特許第6454669号(P6454669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454669
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】1,4−ベンゾオキサジン化合物の製法
(51)【国際特許分類】
   C07D 265/36 20060101AFI20190107BHJP
   A61K 31/538 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20190107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   C07D265/36CSP
   A61K31/538
   A61P3/10
   A61P7/10
   A61P9/00
   A61P9/04
   A61P9/06
   A61P9/10
   A61P9/10 103
   A61P9/12
   A61P9/14
   A61P13/12
   A61P43/00 111
【請求項の数】9
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-185821(P2016-185821)
(22)【出願日】2016年9月23日
(62)【分割の表示】特願2014-529546(P2014-529546)の分割
【原出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2017-31188(P2017-31188A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年9月23日
【審判番号】不服2018-902(P2018-902/J1)
【審判請求日】2018年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2012-176217(P2012-176217)
(32)【優先日】2012年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-7041(P2013-7041)
(32)【優先日】2013年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002956
【氏名又は名称】田辺三菱製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】岡部 智之
(72)【発明者】
【氏名】濱田 剛
(72)【発明者】
【氏名】冨川 香
(72)【発明者】
【氏名】岡本 由紀恵
(72)【発明者】
【氏名】飯嶋 徹
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 英則
(72)【発明者】
【氏名】外山 健一
(72)【発明者】
【氏名】諸田 敦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 良洋
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 瀬良 聡機
【審判官】 冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−115149(JP,A)
【文献】 特開2009−51830(JP,A)
【文献】 Pharmaceutical Research,1995年,Vol.12,No.7,p.945−954
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAPLUS/REGISTRY STN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)として8.3°、9.7°、10.2°、13.0°、13.6°、18.1°、20.2°、22.4°、23.7°、25.1°及び25.7°に回折ピークを有するN−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶(A形結晶)
【請求項2】
回折角度(2θ(°))として6.4°、7.4°、8.3°、9.7°、10.2°、11.2°、13.0°、13.6°、14.2°、16.0°、16.4°、17.3°、18.1°、20.2°、20.9°、21.3°、22.4°、23.7°、25.1°、25.7°、27.3°、28.1°、28.8°、29.5°、30.3°、30.8°、31.4°、33.2°、33.9°、34.5°、35.2°、及び36.6°に回折ピークを有する請求項1記載のN−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のN−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶と薬理学的に許容し得る担体からなる医薬組成物。
【請求項4】
MR活性の亢進及び/又はアルドステロンレベル上昇に起因する各種疾患又は疾患状態の予防・治療剤である請求項記載の医薬組成物。
【請求項5】
高血圧、心不全、心筋梗塞、狭心症、心肥大、心筋炎、心筋/血管線維化、圧受容体障害、体液量過剰又は不整脈の予防・治療剤である請求項記載の医薬組成物。
【請求項6】
原発性/二次性アルドステロン症、アジソン病、クッシング症候群又はバーター症候群の予防・治療剤である請求項記載の医薬組成物。
【請求項7】
腎疾患の予防・治療剤である請求項記載の医薬組成物。
【請求項8】
腎疾患が糖尿病性腎症である請求項記載の医薬組成物。
【請求項9】
粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)として6.7°〜11.0°に回折ピークを有さないが、6.0°、11.9°、17.0°、17.6°及び19.0°に回折ピークを有するN−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶(D形結晶)を媒質不存在下で加熱処理する工程、或いは回折角度(2θ±0.2°)として7.5°、10.2°、10.8°、14.8°、15.9°、16.9°、18.3°、19.3°、21.5°、23.2°、25.6°及び29.1°に回折ピークを有する、N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶(B形結晶)をエタノール中又は媒質不存在下で加熱処理する工程からなる、粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)として8.3°、9.7°、10.2°、13.0°、13.6°、18.1°、20.2°、22.4°、23.7°、25.1°及び25.7°に回折ピークを有する、N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドのA形結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルドステロン受容体拮抗作用を有し、降圧剤、利尿剤等の医薬として有用な1,4−ベンゾオキサジン化合物の新規製法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルドステロンに関する最近の研究は、同ホルモンが副腎以外の器官、例えば心臓、血管又は脳等の種々の器官で産生され、その受容体も心血管系組織以外にも広く分布することを明らかにしている。また、アルドステロンは、高血圧の増悪因子である以外にも、心血管組織に対して種々の障害性作用を示すリスクホルモンとして認識されるに到っている。このような状況の下、アルドステロン受容体拮抗薬は、最近の大規模臨床試験において、重症心不全又は急性心筋梗塞に対するポジティブな作用を示したこと等の知見から、心血管系疾患への効果的な治療法を確立する上で有用な薬剤となり得ることが期待されている。
【0003】
特許文献1には、アルドステロン拮抗薬として有用な下記一般式[I]:
【化1】
で示される化合物が開示されている。当該特許文献1に記載された化合物[I]の内、例えば、下記式[A]:
【化2】
で示される化合物、即ち、N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドは、アルドステロン受容体拮抗薬として、臨床上の使用を期待され得るものである。
【0004】
上記化合物[A]の製法として、特許文献1には、下式で示される合成方法が開示されている。
【化3】
【0005】
しかしながら、上記製法における最終中間体(2)は、AMES試験により変異原性が強いことが確認されており、これを医薬品の合成中間体として使用する場合には、安全衛生上のリスクを伴うという難点があった。このため、化合物[A]の合成方法としては、上記のような安全衛生上のリスクを伴うことなく、工業的有利に製造できる方法の確立が望まれていた。
【0006】
また、一般に、医薬としての有用性が期待される化合物については、その物性(非晶質、結晶及びその多形の存否等)が、原薬としての純度や安定性(光安定性、湿度に対する安定性等)、製剤中での安定性、薬物として使用した場合の生体利用能(バイオアベイラビリティー)に相当程度影響することが知られている。従って、医薬化合物に関して、上記のような良好な物性を有する単一の結晶を安定的かつ工業的規模で取得することは、医薬開発における重要な課題である。しかしながら、特定の化合物について、その結晶及びその多形の存否を合理的に予測することは困難である。尚、特許文献1には、化合物[A]が粉末状物質として取得されたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2007/089034
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、医薬として有用な上記化合物[A]を工業的有利に製造するための新規製法を提供するものである。また、本発明は、医薬化合物として好適な化合物[A]の新規結晶形に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下式で示される工程(化合物[b]をボロン酸化合物[d]と反応させて化合物[c]を製する工程)からなる合成方法によれば、安全衛生上のリスク(合成中間体の変異原性に伴うリスク)を回避しつつ、収率良く目的化合物[A]を取得することができることを見出し、本発明を完成するに到った。尚、本出願人の知る限りにおいて、下記化合物[b]及び化合物[c]は、新規化合物である。
【化4】
〔上記スキーム中、Msはメタンスルホニル基を示し、R及びR’は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示すか、或いは両者が互いに結合してアルキレン基を形成することを示す。〕
【0010】
上記製法に加え、本発明者らは、特許文献1に記載された化合物[A](粉末状物質)が特定の結晶形(D形結晶)を有すること、更に、化合物[A]には、D形結晶とは異なる結晶形(結晶多形)が複数存在し、当該新規結晶が、D形結晶と較べてより安定性が高く、医薬化合物(原薬)として望ましいプロファイルを有することを見出して、本発明を完成するに到った。
【0011】
即ち、本発明は、
[1](a)下式[a]:
【化5】
で示される化合物とメタンスルホニルハライドを塩基存在下反応させることにより、下式[b]:
【化6】
〔式中、Msはメタンスルホニル基を表す。〕
で示される化合物を製する工程(工程a)、
(b)該化合物[b]と下式[d]:
【化7】
〔式中、R及びR’は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を表すか、或いは両者が互いに結合してアルキレン基を形成することを表す。〕
で示されるボロン酸化合物又はその等価体を、銅触媒の存在下、塩基の存在下又は不存在下、およびリガンドの存在下又は不存在下反応させることにより、下式[c]:
【化8】
〔式中、記号は前記と同一意味を有する。〕
で示される化合物を製する工程(工程b)、および
(c)該化合物[c]の7位置換基(ジメシルアミノ基)をモノメシルアミノ基に変換することにより、下式[A]:
【化9】
で示される化合物を製する工程(工程c)
からなる、1,4−ベンゾオキサジン化合物[A]の製法;
【0012】
[2]メタンスルホニルハライドがメタンスルホニルクロリドである上記[1]記載の製法;
【0013】
[3]化合物[d]が下式:
【化10】
で示される化合物又はその等価体である上記[1]記載の製法;
【0014】
[4](1)工程aが、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン及びアセトンからなる群より選ばれる溶媒中、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンから選ばれる塩基の存在下で実施され、(2)工程bが、ジメチルスルホキシド及びN,N−ジメチルアセトアミドから選ばれる溶媒中、酢酸銅、ハロゲン化銅、硝酸銅及びトリフルオロメタンスルホン酸の銅塩からなる群より選ばれる銅触媒の存在下、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリン、炭酸水素ナトリウムおよびアンモニア水から選ばれる1種又は2種以上の塩基の存在下又は不存在下、ジメチルアミノピリジン、2−アミノピリジン、4−メチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、ピリジン、N−メチルイミダゾール、N−ブチルイミダゾール及びピラジンから選ばれる1種又は2種以上のリガンドの存在下又は不存在下、並びに反応系への酸素供給下で実施され、かつ(3)工程cが、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン及びジメチルスルホキシドから選ばれる溶媒又は当該溶媒と水との混合物中、炭酸カリウム及び水酸化ナトリウムから選ばれる塩基の存在下で実施される
ことを特徴とする上記[1]、[2]又は[3]記載の製法;
【0015】
[5]下式[c]:
【化11】
〔式中、Msはメタンスルホニル基を表す。〕
で示される化合物の7位置換基(ジメシルアミノ基)をモノメシルアミノ基に変換する工程からなる、下式[A]:
【化12】
で示される化合物の製法;
【0016】
[6]7位置換基(ジメシルアミノ基)のモノメシルアミノ基への変換反応がエタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン及びジメチルスルホキシドから選ばれる溶媒又は当該溶媒と水との混合物中、炭酸カリウム及び水酸化ナトリウムから選ばれる塩基の存在下で実施されることを特徴とする上記[5]記載の製法;
【0017】
[7](a)下式[a]:
【化13】
で示される化合物とメタンスルホニルハライドを塩基存在下反応させることにより、下式[b]:
【化14】
〔式中、Msはメタンスルホニル基を表す。〕
で示される化合物を製する工程(工程a)、および
(b)該化合物[b]と下式[d]:
【化15】
〔式中、R及びR’は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を表すか、或いは両者が互いに結合してアルキレン基を形成することを表す。〕
で示されるボロン酸化合物又はその等価体を、銅触媒の存在下、塩基の存在下又は不存在下、およびリガンドの存在下又は不存在下反応させる工程(工程b)からなる、下式[c]:
【化16】
〔式中、記号は前記と同一意味を有する。〕
で示される化合物の製法;
【0018】
[8](1)工程aがアセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン及びアセトンからなる群より選ばれる溶媒中、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンから選ばれる塩基の存在下で実施され、且つ、(2)工程bがジメチルスルホキシド及びN,N−ジメチルアセトアミドから選ばれる溶媒中、酢酸銅、ハロゲン化銅、硝酸銅及びトリフルオロメタンスルホン酸の銅塩からなる群より選ばれる銅触媒の存在下、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリン、炭酸水素ナトリウムおよびアンモニア水から選ばれる1種又は2種以上の塩基の存在下又は不存在下、ジメチルアミノピリジン、2−アミノピリジン、4−メチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、ピリジン、N−メチルイミダゾール、N−ブチルイミダゾール及びピラジンから選ばれる1種又は2種以上のリガンドの存在下又は不存在下、並びに反応系への酸素供給下で実施されることを特徴とする上記[7]記載の製法;
【0019】
[9]下式[b]:
【化17】
〔式中、Msはメタンスルホニル基を表す。〕
で示される化合物と下式[d]:
【化18】
〔式中、R及びR’は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を表すか、或いは両者が互いに結合してアルキレン基を形成することを表す。〕
で示されるボロン酸化合物又はその等価体を、銅触媒の存在下、塩基の存在下又は不存在下、およびリガンドの存在下又は不存在下で反応させる工程からなる、下式[c]:
【化19】
〔式中、記号は前記と同一意味を有する。〕
で示される化合物の製法;
【0020】
[10]化合物[b]と化合物[d]のカップリング反応が、ジメチルスルホキシド及びN,N−ジメチルアセトアミドから選ばれる溶媒中、酢酸銅、ハロゲン化銅、硝酸銅及びトリフルオロメタンスルホン酸の銅塩からなる群より選ばれる銅触媒の存在下、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリン、炭酸水素ナトリウムおよびアンモニア水から選ばれる1種又は2種以上の塩基の存在下又は不存在下、ジメチルアミノピリジン、2−アミノピリジン、4−メチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、ピリジン、N−メチルイミダゾール、N−ブチルイミダゾール及びピラジンから選ばれる1種又は2種以上のリガンドの存在下又は不存在下、並びに反応系への酸素供給下で実施されることを特徴とする上記[9]記載の製法;
【0021】
[11]下式[b]:
【化20】
〔式中、Msはメタンスルホニル基を表す。〕
で示される化合物;および
【0022】
[12]下式[c]:
【化21】
〔式中、Msはメタンスルホニル基を表す。〕
で示される化合物に関する。
【0023】
更に本発明は、
[13]粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)として6.7°〜11.0°に少なくとも1の回折ピークを有し、かつ18.1°及び23.7°に回折ピークを有する、N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶(A形結晶);
【0024】
[14]回折角度(2θ±0.2°)として10.2°に更に回折ピークを有する上記[13]記載のN−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶;
【0025】
[15]粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)として6.7°〜11.0°に少なくとも1の回折ピークを有し、かつ14.8°及び18.3°に回折ピークを有する、N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶(B形結晶);
【0026】
[16]回折角度(2θ±0.2°)として10.8°及び23.2°に更に回折ピークを有する上記[15]記載のN−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶;
【0027】
[17]粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)として19.3°及び29.6°に回折ピークを有する、N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミド・1ジメチルスルホキシド和物の結晶(C形結晶);
【0028】
[18]回折角度(2θ±0.2°)として11.3°に更に回折ピークを有する、上記[17]記載のN−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミド・1ジメチルスルホキシド和物の結晶;
【0029】
[19]上記[13]〜[18]のいずれかに記載のN−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミド又はその1ジメチルスルホキシド和物の結晶と薬理学的に許容し得る担体からなる医薬組成物;
【0030】
[20]MR活性の亢進及び/又はアルドステロンレベル上昇に起因する各種疾患又は疾患状態の予防・治療剤である上記[19]記載の医薬組成物;
【0031】
[21]高血圧、心不全、心筋梗塞、狭心症、心肥大、心筋炎、心筋/血管線維化、圧受容体障害、体液量過剰又は不整脈の予防・治療剤である上記[19]記載の医薬組成物;
【0032】
[22]原発性/二次性アルドステロン症、アジソン病、クッシング症候群又はバーター症候群の予防・治療剤である上記[19]記載の医薬組成物;
【0033】
[23]腎疾患の予防・治療剤である上記[19]記載の医薬組成物;
【0034】
[24]腎疾患が糖尿病性腎症である上記[23]記載の医薬組成物;
【0035】
[25]粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)として6.7°〜11.0°に回折ピークを有さないが、6.0°、11.9°、17.0°、17.6°及び19.0°に回折ピークを有するN−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶(D形結晶)、或いは回折角度(2θ±0.2°)として6.7°〜11.0°に少なくとも1の回折ピークを有し、かつ14.8°及び18.3°に回折ピークを有する、N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶(B形結晶)を液体媒質中又は媒質不存在下で加熱処理する工程からなる、粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)として6.7°〜11.0°に少なくとも1の回折ピークを有し、かつ18.1°及び23.7°に回折ピークを有する、N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドのA形結晶の製造方法;及び
【0036】
[26]B形結晶を、液体媒質としてのエタノール中、75℃〜85℃で加熱処理することを特徴とする、上記[25]記載のN−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドのA形結晶の製造方法;
に関する。
【発明の効果】
【0037】
本発明の製法は、医薬として有用な1,4−ベンゾオキサジン化合物[A]を収率良く製造できる。また、本発明の製法は、安全衛生上のリスク(変異原性等)が低い中間体を使用できる点からも、工業的有利な製法となり得るものである。
【0038】
本発明の新規結晶(A形結晶、B形結晶又はC形結晶)は、安定性が高く、とりわけA形結晶は、加熱等の要因による非晶質又は他の結晶形への転移を起こさず、また吸湿性もないこと等から、医薬化合物の結晶形態として好ましい特長を具備するものである。また、A形結晶は、製剤中での安定性も高いという特長も併せ持つものであり、医薬品原薬として好適な結晶形態である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、化合物[A]のA形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
図2図2は、化合物[A]のB形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
図3図3は、化合物[A]のC形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
図4図4は、化合物[A]のD形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(工程a)
化合物[a]とメタンスルホニルハライドの反応は、溶媒中、塩基存在下で実施することができる。メタンスルホニルハライドとしては、メタンスルホニルクロリドが好ましい。溶媒としては、本反応に支障をきたさないものであればよく、例えば、トルエンの如き芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルアセトアミドの如きアミド類、アセトニトリルの如きニトリル類、アセトンもしくはメチルエチルケトンの如きケトン類、酢酸エチルの如きエステル類またはテトラヒドロフランの如きエーテル類等があげられ、この内、アセトニトリル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン及びアセトンが好ましく、アセトニトリルがより好ましい。塩基としては、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンもしくは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)の如き三級アミン類、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)の如きアルキレンジアミン類またはプロトンスポンジ(登録商標)等があげられ、この内、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンが好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。メタンスルホニルハライドの使用量は、化合物[a]に対して1.0〜5.0当量、好ましくは2.0〜3.0当量である。塩基の使用量は、化合物[a]に対して1.0〜5.0当量、好ましくは2.0〜3.0当量である。メタンスルホニルハライド及び塩基は、反応の進行に応じて、2〜3回に分割して反応系に添加してもよい。溶媒の使用量は、化合物[a]に対して10〜20V/W、好ましくは10〜15V/Wである。本反応は0〜50℃、好ましくは30〜50℃で実施することができる。反応混合物に水を加えた後、固液分離操作を行うことにより、反応生成物である化合物[b]を純度よく取得することができる。
【0041】
(工程b)
化合物[b]とボロン酸化合物[d]の反応(カップリング)は、溶媒中、銅触媒の存在下、塩基の存在下又は不存在下並びにリガンドの存在下又は不存在下で実施することができる。溶媒としては、本反応に支障をきたさないものであればよく、例えば、テトラヒドロフランの如きエーテル類、アセトンもしくはメチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルアセトアミドの如きアミド類、アセトニトリルの如きニトリル類またはジメチルスルホキシド等があげられ、この内、ジメチルスルホキシド及びN,N−ジメチルアセトアミドが好ましく、ジメチルスルホキシドがより好ましい。銅触媒としては、例えば酢酸銅(酢酸銅(I)、酢酸銅(II))、ハロゲン化銅(塩化銅、臭化銅、沃化銅等)、硫酸銅、硝酸銅、酸化銅(II)、銅、銅炭素またはトリフルオロメタンスルホン酸の銅塩(Cu(OTf)・3水和物)の如き銅化合物があげられ、この内、酢酸銅、ハロゲン化銅、硝酸銅及びトリフルオロメタンスルホン酸の銅塩が好ましく、酢酸銅(II)がより好ましい。なおここで、酢酸銅(II)は水和物の形態で使用することもできる。塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、N−エチルモルホリンもしくはN−メチルモルホリンの如き三級アミン類、ピリジンもしくはジメチルアミノピリジンの如きピリジン類、炭酸水素ナトリウムもしくは酢酸ナトリウム等のアルカリ金属塩基、テトラメチルエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、酢酸アンモニウム、アンモニア水またはそれらの混合物等があげられ、この内、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリン、炭酸水素ナトリウムおよびアンモニア水またはそれらの混合物が好ましく、トリエチルアミン、トリブチルアミンまたはそれらの混合物がより好ましい。リガンドとしては、例えばジメチルアミノピリジン(DMAP)、2−アミノピリジン、4−メチルピリジン(4−ピコリン)、2,6−ジメチルピリジン(2,6−ルチジン)、3,5−ジメチルピリジン(3,5−ルチジン)、2,4,6−トリメチルピリジン(2,4,6−コリジン)もしくはピリジン等のピリジン類、1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール(NMI)もしくはN−ブチルイミダゾール等のイミダゾール類、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピラジンまたはそれらの混合物等があげられ、この内、ジメチルアミノピリジン、2−アミノピリジン、4−メチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、ピリジン、N−メチルイミダゾール、N−ブチルイミダゾール及びピラジンが好ましく、ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール、4−メチルピリジン、N−ブチルイミダゾールおよびピリジンがより好ましく、N−メチルイミダゾールおよび4−メチルピリジンがとりわけ好ましい。ボロン酸化合物[d]の使用量は、化合物[b]に対して1.0〜3.0当量、好ましくは1.0〜2.0当量である。ボロン酸化合物[d]および[d-1]の等価体としては、例えば、下式:
【化22】
で示されるボロキシン化合物があげられ、その使用量は、化合物[b]に対して0.7〜1.7当量、好ましくは0.7〜1.5当量である。銅触媒の使用量は、化合物[b]に対し、銅として、0.01〜1.5当量、好ましくは0.1〜1.0当量である。塩基を使用する場合、その使用量は、化合物[b]に対して0.4〜3.0当量、好ましくは0.8〜2.0当量である。リガンドを使用する場合、その使用量は、化合物[b]に対して0.01〜1.0当量、好ましくは0.1〜0.5当量である。溶媒の使用量は、化合物[b]に対して5〜20V/W、好ましくは5〜15V/Wである。本反応は15〜60℃、好ましくは15〜30℃で実施することができる。
本反応は、反応系に酸素を供給(例えば、空気の導入等)しつつ実施するのが好ましい。
【0042】
上記反応混合物からの化合物[c]の分離は、慣用の固−液分離法により実施することができ、例えば、(1)反応混合物にメタノール及び酸(塩酸水等)を添加後、析出晶を採取し、水及びメタノール等で洗浄・乾燥するか、或いは(2)反応混合物をジメチルスルホキシド/水/酸(塩酸水等)混液に滴下後、析出晶を採取し、ジメチルスルホキシド/水混液及び水で順次洗浄・乾燥することにより、化合物[c]を結晶として取得することができる。
化合物[c]は、結晶化が容易であり、結晶化操作における環境要因(酸及び温度)に対して安定であるという特長をも有する。また、化合物[c]は、低変異原性であり、医薬化合物の合成中間体として好適である。
【0043】
(工程c)
化合物[c]の7位置換基(ジメシルアミノ基)のモノメシルアミノ基への変換は、当該化合物[c]を溶媒中、塩基で処理することにより実施することができる。溶媒としては、本反応に支障をきたさないものであればよく、例えば、エタノール、n−プロパノールもしくはイソプロパノールの如きアルコール類、アセトンもしくはメチルエチルケトンの如きケトン類、テトラヒドロフランの如きエーテル類、ジメチルスルホキシド又はこれら有機溶媒と水との混合溶媒等があげられ、この内、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン又はジメチルスルホキシド、或いはこれら有機溶媒と水との混合溶媒が好ましい。塩基としては、例えば、炭酸カリウムもしくは炭酸ナトリウムの如き炭酸アルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムもしくは水酸化リチウムの如き水酸化アルカリ金属、リン酸カリウムまたはテトラブチルアンモニウムフルオライド等があげられ、この内、炭酸カリウム又は水酸化ナトリウムが好ましい。塩基の使用量は、化合物[c]に対して1.0〜5.0当量、好ましくは1.5〜3.0当量である。溶媒の使用量は、化合物[c]に対して5〜20V/W、好ましくは5〜10V/Wである。本反応は15〜50℃、好ましくは20〜30℃で実施することができる。
【0044】
化合物[A]は、慣用の固−液分離手段により、上記の反応混合物から分離することができる。例えば、反応混合物に酸(塩酸水等)を加えて中和後、析出晶を採取し、次いで水で洗浄し、乾燥することにより、化合物[A]を結晶として取得することができる。必要に応じ、副生物の除去又は脱色等を目的として、反応混合物を活性炭処理してもよい。
上記(工程c)の反応で使用する溶媒を適宜選択することにより、所望の結晶形を有する化合物[A]の結晶を取得することができる。例えば、反応溶媒として、アセトンもしくはメチルエチルケトンの如きケトン類、ジメチルスルホキシド又はこれら有機溶媒と水の混合溶媒を使用する場合、目的化合物[A]は、主としてA形結晶として取得され得る。尚、有機溶媒と水の混合溶媒を用いる場合、水の混合比率(V/V)は約5%〜約50%、好ましくは約30%〜約40%である。
【0045】
反応溶媒として、エタノール、n−プロパノールもしくはイソプロパノールの如きアルコール類、ジメチルスルホキシド、又はこれら有機溶媒と水の混合溶媒を使用する場合、目的化合物[A]は、主としてB形結晶又はD形結晶として取得され得る。
【0046】
また、本発明者らは、結晶形に関するスクリーニング実験により、化合物[A]には、C形結晶(1ジメチルスルホキシド和物)が存在することを確認している。化合物[A]のC形結晶は、当該化合物のジメチルスルホキシド溶液を調製し、当該溶液を一定時間静置した後、析出晶をろ取し、乾燥することにより取得することができる。
【0047】
上記本発明の製法によって得られた化合物[A]がB形又はD形結晶である場合、例えば、当該結晶のエタノール懸濁液を2〜15時間加熱還流(75℃〜85℃)後、冷却し、結晶を採取することにより、化合物[A]のA形結晶を取得することができる。また、上記本発明の製法により得られた化合物[A]がC形結晶である場合、当該結晶を水に懸濁し、撹拌した後、結晶を採取することにより、B形結晶を取得することができる。
また、A形結晶は、B形結晶又はD形結晶を160℃〜230℃で加熱処理することにより、取得することもできる。
【0048】
上記した通り、化合物[A]には4種類の結晶多形が存在することが確認された。これら4種の結晶多形の内、A形結晶、B形結晶及びC形結晶は、新規結晶形である。
【0049】
化合物[A]のA形結晶:
本発明のA形結晶は、粉末X線回折(CuKα線)において、回折角度(2θ±0.2°)として6.7°〜11.0°に少なくとも1の回折ピークを有し、かつ18.1°及び23.7°に回折ピークを有する、N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶である。より詳細には、当該結晶は、付着水を持たない無水物結晶であり、上記粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)として10.2°、18.1°、20.2°及び23.7°に回折ピークを有する。更に詳細には、当該結晶は、上記粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)として8.3°、9.7°、10.2°、13.0°、13.6°、18.1°、20.2°、22.4°、23.7°、25.1°及び25.7°に回折ピークを有する。とりわけ詳細には、当該A形結晶は、上記粉末X線回折において、後記第1表に示す回折角(2θ)において回折ピークを示す。
また、本発明のA形結晶は、示差走査熱分析(DSC)において、238℃付近に吸熱ピークを示す。
【0050】
化合物[A]のB形結晶:
本発明のB形結晶は、粉末X線回折(CuKα線)において、回折角度(2θ±0.2°)として6.7°〜11.0°に少なくとも1の回折ピークを有し、かつ14.8°及び18.3°に回折ピークを有する、N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶である。より詳細には、当該結晶は、付着水を持たない無水物結晶であり、上記粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)として、10.8°、14.8°、18.3°及び23.2°に回折ピークを有する。更に詳細には、当該結晶は、上記粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)として、7.5°、10.2°、10.8°、14.8°、15.9°、16.9°、18.3°、19.3°、21.5°、23.2°、25.6°及び29.1°に回折ピークを有する。とりわけ詳細には、本発明のB形結晶は、上記粉末X線回折において、後記第2表に示す回折角(2θ)において回折ピークを示す。
【0051】
化合物[A]のC形結晶:
本発明のC形結晶は、粉末X線回折(CuKα線)において、回折角度(2θ±0.2°)として19.3°及び29.6°に回折ピークを有する、N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミド・1ジメチルスルホキシド和物の結晶である。より詳細には、当該結晶は、上記粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)として、11.3°、19.3°及び29.6°に回折ピークを有する。更に詳細には、当該結晶は、上記粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.2°)として、11.3°、13.0°、15.7°、17.0°、17.8°、19.3°、21.2°、22.4°、25.1°、27.5°及び29.6°に回折ピークを有する。とりわけ詳細には、本発明のC形結晶は、上記粉末X線回折において、後記第3表に示す回折角(2θ)において回折ピークを示す。
【0052】
上記の如くして得られた本発明の結晶は、医薬化合物の結晶形態として好ましい特長を具備するものである。例えば、A形結晶は、吸湿性が低く、また、加熱による他の結晶形への転移を起こし難いという特長を有していることから、化合物[A]の結晶形態として、とりわけ好ましい。また、A形結晶は、製剤中での安定性も高いという特長をも具備するものである。
【0053】
B形結晶は、吸湿性が低く、特許文献1に記載された化合物[A]の結晶(D形結晶)に較べて、熱安定性が高いという特長を有し、化合物[A]の好ましい結晶形態の一つである。また、当該B形結晶は、液体媒質(エタノールの如き有機溶媒等)中で加熱処理(75℃〜85℃)することにより、A形結晶に変換することができることから、上記本発明製法における目的物(A形結晶)の前駆体としても有用である。
【0054】
C形結晶は、1ジメチルスルホキシド和物として取得されるが、当該結晶は、水洗・乾燥することにより、容易にB形結晶へ変換することができることから、B形結晶の前駆体として有用である。
【0055】
一方、特許文献1(実施例9)に記載された化合物[A](N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミド)の結晶(D形結晶)は、その粉末X線回折パターン(CuKα線)(図4)から明らかな通り、回折角度(2θ±0.2°)として、6.7°〜11.0°に回折ピークを有さず、6.0°、11.9°、17.0°、17.6°及び19.0°に回折ピークを有する結晶であり、本発明の結晶形とは明確に相違する。
【0056】
前記化合物[A](A形結晶等)は、鉱質コルチコイド受容体(MR)及び/又はアルドステロンが関与する各種疾患もしくは疾患状態の予防・治療に有用である。このような疾患としては、例えば、本態性高血圧;二次性高血圧(腎血管性高血圧、体液貯留型高血圧等);肺高血圧;低血圧;血圧日内変動異常;心不全(急性心不全、慢性心不全又はうっ血性心不全);狭心症;心筋梗塞;心筋症;心肥大;心筋炎;心筋/血管線維化;心筋虚血;圧受容体障害;不整脈;頻脈;脳血管障害(CVA)とその後遺症;一過性脳虚血発作(TIA);脳卒中;脳血管性認知症;高血圧性脳症;脳梗塞;脳浮腫;脳循環障害;レイノー病及びバージャー病を含む末梢循環障害;間欠性は行;静脈機能不全;動脈硬化(冠動脈硬化、脳動脈硬化、末梢動脈硬化等);血管肥厚;経皮的冠動脈形成術(PTCA)を含むインターベンション後の血管肥厚/閉塞;バイパス造営術(CABG等)後の血管再閉塞/再狭窄;臓器移植後の拒絶反応;血栓症;深部静脈血栓症;閉塞性末梢循環障害;閉塞性動脈硬化症;閉塞性血栓性血管炎;血小板減少症;赤血球増多症;多臓器不全;血管内皮障害;又は腎疾患(腎不全、腎炎、糸球体腎炎、IgA腎症、進行性腎症、糸球体硬化症、糖尿病性腎症、血栓性微小血管症、透析合併症、放射線照射による腎症等);血管性紫斑病;自己免疫性溶血性貧血;播種性血管内凝固症候群(DIC);又は多発性骨髄症等の如き循環器系疾患又は血液関連疾患があげられる。とりわけ、化合物[A](A形結晶等)は、(1)高血圧、心不全、心筋梗塞、狭心症、心肥大、心筋炎、心筋/血管線維化、圧受容体障害、体液量過剰又は不整脈の如き循環器疾患、(2)原発性/二次性アルドステロン症、アジソン病、クッシング症候群又はバーター症候群の如き疾患、或いは(3)糖尿病性腎症の如き腎疾患の予防・治療剤として有用である。
【0057】
化合物[A](A形結晶、B形結晶等)は、単独で或いはこれと薬理学的に許容され得る担体とからなる医薬組成物として、経口的にも非経口的にも投与することができる。このような医薬組成物の剤形は特に限定されるものではなく、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、注射剤、吸入剤または坐剤の如き慣用の固形剤或いは液体製剤があげられる。
【0058】
薬理学的に許容され得る担体としては、例えば、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、水溶性高分子;液剤における溶媒、溶解補助剤、等張化剤、緩衝剤、懸濁化剤等があげられる。また、本発明の医薬組成物には、上記担体のほかに、必要に応じて、抗酸化剤、防腐剤、甘味料、酸味料、着色剤、香料等の如き慣用の医薬品添加物を配合することもできる。
【0059】
本発明の結晶(化合物[A])の投与量は、投与方法、患者の年令、体重、状態によっても異なるが、非経口投与の場合、1日当り0.001〜10mg/kg、とりわけ0.01〜1mg/kg、経口投与の場合、通常、1日当り0.01〜100mg/kg、とりわけ0.1〜10mg/kgとするのが好ましい。
【0060】
本発明における原料化合物[a]は、例えば特許文献1記載の方法(下記反応スキーム1)に従って製造することができる。
(反応スキーム1)
【化23】
〔上記スキーム中、Rはアルキル基、Wはハロゲン原子を表す。〕
化合物[f]におけるハロゲン原子(W)としては、塩素原子又は臭素原子があげられ、この内、臭素原子が好ましい。化合物[e]と化合物[f]の反応は、適当な溶媒(ジメチルスルホキシドの如きエーテル類、ジメチルホルムアミドの如きアミド類又は酢酸エチルの如きエステル類等)中、塩基(炭酸カリウムの如き炭酸アルカリ金属等)存在下、室温〜加熱下、好ましくは20〜30℃で実施することができる。
【0061】
化合物[g]の還元(7位ニトロ基の還元)は、適当な溶媒(メタノール又はエタノールの如きアルコール類等)中、パラジウム炭素又は水酸化パラジウム炭素の如きパラジウム触媒存在下及び水素雰囲気下(又はギ酸アンモニウム存在下)、10〜70℃、好ましくは20〜30℃で実施することができる。
【0062】
本明細書中、アルキルとは直鎖又は分岐鎖状のC1−6アルキル基、好ましくは直鎖又は分岐鎖状のC1−4アルキル基を意味し、アルキレンとは直鎖又は分岐鎖状のC1−6アルキレン基、好ましくは直鎖又は分岐鎖状のC2−6アルキレン基を意味する。
【実施例】
【0063】
実施例1
(1)N−(2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル)−N−(メチルスルホニル)メタンスルホンアミドの製造
【化24】
7−アミノ−2,2−ジメチル−2H−1,4−ベンゾオキサジン−3−(4H)−オン(150g)のアセトニトリル(1500mL)懸濁液に40℃でトリエチルアミン(79g)を滴下し、次いで該混合物にメタンスルホニルクロリド(89.4g)を滴下し(内温39〜50℃)、同温度で20分間撹拌した。反応混合物にトリエチルアミン(79g)及びメタンスルホニルクロリド(89.4g)を順次滴下(内温42〜50℃)した後、同温で25分間撹拌した。反応混合物に更にトリエチルアミン(39.5g)及びメタンスルホニルクロリド(44.7g)を順次滴下し(内温42〜47℃)、40℃で4時間撹拌した。反応混合物に水(1500mL)を滴下し、該混合物を40℃で1時間撹拌した後、25℃まで冷却し、次いで30分間撹拌した。析出晶をろ取し、アセトニトリル/水(1:1、300mL)及び水(750mL)で順次洗浄し、乾燥することにより、標題化合物(235.1g)の白色結晶を得た(収率:87%、純度:99%)。
MS:ESI−MS m/Z:349 [M+H]
H−NMR(CDCl):δ 1.54(6H,s),2.20(1H,brs),3.41(6H,s),6.85(1H,d),6.95(1H,d),6.96(1H,s)
【0064】
(2)N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]−N−(メチルスルホニル)メタンスルホンアミドの製造
【化25】
前記(1)で得られた化合物(300.0g)、4−フルオロフェニルボロン酸(210.8g)、4−ジメチルアミノピリジン(21.0g)、トリブチルアミン(127.7g)及び酢酸銅(II)・1水和物(17.2g)をジメチルスルホキシド(2250mL)に加え、該混合物に空気(150mL/min)を吹き込みつつ、20℃で25時間撹拌した。反応混合物にメタノール(1500mL)を加えた後、該混合物に塩酸/水(179g/2130mL)を約30℃以下で滴下した。該混合物を1時間撹拌した後、析出晶を水(3000mL)及びメタノール(1500mL)で順次洗浄後、乾燥することにより、標題化合物(350.5g)を白色結晶として得た(収率:92%、純度:94%)。
MS:ESI−MS m/Z:443 [M+H]
H−NMR(CDCl):δ 1.63(6H,s),3.39(6H,s),6.40(1H,d),6.84(1H,dd),7.03(1H,d),7.20−7.25(4H,m)
【0065】
(3)N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの製造
【化26】
上記(2)で得られた化合物(10g)をジメチルスルホキシド(60mL)に溶解し、該溶液を濾過し、不溶物を除去した。ろ液と洗液とを合した後、これに無水炭酸カリウム水溶液(9.4g/10mL)を30℃以下で滴下し、該混合物を同温で25時間撹拌した。反応混合物に濃塩酸/水(4.7g/90mL)を30℃以下で滴下し、該混合物を30分間撹拌した。析出晶をろ取し、水(90mL)及びエタノール(20mL)で順次洗浄することにより、標題化合物(9.1g)を白色結晶(B形結晶)として得た。当該結晶をエタノール(100mL)に懸濁し、該懸濁液を2時間加熱還流した後、室温まで冷却した。析出晶をろ取し、50℃で減圧乾燥することにより、標題化合物(7.1g)を結晶(A形結晶)として得た(収率:86%、純度:99%)。
M.p.:240℃
MS:ESI−MS m/Z:365 [M+H]
H−NMR(DMSO−d):δ 1.51(6H,s),2.95(3H,s),6.25(1H,d),6.75(1H,dd),6.90(1H,d),7.35−7.41(4H,m),9.69(1H,brs)
【0066】
実施例2
N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの製造
【化27】
N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]−N−(メチルスルホニル)メタンスルホンアミド(1g)のアセトン(3mL)懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液(0.18g/3mL)を25℃で滴下し、該混合物を同温で90分間撹拌した。反応混合物に濃塩酸/アセトン/水(0.24g/0.5mL/0.35mL)を25℃で滴下し、該混合物を2時間撹拌した。析出晶をろ取し、アセトン/水(1:1.6mL)溶液で洗浄後、50℃で減圧乾燥することにより、標題化合物(0.79g)をA形結晶として得た(収率:95%、純度:100%)。
M.p.:240℃
【0067】
実施例3
N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの製造
【化28】
N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]−N−(メチルスルホニル)メタンスルホンアミド(1g)のジメチルスルホキシド(3mL)懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液(0.18g/3mL)を25℃で滴下した後、ジメチルスルホキシド/水(1:1.2mL)を添加し、該混合物を同温で終夜撹拌した。反応混合物に濃塩酸/ジメチルスルホキシド/水(0.24g/0.5mL/0.35mL)を25℃で滴下し、該混合物を5時間撹拌した。析出晶をろ取し、ジメチルスルホキシド/水(1:1.6mL)溶液、水10mLで順次洗浄後、50℃で減圧乾燥することにより、標題化合物(0.81g)をA形結晶として得た(収率:98%、純度:100%)。
M.p.:240℃
【0068】
実施例4
N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの製造
【化29】
N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]−N−(メチルスルホニル)メタンスルホンアミド(1g)のエタノール(3mL)懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液(0.18g/3mL)を25℃で滴下した後、エタノール/水(1:1.2mL)を添加し、該混合物を同温で終夜撹拌した。反応混合物に濃塩酸/エタノール/水(0.24g/0.5mL/0.35mL)を25℃で滴下し、該混合物を1時間撹拌した。析出晶をろ取し、エタノール/水(1:1.6mL)溶液で洗浄後、50℃で減圧乾燥することにより、標題化合物(0.80g)をB形結晶として得た(収率:98%、純度:95%)。
【0069】
実施例5
N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの製造
【化30】
N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]−N−(メチルスルホニル)メタンスルホンアミド(1g)のイソプロパノール(3mL)懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液(0.18g/3mL)を25℃で滴下した後、イソプロパノール/水(1:1.2mL)を添加し、該混合物を同温で終夜撹拌した。反応混合物に濃塩酸/イソプロパノール/水(0.24g/0.5mL/0.35mL)を25℃で滴下し、該混合物を1時間撹拌した。析出晶をろ取し、イソプロパノール/水(1:1.6mL)溶液で洗浄後、50℃で減圧乾燥することにより、標題化合物(0.78g)をD形結晶として得た(収率:94%、純度:99%)。
【0070】
実施例6
N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]−N−(メチルスルホニル)メタンスルホンアミドの製造
【化31】
N−(2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル)−N−(メチルスルホニル)メタンスルホンアミド(200g)、トリス(4−フルオロフェニル)ボロキシン(140.5g)、4−ジメチルアミノピリジン(14.0g)、トリブチルアミン(85.1g)及び酢酸銅(II)・1水和物(11.5g)をジメチルスルホキシド(1500mL)に加え、該混合物にシリカゲルで脱水した空気(850mL/min)を吹き込みつつ、20℃で72時間撹拌した。反応混合物に塩酸水(濃塩酸119.7g/水1422mL)を30℃以下で滴下した後、これにメタノール(1000mL)を加え、該混合物を20℃で2時間撹拌した。析出晶をろ取し、水(2000mL)及びメタノール(1000mL)で順次洗浄後、メタノール(2000mL)に懸濁した。該懸濁液を1.5時間加熱還流した後、20℃まで冷却し、同温度で30分間攪拌した。析出晶をろ取し、メタノール(1000mL)で洗浄後、乾燥することにより、標題化合物(226.2g)を得た(収率:89%、純度:99%)。
【0071】
実施例7
N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]−N−(メチルスルホニル)メタンスルホンアミドの製造
【化32】
N−(2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル)−N−(メチルスルホニル)メタンスルホンアミド(7.50g)、4−フルオロフェニルボロン酸(5.27g)、4−ジメチルアミノピリジン(0.53g)、トリブチルアミン(3.20g)及び酢酸銅(II)・1水和物(0.43g)をジメチルスルホキシド(56mL)に加え、該混合物に空気(7〜10mL/min)を吹き込みつつ、20℃で26時間撹拌した。反応混合物をジメチルスルホキシド/濃塩酸/水(19mL/4.5g/34mL)混合液に約15℃下で滴下し、ジメチルスルホキシド(7.5mL)で洗浄した。該混合物を10℃で3時間撹拌した後、析出晶をジメチルスルホキシド/水(12mL/3mL)及び水(75mL)で順次洗浄後、乾燥することにより、標題化合物(9.09g)を白色結晶として得た(収率:95%、純度:92%)。
【0072】
実施例8
【化33】
N−(2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル)−N−(メチルスルホニル)メタンスルホンアミド(40.0g)、4−フルオロフェニルボロン酸(28.1g)、1−メチルイミダゾール(0.9g)、トリブチルアミン(27.3mL)及び酢酸銅(II)(2.1g)をジメチルスルホキシド(300mL)に加え、窒素フロー(120mL/min)下、該混合物に空気(40mL/min)を吹き込みつつ、20℃で34時間撹拌した。反応混合物をジメチルスルホキシド/濃塩酸/水(110.0g/24.0g/180.0g)混合液に約15℃下で滴下し、ジメチルスルホキシド(44.0g)で洗浄した。該混合物を10℃で2時間撹拌した後、析出晶をジメチルスルホキシド/水(70.4g/16.0g)及び水(400.0g)で順次洗浄後、乾燥することにより、標題化合物(47.8g)を白色結晶として得た(収率:94%、純度:94%)。
【0073】
実施例9
【化34】
N−(2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル)−N−(メチルスルホニル)メタンスルホンアミド(40.0g)、4−フルオロフェニルボロン酸(28.1g)、トリブチルアミン(21.8mL)及び酢酸銅(II)(12.5g)をジメチルスルホキシド(300mL)に加え、窒素フロー(120mL/min)下、該混合物に空気(40mL/min)を吹き込みつつ、40℃で71時間撹拌した。反応混合物をジメチルスルホキシド/濃塩酸/水(110.0g/24.0g/180.0g)混合液に約15℃下で滴下し、ジメチルスルホキシド(44.0g)で洗浄した。該混合物を10℃で2時間撹拌した後、析出晶をジメチルスルホキシド/水(70.4g/16.0g)及び水(400.0g)で順次洗浄後、乾燥することにより、標題化合物(47.6g)を白色結晶として得た(収率:94%、純度:91%)。
【0074】
実施例10
N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミドの製造
【化35】
N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]−N−(メチルスルホニル)メタンスルホンアミド(8.5g)をジメチルスルホキシド(51mL)に溶解し、炭酸カリウム/水溶液(7.98g/8.5mL)を25℃下で滴下し、該混合物を同温で23時間撹拌した。反応混合物に濃塩酸/水(4.0g/76.5mL)を30℃以下で滴下した後、20℃まで冷却し、該混合物を90分間撹拌した。析出晶をろ取し、水(76.5mL)で洗浄後、乾燥することにより、標題化合物(6.40g)を白色結晶(B形結晶)として得た。次いで、当該結晶(6g)をジメチルスルホキシド(21mL)に加え、約50℃で溶解した後、活性炭(120mg)及びジメチルスルホキシド(3mL)を添加し、1時間撹拌した。該混合物を濾過し、約50℃の濾液に精製水(9mL)を滴下した後、同温で30分撹拌した。該混合物を20℃まで冷却し、1時間撹拌後、析出晶をろ取し、精製水(54mL)及びエタノール(12mL)で順次洗浄した。得られた結晶(6.57g)をエタノール(30mL)に懸濁し、該懸濁液を2時間加熱還流した後、20℃まで冷却し、1時間撹拌した。析出晶をろ取し、50℃で減圧乾燥することにより、標題化合物(5.48g)を結晶(A形結晶)として得た(収率:83%、純度:100%)。
【0075】
実験例1
前記各実施例で得られた目的化合物の各結晶(A形結晶、B形結晶及びD形結晶)、並びに結晶形スクリーニング実験によって得られた結晶(C形結晶)について、X線結晶解析を下記の条件で実施した。その結果、A形結晶(実施例1、2及び3で得られた結晶)、B形結晶(実施例4で得られた結晶)、並びにC形結晶は、特許文献1(実施例9)に記載された化合物[A]の結晶形と明瞭に異なるXRDパターンを有する新規結晶形であることが確認された。一方、D形結晶(実施例5で得られた結晶)は、X線結晶回折、融点等の分析結果から、特許文献1(実施例9)記載方法に準じて製造した化合物[A](参考例2で得られた化合物)の結晶形と同一であることが確認された。下記図1図4に、本願実施例において取得された各結晶形のXRD回折パターンを示した。また、第1表〜第4表に、それぞれの結晶形で観察された回折ピークの回折角(2θ)値を示した。
【0076】
装置名:DISCOVER with GADDS CS(BRUKER社製)
使用X線:CuKα
管電圧:40kV
管電流:40mA
測定範囲(2θ):5〜37°
検出器:マルチワイヤー式2次元PSPC
図1は、化合物[A]のA形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
図2は、化合物[A]のB形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
図3は、化合物[A]のC形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
図4は、化合物[A]のD形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
表1は、化合物[A]のA形結晶の回折角(2θ)を示す。
表2は、化合物[A]のB形結晶の回折角(2θ)を示す。
表3は、化合物[A]のC形結晶の回折角(2θ)を示す。
表4は、化合物[A]のD形結晶の回折角(2θ)を示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
A形結晶(又はB形結晶)とD形結晶とは、それらのXRDパターン(図1図2図4、第1表、第2表及び第4表)から、前者が回折角度(2θ±0.2°)として6.7°〜11.0°に少なくとも1の回折ピークを有するものであるのに対し、後者が回折角度(2θ±0.2°)として6.7°〜11.0°に回折ピークを有しないものである点で明瞭に相違する。当該事実から、これらのA形結晶とD形結晶は互いに異なる結晶構造を有することが理解される。一方、D形結晶は、特許文献1(WO2007/089034、実施例9)記載の方法に従って調製された化合物[A]の結晶(後記参考例2参照)と同一の結晶形を有することが確認された。
【0082】
参考例1
(1)2,2−ジメチル−7−ニトロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−3(4H)−オンの製造
【化36】
2−アミノ−5−ニトロフェノール(200g)のジメチルスルホキシド(1000mL)溶液に撹拌下、30℃以下で無水炭酸カリウム(269g)を加えた後、該混合物に30℃以下で2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸エチル(278.4g)を加え、該混合物を26℃で24時間撹拌した。反応混合物に40℃以下で水(2000mL)を加えた後、室温で3時間撹拌した。反応生成物をろ取し、ジメチルスルホキシド/水(2:1、800mL)及び水(3200mL)で順次洗浄することにより、標題化合物(348.6g)を黄色固体(湿体)として得た(収率:121%、純度:96%)。
MS:ESI−MS m/Z:223 [M+H]
H−NMR(CDCl):δ 1.59(6H,s),6.95(1H,d),7.87(1H,d),7.92(1H,dd),9.38(1H,brs)
【0083】
(2)7−アミノ−2,2−ジメチル−2H−1,4−ベンゾオキサジン−3(4H)−オンの製造
【化37】
上記(1)で得られた化合物(湿体:384.6g)、メタノール(2880mL)及び20%水酸化パラジウム炭素(13.8g)の混合物を水素加圧(0.1MPa)、40℃下で水素吸収が停止するまで撹拌した(約4時間)。反応混合物をろ過し、ろ過残渣をメタノール(300mL)で洗浄した。ろ液と洗液を合した後、50℃以下で減圧濃縮し、残渣にメタノール(288mL)及び水(1440mL)を加え、50℃で約1時間攪拌した。該混合物を25℃まで冷却後、30分間攪拌し、析出晶をろ取し、水(1440mL)で洗浄後、乾燥することにより、標題化合物(163.94g)を赤褐色結晶として得た(収率:66%、純度:100%)。
MS:ESI−MS m/Z:193 [M+H]
H−NMR(CDCl):δ 1.51(6H,s),3.56(2H,brs),6.29(1H,dd),6.32,6.33(1H,m),6.59(1H,d),8.34(1H,brs)
【0084】
参考例2
N−[4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン−7−イル]メタンスルホンアミド(D形結晶)の製造
【化38】
特許文献1記載方法に準じた以下に記載の手順にて、化合物[A]を調製した。
7−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−2H−1,4−ベンゾオキサジン−3(4H)−オン(11.0g)のクロロホルム(200mL)溶液に氷冷下、塩化メタンスルホニル(4.46mL)及びピリジン(6.21mL)を滴下後、当該混合物を室温にて17時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機層を水、10%塩酸及び飽和食塩水で順次洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣を酢酸エチルに懸濁後、析出物を濾取し、酢酸エチルで洗浄することにより、表題化合物(10.2g)を淡桃色粉末として得た。
APCI−MS m/z:365[M+H]
M.p.:233℃
H−NMR(CDCl):δ 1.60(6H,s),3.01(3H,s),6.32(1H,d),6.44(1H,brs),6.69(1H,dd),6.95(1H,d),7.20−7.22(4H,m)
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の製法は、医薬として有用な1,4−ベンゾオキサジン化合物[A]を収率良く製造できる。また、本発明の製法は、変異原性の低い中間体を使用できることから、安全衛生上のリスクが低いという特長をも具備するものであり、1,4−ベンゾオキサジン化合物[A]の工業的有利な製法となり得るものである。
また、本願発明の化合物[A]の結晶(A形結晶等)は、高血圧症、腎疾患(糖尿病性腎症等)の如き疾患の予防・治療剤として有用である。
図1
図2
図3
図4