(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の出来形管理方法は、ドットの集合体であるカメラの撮影画像を使用しているため、凹凸が1mm程度の測定対象物の品質管理を高精度に行うことができなかった。
また、トータルステーションを利用する方法も、測距精度が±(1+2ppm×距離)mm程度である場合、凹凸が1mm程度の測定対象物の品質管理を高精度に行うことができない。
【0006】
このような観点から、本発明は、トータルステーションの能力(測距精度)に限定されることなく、段差測定を簡易かつ高精度に行うことを可能としたトータルステーションを用いた測定方法および段差算出装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のトータルステーションを用いた測定方法は、測定対象物の表面に形成された第一平面と第二平面との高低差を測定するトータルステーションを用いた測定方法であって、 前記第一平面上で3点以上の測点を
トータルステーションにより測定する工程と、前記第二平面上で3点以上の測点を
トータルステーションにより測定する工程と、前記第一平面上の3点以上の測点
の座標値を式1の行列に対応させた後、当該行列から最小二乗法により当該第一平面の三次元平面方程式を算出する工程と、前記第二平面上の3点以上の測点
の座標値を式1の行列に対応させた後、当該行列から最小二乗法により当該第二平面の三次元平面方程式を算出する工程と、
前記第一平面上の測点と前記第二平面上の測点との中間点の座標を前記第一平面および前記第二平面の中央部になるように定める工程と、前記第一平面の三次元平面方程式および前記第二平面の三次元平面方程式を利用
した式により、前記中間点から前記第一平面に至る垂線と当該第一平面との交点の座標値を算出するとともに、前記中間点から前記第二平面に至る垂線と当該第二平面との交点の座標値を算出する工程と、交点座標同士の距離を算出することで、前記第一平面および前記第二平面間の距離を算出する工程とを備えることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の段差算出装置は、測定対象物の表面に形成された第一平面と第二平面との高低差を算出するものであって、前記第一平面上で測定された3点以上の測点
の座標値を式1の行列に対応させた後、当該行列から最小二乗法により当該第一平面の三次元平面方程式を算出する手段と、前記第二平面上で測定された3点以上の測点
の座標値を式1の行列に対応させた後、当該行列から最小二乗法により当該第二平面の三次元平面方程式を算出する手段と、
前記第一平面上の測点と前記第二平面上の測点との中間点の座標を前記第一平面および前記第二平面の中央部になるように定め、前記第一平面の三次元平面方程式および前記第二平面の三次元平面方程式を利用
した式により、前記中間点から前記第一平面に至る垂線と当該第一平面との交点の座標値を算出するとともに、前記中間点から前記第二平面に至る垂線と当該第二平面との交点の座標値を算出して、
算出した交点座標同士の距離を算出することで前記第一平面および前記第二平面間の距離を算出する手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
かかるトータルステーションを用いた測定方法および段差算出装置によれば、計測器の測定精度以上の精度による段差測定が可能となる。複数の測点を利用することで、測定誤差が修正された2つの平面を算出することが可能となり、ひいては、二つの平面の高低差を高精度に算出することができる。
また、トータルステーションを利用して非接触で計測を行うため、測点が多数であっても、効率的に作業を行うことができる。
【0010】
前記第一平面上および前記第二平面上の測点の数を4点以上とすれば、単純平面を想定する測点が3点の場合に比べて、誤差を最小とした仮想平面を想定することが可能となる。すなわち、段差のある上面と下面との仮想面間を測定点(計測位置)からの距離を計算することで、高精度な段差測定が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトータルステーションを用いた測定方法および段差算出装置によれば、段差測定を簡易かつ高精度に実施することを可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態では、
図1および
図2に示すように、表面に凹凸を有する板状の壁ボード2に対し、ノンプリズム式トータルステーション1および段差算出装置により凹凸の配置や形状の品質検査を行う場合について説明する。
本実施形態では、壁ボード2の表面に形成された凹部平面3(第一平面)と凸部平面4(第二平面)との高低差を測定する。
本実施形態のトータルステーションを用いた測定方法は、凹部平面測定工程と、凸部平面測定工程と、凹部平面算出工程と、凸部平面算出工程と、段差算出工程とを備えている。
【0014】
凹部平面測定工程は、凹部平面3上の測点(実測点)TG
Aをトータルステーション1により測定する工程である。
なお、凹部平面3上の測点TG
Aの数は3点以上であれば限定されるものではないが、本実施形態では4点以上測定する。
【0015】
測定結果は、トータルステーション1から段差算出装置へ出力され、段差算出装置の記憶部に記憶される。なお、段差算出装置は、いわゆるコンピュータからなり、記憶部、演算部および出力部を備えている。
段差算出装置の記憶部に実測点TG
Aのデータが記憶されると、演算部の座標値演算手段が起動する。
座標値演算手段は、式1〜3を利用して、直交座標値に変換する。実測点TG
Aの直交座標値は、記憶部に記憶される。
X=L×sin(V)×cos(H) ・・・式1
Y=L×sin(V)×sin(H) ・・・式2
Z=L×cos(V) ・・・式3
【0016】
凸部平面測定工程は、凸部平面4上の測点(実測点)TG
Bをトータルステーション1により測定する工程である。
なお、凸部平面4上の測点TG
Bの数は3点以上であれば限定されるものではないが本実施形態では4点以上測定する。
測定結果は、トータルステーション1から段差算出装置へ出力され、段差算出装置の記憶部に記憶される。
段差算出装置の記憶部に実測点TG
Bのデータが記憶されると、演算部の座標値演算手段が起動する。
座標値演算手段は、式1〜3を利用して、直交座標値に変換する。測点TG
Bの直交座標値は、記憶部に記憶される。
【0017】
凹部平面算出工程は、凹部平面3上の実測点TG
Aの計測値から凹部平面3の三次元平面方程式を算出する工程である。
凹部平面算出工程は、第一平面算出手段により実行される。
第一平面算出手段は、まず、記憶部の中から直交座標値に変換した凹部平面3上の実測点TG
Aの座標値(x
A1,y
A1,z
A1)、(x
A2,y
A2,z
A2)、(x
A3,y
A3,z
A3)、…を読み出し、式4の行列に対応させる演算を行う。
【0019】
次に、第一平面算出手段は、式4の行列から最小二乗法による三次元平面方程式を導き出す。
最小二乗法の計算(式5)で、平面方程式の上数項が決定されるため、凹部平面3の三次元平面方程式(式6)が求まる。凹部平面3の三次元平面方程式は、記憶部に記憶される。
【0021】
凸部平面算出工程は、凸部平面4上の実測点TG
Bの計測値から凸部平面4の三次元平面方程式を算出する工程である。
突部平面算出工程は、第二平面算出手段により実行される。
第二平面算出手段は、まず、直交座標値に変換した凸部平面4上の実測点TG
Bの座標値(x
B1,y
B1,z
B1)、(x
B2,y
B2,z
B2)、(x
B3,y
B3,z
B3)、…を記憶部から読み出し、式4の行列に対応させた後、最小二乗法の計算(式5)で、平面方程式の定数項を決定させ、凸部平面4の三次元平面方程式(式7)を算出する。凸部平面4の三次元平面方程式は、記憶部に記憶される。
【0023】
段差算出工程は、凹部平面3と凸部平面4との離間距離(段差)を算出する工程である。
記憶部に凹部平面3の三次元平面方程式および凸部平面4の三次元平面方程式が記憶されると段差算出手段が起動する。
段差記憶手段は、凹部平面3の三次元平面方程式および凸部平面4の三次元平面方程式を利用して、凹部平面3と凸部平面4との離間距離を算出する。
段差記憶手段は、まず、凹部平面3および凸部平面4で測定した実測点TG
A,TG
Bの中間点Pの座標(x
c,y
c,z
c)を両平面3,4の中央部になるように任意に定める。
【0024】
次に、段差算出手段は、中間点Pから凹部平面3に至る垂線と凹部平面3との交点の座標値(x
1c,y
1c,z
1c)を算出するとともに、中間点Pから凸部平面4に至る垂線と凸部平面4との交点の座標値(x
2c,y
2c,z
2c)を算出する。
【0026】
そして、段差算出手段は、式8,9から算出した交点座標値同士の距離L
12を、式10を利用して算出する。これにより、2つの仮想平面間の段差(=L
12≒凹部平面3と凸部平面4との離間距離(段差))が求まる。段差(L
12)は、は記憶部に記憶されるとともに、出力部(例えば、モニターやプリンター)に出力される。
【0028】
なお、凹部平面3と凸部平面4の段差は、中間点Pから凹部平面3と凸部平面4への垂線長により算出してもよい。
中間点から凹部平面3への垂線長h1は、式11により算出する。また、中間点Pから凸部平面4への垂線長h2は式12により算出する。
そして、段差hは、h1とh2の合計となる(式13)。段差hは記憶部に記憶されるとともに、出力部(例えば、モニターやプリンター)に出力される。
【0030】
本実施形態のトータルステーションを用いた測定方法によれば、トータルステーション1の測定精度以上の精度による段差測定が可能となる。
これは、複数の測点を利用することで、測定誤差が修正された2つの平面3,4を算出することが可能となり、ひいては、二つの平面3,4の高低差を高精度に算出することができるためである。
また、トータルステーション1を利用して非接触で計測を行うため、測点TGが多数であっても、効率的に作業を行うことができる。
【0031】
以下、本実施形態のトータルステーションを用いた測定方法による段差測定の精度について、参考として実施した、ノギスによる実測値と比較した検証試験結果を示す。
本検証では、測点が3点、4点、5点および6点の場合について、それぞれ3回ずつ(A〜C)測定し、凹部平面3と凸部平面4との段差を算出した。
【0032】
計算結果を
図3に示す。なお、トータルステーション1には、測距精度が測定距離10mに対して±1mm程度のものを使用した。
図3に示すように、測点が3点の場合には、パターンA,Bでノギスの実測値と1mm程度、パターンCで0.6mm程度の差が出た。したがって、測点が3点以上であれば、トータルステーションの測定精度以上の精度による段差測定が可能である。
【0033】
測点が4点の場合は、パターンA〜Cのいずれの場合であっても、ノギスの実測値との差が0.9mm以下であった。
また、測点が5点および6点の場合は、ノギスの実測値との差が0.3mm以下であった。
したがって、測点の数を4〜6点、より好ましくは5〜6点とすれば、より高精度の測定することが可能である結果となった。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
前記実施形態では、段差算出装置を利用して測定対象物(壁ボード)の表面に形成された凹凸の段差を算出する場合について説明したが、段差の算出する手段は限定されるものではない。例えば、表計算ソフトを利用して算出してもよい。
【0035】
前記実施形態では、壁ボードの表面に形成された凹凸の段差を測定する場合について説明したが、本発明のトータルステーションの用いた測定方法が適用可能な測定対象物は壁ボードに限定されるものではなく、あらゆる構造物に採用することができる。例えば、法面等であってもよい。
また、前記実施形態では、壁ボードの表面に矩形状の凹部が形成されている場合について説明したが、壁ボードの凹部または凸部の形状は限定されるものではない。
【0036】
トータルステーションの設置個所は、壁ボード(測点)に対して傾斜していてもよい。例えば、トータルステーションは、壁ボードの重心から延びる垂線の延長線上に配置されていてもよい。また、トータルステーションは、壁ボードの外形状から延びる延長線上よりも外れた位置に配置されていてもよい。