【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
【0011】
(基本形態)
本発明の伸縮可能な伸縮シートを製造する方法は、
伸縮性を有しない第1シート層と、伸縮性を有しない第2シート層との間に、伸縮可能な弾性フィルムを伸長状態で介在させる供給工程と、
この供給工程において、前記第1シート層と前記第2シート層との間に前記弾性フィルムを伸長状態で介在させた状態で、前記第1シート層及び前記第2シート層の外方から、熱溶融装置によって間隔を空けた多数の接合部領域に熱溶融エネルギーを与え、前記弾性フィルムを溶融し、前記第1シート層及び前記第2シート層を、直接又は弾性フィルムを介して多数の接合部で接合する接合工程と、
を含み、
前記熱溶融装置は、アンビルロールと超音波ホーンとを有し、前記アンビルロールはその外表面にロール長方向及び外周方向に間隔を空けた多数の突部が形成され、
前記アンビルロールに離間して対向ロールが配置され、
前記対向ロールに対応して、前記弾性フィルムをニップするニップロールが配置され、
前記弾性フィルムは前記対向ロールと前記ニップロールとの間のニップ位置を通過して前記対向ロールを巡らせた後、前記アンビルロールを巡らせ、前記アンビルロールの周速を前記対向ロールの周速より速くすることにより前記弾性フィルムを伸長するとともに、前記アンビルロールの突部の群と前記超音波ホーンとにより接合を行うものである。
【0012】
本発明の一つの実施の形態により得られる伸縮シートでは、その第1シート層及び第2シート層に貫通する孔は形成されない。この点は、特許第4562391号公報の
図5又は
図7で示される伸縮シートと異なる。
【0013】
他方、弾性フィルムをマシン方向に伸長状態で接合の個所に供給することにより、弾性フィルムと接合部との、少なくとも前記マシン方向の境界部分に貫通孔を形成することができる。この貫通孔が形成される理由については後に詳説する。
【0014】
熱溶融装置は、アンビルロールと超音波ホーンとを有し、与えるエネルギーによって、第1シート、第2シート層及び弾性フィルムの少なくとも一つの層の少なくとも一部を溶融する手段である。
【0015】
弾性フィルムの伸長に伴って、ネックインしようとする幅方向中央への移動力に対して、アンビルロールの突部群の凹凸が抵抗になってネックインを抑制するものと考えられる。
【0016】
本発明においては、アンビルロールに離間して対向ロールが配置され、前記対向ロールに対応して、弾性フィルムをニップするニップロールが配置される。
前記弾性フィルムは前記対向ロールと前記ニップロールとの間のニップ位置を通過して前記対向ロールを巡らせた後、前記アンビルロールを巡らせ、前記アンビルロールの周速を前記対向ロールの周速より速くすることにより前記弾性フィルムを伸長する。
すなわち、前記弾性フィルムは前記対向ロールと前記ニップロールとの間でニップされるので、アンビルロールの周速をニップロールの周速より速くすることにより、実質的にニップ位置から前記弾性フィルムの伸長(延伸)が開始される。
さらに、弾性フィルムは対向ロールを巡った後、アンビルロールを巡るものであるので、それらのロール表面との間の抵抗もネックインを抑制するものと考えられる。
【0017】
しかも、ニップの存在により、弾性フィルムの少なくとも前記対向ロール表面との間の抵抗力がより強くなり、ネックインを抑制に寄与するものと考えられる。
【0018】
前記ニップ位置より上流側において前記弾性フィルムを伸長させない、伸長させるとしても、必要な伸長率に対し50%以下にするのが望ましい。
【0019】
したがって、本発明の好適な実施の形態によれば、前記ニップ位置より伸長を開始する、あるいは、前記ニップ位置より、必要な伸長率の50%超の伸長を開始する。
【0020】
ニップ位置と、前記接合位置との間の距離が250mm未満であるのが望ましい。特に30mm〜200mmが望ましい。
前記接合位置を通過した後に、前記接合位置の下流側に10mm以下の距離をもって弾性フィルムを前記アンビルロールから離れるようにすると、前記ニップ位置から前記弾性フィルムが前記アンビルロールから離れる位置との間の距離は260mm未満であることが望ましいということができる。
【0021】
アンビルロールは、平坦なロールではなくクラウンロールであるのが望ましい。クラウンロールであることによって、クラウンロール表面との間の弾性フィルムの抵抗力が強くなり、ネックインを抑制に寄与するものと考えられる。
【0022】
前記接合部の配置の一例は千鳥状である。
【0023】
一つの実施の形態においては、前記アンビルロールを展開状態で見たとき、単位面積内に含まれる前記突部の群の総和面積が占める突部面積率が、少なくともロール長に異なっているのが望ましい。
【0024】
他方、弾性フィルムをマシン方向に伸長状態で接合の個所に供給することにより、弾性フィルムと接合部との、少なくとも前記マシン方向の境界部分に貫通孔を形成することができる。
【0025】
本発明の接合部においては、例えば次の接合形態例がある。
(1)第1シート層及び第2シート層が部分溶融し、弾性フィルムに接合する、すなわち第1シート層及び第2シート層が弾性フィルムを介して接合する形態。
(2)弾性フィルムが溶融し、第1シート層及び第2シート層中に移行し、第1シート層及び第2シート層が、弾性フィルムを介在させることなく、直接接合する形態。
(3)(1)の形態と(2)の形態との中間の形態であって、弾性フィルムの両表面部分が溶融して第1シート層及び第2シート層中に移行し、しかし、弾性フィルムは部分的に残存していることにより、第1シート層及び第2シート層が残存弾性フィルムを介して接合する形態。
【0026】
これらの形態のうち、特に、(2)の形態及び(3)の形態では、接合部と非接合部とで弾性フィルム強度の差異が生じる。したがって、伸長を保持した伸縮シートの伸長状態を、いったん解放して収縮させて製品とした後;あるいは、伸長を保持した伸縮シートを他の部材と結合した後、伸長状態をいったん解放して収縮させて製品した後;伸縮方向に機械的にあるいは人力で伸長させると、接合部と非接合部との境界部分で破断が生じる。
その結果、貫通孔が形成される。
【0027】
貫通孔が形成されたものでは、通気性が確保される利点がある。貫通孔は、全ての接合部において形成される必要はなく、一部の接合部において形成されていても通気性を示す。弾性フィルムがマシン方向にのみに伸縮可能である場合、貫通孔は接合部の縁からマシン方向に延びた形状となる。弾性フィルムがマシン方向(MD)、及びこれに直交する方向(例えばCD方向)の両者に伸縮可能である場合、貫通孔は接合部の縁から両方向に延びた形状となり、場合により接合部の周りに環状の形状となることがある。
【0028】
先に述べたように、本発明の弾性フィルムは、一般的にエラストマーを使用するので、マシン方向(MD)及び直交方向(CD)に伸縮可能である。
【0029】
前記接合部は、円形のように方向性を有しないもののほか、マシン方向(MD)長さより、直交方向(幅方向:CD)長さが長い形態が提供される。
【0030】
本発明方法を実施するための、弾性フィルムの融点は80〜145℃程度のものが好ましく、第1シート層及び第2シート層の融点は85〜190℃程度、特に130〜190℃程度のものが好ましく、また、第1シート層及び第2シート層の融点と、より低い融点を示す弾性フィルム30の融点との差は50〜80℃程度であるのが好ましい。
好適な具体例としては、前記弾性フィルムの融点が95〜125℃であり、第1シート層の融点が125℃超〜160℃、より好ましくは130〜160℃、第2シート層の融点が125℃超〜160℃、より好ましくは130〜160℃である。
【0031】
アンビルロールを展開状態で見たとき、単位面積内に含まれる突部の群の総和面積が占める突部面積率が、少なくともロール長に異なっているのが望ましい。
突部が前記接合部に対応する。接合部の好適例としては、接合部の面積は0.14〜3.5mm2である。また、前記接合部の面積率は1.8〜22.5%であるのが望ましい。
伸縮領域における接合部の面積率は1.8〜22.5%である。
ここで、「面積率」とは単位面積に占める対象部分の割合を意味し、対象領域(例えば伸縮領域)における対象部分(例えば接合部、貫通孔の開口)の総面積を当該対象領域の面積で除して百分率で表すものであり、特に「接合部の面積率」とは、伸縮方向に弾性限界まで伸ばした状態の面積率を意味するものである。
また、伸縮シートの自然長状態における前記貫通孔の開口の面積は、接合部の面積の1倍超〜1.5倍であるのが好適である。
貫通孔の開口の面積は、当該伸縮構造が自然長の状態における値を意味し、貫通孔の開口の面積が、弾性フィルムの表と裏で異なる等、厚み方向に均一でない場合には最小値を意味する。
本明細書における接合部面積率は、後に説明するアンビルロールの突起部の大きさ、形状、離間間隔、ロール長方向及びロール周方向の配置パターンなどを選定することにより選択できる。
【0032】
後述する「伸長応力」とは、JIS K7127:1999「プラスチック−引張特性の試験方法−」に準じて、初期チャック間隔(標線間距離)を50mmとし、引張速度を300mm/minとする引張試験により測定される「弾性限界の50%まで伸ばしたときの応力(N/35mm)」を意味する。幅35mmの試験片を切り出すことができない場合には、切り出し可能な幅で試験片を作成し、測定値を幅35mmに換算した値とする。対象の領域が小さく、十分な試験片を採取できない場合、伸縮応力の比較であれば、適宜小さい試験片でも、少なくとも比較できる。
また、後述の実施の形態において、領域内に複数の伸長応力が相違する場合、伸縮応力の相違を検証するための試験片の採取をどうするかが問題となる。この場合には、伸縮応力の絶対値を求めることから離れて、伸縮応力の比較のためには、伸縮シートの各部位について試験片を採取し、それぞれの試験片について、自然状態の100%長さから150%長さに伸長したときの応力によって大小を比較することも可能である。