【文献】
P. Kraft et al.,"Characterization and Calibration of PILATUS Detectors",IEEE TRANSACTION ON NUCLEAR SCIENCE,米国,IEEE,2009年 6月,Vol.56, No.3,p.758-764
【文献】
Ch. Broennimann et al.,"The PILATUS 1M detector"[online],J. Synchrotron Rad.,米国,International Union of Crystallography,2006年,Vol.13,p.120-130,[平成30年4月23日検索], インターネット,URL,https://www.researchgate.net/publication/7281035_The_PILATUS_1M_detector
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分配部は、前記乱雑さとして、前記記憶された対応関係により導かれる面積比で前記実体ピクセルの計数値を分割するときの境界に、一定の最大幅でランダムなずれを与えることを特徴とする請求項1記載のX線データ処理装置。
前記分配部は、前記ランダムなずれを、前記実体ピクセルの計数値から推定される標準偏差により得られた−1以上1以下の乱数を用いて算出することを特徴とする請求項2記載のX線データ処理装置。
前記実体ピクセルの計数値として、前記実体ピクセルの形状に応じてチャージシェアの影響分を排除した計数値を用いることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のX線データ処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような補正方法では、ギャップ付近で補正により得られた計数値が他の位置の計数値に比べて異なる傾向が生じる。特に低強度のX線を測定する場合には、この現象が顕著に現れる。
図14は、従来の補正によるX線画像を示す図である。なお、
図14では、分かりやすいように画像処理でコントラストを上げている。
図14の画像では、読み出しチップのギャップ位置に格子状の線が現れている。
【0007】
このような現象は、面積の大きいピクセルでは
計数値が大きくなるため、相対的な統計変動が小さくなり、その
計数値を単純に面積比で分配すると統計変動が小さい影響が残ることに起因する。言い換えると、面積を大きくしたピクセルでは、X線の入射位置の情報が失われており、そこで得られた計数値をそのまま一律に仮想的なピクセルに分配することによる影響が生じている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、分配後の計数値の統計変動がピクセルの形状により異なって見積もられる影響を低減し、適切に計数値分配の補正ができるX線データ処理装置、その方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明のX線データ処理装置は、ピクセルアレイ型検出器で検出されたX線の計数値を補正するX線データ処理装置であって、実体ピクセルの形状および位置に対する仮想ピクセルの形状および位置の対応関係を記憶する記憶部と、前記記憶された対応関係に乱雑さを与えた対応関係を用いて、前記実体ピクセルの計数値を前記仮想ピクセルに分配する分配部と、を備え、前記仮想ピクセルに分配された計数値を補正結果として出力することを特徴としている。
【0010】
このように計数値の分配に乱雑さを与えることで、分配後の計数値の統計変動がピクセルの形状により異なって見積もられる影響を解消し、適切に
計数値分配の補正ができる。
【0011】
(2)また、本発明のX線データ処理装置は、前記分配部は、前記乱雑さとして、前記記憶された対応関係により導かれる面積比で前記実体ピクセルの計数値を分割するときの境界に、一定の最大幅でランダムなずれを与えることを特徴としている。このような算出により、容易に乱雑さを与えて計数値を算出できる。
【0012】
(3)また、本発明のX線データ処理装置は、前記分配部は、前記ランダムなずれを、前記実体ピクセルの計数データから推定される標準偏差により得られた−1以上1以下の乱数を用いて算出することを特徴としている。これにより、ピクセルごとに計数値に応じた適度な乱雑さを与えることができる。
【0013】
(4)また、本発明のX線データ処理装置は、前記記憶された対応関係において、前記実体ピクセルは、前記実体ピクセルで検出された計数値を読み取る読取チップの形状に応じた不規則な形状および位置を有し、前記仮想ピクセルは、規則的な形状および位置を有することを特徴としている。これにより、チップ間の不規則な形状および位置を有するピクセルを理想的なピクセルの並びに置き換えることができる。
【0014】
(5)また、本発明のX線データ処理装置は、前記実体ピクセルの計数値として、前記実体ピクセルの形状に応じてチャージシェアの影響分を排除した計数値を用いることを特徴としている。これにより、チャージシェアの影響も考慮して計数値を補正できる。
【0015】
(6)また、本発明の方法は、ピクセルアレイ型検出器で検出されたX線の計数値を補正するX線データ処理の方法であって、実体ピクセルの形状および位置に対する仮想ピクセルの形状および位置の対応関係に乱雑さを与えた対応関係を算出するステップと、前記算出された対応関係を用いて、前記実体ピクセルの計数値を前記仮想ピクセルに分配するステップと、前記仮想ピクセルに分配された計数値を補正結果として出力するステップと、を含むことを特徴としている。これにより、分配後の計数値の統計変動がピクセルの形状により異なって見積もられる影響を解消し、適切に
計数値分配の補正ができる。
【0016】
(7)また、本発明のプログラムは、ピクセルアレイ型検出器で検出されたX線の計数値を補正するX線データ処理のプログラムであって、実体ピクセルの形状および位置に対する仮想ピクセルの形状および位置の対応関係に乱雑さを与えた対応関係を算出する処理と、前記算出された対応関係を用いて、前記実体ピクセルの計数値を前記仮想ピクセルに分配する処理と、前記仮想ピクセルに分配された計数値を補正結果として出力する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴としている。これにより、分配後の計数値の統計変動がピクセルの形状により異なって見積もられる影響を解消し、適切に
計数値分配の補正ができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、分配後の計数値の統計変動がピクセルの形状により異なって見積もられる影響を解消し、適切に
計数値分配の補正ができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
[第1実施形態]
(全体構成)
図1は、X線検出システム10の構成の一例を示す概略図である。
図1に示すようにX線検出システム10は、X線源20、試料S、X線検出器100およびX線データ処理装置200で構成されている。
【0021】
X線源20は、例えば、陰極であるフィラメントから放射された電子束を対陰極であるロータターゲットに衝突させてX線を発生させる。X線源20から放射されるX線は、いわゆるポイントフォーカスのX線ビームである。
【0022】
ロータターゲットの外周面には、例えば、MoまたはCuのような金属が設けられている。Moターゲットに電子が衝突したとき、特性線であるMoKα線(波長0.711Å)を含むX線が放射される。Cuターゲットに電子が衝突したとき、特性線であるCuKα線(波長1.542Å)を含むX線が放射される。
【0023】
試料Sは、試料支持装置により支持されている。X線検出器100は、例えば試料Sで回折された回折X線または蛍光X線を検出する。X線データ処理装置200は、検出された計数値を処理し、検出結果を出力する。X線検出器100およびX線データ処理装置200の詳細については、後述する。
【0024】
(X線検出器およびX線データ処理装置の構成)
図2は、X線検出器100およびX線データ処理装置200の構成を示すブロック図である。X線検出器100は、複数のX線受光用のピクセル110を有しており、例えばフォトンカウンティング方式のピクセルアレイ型の2次元半導体検出器である。複数のピクセル110により形成される検出面の全面がセンサであり、センサに対し読み出しチップ140がタイリングされている。複数のピクセル110は、2次元的にアレイ化されており、一律の形状で原則規則的に配列されているが、読み出しチップ140間のピクセルは形状や位置が不規則である。なお、検出器は、2次元半導体検出器に限られず、1次元半導体検出器であってもよい。
【0025】
X線検出器100は、表面に複数のピクセル110を有しており、ピクセル110の背面には、読み出しチップ140を有している。また、読み出しチップ140には、分別回路120およびカウンタ部130が搭載されている。分別回路120は、複数のピクセル110の個々に接続されており、さらにはカウンタ部130が、分別回路120の個々に接続されている。カウンタ読み出し回路150は、各カウンタ部130に接続されている。
【0026】
分別回路120は、ピクセル110のパルス信号をX線波長ごとに分別して出力する。カウンタ部130は、分別回路120によって波長毎に分別された信号のそれぞれの個数を計数する。カウンタ部130は、例えば、分別回路120によって分別された数のパルス信号をそれぞれカウントできるように分別数と同じ数のカウンタ回路を内蔵する。カウンタ読み出し回路150の出力信号は、エネルギーの閾値により分離されたX線検出データとしてX線データ処理装置200に通信線を通して伝送される。
【0027】
X線データ処理装置200は、例えばパーソナルコンピュータである。パーソナルコンピュータは、例えば、演算制御するためのCPU、データを記憶するためのメモリ、メモリ内の所定領域に記憶されたシステムソフト、およびメモリ内の他の所定領域に記憶されたアプリケーションプログラムソフト、等によって構成されている。
【0028】
X線データ処理装置200には、ユーザの入力を受け付ける入力部300としてキーボード等が接続されている。また、X線データ処理装置200には、ディスプレイやプリンタ等の出力部400が接続されている。出力部400は、X線データ処理装置200からの指示に従って測定結果を出力する。
【0029】
(ギャップ付近のピクセル)
図3は、ギャップ付近のピクセルの形状および配置を示す概略図である。読み出しチップ140は、検出面を構成するピクセル111〜113の背面に設けられている。
図3に示すようにタイリングされた読み出しチップ140の間には、ギャップ141が形成される。ギャップ付近に読み出しチップ140の縁に合わせてノーマルなピクセル111より大きく長方形のピクセル112が設けられ、ギャップの4つ角の位置にはノーマルなピクセル111より大きい正方形のピクセル113が設けられている。
【0030】
(X線データ処理装置の構成)
図4は、X線データ処理装置200の構成を示すブロック図である。X線データ処理装置200は、管理部210、記憶部220および分配部260を備えており、X線検出器100で検出されたX線の計数値を補正する。
【0031】
管理部210は、X線検出器100でピクセルごとに検出された計数値を受け取り、管理する。例えば、管理部210は、ピクセル110の番地(i,j)に関連付けて、そのピクセルで検出されたX線の計数値を記憶する。
【0032】
記憶部220は、実体ピクセルの形状および位置に対する仮想ピクセルの形状および位置の対応関係を記憶する。ギャップ付近にあるピクセルについて対応関係を記憶するのが好ましい。仮想ピクセルは、実体ピクセルを理想的な形状と並びに置き換えたものであり、実体ピクセルのうちのノーマルなピクセルと形状および配置の規則が一致しており、一律の形状で規則的な配置をしている。
【0033】
分配部260は、記憶された対応関係に乱雑さを与えた対応関係を用いて、実体ピクセルの計数値を仮想ピクセルに分配する。このように計数値の分配に乱雑さを与えることで、分配後の計数値の統計変動がピクセルの形状により異なって見積もられる影響を解消し、適切に
計数値分配の補正ができる。
【0034】
分配部260は、乱雑さとして、記憶された対応関係により導かれる面積比で実体ピクセルの計数値を分割するときの境界にその計数値の標準偏差に比例する数値を最大幅とするずれを与えることが好ましい。これにより、ピクセルごとに計数値に応じた適度な乱雑さを与えることができる。すなわち、実体ピクセルの計数値の平方根に一定の係数を掛けた数値に−1以上1以下の乱数を掛けてずれを算出するのが好ましい。このような算出により、容易に乱雑さを与えた計数値を算出できる。
【0035】
具体的には次のような分配比を算出することができる。例えば実体ピクセル112の計数値を2/3の領域と1/3の領域に分配する際に、以下のように面積比率に標準偏差に比例するランダムなずれσ
1を与える。これにより、計数値に乱雑性を与えて標準偏差を拡大するとともに、総計数を保存することができる。なお、数式(1)の2/√nの2は一定の係数であり、測定ごとに値をかえてもよい。
【数1】
【0036】
(X線データ処理装置の動作)
次に、上記のように構成されたX線データ処理装置200の動作を説明する。
図5は、X線データ処理装置200の動作を示すフローチャートである。まず、読み出しチップ間の特殊なピクセルについて、実体ピクセルに対する仮想ピクセルの形状および位置の対応関係を記憶部220から読み出す(ステップS1)。
【0037】
次に、読み出した対応関係から分配の面積比を算出する(ステップS2)。そして、例えば標準偏差を求めることで計数値から乱雑さを算出する(ステップS3)。得られた乱雑さで面積比を調整して分配率を算出し(ステップS4)、算出された分配率で実体ピクセルの計数値を仮想ピクセルに分配する(ステップS5)。そして、分配された計数値を補正後の計数値として出力して、一連の補正の処理を終了する。
【0038】
(実体ピクセルから仮想ピクセルへの分配)
図6は、実体ピクセル111〜113に仮想ピクセル115を重ねて示す模式図である。実体ピクセル111〜113には、ノーマルなピクセル111と、読み出しチップのギャップ付近に存在する特殊なピクセル112、113が存在する。ノーマルなピクセル111は、それぞれ仮想ピクセル115と形状および配置が一致している。
【0039】
長方形の特殊なピクセル112は、一方の辺の長さはノーマルなピクセル111の長さと同じである。他方の辺の長さはノーマルなピクセル111の長さの1.5倍であり、仮想ピクセル115とサイズおよび配置が相違している。また、正方形の特殊なピクセル113は、いずれの辺の長さもノーマルなピクセル111の長さの1.5倍であり、仮想ピクセル115と形状および位置が相違している。これらの特殊なピクセル112、113で検出された計数値は、重複する仮想ピクセル115に分配される。
【0040】
図7は、実体ピクセルから仮想ピクセルへの計数値の分配を示す模式図である。例えば、
図7の上段の特殊な実体ピクセル112aは、長辺に沿って領域A、Bに概略1:0.5の面積比で分け、領域Aを下段の仮想ピクセル115aに対応付けて計数値を割当て、領域Bを仮想ピクセル115bに対応付けて計数値を割当てる。また、
図7の上段の特殊な実体ピクセル112bは、長辺に沿って領域C、Dに概略0.5:1の面積比で分け、領域Cを下段の仮想ピクセル115bに対応付けて計数値を割当て、領域Dを仮想ピクセル115cに対応付けて計数値を割当てる。
【0041】
このような分配を行なう際には、特殊な実体ピクセル112aのように拡張されたピクセルでイベントが発生した際にすでに位置情報が失われているため、そのピクセルで検出された総計数を変えなければ、妥当性のある範囲で分配比率の自由度が許容される。そこで、計数値の分配時には標準偏差に比例した最大幅で乱雑さを与えることが可能になる。
【0042】
(統計変動)
図8は、ピクセルの大きさに対する計数値の標準偏差を示す表である。例えば、ノーマルな実体ピクセル111に相当する100×100μm
2のピクセルにおいて計数値がnである場合には、標準偏差は√nとなる。そして、実体ピクセル112に相当する100×150μm
2のピクセルにおいて計数値が1.5×nである場合には、標準偏差は√(1.5×n)となる。計数値をそのまま面積比2/3の仮想ピクセル115に分配すると、その標準偏差は、2/3×√1.5×√n=0.82×√nとなり、ノーマルなピクセル111より計数データの統計変動が小さくなるため、もっと乱雑さを与えた分配の方が好ましいと分かる。
【0043】
また、実体ピクセル113に相当する150×150μm
2のピクセルにおいて計数値が1.5
2×nである場合には、標準偏差は1.5×√nとなる。計数値をそのまま面積比1/2.25の仮想ピクセル115に分配すると、その標準偏差は、1/2.25×1.5×√n=0.67×√nとなり、ノーマルなピクセル111より計数値の統計変動が小さくなるため、乱雑さを与えた方が好ましいと分かる。
【0044】
[第2実施形態]
上記の実施形態では、チャージシェアの影響を計算していないが、有効面積率を用いてチャージシェアの影響分を排除した計数値をもとにして分配による補正を行なうことができる。
【0045】
図9(a)、(b)は、それぞれ正方形および長方形のピクセルの有効面積を示す図である。
図9(a)、(b)に示すように、ピクセルの形状に応じて、チャージシェアの影響を考慮した有効面積の大きさは異なる。これは、チャージシェアによる影響が外周部分でのみ生じるため電荷収集電極の形状によって影響の度合いが異なるためである。各ピクセルにおいてチャージシェアの影響を受ける領域は、縁から一定距離の帯状の領域となるため、ピクセルの面積が大きくなるほどチャージシェアの影響分を引いた有効面積も大きくなる。
【0046】
図10は、ピクセルの形状に対する有効面積の一例を示す表である。X線源にはCuK8.04keVを用い、6keVを閾値として用いた。
図10に示すように、100×100μm
2のピクセルの有効面積は96×96μm
2であり、有効面積率は、0.9216であった。これに対し、100×150μm
2のピクセルの有効面積は96×146μm
2であり、有効面積率は、0.9344であり、100×150μm
2のピクセルの方が有効面積率は大きくなった。
【0047】
(X線データ処理装置の構成)
図11は、X線データ処理装置500の構成を示すブロック図である。本実施形態では、記憶部220は、さらにX線検出器100のピクセルに関するデータおよびX線源20および検出エネルギーの閾値に関するデータを記憶している。
【0048】
ピクセルに関するデータには、ピクセルに応じて予め記憶された、ピクセルのサイズ、形状およびセンサ内の電荷の拡がりの分布を表すデータが含まれる。また、X線源20および検出エネルギーの閾値に関するデータは、X線検出システム10が用いられる際の条件を表すデータである。これらのデータを用いて、ピクセルの特性や形状に応じたチャージシェアの影響を排除した有効面積率を算出することができる。
【0049】
有効面積率算出部530は、ピクセルに関するデータおよび入力されたデータを用いて、ピクセルの本来の検出能力に対するチャージシェアの影響を受けた検出能力の割合をピクセルの有効面積率として算出する。
【0050】
チャージシェア補正部550は、管理されている計数値を算出された有効面積率で補正して真値を推定する。複数の線源および複数の閾値に対しては、算出された有効面積率を連立方程式で表し、連立方程式を用いて、各検出エネルギーの閾値に対する計数値を各線源に対する補正値に1次変換できる。
【0051】
(X線データ処理装置の動作)
次に、上記のように構成されたX線データ処理装置500の動作を説明する。
図12は、X線データ処理装置500の動作を示すフローチャートである。まず、記憶部220からピクセルに関するデータ、測定で用いられたX線の波長および
閾値を読み出し(ステップT1)、ピクセルに関するデータ、波長および閾値の数値を用いて有効面積率を算出する(ステップT2)。そして、有効面積率を用いて計数値を補正する(ステップT3)。このような処理により、有効面積率を用いた補正が可能になる。
【0052】
さらに上記の処理で得られた補正後の計数値に、乱雑さを与えて読み取りチップ間の実体ピクセルから仮想ピクセルへ分配する。この処理は、第1実施形態のステップS1〜S6を実行することで可能となる。このようにして、チャージシェアの影響を排除しつつ、仮想ピクセルへの計数値の分配を行なうことができる。
【0053】
(補正および補正に用いられる有効面積率の算出)
チャージシェアによる影響を
除いた有効面積率は閾値波長と、入射X線の波長に対する依存性が存在する。この波長依存性と、複数の閾値によって測定された計数値を用いて、波長毎に、ピクセルに到達したX線の計数の推定を行なう。
【0054】
異なる2つの波長をA、Bとし、異なる2つの適当な閾値をL、Hとする。また、波長A、Bの光源から各ピクセルに到達するX線の真の光子数をそれぞれI
A、I
Bとし、閾値L、Hで観測される計数をそれぞれI
L、I
Hとする。閾値Lと波長Aによって決まるピクセル有効面積率をp
LAのように表せば、以下の数式(2)のように観測される計数と真の光子数の関係が得られる。
【数2】
【0055】
ここで有効面積率からなる行列をPとして、その逆行列を求めれば、以下の数式(3)となることから、波長A、Bによる信号を区別せずに観測した計数を元に、線源A、Bによる計数を独立に得ることが可能となる。
【数3】
【0056】
半導体センサ内での電荷の拡がりが正規分布に従い、その標準偏差がσであると仮定し、ピクセルの一辺の長さをdとすると、有効面積率pは次の数式(4)のように近似できる(∵d≫σ)。
【数4】
【0057】
ここで、λは対象としているX線の波長、λ
Thは検出回路の閾値波長である。d≫σが成立しない場合にはピクセルの4つの角による効果を考慮する必要がある。
【0058】
上記のX線検出システム10は、多色光源の分離に用いることができる。例えば、高エネルギー側の閾値と低エネルギー側の閾値によりそれぞれ分離されたX線の計数値I
HおよびI
Lから、以下の数式(5)によりCu光源およびMo光源の回折X線強度I
CuおよびI
Moを求めることができる。
【数5】
【0059】
[実施例]
以上のような計数値の分配方法を用いて、X線データを補正した。CrのX線源を用いてSi試料にX線を照射し、回折X線を測定した。高い側の閾値を512keVとして有効面積率による補正を行なった。さらに、読み取りチップ間のピクセルについて乱雑さを加えて計数値の仮想ピクセルへの分配を行なった。
図13は、計数値の分配に乱雑さを加えた補正によるX線画像を示す図である。
図13に示すように、読み取りチップ間のギャップはX線画像に現れなくなった。