に次の充電操作を行った。即ち、前記第4サンプル2個のそれぞれに対して再度10mAの充電電流で4.2Vになるまで充電した後、80℃の恒温槽内に7日間放置し、次いでこれを取り出して、10mA電流値で3.0Vまで放電したときの放電容量(80℃放置後の放電容量)を測定した。なお、「80℃放置後の放電容量比率」の計算式は、上記「40℃放置後の放電容量比率」の計算式に準じる。
【0105】
なお、充電操作は、蓄電デバイスにおける正極側の第一金属露出部9および負極側の第二金属露出部19を介して行った。
【0106】
【表1】
【0107】
表1から明らかなように、実施例1〜3の蓄電デバイスは、折り畳み操作を300回行った後でも、折り畳み操作を行う前と同等レベルの十分な放電容量が確保されていた。
【0108】
これに対し、比較例1、2の蓄電デバイスは、折り畳み操作を300回行った後では、大幅に放電容量が低下していた。
【0109】
比較例1、2の蓄電デバイスでこのように折り畳み操作後に大幅に放電容量が低下したのは、活物質層が配置されている領域で谷折り、山折りを行ったことで活物質の脱落が生じたためと考えられる。これに対し、本発明の実施例1〜3の蓄電デバイスでは、活物質層が配置されていない領域である区画封止部で谷折り、山折りを行うことができるので、活物質の脱落を生じない。