(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るガスセンサ1の軸線O方向に沿う断面図、
図2はガスセンサ1の複合プロテクタ100近傍の部分断面斜視図、
図3は複合プロテクタ100の部分断面図である。なお、
図2、
図3は
図1と径方向に90度異なる断面に沿った断面図である。
ガスセンサ1は、自動車の排気管(図示外)に取り付けられ、内部に保持するガスセンサ素子10の検出部11が排気管内を流通する排気ガス中に晒されて、その排気ガス中の酸素濃度から排気ガスの空燃比を検出する、いわゆる全領域空燃比センサである。
なお、以下の説明では、ガスセンサ1の軸線O方向を上下方向として図示し、内部に保持するガスセンサ素子10の検出部11側をガスセンサ1の先端側、後端部12側をガスセンサ1の後端側(基端側)として説明する。
【0014】
ガスセンサ素子10は公知にあるような軸線O方向に延びる細幅の板状形状をなし、酸素濃度の検出を行うガス検出体と、そのガス検出体を早期活性化させるために加熱を行うヒータ体とが互いに貼り合わされ、略角柱状をなす積層体として一体化されたものである(
図1では、紙面左右方向を板厚方向、紙面表裏方向を板幅方向として示している。)。ガス検出体はジルコニアを主体とする固体電解質体と白金を主体とする電極と(共に図示しない)から構成され、その電極は、ガスセンサ素子10の先端側の検出部11に配置されている。そして、電極を排気ガスによる被毒から保護するため、ガスセンサ素子10の検出部11には、その外周面を包むように保護層15が形成されている。また、ガスセンサ素子10の後端側の後端部12には、ガス検出体やヒータ体から電極を取り出すための5つの電極パッド16(
図1ではそのうちの1つを図示している。)が形成されている。なお、本実施の形態ではガスセンサ素子10を本発明における「ガスセンサ素子」として説明を行うが、厳密には、ガスセンサ素子の構成としてヒータ体は必ずしも必要ではなく、ガス検出体が本発明の「ガスセンサ素子」に相当する。
【0015】
ガスセンサ素子10の中央より先端寄りに位置する胴部13の先端側には、有底筒状をなす金属製の金属カップ20が、自身の内部にガスセンサ素子10を挿通させ、その検出部11を筒底の開口25から先端側に突出させた状態で配置されている。金属カップ20は主体金具50内にガスセンサ素子10を保持するための部材であり、筒底の縁部分の先端周縁部23は外周面にかけてテーパ状に形成されている。金属カップ20内には、アルミナ製のセラミックリング21と滑石粉末を圧縮して固めた滑石リング22とが、自身をガスセンサ素子10に挿通させた状態で収容されている。滑石リング22は金属カップ20内で押し潰されて細部に充填されており、これにより、ガスセンサ素子10が金属カップ20内で位置決めされて保持されている。
【0016】
金属カップ20と一体となったガスセンサ素子10は、その周囲を筒状の主体金具50に取り囲まれて保持されている。主体金具50はガスセンサ1を自動車の排気管(図示外)に取り付け固定するためのものであり、SUS430等のステンレス鋼からなり、外周先端側に排気管への取り付け用の雄ねじ部51が形成されている。この雄ねじ部51よりも先端側には、後述する複合プロテクタ100が係合される先端係合部56が形成されている。また、主体金具50の外周中央には取り付け用の工具が係合する工具係合部52が形成されており、その工具係合部52の先端面と雄ねじ部51の後端との間には、排気管に取り付けた際のガス抜けを防止するためのガスケット55が嵌挿されている。更に、工具係合部52の後端側には、後述する外筒30が係合される後端係合部57と、その後端側に、主体金具50内にガスセンサ素子10を加締め保持するための加締め部53とが形成されている。
【0017】
また、主体金具50の内周で雄ねじ部51付近には段部54が形成されている。この段部54には、ガスセンサ素子10を保持する金属カップ20の先端周縁部23が係止されている。更に、主体金具50の内周には滑石リング26が、自身をガスセンサ素子10に挿通させた状態で、金属カップ20の後端側から装填されている。そして、滑石リング26を後端側から押さえるように、筒状のスリーブ27が主体金具50内に嵌め込まれている。スリーブ27の後端側外周には段状をなす肩部28が形成されており、その肩部28には、円環状の加締めパッキン29が配置されている。この状態で主体金具50の加締め部53が、加締めパッキン29を介してスリーブ27の肩部28を先端側に向けて押圧するように加締められている。スリーブ27に押圧された滑石リング26は主体金具50内で押し潰されて細部にわたって充填され、この滑石リング26と、金属カップ20内にあらかじめ装填された滑石リング22とによって、金属カップ20およびガスセンサ素子10が主体金具50内で位置決め保持される。
【0018】
ガスセンサ素子10は、その後端部12が主体金具50の後端(加締め部53)よりも後方に突出されており、その後端部12には、絶縁性セラミックスからなる筒状のセパレータ60が被せられている。セパレータ60は、ガスセンサ素子10の後端部12に形成された5つの電極パッド16とそれぞれ電気的に接続される5つの接続端子61(
図1ではそのうちの1つを図示している。)を内部に保持すると共に、それら各接続端子61と、ガスセンサ1の外部に引き出される5本のリード線65(
図1ではそのうちの3本を図示している。)との各接続部分を収容して保護している。
【0019】
そして、セパレータ60が嵌められたガスセンサ素子10の後端部12の周囲を囲うように、筒状の外筒30が配設されている。外筒30はステンレス(例えばSUS304)製であり、主体金具50の後端係合部57の外周に自身の先端側の開口端31が係合されている。その開口端31は、外周側から加締められ、更に外周を一周してレーザ溶接が施されて後端係合部57に接合されており、外筒30と主体金具50とが一体に固定されている。
【0020】
また、外筒30とセパレータ60との間の間隙には、金属製で筒状の保持金具70が配設されている。保持金具70は自身の後端を内側に折り曲げて構成した支持部71を有し、自身の内部に挿通されるセパレータ60の後端側外周に鍔状に設けられた鍔部62を支持部71に係止させて、セパレータ60を支持している。この状態で、保持金具70が配置された部分の外筒30の外周面が加締められ、セパレータ60を支持した保持金具70が外筒30に固定されている。
【0021】
次に、外筒30の後端側の開口には、フッ素系ゴム製のグロメット75が嵌合されている。グロメット75は5つの挿通孔76(
図1ではそのうちの1つを図示している。)を有し、各挿通孔76に、セパレータ60から引き出された5本のリード線65が気密に挿通されている。この状態でグロメット75は、セパレータ60を先端側に押圧しつつ、外筒30の外周から加締められて、外筒30の後端に固定されている。
【0022】
一方、主体金具50に保持されたガスセンサ素子10の先端の検出部11は、主体金具50の先端部(先端係合部56)よりもやや後端側に位置しつつ、主体金具50の先端係合部56の内面56iに臨んでいる。この先端係合部56には、ガスセンサ素子10の検出部11を、排気ガス中のデポジット(燃料灰分やオイル成分など被毒性の付着物質)による汚損や、排気ガスに含まれる水分や排気管内面に付着した凝縮水の被水などによる折損等から保護するための複合プロテクタ100が嵌められ、スポット溶接やレーザ溶接によって固定されている。以下、この複合プロテクタ100について、
図2〜
図3を参照して説明する。
【0023】
図2、
図3に示すように、複合プロテクタ100は、底壁124を有する有底筒状をなす内側プロテクタ120と、内側プロテクタ120の外周面との間に間隙(以下、「ガス分離室」119ともいう。)を有した状態で内側プロテクタ120の径方向周囲を取り囲む外側プロテクタ110とから構成される2重構造を有する。内側プロテクタ120が特許請求の範囲の「プロテクタ」に相当する。
【0024】
内側プロテクタ120は、その外径が主体金具50の先端係合部56よりも小さく形成されており、開口側(基端側)の端部である環状の固定部121は、先端係合部56の外周に係合するように拡径されている。そして、固定部121の外周を一周してレーザ溶接が施されており、内側プロテクタ120は主体金具50の先端係合部56に固定されている。一方、固定部121から径方向内側に向かい、径方向に平行にフランジ状の空間仕切り部126が延びている。空間仕切り部126の径方向内側から先端側に向かい、軸線O方向に平行に側壁122が延びている。さらに、側壁122の先端側がテーパ状に窄まるテーパ部123を形成し、テーパ部123から中心に向かって径方向に平行な底壁124を形成している。
【0025】
空間仕切り部126には、複数の円形の内側ガス導入孔130が周方向に等間隔で開口されている。内側ガス導入孔130は、後述する外側プロテクタ110の外側ガス導入孔115を介してガス分離室119に導入される排気ガスのうち、主にガス成分を内側プロテクタ120の内部、すなわちガスセンサ素子10の検出部11が露出されたガス検出室(特許請求の範囲の「内部空間」に相当)129に導入させるために設けられている。なお、主体金具50の(先端係合部56の)内面56iと、金属カップ20の先端向き面と、内側プロテクタ120の内面(主に空間仕切り部126の内面)とによってガス検出室129が形成され、ガスセンサ素子10の先端側の検出部11がガス検出室129に臨んでいる。そして、内側ガス導入孔130はガス分離室119とガス検出室129とを連通している。ガス分離室119については後述する。
一方、底壁124の中心には、内側ガス排出孔160が1つ開口している。内側ガス排出孔160は、ガス検出室129内に導入された排気ガスや水滴を、側壁122を通して外部に排出する。
【0026】
一方、外側プロテクタ110は、その外径が主体金具50の先端係合部56よりもやや小さく形成されており、開口側(基端側)の端部である開口端部111は、先端係合部56の外周に係合するように拡径されており、先端係合部56の外周に(より詳細には、内側プロテクタ110の固定部121の外周に)係合している。そして、開口端部111の外周を一周してレーザ溶接が施されており、外側プロテクタ110は主体金具50の先端係合部56に固定されている。一方、開口端部111から空間仕切り部126を覆うように縮径して先端側に向かい、軸線O方向に平行に側壁112が延びている。さらに、側壁112の先端側がテーパ状に窄まりつつ、中心に向かって径方向に平行な外側底壁114を形成している。
【0027】
外側底壁114の中心には底壁開口114hが開口し、底壁開口114hから内側プロテクタ110のテーパ部123及び底壁124が先端側に露出し、テーパ部123の外面が底壁開口114hの内面に接点Pを介して接している。なお、テーパ部123の外面が底壁開口114hの内面に接さず、両者が離間していると、外側ガス導入孔115から導入された被測定ガスがこの隙間を通過してしまうため、ガスセンサ1の応答性の点では好ましくない傾向にある。このため、ガスセンサ1の応答性の観点からは、テーパ部123の外面が底壁開口114hの内面に接点Pを介して接していることが好ましい。
【0028】
そして、接点P(上述のようにテーパ部123の外面が底壁開口114hの内面が接さずに近接している場合は、最近接点)を含む、外側プロテクタ110の内面と内側プロテクタ120の外面(側壁122及び空間仕切り部126)とで囲まれる空間がガス分離室119を形成している。さらに、側壁112の軸線O方向の先端側寄りには、周方向に沿って複数の外側ガス導入孔115がガス分離室119に連通するように開口されている。外側ガス導入孔115は、外部からガス分離室119に排気ガスを導入させるために設けられ、本実施形態では軸線O方向に長い長円をなしている。
なお、本実施形態では、外側プロテクタ110の底壁開口114hから露出した底壁124から、内側ガス排出孔160が外部に直接連通している。
そして、
図2の矢印に示すように、被測定ガスGは、外側ガス導入孔115からガス分離室119に導入された後、内側ガス導入孔130を通ってガス検出室129に入ってガスセンサ素子10の検出部11に接触する。その後、被測定ガスGは、側壁122の内部を通って内側ガス排出孔160から外部に排出される。
【0029】
ここで、
図3に示すように、内側ガス導入孔130の内面側(後端向き面)の径方向の内縁130iに対し、ガスセンサ素子10(保護層15の最先端)が後端側に位置する。このため、内側ガス導入孔130を有する空間仕切り部126よりも先端側に延びる側壁122に対しても、ガスセンサ素子10が後端側に配置されることとなる。なお、
図3では内側ガス導入孔130及び空間仕切り部126が軸線Oに対し直角であるため、内側ガス導入孔130のうち最も先端側に位置する内側ガス導入孔の内面側は、いずれの内側ガス導入孔130でも同じ位置130iとなる。なお、内側ガス導入孔130の内縁130iが、特許請求の範囲の「内側ガス導入孔のうち最も先端側に位置する内側ガス導入孔の内面側」に相当する。
従って、内側プロテクタ120の側壁122とガスセンサ素子10は離間し両者が干渉しないので、側壁122の内部にガスセンサ素子10の先端側を収容するため側壁122の径を大きくする必要がなく、側壁122の外側の空間仕切り部126の寸法(径方向の長さ)をその分だけ大きくすることができる。このため、空間仕切り部126に設ける内側ガス導入孔130の径を大きくすることができる。その結果、主体金具50からの熱逃げによって内側ガス導入孔130の周囲の空間仕切り部126が冷却されても、被測定ガス中の煤が内側ガス導入孔130に付着し難くなるので、内側ガス導入孔130の目詰まりを抑制してガスセンサを長期間安定して動作させることができる。
【0030】
なお、
図3に示すように、第1の実施形態では、ガス検出室129に臨む主体金具50(の先端係合部56)の内面56iのうち、径方向の最も内側の部位56imが、内側ガス導入孔130の中心130cよりも径方向外側に位置する。この構成とすると、主体金具50の内面56iから内側ガス導入孔130を遠ざけることができ、主体金具50からの熱逃げを低減して内側ガス導入孔130近傍の空間仕切り部126が冷却され難くなる。その結果、内側ガス導入孔130に煤が付着しても堆積せずに焼失し易くなるので、内側ガス導入孔130の目詰まりがより一層生じ難くなるので好ましい。
ここで、内側ガス導入孔130の中心130cは、内縁130iと外縁130eとの中点とする。
【0031】
又、
図3に示すように、第1の実施形態では、内側プロテクタ120の側壁122の後端部の内径D1がガスセンサ素子10の先端の最大径D2よりも小さい。この構成とすると、側壁122の内部にガスセンサ素子10の先端側を収容するために側壁122の径をD2よりも大きくした場合に比べ、内側ガス導入孔130の径がより一層大きくなるので、内側ガス導入孔130の目詰まりをさらに抑制することができ、本発明を適用する効果が大きい。
なお、ガスセンサ素子10の先端の最大径D2とは、ガスセンサ素子10の先端の外径のうち最も大きい値である。そして、本実施形態ではガスセンサ素子10は板状であるため、
図1の紙面左右方向の板厚方向に比べ、
図3の紙面左右方向の板幅方向の幅(径)の方が大きいので、この幅(径)を最大径D2として採用する。
【0032】
又、第1の実施形態では、内側ガス導入孔130の円相当径が、外側ガス導入孔115の円相当径の0.5以上である。この構成とすると、外側ガス導入孔115から導入された被測定ガスが内側ガス導入孔130を通ってガス検出室129に流れる際、内側ガス導入孔130が通気抵抗となってガス検出室129に流入し難くなることが抑制され、ガスセンサ1の検出精度及び応答性が向上するので好ましい。なお、内側ガス導入孔130が複数個形成されている場合は、複数の内側ガス導入孔130の合計面積から求めた内側ガス導入孔130全体の円相当径を採用する。外側ガス導入孔115についても同様である。
【0033】
次に、
図4を参照し、本発明の第2の実施形態に係るガスセンサについて説明する。但し、第2の実施形態に係るガスセンサは、内側プロテクタ220の構成が異なること以外は、第1の実施形態と同様であるので、第1の実施形態と同一の構成部分については同一符号を付して説明を省略する。内側プロテクタ220が特許請求の範囲の「プロテクタ」に相当する。
【0034】
図4において、複合プロテクタ200は、内側プロテクタ220と、内側プロテクタ220の径方向周囲を取り囲む外側プロテクタ(第1の実施形態と同一形状)110とから構成される2重構造を有する。
内側プロテクタ220は、固定部(第1の実施形態と同一形状)121により主体金具50の先端係合部56に固定されている。一方、固定部121から径方向内側かつ先端側に向かい、先端に向かって曲面状に窄まる空間仕切り部226が延びている。さらに空間仕切り部226の径方向内側から先端側に向かい、軸線O方向に近づくように曲面状に窄まる側壁222が延びている。さらに、側壁222の先端側が曲面状に窄まって底壁224を形成している。
なお、側壁222の先端側の外面が底壁開口114hの内面に接点Pを介して接している。
そして、接点Pを含む、外側プロテクタ110の内面と内側プロテクタ220の外面(側壁222及び空間仕切り部226)とで囲まれる空間がガス分離室219を形成している。
【0035】
空間仕切り部226には、複数の円形の内側ガス導入孔230が周方向に等間隔で開口されている。一方、底壁224の中心には、内側ガス排出孔260が1つ開口している。
ここで、内側ガス導入孔230の内面側(後端向き面)の径方向の内縁230i、つまり内側ガス導入孔230の内側面の先端に対し、ガスセンサ素子10(保護層15の最先端)が後端側に位置する。この構成とすると、内側ガス導入孔230を有する空間仕切り部226よりも先端側に延びる側壁222に対しても、ガスセンサ素子10が後端側に配置されることとなる。なお、内側ガス導入孔230の内縁230iが、特許請求の範囲の「内側ガス導入孔のうち最も先端側に位置する内側ガス導入孔の内面側」に相当する。
従って、側壁222とガスセンサ素子10は離間し両者が干渉しないので、側壁222の内部にガスセンサ素子10の先端側を収容するため側壁222の径を大きくする必要がなく、内側ガス導入孔230の径を大きくして目詰まりを抑制することができる。
又、第2の実施形態においては、空間仕切り部226と側壁222とは曲面状に滑らかに繋がっており、両者の境界が明確ではない。そこで、内側ガス導入孔230の外面側を通るように仮想曲面S2を軸線O方向に平行移動した仮想曲面S22の先端Wの軸線O方向の位置Vを、便宜上、空間仕切り部226と側壁222との境界とみなす。側壁222の後端部の内径D1は、位置Vにおける側壁222の内径とする。なお、側壁222の後端部の内面が円形でない場合は、内径D1は側壁222の後端部の内径のうち最も大きい値である。
同様に、側壁222から底壁224へ曲面状に滑らかに繋がっており、両者の境界も明確ではない。そこで、径方向に平行な平面T1に接する面を底壁224とみなす。
【0036】
次に、
図5を参照し、本発明の第3の実施形態に係るガスセンサについて説明する。但し、第3の実施形態に係るガスセンサは、複合プロテクタ300の構成が異なること以外は、第1の実施形態と同様であるので、第1の実施形態と同一の構成部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
図5において、複合プロテクタ300は、内側プロテクタ320と、内側プロテクタ320の径方向周囲を取り囲む外側プロテクタ310とから構成される2重構造を有する。又、第3の実施形態においては、ガスセンサ素子10の先端の検出部11は、主体金具50の先端部(先端係合部56)よりも先端側に突出している。内側プロテクタ320が特許請求の範囲の「プロテクタ」に相当する。
内側プロテクタ320は、固定部321により主体金具50の先端係合部56に固定されている。ここで固定部321は、第1の実施形態の固定部121よりも軸線O方向に長く、主体金具50の先端部(先端係合部56)よりも先端側で、固定部321から径方向内側に向かい、径方向に平行にフランジ状の空間仕切り部326が延びている。空間仕切り部326の径方向内側から先端側に向かい、軸線O方向に平行に側壁322が延びている。さらに、側壁322の先端側が径方向に平行な底壁324に繋がっている。
【0038】
一方、外側プロテクタ310は、その外径が主体金具50の先端係合部56よりも大きく形成されており、開口側(基端側)の端部である開口端部311は、先端係合部56の外周に(より詳細には、内側プロテクタ310の固定部321の外周に)係合している。そして、開口端部311の外周を一周してレーザ溶接が施されており、外側プロテクタ310は主体金具50の先端係合部56に固定されている。
開口端部311は軸線O方向に平行に先端側へ延びた後、径方向に平行に縮径して中間壁314を形成している。中間壁314の径方向内側の内面は、内側プロテクタ320の側壁322の外面に接点Pを介して接した後、軸線O方向に平行に側壁322に接しながら先端側へ延びて側壁316を形成している。さらに、側壁316の先端側は、底壁324よりも先端側の位置でテーパ状に窄まるテーパ部317を形成し、テーパ部317から中心に向かって径方向に平行な外側底壁318を形成している。
そして、接点Pを含む、外側プロテクタ310の内面と内側プロテクタ320の外面(側壁322及び空間仕切り部326)とで囲まれる空間がガス分離室319を形成している。
【0039】
空間仕切り部326には、複数の円形の内側ガス導入孔330が周方向に等間隔で開口されている。一方、底壁324の中心には、内側ガス排出孔360が1つ開口している。
又、中間壁314には、複数の円形の外側ガス導入孔315が周方向に等間隔で開口され、外側底壁318の中心には、外側ガス排出孔370が1つ開口している。
なお、第3の実施形態においては、内側プロテクタ320の底壁324が外側プロテクタ310の外側底壁318の内側に離間して収容されつつ、底壁324に開口する内側ガス排出孔360が外側ガス排出孔370を介して外部と連通している。
【0040】
第3の実施形態においても、内側ガス導入孔330の内面側(後端向き面)の径方向の内縁330iに対し、ガスセンサ素子10(保護層15の最先端)が後端側に位置する。この構成とすると、内側ガス導入孔330を有する空間仕切り部326よりも先端側に延びる側壁322に対しても、ガスセンサ素子10が後端側に配置されることとなる。
従って、側壁322とガスセンサ素子10は離間し両者が干渉しないので、側壁322の内部にガスセンサ素子10の先端側を収容するため側壁322の径を大きくする必要がなく、内側ガス導入孔330の径を大きくして目詰まりを抑制することができる。
【0041】
なお、本発明は上記各実施形態に限られず、各種の変形が可能である。例えば、外側プロテクタがなく、内側プロテクタのみであってもよい。また、内側プロテクタ及び外側プロテクタの形状や、内側ガス導入孔、外側ガス導入孔、内側ガス排出孔及び外側ガス排出孔の形状や個数は上記に限定されず、例えば、内側ガス排出孔が非等間隔で配置されてもよい。
又、ガスセンサとしては、酸素センサ、NOxセンサ、HCセンサ、温度センサ等に本発明を同様に適用することができる。又、ガスセンサ素子は板状に限らず、筒状であってもよい。