(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454780
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】掘削器具用摩耗部材
(51)【国際特許分類】
E02F 9/28 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
E02F9/28 A
【請求項の数】38
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-507673(P2017-507673)
(86)(22)【出願日】2015年2月13日
(65)【公表番号】特表2017-514049(P2017-514049A)
(43)【公表日】2017年6月1日
(86)【国際出願番号】US2015015739
(87)【国際公開番号】WO2016130135
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2016年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】511232075
【氏名又は名称】ブラック、キャット、ブレイズ、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BLACK CAT BLADES LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ルヴァング ジョン エイ
【審査官】
西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/051966(WO,A1)
【文献】
特表2013−509513(JP,A)
【文献】
米国特許第04027408(US,A)
【文献】
特表2006−525450(JP,A)
【文献】
米国特許第04716667(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0132619(US,A1)
【文献】
特表2013−525640(JP,A)
【文献】
特表2005−509099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/28
E02F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削器具のリップのための摩耗部材取り付けシステムであって、該システムは、
前記リップの最下面を保護する第1部分と、前記リップの上面を保護する第2部分と、前記第1部分から角度をなして延びる突起と、を含む第1摩耗部材と、
前記第1摩耗部材を前記リップに取り付けることを可能にする摩耗部材アダプタと、を備え、前記第1摩耗部材が、前記摩耗部材アダプタ上に据え付けられるときに、前記突起と前記摩耗部材アダプタ上に設けられたリセプタクルとの相互作用は、前記第1摩耗部材を、前記リップの方に方向転換し、摩耗部材アダプタは、少なくとも1つの第1ファスナによって前記リップに取り付けられ、前記第1摩耗部材は、少なくとも1つの第2ファスナによって前記摩耗部材アダプタに取り付けられる、システム。
【請求項2】
前記第2ファスナは、該第2ファスナの本体に対して偏心したねじ山を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記摩耗部材アダプタは、前記リップ上で互いに最も近い2つの歯アダプタの間に位置決めされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1摩耗部材は、シュラウドを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記シュラウドは、2つの隣接した歯の間に位置決めされ、前記シュラウドは、前記歯の後方にある、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記摩耗部材アダプタは、前記リップと前記第1摩耗部材の間に位置決めされる、請求項1に記載の
システム。
【請求項7】
前記摩耗部材アダプタは、少なくとも1つのリセプタクルを含み、前記第1摩耗部材は、前記リセプタクルに受け入れられた少なくとも1つの突起を含む、請求項1に記載のシステ
ム。
【請求項8】
前記第1摩耗部材上の平行面が、前記摩耗部材アダプタ上の平行面に係合され、前記第1摩耗部材上の平行面の少なくとも1つは、前記突起上に形成されており、前記摩耗部材アダプタ上の平行面の少なくとも1つは、前記リセプタクルに形成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1摩耗部材上の平行面が、前記摩耗部材アダプタ上の平行面に係合され、前記第1摩耗部材上の平行面および前記摩耗部材アダプタ上の平行面は、前記リップに対して傾斜されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2ファスナは、前記リップに対して直交して配向される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
掘削器具のリップを保護する方法であって、該方法は、
少なくとも1つのリセプタクルを含む摩耗部材アダプタを前記掘削器具に取り付けることと、
摩耗部材を前記摩耗部材アダプタに係合させることと、を備え、前記摩耗部材は、前記リップの最下面を保護する第1部分と、前記リップの上面を保護する第2部分と、前記第1部分から角度をなして延びる突起と、を含み、摩耗部材を前記摩耗部材アダプタに係合させることは、前記摩耗部材上の前記少なくとも1つの突起を、前記リセプタクル内に挿入することを備え、前記摩耗部材が、前記摩耗部材アダプタ上に据え付けられるときに、前記突起と前記摩耗部材アダプタ上に設けられたリセプタクルとの相互作用は、前記摩耗部材を、前記リップの方に方向転換する、方法。
【請求項12】
少なくとも1つのリセプタクルを含む摩耗部材アダプタを前記掘削器具に取り付けることは、ファスナを、前記リップおよび前記摩耗部材アダプタを通して延ばすことをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのリセプタクルを含む摩耗部材アダプタを前記掘削器具に取り付けることは、前記リップ上で互いに最も近い2つの歯アダプタの間に前記摩耗部材アダプタを位置決めすることをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのリセプタクルを含む摩耗部材アダプタを前記掘削器具に取り付けることは、前記摩耗部材アダプタを前記リップの前方縁上にオーバーラップさせることをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記摩耗部材は、シュラウドを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記リップと直交して配向される少なくとも1つのファスナで前記摩耗部材を前記摩耗部材アダプタに取り付けることをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのファスナで前記摩耗部材を前記摩耗部材アダプタに取り付けることをさらに備え、前記ファスナは、該ファスナの本体に対して偏心したねじ山を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
摩耗部材を前記摩耗部材アダプタに係合させることは、前記摩耗部材と前記リップの間に前記摩耗部材アダプタを位置決めすることをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
摩耗部材を前記摩耗部材アダプタに係合させることは、前記摩耗部材上の平行面を前記摩耗部材アダプタ上の平行面に係合させることをさらに備え、前記摩耗部材上の平行面および前記摩耗部材アダプタ上の平行面は、前記リップに対して傾斜されている、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
摩耗部材を前記摩耗部材アダプタに係合させることは、前記摩耗部材上の平行面を前記摩耗部材アダプタ上の平行面に係合させることをさらに備え、前記摩耗部材上の平行面の少なくとも1つは、前記突起上に形成されており、前記摩耗部材アダプタ上の平行面の少なくとも1つは、前記リセプタクルに形成されている、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
掘削器具のリップのための摩耗部材取り付けシステムであって、該システムは、
前記リップの最下面を保護する第1部分と、前記リップの上面を保護する第2部分と、前記第1部分から角度をなして延びる突起と、を含む摩耗部材と、
前記摩耗部材を前記リップに取り付けることを可能にする摩耗部材アダプタと、を備え、前記摩耗部材アダプタは、2つの隣接した歯の間で前記リップに留められており、前記摩耗部材アダプタは、少なくとも1つのリセプタクルを含み、前記突起上の面は、前記リセプタクル上の面に係合し、前記突起上の面は、少なくとも部分的に前記リップの最下面に向かって対面しており、かつ、前記リップの最下面に対して傾斜しており、前記突起と前記リセプタクルとの相互作用は、前記摩耗部材アダプタ上に前記摩耗部材の前記第1部分を保持する、システム。
【請求項22】
前記摩耗部材アダプタは、2つの隣接した歯アダプタの間で前記リップに留められている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記摩耗部材アダプタは、前記リップと直交して配向された少なくとも1つの第1ファスナによって前記リップに取り付けられており、前記摩耗部材は、前記リップと直交して配向された少なくとも1つの第2ファスナによって前記摩耗部材アダプタに取り付けられている、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記第2ファスナは、該第2ファスナの本体に対して偏心したねじ山を備える、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記摩耗部材は、シュラウドを備える、請求項21に記載のシステム。
【請求項26】
前記摩耗部材上の平行面が、前記摩耗部材アダプタ上の平行面に係合されており、前記摩耗部材上の平行面の少なくとも一方は、前記突起上に形成されており、前記摩耗部材アダプタ上の平行面の少なくとも一方は、前記リセプタクルに形成されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項27】
前記摩耗部材上の平行面が、前記摩耗部材アダプタ上の平行面に係合され、前記摩耗部材上の平行面および前記摩耗部材アダプタ上の平行面は、前記リップの最下面に対して傾斜されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項28】
前記摩耗部材アダプタは、前記リップの前方縁のまわりを包む、請求項21に記載のシステム。
【請求項29】
掘削器具のリップを保護するためのシュラウドであって、該シュラウドは、
前記リップの最下面を保護する第1部分と、
前記リップの上面を保護する第2部分と、
前記第1部分から角度をなして、前記リップに取り付けられた摩耗部材アダプタに設けられたリセプタクル内に延びる突起と、を備え、
前記突起上の面は、前記リセプタクル上の面に係合し、前記リセプタクル上の面は、前記リップに少なくとも部分的に平行に前方に対面し、かつ、前記リップの前記最下面に対して傾斜されており、前記突起の面と前記リセプタクルの面との係合は、前記摩耗部材アダプタ上に前記シュラウドの前記第1部分を保持する、シュラウド。
【請求項30】
前記リセプタクル上の面は、前記摩耗部材アダプタ上に形成された多数の平行面の1つであり、前記突起上の面は、前記シュラウド上に形成された多数の平行面の1つである、請求項29に記載のシュラウド。
【請求項31】
前記摩耗部材アダプタは、2つの隣接した歯の間で前記リップに留められている、請求項29に記載のシュラウド。
【請求項32】
前記摩耗部材アダプタは、2つの隣接した歯アダプタの間で前記リップに留められている、請求項29に記載のシュラウド。
【請求項33】
前記摩耗部材アダプタは、前記リップと直交して配向された少なくとも1つの第1ファスナによって前記リップに留められている、請求項29に記載のシュラウド。
【請求項34】
前記シュラウドは、少なくとも1つの第2ファスナによって前記摩耗部材アダプタに留められている、請求項33に記載のシュラウド。
【請求項35】
前記第2ファスナは、該第2ファスナの本体に対して偏心したねじ山を備える、請求項34に記載のシュラウド。
【請求項36】
前記第2ファスナは、前記リップと直交して配向される、請求項34に記載のシュラウド。
【請求項37】
前記摩耗部材アダプタは、前記リップの前方縁のまわりを包む、請求項29に記載のシュラウド。
【請求項38】
第2摩耗部材が、前記少なくとも1つの第1ファスナを介して前記リップに取り付けられている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には、掘削に関連して使用される装備および実行される作動に関し、以下に説明される1つの例では、さらに詳しくは、掘削器具上の摩耗部材のための改良を提供する。
【背景技術】
【0002】
掘削器具は、鉱石、岩石、土壌、および、他の材料を破砕し、運搬し、或いはその他の仕方で取り扱うために使用することができる。掘削器具によって取り扱われる材料は、研摩性であり得、或いはその他の仕方で器具の摩耗を引き起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、当業界では、掘削器具を摩耗から保護する改良が継続的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために、特許請求の範囲に記載の手段が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本開示の原理から利益を得ることができる掘削器具の代表的な斜視図である。
【
図2】本開示の原理を実施することができる摩耗部材取り付けシステムの代表的な平面図である。
【
図3】
図2の3−3線に沿ったシステムの代表的な拡大部分断面図である。
【
図4】摩耗部材が掘削器具リップに取り付けられたシステムの代表的な平面図である。
【
図5】シュラウドおよび摩耗プレートがリップおよび摩耗部材アダプタ上に位置決めされているシステムの代表的な部分断面図である。
【
図6】ファスナがシュラウドを摩耗アダプタに取り付けるために使用されているシステムの代表的な部分断面図である。
【
図7】シュラウドおよび摩耗プレートが据え付けられているシステムの代表的な平面図である。
【
図8】
図7の8−8線に沿ったシステムの代表的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の原理から利益を得ることができる掘削器具10の1つの例が、代表的に
図1に示されている。
図1に示された掘削器具10は、ロックローダバケットとして当業者に知られている型式のものであるが、本開示の範囲は、いかなる特定の型式または構成の掘削器具にも限定されないことが、明瞭に理解されるべきである。
【0007】
図1の例では、掘削器具10は、略水平な底リップ12と、2つの略鉛直な側方リップ14と、を含む。これらのリップ12、14の各々は、掘削作動による摩耗を受け得る。リップ12、14を説明するために本願で使用されている記述的な用語「水平」、「底」、「鉛直」、および、「側方」は、
図1に示された掘削器具10に単に関連しているにすぎず、本開示の範囲は、掘削器具のリップのいかなる特定の配向および位置に関する使用に限定されない。
【0008】
歯16が、底リップ12に沿って間隔を隔てて配置されている。歯16は、それぞれの歯アダプタ18によってリップ12に取り付けられている。アダプタ18は、歯16の便利な交換を可能にする。典型的には、アダプタ18は、リップ12に溶接されており、歯16は、取り外し可能なファスナ(
図1に図示されていない)を使用してアダプタに取り付けられている。
【0009】
歯16およびアダプタ18の隣接した対の間で、開口部20がリップ12を通して延びている。開口部20は、歯16およびアダプタ18の隣接した対の間でシュラウド(
図1に図示されていない)をリップ12に取り付けることを可能にする。
【0010】
シュラウドは、リップの少なくとも底面を損傷および摩耗から保護する。シュラウドは、掘削器具10の底に亘る比較的平坦な切削(これにより、今度は、掘削器具により切削された比較的滑らかな安定した面が残される。)を可能にする等の他の目的にも仕する。シュラウドはまた、側方リップ14を損傷および摩耗から保護するためにも設けられることができる。
【0011】
あいにく、過去のシュラウドの設計は、多数のファスナを使用して、シュラウドを掘削器具10に直接取り付けることに依存していた。本発明者は、シュラウドのかかる直接的な取り付けが、シュラウドを交換するために、多数のファスナ、および、ファスナで取り付けられたその他の摩耗部材を取り外し、据え付けることが必要である点で、不都合であり得ることを認識した。ファスナは、典型的には、在来のボルトおよびナットであり、かかる在来のボルトおよびナットは、シュラウドの交換が必要となるほど十分に長い掘削作動のために掘削器具10が使用された後に、首尾よく取り外すことが困難なことがある。
【0012】
ここで、追加的に
図2を参照すると、本開示の原理を実施することができる摩耗部材取り付けシステム22、および、これに関連した方法が、代表的に示されている。しかしながら、システム22および方法は、実際の本開示の原理の適用の1つの例にすぎず、種々の広範な他の例が可能であることを明瞭に理解すべきである。したがって、本開示の範囲は、本明細書に記載され、および/または、図面に示されたシステム22および方法の詳細に全く限定されない。
【0013】
各システム22は、摩耗部材24を掘削器具のリップに取り付けるために使用される。
図2の例では、摩耗部材24は、シュラウドを備え、システム22は、摩耗部材24を、
図1の掘削器具10の底リップ12に取り付けるために使用される。しかしながら、システム22は、他の型式の摩耗部材を取り付けるために使用されることができ、システムは、摩耗部材を、本開示に調和して、他の型式のリップ(側方リップ14等の)および他の掘削器具に取り付けるために使用されることができることを理解すべきである。
【0014】
図2に示されているように、システム22の各々は、歯16および歯アダプタ18の隣接した対の間に位置決めされている。このようにして、摩耗部材24は、互いに最も近い歯アダプタ18の各対の間でリップ12を摩耗から保護することができる。
【0015】
しかしながら、本開示の範囲は、歯16または歯アダプタ18の隣接した対の間でのシステム22の使用に限定されない。いくつかの例では、システム22は、歯または歯アダプタの対の間に位置決めされなくてもよい。1つの例では、システム22は、側方リップ14上で使用されることができ、この場合、システムは、歯または歯アダプタの対の間に位置決めされることは全くないであろう。
【0016】
図2の例では、摩耗部材24は、リップ12の前方縁26および底面28(
図2に図示されておらず、
図3−
図8参照)の両方を保護する。この例では、別個の摩耗部材30が、リップ12の頂面を保護するために設けられている。
【0017】
しかしながら、他の例では、摩耗部材30は、使用されなくてもよく、或いは、摩耗部材30は、摩耗部材24と組み合わされてもよい。かくして、本開示の範囲は、システム22における摩耗部材のいかなる特定の位置、数、構成および組み合わせに限定されない。
【0018】
ここで、
図3を追加的に参照すると、
図2の3−3線に沿ったシステム22およびリップ12の部分断面図が、代表的に示されている。この図では、摩耗部材アダプタ34が、リップ12上に位置決めされている。摩耗部材アダプタ34は、リップ12への摩耗部材24の便利かつ確実な取り付けを可能にし、リップからの摩耗部材の容易な取り外しを可能にする。
【0019】
この例では、アダプタ34は、リップ12の前方縁26のまわりを包む。この構成は、摩耗部材24をアダプタに取り付けるために、アダプタ34において十分な量の材料が、アダプタの前方端を通るファスナ受け入れ開口部36を延びることを可能にする。しかしながら、本開示の原理と調和して、アダプタ34がリップ12の前方縁26を包む、或いは、ファスナ受け入れ開口部36がアダプタの前方端に形成される必要はない。
【0020】
ファスナ38(その1つだけが
図3で見える)が、アダプタ34をリップ12に取り付けるために使用されている。この例では、ファスナ38は、ねじ山付きボルトおよびナットを含むが、他の例では、他の型式のファスナを使用することができる。
【0021】
ナットは、開口部20の半径方向に拡大された部分20aに受け入れられている。ボルトは、所望ならば、摩耗部材30の取り付けを可能にするために、ナットから上方に延び、かつ、リップ12の上面32から突出しているのがよい(
図5−
図8および以下の添付記載参照)。
【0022】
アダプタ34は、摩耗部材24上に形成された1つ以上の突起42(
図3に図示されていない、
図5参照)を受け入れるための1つまたはそれ以上のリセプタクル40を含む。各レセプタクル40は、摩耗部材24がアダプタ34上に据え付けられるときに、リップ12の方に摩耗部材24を方向転換し、それによって、摩耗部材の後方部分を保持する傾斜面44を含む。
【0023】
傾斜面44は、互いに平行なアダプタ34上の多数の傾斜面44、46、48の1つである。平行面44、46、48は、摩耗部材がアダプタ34に取り付けられるときに、摩耗部材24上に形成された平行面50、52、54に係合する。平行面44、46、48と平行面50、52、54とのかかる係合は、摩耗部材が交換されるときに、摩耗部材24が下方かつ前方に移動されることを可能にする。
【0024】
ここで、
図4を追加的に参照すると、アダプタ34がリップ12に取り付けられた後のシステム22の平面図が、代表的に示されている。
図4には、5つのファスナ38が示されているが、本発明の原理に調和して、任意の数のファスナを使用することができることに留意されたい。
【0025】
雌ねじ56が、ファスナ受け入れ開口部36の各々に関連していることに留意されたい。雌ねじ56は、以下により十分に説明するように、特別に構成されたファスナとともに使用されるように、その関連した開口部36に対して偏心している。
【0026】
ここで、
図5を追加的に参照すると、摩耗部材24、30がアダプタ34およびリップ12に取り付けられるときのシステム22が、代表的に示されている。ファスナ38は、摩耗部材30がリップ12の上面32にオーバーラップするように摩耗部材30を取り付けるために使用されている。摩耗部材24は、面44、46、48がそれぞれの面50、52、54に係合され、アダプタの前方端が摩耗部材に形成された凹部58に受け入れられるように、アダプタ34上に据え付けられている。
【0027】
ここで、
図6を追加的に参照すると、摩耗部材30がリップ12の上面32上に取り付けられ、摩耗部材24がアダプタ34に係合されたシステム22が、代表的に示されている。摩耗部材24は、今や、特別に構成されたファスナ60によってアダプタ34に取り付けられている。
【0028】
ファスナ60は、偏心的に形成されたねじ山64を備えた略円筒形の本体62(ねじ山64は本体62の長手方向軸線66に対して中心外れしている)を有する。歯を歯アダプタに取り付けるために使用される同様なファスナが、米国特許第8261472号に記載されており、出典を明示することによりその開示内容全体が本願の一部とされる。
【0029】
ファスナ60は、摩耗部材24およびアダプタ34に据え付けられるときに、リップ12と直交して配向されることに留意されたい。すなわち、ファスナ60の長手方向軸線66は、リップ12の上面32および下面28と垂直である。この配向は、摩耗部材24およびアダプタ34が歯16および歯アダプタ18の隣接した対の間に位置決めされるときに、ファスナ60の便利な据え付けおよび取り外し可能にする。しかしながら、他の例では、本開示の原理と調和して、ファスナ60の他の配向を使用することができる。
【0030】
ここで、
図7を追加的に参照すると、摩耗部材24、30がリップ12およびアダプタ34に取り付けられているシステム22が、代表的に示されている。この構成では、摩耗部材/シュラウド24は、リップ12の前方縁26および底面28を保護し、摩耗部材/摩耗プレート30は、リップの上面32を保護する。
【0031】
ここで、
図8を追加的に参照すると、
図7の8−8線に沿ったシステム22の断面図が、代表的に示されている。この図では、ファスナ60のねじ山64に係合し、それによって、ファスナのねじの緩みを防止する係止デバイス68が、わかる。リップ12の前方縁26、底面28、および、上面32が今や摩耗部材24、30によって損傷および摩耗から保護される。
【0032】
今や上記開示が、掘削器具の摩耗を防止する技術に著しい前進をもたらすことを十分に理解することができる。上述した例では、摩耗部材24は、摩耗部材アダプタ34によって、便利に、リップ12(および/またはリップ14)に取り付け可能、かつ、から取り外し可能である。
【0033】
掘削器具10のリップ12、14のための摩耗部材取り付けシステム22が、上記の開示によって当業界に提供される。1つの例では、システム22は、リップ12の前方縁26を保護する摩耗部材24、および、リップ12への摩耗部材24の取り付けを可能にする摩耗部材アダプタ34を含むのがよい。摩耗部材アダプタ34は、1つまたはそれ以上の第1ファスナ38によってリップ12に取り付けられ、摩耗部材24は、1つまたはそれ以上の第2ファスナ60によってリップ12に取り付けられる。
【0034】
第2ファスナ60は、該第2ファスナの本体62に対して偏心したねじ山64を含むのがよい。第2ファスナ60は、リップ12に対して直交して配向されるのがよい。
【0035】
摩耗部材アダプタ34は、リップ12上で互いに最も近い2つの歯アダプタ18の間に位置決めされるのがよい。摩耗部材アダプタ34は、摩耗部材とリップの底面28の間のような、リップ12と摩耗部材24の間に、或いは、摩耗部材とリップの前方縁26の間に位置決めされるのがよい。
【0036】
摩耗部材24は、シュラウドを備えるのがよい。シュラウド24は。隣接した歯16の間に、歯16の後方にあるように位置決めされるのがよい。
【0037】
摩耗部材アダプタ34は、少なくとも1つのリセプタクル40を含むのがよい。摩耗部材24は、リセプタクル40に受け入れられる少なくとも1つの突起42を含むのがよい。
【0038】
摩耗部材24上の平行面50、52、54が、摩耗部材アダプタ34上の平行面44、46、48に係合されるのがよい。摩耗部材24上の平行面50、52、54の少なくとも1つが、突起42上に形成されるのがよく、摩耗部材アダプタ34上の平行面44、46、48の少なくとも1つがリセプタクル40に形成されるのがよい。摩耗部材24上の平行面50、52、54、および、耗部材アダプタ34上の平行面44、46、48は、リップ12に対して傾斜されているのがよい。
【0039】
掘削器具10のリップ12、14を保護する方法が、上記開示によって当業界に提供される。1つの例では、前記方法は、少なくとも1つのリセプタクル40を含む摩耗部材アダプタ34を掘削器具10に取り付けることと、摩耗部材24を摩耗部材アダプタ34に係合させることと、を含み、摩耗部材24を摩耗部材アダプタ34に係合させることは、摩耗部材24上の少なくとも1つの突起42を、リセプタクル40内に挿入することを含む。
【0040】
少なくとも1つのリセプタクル40を含む摩耗部材アダプタ34を掘削器具10に取り付けることは、ファスナ38を、リップ12および摩耗部材アダプタ34を通して延ばすことをさらに含むのがよい。
【0041】
少なくとも1つのリセプタクル40を含む摩耗部材アダプタ34を掘削器具10に取り付けることは、摩耗部材アダプタ34を、リップ12上で互いに最も近い2つの歯アダプタ18の間に位置決めすることを含むのがよい。
【0042】
少なくとも1つのリセプタクル40を含む摩耗部材アダプタ34を掘削器具10に取り付けることは、摩耗部材アダプタ34を、リップ12の前方縁26にオーバーラップさせることを含むのがよい。しかしながら、本開示の原理と調和して、摩耗部材アダプタ34若しくは摩耗部材24が、リップ12の前方縁26にオーバーラップする、或いは、リップ12の前方縁26を包む必要はないことに留意されたい。
【0043】
前記方法は、少なくとも1つのファスナ60で摩耗部材24を摩耗部材アダプタ34に取り付けることを含むのがよい。ファスナ60は、リップ12と直交して配向されるのがよい。ファスナ60は、該ファスナの本体62に対して偏心したねじ山64を含むのがよい。
【0044】
摩耗部材24を摩耗部材アダプタ34に係合させることは、摩耗部材24とリップ12の底面28の間、或いは、摩耗部材24とリップ12の前方縁26の間のような、摩耗部材24とリップ12の間に摩耗部材アダプタ34を位置決めすることを含むのがよい。
【0045】
摩耗部材24を摩耗部材アダプタ34に係合させることは、摩耗部材24上の平行面50、52、54を摩耗部材アダプタ34上の平行面44、46、48に係合させることを含むのがよい。
【0046】
掘削器具10のリップ12のための摩耗部材取り付けシステム22であって、該システムは、リップ12の前方縁26を保護する摩耗部材24と、摩耗部材24をリップ12に取り付けることを可能にする摩耗部材アダプタ34と、を含み、摩耗部材アダプタ34は、2つの隣接した歯の間でリップ12に留められている、システムがまた上述されている。摩耗部材アダプタ34はまた、2つの隣接した歯アダプタ18の間でリップ12に留められているのがよい。
【0047】
掘削器具10のリップ12、14を保護するためのシュラウド(例えば、摩耗部材24)がまた、上述されている。1つの例では、シュラウドは、リップ12の前方縁26のまわりを包む本体70と、該本体70から、リップ12に取り付けられた摩耗部材アダプタ34に設けられたリセプタクル40内に延びる突起42と、を含むのがよい。突起42上の面50は、リセプタクル40上の面44に係合し、リセプタクル40上の面44は、リップ12に少なくとも部分的に平行に前方に対面しかつ、リップ12に対して傾斜される。突起42の面50とリセプタクル40の面44との係合は、本体70をリップ12の方に方向転換する。
【0048】
リセプタクル上の面44は、摩耗部材アダプタ34上に形成された多数の平行面44,46,48の1つであるのがよい。突起上の面50は、シュラウド上に形成された多数の平行面50、52、64の1つであるのがよい。
【0049】
各例がいくつかの特徴を有する種々の例を上述してきたけれども、1つの例の特定の特徴は、かかる例とともに排他的に使用される必要はないことが理解されるべきである。むしろ、上述され、図面に示された特徴はいずれも、上述のいずれの例にも組み合わせることができ、或いは、他の特徴に付加し、或いは、他の例と代替することができる。1つの例の特徴は、別の例の特徴と相互に排他的ではない。むしろ、本開示の範囲は、それらの特徴のいずれの任意の組み合わせを包含する。
【0050】
上記の各例は、特徴のいくつかの組み合わせを含むけれども、1つの例のすべての特徴が使用される必要はないことを理解すべきである。むしろ、他のいずれの特徴も使用されることなく、上記の特徴のいずれも使用することができる。
【0051】
本願に記載された種々の実施形態は、本開示の原理から逸脱することなく、傾斜された、倒立された、水平な、鉛直な等の種々の配向、および、種々の構成で使用することができることを理解すべきである。実施形態は、本開示の原理の有用な適用例としてのみ記載されており、これらの実施形態のいかなる特定の詳細に限定されない。
【0052】
代表的な例の上記記載において、(「上方」、「下方」、「上」、「下」等の)方向的用語は、添付の図面を参照して便宜のために使用されている。しかしながら、本開示の範囲は、本願に記載されたいかなる特定の方向に限定されないことを明瞭に理解すべきである。用語「含んで」、「含む」、「備えて」、「備える」、および、同様な用語は、本願明細書および特許請求の範囲において、非限定的な意味で使用されている。例えば、システム、方法、装置、デバイス等が、或る特徴または要素を「含む」として記載されている場合、そのシステム、方法、装置、デバイス等は、その特徴または要素を含むのがよいが、他の特徴または要素も含むことができる。同様に、用語「備える」は、「備える」ことを意味すると考えられるが、それに限定されない。
【0053】
もちろん、当業者は、本開示の代表的な実施形態の上記記載を注意深く検討したとき、多くの変更、付加、代替、削除、および、他の変形を特定の実施形態に対して行うことができ、かかる変形が、本開示の原理によって考えられることを容易に理解するであろう。例えば、別個に形成されているものとして開示されている構造は、他の例では、一体的に形成されることができ、その逆も可能である。したがって、これまでの詳細な記載は、例示および例としてのみ与えられているものとして明瞭に理解すべきであり、本発明の精神および範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0054】
10 掘削器具
12 リップ
22 摩耗部材取り付けシステム
24 摩耗部材
30 摩耗部材
34 摩耗部材アダプタ
38 第1ファスナ
40 リセプタクル
42 突起
60 第2ファスナ