特許第6454688号(P6454688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイパック フェアパックング グスタフ デッカーホフ ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許6454688-紙袋 図000002
  • 特許6454688-紙袋 図000003
  • 特許6454688-紙袋 図000004
  • 特許6454688-紙袋 図000005
  • 特許6454688-紙袋 図000006
  • 特許6454688-紙袋 図000007
  • 特許6454688-紙袋 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454688
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】紙袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/24 20060101AFI20190107BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   B65D30/24 M
   B65D30/02
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-510959(P2016-510959)
(86)(22)【出願日】2014年4月10日
(65)【公表番号】特表2016-520487(P2016-520487A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】EP2014000966
(87)【国際公開番号】WO2014177248
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2017年4月10日
(31)【優先権主張番号】202013004058.0
(32)【優先日】2013年4月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515302613
【氏名又は名称】ダイパック フェアパックング グスタフ デッカーホフ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リセク エドゥアルト
(72)【発明者】
【氏名】シュルテ ゲーアハルト
【審査官】 西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05493844(US,A)
【文献】 実開昭54−010415(JP,U)
【文献】 特開2006−137450(JP,A)
【文献】 特表2007−535447(JP,A)
【文献】 実開昭48−086010(JP,U)
【文献】 特表2009−500251(JP,A)
【文献】 特表2013−504450(JP,A)
【文献】 実開昭56−043740(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D30/00−33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基底部(12)と該基底部に対向して設けられる上部(14)と、該上部(14)と上記基底部(12)との間に設けられた筒状の外側層(18)とを備える、セメント、石膏、粒状物、動物用飼料等のバルク資材のための紙袋(10)であって、
上記紙袋は、外側に配置された紙製の支持体層(41)と、該支持体層(41)の内側に配置された上記紙袋の内部に面する気密性塗膜(42,43,44,45,46)とを有する筒状のコート紙層(20)を上記上部(14)と上記基底部(12)との間であって上記外側層(18)の内部側に備え、
上記気密性塗膜は、充填資材に接触する上記紙袋の内壁の表面を形成し、
上記コート紙層(20)は、上記紙袋の内部側で密封接着された重複部(22)を有し、
上記コート紙層(20)の、上記紙袋内部に面する層部(34)は、上記重複部において穿孔(38)を有し、
上記穿孔(38)が、上記コート紙層の、上記紙袋の外部に面する層部(36)により覆われ、
上記気密性塗膜(42,43,44,45,46)は、上記支持体層(41)のすぐ内側に配置された金属化層(42)と、該金属化層(42)の内側に設けられて該金属化層(42)を保護するプラスチック塗膜(43,44,45,46)とを備え、
上記プラスチック塗膜(43,44,45,46)は、プラスチックを含む芯部(43)と、該芯部(43)の両面に設けられた表面処理部(44)と、上記金属化層(42)と上記表面処理部(44)との間に配置されたラッカー層(45)と、上記表面処理部(44)上に配置されて上記紙袋の最内側層を構成するコロナ下処理部(46)とを有している
ことを特徴とする紙袋(10)。
【請求項2】
上記コート紙層の上記重複部は、上記紙袋の周長の17%以上25%以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載の紙袋。
【請求項3】
上記コート紙層の重複部(22)の上記内側層部(34)における上記穿孔(38)は、針による穿刺および/または1以上のスリットにより形成される
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の紙袋。
【請求項4】
上記重複部は、該重複部の外側縁部(28)に沿った部分に、追加的な接着剤(32)を有し、
上記追加的な接着剤は、上記紙袋の外部に向けての透過性を有するよう破線状の接着剤ライン(32)として形成されている
ことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の紙袋。
【請求項5】
上記コート紙層が、上記重複部を複数備え、1つの重複部が上記紙袋の前面に形成され、別の1つの重複部が上記紙袋の背面に形成されている
ことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の紙袋。
【請求項6】
上記コート紙層(20)の被覆として、1層以上の材料層がさらに設けられ、上記材料層、上記紙袋の充填時に空気を外部に排出可能であり、上記材料層は紙、コート紙、フィルム、およびコートフィルムの少なくとも1つから構成されている
ことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の紙袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙袋に関し、好ましくは、セメント、石膏、粒状物、動物用飼料等のバルク資材のためのバルブ付紙袋に関する。該紙袋は、好ましくは船底型または角底型(Kreuz- oder Blockboden)である基底部と、上記基底部に対向して設けられ、紙袋への充填用のバルブホースが内部に任意で配置される上部とを備える。
【背景技術】
【0002】
このような紙袋は、例えば、欧州特許第1858769号明細書から公知である。典型的な大きさである5kg用、10kg用、または25kg用の袋が、特に商業用に普及している。これらの紙袋は、紙または紙複合材料、および/またはコート紙から形成された紙の層を1層以上有する。
【0003】
このような袋への充填用に、バルブホースが任意で設けられる。バルブホースは、袋の上部に一体的に配置され、充填のための充填ノズルに取り付けられる。充填作業中に、空気を素早く逃がすことは、スピーディーで経済的な充填にとって重要な意味がある。一方、充填後は、紙袋はできるだけ漏れのないものであるべきである。製品保護をより高める目的で、または、充填資材の製品安定性をより長く維持する目的で、欧州特許第1858769号明細書に記載のように、紙の内側層と外側層との間にバリア層が配置され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知の袋に繊細な資材を充填した場合には、十分な製品保護が保障されないことがわかっている。そのような繊細な資材としては、例えば、建築材料分野に属する凝固速度の速い製品や、芳香が失われることを防がなければならない食品がある。
【0005】
とりわけ、公知の袋については、バリア層が密着しない状態で重なるように配置されているだけであり、十分な製品保護ができない、または、充填資材の製品安定性が十分に長期に維持されないという短所があることがわかっている。さらには、バリア層内にさらなる紙層を設ける解決策は、この紙に含まれる残留水分が充填資材に拡散して、資材の経年劣化を早め、または資材を使用不能にしてしまう可能性があるという、短所があることがわかっている。
【0006】
したがって、本発明は、特に、向上した製品保護および/または充填資材のより長期にわたる製品安定性を保障すると同時に、経済的な製造と充填時の素早い排気とが可能な、改良された紙袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、請求項1に記載の構成を備える本発明の紙袋によって達成される。従属項の構成により、有利な実施形態が提供される。
【0008】
本発明の紙袋は、紙袋の内部に面する塗膜を有するコート紙層を備え、この塗膜は気密性を有し、すなわち、気体の透過、特に、大気中の酸素、CO、または水蒸気の透過に対して良好な封止材を形成する。上記のコート紙層は、重複部をさらに備える。重複部の縁部は、好ましくは、紙袋の側方縁部に平行に延びており、重複部は、重複した帯状に基底部から上部まで延びている。本発明の紙袋において、コート紙層の重複部は、紙袋の内部側で密封接着されている。すなわち、重複部の領域において、紙袋の内部に面する内側層の層部が、コート紙層において紙袋の外部に面する層部に密封接着されており、接着剤は、重複部の縁部において紙袋の内部側に配置されている。接着剤を重複部の縁に直接的に配置することが有利であることは明らかであるが、接着剤を重複部の縁において紙袋の内部側に直接的に配置しなくてもよい。むしろ、重複部の縁から離れていてもよいが、これは、この場合にも、本発明が意図する効果がもたらされるからである。さらに、本発明によれば、コート紙層における紙袋の内部に面する層部は、重複部において複数の穿孔を有し、これら穿孔は、重複部における紙袋の外部に面する層部により覆われている。紙袋の内部側には空気の流れを妨害する接着剤が配置されているので、紙袋への充填時には、これらの穿孔を通じて空気を重複部の外に向けて排出可能である。したがって、紙袋の内部側に設けられた接着剤は、空気の流れを配向する効果と、重複部の領域においてコート紙層を安定させる効果とを有する。つまり、接着剤は、重複部の領域において各材料の端部を一緒に保持する役目を果たす。このように、充填時に穿孔を介して出て行く空気が、重複部から外部に完全に排出される。さらに、重複部における安定性と、充填後における耐漏洩性が向上する。また、重複部によって、充填資材がこぼれることが回避される。穿孔の開口の大きさを適切に選択することにより、各資材が紙袋内に確実に保持されると同時に、空気が穿孔から排出される。紙袋への充填が完了すると、重複部において、穿孔が内側層の外側層部により覆われ、外部からの異物の侵入が回避される。
【0009】
本発明の実施形態により、充填時の良好な排気、ならびに、充填資材の十分な製品保護およびより長期の製品安定性が実現される。気密性の塗膜により、大気中の酸素、CO、または水蒸気が外部から一定量侵入することが回避され、充填材料を損傷または使用不能にしてしまうことが回避される。これらの気体は、すなわち、繊細な製品の損傷の主な原因であり、そのような充填資材の保存安定性の低下の主な原因である。上記気密性塗膜が、充填資材に接触する紙袋の壁の表面を形成するので、充填資材に接触する紙層が存在せず、そのような紙層から充填資材に残留水分が拡散することもない。
【0010】
重複部領域の幅をより広く設計することで、重複部領域における穿孔面積がより大きくなり、したがって、充填時の排気がより良好になる。より大きい重複部において、内側層により多くの材料を無駄に使用することは不利である。これら相反する課題について、内側層の重複部は、紙袋の周長の少なくとも3%、好ましくは紙袋の周長の少なくとも10%、さらに好ましくは紙袋の周長の少なくとも17%、最大で25%であることが効果的であることがわかった。
【0011】
他の好ましい実施形態では、気密性塗膜が多層構造を有する。この塗膜は、好ましくは、金属化フィルムおよび/または金属フィルムを備える。そのような金属化フィルムまたは金属フィルムによって、特に良好な気密性が実現され得る。金属材料として、アルミニウムは非常に好適である。金属製のガスバリアは、食品の分野において特に良好に芳香を保護する。
【0012】
上記の気密性塗膜はまた、液体に対するバリアを形成し、水の浸入に対する密封も実現される。
【0013】
別の好ましい実施形態では、上記の穿孔が、重複部の内側層または内側において、針による穿刺および/または1以上のスリットを設けることで形成される。他の変形例では、穿孔は、電気的または化学的方法によって、タバコ用巻紙において公知の微細な穿孔として形成される。
【0014】
別の好ましい実施形態では、重複部の中央部領域および/または紙袋の外部側の縁部領域に、追加的な接着剤が設けられる。これらの追加的接着剤が、重複部領域をさらに安定させる。これらの接着剤は、紙袋の外部への透過性を有するように構成され、好ましくは、重複部の縁に沿って、紙袋の外部側に配置された破線状の接着剤ラインによって形成される。
【0015】
さらに好ましい実施形態では、紙袋は、本発明にかかる重複部を複数備え、特に好ましくは、紙袋の前面に重複部を1つ、紙袋の背面にさらに重複部を1つ備える。これにより、充填時の排気が向上し、両面に分散できる。
【0016】
別の好適な実施形態では、本発明の紙袋は、コート紙層の外側に、さらなる紙層または紙袋の製造に適した材料でできたさらなる層を備える。これらの層もまた、充填時に、空気を排出できるよう構成されていなければならない。紙袋の製造に適した材料としては、紙、コート紙、フィルムおよび/またはコートフィルムが考えられる。
【0017】
以下の図面を参照して、本発明の実施例をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】基底部と上部とを有する、本発明にかかるバルブ付袋の概略平面図である。
図2a図1に示す本発明にかかる袋の、線A−Aにおける概略断面図である。
図2b図1に示す袋における、内部側に配置されたコート紙層20を、接着剤24が設けられた重複部22の細部拡大図と共に示す。
図2c】内部側に配置されたコート紙層20を、層構造の細部拡大図と共に示す。
図3】本発明にかかる袋における、コート紙層20のホース状部分を示す。
図4】本発明の第1の実施形態にかかるバルブ付袋における、コート紙層20のホース状部分を示す。
図5】本発明の第2の実施形態にかかるバルブ付袋における、コート紙層20のホース状部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明にかかる紙袋10を示す。当該紙袋10は、船底部12と上部14とを有する。この基底部12および上部14は、紙袋10の前面16側に折りたたまれている。一方、前面16の下にある背面は図示されていない。バルブホース15は、上部14に挿入される。
【0020】
この紙袋は、特に図2aの断面図が示すように、内部側に配置されたコート紙層20、および紙製または紙複合材料製の外側層18から製造される。外側層の重複部19は、その幅を狭くして接着されており、外側層が、基底部12と上部14との間でホース状部を形成している。内部側に配置されたコート紙層20の重複部22は、より幅が広く、接着剤24によって紙袋の内部側で接着されている。コート紙層20もまた、基底部12と上部14との間でホース状部を形成しており、このホース状部において重複部22が基低部12から上部14まで帯状に延びている。
【0021】
図2bには、内部側に配置されたコート紙層20を、重複部22の細部拡大図と共に示す。コート紙層20における、紙袋の内部に面する層部34は、重複部22の領域において、コート紙層20における、外部に面する層部36と重なっている。重複部22は、紙袋内部に面する縁部において、接着剤24により密封接着されている。
【0022】
図2cには、内部側に配置されたコート紙層20の層構造を示す。コート紙層20は、その外側に、紙製の支持体層41を有する。支持体層のすぐ内側には、好ましくはアルミニウムで構成された金属化層42が配置される。金属化層42は、プラスチック塗膜により保護されており、この塗膜の芯部43はPET(ポリエチレンテレフタレート)または類似のプラスチックを含む。芯部43の両面には、表面層または表面処理部44が設けられている。金属化層42と表面処理部44との間には、ラッカー層45が配置されている。外側の表面処理部44上には、コロナ下処理部46が配置され、このコロナ下処理部が紙袋内部側の最内側層を構成する。金属製ガスバリアに塗布された上記プラスチック塗膜は、紙袋製造時に金属層を損傷から保護する。
【0023】
図3は、コート紙層20のホース状部の概略平面図である。コート紙層20の重複部22は、紙袋の内部側では内側縁部26によって区画され、紙袋の外部側では外側縁部28によって区画されている。
【0024】
図4は、本発明の第1の実施形態にかかる紙層20の重複領域22の態様を示す。重複領域は、紙袋の内部側においては、重複部の内側縁部26と並行して、連続する接着剤ライン24で密封接着されている。紙袋の外部側においては、重複部の外側縁部28は密着していない状態であって、すなわち、接着されていない。紙層20における、袋の内部に面する層部34は、重複部22の領域において、穿孔されている。図4において×印で示される穿孔38は、重複部と同様、基底部12から上部14まで帯状に延びる。穿孔された帯状部分の幅B2は、帯状の重複部20の幅B1の約1/2であることが有利である。紙層20における、袋の外部に面する層部36は、重複部領域において、穿孔されていない。したがって、穿孔38は覆われている。
【0025】
図5に示す実施形態では、外側縁部28に沿った重複部が、破線状の接着剤ライン32で接着されている。したがって、重複部は外側縁部28において安定化される。
【0026】
本発明により、多くの効果がもたらされる。本発明の紙袋は、特に充填の際の排気が良好である。また、袋の内側の気密性塗膜の存在および充填後の袋の穿孔部が覆われていることにより、製品を好適に保護するのみならず、充填製品の安定性が長く保たれる。さらには、2層の紙層の間にバリア層を別途挿入しなくてよいので、先行技術文献欧州特許第1858769号明細書に比較して、本発明の紙袋の製造は簡便である。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5