特許第6454782号(P6454782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6454782内燃機関の製造方法、内燃機関および連結シリンダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454782
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】内燃機関の製造方法、内燃機関および連結シリンダ
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/00 20060101AFI20190107BHJP
   F02F 1/10 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   F02F1/00 C
   F02F1/00 N
   F02F1/00 R
   F02F1/10 A
【請求項の数】22
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-517372(P2017-517372)
(86)(22)【出願日】2017年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2017012360
(87)【国際公開番号】WO2018016130
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2017年4月11日
【審判番号】不服2017-17663(P2017-17663/J1)
【審判請求日】2017年11月29日
(31)【優先権主張番号】特願2016-141578(P2016-141578)
(32)【優先日】2016年7月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】TPR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591206120
【氏名又は名称】TPR工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】堀米 正巳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】大泉 貴志
(72)【発明者】
【氏名】井上 高志
(72)【発明者】
【氏名】彦根 顕
【合議体】
【審判長】 水野 治彦
【審判官】 冨岡 和人
【審判官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−94230(JP,A)
【文献】 特開2002−97997(JP,A)
【文献】 特開2003−74412(JP,A)
【文献】 特開2002−4939(JP,A)
【文献】 実開昭57−101344(JP,U)
【文献】 実開昭57−123932(JP,U)
【文献】 特開昭62−13758(JP,A)
【文献】 特開平8−246944(JP,A)
【文献】 特開2000−233271(JP,A)
【文献】 特開2013−11283(JP,A)
【文献】 特開平9−209824(JP,A)
【文献】 特開平9−96245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00 - 1/42
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上のシリンダライナと、前記2つ以上のシリンダライナを互いに連結すると共に、前記2つ以上のシリンダライナと一体不可分に形成された連結部とを含む連結シリンダを、一端側にクランク室が形成され、他端側にシリンダヘッドが組み付けられると共に、前記一端側から前記他端側へと貫通する中空部が設けられたシリンダブロック本体の前記中空部に嵌め合わせる嵌合工程を、少なくとも経て内燃機関を製造し、
前記連結シリンダが、(a)金型内に、前記2つ以上のシリンダライナを配置した後、前記金型内に溶湯を流し込んで、前記2つ以上のシリンダライナを、鋳造材料で鋳ぐるむ方法、および、(b)金型内に、前記2つ以上のシリンダライナを配置した後、前記金型内に溶融状態の樹脂材料を射出または注入する樹脂成形法、からなる群より選択されるいずれかの方法により製造され、
互いに隣り合う2つのシリンダライナの間が前記連結部を構成する材料によって隙間無く充填されると共に、前記2つ以上のシリンダライナの外周面全面が前記連結部により覆われ、
前記2つ以上のシリンダライナと、前記連結部との間には界面が存在することを特徴とする内燃機関の製造方法。
【請求項2】
2つ以上のシリンダライナと、前記2つ以上のシリンダライナを互いに連結すると共に、前記2つ以上のシリンダライナと一体不可分に形成された連結部とを含む連結シリンダ(但し、前記2つ以上のシリンダライナと、前記連結部とが溶接により一体不可分に接合された連結シリンダを除く)を、一端側にクランク室が形成され、他端側にシリンダヘッドが組み付けられると共に、前記一端側から前記他端側へと貫通する中空部が設けられたシリンダブロック本体の前記中空部に嵌め合わせる嵌合工程を、少なくとも経て内燃機関を製造し、
互いに隣り合う2つのシリンダライナの間が前記連結部を構成する材料によって隙間無く充填されると共に、前記2つ以上のシリンダライナの外周面全面が前記連結部により覆われ、
前記2つ以上のシリンダライナと、前記連結部との間には界面が存在することを特徴とする内燃機関の製造方法。
【請求項3】
前記連結シリンダが、(a)金型内に、前記2つ以上のシリンダライナを配置した後、前記金型内に溶湯を流し込んで、前記2つ以上のシリンダライナを、鋳造材料で鋳ぐるむ方法、および、(b)金型内に、前記2つ以上のシリンダライナを配置した後、前記金型内に溶融状態の樹脂材料を射出または注入する樹脂成形法、からなる群より選択されるいずれかの方法により製造された連結シリンダであることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の製造方法。
【請求項4】
前記連結部を構成する材料が、前記シリンダブロック本体を構成する材料とは異なる材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の内燃機関の製造方法。
【請求項5】
前記シリンダライナの内周面を仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程を、前記嵌合工程の前のみにおいて実施することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の内燃機関の製造方法。
【請求項6】
前記シリンダライナの内周面に被膜を形成する被膜形成工程を実施した後に、前記被膜の表面を仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程を実施し、
かつ、前記摺動面形成工程を前記嵌合工程の前のみにおいて実施することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の内燃機関の製造方法。
【請求項7】
前記シリンダライナの内周面を仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程を、前記嵌合工程の後のみにおいて実施することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の内燃機関の製造方法。
【請求項8】
前記シリンダライナの内周面に被膜を形成する被膜形成工程を実施した後に、前記被膜の表面を仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程を実施し、
かつ、前記摺動面形成工程を前記嵌合工程の後のみにおいて実施することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の内燃機関の製造方法。
【請求項9】
前記連結シリンダの互いに隣り合う2つのシリンダボアの間に冷却液用通路を形成する冷却液用通路形成工程を、少なくとも前記嵌合工程の前に実施することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の内燃機関の製造方法。
【請求項10】
前記シリンダブロック本体が、鋳造および樹脂成形から選択されるいずれかの方法により作製されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の内燃機関の製造方法。
【請求項11】
2つ以上のシリンダライナと、前記2つ以上のシリンダライナを互いに連結すると共に、前記2つ以上のシリンダライナと一体不可分に形成された連結部とを含む連結シリンダと、
一端側にクランク室が形成され、他端側にシリンダヘッドが組み付けられると共に、前記一端側から前記他端側へと貫通する中空部が設けられたシリンダブロック本体と、を少なくとも備え、
前記連結シリンダが、前記シリンダブロック本体の前記中空部に脱着可能に嵌め合されており、
互いに隣り合う2つのシリンダライナの間が前記連結部を構成する材料によって隙間無く充填されると共に、前記2つ以上のシリンダライナの外周面全面が前記連結部により覆われ、
前記連結部が、(a)鋳造により前記2つ以上のシリンダライナを鋳ぐるむ鋳造部材、および、(b)樹脂成形により前記2つ以上のシリンダライナを包み込む樹脂部材、からなる群より選択されるいずれかの部材であり、
前記2つ以上のシリンダライナと、前記連結部との間には界面が存在することを特徴とする内燃機関。
【請求項12】
2つ以上のシリンダライナと、前記2つ以上のシリンダライナを互いに連結すると共に、前記2つ以上のシリンダライナと一体不可分に形成された連結部とを含む連結シリンダ(但し、前記2つ以上のシリンダライナと、前記連結部とが溶接により一体不可分に接合された連結シリンダを除く)と、
一端側にクランク室が形成され、他端側にシリンダヘッドが組み付けられると共に、前記一端側から前記他端側へと貫通する中空部が設けられたシリンダブロック本体と、を少なくとも備え、
前記連結シリンダが、前記シリンダブロック本体の前記中空部に脱着可能に嵌め合されており、
互いに隣り合う2つのシリンダライナの間が前記連結部を構成する材料によって隙間無く充填されると共に、前記2つ以上のシリンダライナの外周面全面が前記連結部により覆われ、
前記2つ以上のシリンダライナと、前記連結部との間には界面が存在することを特徴とする内燃機関。
【請求項13】
前記連結シリンダの外周面と、前記シリンダブロック本体の前記中空部の内周面との間に冷却液ジャケットが設けられていることを特徴とする請求項11または12に記載の内燃機関。
【請求項14】
前記連結シリンダの外周面のうち、前記他端側の外周面の少なくとも一部に突出部が設けられ、
前記突出部の先端部が、前記シリンダブロック本体の前記中空部の前記他端側の内周面と密着していることを特徴とする請求項13に記載の内燃機関。
【請求項15】
前記連結シリンダの前記他端側の外周面と、前記シリンダブロック本体の前記他端側の内周面との間に、前記連結シリンダと前記シリンダブロック本体とを互いに固定する固定部材が設けられていることを特徴とする請求項13に記載の内燃機関。
【請求項16】
前記連結シリンダが、各々のシリンダライナのボア径を拡径した連環状の外周形状を有し、
各々のシリンダライナの中心線方向において、前記シリンダヘッド側近傍から中央部近傍までの外周面からなる第一領域における各々のシリンダライナの中心線を基準とする外径D1が、前記クランク室側近傍の外周面からなる第二領域における各々のシリンダライナの中心線を基準とする外径D2よりも大きく、
かつ、前記第一領域と、前記第二領域との間には、外周方向と平行かつ連続する段差が形成されており、
さらに、前記第一領域と、前記シリンダブロック本体の前記中空部の内周面との間に冷却液ジャケットが形成されていることを特徴とする請求項11〜15のいずれか1つに記載の内燃機関。
【請求項17】
前記第一領域には、前記第一領域を前記シリンダヘッド側の領域と前記クランク室側の領域とに分断する鍔部が設けられており、
前記鍔部により、前記冷却液ジャケットが、前記シリンダライナあるいは前記シリンダボアの中心線方向に対して分割されていることを特徴とする請求項16に記載の内燃機関。
【請求項18】
2つ以上のシリンダライナと、前記2つ以上のシリンダライナを互いに連結すると共に、前記2つ以上のシリンダライナと一体不可分に形成された連結部とを含み、
各々のシリンダライナのボア径を拡径した連環状の外周形状を有し、
各々のシリンダライナの中心線方向において、シリンダヘッド側近傍から中央部近傍までの外周面からなる第一領域における各々のシリンダライナの中心線を基準とする外径D1が、クランク室側近傍の外周面からなる第二領域における各々のシリンダライナの中心線を基準とする外径D2よりも大きく、
かつ、前記第一領域と、前記第二領域との間には、外周方向と平行かつ連続する段差が形成されており、
互いに隣り合う2つのシリンダライナの間が前記連結部を構成する材料によって隙間無く充填されると共に、前記2つ以上のシリンダライナの外周面全面が前記連結部により覆われ、
前記連結部が、(a)鋳造により前記2つ以上のシリンダライナを鋳ぐるむ鋳造部材、および、(b)樹脂成形により前記2つ以上のシリンダライナを包み込む樹脂部材、からなる群より選択されるいずれかの部材であり、
前記2つ以上のシリンダライナと、前記連結部との間には界面が存在することを特徴とする連結シリンダ。
【請求項19】
2つ以上のシリンダライナと、前記2つ以上のシリンダライナを互いに連結すると共に、前記2つ以上のシリンダライナと一体不可分に形成された連結部とを含み、
各々のシリンダライナのボア径を拡径した連環状の外周形状を有し、
各々のシリンダライナの中心線方向において、シリンダヘッド側近傍から中央部近傍までの外周面からなる第一領域における各々のシリンダライナの中心線を基準とする外径D1が、クランク室側近傍の外周面からなる第二領域における各々のシリンダライナの中心線を基準とする外径D2よりも大きく、
かつ、前記第一領域と、前記第二領域との間には、外周方向と平行かつ連続する段差が形成されており、
互いに隣り合う2つのシリンダライナの間が前記連結部を構成する材料によって隙間無く充填されると共に、前記2つ以上のシリンダライナの外周面全面が前記連結部により覆われ、
前記2つ以上のシリンダライナと、前記連結部との間には界面が存在することを特徴とする連結シリンダ(但し、前記2つ以上のシリンダライナと、前記連結部とが溶接により一体不可分に接合された連結シリンダを除く)。
【請求項20】
前記第一領域には、前記第一領域を前記シリンダヘッド側の領域と前記クランク室側の領域とに分断する鍔部が設けられていることを特徴とする請求項18または19に記載の連結シリンダ。
【請求項21】
前記第一領域に突出部を有さないことを特徴とする請求項18または19に記載の連結シリンダ。
【請求項22】
前記第二領域に突出部を有さないことを特徴とする請求項18〜21のいずれか1つに記載の連結シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の製造方法、内燃機関および連結シリンダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、往復動式多気筒内燃機関の小型軽量化などを目的としたシリンダブロックとして、隣接するシリンダボアを形成するシリンダライナ同士が一体結合されて形成された構造を有するいわゆるサイアミーズ型のシリンダブロックが知られている。このようなシリンダブロックの製造方法としては、たとえば、(1)シリンダライナの集合体を、シリンダブロック鋳造時に金型にセットした後、シリンダブロック本体に鋳ぐるむことで、シリンダブロック本体に固定する方法や、(2)シリンダライナの集合体を、シリンダ本体に対して嵌合により固定する方法などが知られている(特許文献1、2)。これら特許文献1、2に記載のシリンダブロックの製造方法では、複数のシリンダライナが一体成形され、かつ、一部材から構成されるシリンダライナの集合体を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2813947号
【特許文献2】特許第4278125号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、内燃機関には、内燃機関が用いられる車両あるいは車両以外の機器の要求仕様に応じて各種性能を満足させる必要がある。このためには、内燃機関を設計する場合、その自由度が高い方が有利である。また、内燃機関にはメンテナンス性に優れることも求められる。さらに、近年では、環境負荷の観点から、内燃機関にはリサイクル性も求められている。しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1、2に記載のシリンダブロックの製造方法やこれを用いて製造された内燃機関では、メンテナンス性、リサイクル性および設計自由度の3つを全て満足させることが困難であることが判った。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内燃機関のメンテナンス性およびリサイクル性に優れると共に、内燃機関の設計自由度も高い内燃機関の製造方法、これを用いて製造された内燃機関およびこれに用いる連結シリンダを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
第一の本発明の内燃機関の製造方法は、2つ以上のシリンダライナと、2つ以上のシリンダライナを互いに連結すると共に、前記2つ以上のシリンダライナと一体不可分に形成された連結部とを含む連結シリンダを、一端側にクランク室が形成され、他端側にシリンダヘッドが組み付けられると共に、一端側から他端側へと貫通する中空部が設けられたシリンダブロック本体の中空部に嵌め合わせる嵌合工程を、少なくとも経て内燃機関を製造し、連結シリンダが、(a)金型内に、前記2つ以上のシリンダライナを配置した後、金型内に溶湯を流し込んで、2つ以上のシリンダライナを、鋳造材料で鋳ぐるむ方法、および、(b)金型内に、2つ以上のシリンダライナを配置した後、金型内に溶融状態の樹脂材料を射出または注入する樹脂成形法、からなる群より選択されるいずれかの方法により製造され、互いに隣り合う2つのシリンダライナの間が連結部を構成する材料によって隙間無く充填されると共に、2つ以上のシリンダライナの外周面全面が連結部により覆われ、
2つ以上のシリンダライナと、連結部との間には界面が存在することを特徴とする。
第二の本発明の内燃機関の製造方法は、2つ以上のシリンダライナと、2つ以上のシリンダライナを互いに連結すると共に、2つ以上のシリンダライナと一体不可分に形成された連結部とを含む連結シリンダ(但し、2つ以上のシリンダライナと、連結部とが溶接により一体不可分に接合された連結シリンダを除く)を、一端側にクランク室が形成され、他端側にシリンダヘッドが組み付けられると共に、一端側から他端側へと貫通する中空部が設けられたシリンダブロック本体の中空部に嵌め合わせる嵌合工程を、少なくとも経て内燃機関を製造し、互いに隣り合う2つのシリンダライナの間が連結部を構成する材料によって隙間無く充填されると共に、2つ以上のシリンダライナの外周面全面が連結部により覆われ、2つ以上のシリンダライナと、連結部との間には界面が存在することを特徴とする。
【0007】
第一および第二の本発明の内燃機関の製造方法の一実施形態は、2つ以上のシリンダライナを構成する材料が鋳鉄材であり、連結部を構成する材料が、(a)2つ以上のシリンダライナを構成する材料と比べて低密度の材料、(b)2つ以上のシリンダライナを構成する材料と比べて熱伝導性の高い材料、(c)2つ以上のシリンダライナを構成する材料と比べて強度の高い材料、および、(d)樹脂材料、からなる群より選択されるいずれかの材料であることが好ましい。
第二の本発明の内燃機関の製造方法の他の実施形態は、連結シリンダが、(a)金型内に、2つ以上のシリンダライナを配置した後、金型内に溶湯を流し込んで、2つ以上のシリンダライナを、鋳造材料で鋳ぐるむ方法、および、(b)金型内に、2つ以上のシリンダライナを配置した後、金型内に溶融状態の樹脂材料を射出または注入する樹脂成形法、からなる群より選択されるいずれかの方法により製造された連結シリンダであることが好ましい。
【0009】
第一および第二の本発明の内燃機関の製造方法の他の実施形態は、連結部を構成する材料が、シリンダブロック本体を構成する材料とは異なる材料であることが好ましい。
【0011】
第一および第二の本発明の内燃機関の製造方法の他の実施形態は、シリンダライナの内周面を仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程を、嵌合工程の前のみにおいて実施することが好ましい。
【0012】
第一および第二の本発明の内燃機関の製造方法の他の実施形態は、シリンダライナの内周面に被膜を形成する被膜形成工程を実施した後に、被膜の表面を仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程を実施し、かつ、摺動面形成工程を嵌合工程の前のみにおいて実施することが好ましい。
【0014】
第一および第二の本発明の内燃機関の製造方法の他の実施形態は、シリンダライナの内周面を仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程を、嵌合工程の後のみにおいて実施することが好ましい。
【0015】
第一および第二の本発明の内燃機関の製造方法の他の実施形態は、シリンダライナの内周面に被膜を形成する被膜形成工程を実施した後に、被膜の表面を仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程を実施し、かつ、摺動面形成工程を嵌合工程の後のみにおいて実施することが好ましい。
【0017】
第一および第二の本発明の内燃機関の製造方法の他の実施形態は、連結シリンダの互いに隣り合う2つのシリンダボアの間に冷却液用通路を形成する冷却液用通路形成工程を、少なくとも嵌合工程の前に実施することが好ましい。
【0018】
第一および第二の本発明の内燃機関の製造方法の他の実施形態は、シリンダブロック本体が、鋳造および樹脂成形から選択されるいずれかの方法により作製されることが好ましい。
【0019】
第一の本発明の内燃機関は、2つ以上のシリンダライナと、2つ以上のシリンダライナを互いに連結すると共に、前記2つ以上のシリンダライナと一体不可分に形成された連結部とを含む連結シリンダと、一端側にクランク室が形成され、他端側にシリンダヘッドが組み付けられると共に、一端側から他端側へと貫通する中空部が設けられたシリンダブロック本体と、を少なくとも備え、連結シリンダが、シリンダブロック本体の中空部に脱着可能に嵌め合されており、互いに隣り合う2つのシリンダライナの間が連結部を構成する材料によって隙間無く充填されると共に、2つ以上のシリンダライナの外周面全面が連結部により覆われ、連結部が、(a)鋳造により2つ以上のシリンダライナを鋳ぐるむ鋳造部材、および、(b)樹脂成形により2つ以上のシリンダライナを包み込む樹脂部材、からなる群より選択されるいずれかの部材であり、2つ以上のシリンダライナと、連結部との間には界面が存在することを特徴とする。
第二の本発明の内燃機関は、2つ以上のシリンダライナと、2つ以上のシリンダライナを互いに連結すると共に、2つ以上のシリンダライナと一体不可分に形成された連結部とを含む連結シリンダ(但し、2つ以上のシリンダライナと、連結部とが溶接により一体不可分に接合された連結シリンダを除く)と、一端側にクランク室が形成され、他端側にシリンダヘッドが組み付けられると共に、一端側から他端側へと貫通する中空部が設けられたシリンダブロック本体と、を少なくとも備え、連結シリンダが、シリンダブロック本体の中空部に脱着可能に嵌め合されており、互いに隣り合う2つのシリンダライナの間が連結部を構成する材料によって隙間無く充填されると共に、2つ以上のシリンダライナの外周面全面が連結部により覆われ、2つ以上のシリンダライナと、連結部との間には界面が存在することを特徴とする。
【0020】
第一および第二の本発明の内燃機関の一実施形態は、2つ以上のシリンダライナを構成する材料が鋳鉄材であり、連結部を構成する材料が、(a)2つ以上のシリンダライナを構成する材料と比べて低密度の材料、(b)2つ以上のシリンダライナを構成する材料と比べて熱伝導性の高い材料、(c)2つ以上のシリンダライナを構成する材料と比べて強度の高い材料、および、(d)樹脂材料、からなる群より選択されるいずれかの材料であることが好ましい。
第一および第二の本発明の内燃機関の他の実施形態は、連結シリンダの外周面と、シリンダブロック本体の中空部の内周面との間に冷却液ジャケットが設けられていることが好ましい。
【0021】
第一および第二の本発明の内燃機関の他の実施形態は、連結シリンダの外周面のうち、他端側(シリンダヘッド側)の外周面の少なくとも一部に突出部が設けられ、突出部の先端部が、シリンダブロック本体の中空部の他端側(シリンダヘッド側)の内周面と密着していることが好ましい。
【0022】
第一および第二の本発明の内燃機関の他の実施形態は、連結シリンダの他端側(シリンダヘッド側)の外周面と、シリンダブロック本体の他端側(シリンダヘッド側)の内周面との間に、連結シリンダとシリンダブロック本体とを互いに固定する固定部材が設けられていることが好ましい。
【0023】
第一および第二の本発明の内燃機関の他の実施形態は、連結シリンダが、各々のシリンダライナのボア径を拡径した連環状の外周形状を有し、各々のシリンダライナの中心線方向において、シリンダヘッド側近傍から中央部近傍までの外周面からなる第一領域における各々のシリンダライナの中心線を基準とする外径D1が、クランク室側近傍の外周面からなる第二領域における各々のシリンダライナの中心線を基準とする外径D2よりも大きく、かつ、第一領域と、第二領域との間には、外周方向と平行かつ連続する段差が形成されており、さらに、第一領域と、シリンダブロック本体の中空部の内周面との間に冷却液ジャケットが形成されていることが好ましい。
【0025】
第一および第二の本発明の内燃機関の他の実施形態は、第一領域には、第一領域をシリンダヘッド側の領域とクランク室側の領域とに分断する鍔部が設けられており、鍔部により、冷却液ジャケットが、シリンダライナあるいはシリンダボアの中心線方向に対して分割されていることが好ましい。
【0026】
第一の本発明の連結シリンダは、2つ以上のシリンダライナと、2つ以上のシリンダライナを互いに連結すると共に、2つ以上のシリンダライナと一体不可分に形成された連結部とを含み、各々のシリンダライナのボア径を拡径した連環状の外周形状を有し、各々のシリンダライナの中心線方向において、シリンダヘッド側近傍から中央部近傍までの外周面からなる第一領域における各々のシリンダライナの中心線を基準とする外径D1が、クランク室側近傍の外周面からなる第二領域における各々のシリンダライナの中心線を基準とする外径D2よりも大きく、かつ、第一領域と、第二領域との間には、外周方向と平行かつ連続する段差が形成されており、互いに隣り合う2つのシリンダライナの間が連結部を構成する材料によって隙間無く充填されると共に、2つ以上のシリンダライナの外周面全面が連結部により覆われ、連結部が、(a)鋳造により2つ以上のシリンダライナを鋳ぐるむ鋳造部材、および、(b)樹脂成形により2つ以上のシリンダライナを包み込む樹脂部材、からなる群より選択されるいずれかの部材であり、2つ以上のシリンダライナと、連結部との間には界面が存在することを特徴とする。
第二の本発明の連結シリンダ(但し、2つ以上のシリンダライナと、連結部とが溶接により一体不可分に接合された連結シリンダを除く)は、2つ以上のシリンダライナと、2つ以上のシリンダライナを互いに連結すると共に、2つ以上のシリンダライナと一体不可分に形成された連結部とを含み、各々のシリンダライナのボア径を拡径した連環状の外周形状を有し、各々のシリンダライナの中心線方向において、シリンダヘッド側近傍から中央部近傍までの外周面からなる第一領域における各々のシリンダライナの中心線を基準とする外径D1が、クランク室側近傍の外周面からなる第二領域における各々のシリンダライナの中心線を基準とする外径D2よりも大きく、かつ、第一領域と、第二領域との間には、外周方向と平行かつ連続する段差が形成されており、互いに隣り合う2つのシリンダライナの間が連結部を構成する材料によって隙間無く充填されると共に、2つ以上のシリンダライナの外周面全面が連結部により覆われ、2つ以上のシリンダライナと、連結部との間には界面が存在することを特徴とする。

【0027】
第一および第二の本発明の連結シリンダの一実施形態は、2つ以上のシリンダライナを構成する材料が鋳鉄材であり、連結部を構成する材料が、(a)2つ以上のシリンダライナを構成する材料と比べて低密度の材料、(b)2つ以上のシリンダライナを構成する材料と比べて熱伝導性の高い材料、(c)2つ以上のシリンダライナを構成する材料と比べて強度の高い材料、および、(d)樹脂材料、からなる群より選択されるいずれかの材料であることが好ましい。
【0028】
第一および第二の本発明の連結シリンダの他の実施形態は、第一領域には、第一領域をシリンダヘッド側の領域とクランク室側の領域とに分断する鍔部が設けられていることが好ましい。
【0029】
第一および第二の本発明の連結シリンダの他の実施形態は、第一領域に突出部を有さないことが好ましい。
【0030】
第一および第二の本発明の連結シリンダの他の実施形態は、第二領域に突出部を有さないことが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、内燃機関のメンテナンス性およびリサイクル性に優れると共に、内燃機関の設計自由度も高い内燃機関の製造方法、これを用いて製造された内燃機関およびこれに用いる連結シリンダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本実施形態の内燃機関の製造方法に用いられる第一の連結シリンダの一例を示す外観斜視図である。
図2図1に示す第一の連結シリンダのシリンダヘッド側近傍の拡大斜視図である。
図3図2に示す第一の連結シリンダの符号III−III間の断面構造の一例を示す拡大断面図である。
図4】本実施形態の内燃機関の製造方法に用いられる第二の連結シリンダのシリンダヘッド側近傍の一例を示す拡大斜視図である。
図5図4に示す第二の連結シリンダの符号V−V間の断面構造の一例を示す拡大断面図である。
図6】本実施形態の内燃機関の製造方法に用いられるシリンダブロック本体の一例について、シリンダブロック本体の一部を破断して示す分解斜視図である。
図7】本実施形態の内燃機関の製造方法により製造された第一の連結シリンダを用いた内燃機関の一例を示す外観斜視図である。
図8図7に示す内燃機関の符号VIII−VIII間の断面構造の一例を示す模式断面図である。
図9図3に示す第一の連結シリンダの符号IX−符号IX間の断面構造の一例を示す模式断面図である。
図10図5に示す第二の連結シリンダの符号X−X間の断面構造の一例を示す模式断面図である。
図11図9に示す第一の連結シリンダの一変形例を示す模式断面図である。
図12図8に示す内燃機関の一変形例を示す模式断面図である。
図13図8に示す内燃機関の他の変形例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本実施形態の内燃機関の製造方法、内燃機関および連結シリンダについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、図中に示すX方向、Y方向およびZ方向は互いに直交する方向である。ここで、X方向はシリンダボアの並び方向であり、Y方向はシリンダボアの並び方向と直交しかつシリンダボアの中心線C(第一の連結シリンダにおいては、シリンダボアおよびシリンダライナの中心線C)とも直交する方向であり、Z方向はシリンダボアの中心線Cと平行な方向である。また、X方向において、X1側はX2側に対して逆方向であり、Y方向において、Y1側はY2側に対して逆方向であり、Z方向において、Z1側(シリンダヘッド側)はZ2側(クランク室側)に対して逆方向である。
【0034】
<内燃機関の製造方法>
本実施形態の内燃機関の製造方法では、(1)2つ以上のシリンダライナと、2つ以上のシリンダライナを互いに連結する連結部とを含む第一の連結シリンダ、および、(2)2つ以上のシリンダボアが設けられた連結シリンダ本体部と、連結シリンダ本体部のシリンダボアが設けられた内周面を被覆する被膜とを含む第二の連結シリンダ、からなる群より選択されるいずれかの連結シリンダを用いる。
【0035】
図1図3は、本実施形態の内燃機関の製造方法に用いられる連結シリンダの一例を示す模式図であり、具体的には、第一の連結シリンダの一例について説明する図である。ここで、図1は、第一の連結シリンダの外観斜視図を示し、図2は、第一の連結シリンダのシリンダヘッド側近傍の拡大斜視図を示す。また、図3は、第一の連結シリンダのシリンダヘッド側近傍の断面構造の一例を示す拡大断面図であり、第一の連結シリンダを図2中の符号III−III間で切断した断面構造(XY断面構造)を示している。
【0036】
図1図3に例示する第一の連結シリンダ10A1(10A、10)には、4つのシリンダボア20が設けられており、各々のシリンダボア20は、各々の中心線Cが同一平面(XZ平面)上に位置するように、X方向に沿って設けられている。また、第一の連結シリンダ10A1は、4つのシリンダライナ40と、これら4つのシリンダライナ40を互いに連結する連結部42とを有する。なお、図1図3に示す例では、連結部42は、4本の円筒状のシリンダライナ40の各々の外周面40Aの全面を少なくとも覆うように設けられると共に、各々のシリンダライナ40のボア径Dbを拡径した連環状の外周形状を有している。また、X方向において互いに隣り合う一のシリンダライナ40と他のシリンダライナ40とは、外周面40A同士が接触しないように、一定の距離を置いて離間して配置されている。すなわち、互いに隣り合う2つのシリンダライナ40の間は、連結部42を構成する材料によって隙間なく充填されている。また、シリンダライナ40のシリンダヘッド側およびクランク室側の端面も連結部42によって覆われている。但し、シリンダライナ40の端面は、シリンダヘッド側およびクランク室側の端面のいずれか一方あるいは両方が、連結部42によって覆われていなくてもよい。
【0037】
図4図5は、本実施形態の内燃機関の製造方法に用いられる連結シリンダの他の例を示す模式図であり、具体的には、第二の連結シリンダの一例について説明する図である。ここで、図4は、第二の連結シリンダのシリンダヘッド側近傍の拡大斜視図を示す。また、図5は、第二の連結シリンダのシリンダヘッド側近傍の断面構造の一例を示す拡大断面図であり、連結シリンダを図4中の符号V−V間で切断した断面構造(XY断面構造)を示している。
【0038】
図4図5に例示する第二の連結シリンダ10B(10)の外周形状は、図1に例示した第一の連結シリンダ10A1と同様である。そして、第二の連結シリンダ10Bにも、4つのシリンダボア20が設けられており、各々のシリンダボア20は、その中心線Cが同一平面(XZ平面)上に位置するように、X方向に沿って配置されている。また、第二の連結シリンダ10Bは、4つのシリンダボア20が設けられた連結シリンダ本体部50と、連結シリンダ本体部50のシリンダボア20が設けられた内周面50Bを被覆する被膜52とを含む。なお、図4図5に示す例では、連結シリンダ本体部50は、4つの円穴状のシリンダボア20のボア径Dbを拡径した連環状の外周形状を有している。
【0039】
なお、図1図3に例示する第一の連結シリンダ10A1では、4つのシリンダライナ40を有する場合について示しているが、シリンダライナ40の数は2以上であれば特に制限されず、一般的には2〜8程度の範囲内で選択できる。また、図4図5に例示する第二の連結シリンダ10Bでは、4つのシリンダボア20が設けられた場合について示しているが、シリンダボア20の数は2以上であれば特に制限されず、一般的には2〜8程度の範囲内で選択できる。
【0040】
本実施形態の内燃機関の製造方法では、図1図5に例示したような連結シリンダ10を、シリンダブロック本体に嵌め合せる嵌合工程を少なくとも経ることで内燃機関を製造する。
【0041】
ここで、図6に例示したように、シリンダブロック本体60A(60)には、一端側(Z2側)にクランク室62が形成され、他端側(Z1側)にシリンダヘッドが組み付けられると共に、一端側から他端側へと貫通する中空部64が設けられた構造を有する。そして、嵌合工程では、連結シリンダ10が中空部64に嵌め合せられる。また、嵌合工程を実施した後、さらに各種のその他の工程を実施することで内燃機関を完成させる。その他の工程としては、たとえば、中空部64内に嵌合・固定された連結シリンダ10が配置されたシリンダブロック本体60のシリンダヘッド側(Z1側)にシリンダヘッドを組み付ける工程などが挙げられる。
【0042】
図7は、本実施形態の内燃機関の製造方法により製造された内燃機関の一例を示す外観斜視図を示し、図8は、図7に示す内燃機関を符号IV−IV間で切断した場合の断面構造(YZ断面構造)の一例を示す模式断面図である。なお、図7および図8に示す内燃機関において、連結シリンダおよびシリンダブロック本体以外の内燃機関を構成するその他の主要な部材については記載を省略してある。
【0043】
図7および図8に示す内燃機関100A(100)は、連結シリンダ10と、シリンダブロック本体60とを、有しており、連結シリンダ10は、シリンダブロック本体60の中空部64の一端側の部分(嵌合部64J)において脱着可能に嵌め合せされている。なお、図7および図8に示す例では、連結シリンダ10として、図1図3に例示した第一の連結シリンダ10A1を用いているが、第一の連結シリンダ10A1の代わりに、第二の連結シリンダ10Bを用いることもできるし、後述する図11に例示したような鍔部16を有する連結シリンダ10を用いることもできる。また、図7および図8に示す例では、シリンダブロック本体60としては、図6に示すシリンダブロック本体60Aが用いられているが、鍔部16を有する連結シリンダ10を用いる場合は、後述する図13に例示したようなシリンダブロック本体60B(60)を用いることもできる。
【0044】
一方、複数本のシリンダライナがシリンダブロックに鋳包まれた構造を持つ一般的な内燃機関では、内燃機関の一部分の修理・交換作業が必要となったとしても、シリンダライナおよびシリンダブロックを含む内燃機関の主要部全体をハンドリングする必要がある。これに加えて、一般的な内燃機関では、複数種類の材質の異なる2種類以上の材料(たとえば、シリンダライナを構成する材料およびシリンダライナを鋳ぐるむシリンダブロックを構成する材料)が一体不可分に構成されている。このため、材料種類毎にリサイクル処理しようとした場合、材料の溶解温度の違いを利用することによって、材料種類毎に分別する必要がある。この点は、シリンダライナの集合体をシリンダブロック本体に鋳ぐるんだ構造を有する特許文献1に開示された内燃機関においても同様である。
【0045】
これに対して、本実施形態の内燃機関の製造方法では、図7および図8に例示したように、連結シリンダ10のシリンダブロック本体60への固定は、連結シリンダ10を中空部64に嵌め合せることで行われる。このため、シリンダブロック本体60に一旦固定された連結シリンダ10は、シリンダブロック本体60から容易に取り外すこともできる。したがって、内燃機関100をメンテナンスする場合、シリンダブロック本体60から連結シリンダ10を取り外して、連結シリンダ10およびシリンダブロック本体60のいずれか一方あるいは双方を、それぞれ別個に修理あるいは交換することができる。このため、本実施形態の内燃機関の製造方法によって製造された内燃機関100は、メンテナンス性に優れる。
【0046】
これに加えて、内燃機関100を廃棄処分する場合、内燃機関100を構成する主要部材である連結シリンダ10とシリンダブロック本体60とを、容易に分別して別々に廃棄処分できる。ここで、本実施形態の内燃機関の製造方法に用いられるシリンダブロック本体60は、通常、鋳造または樹脂成形などを利用して作製された部材(全体が一体不可分な1種類の材料からなる部材)から構成される。
【0047】
それゆえ、内燃機関100から取り外したシリンダブロック本体60は、これ以上の分離処理等を行わずにそのままリサイクル処理できる。たとえば、シリンダブロック本体60がアルミニウム合金や鋳鉄などを用いて製造された鋳造物であれば、シリンダブロック本体60を溶解処理して再利用することができる。したがって、本実施の内燃機関の製造方法によって製造された内燃機関100は、リサイクル性にも優れる。なお、シリンダブロック本体60は、通常、全体が一体不可分な1種類の材料からなる部材から構成されることが特に好ましいが、このような部材と実質的に同程度のリサイクル性を有するのであれば、シリンダブロック本体60の構造は、全体が一体不可分な1種類の材料からなる部材から構成される場合のみに限定されるものでは無い。
【0048】
なお、廃棄処分する内燃機関100を構成する連結シリンダ10およびシリンダブロック本体60のいずれか一方の部材が再利用に耐え得る場合は、一方の部材は再利用し、他方の部材のみを廃棄処分することも可能である。
【0049】
また、シリンダライナを鋳ぐるむことでシリンダライナとシリンダブロックとを一体化して内燃機関を製造する従来の一般的な内燃機関の製造方法では、鋳造後に、シリンダライナ部分あるいはその近傍部分のみに欠陥が発見されたり、シリンダブロック側のみに欠陥が発見されても、シリンダライナとシリンダブロックとが一体化された部材全体を廃棄処分する必要がある。これに対して、本実施形態の内燃機関の製造方法では、内燃機関100は、2つの部品(連結シリンダ10およびシリンダブロック本体60)をそれぞれ準備した上で、これらを組み合わせて製造される。それゆえ、仮に嵌合工程を終えた後に、各部品のいずれかに、不良欠陥が見つかったとしても、廃棄対象となるのは、不良欠陥が見つかった部品のみで済む。すなわち、それゆえ、不良欠陥が発生しても製造過程における廃棄ロスをより少なくできる。
【0050】
また、内燃機関には、内燃機関が用いられる車両あるいは車両以外の機器の要求仕様に応じて、出力、燃費、小型軽量性などの各種性能を満足させることが求められる。これに加えて出力や燃費などの内燃機関にとって特に重要な特性は、シリンダボア近傍の材質や構造により大きく左右される傾向にある。それゆえ、内燃機関には、各種性能を柔軟に満たすことができるように、設計自由度が高いこと、特に、内燃機関の中央部近傍(シリンダボア近傍)の設計自由度が高いことが重要である。
【0051】
一方、本実施形態の内燃機関の製造方法に用いられる連結シリンダ10は、その主要部が2種類の部材の組み合わせから構成される。すなわち、第一の連結シリンダ10Aは、その主要部がシリンダライナ40と連結部42との組み合わせから構成されており、第二の連結シリンダ10Bは、その主要部が連結シリンダ本体部50と被膜52との組み合わせから構成されている。したがって、これら2種類の部材の材質および形状の組み合わせを適宜変更することで、内燃機関が用いられる車両あるいは車両以外の機器の要求仕様に応じた各種性能を満足させることが容易である。これに加えて、内燃機関100全体についても、その主要部が、互いに分離独立した部材である連結シリンダ10とシリンダブロック本体60とから構成されるため、これら2種類の部材の材質および形状の組み合わせを適宜変更することで、内燃機関が用いられる車両あるいは車両以外の機器の要求仕様に応じた各種性能を満足させることが容易である。
【0052】
それゆえ、シリンダライナがシリンダブロックに鋳ぐるまれることで、両部材が一体不可分に形成された構造を持つ一般的な内燃機関や、複数のシリンダライナが一体成形され、かつ、一部材から構成されるシリンダライナの集合体を用いている特許文献1,2に開示された内燃機関と比べて、本実施形態の内燃機関の製造方法により製造される内燃機関100は、設計自由度が高い。したがって、内燃機関100は、様々な要求仕様に幅広く対応することが容易である。
【0053】
なお、内燃機関100は、特定の設計仕様に限定されるものでは無く、様々な要求仕様あるいは技術コンセプトに基づいて柔軟に設計することができる。内燃機関100の設計例としては、たとえば、基本的技術コンセプトとして以下に示す設計例が挙げられる。
【0054】
(設計例1)
a)内燃機関100に使用する連結シリンダ10:第一の連結シリンダ10A。
b)シリンダライナ40を構成する材料:連結部42に対して相対的に摺動特性(耐摩耗性、耐焼き付き性、低摩擦性)に優れた材料を使用する。
c)連結部42を構成する材料:シリンダライナ40を構成する材料に対して相対的に低密度(軽量)で、熱伝導性(放熱性)の高い材料を使用する。
この設計例1では、摺動特性、軽量性および放熱性に優れた内燃機関100を提供できる。
【0055】
(設計例2)
a)内燃機関100に使用する連結シリンダ10:第一の連結シリンダ10A。
b)連結部42を構成する材料:強度の高い材料を用いる。
この設計例2では、連結部42の強度が高くなる。このため、シリンダライナ40の薄肉化および隣り合う2つのシリンダボア20間の肉厚の薄肉化が容易になり、結果的に、内燃機関100の軽量化が図れる。あるいは、隣り合う2つのシリンダボア20間の肉厚を薄肉化にしない場合は、隣り合う2つのシリンダボア20間に冷却媒体用流路を設けた際に、第一の連結シリンダ10Aに必要な強度を確保しつつ、この冷却媒体用流路の容積の増大を図れる。また、エンジン燃焼による筒内圧増大に対するボア変形の抑制が可能になる。
【0056】
(設計例3)
内燃機関100に使用する連結シリンダ10として、第二の連結シリンダ10Bを用いる。
この設計例3では、摺動特性は、シリンダライナ40と比べて実質的に質量が無視できる程に小さい被膜52により確保できる。このため、内燃機関において、シリンダボアが配列された部分近傍の構造部分:すなわち、従来の一般的な内燃機関においてシリンダライナとシリンダライナを覆う鋳造部材とからなる部分や、図1〜3に例示したようなシリンダライナ40とシリンダライナ40の外周面40Aの全面を覆うように設けられた連結部42と有する第一の連結シリンダ10Aからなる部分と比べて、第二の連結シリンダ10Bからなる部分の質量は、大幅に小さくすることが容易である。それゆえ、内燃機関100の顕著な軽量化が図れる。
【0057】
次に、本実施形態の内燃機関の製造方法に用いられる連結シリンダ10およびシリンダブロック本体60について説明する。
【0058】
まず、第一の連結シリンダ10Aにおいて、2つ以上のシリンダライナ40と、連結部42とは一体不可分に形成されていてもよく、脱着可能に構成されていてもよい。また、連結部42は、図1図3に例示したようにシリンダライナ40の外周面40Aの全体を被覆するように設けられていてもよく、シリンダライナ40の外周面40Aの一部分のみを被覆するように設けられていてもよい。これらの態様の選択および組み合わせは、製造する内燃機関100の要求仕様に応じて適宜選択することができる。
【0059】
たとえば、a)金型内に、2つ以上のシリンダライナ40を配置した後、金型内に溶湯を流し込んで、2つ以上のシリンダライナ40を、鋳鉄やアルミニウム合金などの鋳造材料で鋳ぐるむ方法や、b)金型内に、2つ以上のシリンダライナ40を配置した後、金型内に溶融状態の樹脂材料を射出または注入する樹脂成形などにより、2つ以上のシリンダライナ40、連結部42とが一体不可分に形成された第一の連結シリンダ10Aを得ることができる。この場合、金型の形状を適宜選択することで、連結部42が、シリンダライナ40の外周面40Aの全体を被覆することもでき、シリンダライナ40の外周面40Aの一部分のみを被覆することもできる。
【0060】
また、2つ以上の円形の貫通穴が設けられると共に、各々の貫通穴の中心線が平行を成す連環状の形状を持つ連結部42の貫通穴にシリンダライナ40を嵌め込んで固定することで、2つ以上のシリンダライナ40と、連結部42とが脱着可能に構成された第一の連結シリンダ10Aを得ることもできる。この場合、たとえば、連結部42の中心線方向の長さを適宜選択することで、連結部42が、シリンダライナ40の外周面40Aの全体を被覆することもでき、シリンダライナ40の外周面40Aの一部分のみを被覆することもできる。
【0061】
但し、連結部42は、予め連環状に形成された形状を持つ部材を用いるよりも鋳造で形成されることが好ましい。この場合、第一の連結シリンダ10Aを製造する際に部品点数を削減できる。これに加えて、連結部42として予め連環状に形成された形状を持つ部材を用いる場合と比べて、連結部42が鋳造によりシリンダライナ40と一体不可分に形成した場合では、連結部42とシリンダライナ40との界面における伝熱抵抗を小さくできるため、内燃機関100の冷却性能を向上させることも容易である。
【0062】
なお、シリンダライナ40の肉厚は適宜選択できるが、一般的には1.5mm〜4.0mm程度である。また、連結シリンダ10のさらに好ましい形状・構造については後述する。
【0063】
一方、第二の連結シリンダ10Bについては、たとえば、連結シリンダ本体部50を鋳造により作製した後、連結シリンダ本体部50のシリンダボア20が設けられた内周面50Bを覆うように被膜52を成膜する。この被膜52の成膜には、溶射法など、公知の成膜方法が適宜利用できる。被膜52の厚さは適宜選択できるが、一般的には0.02mm〜0.2mm程度内である。この場合、たとえば、被膜52の成膜方法として溶射法を採用するときは、被膜52の厚さは0.1mm〜0.2mm程度が好ましく、被膜52の成膜方法としてPVD(Physical Vapor Deposition)法あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)法を採用するときは、被膜52の厚さは0.02mm〜0.03mm程度が好ましい。
【0064】
第一の連結シリンダ10Aにおいて、連結部42を構成する材料は、シリンダブロック本体60を構成する材料と同一の材料であってもよいが、シリンダブロック本体60を構成する材料と異なる材料であることが特に好ましい。同様に、第二の連結シリンダ10Bにおいて、連結シリンダ本体部50を構成する材料は、シリンダブロック本体60を構成する材料と同一の材料であってもよいが、シリンダブロック本体60を構成する材料と異なる材料であることが特に好ましい。
【0065】
なお、本願明細書において、「2種類の材料が互いに異なる」とは、a)アルミニウム合金とスチールとのように、各々の材料を構成する組成が根本的に異なる場合、b)同一組成系の材料においては、たとえば、2種類のアルミニウム合金であっても、一方がAl含有量が多いアルミニウム合金であり、他方のAl含有量が少ないアルミニウム合金といったように、定量的組成が異なる場合、c)同一組成系でかつ定量的組成も同一の材料においては、一方の材料と他方の材料とで、結晶性−アモルファス性の度合いや、結晶相の種類の違い、もしくはその他の組織構造の違いが存在する場合、あるいは、d)プラスチックと繊維強化プラスチックとのように、一方の材料と他方の材料とが同一の素材Xを含むものの、一方の材料が素材Xのみから構成される単一材料からなり、他方の材料が素材Xに加えてその他の素材Yも含む複合材料からなる場合、などが挙げられる。
【0066】
連結シリンダ10の主要部(第一の連結シリンダ10Aにおける連結部42、第二の連結シリンダ10Bにおける連結シリンダ本体部50)を構成する材料を、シリンダブロック本体60を構成する材料とは異なる材料とすることで、内燃機関100全体の設計自由度をより向上させることができる。このため、たとえば、下記(1)〜(3)に例示するような様々な仕様の内燃機関100を製造することが極めて容易となる。
(1)連結シリンダ10の主要部を構成する材料として、シリンダブロック本体60に対して相対的に剛性の高い材料を用いることで、シリンダブロック本体60を低コスト化・軽量化した仕様の内燃機関100。
(2)シリンダブロック本体60を構成する材料として、連結シリンダ10の主要部に対して相対的に熱伝導性の高い材料を用いることで、高負荷での冷却系の負担を減らした仕様の内燃機関100。
(3)シリンダブロック本体60を構成する材料として、連結シリンダ10の主要部に対して相対的に熱伝導性の低い材料を用いることで、低負荷および暖気中の冷却液温上昇を早めて燃費を改善した仕様の内燃機関100。
【0067】
連結部42あるいは連結シリンダ本体部50を構成する材料としては、たとえば、アルミニウム合金(好ましくは高剛性タイプのアルミニウム合金)、マグネシウム合金、スチールなどが挙げられ、シリンダブロック本体を構成する材料としては、アルミニウム合金、マグネシウム合金、樹脂などが挙げられる。
【0068】
また、シリンダライナ40を構成する材料としては、片状黒鉛鋳鉄などの鋳鉄材が挙げられ、被膜52を構成する材料としては、公知の各種硬質材料が制限無く利用できるが、たとえば、被膜52を溶射法により成膜する場合では、Fe系、WC系などが挙げられ、被膜52をPVD法あるいはCVD法で成膜する場合では、C系、Cr系などが挙げられる。また、被膜52の層構造も特に限定されず、たとえば、単層構造であってもよく、あるいは、異種材料もしくは異種結晶相を組み合わせた積層構造であってもよい。
【0069】
一方、本実施形態の内燃機関の製造方法に用いられるシリンダブロック本体60は、図6図8に例示したように、一端側にクランク室62が形成され、他端側にシリンダヘッドが組み付けられると共に、一端側から他端側へと貫通する中空部64が設けられ、中空部64に連結シリンダ10を嵌め合せて嵌合可能な構造を有するものであれば、その構造は特に限定されない。また、シリンダブロック本体60は、公知の方法を適宜利用して製造できるが、鋳造あるいは樹脂成形により製造することが好ましい。なお、鋳造、樹脂成形以外のその他の製造法の具体例としては、たとえば、原料粉末を用いたホットプレス処理あるいはHIP(Hot Isostatic Pressing)処理や、原料粉末からなる層の積層とレーザー焼結とを交互に繰り返すレーザー焼結処理などが挙げられる。ここで、鋳造あるいは樹脂成形によりシリンダブロック本体60を製造する場合、以下に説明するメリットがある。
【0070】
まず、鋳造により部材を製造する場合、金型内に注入された溶湯が冷却される過程で体積収縮が生じる。このため、部材の体積が大きくなるほど鋳巣などの欠陥が発生しやすくなる。一方、シリンダライナをアルミニウム合金などで鋳ぐるむことによりシリンダブロックを形成する従来の内燃機関の製造方法と比べて、本実施形態の内燃機関の製造方法では、別箇独立して製造された連結シリンダ10と、シリンダブロック本体60とを機械的な嵌め合せを行うことで内燃機関100を製造する。このため、従来の内燃機関のシリンダブロックの体積と比べると、シリンダブロック本体60の体積を、大幅に小さくできる。それゆえ、シリンダブロック本体60を鋳造で製造する場合、体積収縮に起因する鋳巣などの欠陥の発生を抑制することが容易になる。これに加えて、従来の内燃機関のシリンダブロックを鋳造する場合と比べて、これら欠陥を抑制するための各種対策(たとえば、鋳造により製造される部材の肉厚を出来る限り一定にするなど)を積極的に採用しなくてもよくなる。したがって、シリンダブロック本体60の形状・構造・鋳造プロセスに関して設計自由度をより高くすることが可能となる。たとえば、従来の内燃機関のシリンダブロックに設けられる冷却液ジャケットと比べて、シリンダブロック本体60に冷却液ジャケットを設ける場合、あるいは、シリンダブロック本体60の中空部64の内周面64Sと連結シリンダ10の外周面10Sとの間に冷却液ジャケットを設ける場合、他端側からの深さがより浅い冷却液ジャケットを形成することが極めて容易である。なお、これらの点は、金型内に射出または注入された溶融状態の樹脂材料が冷却される過程で体積収縮が生じる樹脂成形によりシリンダブロック本体60を製造する場合においても実質同様である。
【0071】
なお、本実施形態の内燃機関の製造方法では、嵌合工程以外にも、シリンダブロック本体60に連結シリンダ10が取り付けられた後にさらにシリンダヘッドなどの各種部品を組み付ける工程や、シリンダボア20の内周面を、ホーニング加工、ラッピング加工、ディンプル加工などの仕上げ加工によって、摺動面を形成する摺動面形成工程、あるいは、連結シリンダ10の互いに隣り合う2つのシリンダボア20の間に冷却液用通路を形成する工程など、各種工程を必要に応じて適宜実施することができる。
【0072】
ここで、本願明細書において、「摺動面」とは、完成した状態の内燃機関100を稼働させた際に、ピストンあるいはピストンの外周面に設けられた溝に装着されたピストンリングと接触摺動する面を意味する。なお、この「摺動面」とは、耐焼き付き性の向上・改善およびオイル消費量の抑制などを目的として仕上げ加工された面である。また、内燃機関100の製造プロセスにおいて、一旦「摺動面」の形成が完了した後は、この「摺動面」に対しては、さらなる仕上げ加工は実施されない。
【0073】
「摺動面」は、シリンダボア20の内周面に対して仕上げ加工を1回のみ実施することで形成されてもよく、複数回の仕上げ加工を実施することで形成されてもよい。なお、「摺動面」が複数回の仕上げ加工を実施することで形成される場合、「摺動面」とは最終回の仕上げ加工を実施した後に形成された面のみを意味し、最終回の仕上げ加工を実施する工程を「摺動面形成工程」という。また、最終回の仕上げ加工以外の仕上げ加工(1回目の仕上げ加工〜最終回−1回目の仕上げ加工)を実施する工程は「粗加工面形成工程」という。
【0074】
「摺動面」の表面形態については仕上げ加工方法により様々であり、特に限定されるものではないが、たとえば、表面形状に関しては、クロスハッチ(網状の細かい筋もしくは溝、あるいは、斜交平行線状の細かい筋もしくは溝が形成された面)などが例示でき、表面粗さに関しては、算術平均粗さRaで0.1μm〜0.8μm程度が例示できる。
【0075】
シリンダボア20の内周面20Bを仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程は、内燃機関100の製造プロセスにおいて、任意のタイミングで実施できるが、大別すると、(I)嵌合工程の前に摺動面形成工程を実施するか、あるいは、(II)嵌合工程の後に摺動面形成工程を実施する。なお、上記のプロセス(I)、(II)において、必要に応じて、嵌合工程と、摺動面形成工程との間に他の工程を実施してもよい。
【0076】
(I)嵌合工程の前に摺動面形成工程を実施する場合としては、たとえば、以下の3つの態様が挙げられる。まず、連結シリンダ10が第一の連結シリンダ10Aである場合、(Ia)シリンダライナ40の内周面40Bを仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程を、嵌合工程の前のみにおいて実施したり、あるいは、(Ib)シリンダライナ40の内周面40Bに被膜を形成する被膜形成工程を実施した後に、この被膜の表面を仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程を実施し、かつ、摺動面形成工程を嵌合工程の前のみにおいて実施することができる。また、連結シリンダ10が、第二の連結シリンダ10Bである場合、(Ic)連結シリンダ本体部50のシリンダボア20が設けられた内周面50Bを被覆する被膜52の表面52Bを仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程を、嵌合工程の前のみにおいて実施することができる。
【0077】
また、(II)嵌合工程の後に摺動面形成工程を実施する場合としては、たとえば、以下の3つの態様が挙げられる。まず、連結シリンダ10が第一の連結シリンダ10Aである場合、(IIa)シリンダライナ40の内周面40Bを仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程を、嵌合工程の後のみにおいて実施したり、あるいは、(IIb)シリンダライナ40の内周面40Bに被膜を形成する被膜形成工程を実施した後に、この被膜の表面を仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程を実施し、かつ、摺動面形成工程を嵌合工程の後のみにおいて実施することができる。また、連結シリンダ10が、第二の連結シリンダ10Bである場合、(IIc)連結シリンダ本体部50のシリンダボア20が設けられた内周面50Bを被覆する被膜52の表面52Bを仕上げ加工することにより摺動面を形成する摺動面形成工程を、嵌合工程の後のみにおいて実施することができる。
【0078】
ここで、摺動面が、シリンダボア20の内周面に対して複数回の仕上げ加工を実施することで形成される場合、粗加工面形成工程は、嵌合工程の前に実施してもよく、嵌合工程の後に実施してもよく、嵌合工程の前に一部を実施して嵌合工程の後に残りを実施してもよい。
【0079】
なお、摺動面形成工程は、シリンダライナを鋳ぐるむことでシリンダブロックを形成する従来の一般的な内燃機関においては、シリンダライナを鋳ぐるむことでシリンダブロックを形成した後に行われている。このため、摺動面形成工程を実施した後に、摺動面の検査を行い、検査結果が不良判定となった場合には、シリンダライナが鋳ぐるまれたシリンダブロック全体を廃棄処分する必要がある。
【0080】
これに対して、(I)嵌合工程の前に摺動面形成工程を実施する場合、連結シリンダ10単体の状態で摺動面形成工程を実施することになる。このため、摺動面形成工程を実施した後に、摺動面の検査を行い、検査結果が不良判定となった場合、連結シリンダ10のみを廃棄処分すればよい。それゆえ、不良欠陥が発生しても製造過程における廃棄ロスをより少なくできる。
【0081】
なお、(I)嵌合工程の前に摺動面形成工程を実施する場合、連結シリンダ10単体に対して、そのまま摺動面形成工程を実施してもよいが、連結シリンダ10を、シリンダブロック本体60およびシリンダヘッドを模擬した治具に組み付けた状態で摺動面形成工程を実施してもよい。シリンダブロック本体60に連結シリンダ10が嵌合された状態の内燃機関100にさらにシリンダヘッドを組み付ける場合、シリンダヘッドの組付時に、シリンダボア20が変形し易くなる。このため、このような変形も考慮して、治具を用いて摺動面形成工程を行う場合、摺動面の加工精度をより高めることが容易になる。
【0082】
摺動面形成工程を、嵌合工程の前に実施するか後に実施するかは、内燃機関100の製造プロセス全体や、内燃機関100の仕様などに応じて適宜選択することができる。たとえば、内燃機関100の製造に、寸法精度が高く、高強度で変形し難い連結シリンダ10やシリンダブロック本体60を用いたり、シリンダヘッドの組み付け時にシリンダボア20の変形を招くような押圧力が加わりにくい場合などでは、(I)嵌合工程の前に摺動面形成工程を実施し、逆の場合は、(II)嵌合工程の後に摺動面形成工程を実施してもよい。
【0083】
また、製造する内燃機関100のシリンダボア20周辺部の冷却能力を向上させたい場合、連結シリンダ10の互いに隣り合う2つのシリンダボア20の間に冷却液用通路を形成する冷却液用通路形成工程を実施することが好ましい。この場合、冷却液用通路形成工程は、嵌合工程の後に実施してもよいが、嵌合工程の前に実施することがより好ましい。なお、いずれのケースにおいても、必要に応じて、冷却液用通路形成工程と嵌合工程との間に他の工程を実施してもよい。なお、冷却液用通路形成工程では、一方向に順次掘り進むことで直線的な通路を形成する加工手段(たとえば、ドリル、ウォータージェット、レーザなど)を用いて冷却液用通路を形成する。
【0084】
それゆえ、(i)嵌合工程の後に冷却液用通路形成工程を実施する場合、あるいは、(ii)シリンダライナを鋳ぐるむことでシリンダブロックを形成する従来の内燃機関の製造方法において冷却液用通路形成工程を実施する場合と比べて、嵌合工程の前に冷却液用通路形成工程する場合、冷却液用通路の加工形成の自由度をより大きくできる。これは、上記(i)および(ii)に示す場合では、冷却液用通路を形成する場合、冷却液用通路を形成するためにシリンダヘッド側のみからしか掘り進むことができないのに対して、嵌合工程の前に冷却液用通路形成工程する場合では、シリンダヘッド側(連結シリンダ10のシリンダヘッド側の端面側)およびシリンダヘッド側以外(連結シリンダ10の外周面10S)のいずれの側からでも掘り進むことができるためである。それゆえ、シリンダボア20周囲の冷却設計を行う場合に、より理想的な設計を実現することが容易になる。たとえば、上記(i)および(ii)に示すケースでは通常は不可能な冷却用通路の形成、すなわち、連結シリンダ10のシリンダヘッド側の端面と平行に伸びる冷却用通路を形成することも可能となる。
【0085】
また、冷却液用通路の加工ミスが生じるケースでは、冷却液用通路形成工程を嵌合工程の前後のいずれのタイミングで実施する場合においても、上記(ii)に示す場合と比較すると、廃棄処分の対象は連結シリンダ10のみでよい。このため、加工ミスによる廃棄ロスを小さくすることもできる。
【0086】
なお、冷却液用通路は、互いに隣り合う2つのシリンダボア20の間に形成されればよいが、第一の連結シリンダ10Aにおいては、通常隣り合う2つのシリンダライナ40の外周面40Aの間の領域(図3中に示す領域M1)に形成され、第二の連結シリンダ10Bにおいては、通常、隣り合う2つのシリンダボア20の内周面20Bを構成する被膜52の外周側面52Aの間の領域(図5中に示す領域M2)に形成される。
【0087】
<内燃機関、連結シリンダおよびシリンダブロック本体>
次に、本実施形態の内燃機関の製造方法により製造される内燃機関100、ならびに、これに用いる連結シリンダ10およびシリンダブロック本体60のより好適な形状・構造について以下に説明する。本実施形態の内燃機関の製造方法により製造される内燃機関100は、図7および図8に例示したように、連結シリンダ10と、シリンダブロック本体60とを少なくとも備え、連結シリンダ10が、シリンダブロック本体60の中空部64に脱着可能に嵌め合された構造を有する。
【0088】
ここで、本実施形態の内燃機関100において、シリンダボア20の外周側を囲むように設けられる冷却液ジャケットは、(i)連結シリンダ10内(連結シリンダ10の外周面10Sよりも内側)、(ii)連結シリンダ10の外周面10Sと、シリンダブロック本体60の中空部の内周面64Sとの間、あるいは、(iii)シリンダブロック本体60内(中空部64の内周面64Sよりも外周側)、のいずれかに設けることができる。しかしながら、上記(i)に示すケースでは連結シリンダ10に冷却液ジャケットを設けることになるため、連結シリンダ10の構造が複雑化し、上記(iii)に示すケースではシリンダブロック本体60に冷却液ジャケットを設けることになるため、シリンダブロック本体60の構造が複雑化する。このため、冷却液ジャケットは、連結シリンダ10と、シリンダブロック本体60との間に設けることが好ましい。また、構造の複雑化による製造性の低下を招きやすいことから、連結シリンダ10内には冷却液ジャケットを設けないことが好ましい。
【0089】
これに対して、上記(ii)に示すケースでは、シリンダライナを鋳ぐるむことで、シリンダブロック内に冷却液ジャケットを備えたシリンダブロックを形成した従来の内燃機関と比べて、内燃機関100の製造に際して複雑な形状の金型を使用しなくてもよくなる。このため、内燃機関100の製造性が向上する。
【0090】
冷却液ジャケットを、連結シリンダ10の外周面10Sと、シリンダブロック本体60の中空部64の内周面64Sとの間に設ける場合、図8に例示したように、連結シリンダ10の外周面10Sの他端側(シリンダヘッド側)と、シリンダブロック本体60の中空部64の内周面64Sの他端側(シリンダヘッド側)との間に冷却液ジャケット70を設ける。また、連結シリンダ10の外周面10Sの一端側と、シリンダブロック本体60の中空部64の内周面64Sの一端側とは、互いに接触することで、連結シリンダ10が、シリンダブロック本体60の中空部64の一端側の部分(嵌合部64J)において脱着可能に嵌め合せさられる部分となる。
【0091】
上記(i)〜(iii)のいずれのケースにおいても、冷却液ジャケット70の深さD(Z方向の長さ)は特に制限されず内燃機関100の設計仕様に応じて適宜選択できるが、連結シリンダ10の中心線C方向の全長Lを基準とした場合、たとえば、深さDを全長Lの1/6倍〜5/6倍程度の範囲内で適宜選択できる。たとえば、シリンダボア20のシリンダヘッド側近傍の部分を選択的・集中的に冷却する仕様の内燃機関100であれば、深さDを全長Lの1/6倍〜1/2倍の範囲としたり、1/6倍〜1/3倍の範囲としたり、あるいは、1/6倍〜1/4倍の範囲とすることができる。なお、深さDが全長Lの1/2倍以下の浅い冷却液ジャケット70の形成が容易である観点からは、上記(i)〜(iii)のうち、(ii)が最も好適である。
【0092】
なお、冷却液ジャケット70内の冷却液(水等)が、クランク室62側へと漏れることが無いように、嵌合部64Jの内周面64Sと、嵌合部64Jの内周面64Sに対向する連結シリンダ10の外周面10Sとの間には、たとえば、Oリングなどのシール部材が配置される。また、嵌合部64Jの内周面64S、および、嵌合部64Jの内周面64Sに対向する連結シリンダ10の外周面10Sから選択される少なくとも一方の面には、必要に応じて、周方向に連続する溝を設け、この溝にシール部材を装着してもよい。
【0093】
また、シリンダボア20のシリンダヘッド側の強度向上および変形抑制、ならびに、高過給時の内燃機関100の信頼性を向上させるために、連結シリンダ10の外周面10Sのうち、他端側の外周面10Sの少なくとも一部に突出部を設け、この突出部の先端部を、シリンダブロック本体60の中空部64の他端側の内周面64Sと密着させてもよい。また、同様の観点からは、シリンダブロック本体60の中空部64の他端側の内周面64Sの少なくとも一部に突出部を設けることもできる。あるいは、図7および図8に例示したように、連結シリンダ10の他端側の外周面10Sと、シリンダブロック本体60の中空部64の他端側の内周面64Sとの間に、連結シリンダ10とシリンダブロック本体60とを互いに固定する固定部材80を設けてもよい。なお、連結シリンダ10の製造がより容易となる観点からは、連結シリンダ10の外周面10Sあるいはシリンダブロック本体60の内周面64Sに突出部を設けるよりも、固定部材80を用いる方がより望ましい。
【0094】
固定部材80を用いる場合、固定部材80が所定の位置からずれないように、連結シリンダ10の他端側の外周面10Sには、図1図2図4および図8に例示したように溝12を設け、シリンダブロック本体60の中空部64の他端側の内周面64Sにも、図6および図8に例示したように連結シリンダ10の外周面10Sに設けられた溝12に対応する位置に溝66を設けてもよい。この場合、固定部材80の一端を溝12に嵌め込み、他端を溝66に嵌め込むことで、連結シリンダ10の外周面10Sと、シリンダブロック本体60の中空部64の内周面64Sとの間に固定部材80を配置することができる。なお、溝12は予め連結シリンダ10に形成されており、溝66も予めシリンダブロック本体60に形成されていてもよい。しかしながら、溝12が形成されていない連結シリンダ10と、溝66が形成されていないシリンダブロック本体60とを嵌合した後に、溝12、66を形成することが好ましい。
【0095】
本実施形態の内燃機関の製造方法に用いられる連結シリンダ10は、第一の連結シリンダ10Aについては、2つ以上のシリンダライナ40と、2つ以上のシリンダライナ40を互いに連結する連結部42とを含むものであればその形状・構造は特に限定されず、第二の連結シリンダ10Bについては、2つ以上のシリンダボア20が設けられた連結シリンダ本体部50と、連結シリンダ本体部50のシリンダボア20が設けられた内周面50Bを被覆する被膜52とを含むものであればその形状・構造は特に限定されない。同様に、シリンダブロック本体60も、一端側(Z2側)にクランク室62が形成され、他端側(Z1側)にシリンダヘッドが組み付けられると共に、一端側から他端側へと貫通する中空部64が設けられたものであればその形状・構造は特に限定されない。
【0096】
一方、連結シリンダ10およびシリンダブロック本体60は、これらを用いて製造された内燃機関100の優れたメンテナンス性、優れたリサイクル性および設計自由度の高さを両立させると共に、さらに製造しやすい形状・構造をさらに有していることが好ましい。しかしながら、連結シリンダ10およびシリンダブロック本体60は、両部材を組み合わせて内燃機関100を製造するために用いられる。このため、連結シリンダ10の製造性のみを考慮して連結シリンダ10の形状・構造を決定しても、連結シリンダ10と組み合わせて用いるシリンダブロック本体60の形状・構造が複雑化してシリンダブロック本体60の製造性が低下したり、さらには、内燃機関100の製造性が低下してしまうこともある。また、この点は、シリンダブロック本体60の製造性のみを考慮してシリンダブロック本体60の形状・構造を決定する場合も同様である。したがって、本発明者らは、これらの点を考慮して、連結シリンダ10およびこれと組み合わせて用いるシリンダブロック本体60の形状・構造として、以下に説明する形状・構造が好適であることを見出した。
【0097】
まず、第一の連結シリンダ10Aについては、図1および図3中に示す符号IX−IX間の断面構造(YZ断面構造)を図示した図9に例示したように2つ以上のシリンダライナ40と、2つ以上のシリンダライナ40を互いに連結する連結部42とを含み、各々のシリンダライナ40のボア径Dbを拡径した連環状の外周形状を有する。そして、各々のシリンダライナ40の中心線C方向において、シリンダヘッド側近傍から中央部近傍までの外周面(第一領域10S1)における各々のシリンダライナ40の中心線Cを基準とする外径D1が、クランク室側近傍の外周面(第二領域10S2)における各々のシリンダライナ40の中心線Cを基準とする外径D2よりも大きく、かつ、第一領域10S1と、第二領域10S2との間には、外周方向と平行かつ連続する段差14が形成されていることが好ましい。
【0098】
また、第二の連結シリンダ10Bについては、図5中に示す符号X−X間の断面構造(YZ断面構造)を図示した図10に例示したように2つ以上のシリンダボア20が設けられた連結シリンダ本体部50と、連結シリンダ本体部50のシリンダボア20が設けられた内周面50Bを被覆する被膜52とを含み、各々のシリンダボア20のボア径Dbを拡径した連環状の外周形状を有する。そして、各々のシリンダボア20の中心線C方向において、シリンダヘッド側近傍から中央部近傍までの外周面(第一領域10S1)における各々のシリンダボア20の中心線Cを基準とする外径D1が、クランク室側近傍の外周面(第二領域10S2)における各々のシリンダボア20の中心線Cを基準とする外径D2よりも大きく、かつ、第一領域10S1と、第二領域10S2との間には、外周方向と平行かつ連続する段差14が形成されていることが好ましい。なお、図10に示す第二の連結シリンダ10Bの外周形状は、図1に示す第一の連結シリンダ10Aの外周形状と同様である。
【0099】
さらに、シリンダブロック本体60については、中空部64の開口形状が、図1図9および図10に例示した連結シリンダ10の外周形状に対応する連環状であることが好ましい。具体的には、図6および図8に例示したように、中空部64の内周面64Sには、周方向に連続する第一の段差68Aと、周方向に連続しかつ第一の段差68Aよりも一端側(クランク室側)に設けられた第二の段差68Bと、を有し、第一の段差68Aの他端側(シリンダヘッド側)の内周面64S1における中空部64の開口幅W1と、第一の段差68Aの一端側(クランク室側)かつ第二の段差68Bの他端側(シリンダヘッド側)の内周面64S2における中空部64の開口幅W2と、第二の段差68Bの一端側(クランク室側)の内周面64S3における中空部64の開口幅W3とが、W1>W2>W3なる関係を満たすことが好ましい。開口幅W1、W2、W3は、中空部64の開口形状の短手方向(Y方向)の開口幅および長手方向(X方向)の開口幅を問わず、任意の方向における開口幅を意味する。すなわち、短手方向(Y方向)および長手方向(X方向)を問わずW1>W2>W3なる関係を満たすことが好ましい。なお、図8中に図示される開口幅W1sm、W2sm、W3smは、中空部64の開口形状の短手方向(Y方向)おける最大開口幅を意味し、それぞれ、開口幅W1、W2、W3に対応している。また、開口幅W2sm、W3smは、それぞれ、連結シリンダ10の外径D1、D2に等しい
【0100】
ここで、内周面64Sに第一の段差68Aおよび第二の段差68Bが設けられたシリンダブロック本体60の中空部64に、外周面10Sに段差14が設けられた連結シリンダ10を嵌め合せた場合、中心線C方向において、シリンダブロック本体60の内周面64Sに設けられた第二の段差68Bと連結シリンダ10の外周面10Sに設けられた段差14とが一致するように嵌め合せされる。同時に、第一の段差68Aよりもクランク室側では、シリンダブロック本体60の内周面64S2と連結シリンダ10の外周面10S(の第一領域10S1)とが直接密着あるいはシール部材を介して密着すると共に、シリンダブロック本体60の内周面64S3と連結シリンダ10の外周面10S(の第二領域10S2)とが直接密着あるいはシール部材を介して密着する。すなわち、連結シリンダ10の外周面10Sのうち、第一領域10S1の第二領域10S2側の部分、および、第二領域10S2が、シリンダブロック本体60の嵌合部64Jに対応する嵌合部分を形成する。このため、第一の段差68Aよりもシリンダヘッド側において、シリンダブロック本体60の内周面64S1と連結シリンダ10の外周面10S(の第一領域10S1)との間に形成される冷却液ジャケット70内の冷却液が、クランク室62側に漏れるのを防ぐことができる。
【0101】
また、シリンダボア20内およびシリンダボア20近傍の冷却特性を支配する冷却液ジャケット70の容量および中心線C方向における冷却液ジャケット70の形成位置については、たとえば、シリンダブロック本体60側に着目した場合、(1)最大開口幅W1smの大きさおよび(2)中心線C方向における第一の段差68Aの形成位置を選択することにより容易に調整できる。そして、上記(1)および(2)に示すシリンダブロック本体60の寸法形状の変更は、シリンダブロック本体60が鋳造あるいは樹脂成形により製造される場合においても極めて容易である。シリンダブロック本体60を、体積収縮による不良欠陥が生じやすい鋳造あるいは樹脂成形により製造する場合であっても、シリンダブロック本体60は、シリンダライナを鋳ぐるんで形成される従来のシリンダブロックよりも体積容量が非常に小さいため、これらの不良欠陥が生じにくいためである。
【0102】
シリンダブロック本体60側に設けられる第二の段差68Bに対応する位置に設けられる段差14は、中心線C方向に対して外周面10Sの適当な位置に設けることができる。しかしながら、段差14は、連結シリンダ10の中心線C方向のクランク室62側の端面を基準位置(位置0)とし、シリンダヘッド側の端面を位置Lとした場合、0を超え1/2L以下の範囲に設けることが好ましく、1/6L以上3/7L以下の範囲に設けることがより好ましく、1/6L以上1/3L以下の範囲に設けることがさらに好ましい。段差14を1/2Lを超える位置に設けた場合、シリンダブロック本体60側に設けられる第一の段差68Aを、よりシリンダヘッド側に近い位置に設けなければならなくなる。このため、中心線C方向において、第一の段差68Aが設けられる範囲がより狭くなり、結果的に、内燃機関100の要求仕様に合わせて、冷却液ジャケット70の深さDを設計変更により深くしたりより浅くしたりできるマージンが小さくなる。
【0103】
なお、連結シリンダ10の外周形状は、基本的に、外周面10Sを第一領域10S1と第二領域10S2とに分割する段差14を設けたシンプルな形状であることが好ましく、必要に応じて、固定部材80を嵌め込むための溝12や、シール部材を装着するための溝を設けてもよい。
【0104】
一方、連結シリンダ10の外周面10Sには、必要であれば、外周面10Sから突出する突出部を設けることもできるし、連結シリンダ10の外周面10Sには、第一領域10S1および第二領域10S2のいずれであっても、突出部を設けなくてもよい。
【0105】
外周面10Sに突出部を設けない場合は、以下に説明するメリットがある。すなわち、外周面10Sにフランジなどの突出部を設けた場合、連結シリンダ10の取り扱い時あるいは保管時に、不注意などにより、連結シリンダ10を他の部材にぶつけた際に、突出部が破壊され易くなる。しかしながら、外周面10Sに突出部を設けなければ、このような破損を抑制できる。
【0106】
これに加えて、外周面10Sに突出部が設けられていると、第一の連結シリンダ10Aの連結部42あるいは第二の連結シリンダ10Bの連結シリンダ本体部50を鋳造により製造する場合、外周面10Sに突出部が設けられていると、金型の形状が若干複雑になる上に製造性も多少低下する。また、第一領域10S1に突出部を設けた場合は、シリンダブロック本体60の(1)最大開口幅W1smの大きさおよび(2)中心線C方向における第一の段差68Aを適宜見直すことで、冷却液ジャケット70の容量および中心線C方向における冷却液ジャケット70の形成位置を設計し直すことがより困難になる。しかしながら、外周面10Sに突出部を設けなければ、このような問題を抑制できる。
【0107】
一方、上述したメリットは失われるものの、外周面10Sの第一領域10S1に突出部を設けることで、内燃機関100の冷却制御をより精密に行うこともできる。この場合、図11に例示する第一の連結シリンダ10A2(10A、10)のように、第一領域10S1には、第一領域10S1をシリンダヘッド側(Z1方向側)の領域とクランク室側(Z2方向側)の領域とに分断する鍔部16を設けることが好ましい。ここで、図11に示す例では、鍔部16は、外周方向に沿って連続的に形成されると共に、シリンダライナ40の中心線C方向に対する配置位置が外周方向のいずれの位置においても同一である連環形状を成している。なお、図11に示す第一の連結シリンダ10A2は、第一領域10S1に鍔部16が設けられている点を除けば、図9に示す第一の連結シリンダ10A1と同様の構造を有する部材である。また、図11に示したものと同様の鍔部16は、図10に示す第二の連結シリンダ10B(10)の第一領域10S1にも設けることができる。
【0108】
第一領域10S1をシリンダヘッド側(Z1方向側)の領域とクランク室側(Z2方向側)の領域とに分断する鍔部16が設けられた連結シリンダ10を用いた内燃機関100では、鍔部16により冷却液ジャケット70が、シリンダライナ40あるいはシリンダボア20の中心線C方向に対して分割された構造を有する。図12および図13は、第一領域10S1に鍔部16が設けられた連結シリンダ10を備えた内燃機関100の一例を示す模式断面図である。ここで、図12に示す内燃機関100B(100)は、図8中に示される第一の連結シリンダ10A1を、図11に示す鍔部16を有する第一の連結シリンダ10A2に置換した以外は、図8に示す内燃機関100Aと同様の構造を有するものである。また、図13に示す内燃機関100C(100)は、(i)図8中に示される第一の連結シリンダ10A1を、図11に示す鍔部16を有する第一の連結シリンダ10A2に置換し、かつ、(ii)図8中に示されるシリンダブロック本体60Aを、シリンダブロック本体60Aの内周面64S1に周方向に連続する第三の段差68Cを設けた構造を有するシリンダブロック本体60Bに置換した以外は、図8に示す内燃機関100Aと同様の構造を有するものである。
【0109】
なお、第三の段差68Cは、鍔部16のクランク室側(Z2方向側)の側面に対応する位置に設けられている。また、内周面64S1は、第三の段差68Cを境界線として、第三の段差68Cよりもシリンダヘッド側(Z1方向側)のシリンダヘッド側領域64S1Aと、第三の段差68Cよりもクランク室側(Z2方向側)のクランク室側領域64S1Bと、の2つの領域に分断されている。そして、シリンダヘッド側領域64S1Aに対してクランク室側領域64S1Bが、相対的により内周側に位置している。なお、Y方向において、図13に示すシリンダヘッド側領域64S1Aは、図12に示すシリンダブロック本体60Aの内周面64S1と面一を成す位置に設けられている。但し、図13に示すシリンダヘッド側領域64S1Aは、クランク室側領域64S1Bに対して相対的に外周側に位置する限り、図12に示すシリンダブロック本体60Aの内周面64S1と面一を成す位置に設けられていなくてもよい。
【0110】
図12および図13に示す内燃機関100B、100Cでは、第一の連結シリンダ10Aの外周面10S(第一領域10S1)と、シリンダブロック本体60A、60Bの中空部64の内周面64S1との間に形成される冷却液ジャケット70が、鍔部16によりシリンダヘッド側の部分(シリンダヘッド側冷却液ジャケット70A)と、クランク室側の部分(クランク室側冷却液ジャケット70B)とに分割されている。このため、図12および図13に示す内燃機関100B、100Cは、図8に示す内燃機関100Aと比べて、冷却液ジャケット70内を流れる冷却液の流速、流量および水温を、シリンダヘッド側冷却液ジャケット70Aと、クランク室側冷却液ジャケット70Bとで、個別に制御できる。したがって、内燃機関100B、100Cでは、シリンダボア20の冷却液ジャケット70で囲まれた部分のうち、シリンダヘッド側寄りの部分と、クランク室側寄りの部分との温度制御を個別に行うことが極めて容易である。そして、このような特性を利用すれば、たとえば、以下の(a)〜(c)に例示するような様々なメリットを容易に実現できる。
【0111】
(a)シリンダボア20の冷却液ジャケット70で囲まれた部分のうち、シリンダヘッド側寄りの部分と、クランク室側寄りの部分との温度を制御することにより、内燃機関100B、100Cの運転中におけるシリンダボア20の円筒度を向上させる。
(b)シリンダボア20の冷却液ジャケット70で囲まれた部分のうち、クランク室側寄りの部分に対して、シリンダヘッド側寄りの部分の冷却効率を相対的に向上させることで、シリンダヘッド側寄りのシリンダボア20の内壁面(摺動面)の温度を下げて、耐ノック性を向上させて燃費を改善する。
(c)内燃機関100B、100Cの運転状況に応じて、最適な出力、燃費等が得られるように、シリンダヘッド側冷却液ジャケット70Aの冷却液の流速、流量および水温と、クランク室側冷却液ジャケット70Bの冷却液の流速、流量および水温とを、個別に設定する。
【0112】
なお、図12に示す内燃機関100Bでは、鍔部16の頂面は、シリンダブロック本体60Aの内周面64S1と接触している。また、図13に示す内燃機関100Cでは鍔部16の頂面が、シリンダブロック本体60Aの内周面64S1のシリンダヘッド側領域64S1Aと接触すると共に、鍔部16のクランク室側(Z2方向側)の側面の頂面側の部分が、第三の段差68Cの段差面部分と接触している。この場合、鍔部16の頂面と内周面64S1との界面にOリングなどのシール部材を設けて、鍔部16と内周面64S1との界面を完全にシールすることが好ましい。Oリングは、たとえば、鍔部16の頂面の周方向に沿って溝を設け、この溝に装着して用いたり、図13に示す内燃機関100Cであれば、第三の段差68Cの段差面部分の周方向に沿って溝を設け、この溝に装着して用いることができる。
【0113】
また、冷却液の流速、流量および水温を、シリンダヘッド側冷却液ジャケット70Aと、クランク室側冷却液ジャケット70Bとで、個別に制御する際の制御性が大きく損なわれない範囲であれば、シール部材を省略してもよく、あるいは、鍔部16の頂面と内周面64S1との間には多少の隙間が形成されていてもよい。また、鍔部16の周方向の一部には、必要に応じて、中心線C方向に貫通し、シリンダヘッド側冷却液ジャケット70Aとクランク室側冷却液ジャケット70Bを接続する流路を設けてもよい。
【0114】
なお、鍔部16は、冷却液ジャケット70を、シリンダヘッド側冷却液ジャケット70Aと、クランク室側冷却液ジャケット70Bとに分割できるのであれば、中心線C方向に対して第一領域10S1の任意の位置に設けることができる。しかしながら、中心線C方向の第一領域10S1のシリンダヘッド側の端を基準位置0とし、中心線C方向の第一領域10S1の全長をL1とした場合、鍔部16は、0.2×L1〜0.5×L1程度の範囲内に設けることが好ましい。同様に、中心線C方向の連結シリンダ10のシリンダヘッド側の端を基準位置0とし、中心線C方向の連結シリンダ10の全長をLとした場合、鍔部16は、0.1×L〜0.3×L程度の範囲内に設けることが好ましい。
【0115】
また、第一領域10S1に設けられる鍔部16の形状および形成位置は、第一領域10S1をシリンダヘッド側(Z1方向側)の領域とクランク室側(Z2方向側)の領域とに分断することができる限り、図11図13に示す例のみに限定されるものでは無い。鍔部16は、外周方向の全域に渡って外周方向と平行を成すように必ず形成されていなくてもよく、外周方向の一部の領域において、外周方向と交差したり、あるいは、外周方向と直交する(言い換えれば、シリンダライナ40あるいはシリンダボア20の中心線C方向と平行を成す)ように形成されていてもよい。
【0116】
たとえば、連結シリンダ10の第一領域10S1を、各々のシリンダライナ40あるいは各々のシリンダボア20の中心線Cを含む平面(XZ平面)を分割境界面として2分割したと仮定する。この場合、2分割された一方の側(Y1方向側)の第一領域10S1には、外周方向と平行を成すように連続する半連環形状の鍔部16を相対的によりクランク室側に近い位置に形成し、2分割された他方の側(Y2方向側)の第一領域10S1には、外周方向と平行を成すように連続する半連環形状の鍔部16を相対的によりシリンダヘッド側に近い位置に形成できる。そして、一方の半連環形状の鍔部16の両端部分と、他方の半連環形状の鍔部16の両端部分とは、各々の端部同士が中心線Cと平行な方向に連続する鍔部16により接続される。このような構成を採用すれば、シリンダヘッド側冷却液ジャケット70Aの深さと、クランク室側冷却液ジャケット70Bの深さとの比率を、分割境界面の一方側と他方側とで異なるものとすることができる。このような構造は、たとえば、分割境界面の一方側と他方側とで非対称な冷却制御を行いたい場合などにおいて有効である。
【0117】
また、鍔部16は、第一領域10S1をシリンダヘッド側(Z1方向側)の領域とクランク室側(Z2方向側)の領域とに分断する第一部分に加えて、第一領域10S1のうち冷却液ジャケット70の側壁面を構成する部分を外周方向に対して分断する第二部分を有していてもよい。このような鍔部16を有する連結シリンダ10を備えた内燃機関100では、第一部分によって、冷却液ジャケット70を、シリンダライナ40あるいはシリンダボア20の中心線C方向に対して分割できる。これに加えて、第二部分によって、冷却液ジャケット70を、外周方向に対しても分断または分割できる。それゆえ、中心線C方向のみならず、外周方向に対してもより精密な冷却制御を行うことが容易になる。
【0118】
具体例としては、外周方向に沿って連続的に形成されると共に、中心軸C方向に対する配置位置が外周方向のいずれの位置においても同一である連環形状を成す第一部分と、分割境界面と第一領域10S1とが交差する部分に沿って設けられた直線状の2つの第二部分とを有する鍔部16を第一領域10S1に設けた連結シリンダ10およびこれを用いた内燃機関100を例示することができる。この場合、冷却液ジャケット70は、第一部分によって、シリンダヘッド側冷却液ジャケット70Aと、クランク室側冷却液ジャケット70Bとに分割される。さらに、第二部分によって、シリンダヘッド側冷却液ジャケット70Aが分割境界面の一方側(Y1方向側)の部分と、他方の側(Y2方向側)の部分とに分割されると共に、クランク室側冷却液ジャケット70Bも分割境界面の一方側(Y1方向側)の部分と、他方の側(Y2方向側)の部分とに分割される。すなわち、冷却液ジャケット70は4分割される。
【0119】
なお、連結シリンダ10に設けられる鍔部16は、少なくとも第一部分を有していることが望ましい。しかしながら、必要に応じて、第二部分のみから構成された鍔部16を有する連結シリンダ10を用いて内燃機関100を構成してもよい。
【0120】
本実施形態の内燃機関100では、冷却液ジャケット70を、シリンダヘッド側冷却液ジャケット70Aと、クランク室側冷却液ジャケット70Bとに分割するために、鍔部16を連結シリンダ10の第一領域10S1ではなく、シリンダブロック本体60の内周面64S1に設けてもよい。また、図11に例示した第一の連結シリンダ10A2では、鍔部16は、鋳造により第一の連結シリンダ10A2の本体部分と一体的に形成されているが、図9および図10に例示したような鍔部16を有さない連結シリンダ10に、(1)連環状の鍔部16に対応する形状を有する部材、あるいは、(2)上述した半連環状若しくは連環状の第一部分と直線状の第二部分とを有する鍔部16に対応する形状を有する部材を装着・固定することで、鍔部16を設けてもよい。
【0121】
なお、複数本のシリンダライナがシリンダブロックに鋳包まれた構造を持つ従来の内燃機関では、シリンダライナを除いた部分が鋳造により一体的に形成される。このため、従来の内燃機関では、図12および図13に示す内燃機関100B、100Cのように、冷却液ジャケット70が、シリンダヘッド側冷却液ジャケット70Aと、クランク室側冷却液ジャケット70Bとに分割された構造(冷却液ジャケット分割構造)を鋳造プロセスのみで実現することは不可能であった。また、鋳造後に冷却液ジャケット分割構造を実現するためには、シリンダヘッド側の開口部の幅が狭く深さのある冷却液ジャケット内で、冷却液ジャケット分割構造を構築する作業が必要になるため、製造性が極めて悪く、量産は不可能である。しかしながら、鍔部16を有する連結シリンダ10を用いた本実施形態の内燃機関100であれば、冷却液ジャケット分割構造を、鋳造で製造された鍔部16を有する連結シリンダ10と、鋳造で製造されたシリンダブロック本体60とを組み合わせることで極めて容易に実現でき、量産性も極めて優れる。
【符号の説明】
【0122】
10 :連結シリンダ
10A、10A1、10A2 :第一の連結シリンダ
10B :第二の連結シリンダ
10S :外周面
10S1 :第一領域(外周面10Sの一部分)
10S2 :第二領域(外周面10Sの一部分)
12 :溝
14 :段差
16 :鍔部
20 :シリンダボア
20B :内周面
40 :シリンダライナ
40A :外周面
40B :内周面
42 :連結部
50 :連結シリンダ本体部
50B :内周面
52 :被膜
52A :外周側面
52B :表面
60、60A、60B :シリンダブロック本体
62 :クランク室
64 :中空部
64J :嵌合部
64S、64S1、64S2、64S3 :内周面
64S1A :シリンダヘッド側領域(内周面64S1の一部分)
64S1B :クランク室側領域(内周面64S1の一部分)
66 :溝
68A :第一の段差
68B :第二の段差
68C :第三の段差
70 :冷却液ジャケット
70A :シリンダヘッド側冷却液ジャケット
70B :クランク室側冷却液ジャケット
80 :固定部材
100、100A、100B :内燃機関
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13