(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454825
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】ラウンドスリングの電子的検査、荷重モニタリングおよび警告システム
(51)【国際特許分類】
B66C 1/12 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
B66C1/12 Q
【請求項の数】19
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-527098(P2018-527098)
(86)(22)【出願日】2016年10月14日
(65)【公表番号】特表2018-530492(P2018-530492A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】US2016056949
(87)【国際公開番号】WO2017066508
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2018年5月24日
(31)【優先権主張番号】62/278,109
(32)【優先日】2016年1月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/241,401
(32)【優先日】2015年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/208,271
(32)【優先日】2016年7月12日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518130015
【氏名又は名称】スリングマックス テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セント ジャーメイン スコット
(72)【発明者】
【氏名】ディリア グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ウックン セルダル
【審査官】
羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0199893(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0197408(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0261617(US,A1)
【文献】
特表2008−515740(JP,A)
【文献】
特開昭63−012586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00− 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアストランド内に配置され、第1端および第2端を有するストランドとカバーとを含む、ラウンドスリング用電子的過積載検出および警告システムであって、
無線送信機に電気的に接続されて前記ストランドのひずみを測定するひずみゲージを少なくとも1つ含む、前記ラウンドスリングに対して取り付け可能である無線センサシステムと、
複数の配備された前記無線センサシステムと無線通信するように構成された無線受信機を少なくとも1つ含む無線基地局と、
前記ストランドに対して固定されるとともに長手方向軸を有し、前記ひずみゲージがレセプタクルにおいて固定されたキャリア要素であり、第1端に第1の固定機構、第2端に第2の固定機構を有し、前記第1の固定機構は前記ストランドの第1端を前記キャリア要素の第1端に固定するように構成され、前記第2の固定機構は前記ストランドの第2端を前記キャリア要素の第2端に固定するように構成され、前記キャリア要素の第1端および第2端は前記長手方向軸に沿って配され、
前記第1の固定機構は前記キャリア要素の前記第1端に第1の孔部を、前記第2の固定機構は前記キャリア要素の前記第2端に第2の孔部を夫々有し、前記ストランドの前記第1端は前記キャリア要素に対して前記第1の孔部にて接続している
電子的過積載検出および警告システム。
【請求項2】
更に、少なくとも1つのコンピューティングデバイスを含む操作ターミナルを備え、前記操作ターミナルは前記ラウンドスリングに掛かる応力を計算および表示する
請求項1に記載の電子的過積載検出および警告システム。
【請求項3】
更に、前記ひずみゲージに給電するバッテリを備え、前記バッテリは前記ラウンドスリングに接続されている
請求項1に記載の電子的過積載検出および警告システム。
【請求項4】
前記バッテリは震動によって充電されるように構成されている
請求項3に記載の電子的過積載検出および警告システム。
【請求項5】
前記バッテリは太陽光によって充電されるように構成されている
請求項3に記載の電子的過積載検出および警告システム。
【請求項6】
前記バッテリは圧電性動力電池である
請求項3に記載の電子的過積載検出および警告システム。
【請求項7】
更に、前記無線送信機に接続された環境モニタリングチップを備え、前記環境モニタリングチップは温度、湿度、pH、周囲の可視光、周囲の紫外光、震動、伝導度、有害化学物質および有害ガスのうち、少なくとも1つをモニタリングするように構成されている、
請求項1に記載の電子的過積載検出および警告システム。
【請求項8】
前記コンピューティングデバイスは前記ラウンドスリングの予測寿命を算出するように構成されている
請求項2に記載の電子的過積載検出および警告システム。
【請求項9】
前記コンピューティングデバイスは前記ラウンドスリングの予測寿命を、前記ラウンドスリングの荷重の各サイクルおよびピーク負荷に関する測定結果を少なくとも受信および記録することによって予測するように構成されている
請求項8に記載の電子的過積載検出および警告システム。
【請求項10】
更に、一端にて前記ストランドに接続されるとともに他端が前記カバーから突出したインジケーターヤーンを備え、前記インジケーターヤーンは前記ラウンドスリングが過負荷にさらされた際には前記カバーの内部へ後退するように構成されている
請求項1に記載の電子的過積載検出および警告システム。
【請求項11】
前記無線センサシステムとひずみゲージはデフォルトとして低電力スリープ状態に存在するように構成され、前記無線基地局はウェイク信号を伝達するように構成され、前記無線センサシステムとひずみゲージはウェイク信号を受信するとフルパワー状態に移行する
請求項1に記載の電子的過積載検出および警告システム。
【請求項12】
前記キャリア要素は丸みを帯びた第1端および第2端を含んだほぼ円筒形状を有している
請求項1に記載の電子的過積載検出および警告システム。
【請求項13】
前記ひずみゲージは少なくとも前記長手方向軸に沿ったひずみを計測するために方向付けられている
請求項1に記載の電子的過積載検出および警告システム。
【請求項14】
コアストランドおよびカバーを有したラウンドスリング用電子的過積載検出および警告システムであって、
前記ラウンドスリングに取り付け可能である無線センサシステムと、
無線受信機を少なくとも1つ含み、前記無線センサシステムと無線にて通信可能に構成されている無線基地局と、
前記コアストランドに対して取り付け可能であり、コアストランドの定格荷重よりも少ない荷重制限を有した専用ストランドと、
前記専用ストランドに対して接続され、前記無線センサと通信可能である導線とを備え、
前記導線は前記専用ストランドが破損したときに破損するように構成され、またそれによって無線センサから無線基地局へと信号が発生し、前記無線基地局は前記無線センサから信号を受信すると音声または視覚のうち一方による警告を操作者に対して通信するように構成されている
電子的過積載警告システム。
【請求項15】
前記専用ストランドは第1のアイループを第1端に、第2のアイループを第2端に含む
請求項14に記載の電子的過積載警告システム。
【請求項16】
前記専用ストランドは前記第1のアイループおよび前記第2のアイループに接続したリングを含み、前記リングは前記コアストランドの定格荷重よりも少ない荷重制限を有している
請求項15に記載の電子的過積載警告システム。
【請求項17】
前記導線は12ゲージ銅線からなる
請求項14に記載の電子的過積載警告システム。
【請求項18】
更に、前記専用ストランドに接続されたインジケーターヤーンを備え、前記インジケーターヤーンは前記カバー内に位置する第1の終端部と前記カバー外に位置する第2の終端部とを含む
請求項14に記載の電子的過積載警告システム。
【請求項19】
前記専用ストランドは専用ストランド定格荷重を有し、前記コアストランドはコアストランド定格荷重を有し、前記コアストランド定格荷重は前記専用ストランド定格荷重よりも大きい
請求項14に記載の電子的過積載警告システム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2015年10月14日に仮出願された「Electronic Roundsling Inspection, Load Monitoring and Warning System(ラウンドスリングの電子的検査、荷重モニタリングおよび警告システム)」と題する米国仮特許出願62/241,401号の利益を主張しながら2016年7月12日に出願された「Electronic Roundsling Inspection, Load Monitoring and Warning System(ラウンドスリングの電子的検査、荷重モニタリングおよび警告システム)」と題する米国特許出願15/208,271号、および2016年1月13日に出願された「Electronic Roundsling Inspection, Load Monitoring and Warning System(ラウンドスリングの電子的検査、荷重モニタリングおよび警告システム)」と題する米国仮特許出願62/278,109号の利益を主張し、これらの出願のすべての内容が本発明の参考文献として援用される。
【背景技術】
【0002】
本発明の好ましい実施形態は、一般的に、ラウンドスリングが定格荷重や荷重制限を超えた積載や、潜在的な機能不全に面しているときに警告するシステムおよび方法と関連している。本発明の好ましい実施形態はまた、ラウンドスリングに掛かる荷重をリアルタイムにてモニタリングするシステムと関連している。
(発明の背景)【0003】
産業用スリングは、典型的には、金属または合成材料から構成されている。ワイヤーロープスリングは、一般的には複数の金属ストランドが撚り合わされて形成され、大きな金属スリーブまたはカラーにより保護される。合成スリングは、通常は、合成繊維のストランドからなる引き上げコアと、当該コアを保護する外側カバーとを含む。コアのストランドは典型的には、コア内に他のストランドと平行な向きに挿入される。しかし、全体が参照により援用されるスリングマックス社による米国特許7,926,859号に示されるように、ストランドはカバー内に挿入するときに撚り合わせられることもある。合成スリングはワイヤーロープスリングに比して、質量、強度、その他の面において利点を有する。よく知られている合成スリングのひとつとして、ラウンドスリングがあり、ラウンドスリングは、引き上げコアが連続ループをなしている。当該スリングは円形または楕円形の外観を有している。
【0004】
最近の産業用スリングは、スリングの破壊または損傷に起因する不具合および積載量の低下を経験していると思われる。これは、例えば現在または過去の使用の間の疲労、過度の引っ張り、あるいは過積載によるものである。その定格荷重を超える過積載状態の下にあると、貨物が耐荷重コア材料の繊維を、その定格強度を超えて引き伸ばした場合には、ラウンドスリングは永久に損傷を受け、および/または変形することがある。合成繊維スリングは、その引っ張り強度または貨物引き上げ能力を超えて過積載状態になると、ダメージを受けると考えられ、二度とその通常の強度および耐荷重能力には戻らないことがある。現場における使用において、このような過積載状態を視覚的手段あるいは他の手段によって検知あるいは判定することは難しくなりがちである。
【0005】
スリングは一般的に、特定の積載量(定格重量)とともに提供され、スリング固有の積載量を超えて積載してはならない。定格荷重はまた、使用者に対して、スリングの定格荷重あるいは安全引き上げ限界に関するガイダンスを提供する。それでもなお、偶発的に、予期しない衝撃を伴った積載時や、安全でないショートカットを利用する使用者によるスリングのけん引および使用時に、この定格をときに超えることがある。更に、スリングを使用していくうちに、摩滅、断線またはその他のスリング繊維に対する環境的劣化が問題となることがある。これはまた、スリング使用時の荷重制限、実際の定格、および引っ張り強度を低下させ、定格荷重に潜在的な悪影響を及ぼす。スリングの使用荷重制限、定格および引っ張り強度を低下させる環境的要因には、メインテナンス不足、紫外線への曝露、ねじ曲げ、よじれ、結線、摩耗、疲労、水分の滞留、温度、およびその他の関連する環境的因子がある。個々にまたは累積的に、このような状態は、スリング使用中の予期しない破損へとつながることがある。よって、スリングを持ち上げに使用する際には、スリングに掛かる荷重を毎回計測し、記録することが望ましい。
【0006】
当該技術分野において、ワイヤーロープスリングあるいは合成スリングにかかる荷重を、工業的使用または現場における使用設定の下で継続的に、直接測定する方法は知られていない。現在の方法は、たとえばロードセルを取り付け位置に使用する方法やこれに関連した測定手法といった、過積載状況または荷重に対する非直接的な検知のみに依存している。けん引構成によっては、これらの非直接的な測定方法は、貨物引き上げ作業に用いられる個々のスリングごとの直接荷重について、誤解につながる情報を与えることもある。
【0007】
ときには、過積載や、疲労、あるいはスリング素材の損傷が、目視による判別の結果、読み取り可能なほどにはわからないことがある。これは、特にスリングのサイズまたは長さが長大なことや、外部カバーが耐荷重コアを被覆していることによって起きる。ラウンドスリングが疲労あるいは構造的に変化している場合、所定の最大積載量または荷重制限に定められた荷重をつり上げることはもはやできないことがある。これらの疲労または構造的な弱体化は、損傷したスリングの操作者およびけん引者に対して脅威となりうる。
【0008】
商業的に入手可能なラウンドスリングには事前不具合インジケータを有するものがある。この事前不具合警告インジケータの例としては米国特許7,661,737号があり、当該特許の内容全体は参考文献として本明細書に組み込まれる。このような事前不具合インジケータは、スリングの定格荷重を超えるが破壊強度以下の過積載状態になると、過積載状態を示す、視認できる表示を生成するように設計されている。これらの事前不具合警告インジケータは、積載中のスリングに掛かった正確な積載量は判定できず、スリングが定格荷重を超えて積載されたことを示す表示を提供するのみである。更に、けん引構成や、スリングの位置または事前不具合インジケータのスリング上の位置によっては、事前不具合インジケータがアクティブになったことを操作者もしくはけん引者が目視で確認することが難しいこともある。過積載状態がすぐにはわからないことにより、つり上げ操作が完了したあとにけん引者がラウンドスリングを点検するまで、危険なつり上げ操作が続くという結果につながることがある。
【0009】
けん引およびスリング検査の技術分野において、着実でありかつ信頼できるスリングの事前不具合表示が必要である。更に、最初に予期された寿命の後も有用な操作寿命を有している、構造的に健全なスリングを特定する必要がある。また、耐用年数中のシステムの健康状態を判定し、または有用性をより正確に予測するために、スリングに加えられる荷重およびスリング使用中の環境曝露をモニタリングして、スリングの構造的健全性モニタリングを提供する必要がある。そして、スリングの正確かつ予測可能な寿命予測を提供するために、持ち上げ作業中にスリングにリアルタイムで付与される荷重を測定し、個々のスリングの荷重情報をスリングの耐用年数の間、記録して保存する必要がある。スリングがその破壊強度近くにあるという事前の警告は、スリングの操作者に是正措置をとる機会を提供する。更に、スリングの構造的健全性をモニタリングおよび/または予測したスリングの構造能力を事前に警告することにより、スリングの寿命を延ばすことができ、よってスリングの高価かつ不必要な交換の必要性が低減される。また更に、特定のスリングの生涯負荷、環境要因、過積載履歴を知ることにより、けん引者は、けん引作業毎に、もっとも安全かつもっとも適したスリングを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、添付の図面と関連付けて読んだときに、以下の詳細な説明から最もよく理解される。好ましい発明を説明するために、図面には現在好ましい実施形態が示されている。しかしながら、本発明は、示されている正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。以下の図面にこれらの図面が含まれる。
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態に従った、電子的過積載検知および警告システムとともに供される典型的なラウンドスリングの上面斜視図を表している。
【0012】
【
図2】
図2は、
図1に表したラウンドスリングの2−2線に沿った断面図を表している。
【0013】
【
図3】
図3は、本発明の好ましい実施形態に従った、電子的過積載検知および警告システムの回路図を表している。
【0014】
【
図4】
図4は、ラウンドスリングに取り付けられた、
図3に表した電子的過積載検知および警告システムの正面立面概略図であり、明瞭のためにラウンドスリングの一部を透明にして表している。
【0015】
【
図5】
図5は、
図1に表した電子的過積載検知および警告システムについての第1の好ましい実施形態において、ラウンドスリングのストランドに取り付けられており、また表面に取り付けられたひずみゲージを含む、キャリアプレートの上平面図を表している。
【0016】
【
図5A】
図5Aは、
図1に表した電子的過積載検知および警告システムについての第2の好適なキャリアプレートの上面斜視図を表している。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【
図6】
図6は、
図1に表した電子的過積載検知および警告システムについての第3の好適なキャリアプレートの上面斜視図を表している。
【0021】
【0022】
【0023】
【
図6C】
図6Cは、
図6Aに表したキャリアプレートの線6C−6Cに沿った断面図を表している。
【0024】
【
図7A】
図7Aは、
図1に表した電子的過積載検知および警告システムについての第4の好適なキャリアプレートの上面斜視図を表している。
【0025】
【
図7B】
図7Bは、本発明の好ましい実施形態によるハウジング内に部分的に封入された、
図7Aに表したキャリアプレートの上面斜視図を表している。
【0026】
【
図7C】
図7Cは、本発明の好ましい実施形態による
図7Bに表したハウジング内に部分的に封入された、
図7Aに表したキャリアプレートの上面斜視図であり、ハウジングの一部を透明にして表している。
【0027】
【
図8A】
図8Aは、
図1に表した電子的過積載検知および警告システムについての第5の好適なキャリアプレートの上平面図を表している。
【0028】
【0029】
【
図9】
図9は、本発明の好ましい実施形態による不具合インジケータシステムの側面立面図を表している。
【発明の開示】
【0030】
以下の説明ではいくつかの用語を用いているが、これらの用語は便宜上、使用しているにすぎず、限定的なものではない。「下方」、「下(部)」、「上方」、および「上(部)」という用語は、参照がなされている図面における方向を示している。「内側方向」、「外側方向」、「上向き方向」、および「下向き方向」という用語は、本開示においては、ラウンドスリングの幾何学的中心に向かう方向およびそれから離れる方向と、それらによって指定される各部分とを意味している。「1つの」や「その」という用語は、本明細書において特に断りのない限り、単一要素に限られず、「少なくとも1つ」を意味するものと解釈されるべきである。これらの用語には、上述した用語以外に、それらの変化形や同様の意味を持つ用語も含まれる。
【0031】
また、「およそ」、「約」、「一般的に」、「ほぼ」、およびそれらと同類の用語は、本発明の構成要素の寸法や特性について参照する際に本明細書において用いられているが、これらの用語は、記載された寸法/特性が厳密な境界や厳密なパラメータではないことを示しており、機能的に同一または同様な軽微な変更をそれらから排除するものではない。そのような、数値パラメータについて参照している部分は、少なくとも、当該技術分野において認められている数学的原理や産業的原理を用いた場合(例えば、四捨五入、測定誤差や他の系統的誤差、製造公差等)に、最下位数の変化を伴わない種々の変更を包含するものである。
(発明を実施するための形態)
【0032】
詳細のために図面を参照する。ここで全体にわたって、同様の番号は同様の要素を示している。本発明の好適な実施例に従い、
図1ないし
図4において、電子的過積載検知および警告システムは一般的に10で表し、ラウンドスリングは50で表している。
【0033】
ラウンドスリング50は、耐荷重コア52と、耐荷重コア52を取り囲み保護しているカバー56を含むことが好ましい。コア52は、金属、合成ポリマー、あるいは複合材料を含む好適な材料から組み立てられる、複数のストランド54(
図2参照)からなっていてよい。コア52は天然材料または、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、K-Spec(スリングマックス社の登録商標、権利化された繊維の混合物)、高弾性ポリエチレン(HMPE)、液晶高分子(LCP)、アラミド、パラアラミド、またはその他の好適な合成材料のうち、1種あるいは複数種からなっていてよい。コア52の材料は、スリング50が持ち上げるように設計された最大質量、およびスリング50が好適に用いられる環境に関連することがある。一般的には、合成ストランド54は、金属ロープあるいは金属鎖からなるスリングと比して、高い持ち上げ強度および破断強度を有し、軽量であり、高い耐久性を有する。更に、カバー56は、コア52、持ち上げられている物体の表面、および使用中にカバー56と接触する関連機器について、損傷を低減することが好ましい。
【0034】
コア52は、保護カバー56内に位置することが好ましい。コア52は一般的に、持ち上げられる貨物の略全質量を支える。カバー56は一般的に、コア52を、例えば熱、湿気、紫外光、腐食性化学物質、気体物質、またはコア52の材料を損傷させまたは弱らせる厳しい環境状況から保護するだけでなく、例えば摩耗や、貨物の鋭利な角などの物理的損傷から防ぐ。
【0035】
好ましい実施形態において、コア52はカバー56内に、第1のコア53aと第2のコア53bとを含む。第1のコア53aと第2のコア53bは、好ましくはカバー56内に隣り合って位置し、ラウンドスリング50に荷重を搭載するための2本の荷重経路を提供する。ラウンドスリング50は2つのコア53aおよび53bを含むことに限定されず、ラウンドスリング50の機能に対して明らかな影響を受けることなく1つあるいは3つ以上のコアから構成することができる。第1のコア53aおよび第2のコア53bは、好ましくは、カバー56により定義された隣り合ったチャンバー55aおよび55b内に夫々位置し、カバー56はそれらの間の固定機構57を介して固定されている。好ましい実施形態において、固定機構57は、カバー56により定義されたチャンバー55a、55bの対向する縁部を結合するための縫製からなる。ラウンドスリング50は縫製からなる固定機構57を含むことに限定されず、また固定機構57が縫製からなることに限定されず、また固定機構57を含まなくてもよい。また固定機構57は、接着結合、一体形成、クランピング、または他の機構であって、カバー56内に第1のチャンバー55aと第2のチャンバー55bとを容易に形成する代替可能な機構であってよい。
【0036】
電子的過積載検知および警告システム10は、好ましくはラウンドスリング50内部または表面に取り付けられた無線センサシステム12と、現場に配備された複数のラウンドスリング50と通信可能な無線基地局14と、現場に配備されたラウンドスリング50をモニタリングし、負荷を視覚化するために、操作者により使用でき、好ましくは負荷情報と過積載指示を表示する操作ターミナル16(
図3に概略的に示す)とからなる。センサシステム12と基地局14との間の通信によって、好ましくはリアルタイムかつ継続的に、現場に配備された複数のラウンドスリング50について、各々の荷重情報が提供される。基地局14は更に、インターネットサーバと有線または無線にて通信を行ってよい。センサシステム12から得られた情報は、他のコンピュータ、電話、タブレットあるいは他のデバイスなど、使用者によるレビューのためにデータを保存、マニピュレートあるいは表示できるリモート機器へミラーリングしてよい。
【0037】
好ましい実施形態において、
図3に概略的に示すように、センサシステム12は、現場に配備されたラウンドスリング50の各々についてひずみ(伸長度)を計測するための、ひずみゲージ18を含んでよい。例えば、ひずみゲージ18は軸方向および横方向双方の荷重を測定する2軸ひずみゲージであってよい。ひずみゲージ18は、従来技術として知られているように、温度補償に対処するように構成されていてよい。ひずみゲージ18はまた、複数の方向および向きについてひずみを計測するために、例えば4ゲージブリッジやホイートストンブリッジ構成のように、複数のひずみゲージ18から構成されていてよい。ひずみゲージ18は、ラウンドスリング50の長手方向軸に沿って取り付けられ、コアヤーンのひずみあるいは荷重を計測する複数のひずみゲージ18から構成されていてよい。ひずみゲージ18は更に、コア53a、53b、およびカバー56のひずみと応力を計測するように配置された複数のゲージにより構成されていてよい。ひずみゲージ18は好ましくはバッテリ駆動であり、好ましくは少なくとも1年間の寿命を有したバッテリ源19によって駆動されるが、これに限られない。ひずみゲージ18はおよそどのようなバッテリ寿命で構成されてもよく、例えば2〜3年のバッテリ寿命である。
【0038】
バッテリ19は例えば、1000ミリアンペア時(1000mAh)の一次電池(非充電型電池)であるリチウム電池19(例:パナソニックCR2477)からなっていてよい。更に、バッテリ19はラウンドスリング50の配備中、充電するように構成されていてよい。バッテリ19は例えば、ラウンドスリング50の使用時あるいは被けん引時などの、振動に曝されたときに充電される、エネルギーハーベストバッテリ19であってよい。これに代わって、バッテリ19は、ラウンドスリング50の外部表面に取り付けられた太陽充電ストリップ19a(
図1)に接続された、太陽電池19であってよい。ラウンドスリング50をバッテリ19交換のために製造元へ返却する回数を減らすために、配備中に太陽充電ストリップ19aが太陽エネルギーに曝されると、ストリップ19aはバッテリ19に電気充電エネルギーを供給することが好ましい。これにより、ラウンドスリング50が製造元へ返却されたり修理されたりする前における、ラウンドスリング50の潜在的な動作寿命が延長される。バッテリ19は、これに代わって、荷重により動力あるいは電力を生成し、また生成した電力を、生成時間をはるかに超えて貯蔵する圧電性動力電池によって構成してよい。このような圧電性動力電池タイプのバッテリ19は、ラウンドスリング50に荷重が掛かると電力を生成し、当該電力をひずみゲージ18、送信機20、および好ましいラウンドスリング50の付加的部品に供給するように構成してよい。ひずみゲージ18は、無線送信機20と電気的に接続されることが好ましい。例えば、これに限定はされないが、無線送信機20はLord MicroStrain SG-Link-OEM-LXRS無線2チャンネルアナログ入力センサノードであってもよい。随意に、送信機20は外部ホイップアンテナ(図示せず)を有してよい。
【0039】
好ましい実施形態において、バッテリ19はラウンドスリング50から取り外しおよび交換可能であり、このようなバッテリ19はあらかじめ決めた間隔毎に取り外しおよび交換を行ってよい。バッテリ19は操作者または使用者によって取り外しおよび交換可能としてよく、また取り外しおよび交換、あるいは好ましくはラウンドスリング50のメインテナンスおよび検査のために製造元へ返却してもよい。製造元は、例えばラウンドスリング50がバッテリ19の交換のために返却されたときにひずみゲージ18を再較正してよく、またラウンドスリング50を目視点検してよく、また以下にて詳述するように、環境モニタリングチップ30をテストおよび較正してよく、またラウンドスリング50の荷重に関する推奨事項、定格荷重、積載量または能力を認定あるいは再認定してよく、またラウンドスリング50を操作者に返却する際に、その他の検査やメインテナンスを行ってもよい。
【0040】
ひずみゲージ18は好ましくは、ひずみ(あるいは伸長度)を正確に測定するために、堅牢で平らな面(あるいはゆるやかな曲面)に接着される。この好適な発明以前において、ひずみゲージ18を確実に、ファイバー、ラウンドスリング50のストランド、撚られた鉄製ロープあるいは金属ロープに対して接着することはほとんど不可能であったため、ラウンドスリング50のひずみを直接計測することは困難であった。本発明は以下に記すように、従来技術のこの欠点に対処している。
【0041】
好ましい実施形態におけるセンサシステム12はまた、バッテリ19から電力を供給されて送信機20と通信する、環境モニタリングチップ30を含む。環境モニタリングチップ30は、ラウンドスリング50の性能に対して悪影響を及ぼす、ラウンドスリング50が配備された環境的限界の変化を含む、ラウンドスリング50の幾何学的特性をモニタリングするように構成されることが好ましい。環境モニタリングチップ30は、ラウンドスリング50に関する様々な特徴および使用中の操作環境、例えば温度、湿度、pH、日照、紫外線照射、化学物質の存在とそれに対する曝露、振動、伝導率、湿気、およびラウンドスリング50に関連した特徴および環境であって、ラウンドスリング50の性能、定格荷重または耐用年数に影響を与えるものを感知してよい。環境モニタリングチップ30はまた、ラウンドスリング50の近傍または周囲における、可燃性化学物質またはガス、放射線、塩素、一酸化炭素、酸素濃度の低下、高濃度の気中浮遊汚染物質、有機化学物質の蒸気、アスベスト、金属、農薬、即座に生命あるいは健康を危険に曝す化学物質あるいはガスの存在、発がん性物質、毒素、刺激物、腐食剤、感作物質、肝毒素、腎毒素、神経毒素などの有害な化学物質あるいはガスなどの存在にとどまらず、造血系に作用し、または肺、皮膚、眼、または粘膜に損傷を与える薬剤、ならびに他の関連するまたは同様の危険な化学物質またはガスを検知してよい。環境モニタリングチップ30は、ラウンドスリング50に悪影響を与える可能性のある環境状況のモニタリングに加えて、ラウンドスリング50を使用する人々、操作者、または技術者に対して安全でない状況を警告する働きをしてもよい。このような状況には毒性、可燃性あるいは爆発性の薬物、あるいは低酸素濃度が含まれていてよい。
【0042】
環境モニタリングチップ30は、好ましくは一定時間毎にこれらの特徴を感知し、送信機20にこれらの特徴を送信し、続いて送信機20は基地局14にこの情報を送信する。ひずみゲージ18にて検知された荷重状況を含む、複数の感知された特徴は、ラウンドスリング50の使用時における、荷重および環境への曝露を考慮に入れるために、また感知された特徴を統計的に分析するために利用され、ラウンドスリング50の現在の状態を決定することが好ましい。ラウンドスリング50の使用およびラウンドスリング50が使用される環境に起因する、老化および劣化の観点から、そのラウンドスリング50が意図された機能を果たすために、統計学的分析によって特定のラウンドスリング50の能力を予期できることが好ましい。例えば、1人の操作者に使用される複数のラウンドスリング50に関する荷重および環境に関する履歴は、工場から新しい状態で出荷されたときの評価だけでなく、各々の負荷と環境の履歴に基づく評価に基づいて考慮されてよい。このような分析および履歴に対する考慮は、良好な環境条件における軽負荷の履歴を有するラウンドスリング50に対して、寿命を延長し、また実際の耐用年数を達成する前に廃棄されたり交換されたりする必要を制限することを可能にする。同様に、極端な負荷および好ましくない環境条件に曝されるラウンドスリング50は、独自の負荷および環境の履歴に基づいて標準的な耐用年数の前にサービスから取り除くことができ、このようなラウンドスリング50を含むけん引またはつり上げ操作の安全性を向上させることができる。環境モニタリングチップ30を用いたサンプリングの頻度は、前もって決めた回数の間チップ30が特定の特徴を収集するように標準化してよいし、または、ラウンドスリング50に荷重がある間は頻度を上げ、ラウンドスリング50に荷重がない間は頻度を下げるように可変であってもよい。また更に、環境モニタリングチップ30は、任意の間そのセンサによってデータを収集して保存してもよく、また、その保存したデータを全て、もしくはそのほんの一部を基地局14に対して送信してよい。
【0043】
好ましい実施形態において、環境モニタリングチップ30は、種々のセンサ、演算処理ユニット、およびデータ保存ユニットからなるシステムオンチップ(SoC)集積回路であってもよい。SoCチップ30は、ラウンドスリング50内に大きなスペースを占めることなくラウンドスリング50に取り付けられることが好ましい。またSoCチップ30は、環境および荷重状況をモニタリングする目的で、基地局14にデータを送信するために、ラウンドスリング50の種々の特徴および関連した動作環境を測定する構成とすることが好ましい。
【0044】
好ましい実施形態において、
図5ないし
図5Dに示すように、キャリア要素またはキャリアプレート26は、耐荷重コア52の耐荷重ストランド54と直列(一直線)に取り付けられる。これらの好ましい実施形態において、キャリアプレート26はコア52の耐荷重ストランド54の両端の間に挿入される(
図5に模式的に示す)。
図5は第1の好ましい実施形態中の、ほぼブロック形状を有したキャリアプレート26を示し、
図5Aないし
図5Dは、第2の好ましい実施形態中の、円筒形状または錠剤形状を有したキャリアプレート26を示す。ここで、第1および第2の好ましい実施形態においては、類似の特徴は同様の番号によって示されることにより特定される。キャリアプレート26は、キャリアプレート26の第1の孔部62aにストランド54の第1の端部54aを挿入し、第1の端部54aを第1の孔部62aに固定するための第1の結び目64aを形成し、続いてストランド54の第2の端部54bをキャリアプレート26の第2の孔部62bに挿入し、第2の結び目64bを形成して第2の端部54bを第2の孔部62bおよびキャリア要素26に固定することによって、耐荷重ストランド54に取り付けられることが好ましい。ストランド54の第1の端部54aおよび第2の端部54bは、結び目64aおよび64bによってキャリア要素26の第1および第2の孔部62aおよび62bに必ずしも固定される必要はなく、さもなければキャリア要素26に固定され、このときキャリア要素26は、使用中にストランド54が運ぶ荷重とほぼ同じ荷重を受ける。例えば、ストランド54の第1の端部54aおよび第2の端部54bは、ラウンドスリング50の典型的な動作条件に耐えるように、キャリアプレート26にクランプ、締め付け、接着結合または他の方法で固定することができ、ラウンドスリング50および個々のストランド54により典型的に扱う荷重を運ぶ能力を有する。更に、キャリア要素26は、ストランド54の第1および第2の端部54aおよび54bに固定するための第1および第2の孔部62aおよび62bを有することに限定されず、クランプまたはファスナーあるいは他の固定機構であって、第1および第2の端部54aおよび54bの固定を受容するように設計および構成されたものによって構成してもよい。
【0045】
個々のストランド54の荷重経路と直列(直線上)にあることにより、キャリアプレート26は、耐荷重コア52内の個々のストランド54および他のストランド54とほぼ同じ荷重を担持することが好ましい。好ましい実施形態において、キャリアプレート26は平坦(または緩やかな曲面の)表面またはレセプタクル66を有し、そこでキャリアプレートまたは要素26に対するひずみゲージ18が確実に固定されていることが好ましい。キャリアプレート26は、キャリアプレート26として一般的なサイズおよび形状を有することができ、また正常な操作状況に耐えることができ、かつひずみゲージ18のひずみ特性に適していれば、ほとんどどのような堅牢な物質によって構成されてもよく、例えば、これに限定はされないが、アルミニウム、鉄、ステンレス、316ステンレス、合成材料、その他多数のほぼ堅牢な素材が挙げられる。電気リード線60は、好ましくはひずみゲージ18から送出されたひずみ信号を、信号処理のために送信機20、続いて基地局14へと伝送する。キャリア要素26は、ひずみゲージ18を取り付けるためにレセプタクル66を1つ含む。または、キャリア要素26は、キャリアプレート26上にレセプタクル66を複数含み、好ましくは、一般的にひずみゲージ18を取り付けるために概ね平らまたは平坦な形状を有する。例として、第1の好ましい実施形態におけるキャリア要素26は、キャリアプレート26の双方の面に夫々1つずつレセプタクル66を有していてもよい。
【0046】
第2の好ましい実施形態において、キャリアプレート26はほぼ円筒形状を有し、レセプタクル66は当該キャリアプレート26の表面にひずみゲージ18を取り付けるように形成される。このためひずみゲージ18は、キャリアプレート26のほぼ長手方向軸25に沿ってひずみを測定するように方向が定められる。キャリアプレート26は、実質的にほぼ円筒形の構成に限定されず、円形、長方形、正方形、楕円形、三角形、管状、または中空の円筒形およびその他の形状を含む多数の断面形状で形成することができる。ラウンドスリング50の通常の作動状態において、キャリアプレート26はストランド54の第1および第2の端部54aおよび54bに取り付けられ、ストランド54から与えられた荷重を運び、ひずみゲージ18が効果的に取り付けられる。ひずみゲージ18はキャリアプレート26上のレセプタクル領域または表面66に接着してもよいし、あるいはキャリア要素26上のレセプタクル66と代替可能な領域に取り付けてもよい。キャリアプレート26の形状および曲率に応じて、レセプタクル領域66は平坦又は緩やかに湾曲していてもよいが、これに限定されるものではなく、キャリア要素の通常の動作条件に耐えることができ、かつキャリア要素26の典型的な機能を果たせばほとんど任意のサイズおよび形状であってよい。また更に、キャリアプレート26の形状や湾曲によっては、レセプタクル66として明確に区別される部分は必要ないこともある。例えば、特定のレセプタクル66を必要とすることなくひずみゲージ18を受容可能な、ほぼ平坦、長方形、箱形、もしくは平行六面体のキャリアプレート26の領域または表面に対しては、ひずみゲージ18はそのどこであっても結合可能である。
【0047】
第2の好ましい実施形態において、キャリア要素26は長さLと直径Dを有し、また長手方向軸25に沿ってほぼ半球状の端部を有する。長さLおよび直径Dは、好ましくはキャリア要素26が連結されている個々のストランド54の一般的サイズに対応する大きさを有するが、これに限定されない。好ましい実施形態において、キャリア要素26は長さ
L約5.08〜7.62センチメートル(約2〜3インチ)、直径
D約1.27〜2.54センチメートル(約1/2〜1インチ)を有するがこれに限定されない。好ましい実施形態におけるレセプタクル領域66は、レセプタクル長さxは
約0.635〜1.905センチメートル(約1/4〜3/4インチ)、レセプタクル幅yは
約0.635〜1.27センチメートル(約1/4〜1/2インチ)であるがこれに限定されず、ひずみゲージ18を受容することができれば、いかなるサイズおよび形状をも取ることができ、またはひずみゲージ18がキャリア要素26の端部に直接取り付けられたときには、上述したようにキャリア要素26から除外することもできる。好ましい実施形態における第1および第2の孔部62aおよび62bは、ほぼ一貫して
約0.9525センチメートル(約3/8インチ)の口径d(図示せず)を有しているがこれに限定されず、ストランド54の端部54aおよび54bを受容することができればどのようなサイズ、形状あるいは構成を取ってもよく、また上述したように、キャリア要素26から除外することもできる。これに代わって、第2の好ましい実施形態において、孔部62aおよび62bはほぼ楕円形を有し、長径H
1は
約0.635〜0.846センチメートル(約1/4〜1/3インチ)、短径H
2は
約0.3175〜0.9525センチメートル(約1/8〜3/8インチ)であってよい。好ましい実施形態の孔部62aおよび62bはほぼ楕円形であることに限定されず、ほぼ一貫した直径を有していてよく、キャリア要素26から除外してもよく、ストランド54の端部54aおよび54bを受容してキャリア要素26の通常の動作条件に耐えることができれば、代替のサイズおよび形状を有することも可能である。
【0048】
第3の好ましい実施形態において、
図6ないし
図6Cを参照すると、第2の好ましい実施形態におけるキャリア要素26と類似した機能と特徴とを有したキャリア要素126は、耐荷重コア52の耐荷重ストランドと直列(一直線)に取り付けてもよい。ここで詳説される第3の好ましい実施形態のキャリア要素126は、第1および第2の好ましい実施形態におけるキャリア要素26と区別するために、類似の特徴について接頭辞「1」を付して示す。耐荷重コア52は、使用中、キャリア要素126が個々のストランド54とほぼ同じ荷重を運搬するように、キャリア要素126に対して第1と第2の孔部162aおよび162bにおいて接続されてよい。第1と第2の孔部162aおよび162bは、キャリア要素126の長手方向軸125に沿って配置され位置合わせがされることが好ましい。ストランド54の両端部54aおよび54bは、操作時構成において第1および第2の孔部162aおよび162bに対して固定されていることが好ましい。レセプタクル166はキャリア要素126内に形成され、キャリア要素126の荷重およびひずみを計測するひずみゲージ18を受けとめるための、サイズおよび構成を有していることが好ましい。レセプタクル166はまた、好ましい実施形態において、ひずみゲージ18と長手方向軸125とが、長手方向軸に沿って配置および位置合わせをなされていてよい。第3の好ましい実施形態において、レセプタクル166はポケットを有している。このポケットはキャリア要素126の表面に嵌め込まれていてよいが、これに限定されず、キャリア要素126の表面にほぼ重なり合っていてもよく、キャリア要素126上の他の位置に位置していてもよい。更に、好ましい実施形態において、キャリア要素126は、ひずみゲージ18を取り付けるために、一般的には平らもしくは平坦である対向する上面と下面とに、夫々レセプタクル166を有していてよい。上面レセプタクル166は付加的な刻み目と、ひずみゲージ18を受容するポケットを有していることが好ましく、下面レセプタクル166は、ほぼ平坦であることが好ましい。ひずみゲージ18は、キャリア要素126に対する環境温度とねじ曲げを補償するために、上部および下部レセプタクル166に取り付けられることが望ましい。キャリア要素126は、鉄、ステンレス、316ステンレス、アルミニウム、7075アルミニウム、または他の比較的剛性かつ堅牢な素材であって、キャリア要素126として一般的なサイズおよび形状を有し、キャリア要素126としての正常な操作状況に耐えることができる金属素材、例えば合成金属にて構成されることが好ましい。
【0049】
第3の好ましい実施形態において、キャリア要素126は、両端126aと126bの形状が比較的広くかつ中央部分126cが比較的狭い、ほぼ犬の骨の形状、あるいはダンベル形状を有している。キャリア要素126は、キャリア全長Z、中央部の長さz、平面図における端部126aおよび126bの直径を計測して得られる長径W、中央部126cの短径w、端部126aおよび126bの厚みを計測して得られる最厚部T、レセプタクル166に近接した中央部126cの厚みを計測して得られる最薄部tとを有している。第3の好ましい実施形態において、全長Zは
約10.16〜12.7センチメートル(約4〜5インチ)であって、好ましくは
約12.065センチメートル(約4.75インチ)である。中央部の長さzは
約5.08〜7.62センチメートル(約2〜3インチ)であって、好ましくは
約5.715センチメートル(約2.25インチ)である。長径Wは好ましくは
約2.54〜3.81センチメートル(約1〜1.5インチ)であって、好ましくは
約3.175センチメートル(約1.25インチ)である。短径wは
約1.27〜1.905センチメートル(約1/2〜3/4インチ)であって、好ましくは
約1.524センチメートル(約0.6インチ)である。最厚部Tは
約0.635〜1.27センチメートル(約1/4〜1/2インチ)、最薄部tは
約0.254〜0.635センチメートル(約1/10〜1/4インチ)であり、好ましくは
約0.423センチメートル(約1/6インチ)である。第3の好ましい実施形態のキャリア要素126におけるこれらの寸法は、これに限定されないものであり、キャリア要素126は、使用中にコアストランド54の荷重を運搬でき、コアストランド54に取り付け可能であり、コアストランド54との係合を可能にし、また本明細書で説明されるキャリア要素126の通常の動作条件に耐えることのできる、ほぼ任意の方法におけるサイズおよび構成を有する。更に、キャリア要素126は、好ましくは、第1および第2の孔部162aおよび162bの側壁、第1および第2の端部126aおよび126bの外面などの様々な面の間を、あるいは第1および第2の端部126aおよび126bおよび中央部126cを含む様々な面の間を移行する際に弓形の面または湾曲面を有する。この弓形の面または湾曲面は、コアストランド54、コア52の他の部位、もしくはカバー56が擦られ、スライドされ、またはキャリア要素126に対する位置に配置されたときにダメージを抑えるように設計および構成されることが好ましい。第3の好ましい実施形態においては、第1および第2の孔部162aおよび162bは、内側に曲がった表面を有し、コアストランド54と係合して内部にほぼ双曲面を形成するが、これに限定されず、コアストランド54を受容することができれば、あるいはコアストランド54と係合すればほとんどどのようなサイズまたは大きさを取ってもよく、好ましくは弓形の面または湾曲面である。更に、第1および第2の孔部162aおよび162bは、第2の好ましい実施形態における第1および第2の孔部62aおよび62bと同様に、楕円形であってよい。
【0050】
図7Aを参照すると、第4の好ましいキャリア要素126’は、第3の好ましいキャリア要素126と類似の構成を有する。第4の好ましいキャリア要素126’において類似の特徴を特定するために、第4の好ましい実施形態を第3の好ましい実施形態と区別するプライムシンボル(’)と共に、同様の参照番号を用いる。第4の好ましいキャリア要素126’は、第3の好ましい実施形態がより丸い端部を有しているのとは対照的に、第1および第2の端部126a’および126b’にわずかに四角い縁部あるいは隅部を有している。またレセプタクル166’を含み、レセプタクル166’’はひずみゲージ18を受容するために、一般的には中央部126c’の刻み目として設けられている。第4の好ましいキャリア要素126’は、レセプタクル166’を上面および下面に有し、ひずみゲージ18が受容され、取り付けられているが、これに限定されず、使用者または設計者の設定によって、1つのレセプタクル166’、または追加のレセプタクル166’をキャリア要素126’の選択された場所に含んでいてもよい。レセプタクル166’は、操作時設定においてキャリア要素126’とストランド54の荷重を測定するために、好ましくは第1および第2の孔部162a’および162b’の間に位置合わせされる。第4の好ましいキャリア要素126’は、それ以外の点では第3の好ましいキャリア要素126とほぼ同様に設定される。
【0051】
第4の好ましいキャリア要素126’は、好ましくは、第1および第2の端部126a’および126b’の近くの中央部126c’の対向する端部に近接した中央部126c’上に位置するか、あるいは中央部126c’を上部から被覆する、シールリング140を有している。シールリング140は、好ましくは、中央部126c’を、キャリア要素126’が係合するハウジング75に対して封止することを可能とするゴム様素材である。ハウジング75は、ひずみゲージ18、および他の電子的過積載検知および警告システム10上の部品を保護する。電子的過積載検知および警告システム10は、キャリア要素26、126または126’に相対したハウジング75向けのシールリング140を含むことに限定されず、ハウジング75およびキャリア要素26、126または126’は、その他の方法にて電子的過積載検知および警告システム10の電子部品を保護およびシーリングしてよく、もしくは他の方法にて電子部品をカバーおよび保護してもよい。
【0052】
第5の好ましいキャリア要素126’’は、
図8Aおよび
図8Bに示すように、第3および第4の好ましいキャリア要素126および126と類似の構成を有する。第5の好ましいキャリア要素126’’における類似の特徴を特定するために、第5の好ましい実施形態において、第3および第4の好ましい実施形態と区別するダブルプライムシンボル(’’)と共に、同様の参照番号を用いる。第5の好ましいキャリア要素126’’は、ひずみゲージ18に取り付けるキャリア要素126’’の正面側壁および背面側壁に、レセプタクル166’’を有している。更に、キャリア要素126’’の中央部は、キャリア要素126’’の中央部内にレセプタクル166’’を定義するために、一般的に、正面側壁および背面側壁において、内側方向に傾斜する、長方形または平行六面体の横断面を有することが好ましい。また更に、ひずみゲージ18は、キャリア要素126’’の荷重測定ならびに、温度および潜在的な曲がりの補償のために、双方のレセプタクル166’’に対して取り付けられることが好ましい。また更に、ひずみゲージ18は、補償とデータを提供するために、キャリア要素126’’の中央部の上部および下部に取り付けられることが好ましい。第5の好ましい実施形態におけるキャリア要素126’’は一般的にレセプタクル166’’の正面側壁および背面側壁が長方形または平行六面体を有することに限られない。キャリア要素126’’の中央部は、ほとんどどのような切断面を有していてもよく、レセプタクル166’’は、ひずみゲージ18が取り付けられ、スリングの荷重データを収集可能であれば、キャリア要素126’’上のほとんどどの部位においても取り付けることができる。
【0053】
これらの好ましい実施形態において
図5ないし
図8Bを参照すると、キャリア要素26、126、126’または126’’は、少なくとも一部分がハウジング75内に封入され、特にひずみゲージ18を覆う。
図7Bおよび
図7Cに示すハウジング75は、第4の好ましい実施形態のキャリア要素126’を包含し、好適なキャリア要素26、126、126’または126’’と係合または封入するように設計および設定されてよい。ハウジング75は好ましくは、上部ハウジング75aと下部ハウジング75bとを含む。上部ハウジング75aと下部ハウジング75bとは、好ましくはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)などのポリマー材料から構成されるが、これに限定されず、重合体、金属、木、その他の材料であってハウジング75の一般的なサイズおよび形状を取ることができ、ハウジング75として好ましい性能を発揮し、ハウジング75としての通常の操作環境に耐えることができるどのような材料にて形成されてもよい。上部および下部ハウジング75aおよび75bは、好ましくはキャリア要素26、126または126’の中央部126cまたは126c’を覆うようにスナップ嵌合され、外部からの液体又は気体がハウジング75内部へ流入することを阻止するシールリング140と係合する。上部および下部ハウジング75aおよび75bは、好ましくは使用者が作業構成から上部ハウジング75aを下部ハウジング75bから取り外すことが困難であるように、互いにスナップ嵌合、溶接または接合される。現場での使用において、好ましくは、ハウジング75は開封や分解はされず、開封されるのは製造元に検査やメインテナンスのために返却されたときのみである。ハウジング75は使用者が開封困難であることに限定されず、使用者によって検査、メインテナンスおよびその他の操作をする際に開封、密閉できるように構成されていてもよい。
【0054】
好適なハウジング75は、バッテリ76と回路基板78とを内部に含んでいる。バッテリ76は、好ましくは動力を回路基板78に供給し、回路基板78は最低でも無線送信機20、ストレージまたはメモリ(図示せず)およびコントローラ(図示せず)を含むことができる。ハウジング75は無線送信機20およびコントローラを保護し、構造的に支えている。ハウジング75は無線送信機20、バッテリ76と回路基板78とを内部に有していることに限定されないが、好ましくは、環境的保護と構造的支持をこれらの電気部品に対して与えるために、これらの部品はハウジング75内部に収容される。
【0055】
図1ないし
図8を参照すると、無線基地局14は、好ましくは、無線送信機20からデータを無線にて受信するための無線受信機22を含む。例えば、好ましい受信機22はLord MicroStrain WSDA-BASE-104 USBゲートウェイノードであるがこれに限定されず、無線にて無線送信機20からデータを受信可能であり、受信機22としての通常の操作状況に耐えることができ、本明細書中の他の好ましい機能として動作できれば、ほとんどどのような受信機22であってもよい。無線送信機20および受信機22は、好ましくは最低でも通信半径は
約45.72メートル(約150フィート)であり、より好ましくは
約152.4メートル(約500フィート)であるが、これに限定されず、これらの数値より長くても短くてもよい。例えば、携帯電話のプロトコルを用いた無線送信機20と受信機22は、ほとんどどのような距離でも、大陸間や地球全体であっても通信可能である。更に、好適なシステムは実際の導線にてひずみゲージ18と基地局14とが直結された、無線送信機20と受信機22とを含むことに限られない。システムにとって好ましいのは無線信号であり、基地局14が複数のラウンドスリング50の荷重についてモニタリングを行う場合に特に好ましい。
【0056】
受信機22は好ましくは操作ターミナル16のコンピューティングデバイス24に電気的に接続される。操作ターミナル16の例としては、コンピュータ、タブレット、スマートフォンなどの、受信したデータを計算、処理し、スリングの荷重を視覚化してモニタリングし、過積載インジケータを表示するものである。実施形態の1において、コンピューティングデバイス24はデータ取得機能を有するラップトップのウィンドウズ(登録商標)PC、デバイスプログラムソフトウェア(例:LabViewまたは類似のソフトウェア)およびオフラインデータ分析ソフトウェア(例:マイクロソフトエクセル)である。コンピューティングデバイス24はひずみゲージ18および環境モニタリングチップ30から得られたデータを統計学的に分析でき、ラウンドスリング50の感知した各種の特徴とその動作状況から、ラウンドスリング50の現在のステータスまたは健康状態を予測できることが好ましい。また、コンピューティングデバイス24は好ましくは受信機22と接続する少なくとも1つの通信ポートを有する(例:USBまたは他のシリアルまたはパラレルポート)がこれに限定されない。
【0057】
最小の好ましい実施形態においてコンピューティングデバイス24は無線センサシステム12から得られた1台以上のラウンドスリング50の応力のデータと、それぞれのキャリアプレート材料の弾性率から、ラウンドスリング50の応力を計算する(応力=ひずみ×弾性率)。受信機22は同時に現場に配備される複数の送信機20と交信するように構成できる(説明のために、
図3には3台のセンサシステム12を示す)。例えば、3台のラウンドスリング50といった複数のラウンドスリング50は、基地局14から同時にモニタリングすることができる。これに代わって、受信機22は1台、または2台、または3台以上のラウンドスリング50と関連づいた、1台の送信機20と交信するように構成してもよい。荷重によりラウンドスリング50に与えられる力は、測定された応力に対してキャリア要素26の表面積を乗じて推定することができる。そしてこの力は負荷に対する重量の見積もりとして、一般的に当業者にとって既知の物理学的計算式を用いて変換される。
【0058】
各スリングの構造の違いを考慮するために、較正のシステムを用いて、キャリア要素26に加えられる張力の差を補償することができる。ラウンドスリング50は較正されたロードセルと共に引張試験機と直列に繋がれて、一連の既知の荷重をかけられうる。これらの荷重を無線送信機20と無線通信を行うコンピュータに入力してよい。ひずみゲージ18からの信号を既知の荷重と照らし合わせることにより、使用中の荷重を正確に読み取ることを可能にする較正曲線を生成することができる。プロセスを簡略化するために、コンピューティングデバイス24に較正モードを含めることができる。このモードは、操作者に対して較正のプロセスを促し、送信機に対して最新の較正情報をロードする。更に、ラウンドスリング50がメインテナンスあるいは予め決まったスケジュールにより返却されたときに、ラウンドスリング50を同様の方法で再較正し、最新の較正情報をリロードして最初の較正からの変更点を補償してもよい。
【0059】
ひずみゲージ18は好ましくは、ほぼどのようなラウンドスリング50に対しても適合する小型サイズである。
図4に示すように、ひずみゲージ18はキャリアプレートまたは要素26上に設けられ、コア52のストランド54の両端54aと54bとの間に取り付けられてよい。第1の好ましい実施形態におけるキャリアプレート26を、以下の記述内にて例として利用し、また、第2、第3、第4の好ましい実施形態のキャリアプレート26、126または126’の例として利用することもできる。またラウンドスリング50についても以下の記述において同様に役立てられる。キャリアプレート26は、好ましくは、ゲージ18を環境的な害、例えば水、油あるいは電磁波(EM)放射から保護する保護カバー56内に位置している。また、好ましい実施形態の1つにおいて、無線送信機20はスリングカバー56に取り付けられた、例えば短い尾の形をした保護ポケット内に設置される。この尾は、内部の繊細な電子部品の存在を示すために、違った色をした素材からなっていてもよい。ラウンドスリング50内部の電気的接続は、好ましくは少なくとも保護カバー56によって保護され、更に付加的なカバー、素材または、例えばコアストランド54の中心に位置させるといった配置などによっても保護される。キャリアプレート26、ひずみゲージ18、無線送信機20、および関連する部品は、カバー56内部に取り付けられることに限定されないが、ストランド54との結合、およびこれらの部品を現地における使用の際に保護する観点からカバー56内部に取り付けられることが好ましい。例えば、第4の好ましい実施形態において、回路基板78、バッテリ76およびひずみゲージ18は、電子的過積載検知および警告システム10に構造的保護および環境的保護を提供するために、ハウジング75内に取り付けられる。
【0060】
好ましい実施形態において、電子的過積載検知および警告システム10はバッテリ給電であり、またバッテリ寿命を伸ばすために省電力対策を活用することが望ましい。電子的過積載検知および警告システム10はこれに代わって、家庭用電源または発電機を含む他の手段によって給電されてよく、この場合、省電力対策の優先度は低下する。好ましい実施形態において、ラウンドスリング50に対して荷重する前に、送信機20および受信機22の電源が投入される。電源投入時には、送信機20および受信機22はバッテリ温存のため低電力スリープモードにあることが好ましい。スリープモード中、送信機20および受信機22は一定時間毎にウェイクアップして基地局14からのウェイク信号を待機する。送信機20および受信機22は、ウェイク信号を受信すると、イベントベースサンプリングを伴った低デューティサイクルモードに入ることが好ましい。この好ましい低デューティサイクルモードにおいて、受信機
22は送信機20の低周波(例:1Hz)におけるサンプリングを開始するが、所定の事象が発生したときのみコンピューティングデバイス24にデータを送信する。スリングに適用する場合、潜在的な事象はひずみゲージ18上の非ゼロ荷重の測定であり、これは、好ましくは、送信機20から受信機22へと送信される。
【0061】
ラウンドスリング50がロードされ、ウェイク信号が送信機20から受信機22へと送信されたとき、ひずみゲージ18は好ましくはキャリアプレート26、126、126’または126’’の伸長度を測定する。測定データおよびすべての過積載インジケータの真正データは、好ましくはプリセットされた間隔毎に送信機20から受信機22へと無線通信される。受信機22はデータを、データの追加処理、視覚化、警告、および/または保存のため、コンピューティングデバイス24へリレーする。例えば関連した最大安全応力より大きい応力、あるいは定格荷重より2倍以上大きい荷重、といったトリガ信号は、音響アラーム、書面によるメッセージ、テキストメッセージ、操作者の電話宛てのショートメッセージ(SMS)通信、視覚的アラーム、または操作をロックするための機器への信号、といった警告を生成することが好ましい。これらのメッセージまたはアラームは、使用者または検査者に対して1台またはそれ以上の台数のスリング50についての潜在的な危険を警告してもよく、これによって使用者または検査者がこの状況を重視した行動を取れるようにしてもよい。理解されるように、受信機22は複数の配備されたラウンドスリング50の複数の送信機20からデータを受信してよい。コンピューティングデバイス24によって計算され、かつ表示されたデータは、夫々のラウンドスリング50、およびラウンドスリング50に関連する応力および/またはひずみを示す。
【0062】
基地局14は、ウェイク信号に加えて、好ましくはすべての送信機20に対して定期的間隔をおいてpingを送信し、センサシステム12が使用可能かつ操作可能であるか点検する。送信機20および受信機22は、好ましくは予め決めた一定時間、例えば1〜5時間用いられなかった場合、低電力スリープモードに入る。
【0063】
操作時には、回路基板78は、予め決めた量の、荷重データまたはひずみゲージ18等からのセンサから収集した他のデータを記憶することができる、記憶装置またはメモリとしての特徴を有してもよい。例えば、電子的過積載検知および警告システム10は、操作中に回路基板78にてピーク負荷条件を記憶するように構成されることが好ましい。回路基板78はまたその他の、最大/最小温度、最大加速度、最大化学物質濃度およびこれに類似または関連した、スリング50に関連づいたセンサから得られるデータを記録および保存するように構成してもよい。回路基板78はまた、スリング50に加えられる負荷サイクルの数、また回路基板78が受信した感知したデータのほとんどすべてをローカルに保存するように構成してもよい。回路基板78は製造元がリセットするまで一貫して永久的にスリング50からのデータを維持して保存するように構成してもよい。収集したデータを回路基板78にローカルにて保存することによって、スリング50の製造元は、回路基板78から送信されたデータのアクセスが使用者によって制限されている場合、保証請求を審査できる。
【0064】
電子的過積載検知および警告システム10は、単独で使用されることに加えて、他の事前不具合警告インジケータとともに使用してもよい。例えば、これに限定されないが、他の事前不具合警告インジケータの例としては2015年7月16日に発行された「Roundslings with Radio Frequency Identification Pre-Failure Warning Indicators(RFID事前不具合警告インジケータを有するラウンドスリング)」と題された米国特許9,293,028号があり、当該特許の内容全体は参考文献として本明細書に組み込まれる。
【0065】
図1、
図2、
図9を参照すると、12ゲージ銅線などである絶縁導線100は、故障表示システム40の2つのアイループ27および29の間に固定され、専用ストランド28と並行してよい。専用ストランド28はコア52内部もしくはコア52上に位置することが好ましい。専用ストランド28はコア52を形成するストランド54と別であることが好ましい。専用ストランド28はコア52に近接することが好ましく、例えば、専用ストランド28は1つまたはそれ以上のコアストランド54の周りを撚り回されているか、もしくは
図2のように、コア52に隣接して位置していてもよい。いくつかの態様において、専用ストランド28はカバー56内部に貼付されている。ラウンドスリング50がある時間を超えて使用されると、カバー56の特定の位置、例えばラウンドスリング
50がクレーンのフックから懸垂される位置に摩耗点が発生する。従って、耐荷重コア52に対してカバー56を回転させることが望ましいことがある。専用ストランド28をカバー56内部に固定することにより、カバー56の動き(意図的であっても意図的でなくとも)は事前不具合インジケータアセンブリ40の操作に対して、典型的には影響を与えない。リング82を介して第1のアイループ27と第2のアイループ29とが接続されると、専用ストランド28とリング82は無限ループを形成する。分離した専用ストランド28の形状は一般的にはコアストランド54によって形成される無限並列ループの形状と一致する(例:一般的には円形もしくは楕円形)。リング82はどのような適した形状からなっていてもよい。
【0066】
導線100は連続テスターとして供されることが好ましい。過積載状態が発生すると、専用ストランド28は、好ましくは定格荷重より僅かに軽い負荷にて破壊され、アイループ27および29は押し離され、連続テスターとして供された導線100の破壊を引き起こす。導線100は送信機20と通信することが好ましい。導線100の連続性が過負荷事象の結果切断されると、送信機20は警告信号を生成して信号を受信機22へと送信する。このように生成される過積載信号は複数の方法によって送信することができる(有線通信、無線通信、光信号、音声警告等を含む)。基地局14は引き続いて操作者とけん引者に対して警告を送り、さもなければラウンドスリング50の損傷を防止するために操作を制限する。
【0067】
ラウンドスリング50はインジケーターヤーン80を含んでもよい。カバー56はインジケーターヤーン80が通過する開口部を含んでよい。またインジケーターヤーン80はある長さの一端を有し、当該一端はカバー56の内部へと位置し、またインジケーターヤーン80はある長さの他端を有し、当該他端はカバー56の外部にあってよい。開口部はカバー56の内部のどのような適切な位置にあってもよい。ヤーン80は好ましくは黄色、オレンジ色、赤色、またはこれらの組み合わせを含んだ明色であり、あるいは他の適切に目に見える色あるいは対照色であって、使用者がヤーン80の視認可能な端部を監視可能な色である。例えば、ラウンドスリング50が過度に引き伸ばされ、もしくは過積載された場合、ヤーン80がカバー56内部に引き込まれるとともに、ヤーン80の視認可能な部分は短くなり、使用者に対してラウンドスリング50が過度に引き伸ばされているか過積載状態にあると知らせる。この意味において、インジケーターヤーン80は上述のとおり、故障表示システム40の冗長性として働く。インジケーターヤーン80は故障表示システム40の構成要素を含むことができる。
【0068】
当業者であれば、上述した実施の形態に対して、その広範な発明概念から逸脱することなく種々の変更をなし得ることを理解することができる。したがって、本開示は、開示された特定の実施の形態に限定されるものではなく、添付の請求の範囲によって定められる本開示の精神および範囲内の数々の変形を包含することを意図するものである。
(符号の説明) 10…電子的過積載検知および警告システム、50…ラウンドスリング、52…耐荷重コア、54…ストランド、56…カバー、18…ひずみゲージ、19…バッテリ、20…送信機、22…受信機、30…環境モニタリングチップ、14…基地局、26…キャリアプレート(キャリア要素)、66…レセプタクル、24…コンピューティングデバイス、16…操作ターミナル、78…回路基板、100…導線。