特許第6454505号(P6454505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454505
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21V 5/00 20180101AFI20190107BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20190107BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20190107BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20190107BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20190107BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20190107BHJP
   F21V 9/08 20180101ALI20190107BHJP
   F21V 13/02 20060101ALI20190107BHJP
   F21V 13/14 20060101ALI20190107BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20190107BHJP
   G02B 3/02 20060101ALI20190107BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20190107BHJP
【FI】
   F21V5/00 610
   H01L33/58
   H01L33/60
   F21S2/00 100
   F21V5/00 510
   F21V5/00 600
   F21V5/04 500
   F21V7/00 510
   F21V9/08
   F21V13/02 200
   F21V13/14
   F21S2/00 230
   G02B3/00 A
   G02B3/02
   F21Y115:10
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-190371(P2014-190371)
(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-62780(P2016-62780A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】509311252
【氏名又は名称】株式会社共立電照
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】船ヶ山 保幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】眞方 弘志
(72)【発明者】
【氏名】内田 冴子
【審査官】 安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−230171(JP,A)
【文献】 特開平08−012369(JP,A)
【文献】 特開2001−297612(JP,A)
【文献】 特表2005−537651(JP,A)
【文献】 特開2007−059857(JP,A)
【文献】 特表2013−534352(JP,A)
【文献】 特開2014−017144(JP,A)
【文献】 特開2005−285697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 5/00
F21S 2/00
F21V 5/04
F21V 7/00
F21V 9/08
F21V 13/02
F21V 13/14
G02B 3/00
G02B 3/02
H01L 33/58
H01L 33/60
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED素子を有する光源と、該光源を覆う照明用フィルタカバーとを備え、前記照明用フィルタカバーは、耐熱ガラス素材によって形成されていると共に、前記光源から出射される波長470nm以下の青色発光成分を減ずるための青色波長光カットコーティングが施された球面レンズもしくは非球面レンズを形成して成ることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
光源から出射される光を球面レンズもしくは非球面レンズの凹面側に向けて反射させるよう当該光源の周囲に付設された反射板を含む請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
光源は複数のLED素子を配設して成るLED基板によって構成され、前記照明用フィルタカバーは、前記LED基板の各LED素子に対応すべく、それぞれに青色波長光カットコーティングが施された耐熱ガラス素材による球面レンズ群もしくは非球面レンズ群を配設して成る請求項1記載の照明装置。
【請求項4】
LED基板の周囲には、各LED素子から出射される光を前記照明用フィルタカバーの球面レンズ群もしくは非球面レンズ群の各凹面側に向けて反射させる反射板を付設して成る請求項3記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(以下、LEDと略称する)等の光源から発する青色波長光をカットする機能を有する照明用フィルタカバーを備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消費電力が少なく、長寿命であるLED素子を使用した照明装置が多数提案されている。このLED素子による照明装置においては、人の目に障害を与える最大の波長が約480nm以下の光線であることが研究によって知られている。
青色波長光の人体への影響は、(1)体内時計への影響と、(2)「光害」の2つが挙げられる。(1)に関して、人は生命を維持するため、一日を朝起きて、食事をして、仕事を行い、夜寝るというサイクルを誕生から寿命まで繰り返すという一日のリズムの体内時計としてきた。しかし現在スマートフォンやPC端末の時間に関係ない使用、更に白色LED下での生活がこの体内時計をくるわせている。その結果睡眠障害、うつ病、高血圧、糖尿病、肥満の原因になるという研究が多く報告されている。(2)に関しては、青色波長光は散乱しやすい光であるので像のぼやけが生じ、目の調節機能に負荷がかかり、目の疲れをおこす。また青色波長光は人の目の網膜に達するため網膜障害をおこし、黄班変性の原因となるといわれている。
【0003】
また、LED素子自体はその光の指向性が高く、高輝度、低立体角の光源であり、照明装置を構成する際には特に不快感や物の見えづらさを生じさせるような「まぶしさ」である所謂不快グレア(眩輝)への対策が要求される。近年においては、国や地域によっては、道路交通や照明設計に関して、グレア防止のための法規が整備されている。このことからLED素子を使った照明装置ではグレア防止機能を有していることが必須である。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されているように、グレア防止機能を有する照明装置として、LED素子を有する白色光源と、光調整部とを備え、該光調整部は、前記白色光源から出射される光のうちで人が感じる明るさへの影響の薄い少なくとも470nm以下の波長の光を平均75%(平均透過率が75%)まで減ずる減光部としての例えば光透過率の高いガラスやアクリルなどにITO(酸化インジウムスズ)を塗布したバンドパスフィルタと、480〜485nmの範囲に発光ピークを有する光付加部としてのLED素子とを備えているものが存在する。
【0005】
また、例えば特許文献2に開示されているように、上記した青色波長光をカットする機能を有する照明装置としては、ガラスまたはプラスチック製の円筒状の支持ケース内に、例えばLEDライトバーまたは蛍光管等の光源を封入し、前記支持ケースの出光面の上には、一部の480nm以下の波長の光線をカットし且つカットしたエネルギーを光触媒の方法で抗菌消臭効果に変換する青色波長光カット抗菌消臭層をコーティングして成るものが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−017144号公報
【特許文献2】実用新案登録第3189850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したLED素子の表面温度は約90℃以上に達するため、特許文献1における光透過率の高いガラスやアクリルなどにITO(酸化インジウムスズ)を塗布したバンドパスフィルタ、及び、特許文献2におけるガラスまたはプラスチック製の円筒状の支持ケースに対し、上記LED素子からの熱衝撃による損傷を無視することはできないものであった。
【0008】
特に、近年では、照明用フィルタカバーとしてプラスチックレンズを採用している。この照明用フィルタカバーは、低コストで且つ割れ難く、さらに金型によって成形が容易で、非球面レンズが大量に生産できる。しかし、上記プラスチックレンズに青色波長光カットのためにコーティングを施した場合、環境温度60℃を境に、熱クラック(プラスチックが変形)が発生し、コーティングが剥がれて劣化してしまう欠点を有している。因みに、一般的なガラスである場合では、例えば加熱式真空蒸着法等によるコーティング処理の際に発生する熱衝撃でガラスは割損してしまう。しかも上記したように照明装置の使用時においては、LED素子の表面温度は90℃以上に達することから、LED素子からの青色波長光をカットするためのレンズとしては難点があった。
【0009】
そこで、本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、環境温度による熱クラックの発生およびこれに伴うコーティングの剥離、劣化を防止でき、さらに青色波長光カットのためのコーティング処理の際に発生する熱衝撃にも耐えることのできる照明用フィルタカバーを備えた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明にあっては、LED素子を有する光源と、該光源を覆う照明用フィルタカバーとを備え、前記照明用フィルタカバーは、耐熱ガラス素材によって形成されていると共に、前記光源から出射される波長470nm以下の青色発光成分を減ずるための青色波長光カットコーティングが施された球面レンズもしくは非球面レンズを形成して成ることを特徴とする。
【0011】
光源から出射される光を球面レンズもしくは非球面レンズの凹面側に向けて反射させるよう当該光源の周囲に付設された反射板を含むものとする。
【0012】
光源は複数のLED素子を配設して成るLED基板によって構成され、前記照明用フィルタカバーは、前記LED基板の各LED素子に対応すべく、それぞれに青色波長光カットコーティングが施された耐熱ガラス素材による球面レンズ群もしくは非球面レンズ群を配設して成るものとする。
【0013】
LED基板の周囲には、各LED素子から出射される光を前記照明用フィルタカバーの球面レンズ群もしくは非球面レンズ群の各凹面側に向けて反射させる反射板を付設して成るものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、環境温度による熱クラックの発生およびこれに伴うコーティングの剥離、劣化を防止でき、さらに青色波長光カットのためのコーティング処理の際に発生する熱衝撃にも耐えることのできる照明用フィルタカバーを備えた照明装置を提供することができる。
【0015】
すなわち、本発明にあっては、LED素子を有する光源と、該光源を覆う照明用フィルタカバーとを備え、前記照明用フィルタカバーは、耐熱ガラス素材によって形成されているので、該耐熱ガラス素材は、ガラス転移温度500〜550℃、熱衝撃160〜180℃を有していることから、LED素子による照明装置として使用する場合、照明用フィルタカバー自体に熱クラックが発生しないため、青色波長光カット用のコーティングの劣化を未然に防ぐことができる。
【0016】
照明用フィルタカバーは、前記光源から出射される波長470nm以下の青色発光成分を減ずるための青色波長光カットコーティングが施された球面レンズもしくは非球面レンズを形成して成るので、レンズによる集光性を有効に使うことで、照らすための局所部位だけを効率良く明るくすることができ、その分、消費電力を減らすことができる。すなわち、本発明では、特に、球面レンズもしくは非球面レンズに青色波長光カットコーティングが施されているため、光源の最大ピーク域(波長452nm)における相対放射強度を少なくとも34%〜最大50%をカットすることが可能としつつ、青色波長光カットとレンズ機能との併用により、当該青色波長光カットで減少した光量をレンズの集光により補うことができる。
【0017】
例えば、眼鏡などに施されている青色波長光カット用のコーティングは、波長470nm以下の青色光だけでなく、波長の長い他の黄や赤色光も一緒に減光してしまい、しかもカット率が高いものほど、眼に届く光量が少なくなり、LED素子による照明装置の場合は、暗い光となってしまうので、本末転倒ということになる。また、球面レンズもしくは非球面レンズを形成して成る照明用フィルタカバーを使っていない従来の照明装置では、光が広がり(机ではなく、壁なども照らしている)、机上を有効に照らしていないことになり、机上を明るく照らすため、消費電力を上げて照度を確保しなければならない。これに対し本発明では、レンズを使うことで、照らす場所だけを効率良く明るくすることができ、その分、消費電力を減らすことができ、さらにそこに、青色波長光カットコーティングを施せば、青色光をカットした分の光量の減少分を浮いた消費電力で補えば良いこととなる。
【0018】
また、球面レンズもしくは非球面レンズにコーティングをしないと光の方向性の問題が生じてしまう。例えば、レンズではなく、コーティングをした平面ガラスをLED素子に被せると、LED素子の直下だけが黄色が強い光となり、斜め方向は白色光となる。これに対し、本発明のように球面レンズもしくは非球面レンズにすることで、全ての照射方向がほんのり黄色光(黄色光の分散)となり、光の色ムラがなくなる。また、実際の製品には、さらにグレア防止用のカバー(例えば擦りガラス等)を併用することで、黄色光の軽減を行うことができる。
【0019】
光源から出射される光を照明用フィルタカバーの球面レンズもしくは非球面レンズの凹面側に向けて反射させるよう当該光源の周囲に付設された反射板を含むので、LED素子から照射される光を効率良く反射して照明用フィルタカバーの球面レンズもしくは非球面レンズを通して外部周辺に照射することができる。この他、レンズから漏れた光を反射板で拾い、外部周辺に照射する光量の全体量を補うという使用方法も可能である。
【0020】
光源は複数のLED素子を配設して成るLED基板によって構成され、前記照明用フィルタカバーは、前記LED基板の各LED素子に対応すべく、それぞれに青色波長光カットコーティングが施された耐熱ガラス素材による球面レンズ群もしくは非球面レンズ群を配設して成るので、環境温度による熱クラックの発生およびこれに伴うコーティングの剥離、劣化を防止しつつ複数のLED素子を覆うことのできる照明用フィルタカバーを使った照明システムを容易に構築することができる。
【0021】
LED基板の周囲には、各LED素子から出射される光を前記照明用フィルタカバーの球面レンズ群もしくは非球面レンズ群の各凹面側に向けて反射させる反射板を付設して成るので、例えば、天井埋め込み式による照明装置において、LED基板の複数のLED素子による光を全て効率良く反射して照明用フィルタカバーの球面レンズもしくは非球面レンズを通して外部周辺(天井下方の周辺)に照射することができる。この他、レンズから漏れた光を反射板で拾い、外部周辺(天井下方の周辺)に照射する光量の全体量を補うという使用方法も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明を実施するための一形態における照明装置の概要を示す分解斜視図である。
図2】同じく照明装置の照明用フィルタカバーの概要を示す平面図である。
図3図2のX−X断面図である。
図4】青色波長光カットLED照明と従来のLED照明との波長スペクトルの比較を説明するためのグラフ図である。
図5】照度と消費電力の関係を表に示す図である。
図6】色覚異常を検出する検査用具を使用しての検査結果を表に示す図である。
図7】色の誤認のパターンを表す図である。
図8】太陽光下での色弁別の評価結果を表に示す図である。
図9】治験前の照明の種類に関する調査結果を表に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を詳細に説明する。
[照明装置の全体構成]
本発明に係る照明装置は、図1乃至図3に示すように、複数のLED素子2を配設して成るLED基板1によって構成された光源3と、該光源(LED基板1+LED素子2)3を覆うよう、前記LED基板1の各LED素子2に対応すべく、それぞれに波長470nm以下の青色発光を減ずる青色波長光カットコーティングが施された耐熱ガラス素材による球面もしくは非球面のレンズ5群を配設して成る照明用フィルタカバー4とから概ね構成されている。
【0024】
[光源の構成]
具体的な光源3の構成としては、図1または図2に示すように、例えばアルミ製またはガラス・エポキシ樹脂製等の長方形板状のLED基板1の上に例えば合計14個のLED素子(LEDチップ)2が7個ずつ2列となし且つ両列のLED素子2同士が互いに千鳥状となして実装されており、電圧変動(逆電圧)による影響を少なくするために不図示の電流制限抵抗や定電流素子(定電流ダイオードまたは逆接ダイオードや定電流ICなど)がLED素子2に直列に挿入されている。
【0025】
[照明用フィルタカバーの構成]
照明用フィルタカバー4は、図1または図2に示すように、耐熱性のホウケイ(硼珪)酸ガラス(別名ボロシリケイトガラス)の素材によって長方形板状に成形されており、その幅方向両端側には表面側から裏面側に向けての下り段差を介してフランジ部7が各形成されている。これにより、照明用フィルタカバー4の裏面側には、長手方向中央に沿って、上記LED基板1を収容するための凹部6が形成される。また、この凹部6の中央には、上記したLED基板1上の各LED素子2に対応すべく球面レンズもしくは非球面レンズ等の合計14個のレンズ5が7個ずつ2列となし且つ両列のレンズ5同士が交互に千鳥状となして形成されている。なお、非球面レンズとは、例えば円筒面、トーリック面、対称非球面、非対称非球面等である。
【0026】
ホウケイ酸ガラスとは、ホウ酸を混ぜて熔融し、軟化する温度や硬度を高めたガラスであり、熱膨張率が通常のガラスと比べて3分の1程度と低く、そのため一般のガラスに比べて温度差に起因する熱応力が減少して熱衝撃に強くなり、また耐熱性・耐薬品性に優れているものである。アメリカのコーニング社の商標からパイレックスと呼ばれている。また、耐熱ガラスを構成するホウ素の原子量が小さいため、通常のガラスより密度が低い。また、光学的には色分散が小さく(アッベ数65程度)屈折率が低い(可視領域で1.51〜1.54)クラウンガラスである。
【0027】
また、図3に示すように、上記したレンズ5の表面には、前記LED素子2から出射される波長470nm以下で少なくとも波長略450nmの青色発光成分を減ずるための青色波長光カットコーティング層8が施されている。なお、この青色波長光カットコーティング処理は、レンズ5の裏面に施されていても良く、さらにはレンズ5群を含む照明用フィルタカバー4全体に施されていても良い。
【0028】
前記LED素子2から出射される光を上記照明用フィルタカバー4の凹部6内側におけるレンズ5の凹面側に向けて反射させるよう前記LED基板1もしくは各LED素子2の周囲または凹部6の周囲には反射板(図示省略)が付設されている。この反射板は例えばアルミ製等で、その表面に高純度のチタン及びシリコンをコーティングし反射率が90%以上とされた鏡面板であり、LED素子2から照射される光を効率良く反射して上記したレンズ5を通して外部に照射する。
【0029】
なお、上記した実施形態において、LED基板1へのLED素子2の配列形態や回路構成、LED基板1の材質、照明用フィルタカバー4のレンズ5の配列等々は、本発明を限定するものではなく、他の様々な変形例も可能である。
【0030】
次に、本発明に係る照明装置の使用時における色識別機能について説明する。
【0031】
[ABC−LED(青色波長光カット)照明の治験結果]
青色波長光カット照明(以下、ABC−LED)と従来のLED照明(以下、NBC−LED)において、主として色弁別機能についで治験を行い、視科学的改良点及び市場性を検証する。
【0032】
対象光源の波長スペクトル(横軸:波長(nm)、横軸:相対放射強度)を図4に示す。ABC−LEDの場合、最大ピーク域の波長452nm(図4中、矢印2の実線カーブで示す)においてカット率は34%〜最大50%であった。また、NBC−LEDの場合、波長440nm(図4中、矢印1の点線カーブで示す)ではカット率は42%であった。なお、波長380〜500nmは青色波長光波長域を示す。実験は実用性のあるカット率34%の照明下で行った。
【0033】
また、対象者20〜60歳代の近見視力0.7以上の12名(男性11名、女性1名)について、色名表及び色覚の太陽光下での検査(温度24〜25℃、湿度60%)を行った。検査方法として、同じ部屋に、NBC−LEDとABC−LEDの2光源を天井に設置し、どちらか一方の光源のみを点灯させた状態で、色名表及び色覚の検査(パネルD−15)を実施した。この場合、部屋の天井高を2.95mで照明装置は天井に埋め込み配置し、机の高さは45cmとし、外光は遮断した。図5に示すように、NBC−LEDでは、机上照度が900[lx]、消費電力120Wであり、ABC−LEDでは、上照度が900[lx]、消費電力75Wである。すなわちJIS照度基準(視作業)は昼光の影響がない場合、750〜1500[lx]、消費電力については、ABC−LEDの場合はレンズを使用しており直下照度が高くなるので、消費電力を下げて、照度の調節を行った。
【0034】
現在市場にでているLEDは一見白色光に見えるが、眼や体内リズムに影響を与える青色光を含んでいる(図4参照)。青色光は特に眼に障害を与えることから、この青色光をカットしたLEDが求められているが、青色光をカットしたLEDとしては市場になく、メガネを着用してわずか10%程度のカットが可能である。そこで、青色光をカットした独自のLED照明の開発を行い、人の眼に安全なLED照明装置の作成に取り組んだ。その結果、球面ガラスに青色光をカットするコーティングを行うことで34%〜最大50%をカットするLED照明装置が作成できた。
【0035】
但し、青色光をカットすると照明光が黄色味をおびる。しかし、この光は太陽光に近い黄色味なので、ABC−LEDで色の誤認がおこらず、自然光に近いことをポイントにするべく、色弁別のテストを行った。なお、青色波長光カットLEDの商品名をABC−LED(AはAクラスの、BはBlueLight青色波長光、CはCutカット)としている。従来のものは青色波長光をカットしていないので、Non BlueLight Cut(NBC−LED)とした。
【0036】
また、シトリンという黄色味をおびた宝石が太陽を象徴する石と呼ばれ、その石の持つ意味や縁起など、富と繁栄をもたらす健康と安眠をヒントにシトリンLEDというネーミングを検討した。照明光の色温度の表現に「シトリンホワイト」というような独自の表現方法などを織り交ぜるなど市場に一石を投じるものとした(なお、ABC−LED及びシトリンLEDはともに商標登録済みである)。
【0037】
[パネルD−15の結果]
図6及び図7に示すように、色覚正常者11名中、2名がNBC−LEDにおいて色の誤認が生じた。ABC−LEDでは全例色の誤認はみられなかった。なお、第一色覚異常が見られた被検者Aは除外した。また、2種のLEDで実際の色の見え方が異なるかどうか色名表で検査をした。色名表は全ての色を明度・彩度等を基準に細かく見本帖にしている色の選択に用いる基本的な色見本帖である。実際のもの(今回、緑はピーマン、赤・黄はパプリカ)の色の見え方を2種のLED照明下で色名表から選んでもらった。同一の色がない場合は、近いものを選択してもらった。結果はABC−LEDとNBC−LEDではほとんど差がみられなかった。つまり、実物をみても、ABC−LED照明下で色の見え方に差がないことが認められた。
【0038】
[色名表(DIC社製:DIC COLOR GUIDE Ver.19)による色弁別の結果]
青色波長光をカットすることで、実物の色の見え方に影響がないかを実証する目的で対象者全員に赤色、緑色、黄色のピーマンを見せ、色名表から似ている色の番号を選んでもらった。似ているレベルを3段階(1:やや近い、2:ほとんど近い、3:―致)で評価してもらった。なお、黄色については対象者A〜Dに黄色ペンを対象者E〜Lに黄色のパプリカで上記を行った。その結果、各色による色弁別能において、赤色:同―色を選んだ対象者がABC−LEDで5名、NBC−LEDで6名。緑色:同―色を選んだ対象者がABC−LEDで6名、NBC−LEDで6名。黄色:同―色を選んだ対象者がABC−LEDで2名、NBC−LEDで2名。赤色のみ同一色を選んだ対象者が1名多くみられた。この結果からは両者のLEDに特に差はみられなかった。
【0039】
[太陽光下での色の弁別]
太陽光下において、下記2名の色の弁別を治験したところ、特徴的な結果(図8に示す)が得られた。緑の弁別(20代)において、NBC−LED照明下では濃い緑を選択したが、ABC−LED及び太陽光下では薄い緑を選択している。また、黄の弁別(20代)において、ABC−LEDと太陽光とで全く同一の色(NO.165)を選択(両者ともレベル3)するという結果が得られた。しかし、今回は次回の治験に向けての予備実験で、対象者も2名なのでこの結果は結論ではない。
【0040】
パネルD−15は眼科領域では色覚異常を検出する国際的基準用具である。ABC−LEDが一見黄色味をおびた照明に感じられるので、色の誤認がないか、国際的に使われている検査機器で検査した。今回の結果では、NBC−LEDの方が色の誤認が11名中2名に検出され、開発したABC−LEDは全員色の誤認はなく、予想以上の良い結果が得られた。
【0041】
[アンケート調査の結果]
治験前に、近見視力、眼に関する自覚症状、自宅で使用している照明の種類をヒアリングした(図9参照)。
【0042】
[ABC−LEDとNBC−LEDの印象]
(全体的な印象)治験中に本やPC画面を見てもらい、受ける印象をヒアリングした。12名中11名が、ABC−LED照明の方が暗いと感じた。他1名(20代)は、ちょうどよい明るさと感じ、NBC−LEDが明るすぎるとの印象であった。12名中11名が、ABC−LED照明の方が落ち着く、やわらかいなどの印象を受けたと回答した。他1名(30代)がNBC−LEDの方が落ち着くと回答した。PC画面を見せた8名中6名が大差なし。他2名(10代と20代)が背景色が白色の部分のアイコンがABC−LEDの方が見えやすくなったと回答した。本を見せた8名中3名(10代2名、20代1名)が、ABC−LEDの方の文字が見やすい。この3名中1名(20代)がNBC−LEDの方で眩しさを感じるとのことだった。また、NBC−LEDの文字の方が見えやすいと回答者(30代)がABC−LEDの照明の方で、文字を読むときにチカチカするとのことであった。以上はABC−LEDの優位性を実証するための予備実験であり症例数と精度を検討し本治験として追加する。
【0043】
[まとめ]
本実施形態における青色波長光カットのABC−LED照明は一般的な青色波長光カットのないNBC−LED照明より黄味を帯びた照明光であるため、色の視認や照明光として好まれないのではないかと危惧された。このことから、今回、特に色弁別能について視機能的評価をパネルD−15で実際の色弁別能を色名表で行った。パネルD−15治験結果から、ABC−LED照明下ではエラーが発生せず、NBC−LED照明と比較すると、色の弁別に支障をきたす虞が少ない傾向にあると考えられる。また、色名表の治験結果から、NBC−LEDにおいて濃い色(緑、黄)を選び、ABC−LEDでは薄い色を選ぶという傾向性が30〜40代で顕著にみられた。太陽光下での色弁別の治験において、ABC−LEDの照明が太陽光に近いということが示唆された。日常生活でABC−LEDが従来のLEDに比べて黄色味がかった照明光なので、好んで使用できるかどうかも危惧されたが、NBC−LEDに比べてやや暗いと感じる一方、ABC−LEDは12名中の1名以外(11名)がやわらかい光、落ち着くとの回答を得たことから、家庭での使用が好まれ、市場性があると考えられる。なお、暗いとの印象は照度を上げることで解決可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…LED基板
2…LED素子
3…光源
4…照明用フィルタカバー
5…レンズ(球面レンズもしくは非球面レンズ)
6…凹部
7…フランジ部
8…青色波長光カットコーティング層
図1
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図9