特許第6454754号(P6454754)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454754
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20190107BHJP
   G03B 11/00 20060101ALI20190107BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   G02B7/02 D
   G02B7/02 F
   G02B7/02 Z
   G03B11/00
   G03B15/00 V
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-95285(P2017-95285)
(22)【出願日】2017年5月12日
(65)【公開番号】特開2018-194573(P2018-194573A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2018年9月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】317015179
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(72)【発明者】
【氏名】平田 弘之
【審査官】 井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/093463(WO,A1)
【文献】 特開2015−68842(JP,A)
【文献】 特開2008−233512(JP,A)
【文献】 特開2010−281962(JP,A)
【文献】 特開2015−31926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G03B 11/00
G03B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って並べられた複数のレンズと、これら複数のレンズが収納される鏡筒と、前記複数のレンズのうち最も物体側に位置する物体側レンズと前記鏡筒の内周面との間に設けられたシール部材とを備えたレンズユニットであって、
前記鏡筒は、その像面側の端部内周面に径方向内側に突出する環状のフランジ部を有し、このフランジ部の前記物体側を向くレンズ設置面に前記複数のレンズのうち最も像面側に位置する像面側レンズが設置され、
前記鏡筒に、前記フランジ部の一部を含んで通気孔が設けられ、
前記通気孔の前記物体側の端部の一部が前記鏡筒の内周面より径方向内側において開口され、
前記通気孔の前記像面側の端部の少なくとも一部が開口されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記フランジ部の前記像面側を向くフィルタ設置面に光学フィルタが設置され、
前記通気孔の前記像面側の開口部に前記フィルタの外周縁の一部が配置され、
前記光学フィルタの外周縁と前記通気孔の内周面との間に隙間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される車載カメラに設けられる小型のレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーナビ等のために車にモニタが搭載されることから、例えば、バックモニタシステムとして、車両のバックに搭載された車載カメラが撮影した映像をモニタに表示することが行われている。また、このカメラをバックだけではなく、車両の前後左右に備え、車両の周囲を見渡せるような画像を略リアルタイムで合成してモニタに表示するようなシステムも開発されている。
【0003】
このような障害物や人物などの画像を正確に速く認識するなどのセンシング機能を有する車載カメラにおいて、レンズユニットには、真鍮やアルミニウム合金などの金属材料を高い加工精度で加工してなる金属鏡筒が用いられ、高い信頼性を実現している(例えば、特許文献1参照)。
このレンズユニットにおいては、筒状の金属鏡筒に一群のレンズとして、複数のレンズが鏡筒内に光軸方向に重ねて配置されている。
また、このようなレンズユニットでは、鏡筒の物体側の開口部からの水やごみ等の侵入を防止するために、物体側からの鏡筒内の気密性を確保する手段としてОリング等のシール部材を最も物体側に位置する物体側レンズと鏡筒の内周面との間に設けている。
また、前記鏡筒は、その像面側の端部内周面にフランジ部を有し、このフランジ部に複数のレンズのうち最も像面側に位置する像面側レンズが設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−292927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したようなレンズユニットを製造する際において、物体側レンズと鏡筒の内周面との間に設けられているシール部材の気密性を検査している。
この気密性の検査は、鏡筒の内部に空気を充填し、その漏れ流量を計測することによって行われる。例えば、鏡筒の像面側の開口部を閉塞部材によって密封した後、鏡筒の内部に空気を充填し、この充填された空気の鏡筒外への空気の漏れ流量を計測している。
通常、鏡筒内のレンズと鏡筒内周面との間には僅か隙間が設けられているため、鏡筒の内部全体に亘って空気を充填することができる。
しかしながら、像面側レンズは鏡筒の端部内周面のフランジ部に設置されており、このフランジ部も鏡筒と同様に高い加工精度で平坦に加工されているため、このフランジ部に像面側レンズの外周縁部が密着している場合がある。
このように像面側レンズの外周縁部がフランジ部に密着すると、この密着部によって意図しない部位の気密性が発現してしまう。そうすると、充填された空気が密着部によって密封されてしまうため、上述したシール部材が破損していたり、欠品や所定の部位に装着されていなくても、空気の漏れが計測されず、本来の気密性の検査を行うことが困難であった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、物体側レンズと鏡筒の内周面との間に設けられているシール部材の気密性を確実に検査することができるレンズユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のレンズユニットは、光軸に沿って並べられた複数のレンズと、これら複数のレンズが収納される鏡筒と、前記複数のレンズのうち最も物体側に位置する物体側レンズと前記鏡筒の内周面との間に設けられたシール部材とを備えたレンズユニットであって、
前記鏡筒は、その像面側の端部内周面に径方向内側に突出する環状のフランジ部を有し、このフランジ部の前記物体側を向くレンズ設置面に前記複数のレンズのうち最も像面側に位置する像面側レンズが設置され、
前記鏡筒に、前記フランジ部の一部を含んで通気孔が設けられ、
前記通気孔の前記物体側の端部の一部が前記鏡筒の内周面より径方向内側において開口され、
前記通気孔の前記像面側の端部の少なくとも一部が開口されていることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、鏡筒にフランジ部を含んで設けられた通気孔の物体側の端部の一部が鏡筒の内周面より径方向内側において開口され、前記通気孔の像面側の端部の少なくとも一部が開口されている。このため、像面側レンズがフランジ部のレンズ設置面に密着しても、空気は通気孔を通して確実に鏡筒の内部に充填される。したがって、物体側レンズと鏡筒の内周面との間に設けられたシール部材が破損していたり、欠品や所定の部位に装着されていない場合、空気の漏れを確実に計測できるのでシール部材の気密性を確実に検査することができる。
【0009】
本発明の前記構成において、前記フランジ部の前記像面側を向くフィルタ設置面に光学フィルタが設置され、
前記通気孔の前記像面側の開口部に前記フィルタの外周縁の一部が配置され、
前記光学フィルタの外周縁と前記通気孔の内周面との間に隙間が設けられていてもよい。
【0010】
このような構成によれば、光学フィルタをフィルタ設置面に接着剤によって貼り付ける際に、当該接着剤のアウトガスを隙間を通して鏡筒外へ逃がすことができる。このためアウトガスによる光学フィルタ内面の曇りを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、物体側レンズと鏡筒の内周面との間に設けられているシール部材の気密性を確実に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るレンズユニットを示すもので、その概略断面図である。
図2】同、レンズユニットの像面側の端面の底面図である。
図3】同、レンズユニットの要部を示す拡大断面図である。
図4】同、図3における要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態のレンズユニットは自動車等の車両に搭載される車載カメラに設けられるものである。
また、図1に示すように、本実施の形態のレンズユニット10は、略円筒状の鏡筒11と、この鏡筒11内に配置される複数(5枚)のレンズ12〜16からなるレンズ群とを備えている。また、鏡筒11はその像面側(図1に下側)の端部に鏡筒11より大径の大径部11Aを有している。
なお、以下の説明では、最も物体側(図1において上側)に位置するレンズ12を物体側レンズ12、最も像面側(図1において下側)に位置するレンズ16を像面側レンズ16と称することもある。また、図1ではレンズ12〜16の一部を破断して示している。
【0014】
鏡筒11に設けられている複数のレンズ12〜16は、それぞれの光軸を一致させた状態に配置されており、この光軸に沿って各レンズ12〜16が並べられた状態となって、撮像に用いられる1群のレンズ群を構成している。したがって、以下に単に光軸と記載した場合には、各レンズ12〜16の光軸を示すとともにレンズ群の光軸を示している。また、光軸と鏡筒11の軸とは同軸となっている。
【0015】
鏡筒11は、両端開口の円筒状部材であり、物体側(図1において上側)の端部に開口部11aを有し、かつ、像面側(図1において下側)の端部(他端部)に開口部11bを有している。なお、この開口部11bは大径部11Aの下面に設けられている。
また、鏡筒11の物体側の端部外周面には雄ねじが形成され、この雄ねじにレンズ押え部材18の内周面に形成された雌ねじが螺合されている。これによって、レンズ押え部材18が鏡筒11の物体側の端部に取り付けられている。レンズ押え部材18は内側に突出する押え部18aを有しており、この押え部18aが物体側レンズ12の上面外周部を押えることで、物体側レンズ12の鏡筒11からの逸脱を防止している。
【0016】
鏡筒11の内部には、円筒状の収容部31が設けられており、この収容部31にレンズ12〜16が収容されている。レンズ12およびレンズ13が光軸方向に所定の間隔をもって、かつそれらの外周面を収容部31の内周面に当接した状態で収容されている。また、収容部31には、レンズ12,13間において、中間環20がその外周面を収容部31の内周面に当接した状態で収容されている。
さらに、収容部31には、レンズ14およびレンズ16が光軸方向に所定の間隔をもって、かつそれらの外周面を収容部31の内周面に当接した状態で収容されている。
また、収容部31には、レンズ13,14間において中間環21が設けられ、レンズ15,16間において、中間環22がその外周面を収容部31の内周面に当接した状態で収容されている。
レンズ14,15は2枚の貼合わせレンズであり、レンズ15の像面側のレンズ面は中間環22の内側に設けられている。
また、収容部31には中間環20とレンズ13との間に絞り部材25が設けられ、中間環21とレンズ14との間に絞り部材26が設けられ、これら絞り部材25,26の外周部は収容部31の内周面に当接している。
【0017】
また、鏡筒11は、図1図4に示すように、その像面側の端部内周面に径方向内側に突出する円環状のフランジ部35を有している。このフランジ部35は鏡筒11の大径部11Aの内周面から径方向内側に突出するようにして当該大径部11Aと一体的に設けられている。そして、フランジ部35の物体側を向くレンズ設置面35aに、最も像面側に位置する像面側レンズ16が設置されている。レンズ設置面35aは光軸と直交する円環状の平坦面であり、このレンズ設置面35aに像面側のレンズ16の外周部のフランジ部16bが設置されている。
【0018】
また、フランジ部35の内周面は円筒状の円筒面35cとこの円筒面35cと隣接し、かつ当該円筒面35cと同軸の錐筒台状の円錐筒面35dとによって構成され、円錐筒面35dの物体側(上端側)の内径は円筒面35cの内径より小さくなっており、絞り機能を有している。また、円錐筒面35dの像面側(下端側)の内径は円筒面35cの内径より大きくなっている。
また、フランジ部35の像面側(図1において下側)を向くフィルタ設置面35bには赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)36が設置されている。
【0019】
図1に示すように、物体側レンズ12はガラスレンズであり、この物体側レンズ12と鏡筒11の内周面との間にシール部材37が設けられている。すなわち、物体側レンズ12の像面側の外周部に断面矩形状の切欠部12aが周方向沿って形成されている。この切欠部12aにシール部材37としてのOリング37が嵌め込まれており、このシール部材37が鏡筒11の内周面、中間環20の上面、切欠部12aの断面L形の壁面に密着している。
レンズ13はガラスレンズ、レンズ14,15は樹脂レンズである。当該レンズ14,15は光軸を同軸にして貼り合された2枚の貼合わせレンズである。
像面側レンズ16は樹脂レンズであり、その外周部にフランジ部16bを有しており、このフランジ部16bが上述したようにフランジ部35の設置面35aに設置されている。また、像面側レンズ16の像面側のレンズ面16aはフランジ部35の内側に配置されている。
【0020】
鏡筒11にレンズ12〜16、中間環20〜22および絞り部材25,26を収容する場合、まず、鏡筒11の開口部11aから収容部31に像面側レンズ16を挿入したうえで、当該像面側レンズ16のフランジ部16bをフランジ部35のレンズ設置面35aに設置する。
次に、中間環22、2枚貼合わせレンズ14,15、絞り部材26、中間環21、レンズ13、絞り部材25、中間環20、物体側レンズ12をこの順で挿入していく。光軸方向に隣接する部材(中間環22、2枚貼合わせレンズ14,15、絞り部材26、中間環21、レンズ13、絞り部材25、中間環20、物体側レンズ12等の部材)は互い当接させる。また、物体側レンズ12の切欠部12aには予めシール部材37を嵌め込んでおく。
【0021】
最後に鏡筒11の物体側の端部にレンズ押え部材18を螺合して締め付けることで、このレンズ押え部材18とフランジ部35とによってレンズ12〜16、中間環20〜22および絞り部材25,26を挟み付けて固定する。
このようにして鏡筒11の収容部31に鏡筒11にレンズ12〜16、中間環20〜22および絞り部材25,26を収容して固定する。
また、フランジ部35のフィルタ設置面35bに赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)36を設置して、接着剤によって貼り付ける。この赤外線カットフィルタ36を貼り付けは、鏡筒11にレンズ12〜16、中間環20〜22および絞り部材25,26を収容した後でもよいし、収容する前でもよいが、後述する通気孔40を穿孔した後に行う。
【0022】
ところで、上述したようなレンズユニット10を製造する際において、物体側レンズ12と鏡筒11の内周面との間に設けられているシール部材37の気密性を確実に検査するために本実施の形態では、鏡筒11の大径部11Aにフランジ部35の厚さ方向に延在する通気孔40が設けられている。
すなわち、図3に示すように、大径部11Aの下面には収容部31の内径より大きい内径を有する孔41が形成され、この孔41の底面41aには円錐台状の孔41bが形成され、この孔41bの上端周縁がフランジ部35のフィルタ設置面35bの外周縁に接続されている。
そして、前記底面41aの内周縁より若干外周側の部位を含んで当該底面41aからドリルやエンドミル等の穴明け工具50によって大径部11Aを穿孔し、さらにフィルタ設置面35bからフランジ部35のレンズ設置面35aまで穿孔することによって通気孔40が形成されている。穴明け工具50によって穿孔する場合、当該穴明け工具50の回転中心Oを鏡筒11の収容部31の内周面より径方向外側にシフトし、底面41aからフィルタ設置面35bを通ってレンズ設置面35aまで穴明け工具50によって穿孔する。
【0023】
このようにして形成された通気孔40の物体側の端部40bの一部が鏡筒11の収容部31の内周面より径方向内側において開口されている。すなわち、通気孔40の端部40aの端面は、図3および図4に示すように、レンズ設置面35aと面一となっているとともに、当該端面の一部が鏡筒11の収容部31の内周面より径方向内側において開口されている。また、通気孔40の像面側の端部40bが開口されている。すなわち、通気孔40の像面側の端部40bの端面は開口され、さらに、通気孔40の下端部の一部は前記底面41aまで延びたうえで開口されている。
したがって、像面側レンズ16のフランジ部16bが意図せずにレンズ設置面35aに密着していても、通気孔40を通る空気は、フランジ部16bの外周面と収容部31の内周面との間の僅かな隙間を通過可能となっている。
【0024】
また、フランジ部16bは、その外周部に厚さが若干薄い薄肉部16cを有しており、この薄肉部16cより内径側の部位がレンズ設置面35aに設置されている。したがって、薄肉部16cの下面(像面側の面)とレンズ設置面35aとの間には隙間S1が設けられている。したがって、通気孔40を上方側(物体側)に向けて流れた空気は隙間S1に流入するとともにこの隙間からもフランジ部16bの外周面と収容部31の内周面との間の隙間を通過可能となっている。
【0025】
また、フィルタ設置面35bに設置された赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)36の外周縁の一部は通気孔40の像面側の開口部40dに配置されており、この赤外線カットフィルタ36の外周縁と開口部40dの内周面との間に隙間S2が設けられている。
赤外線カットフィルタ36はフィルタ設置面35bに接着剤によって貼り付けられているが、この貼り付け作業の際に接着剤から出るアウトガスは隙間S2を通って鏡筒11外に逃げる。
【0026】
このような構成のレンズユニット10はその製造時にシール部材37の気密性の検査を行う。この検査は、鏡筒11の像面側の開口部11bを図示しない閉塞部材によって密封した後、鏡筒11の内部に空気を充填し、この充填された空気の鏡筒外への空気の漏れ流量を計測している。
本実施の形態のレンズユニット10では、鏡筒11にフランジ部35を含んで当該フランジ部35の厚さ方向に延在して設けられた通気孔40の物体側の端部の端面40aの一部が鏡筒11の内周面より径方向内側において開口され、通気孔40の像面側の端部の端面40bが開口されている。このため、意図せずに、像面側レンズ16のフランジ部16bがフランジ部35のレンズ設置面35aに密着しても、空気は通気孔40を通り、さらに像面側レンズ16のフランジ部16bの外周面と収容部31の内周面との間の隙間を通って確実に鏡筒11の内部に充填される。したがって、物体側レンズ12と鏡筒11の内周面との間に設けられたシール部材37が破損していたり、欠品や所定の部位に装着されていない場合、空気の漏れを確実に計測できるのでシール部材37の気密性を確実に検査することができる。
なお、シール部材37の気密性の検査は鏡筒11の物体側から図示しない閉塞部材によって外周部を密封した後、鏡筒11の内部に物体側から空気を充填し、この充填された空気の鏡筒外への空気の漏れ流量を計測することでも検査は可能である。
また、フランジ部35のフィルタ設置面35bに赤外線カットフィルタ36が設置され、通気孔40の像面側の開口部40dに赤外線カットフィルタ36の外周縁の一部が配置され、赤外線カットフィルタ36の外周縁と開口部40dの内周面との間に隙間S2が設けられているので、赤外線カットフィルタ36をフィルタ設置面35bに接着剤によって貼り付ける際に、当該接着剤のアウトガスを隙間S2を通して鏡筒11外へ逃がすことができる。このためアウトガスによる赤外線カットフィルタ36内面の曇りを防止することができる。
なお、本実施の形態では、赤外線カットフィルタ36を装着したものであるが、赤外線カットフィルタがない製品であっても、シール部材37の気密性を確実に検査することができる。
【0027】
さらに、通気孔40を穴明け工具50によって穿孔する際に、当該穴明け工具50の回転中心Oを鏡筒11の収容部31の内周面より径方向外側にシフトしたので、通気孔40の物体側の端面40aの開口面積を小さくできる。このため、比較的大径の穴明け工具50を使用できるので、当該穴明け工具50折損を抑制できる。
また、通気孔40の端面40aはレンズ設置面35aと面一、若しくは像面側レンズ16のフランジ部16bの薄肉部16cの下面(像面側の面)とレンズ設置面35aとの隙間S1の深さの範囲内に留めることで、穴明け工具50によって鏡筒11の収容部31の内周面を削ることがない。このため収容部31の内周面の面精度を損なうことがないので、収容部31に収容されるレンズ12〜16、中間環20〜22および絞り部材25,26の径方向の位置精度を損なうことがない。
また、フランジ部16bの薄肉部16cの下面とレンズ設置面35aとの間に隙間S1が設けられているので、穴明け工具50によって通気孔40を穿孔した際に生じるバリをこの隙間S1に逃がすことができる。このため、像面側レンズ16のバリに起因する位置精度の低下を防止できる。
【0028】
なお、本実施の形態では、通気孔40を鏡筒11の大径部11Aの周方向の1箇所に設けたが、複数箇所に設けてもよい。
また、通気孔40はその軸を光軸と平行にして設けたが、通気孔をその軸を光軸と交差させるようにして設けてもよい。その場合、通気孔はフランジ部35の一部を含んで設けられ、当該通気孔の物体側の端部の一部が鏡筒の内周面より径方向内側において開口され、通気孔の像面側の端部の少なくとも一部が開口されていればよい。
【符号の説明】
【0029】
10 レンズユニット
11 鏡筒
12〜16 レンズ
12 物体側レンズ
16 像面側レンズ
35 フランジ部
35a レンズ設置面
35b フィルタ設置面
36 赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)
37 Оリング(シール部材)
40 通気孔
40a,40b 端面
40d 開口部
S2 隙間
図1
図2
図3
図4