(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反応塔は縦形で、前記第2領域は前記第1領域の上方に形成され、前記水蒸気供給部は前記バイオマス供給部より上流に配置されている請求項1から3の何れかに記載のガス化炉。
前記ガス流速調整部は、内部のガス流に直交する平均断面積が前記第1領域より前記第2領域の方が大きくなるように形成された前記反応塔の形状により具現化されている請求項5記載のガス化炉。
前記第1領域のガス流速はバイオマスが浮遊する流速に設定され、前記第2領域のガス流速はバイオマスが第1領域に落下する流速に設定されている請求項5または6記載のガス化炉。
前記反応塔から流出するガスの組成に基づいて各酸素ガス供給部からの酸素ガス供給量を調整する供給量調整機構を備えている請求項1から7の何れかに記載のガス化炉。
前記反応塔から流出するガスの組成に基づいて酸素ガスの総供給量一定の下で各酸素ガス供給部からの酸素ガス供給量の比率を調整する供給量調整機構を備えている請求項1から7の何れかに記載のガス化炉。
測定されたガス組成が目標ガス組成になるように、前記酸素ガス供給部から供給される酸素ガスの総量を一定に維持しながら、前記第1領域及び第2領域の夫々に供給する酸素ガスの供給量の比率を調整する請求項10記載のガス化炉の運転方法。
【背景技術】
【0002】
バイオマスは再生可能な生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものをいう。バイオマスが燃焼することにより放出されるCO
2は、本来、生物の成長過程で光合成により大気中から吸収したCO
2であることから、地球温暖化の原因物質とはならないこともあり、再生可能なエネルギー源として注目されている。
【0003】
従来、さとうきびやトウモロコシ等の可食原料を発酵、ろ過してアルコールに転換し、代替燃料として利用する技術が確立されていたが、そのために可食原料の不足や価格の高騰を招く等の虞のあることから、近年、稲わら、もみ殻、木くず等の非可食原料をガス化炉に投入して水性ガス反応によりガス化し、得られたガスをFT合成により液体燃料化する技術が注目されている。
【0004】
一般に、バイオマスと水蒸気から一酸化炭素と水素を生成する水性ガス反応は吸熱反応であり、当該反応を促進するためにガス化炉の炉内温度を500℃〜1200℃に維持する必要がある。
【0005】
そのため、水蒸気を加熱して炉内に投入する構成、ガス化炉を電気ヒータ等の外部熱源で加熱する構成、加熱源として炉内に石炭等の化石燃料を投入する構成、或いは炉内に酸素を供給してバイオマスの一部の燃焼熱を加熱源に用いる等の様々な構成が採用されているが、エネルギー効率の良いガス化炉の実現という点で未だ多くの課題が残されている。
【0006】
特許文献1には、クリーンで高効率なガス化を行い、バイオマスの完全ガス化を図ることができるバイオマスガス化炉を提供することを目的とするバイオマスガス化炉が開示されている。
【0007】
当該バイオマスガス化炉は、平均粒径が0.05≦D≦5mmのバイオマス粉砕物を供給するバイオマス供給手段と、酸素と水蒸気の混合物の燃焼酸化剤を供給する燃焼酸化剤供給手段とを備え、酸素[O
2]/炭素[C]のモル比率を0.1≦O
2/C<1.0の範囲とすると共に、水蒸気[H
2O]/炭素[C]のモル比率を1≦H
2O/Cの範囲とし、温度を700〜1200℃とする噴流床型のガス化炉で、燃焼酸化剤をガス流れに沿って複数箇所から供給するように燃焼酸化剤供給手段が複数段設けられ、炉内圧力が1〜30気圧で運転されるように構成されている。炉内圧力が30気圧であれば、空塔速度が低くなり装置のコンパクト化が可能になる。
【0008】
また、当該ガス化炉は、炉本体の下側部分で助燃部分を形成するように、化石燃料である石炭を供給して化石燃料の燃焼により高温場を形成し、そこにバイオマスを投入することで、バイオマスを燃焼させることなく熱分解ガス化を効率よく行うように構成された態様も開示されている。
【0009】
特許文献2には、上述と同様の目的で、鉛直方向一方側から他方側へ向って内部でガスを流通させると共に内部の前記一方側に高温反応場が形成されて内部の前記一方側と前記他方側との間にガス化反応場が形成されるガス化炉本体と、前記ガス化炉本体の内部の前記高温反応場へバイオマスを供給するバイオマス供給手段と、前記ガス化炉本体の内部の前記高温反応場へ酸素を供給する燃焼酸化剤供給手段と、前記ガス化炉本体の内部へ水蒸気を供給する水蒸気供給手段とを備えているバイオマスガス化炉において、前記水蒸気供給手段が、前記ガス化炉本体の内部の前記高温反応場と前記ガス化反応場とへそれぞれ別々に水蒸気を供給するように構成され、炉内圧力が1〜30気圧で運転されるバイオマスガス化炉が開示されている。
【0010】
特許文献3には、流動床部及びフリーボード部に夫々酸素とスチームを含む酸化性ガスを供給する複数段のガス供給部を備え、流動床部でバイオマスを酸化して500℃〜750℃の温度に加熱し、前段で酸化されたバイオマスの一部をフリーボード部上流側で800℃〜850℃の温度に加熱し、さらに前段で酸化されたバイオマスの一部をフリーボード部下流側で900℃〜1000℃の温度に加熱して合成ガスを生成する炉内圧力が10気圧程度で運転される流動床式のガス化炉が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に開示されたガス化炉は、通常バイオマスを単にガス化した場合に水素ガスと一酸化炭素ガスの比率H
2/COが2を超えることが無いとの認識の下で、水素ガスと一酸化炭素ガスの比率H
2/COがメタノール合成に必要な2以上となるように、酸素と水蒸気を混合した燃焼酸化剤を供給する燃焼酸化剤供給手段を炉の上流に設け、或いは上流側から下流側に向けて多段に設け、酸素[O
2]/炭素[C]のモル比率を0.1≦O
2/C<1.0の範囲に調整し、水蒸気[H
2O]/炭素[C]のモル比率を1≦H
2O/Cの範囲に調整する技術であり、燃焼酸化剤供給手段から供給される水蒸気により水性ガス反応を促進し、同時に供給される酸素により水性ガス反応でせられた一酸化炭素ガスを部分酸化して水性ガス反応に好適な温度700〜1200℃に維持するように構成されている。
【0013】
つまり、炉内に燃焼酸化剤を投入して部分燃焼(CO+1/2O
2→CO
2)させることで熱として利用し、後工程でCO
2を除去することで[H
2O]/[CO]の比率を向上させる技術であり、ガス化炉の後段にガス中のH
2とCOガスの組成を調整するCOシフト反応装置が別途設けられている。
【0014】
特許文献2に開示されたガス化炉も特許文献1に開示されたガス化炉と同様に、水素ガスと一酸化炭素ガスの比率H
2/COがメタノール合成に必要な2以上となることを目的としたガス化炉であり、ガス化炉本体の水性ガス反応が行なわれる高温反応場と、水性シフト反応が行なわれるガス化反応場とへそれぞれ別々に水蒸気を供給することで、高温反応場での温度低下を回避しながらガス化反応場で水素ガスの収量を上昇させるように構成されている。
【0015】
しかし、水性ガス反応により得られたガスをFT合成して得られる燃料はメタノールに限るものではなく、必ず水素ガスと一酸化炭素ガスの比率H
2/COを2以上に調整しなければならないということはない。例えば、鉄系の触媒を用いて水素ガスと一酸化炭素ガスから軽油を合成する場合、水素ガスと一酸化炭素ガスの比率H
2/COを1に調整することが好ましいが、同じ軽油を合成する場合であっても触媒が異なれば好適な水素ガスと一酸化炭素ガスの比率H
2/COが異なる値になる。そのような場合に、特許文献1,2に開示されたガス化炉では容易に対応できなかった。
【0016】
また、原料となるバイオマスの種類や含水率を含む組成が異なると、水性ガス反応の好適な条件も異なり、生成される水素ガスと一酸化炭素ガスの比率H
2/COも様々に変動するため、原料の変動や目標とする生成ガスの比率H
2/COの変動に対応して容易に目標とする比率H
2/COで生成ガスを得ることができる柔軟なガス化炉が望まれていた。
【0017】
さらに、特許文献1,2に開示されたガス化炉は、多段に酸素ガス及び/または水蒸気を供給する構成であるため、下流側ほどガス流量が増して流速が上昇するため、十分な反応時間を確保するためにガス化炉が大きくなるという問題もあった。そのような観点では特許文献3に開示されたガス化炉も同様である。
【0018】
上述した従来のガス化炉は何れも加圧化で運転される炉であるため、厳重なシール性を確保する必要があり、設備コストが嵩むという問題もあり、大気圧または負圧下で運転する場合にはさらに大型化するという問題もあった。
【0019】
さらに、特許文献1,2,3には詳述されていないが、ガス化炉を700〜1200℃の高温に保つためにはヒータ等の外部熱源で加熱したり、石炭等の化石燃料の燃焼熱で加熱したりする必要があり、カーボンニュートラルなバイオマスと異なり地球温暖化への配慮が必要であるという問題もあった。
【0020】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、外部熱源の利用を抑制しつつ所望の比率の合成ガスを得ることができる自由度の高いシンプルなガス化炉、及びガス化炉の運転方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述の目的を達成するため、本発明によるガス化炉の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、バイオマス供給部と、水蒸気供給部と、前記水蒸気供給部から供給される水蒸気により形成される噴流床で前記バイオマス供給部から供給されたバイオマスを流動させる第1領域と、前記第1領域で生成されたガスが流入する第2領域とが、ガスの流れ方向に沿って形成される反応塔と、前記反応塔の前記第1領域及び第2領域の夫々に酸素ガスを供給する複数の酸素ガス供給部と、生成したガスとバイオマスまたはバイオマス残渣を第1領域と第2領域との間を移動可能とする連通部と、第2領域から生成されたガスと残渣を排出する排気口とを備えている点にある。
【0022】
バイオマス供給部から供給されたバイオマスが水蒸気供給部から供給される水蒸気によって流動する噴流床が反応塔の第1領域に形成され、第1領域でバイオマスが流動しながらガス化され、連通部を経由して反応塔のガスの流れ方向下流側の第2領域に流れる。第1領域及び第2領域の夫々に設けられた酸素ガス供給部から酸素ガスが供給されることによりバイオマスまたはガスの一部が燃焼し、その燃焼熱が各領域でガス化の反応に必要な温度の確保に用いられると同時にそのガスの成分が変化する。供給量調整機構によって第1領域への酸素ガス供給量及び第2領域への酸素ガス供給量が個別に調整されるので、それぞれの領域での温度及びガスの成分が調整され、その結果、外部熱源の利用を抑制することができ、各領域での生成ガスの成分調整もできるようになる。反応塔に供給されたバイオマスはガス化されて軽量の灰になった後にガスとともに排気口から排気される。
【0023】
尚、主に水性ガス反応が行なわれる第1領域では、酸素ガス供給部から供給される酸素ガスによって主にカーボンからなるバイオマスの一部が燃焼して昇温され、その燃焼温度により吸熱反応である水性ガス反応、つまりカーボンと水蒸気から一酸化炭素ガスと水素ガスが生成される反応が促進される。第2領域では水蒸気供給部から供給された水蒸気のうち水性ガス反応に寄与しなかった水蒸気と一酸化炭素ガスとから水素ガスが生成される水性ガスシフト反応が進むとともに、酸素ガス供給部から供給される酸素ガスによって一部の一酸化炭素ガスが燃焼する。このように反応塔内に主に水性ガス反応が行なわれる第1領域と、主に水性ガスシフト反応が行なわれる第2領域をガス流れに沿って形成し、ガス化された軽量の灰を第2領域から排出することでコンパクトなガス化炉となる。
【0024】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記酸素ガス供給部のうち前記第1領域に対応する酸素ガス供給部は、少なくとも前記バイオマス供給部より上流側に配置されている点にある。
【0025】
主に第1領域で発生するバイオマスと水蒸気との間に生じる水性ガス反応は吸熱反応であり、当該反応によって温度が低下すると水性ガス反応が抑制されるようになる。しかし、第1領域に対応する酸素ガス供給部が少なくともバイオマス供給部より上流側に配置されていれば、バイオマスと酸素ガスとの接触機会が増して燃焼反応が起きやすくなる。それにより、反応塔内部の発熱源として燃焼反応が利用されることになり、外部熱源の利用を効果的に抑制することができるようになる。
【0026】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記酸素ガス供給部のうち前記第1領域に対応する酸素ガス供給部は、さらに前記バイオマス供給部の下流側に配置されている点にある。
【0027】
水性ガス反応で生じた一酸化炭素がバイオマス供給部の下流側から供給された酸素ガスによって燃焼するため、バイオマス供給部の下流側での温度低下が抑制され、水性ガス反応がさらに促進されるようになり、生成されたガスを十分な温度で第2領域に流下することができるようになる。
【0028】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記反応塔は縦形で、前記第2領域は前記第1領域の上方に形成され、前記水蒸気供給部は前記バイオマス供給部より上流に配置されている点にある。
【0029】
上述の構成によれば、反応塔に投入され下方に落下するバイオマスに対して、水蒸気供給部から供給される水蒸気の上昇流が作用し、バイオマスが底部に落下することを抑制して効果的にバイオマスの噴流床が形成されるようになる。
【0030】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記第2領域のガス流速を前記第1領域のガス流速よりも低下させるガス流速調整部を備えている点にある。
【0031】
上述の構成によれば、第2領域のガス流速が第1領域のガス流速よりも低くなり、第1領域で未だガス化していない比重の大きな未反応のバイオマスは第2領域に到達しても留まることはできず第1領域に戻される。第1領域に戻されたバイオマスは、再度水性ガス反応や燃焼反応等の機会を得ることになり、比重の小さなバイオマス灰になるまで第1領域に留まり続ける。また、第2領域での水性ガスシフト反応に要する時間が稼げるので、反応塔のガスの流れ方向サイズを小型にでき、結果としてバイオマスの水性ガス反応への変換率も向上する。さらに、比重の小さい残渣は第2領域より早い流速により第1領域に留まることができず、第2領域へ移動し排気口から排出される。
【0032】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第五の特徴構成に加えて、前記ガス流速調整部は、内部のガス流に直交する平均断面積が前記第1領域より前記第2領域の方が大きくなるように形成された前記反応塔の形状により具現化されている点にある。
【0033】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第五または第六の特徴構成に加えて、前記第1領域のガス流速はバイオマスが浮遊する流速に設定され、前記第2領域のガス流速はバイオマスが第1領域に落下する流速に設定されている点にある。
【0034】
上述の構成によれば、第1領域でバイオマスの噴流床が形成されて良好に水性ガス反応が促進される。水性ガス反応が不十分で未反応の状態のバイオマスが第2領域に到達しても留まることはできず第1領域に落下し、再度水性ガス反応の機会が得られる。バイオマスが水性ガス反応により灰化すると、ガスと同伴して第2領域に流下して排気口から排出される。従って、第1領域でバイオマスからガスへ高い変換率で変換されるようになる。
【0035】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、前記反応塔から流出するガスの組成に基づいて各酸素ガス供給部からの酸素ガス供給量を調整する供給量調整機構を備えている点にある。
【0036】
第1領域へ供給されるバイオマスの組成と供給量、すなわち反応塔内に供給されるカーボンC、水素H、酸素O及びバイオマスに含まれる水分H
2Oに基づいて、第1領域での水性ガス反応の程度、第2領域での水性ガスシフト反応の程度、その時の領域内の温度を所望の温度に維持するために必要な酸素ガス量が、供給量調整機構によって化学量論的に演算され、その結果に基づいて各酸素ガス供給部から供給すべき酸素ガスの供給量が調整されるので、外部熱源の利用を抑制しながらも所望の組成のガスが高効率で得られるようになる。
【0037】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、前記反応塔から流出するガスの組成に基づいて酸素ガスの総供給量一定の下で各酸素ガス供給部からの酸素ガス供給量の比率を調整する供給量調整機構を備えている点にある。
【0038】
上述の構成によれば、反応塔から流出するガスの組成に基づいて、供給量調整機構により酸素ガスの総供給量一定の下で各酸素ガス供給部からのガス供給量の比率が調整されるため、バイオマスの組成等に変動が生じても所望の組成の合成ガスが精度よく得られるように柔軟に対応できるようになる。
【0039】
本発明によるガス化炉の運転方法の第一の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一から第七の何れかの特徴構成を備えたガス化炉の運転方法であって、前記反応塔から流出するガスの組成を測定し、測定されたガス組成が目標ガス組成になるように、前記酸素ガス供給部から前記第1領域及び第2領域の夫々に供給する酸素ガスの供給量を調整する点にある。
【0040】
同第二の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、上述の第一から第八の何れかの特徴構成を備えたガス化炉の運転方法であって、測定されたガス組成が目標ガス組成になるように、前記酸素ガス供給部から供給される酸素ガスの総量を一定に維持しながら、前記第1領域及び第2領域の夫々に供給する酸素ガスの供給量の比率を調整する点にある。
【発明の効果】
【0041】
以上説明した通り、本発明によれば、外部熱源の利用を抑制しつつ所望の比率の合成ガスを得ることができる自由度の高いシンプルなガス化炉、及びガス化炉の運転方法を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明によるガス化炉、及びガス化炉の運転方法の実施形態を説明する。
図6に示すように、本発明によるガス化炉10は、バイオマスを原料にして生成される合成ガスから液体燃料を生成する液体燃料化システム100に組み込まれることが可能なガス化炉である。尚、当該ガス化炉10で生成される合成ガスは、発電や他の熱源としても利用可能である。
【0044】
液体燃料化システム(BTLシステム)100は、バイオマスから液体燃料の原料となる合成ガスを生成するガス化炉10、生成された合成ガスから灰分等の固形物、硫化水素ガスや塩化水素ガス、アンモニア等を除去するサイクロン、スクラバー、活性炭吸着塔等からなるガス精製装置204を経て精製された合成ガスから燃料を合成するFT合成装置104を備えている。
【0045】
ガス化炉10は、炉温が500℃以上1000℃以下の高温下で、バイオマスを水蒸気或いは過熱水蒸気で還元加熱して合成ガス(H
2、CO)を生成する反応塔を備えている。反応塔で得られた合成ガスが後段のガス精製装置204で精製され、不純物が除去された後にヒータ及び圧縮機を介して高温高圧に加熱及び加圧されてFT合成装置104に投入される。
【0046】
FT合成とは、Fischer−Tropsch合成の略で、一酸化炭素と水素から触媒反応を用いて液体炭化水素を合成する一連の合成反応プロセスを指す。FT合成装置104に投入された合成ガスは、触媒が分散された溶媒中に投入されて所望の炭化水素に合成される。触媒の種類や性状により変化するが、例えば、メタノールを合成する場合には、水素と一酸化炭素の比率H
2/COは約2であることが好ましい場合もある。また本実施形態で軽油を合成する場合には水素と一酸化炭素の比率H
2/COは約1であることが好ましい。
【0047】
つまり、FT合成で所望の炭化水素を効率的に得るために、水素と一酸化炭素の比率H
2/COが調整されていることが好ましく、この比率は同じ種類の炭化水素を得る場合でもFT合成で使用される触媒の種類にも依存する。
【0048】
従って、様々な比率H
2/COで合成ガスが得られる汎用性の高いガス化炉10が望まれ、また合成ガスの収率が高くコンパクトなガス化炉10が望まれている。
【0049】
図1には、本発明によるガス化炉10の一例が示されている。
ガス化炉10は、フレームで支持され、耐食性の金属で構成された縦型円筒形状の反応塔4と、反応塔4にバイオマスを供給するバイオマス供給装置2と、水性ガス反応を生起するための水蒸気を反応塔4に供給する水蒸気供給部3と、反応塔4を所望の温度に加熱するとともに合成ガスである水素と一酸化炭素の比率H
2/COを調整する酸素ガス供給部5(5a,5b,5c)とが設けられている。
【0050】
例えば高周波加熱等により常圧で約500℃程度に加熱された水蒸気とバイオマスとが反応塔4の内部で水性ガス反応や、水性ガスシフト反応して、反応塔4上部の排気口40から排気され、排気管42を経て上述したガス精製装置204(
図6参照)に導かれる。水性ガス反応は主に反応塔4の下部で、水性ガスシフト反応は主に反応塔4を上昇する過程で生じる。ガス精製装置204(
図6参照)には誘引送風機が設けられ、反応塔4内部が負圧に維持され、反応塔4内で生成されたガスがガス精製装置204(
図6参照)に誘引されて精製される。
【0051】
バイオマス供給装置2は一端が反応塔4の下方にフランジ接続された筒状のケーシング20と筒状のケーシング20に収容されたスクリュー羽根21とを備えたスクリューコンベア機構で構成され、筒状のケーシング20(以下、単に「ケーシング」と記す。)の他端側にバイオマスの投入口22が設けられている。投入口22には略鉛直姿勢の搬送路70が接続され、その搬送路70の上端に定量供給機構71を備えたホッパー7が設けられている。
【0052】
原料となるバイオマスとして稲わら、もみ殻、麦わら、トウモロコシの茎葉等の乾燥系のバイオマスが好適に用いられる。数mm程度に破砕されたこれらの乾燥系のバイオマスがホッパー7に充填され、搬送路70を介して投入口22に搬送される。投入口22に投入されたバイオマスはスクリュー羽根21で圧密に搬送されて反応塔4に投入される。つまり、ケーシング20内が充填され圧密化されたバイオマスで外気と反応塔4内部との間がシールされる。
【0053】
バイオマス供給装置2の下方に第1酸素ガス供給部5(5a)が設けられ、第1酸素ガス供給部5(5a)の下方に水蒸気供給部3が設けられている。バイオマス供給装置2の上方にはさらに他の複数の酸素ガス供給部5(5b,5c)が上下方向位置を異ならせて設けられている。
【0054】
反応塔4には、塔内温度を維持するために反応塔4を囲むように断熱壁Wが設置されている。断熱壁Wの内側、特に反応塔4の下方には反応塔4を所望の温度に維持するために複数のヒータHが埋め込まれている(
図2(b)参照)。
【0055】
図2(a)に示すように、バイオマス供給部2から反応塔4の内部に供給されたバイオマスBは水蒸気供給部3の先端部に設けられたノズル30から噴射される水蒸気により反応塔4の内部で流動する噴流床8が形成される。
【0056】
ノズル30の開口30aが反応塔4の底部41に向かって噴射され、底部41に向かって落下したまたは落下中のバイオマスを巻き上げながら上方に吹き上げる。反応塔4の下部の噴流床8が形成される領域が主に水性ガス反応が行なわれる第1領域R1となる。更に第1領域の上方に主に水性ガスシフト反応が行なわれる第2領域R2(
図1参照)が形成される。
【0057】
水性ガス反応とは、次式に示すように、500℃以上の高温環境下でバイオマスである固体炭素Cと水蒸気H
2Oとから一酸化炭素COと水素H
2が生成される吸熱反応をいう。
C+H
2O → CO+H
2
【0058】
水性ガスシフト反応とは、次式に示すように、800℃以上の高温環境下で一酸化炭素COと水蒸気H
2Oとから二酸化炭素CO
2と水素H
2が生成される発熱反応をいう。
CO+H
2O → CO
2+H
2
【0059】
吸熱反応である水性ガス反応が500℃以上の高温環境下で促進されるために加熱源が必要になる。そのため、上述したヒータH及び酸素ガス供給部5(5a)が設けられている。
【0060】
図2(b)に示すように、反応塔4が断熱壁Wで囲まれた状態でヒータHに通電されることにより、反応塔4の内部が500℃以上に加熱される。
【0061】
図2(a)に戻り、その後、第1酸素ガス供給部5(5a)から供給される酸素ガスにより第1領域R1で流動しているバイオマスBの一部が燃焼して二酸化炭素になる発熱反応によって高温の環境温度が維持されるようになる。
図2(a)で黒く塗りつぶされた粒子が燃焼したバイオマスである。つまり、ヒータHからの外部加熱やバイオマスBの一部の燃焼による内部加熱により温度が維持される。
C+O
2 → CO
2
C+1/2・O
2 → CO
【0062】
第1領域R1のうちバイオマス供給部2の上方にも第2酸素ガス供給部5(5b)が設けられ、第2酸素ガス供給部5(5b)から供給される酸素によってもバイオマスが部分燃焼して環境温度が維持される。もちろんこれらの酸素ガス供給部5から供給される酸素ガス量は安定した水性ガス反応が行なわれるために十分な量でありバイオマスの殆どが燃焼して消失するような量ではない。
【0063】
バイオマス供給装置2から供給されたバイオマスBは加熱されることなく反応塔4に供給され、反応塔4内の下方へ落下するので、噴流床の最下部近傍の温度が最も低くなる。そのため、この近傍に第1酸素ガス供給部5(5a)が配置されることが重要となる。また、第1領域の内バイオマス供給装置2の上方でも十分な環境温度を維持するため第2酸素ガス供給部5(5b)の位置も重要となる。何故なら、基本的にヒータHは立上げ時の熱源として用いられ、その後は酸素ガスとバイオマスBの燃焼反応で環境温度が維持されるように構成されているからである。
【0064】
つまり、水蒸気供給部3はガスの流れ方向に沿ってバイオマス供給装置2より上流(
図2では下方)に配置され、酸素ガス供給部5のうち第1領域R1に対応する酸素ガス供給部5aは、少なくともバイオマス供給装置2より上流側に配置されている。
【0065】
さらに、酸素ガス供給部5のうち第1領域R1に対応する酸素ガス供給部5bは、バイオマス供給部2の下流側にさらに配置され、水蒸気供給部3は何れの酸素ガス供給部5より上流側に配置されている。
【0066】
第1領域R1でバイオマスから生成された合成ガス及びチャーや灰はそのガス流れ方向下流側の第2領域R2に上昇して上述した水性ガスシフト反応が促進される。第2領域R2の入口部に先端が下方を向くように第3酸素ガス供給部5(5c)が配置され、第3酸素ガス供給部5(5c)から供給される酸素ガスにより水性ガス反応で生成された一酸化炭素の一部が燃焼する。
CO+1/2・O
2 → CO
2
【0067】
第2領域で主に行われる水性ガスシフト反応は発熱反応であるため、第3酸素ガス供給部5(5c)から供給される酸素ガスは環境温度の維持よりもむしろ水性ガス反応で生成される一酸化炭素と水素の比率の調整の意義が大きい。一酸化炭素の燃焼量が増せばそれだけ水素ガスの比率が大きくなるためである。
【0068】
尚、水性ガスシフト反応に必要な水蒸気は水蒸気供給部3から供給され、第1領域で水性ガス反応に寄与しなかった水蒸気が消費される。また、第3酸素ガス供給部5(5c)から供給される酸素ガスは燃焼して二酸化炭素になるだけであるため、反応塔4を上昇するガス流量は大きく変化することが無い。
【0069】
第1領域で生成されたガスとバイオマスまたはチャーや灰は第1領域R1と第2領域R2との間で連通部43を介して移動可能に構成されている。
【0070】
上述したように水蒸気供給部3から供給される水蒸気により水性ガス反応と水性ガスシフト反応に必要な水が供給されるとともに、第1領域でバイオマスの噴流床が形成されるように水蒸気の流量が調整されている。
【0071】
具体的に、第2領域R2のガス流速を第1領域R1のガス流速よりも低下させるガス流速調整部cが連通部43に形成されている。ガス流速調整部cは、内部のガス流に直交する平均断面積(
図1においては紙面に直交する平面の反応塔の面積)が第1領域R1より第2領域R2の方が大きくなるように拡径形成された反応塔4の形状により具現化されている。
【0072】
この拡径は第1領域R1から第2領域R2へのガス流れを乱さないように、縮径することなく滑らかに拡径するとともに、拡径部にバイオマスや残渣が堆積しないように、鋭角に立ち上がるように形成されている。
【0073】
第1領域R1で生成されたガスが第2領域に到達すると、拡径形成された反応塔4の形状により、その上昇速度が低下し、ガスに同伴した未反応のバイオマスがバイオマス自体の重量で第1領域に落下するように設定されている。つまり、未反応のバイオマスの殆どが第1領域R1で水性ガス反応の原料となり、或いは酸素ガスにより燃焼して灰化される。灰化されると比重が小さくなり、水蒸気供給部3からの水蒸気により生じる噴流床でこの灰化したバイオマスの残渣残差も巻き上げられ、ガスに同伴して第2領域R2に上昇して排気口40からガスとともに排気される。従って、排気口40以外に残渣を取り出す専用の残差排出部を設ける必要がない。
【0074】
上述したガス流速調整部cにより第2領域R2を流れるガスの流速は十分に低下するため、水性ガスシフト反応のための時間は十分に確保できるようになる。従って、第2領域R2の長さをそれほど稼ぐ必要がなく、反応塔4がコンパクトに構成できるようになる。
【0075】
このように、反応塔4内に主に水性ガス反応が行なわれる第1領域R1と、主に水性ガスシフト反応が行なわれる第2領域R2をガス流れに沿って形成し、ガス化された軽量の灰を第2領域から排出することで、第1領域R1と第2領域R2とが別の装置でなく一体で構成され、コンパクトなガス化炉を得ることができる。
【0076】
図3に示すように、上述したガス化炉10で進行するバイオマスのガス化プロセスを管理して制御するプロセス制御部60がさらに設けられている。プロセス制御部60は汎用コンピュータと、汎用コンピュータにインストールされた制御プログラムと、拡張ボードを備えて構成されている。拡張ボードには第1領域R1に設置された第1温度センサS3、第2領域R2に設置された第2温度センサS4、排気管42に設置された水素ガスセンサS1及び一酸化炭素ガスセンサS2からの検出信号が入力される入力回路、バイオマス供給部2のスクリュー羽根21を回転制御するモータへの駆動信号、水蒸気源から水蒸気供給部3に供給される水蒸気流量を調整する制御バルブV1、酸素ガス源から各酸素ガス供給部5(5a,5b,5c)へ供給される酸素ガス量を調整する制御バルブVa,Vb,Vcの開度調整信号が出力される出力回路が設けられている。
【0077】
プロセス制御部60には、各酸素ガス供給部5(5a,5b,5c)から供給される酸素ガスの供給量を個別に調整制御する供給量調整機構50が組み込まれている。供給量調整機構50は、反応塔4から流出するガスの組成を測定する水素ガスセンサS1及び一酸化炭素ガスセンサS2からの検出信号に基づいて、ガス組成が目標ガス組成になるように、つまり水素と一酸化炭素の比率H
2/COが所望の比率になるように、酸素ガス供給部5から第1領域R1及び第2領域R2の夫々に供給する酸素ガスの供給量を調整するように構成されている。
【0078】
図4(a)に示すように、第1領域R1に備えた第1酸素ガス供給部5aから供給される酸素ガスは、水性ガス反応により低下する温度を補償するために主にバイオマスの燃焼つまり固体炭素の燃焼に費やされる。その結果発生する燃焼温度により環境温度が上昇して水性ガス反応が促進されるが、固体炭素の燃焼により発生する一酸化炭素CO及び二酸化炭素CO
2濃度も上昇するため、相対的に水素と一酸化炭素の比率H
2/COが小さくなる。この傾向は第1酸素ガス供給部5aからの酸素の供給量を増すほど強くなる。
【0079】
第1領域R1の下流側に備えた第2酸素ガス供給部5bから供給される酸素ガスは、上流側で生じた水性ガス反応により低下する温度を補償するために供給される。第1酸素ガス供給部5aから供給される酸素ガスと同様のメカニズムが働くが、既に水性ガス反応で生じた一酸化炭素と水蒸気との間で生じる水性ガスシフト反応もある程度促進される。つまり、第2酸素ガス供給部5bから供給される酸素ガス供給量により固体炭素の燃焼と水性ガスシフト反応との間のバランスが調整される。
【0080】
図4(b)に示すように、第2領域R2に備えた第3酸素ガス供給部5cから供給される酸素ガスは、主に第1領域R1で行われた水性ガス反応で生じた一酸化炭素CO、または燃焼反応で生じた一酸化炭素COの燃焼や水性ガスシフト反応に費やされる。その結果、環境温度が上昇して水性ガスシフト反応が促進される。結果、水素ガスH
2濃度が上昇するため、相対的に水素と一酸化炭素の比率H
2/COが大きくなる。この傾向は酸素の供給量を増すほど強くなる。
【0081】
図4(c)に示すように、3系統の酸素ガス供給部5(5a,5b,5c)から供給される酸素ガス量を調整することにより、水素と一酸化炭素の比率H
2/COを所望の比率に調整できるようになる。
【0082】
尚、
図4(a),(b),(c)に示すガス組成を囲み円の面積は、生成されるガスの概略の比率が示されている。
【0083】
図4(d)には、上述したガス化炉10を用いて3系統の酸素ガス供給部5(5a,5b,5c)から供給される酸素ガス量を様々に調整して操炉した結果、生成されたガスの種類及びその量が示されている。
【0084】
RunNo.1はガス化炉10への供給酸素ガスの総量一定の下で、各ガス供給部へ均等比率で供給した結果が示され、RunNo.2は供給酸素ガスの総量一定の下で、第3ガス供給部5cへの供給量を相対的に増加するように供給した結果が示され、RunNo.3は供給酸素ガスの総量一定の下で、第2ガス供給部5bへの供給量を相対的に増加するように供給した結果が示され、RunNo.4は供給酸素ガスの総量一定の下で、第1ガス供給部5aへの供給量を相対的に増加するように供給した結果が示されている。
【0085】
水素と一酸化炭素の比率H
2/COに注目すると、第3ガス供給部5cへの供給量を相対的に多くしたRunNo.2では、均等に供給したRunNo.1に比べて比率H
2/COが大きくなり、第1ガス供給部5aへの供給量を相対的に多くしたRunNo.4では、均等に供給したRunNo.1に比べて比率H
2/COが小さくなることが確認され、第2ガス供給部5bへの供給量を相対的に多くしたRunNo.3では、均等に供給したRunNo.1に比べて比率H
2/COが小さくなり、RunNo.4と同様の傾向が表れることが確認できる。
【0086】
つまり、供給量調整機構50は、測定されたガス組成が目標ガス組成になるように、酸素ガス供給部5から供給される酸素ガスの総量を一定に維持しながら、第1領域及び第2領域の夫々に供給する供給量の比率を調整するように構成されている。
【0087】
具体的には、第2領域R2への酸素ガス供給量を増やすと水素を相対的に増やすことができ、第1領域R1への酸素ガス供給量、さらに言えば第1領域R1の上流側への酸素ガス供給量を増やすと一酸化炭素を相対的に増やすことができる。
【0088】
例えば、バイオマスの組成や含水率に基づいて、反応塔4内を水性ガス反応及び水性ガスシフト反応を促進するために必要な環境温度に維持するために必要な入熱量を算出して、その入熱量が領域R1,R2毎にバイオマスの燃焼熱及び/または一酸化炭素の燃焼熱で得られるように酸素ガスの総量を定め、定めた総量を一定に維持しながら、第1領域及び第2領域の夫々に供給する供給量の比率を調整するのである。
【0089】
本発明によるガス化炉10に備えた供給量調整機構50は、上述した制御態様以外に第1温度センサS3及び第2温度センサS4により検出される第1領域R1及び/または第2領域R2の温度が所定の環境温度になるように各酸素ガス供給部5(5a,5b,5c)から供給される酸素ガス量を調整することも可能である。この場合も、水素ガスセンサS1、一酸化炭素ガスセンサS2で測定されたガス組成が目標ガス組成になるように各酸素ガス供給部5(5a,5b,5c)から供給される酸素ガス量が調整されることが前提となる。
【0090】
尚、温度センサやガスセンサは数を増やすことで、より精度良く酸素ガス量の調整が可能になり、温度や水素、一酸化炭素と比率の調整も精度良くできるようになる。
【0091】
プロセス制御部60は、供給量調整機構50によりガス組成が目標ガス組成になるように制御できない場合や、ガス組成が目標ガス組成になってもガス量が低下するような場合に、バイオマス供給部2から供給されるバイオマスの供給量及び/または水蒸気供給部3から供給される水蒸気供給量を増減調整するように構成されている。
【0092】
そして、供給量調整機構50はバイオマスの供給量及び/または水蒸気供給量の変動に基づいて必要な酸素ガス供給量や供給量の比率を調整するように構成されている。
【0093】
以上説明した通り、本発明のガス化炉10を用いることにより、反応塔の上流側でバイオマスに水蒸気を供給して噴流床を形成し、主に水性ガス反応を促す水性ガス反応促進工程と、水性ガス反応工程で生成されたガスに対して、反応塔の下流側で主に水性ガスシフト反応を促す水性ガスシフト反応促進工程と、水性ガス反応促進工程及び水性ガスシフト反応促進工程の夫々に酸素ガスを供給するとともに、夫々に供給する酸素ガスの比率を調整することにより、反応塔から流出するガスの組成を調整する酸素ガス供給工程と、を含むバイオマスガス化処理方法が実行される。
【0094】
尚、酸素ガス供給工程は、水性ガス反応促進工程及び水性ガスシフト反応促進工程の夫々に供給する酸素ガスの総量を一定に維持しながら供給量の比率を調整して、反応塔から流出するガスの組成を調整する工程が含まれる。
【0095】
本発明によるガス化炉を用いると、各酸素ガス供給部5(5a,5b,5c)から供給される酸素ガス量を調整することにより、水素と一酸化炭素の比率H
2/COが約2の合成ガスや、水素と一酸化炭素の比率H
2/COが約1の合成ガスが得られるようになる。
【0096】
以下、本発明によるガス化炉の別実施形態を説明する。
上述した実施形態では反応塔4が縦型円筒形状に構成された例を説明したが、反応塔4が縦型であれば楕円筒状であっても角筒状であってもよい。
【0097】
上述した実施形態では連通部43に形成されたガス流速調整部cとなる拡径部に、第1領域R1から第2領域R2に次第に拡径するテーパー部を形成しているが、テーパー部の角度は鈍角に形成されることが好ましい。急激に拡径すると剥離流が生じて段差部に灰等が蓄積されて流速の低下が妨げられる虞があるためである。
【0098】
上述した実施形態は、噴流床式のガス化炉について説明したが、流動床式のガス化炉に適用することも可能である。また、噴流床式のガス化炉であっても噴流床に僅かに珪砂やセラミック粒子を混入し、噴流床でバイオマスが破砕されるように構成することで水性ガス反応が促進されるようになる。
【0099】
上述した実施形態では、外部熱源であるヒータを炉の立上げ時に使用する例を説明したが、水性ガス反応を促進するために外部熱源であるヒータを使用してもよい。この場合でも酸素ガス供給部を備えることにより、ヒータに要する電力コストは大幅に低減できる。
【0100】
尚、外部熱源であるヒータ等外部から追加のエネルギー投入を無くし、バイオマスのみでガス化炉の運転ができるのがより良い形態である。
【0101】
上述した実施形態では、ガス供給機構5が3系統で構成された例を説明したが、
図1に破線で示したように、さらに別系統のガス供給機構5dを備えてもよい。このようなガス供給機構5dは第1領域R1のみならず第2領域R2に備えてもよい。ガス供給機構を増やすことで、より細かな反応塔4内の温度調整と水素と一酸化炭素の成分比の制御が可能になる。
【0102】
上述した実施形態では、第1及び第2ガス供給機能5a,5bから酸素ガスが反応塔4の周壁の一か所から垂直に供給され、第3ガス供給機能5cから酸素ガスが反応塔4の周壁の一か所から斜め下方に供給される態様を説明したが、このような態様に限るものではない。
【0103】
例えば、
図5(a)に示すように、ガス供給機構5に反応塔4を囲繞するようにヘッダー管50を備え、ヘッダー管50に形成された複数のガス供給管51から反応塔4の内壁に沿って供給して旋回流を生起させる向きに供給するように構成してもよいし、
図5(b)に示すように、複数のガス供給管51から反応塔4の中心に向けて衝突する向きに供給するように構成してもよい。
【0104】
また、
図5(c),(d)に示すように、反応塔4の軸心方向に対して下方または上方に向けて供給するように構成してもよい。
図5(c)の態様は、
図1に示した第3ガス供給機能5cと同じであるが、これと
図5(a),(b)で示した態様とを組み合わせてもよい。
図5(d)の態様も同様であり、特に第1ガス供給機能5aに好適な態様となる。
【0105】
ガス供給機構5から供給される酸素ガスは純度の高い酸素ガス以外に、例えば大気に酸素を加えた酸素富化ガスを用いることも可能である。
【0106】
上述した実施形態では、水蒸気は常圧での過熱水蒸気を用いる例を説明したが、加圧水蒸気でもよく、飽和水蒸気でもよい。尚、上述したような常圧の反応塔の場合は、常圧の過熱水蒸気が反応塔の内部での水蒸気の膨張や水蒸気製造のコストを考えると良い。
【0107】
上述した実施形態では、反応塔4の内部が一律に500℃以上に維持される態様を説明したが、水性ガス反応と水性ガスシフト反応それぞれで必要な温度に合わせ、反応塔4内に温度分布を持たせるように、つまり主に水性ガス反応が行なわれる第1領域R1と主に水性ガスシフト反応が行なわれる第2領域R2で異なる温度分布になるように構成してもよい。このようにすると各反応に必要な温度が確保できるとともにエネルギーの消費を抑えることができる。
【0108】
上述した実施形態では、バイオマスを原料にして合成ガスを生成して液体燃料を合成するシステムを説明したが、ガス化炉で精製された合成ガスはガス燃料として発電等に利用でき、合成ガスの利用方法等はどのようなものであってもよい。
【0109】
上述した実施形態では、排気口40を第2領域である反応塔4の上部の空間に繋がる反応塔4の頂部に備えた例を説明したが、排気口40は第2領域に繋がっていればよく、例えば反応塔4の上部側方に設けてもよい。
【0110】
上述した実施形態では、原料となるバイオマスとして稲わら、もみ殻、麦わら、トウモロコシの茎葉等の乾燥系のバイオマスを用いる例を説明したが、木くず、バーク、竹等を用いることも可能である。ちなみに、もみ殻は比重約0.1、含水率約10%、バークは比重約0.6、含水率約60%、竹は比重約0.7、含水率約25%であり、様々な性状のバイオマスに対応できる。
【0111】
上述した実施形態では、ガス化炉から発生するチャーはガス化炉内で水性ガス反応に利用されるのであるが、
図7に示すように、ガス化10炉から発生するチャーをサイクロン等からなるチャー分離装置201で分離し、分離したチャーを燃料に用いた燃焼炉202で温水を発生させ、その温水を合成ガスの保有熱で加熱して蒸気を生成する廃熱ボイラ203を設けて、得られた水蒸気をガス化炉10に利用する等、システム全体としてエネルギー効率を向上するようにしてもよい。尚、符号204はガス精製装置であり、符号205は発電装置またはFT合成装置等を示す。
【0112】
上述した様々な実施形態は、本発明によるガス化炉、ガス化炉の運転方法、及びバイオマスガス化処理方法の一具体例を説明したに過ぎず、当該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。