【実施例】
【0041】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかし、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0042】
以下、本発明の実施例1が
図1〜
図10にしたがって説明される。
本実施例は例えばランニングないしウォーキング用の靴の靴底である。
図1に示すメインソールMSはゴム製のアウトソール2と樹脂製のミッドソール1とを備える。メインソールMSの上には足の甲を包むアッパー3が設けられる。
【0043】
ミッドソール1は例えばEVAのような樹脂製の発泡体からなるミッドソール本体を備える、更に、強化装置を備えていてもよい。「樹脂製」とは、熱可塑性等の樹脂成分を有するという意味で、任意の適宜の他の成分を含む。ミッドソール1の上面には例えば高反発材からなる
図8のパドル5が設けられている。
【0044】
図1のアウトソール2は前記ミッドソール本体の発泡体よりも耐摩耗性の大きい接地底で、一般に、ミッドソール本体の発泡体よりも硬度が大きい。なお、「ゴム製」とは天然ゴムや合成ゴムの成分を有するという意味で、任意の他の成分を含む。
【0045】
図3〜
図5に示すように、本実施例のミッドソール1および
図8のインソール4は足裏の概ね全面を覆う。一方、
図1および
図2に示すように、アウトソール2はミッドソール1の下面に付着され足裏を部分的に覆う。すなわち、ミッドソール1およびアウトソール2を包含する
図8のメインソールMSはインソール4を下方から覆い足裏を支持する。
【0046】
図8および
図6B〜
図6Gのインソール4は、
図2のアッパー3に連なる。アッパー3は足の甲を包むような形状に形成されている。なお、靴はアッパー3を足にフィットさせるためのシューレースを有していてもよい。
【0047】
前記メインソールMSは、爪先側の第1部11と、第1部の後方DBに配置された第2部(後部)12と、後端側の第3部13(後端部)とに分割されている。
【0048】
前記第1部11の後面は斜め上方の前方に延びる第1傾斜面11Fを包含する。前記第2部12の前面は斜め上方の前方に延びる第2傾斜面12Fを包含する。前記第1傾斜面11Fと前記第2傾斜面12Fとは互いに接しているか又は接する第1分割部D1を定義する。
【0049】
前記第2部12の後面は斜め上方の後方に延びる第3傾斜12B面を包含する。前記第3部13の前面は斜め上方の後方に延びる第4傾斜面13Bを包含する。前記第3傾斜面12Bと前記第4傾斜面13Bとは互いに接しているか又は接する第2分割部D2を定義する。
前記第1および第2分割部D1,D2において前記ミッドソール1およびアウトソール2が前後に分割されている(
図7参照)。
【0050】
図9に示すように、前記第1分割部D1の下部が開くように、前記第1部11の前記第1傾斜面11Fに対し前記第2部12の前記第2傾斜面12Fが回転可能に設定されている。また、
図10に示すように、前記第2分割部D2の下部が開くように、前記第2部12の前記第3傾斜面12Bに対し前記第3部13の前記第4傾斜面13Bが回転可能に設定されている。
【0051】
図5において、前記メインソールMSの前端1Fから後端1Bまでの最大長さLmに対し、前記第1分割部D1の上端の内側縁1Mの位置は前記メインソールMSの前記後端1Bから前記メインソールMSの前後方向FBに延びる中心軸S(
図4)に沿った65%〜75%の範囲に設定されている。
【0052】
前記メインソールMSの前記最大長さLmに対し、前記第1分割部D1の上端の外側縁1Lの位置は前記メインソールMSの前記後端1Bから前記メインソールMSの前記中心軸Sに沿った60%〜70%の範囲に設定されている。
【0053】
第1分割部D1がこのような範囲に設定された場合、前記第1分割部D1の上端を前記メインソールMSの幅方向DWに連ねたラインは、第1趾B1から第5趾B5の中足趾節間関節MPよりも後方DBに配置され、かつ、第1趾から第5趾の中足骨B1,B5の骨底B11,B51よりも前方DFに配置される。より好ましくは、前記ラインは中足骨の骨頭B12,B52よりも後方DBに配置される。なお、骨底とは各骨における後方の関節に近い部位で若干膨らんだ部位をいい、近位骨頭とも呼ばれている。一方、骨頭とは各骨における前方の関節に近い部位で若干膨らんだ部位をいい、遠位骨頭とも呼ばれている。
【0054】
図4において、前記第1分割部D1は平面視で前方DFに向かって凸形状である。一方、第2分割部D2は平面視で後方DBに向かって凸形状である。
【0055】
本実施例の場合、前記第1部11は前記第1分割部D1から前記メインソールMSの先端まで分割されることなく連なっている。前記第1部11は溝11Gを定義し、
図1の前記溝11Gは前記第1分割部D1の深さよりも浅く、かつ、
図4の前記メインソールMSの幅方向DWに延びる。
【0056】
前記第2部(後部)12は前記後面から前方DFに向かって延びる。前記第2部12は前記後面よりも前方DFにおいて溝12Gを定義する。前記溝12Gは前記第2分割部D2(
図1)の深さよりも浅く、かつ、メインソールMSの幅方向Wに延びる。
【0057】
つぎに、
図8のパドル5について説明する。
パドル5はメインソールMSとは別の部材で形成されている。前記パドル5の弾性率はインソール4の弾性率以上であり、更に好ましくは、インソール4の弾性率よりも大きい。前記パドル5は厚さが0.1mm〜5.0mm、より好ましくは0.5mm〜1.5mmの樹脂製の平板で形成されている。
【0058】
前記パドル5は第1部〜第3部11〜13にわたって配置されている。前記パドル5はミッドソール1の上面とインソール4の下面との間に挟まれる。前記パドル5は前足側の架設部5Fと後足後の架設部5Bとを備える。
【0059】
図8の前足側の前記架設部5Fの一部は前記インソール4と前記第1部11との間に配置されている。一方、前記架設部5Fの他の一部は前記インソール4と前記第2部12との間に配置されている。
【0060】
後足側の前記架設部5Bの一部は前記インソール4と前記第2部12との間に配置されている。一方、前記架設部5Bの他の一部は前記インソール4と前記第3部13との間に配置されている。
【0061】
図8の前足側の前記架設部5FがメインソールMSに対し位置決めされるために、第1係合部11Eが前記第1部11の上面に形成され、かつ、第2係合部12Eが前記第2部12の上面に形成されている。
図7の前記第1部11および第2部12は前記架設部5F(
図8)が嵌る第1および第2凹所を各々定義し、前記第1および第2凹所は、それぞれ、前記第1および第2係合部11E,12Eを構成する。
【0062】
図8の後足側の前記架設部5BがメインソールMSに対し位置決めされるために、第2係合部12Eが前記第2部12の上面に形成され、かつ、第3係合部13Eが前記第3部13の上面に形成されている。
図7の前記第2部12および第3部13は前記架設部5B(
図8)が嵌る凹所を各々定義し、各々の凹所は、それぞれ、前記各係合部12E,13Eを構成する。
【0063】
図5において、前記第1および第2分割部D1,D2における前記架設部5F,5Bの幅5Wf,Wbは、それぞれ、前記メインソールMSの幅Wの25%〜100%に設定されている。
【0064】
図8において、前記架設部5F,5Bは複数の貫通孔5Hを定義する。前足側の前記貫通孔5Hは前記第1部11から前記第2部12にわたって配置されている。後足側の前記貫通孔5Hは第2部12から第3部13にわたって配置される。
なお、後足側の貫通孔5Hは第3部13が幅方向DWに変位し易いような構造とするのが好ましい。
【0065】
図8の前足側の架設部5Fは前記第1分割部D1を股ぐように前記第1部11と前記第2部12とに架設され、
図9のように、前記第1部11の前記傾斜面11Fに対し前記第2部12の前記傾斜面12Fが回転可能な状態で前記第1部11と前記第2部12とを連結する。
【0066】
図8の後足側の架設部5Bは前記第2分割部D2を股ぐように前記第2部12と前記第3部13とに架設され、
図10のように、前記第3部の前記傾斜面13Bに対し前記第2部12の前記傾斜面12Bが回転可能な状態で前記第2部12と前記第3部13とを連結する。
【0067】
図4において、前記第2分割部D2は内外の中央部13Cから斜め前方DFの外側に延びる斜め部131を有する。前記メインソールMSの前後方向FDに延びる中心軸Sに直交する仮想の横断線VLと前記第2分割部D2の前記斜め部131とのなす角αは10°〜40°の範囲に設定されている。
前記第2分割部D2の内側縁1Mは前記第2分割部D2の外側縁1Lよりも後方DBに配置されている。
【0068】
後足部において、
図1の前記アッパー3の内側面31は前後に互いに分かれた内側高剛性部31Hと前記内側高剛性部31Hよりも屈曲し易い内側柔軟部31Sとを備える。
図2の前記アッパー3の外側面32は前後に互いに分かれた外側高剛性部32Hと前記外側高剛性部32Hよりも屈曲し易い外側柔軟部32Sとを備える。
【0069】
図1の前記内側高剛性部31Hの前縁部および/または前記内側柔軟部31Sは前記第2分割部D2の内側縁1Mの上端部から斜め上方の後方に向かって延びる。また、
図2の外側高剛性部32Hの前縁部および/または前記外側柔軟部32Sは前記第2分割部D2の外側縁1Lの上端部から斜め上方の後方に向かって延びる。なお、「上端部から」とは上端およびその近傍の部位からということを意味する。
【0070】
前記各高剛性部は例えば合成樹脂のプレートで形成されていてもよい。前記各低剛性部は例えばメッシュ地、編物、織物または不織布などの生地(布帛)で形成されていてもよい。
【0071】
図1の前記内側柔軟部31Sには前記内側柔軟部31Sが前後方向FBに伸張するのを抑制する帯状の複数本の抑制部材34Mが配置されている。
図2の前記外側柔軟部32Sには前記外側柔軟部32Sが前後方向FDに伸張するのを抑制する帯状の別の複数本の抑制部材34Lが配置されている。
【0072】
前記抑制部材としては、櫛状の薄いフィルムが前記メッシュ地の表面に接着ないし溶着(転写印刷を含む)されていてもよい。
【0073】
前記第1分割部D1の真上を含む前足部において、前記アッパー3の前記柔軟部35は例えばメッシュ地、編物、織物または不織布などの布帛状の生地の様な低剛性の素材で形成されている。かかる柔軟部35は第2部12の傾斜面12Fが、
図9のように、斜め上方の前方に移動しながら回転するのを許容する。
【0074】
つぎに、靴の製造工程の一部について説明する。
図8に示すように、第1、第2および第3部11〜13の凹所からなる係合部11E〜13Eにはパドル5が適合されて、ミッドソール1の上面にパドル5が付着(接着)される。これにより、第1部11と第2部12が相対的に位置決めされ、また、第2部12と第3部13とが相対的に位置決めされる。
【0075】
前記パドル5により一体となったミッドソール1は、図示しないアッパー3(
図1)と一体のインソール4の裏面に接着される。この際、インソール4およびアッパー3は周知の足型(ラスト)に包まれた状態であるが、前述のように、ミッドソール1が前後に分離されておらず、そのため、前記接着時にミッドソール1がインソール4に対し位置決めされ易い。
【0076】
つぎに、走行時の靴の前足部の挙動について説明する。
【0077】
図2の非着用時には、第1分割部D1の第1傾斜面11Fと第2傾斜面12Fとは一部において互いに接しているが、第1分割部D1の第1傾斜面11Fと第2傾斜面12Fとの間には、製造上の誤差などにより若干の隙間が生じている場合がある。しかし、靴を着用した静止立位や走行中のフットフラットの際には、ミッドソール1の圧縮変形などにより、前記第1傾斜面11Fと第2傾斜面12Fとは互いに強い圧力で接する。そのため、足を安定した状態で支えることができるだろう。
【0078】
ヒールライズの際に、
図9のように、アッパー3およびメインソールMSが屈曲して、第1部11に対し第2部12が回転するように変位する。前述のように、ミッドソール1はパドル5(
図8)を介してアッパー3に接合されている。そのため、第1部11に対し第2部12は第1分割部D1の上端付近を中心に回転する。
【0079】
一方、アッパー3の前足部は圧縮されるが、本実施例のアッパー3の前記第1分割部D1の真上および前後の柔軟部35は例えば前記メッシュ地のような柔軟材で形成されており、前記柔軟部35に皺35Wが容易に生じ、そのため、前記回転を阻害しにくいだろう。例えば、前記柔軟部35は屈曲の中心を定めておらず、そのため、足の屈曲に伴って前記第2部12の傾斜面12Fは前記斜め上方の前方に移動しながら回転する。
【0080】
つぎに、人の後足の構造について
図11A〜
図12Bを用いて簡単に説明する。
【0081】
図11A〜
図11Cに示すように、足首の下方には、距骨下関節(STJ)及び横足根関節(MTJ)が存在する。これらの関節STJおよびMTJは、それぞれ、軸Ss、軸Smを中心に回転することができる。これらの軸Ss,Smは交差面Bs,Bmに直交する。前記交差面Bs,Bmは
図11Aおよび
図11Cにおいて鉛直面に対し42°および15°程度傾斜した傾斜面である。また、前記交差面Bs,Bmは
図11Bにおいて足の長軸に対し20°および9°程度傾いた傾斜面である。
【0082】
前記交差面の角度を考慮すると、
図2の前記第2分割部D2の傾斜面12B,13Bが鉛直面となす角α2は、足の外側において5°〜45°程度が好ましく、10°〜40°程度が更に好ましく、15°〜35°程度が最も好ましい。
【0083】
一方、
図2の前記第1分割部D1の傾斜面12F,13Fが鉛直面となす角α1は、足の外側において20°〜70°程度が好ましく、25°〜65°程度が更に好ましく、30°〜60°程度が最も好ましい。
【0084】
つぎに、走行において生じるプロネーションのメカニズムについて簡単に説明する。
走行時の接地後には、まず、
図11A〜
図11Cの前記関節STJが回転することで
図12Aのように踵が外反する。その後、
図11A〜
図11Cの前記関節STJの回転に連動して前記関節MTJが回転することで、
図12Bのように下腿が内旋する。これにより、プロネーションが発生する。裸足走行時に近い関節の動きを得るには、前記関節STJ、MTJ、外反および内旋の動作を阻害せずに許容する靴の構造が必要であると考えられる。
【0085】
つぎに、走行中の靴の後足部の挙動について説明する。
図1の実施例のメインソールMSは後足の第2分割部D2が斜め上方の後方に向かって延び、かつ、
図5の第2分割部D2は外側において斜め部131を有する。それ故、
図10のファストストライクのような接地直後において、第2分割部D2の下部が開くように変位し、前記
図11A〜
図11Cの関節STJ,MTJ、
図12Aの外反および
図12Bの内旋の動作を妨げにくいだろう。したがって、裸足走行時に近似したプロネーションの動作を実現し易いだろう。
【0086】
一方、前記接地直後において、
図10の第3部13には大きな衝撃荷重が負荷される。しかし、前記第3部13と第2部12とは第2分割部D2において互いに接しており、互いに分割されている。そのため、前記第2部12に対し分割された第3部13は接地後に変形し易いだろう。したがって、優れた緩衝性能が得られるだろう。
【0087】
また、
図10のヒールコンタクトから
図2のフットフラットに状態が遷移する際には、前記第3部13に第2部12が接している。そのため、前記遷移がスムースに実行されるだろう。したがって、裸足走行時の関節の動きが得易いだろう。
【0088】
図10の接地直後においては、メインソールMSが屈曲して第2部12に対して第3部13が回転するように変位する。前述のように、ミッドソール1はパドル5(
図8)を介してアッパー3に接合されている。そのため、第2部12に対して第3部13は第2分割部D2の上端付近を中心に回転する。
【0089】
一方、
図2と
図10の比較からわかるように、接地直後のヒールコンタクトにおいてアッパー3の第2分割部D2の斜め上方の後方の部位は、前記第2部12に対し第3部が回転するのに伴い圧縮される。本実施例のアッパー3は柔軟部32S,31S(
図1)を有しており、そのため、
図2の前記柔軟部32S,31S(
図1)が
図10のように容易に縮む(皺が生じて縮む)だろう。したがって、第2分割部D2における前記回転が阻害されにくいだろう。
【0090】
図9のヒールライズの状態において、一般に、足の踵はアッパー3内で浮き上がり易い。本実施例の場合、柔軟部32S,31S(
図1)が存在するが、前記柔軟部32S,31S(
図1)には抑制部材34L,34M(
図1)が設けられている。それ故、前記ヒールライズの際にアッパー3が柔軟部において伸張するのを抑制でき、その結果、アッパー3内で踵が浮き上がるのを抑制し得る。
【0091】
つぎに、本実施例の効果を明瞭にするために、比較例および試験例を示す。
まず、比較例として
図13Aの分割部D1,D2を有していないテストサンプルT1を用意した。一方、試験例として
図13B〜
図13EのテストサンプルT2〜T5を用意した。
【0092】
サンプルT2は、軸Ss(
図11A)に直交する面に沿ってメインソールMSが分断されている。サンプルT3は、4つの分割部D1,D2,D11,D21において軸Ss(
図11A)及び軸Sm(
図11A)に直交する面に沿ってメインソールMSが分断されている。サンプルT4及びT5は、それぞれ、サンプルT2及びT3の分割部D1,D2に連動するようにアッパー3の内外に柔軟部33Sが斜めにもうけられている。なお、サンプルT1には前記分割部および柔軟部が設けられていない。
【0093】
検証実験は1名の被験者について4min/kmの走速度で実施した。
図13A〜
図13Eの靴と裸足での走行の比較を行った。走行中に足関節の屈曲伸展角度を測定し、前後方向および鉛直方向の地面反力を測定した。
【0094】
つぎに、前記角度および前後方向の地面反力から最大推進力および推進力積を求めた。その値が
図14Aおよび
図14Bに示される。これらの図から、前記分割部を有する各サンプルT2,T3,T4,T5は裸足やサンプルT1よりも同一速度での走行において、大きな最大推進力および推進力積が必要であることが分かった。
【0095】
図14Cに蹴り出しに要した足関節の仕事の比較結果を示す。同図から、分割部を設けたサンプルT2,T3,T4,T5の場合、仕事量が裸足やサンプルT1よりも大きい。そのため、下腿への負担が大きくなっていることが分かる。
【0096】
このような結果が得られた理由は、メインソールMSの大きな剛性低下により、走行に重要な下腿三頭筋群がより使われるからであると推測される。したがって、これらの靴を着用して走行することで、高いトレーニング効果が期待できる。
【0097】
つぎに、前記屈曲伸展角度から
図12Aおよび
図12Bの踵部外反角β及び下腿内旋角γを求めた。その結果が
図15Aおよび
図15Bに示される。踵部外反角βを比較した結果、サンプルT1では裸足よりも外反角βの絶対値が大きく、一方、サンプルT2,T3,T4,T5は裸足走行に近い関節角度となっていることが分かる。下腿内旋角γに関して、サンプルT1は、裸足よりも内旋角γの絶対値が小さく、一方、サンプルT2,T3,T4,T5は裸足走行に近い関節角度となっていることが分かる。
【0098】
したがって、
図10の第2分割部D2が設けられることにより、より好ましくは溝12Gや柔軟部32S,31S(
図1)を設けることにより、裸足走行時の関節の動きに近い靴が得られることが分かる。
【0099】
つぎに、鉛直方向の地面反力を単位時間で除算して、衝撃荷重の値を算出した。その結果を
図15Cに示す。同図からサンプルT2,T3,T4,T5はサンプルT1と同等の緩衝性を有し、裸足よりも衝撃値が小さく優れた緩衝性を有することが分かる。
【0100】
前記
図13B〜
図13EのサンプルT2〜T5は、既存の靴のメインソールMSおよびアッパー3を改造して作成したものである、したがって、前記パドル(
図8)を有していない。
【0101】
本発明の靴は、前記サンプルT2〜T5のような構造であってもよく、あるいは、前記サンプルT2〜T5の構造に前記パドル(
図8)を付加したものであってもよい。
【0102】
図8のパドル5は各架設部5F,5Bが互いに分離されていてもよい。しかし、第1部11〜第3部13まで連なったパドル5はミッドソール1よりもヤング率が大きく、そのため、第2部12の強化装置として役立つだろう。
【0103】
図8のパドル5が設けられている場合、パドル5に貫通孔5Hが設けられていなくてもよい。貫通孔5Hが設けられている場合、当該貫通孔5Hに対応するミッドソール1の上面に凸部が形成されて、貫通孔5Hにおけるミッドソール1の上面とパドル5の上面とが同程度のレベル(高さ)に設定されてもよい。
【0104】
図16の他の例のように、本靴はメインソールMSの下面とメインソールMSの上面とに入れ子状に溝Gmが設けられていてもよい。
【0105】
図17A〜
図17Dは他の例を示す。
これらの図の例に示すように、分割部D1,D2においてメインソールの各部11,12,13は下方に突出する架設部5F,5Bを介して互いに接していてもよい。また、分割部D1,D2において、前記架設部5F,5Bはミッドソール同士が互いに直接接することなく、アウトソール同士が互いに直接または間接的に接していてもよい。
【0106】
図17E〜
図17Gは更に他の例を示す。
これらの図においてインソール4の下面にはミッドソール1の上面が付着され、前記パドル5(
図8)は設けられていない。これらの場合、ドット模様で示す接着ないし溶着された接合部19を介して前記各分割部D1,D2を除いた部分においてミッドソール1同士が互いに結合されていてもよい。すなわち、ミッドソール1が架設部5F,5Bを構成してもよい。
【0107】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、ミッドソールにはゲルや鞘様の緩衝パーツが設けられていてもよい。また、メインソールは柔軟なミッドソールのような素材のみ、あるいは、アウトソールのみで形成されていてもよい。
したがって、そのような変更および修正は、本発明の範囲内のものと解釈される。