(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧力調節部は、前記排気部に接続された排気弁と、前記圧力センサで測定される前記内部圧力に基づいて、前記排気弁の開度を増減する排気制御部とを有することを特徴とする請求項1に記載の基板処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す基板処理システム10は、基板11に形成された被膜を除去するものである。この例においては、基板11は、シリコンウエハ(半導体基板)であり、この基板11の表面に形成されたシリコン酸化膜(SiO
2膜)とシリコン窒化膜(Si
3N
4膜)とのうちシリコン窒化膜を、処理液12を用いて選択的に除去(エッチング)する除去処理を行う。処理液12としては、リン酸(H
3PO
4)を純水(脱イオン水)に溶解したリン酸水溶液を用いている。この処理液12としては、リン酸水溶液に限定されるものではなく、除去すべき被膜に応じたものを適宜用いることができる。
【0012】
基板処理システム10は、大別して基板処理装置15と、周辺装置16とから構成されている。基板処理装置15は、処理槽14と、この処理槽14内に配された一対の吐出部17、一対の排気部18、圧力センサ19、温度センサ20、及び処理槽14の上部に設けたカバー部材21a、21b、モータ22等で構成される。この基板処理システム10では、処理槽14の内部圧力Paと処理液12の濃度(リン酸水溶液中の溶質(リン酸)の割合)を一定に保ち、さらに処理液12の沸騰状態を保つことによって、処理液12を目的とする濃度(以下、目的濃度という)Cs、目的とする温度(以下、目的温度という)Tsに保ち、その処理液12で基板11を処理するものである。
【0013】
処理槽14は、処理液12が貯留され、上部が開口した箱形状の槽本体23と、この槽本体23の外側に一体に設けられた外槽24とを有している。槽本体23内には、複数枚の基板11が配置され、それら基板11が処理液12に浸漬される。各基板11は、互いに表面を対向した状態で保持具25に保持され、それぞれが起立した姿勢で、
図1中において紙面と垂直な方向に槽本体23内に配列される。槽本体23は、その外面にヒータ26が取り付けられており、ヒータ26は槽本体23の処理液12を加熱する。
【0014】
一対の吐出部17は、槽本体23の底部に配置されている。各吐出部17は、それぞれ複数の開口17a(
図2参照)が形成されている。この吐出部17に処理液12が供給されることによって、各開口17aから槽本体23内に処理液12が供給される。
【0015】
外槽24には、槽本体23の上部開口からオーバーフーローした処理液12が流れ込む。この外槽24の底部に排液口24aを設けてある。この排液口24aを介して、外槽24に流れ込んだ処理液12が循環部31に排出される。
【0016】
密閉部としてのカバー部材21a、21bは、モータ22によって駆動され、
図1に示すように、処理槽14の上部開口を気密に閉じた閉じ位置と、処理槽14の上部開口を開放した開き位置との間で回転する。カバー部材21a、21bを開き位置として処理槽14の開放された上部開口を通して、基板11を処理槽14内の槽本体23内に配置し、また槽本体23からの基板11を処理槽14の外に取り出す。
【0017】
基板11の処理時には、カバー部材21a、21bを閉じ位置とし、処理槽14を密閉する。これにより、後述するように加熱された処理液12から発生する水蒸気によって処理槽14の内部を加圧し、その内部圧力Paを大気圧よりも高くして処理液12の沸点を高くする。なお、処理液12としてのリン酸水溶液のリン酸と水とは共沸しない。本例で着目する沸点は、処理液12中の水の沸点であり、処理液12の沸点とは処理液12中の水の沸点を意味するものとして使用する。
【0018】
カバー部材21a、21bは、内部圧力Paで開くことがないように、基板11の処理時には閉じ位置でロックされる。また、カバー部材21a、21bと処理槽14とによる気密性は、高いことが好ましいが、内部圧力Paとして、大気圧力よりも高く設定される圧力(以下、目的圧力という)Psを得ることができればよい。また、気密性を有したチャンバ内に処理槽14を配した構成としてもよい。
【0019】
処理槽14の上部開口、すなわち処理槽14(外槽24)の外壁の上端は、処理槽14内に貯留される処理液12の液面よりも上方にしてある。これにより、貯留された処理液12の液面の上方に、その液面、カバー部材21a、21b及び処理槽14の外壁で囲まれた空間(以下、槽内空間という)を形成している。この槽内空間には、一対の排気部18と圧力センサ19とを配してある。
【0020】
圧力センサ19は、槽内空間の圧力、すなわち処理槽14の内部圧力Paを測定する。この圧力センサ19は、測定した内部圧力Paを排気制御部27、加水制御部28にそれぞれ送る。内部圧力Paを測定する1つの目的は、大気圧の影響を受けることなく内部圧力Paを一定にすることである。このため、圧力センサ19が測定する内部圧力Paは、変動する大気圧を基準とした相対な圧力ではなく、一定な圧力を基準にして測定する圧力、例えば絶対圧である。なお、排気部18については後述する。
【0021】
温度センサ20は、槽本体23内に配されており、処理液12の温度Taを測定する。温度センサ20で測定された温度Taは、加熱制御部29に送られ、処理液12の加熱の制御に用いられる。
【0022】
周辺装置16は、処理液12を循環させる循環部31、処理液12を供給する処理液供給部32等で構成されている。循環部31は、処理槽14から排出される処理液12を処理槽14に戻すものである。この循環部31は、外槽24の排液口24aと槽本体23内の吐出部17との間を繋ぐ配管33と、配管33の途中に接続されたダンパ34、循環ポンプ35、フィルタ36、バブルカッタ37で構成されている。また、配管33の途中には、処理液加熱部を構成するインラインヒータ38が接続されている。
【0023】
循環ポンプ35は、排液口24aから排出された処理液12を適当な圧力で吐出部17に向けて送る。これにより、吐出部17の各開口17aから処理液12が槽本体23内に吐出される。ダンパ34は、循環ポンプ35の上流側(排液口24a側)に設けられている。このダンパ34は、排液口24aから排出される処理液12の排出量が変動しても、常に一定量の処理液12を供給できるようにするためのものであり、排液口24aから排出された適当な量の処理液12を貯めておき、貯められている処理液12を循環ポンプ35に供給する。
【0024】
循環ポンプ35の下流側にインラインヒータ38が接続されており、このインラインヒータ38によって槽本体23に供給する処理液12を加熱する。インラインヒータ38は、加熱制御部29によって制御される。インラインヒータ38の下流側にフィルタ36、バブルカッタ37が順番に接続されている。フィルタ36は、処理液12中のパーティクルを除去し、バブルカッタ37は、処理液12中の気泡を除去する。
【0025】
処理液供給部32は、新規の処理液12を供給するためのものであり、一定の濃度に調整された処理液12が貯められた処理液タンク32aと供給バルブ32bとで構成される。処理液タンク32aは、供給バルブ32bを介して、循環ポンプ35の上流側で配管33に接続されている。槽本体23に処理液12を新規に貯留する場合には、供給バルブ32bを開き、循環ポンプ35によって圧送する。
【0026】
排気部18、圧力センサ19、排気制御部27、排気弁41は、圧力調節部を構成する。槽内空間に配された排気部18は、複数の開口18a(
図2参照)が形成された管状となっている。排気弁41は、処理槽14の外側に設けられており、各排気部18の一端が排気弁41に接続され、この排気弁41を介して処理槽14の外部に連通している。また、排気弁41には、排気ダクト(図示せず)が接続されている。処理槽14の内部圧力Paと処理槽14の外側の圧力(排気ダクト側の圧力)との差により、処理槽14内の水蒸気が排気部18と排気弁41を介して処理槽14の外部に排出される。
【0027】
排気制御部27は、圧力センサ19で測定された内部圧力Paに基づき、排気弁41の開度を調節することで、処理槽14の内部から排出される水蒸気量を増減する。これにより、大気圧に影響されることなく内部圧力Paを一定な目的圧力Psに保たれるようにするとともに、処理液12の沸点を高くする。目的圧力Psは、前述のように大気圧よりも高く設定されている。
【0028】
例えば、排気制御部27は、内部圧力Paの変動状態を監視しており、その変動状態に基づいて排気弁41の開度を調節する。これにより、目的圧力Psに対して排気弁41の開度が適切になるように調節する。より具体的には、例えば一定の期間ごとに、その期間中の内部圧力Paの平均圧力と標準偏差とを求め、標準偏差が閾値を超えている場合は、平均圧力と目的圧力Psとの差に応じた調節量で排気弁41の開度を増減する。平均圧力が目的圧力Psよりも高いときには、その差に応じて比例的に排気弁41の開度を大きくし、低いときには、その差に応じて比例的に排気弁41の開度を小さくする。標準偏差が所定値以下の場合には、排気制御部27は、そのときの排気弁41の開度を維持する。
【0029】
圧力センサ19、加水制御部28、純水供給部43、給水弁44とは、濃度調節部を構成している。純水供給部43は、例えば純水(脱イオン水)を貯めたタンク等で構成されている。給水弁44は、圧力センサ19で測定された内部圧力Paに基づく加水制御部28の制御によって開度が調節され、加水すなわち処理液12に対して純水を加える際の単位時間当たりに加える純水の量(以下、この単位時間当たりに加える純水の量を、加水量という)を調節する。この例では、フィルタ36とバブルカッタ37との間の配管33を流れている処理液12に対して加水する。
【0030】
加水制御部28は、常に給水弁44を開いた状態に維持しつつ、その開度を増減する。これにより、処理液12に純水を連続的に加水しながら、その加水量を増減する。処理液12に連続的に加水することで、加水による処理液12の濃度の変化を小さく抑えている。このよう処理液12のへの連続的な加水と、加水量の増減によって処理液12の濃度の変動を抑えながら処理液12の濃度を目的濃度Csに保つようにしている。なお、純水を加熱してから処理液12に加水してもよい。
【0031】
この基板処理システム10における内部圧力Paは、大気圧、排気弁41の開度、処理液12の濃度、ヒータ26から投入される熱エネルギーの大きさ等によって決まる圧力まで上昇する。ところで、内部圧力Paは、処理液12が沸騰することによって発生する水蒸気によって上昇ないし維持され、処理液12の濃度が同じであれば内部圧力Paが高いほど処理液12の沸点が高くなる。さらに、周知のように、同じ内部圧力Paの下では、処理液12の濃度が高くなることで沸点が上昇する。
【0032】
このため、基板処理システム10では、処理液12の濃度が内部圧力Pa及び処理液12の沸点に対し支配的なポジションとなり得える。ここで、処理液12が沸騰している状態においては、処理液12の温度Taは沸点に一致する。すなわち、処理液12を沸騰している状態に保つようにしている基板処理システム10では、処理液12の濃度の変化が、内部圧力Pa及び処理液12の温度Taを変化させる主要因となり得る。なお、処理液12は、目的温度Tsを目標としてその温度が制御されるから、温度Taが取り得る範囲は、内部圧力Paが過剰に高くなったと仮定しても目的温度Tsを大きく超えることはない。
【0033】
そこで、基板処理システム10では、上記のような現象を逆に利用して、内部圧力Paに応じて加水量を増減し、処理液12の濃度を目的濃度Csに保つようにしている。具体的には、まず内部圧力Paが目的圧力Psに達するまで加水量を増加し、目的圧力PSに達した段階で内部圧力Paが一定になるように加水量を調整する。この初期の状態では、処理液12中の水が過多の状態となり、処理液12の濃度が目的濃度Csよりも低く、内部圧力Paが目的圧力Psよりも高い状態となる。このように初期の状態とした後に、この初期の状態における加水量を初期加水量として、加水量の調節を行う。加水量の調節では、内部圧力Paが測定されるごとに、内部圧力Paと目的圧力Psとを比較し、内部圧力Paが目的圧力Psよりも低い場合には、初期加水量よりも加水量を増やし、内部圧力Paが目的圧力Psより高い場合には、初期加水量より加水量を減らす。この加水量の増減は、初期加水量を基準に、例えば内部圧力Paと目的圧力Psとの差分に対して比例的に行う。
【0034】
温度センサ20、加熱制御部29、ヒータ26、インラインヒータ38は、処理液12を加熱する処理液加熱部を構成している。加熱制御部29は、ヒータ26、インラインヒータ38の駆動を制御する。ヒータ26は、一定の出力(熱エネルギー)で槽本体23内の処理液12を加熱する。一方のインラインヒータ38は、温度センサ20で測定された処理液12の温度Taに基づいて、処理液12が目的温度Tsに保たれるように、その出力が加熱制御部29によって制御される。具体的には、インラインヒータ38は、処理液12の温度Taが目的温度Tsに達していない場合には、温度Taが上昇するように出力が高くされ、処理液12の温度Taが目的温度Tsを超えている場合には、放熱等で温度Taが下がるように出力が低くされる。処理液12の温度Taが目的温度Tsと同じ場合には、温度Taが保たれるように放熱等を考慮した所定の出力にインラインヒータ38は制御される。目的温度Tsは、内部圧力Paが目的圧力Psであるときの、目的濃度Csの処理液12中の水の沸点(飽和温度)である。
【0035】
図2に示すように、各吐出部17は、管状であり、配列された複数枚の基板11に沿って配されている。吐出部17には、基板11が配列される範囲に、複数の開口17aが形成されており、これにより各基板11の表面に均一に処理液が常に流れるようにしてある。同様に、排気部18は、管状であり、配列された複数枚の基板11に沿って配されている。排気部18には、基板11が配列される範囲に対応した部分に複数の開口18aが形成されている。このように複数の開口18aを形成した排気部18を用いることによって、槽内空間の基板11が配列される範囲に対応した領域から均一に水蒸気を吸引し、その領域の圧力を均一にする。これにより、基板11が配列している範囲内における処理液12の沸点を均一にしている。排気部18の構成は、上記のものに限定されない。なお、
図2では、保持具25、圧力センサ19などを省略して描いてある。
【0036】
次に上記構成の作用について説明する。予め処理液供給部32から循環部31を介して槽本体23に処理液12が供給されている。そして、槽本体23に処理液12が満たされるとともに、循環部31によって処理液12が循環している状態にされている。カバー部材21a、21bが開き位置とされて、処理槽14の上部開口が開放された状態とされる。このとき、インラインヒータ38は、例えば加熱制御部29の制御下で目的温度Tsとなるように処理液12を加熱しているから、大気圧の下で処理液12は沸騰した状態になっている。また、処理槽14の上部開口が開放された状態では、予め決められた加水量で連続的に加水が行われている。
【0037】
保持具25に保持された状態の処理対象となる各基板11が、処理槽14の上部開口から処理槽14内に搬入されて、槽本体23内に配置される。これにより、処理液12に各基板11が浸漬される。処理液12に基板11を浸漬することによって、処理液12に温度低下が生じるが、その温度低下を受けて加熱制御部29がインラインヒータ38の出力を高くする。このため、短時間で処理液12は、その温度Taが現在の内部圧力Pa(大気圧とほぼ同じ)に対応する沸点に達して沸騰した状態になる。
【0038】
基板11の浸漬後、カバー部材21a、21bが閉じ位置に回転され、処理槽14が密閉される。このとき、排気弁41は、例えば通常開度にされている。また、ヒータ26及びインラインヒータ38によって、処理槽14が密閉後にも処理液12に対する加熱が継続され、処理液12が目的温度Tsとなるように、インラインヒータ38の出力が加熱制御部29によって制御される。
【0039】
処理槽14が密閉されると、処理槽14内で処理液14が沸騰することによって発生する水蒸気で内部圧力Paが上昇する。内部圧力Paが上昇すると、内部圧力Paと処理槽14の外側の圧力の差により、処理槽14内の水蒸気が排気部18、排気弁41を通して処理槽14の外に排出される。このときに、処理槽14内の水蒸気は、排気部18の各開口18aから排気部18内に吸引される。したがって、槽内空間の基板11が配列された範囲に対応した領域から均一に水蒸気が吸引される。
【0040】
排気部18から排出される水蒸気量は、排気弁41の開度に応じて制限されるので、内部圧力Paは徐々に上昇する。また、内部圧力Paの上昇にともなって、処理液14の沸点が上昇し、その沸点の上昇とともに処理液12の温度Taが上昇して、処理液12が沸騰した状態になる。前述のように、内部圧力Paは、大気圧、排気弁41の開度、処理液12の濃度等によって決まる圧力まで上昇し、その内部圧力Paに応じた沸点で処理液12が沸騰した状態になる。なお、このときインラインヒータ38による加熱は、目的温度Tsを目標に制御されているから、処理液12の濃度が高くても処理液12の温度Taが目的温度Tsを大きく超えて高くなることはなく、それに応じて内部圧力Paも制限される。
【0041】
例えば、処理槽14が密閉されてから目的温度Tsに達すると想定される適当な時間の経過後に、圧力センサ19による内部圧力Paの測定が開始され、圧力センサ19によって順次に測定される内部圧力Paが排気制御部27と加水制御部28とに送られる。この測定される内部圧力Paに基づき、排気制御部27による排気弁41の開度の調節と、加水制御部28による給水弁44の開度の調節がそれぞれ開始される。
【0042】
加水制御部28は、測定される内部圧力Paを監視しながら、給水弁44の開度を徐々に大きくして加水量を増加させる。目的圧力Psに達したならば、続いて、内部圧力Paが一定になるように加水量を調整し、調整後の加水量を初期加水量として、処理液12の濃度が目的濃度Csとするために加水量の調節を開始する。前述のように、このように加水量が調節された初期の状態では、処理液12中の水が過多の状態となり、処理液12の濃度が目的濃度Csよりも低く、内部圧力Paが目的圧力Psよりも高い状態となっている。
【0043】
加水量の調節を開始すると、加水制御部28は、測定された内部圧力Paと目的圧力Psとを比較する。そして、内部圧力Paが目的圧力Psよりも低ければ、現在加水している初期加水量から増やした新たな加水量で処理液12に加水するように、給水弁44の開度を調節する。逆に、内部圧力Paが目的圧力Psよりも高ければ、初期加水量から減らした新たな加水量で処理液12に加水するように、給水弁44の開度を調節する。加水制御部28は、測定された内部圧力Paと目的圧力Psとを比較し、内部圧力Paが目的圧力Psよりも低ければ、現在加水している初期加水量から増やした新たな加水量で処理液12に加水するように、給水弁44の開度を調節する。逆に、内部圧力Paが目的圧力Psよりも高ければ、初期加水量から減らした新たな加水量で処理液12に加水するように、給水弁44の開度を調節する。
【0044】
一方、排気制御部27は、入力される内部圧力Paに基づいて、一定期間ごとにその期間の内部圧力Paの平均圧力と標準偏差を求める。そして、1期間の平均圧力と標準偏差とを求めるごとに、標準偏差を閾値と比較し、標準偏差が閾値を超えている場合には、排気制御部27は、次に平均圧力と目的圧力Psとを比較する。この比較で、排気制御部27は、平均圧力が目的圧力Psよりも大きければ、排気弁41の開度を大きくし、処理槽14から排出される水蒸気量を多くする。逆に、平均値が目的圧力Psよりも小さければ排気弁41の開度を小さくして、処理槽14から排出される水蒸気量を少なくする。一方、標準偏差が閾値以下であれば、その時点の排気弁41の開度を維持する。
【0045】
例えば、大気圧などを加味したときに、排気弁41の開度が目的圧力Psに対して大きい場合には、内部圧力Paが下がりやすく、加水制御部28の加水量の増減幅が大きくなるので、内部圧力Paの変動すなわち標準偏差が大きくなり、また内部圧力Paの平均圧力が目的圧力Psよりも小さくなる傾向を示す。この場合には、排気弁41の開度が小さくされる。この結果、それまでよりも内部圧力Paが下がり難い状態となるので、加水制御部28の加水量の増減幅が小さくなって内部圧力Paの変動が小さくなるとともに、内部圧力Paの平均圧力が目的圧力Psに近づく。
【0046】
逆に、排気弁41の開度が目的圧力Psに対して小さい場合には、内部圧力Paが上がりやすく、加水制御部28の加水量の増減幅が大きくなるので、やはり内部圧力Paの変動すなわち標準偏差が大きくなるが、内部圧力Paの平均圧力が目的圧力Psよりも大きくなる傾向を示す。したがって、この場合には、排気弁41の開度が大きくされる。この結果、それまでよりも内部圧力Paが上がり難い状態となるので、加水制御部28の加水量の増減幅が小さくなって内部圧力Paの変動が小さくなるとともに、内部圧力Paの平均圧力が目的圧力Psに近づく。
【0047】
上記のようにして、継続的な加水量の調節とともに、一定期間ごとに求めた平均圧力と標準偏差に応じた排気弁41の開度の調節とを繰り返すことより、内部圧力Paは目的圧力Psに、また処理液12の濃度が目的濃度Csに収束していく。また、内部圧力Paが目的圧力Psに収束していくことにより、処理液12の沸点が一定な目的温度Tsに収束していく。
【0048】
内部圧力Paが目的圧力Psになった後にも、圧力センサ19による内部圧力Paの測定が継続され、その測定結果に基づいて、排気弁41による排気量の調節と、処理液12に対する加水量の調節が上記と同様に繰り返し行われる。これにより、内部圧力Paが目的圧力Psに保たれるとともに、連続的な加水の加水量が増減され処理液12の濃度が目的濃度Csに保たれる。
【0049】
また、上記のように、内部圧力Paが大気圧によらず一定な目的圧力Psに保たれ、また処理液12が一定な目的濃度Csに保たれるから、処理液12の沸点が一定な目的温度Tsに保たれる。そして、処理液12は、加熱されて沸騰した状態が保たれるので、処理液12は、目的温度Tsに保たれる。結果として、目的温度Ts及び目的濃度Csに保たれた処理液12で基板11が処理される。
【0050】
また、処理槽14内から水蒸気を排出する排気部18は、基板11が配列された範囲に対応する部分に設けた複数の開口18aから処理槽14内から水蒸気を吸引して排出している。このため、基板11が配列された範囲に対応する槽内空間の領域から均一に水蒸気が吸引される。したがって、その槽内空間の領域の圧力が不均一になることはなく、当該領域の直下の処理液12の沸点が不均一になることもない。したがって、各基板11のいずれもが同じ目的温度Tsの処理液12で処理される。
【0051】
所定の時間が経過したならば、カバー部材21a、21bを開放位置に移動した後、保持具25とともに各基板11を処理槽14から取り出す。取り出された各基板11は、上記のように目的温度Ts及び目的濃度Csに保たれた処理液12で処理されているから、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜のうち所期のエッチングレート、選択比でシリコン窒化膜が除去されている。なお、カバー部材21a、21bを開放位置に移動すると、予め決められた加水量で連続的に加水が行われるようになる。