(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記排水装置において、遠隔操作用弁部材21及び作動部3に反発しあう極性に配置した磁石部を備え、該磁石部の磁石の反発を利用して遠隔操作用弁部材21を上下動させると共に、
遠隔操作用弁部材21から磁石部を取り外すことで、手動用弁部材22とすることを特徴とする、請求項1に記載の排水装置。
上記排水装置において、遠隔操作用弁部材21及び作動部3に反発しあう極性に配置した磁石部を備え、該磁石部の磁石の反発を利用して遠隔操作用弁部材21を上下動させると共に、
作動部3から磁石部を取り外すことで、遠隔操作用弁部材21が、閉口時作動部3に干渉することなく排水口1aを閉口することが可能な手動用弁部材22となるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の排水装置。
上記排水装置において、手動用弁部材22に、排水口1aからの着脱を容易にする取手体7を備えたことを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の排水装置。
【実施例】
【0014】
以下に、本発明の第一実施例について、図面を参照しつつ説明する。
図1乃至
図11に示した、本発明の第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下に記載する、槽体としての浴槽Bに施工される排水装置であって、排水口本体1、手動用弁部材22に構成を変更可能な遠隔操作用弁部材21、継手部材5、支持部材6、作動部3、操作部4、チューブ管8、その他の部材から構成されてなる。
浴槽Bは、上方が開口した箱体であって、その底面に、排水口本体1を取り付けるための取付孔B1と、上縁に操作部4を取り付けるための操作部取付孔B2を備えてなる。尚、取付孔B1、操作部取付孔B2の周縁は段押しを有してなる。
排水口本体1は略円筒形状を成す部材であって、その上端部分外周側には、側面方向に突出するフランジ部1bを設けると共に、フランジ部1bの下方外側面には、雄ネジを螺刻してなり、その内部には排水口1aを形成する。排水口1a内部には、周縁に沿って、後述する支持部材6を載架し係合固定するための突起部1cを複数備えてなる。
支持部材6は、遠隔操作用弁部材21が排水口1a内を昇降する際に傾かないようにするガイドとなる部材であって、排水口1aの内周の突起部1cに載架されると共に突起部1cに係合する脚部6dを備えたリング状の外枠部6aと、円筒形状にして弁軸2bが摺動自在に挿入される円筒部6b、及び外枠部6aと円筒部6bとを繋ぐ平面視90度毎に設けられたリブ片6c、から構成される。
遠隔操作用弁部材21は、上記排水口1aに配置されて排水口1aの上端を閉口する部材であって、以下に記載する弁体部2a、弁軸2b、ストッパー部2d、第一磁石部2cより構成されてなる。
弁体部2aは、略円盤状にして、排水口1aを覆い、排水口1aを閉口する部材であって、リング状にパッキングを備えてなり、該パッキングが排水口1a周縁に当接することで排水口1a周縁と水密的に当接する。
弁軸2bは、弁体部2aの中央から垂下される円筒形状の金属材から構成されてなり、その下端に係合部9aを備えてなる。
第一磁石部2cは、その内部に永久磁石を備えた棒状の部材であって、棒状の部分が弁軸2b内部に収納されると共に、その一端に弁軸2bの係合部9aに着脱自在に係合する被係合部9bを備えてなる。上記のように、弁軸2bの内部に第一磁石部2cを収納する際、係合部9aと被係合部9bとを係合させるためには、弁軸2bに第一磁石部2cを挿入する際に特定の定まった方向(以下「適正な方向」)に挿入させる必要があるように構成されており、適正な方向以外の方向では弁軸2bに第一磁石部2cを挿入したり、係合部9aと被係合部9bとが係合することができないよう構成されている。このため、第一磁石部2cの永久磁石と第二磁石部3cの永久磁石とは常に反発する方向に配置される。
ストッパー部2dは、弁体部2aの下面二か所から、下方に延出された、略C字形状を成すリブ片6cであって、支持部材6のリブ片6cに遠隔操作用弁部材21を昇降自在となるように係合する。
継手部材5は、排水口本体1の下端に接続されるケーシング体からなる部材であって、上方に排水口本体1の雄ネジと螺合する雌ネジを設けた開口を、側面には排水を排出する排出口と配線を挿通するための挿通口5aを、底面には操作部4から作動部3への配線を行う為の接続端末を挿通する端末用開口部5bを、それぞれ備えてなる。尚、この実施例では、端末用開口部5bは、
図1、
図2等に図示した継手部材5において、排水口1aの直下位置より図面上奥側にずれた位置に設けられている。
また、継手部材5は、その下方に、以下に記載する作動部3を取り付け固定してなる。
作動部3は、電力によって作動し、遠隔操作用弁部材21を上下動させる部材であって、以下に記載した、作動部本体3a、スライド部3b、第二磁石部3c、から構成される。
作動部本体3aは、側面に進退自在にスライド部3bを収納可能な開口を備えたケーシング体であって、その内部にステッピングモーターを内蔵してなり、このステッピングモーターを利用して、後述するスライド部3bを任意の定めた位置まで進退移動させることができる。
ステッピングモーターとは、通常のただ回転するだけのモーターとは異なり、通電の手順を制御することで、モーターの回転の回数を制御できるモーターである。これを利用し、モーターの軸に歯車又はねじ構造を設け、後述するスライド部3bにこれに対応する歯車又はねじ構造を設けることで、作動部3を任意の定めた位置まで進退移動させることができる。
スライド部3bは作動部本体3aの内部に収納され、作動部本体3aの開口部から水平移動に進退自在に移動する部材であって、その先端部に、上記した遠隔操作用弁部材21の第一磁石部2cに反発するように方向を調整された永久磁石を収納した第二磁石部3cを備えてなる。
また、上記のように構成された作動部3は、施工完了時、操作部4より排水口1aを開口するように操作を受けるとスライド部3bの先端にある第二磁石部3cが排水口1aの直下位置にて停止し、排水口1aを閉口するように操作を受けると排水口1aの直下位置を離間して作動部本体3a側に移動する。
第一磁石部2cと第二磁石部3cの磁力の反発で生じる応力は、遠隔操作用弁部材21を上昇させるには充分な強さを有しているが、ステッピングモーターに通電が無い状態でも、作動部3の歯車又はねじ構造等構成部材の摩擦等による静止状態を崩す程の強さは有していない。このため、静止状態のスライド部3bが、第一磁石部2cと第二磁石部3cの磁力の反発で生じる応力によっていずれかの方向に移動させられる、ということは無く、また停止状態を維持するために作動部3に通電を行う必要も無い。
操作部4は、排水口1aの開閉を操作する部材であって、操作部取付孔B2に配置され、排水口1aの開閉を操作する部材であって、以下に記載する操作部ケーシング4a、及び操作部本体4bから構成される。
操作部ケーシング4aは略円筒形状の部材であって、操作部取付孔B2の下面にビス等によって取り付けられる。
操作部本体4bは、作動部3の開閉動作を指示するための入力を行う円盤状のタッチパネル4cを上面全面に備えてなる。
また、本実施例では、特に詳細に図示はしないが、操作部本体4bと作動部3はそれぞれに制御基板を備えてユニット化されてなる。
また、操作部本体4bと作動部3は、通電及びデジタル化した内容での情報伝達(排水口1aへの開閉の指示等)の両方を同時に行うことができる、USB規格の接続端末を両端に備えた配線部材Lにて接続される。当然、操作部本体4bと作動部3の接続用の端末も、USB規格の接続端末である。また、図示しないが、作動部3及び操作部4を作動させる為の電力は、屋内電源(コンセント)から操作部4に供給され、更にこのUSB規格の配線部材Lによって操作部4から作動部3に供給される。
チューブ管8は、側面方向に可撓性を有する円筒形状の部材であって、その一端は操作部ケーシング4a下端に、他端は継手部材5の挿通口5aに、それぞれ接続される。
また、その他の部材として、継手部材5の排出口と、下水側の配管に繋がる床下配管とを接続する配管部材P(図示せず)を備えてなる。
また、詳述しないが、本実施例において、水密的な接続が必要な箇所には、接着剤またはパッキング等を利用し、水密的な接続が行われる。
【0015】
上記のように構成した遠隔操作式の排水装置は、以下のようにして、槽体である浴槽Bに施工される。
施工前の構成として、継手部材5の下方に、作動部3を取り付け固定しておく。この状態において、端末用開口部5bと作動部3の配線用の接続端末部分は連通してなるが、当該部分には水密的な接続が行われ、この端末用開口部5bから排水装置内の排水が外部に漏水することは無い。また、作動部3のUSB規格の接続端末部分に配線の接続が行われた場合も、当該接続箇所は防水の為の構造を備えてなり、接続箇所に排水が掛かることは無いものとする。
まず、排水口本体1を、浴槽B底面に設けられた取付孔B1に挿通し、フランジ部1bの下面を、取付孔B1の周縁上面に当接した状態とする。更に継手部材5の雌ネジを、排水口本体1の雄ネジに螺合させ、フランジ部1b下面と継手部材5上面とで取付孔B1の周縁を挟持するようにして排水口本体1と継手部材5を浴槽Bに固定する。
次に、操作部ケーシング4aを、操作部取付孔B2に下方からビスによって取り付け固定し、更にチューブ管8の一端は操作部ケーシング4a下端に、他端は継手部材5の挿通口5aに、それぞれ接続する。
次に、操作部取付孔B2の開口から、操作部本体4bと作動部3とを接続するための配線部材Lを、チューブ管8内を介して一端が継手部材5内部に達するまで挿通する。尚、配線部材Lはチューブ管8に対して充分に長いものとする。浴槽B内部から、排水口1aを介して作業を行い、配線部材Lの端部を、端末用開口部5bを介して作動部3の接続端末に接続した後、操作部本体4bの基板部分に設けた接続端末に配線部材Lの端部を接続し、作動部3と操作部4との配線を完了させる。また、配線部材Lは、排水継手内でたるみ等により弁部材の動作の妨げになることが無いよう、バンド等で継手部材5内部に固定する。
次に、操作部本体4bを操作部ケーシング4a内に収納し、操作部本体4bのタッチパネル4c部分を操作部取付孔B2の周縁の段押部に載架し係合固定させて、操作部4の取り付けが完了する。
前述のように、配線部材Lはチューブ管8に対して充分に長いが、配線部材Lは従来例のレリースワイヤ等と比べてより柔軟な為、複数個所で折り曲げ、または螺旋状に巻き取ることで、チューブ管8内及び操作部ケーシング4a内に支障なく全て収納することができる(図面ではこの配線部材Lの巻き取り等状態の図示は省略している)。またタッチパネル4c部分は、操作部取付孔B2の周囲に段押部を設けたことで、操作部取付孔B2の周囲と面一状態となっており、不要な段差を生じていない。合わせて、操作部本体4bの上面は、全面がタッチパネル4cとしたことから、この操作部4は周囲に不要な段差/隙間を有さない、いわゆる「フランジレス」な操作部4となっている。
次に、排水配管を介して、排出口と床下配管を接続する。
次に、支持部材6を排水口1a内に配置し係合固定する。具体的には、支持部材6の外枠部6aを、排水口1aの内周の突起部1cに載架すると共に、突起部1cに脚部6dを係合させて固定する。
次に、排水口1aに遠隔操作用弁部材21を配置する。この時には、遠隔操作用弁部材21の弁軸2bを支持部材6の円筒部6bに挿通した上で、遠隔操作用弁部材21のストッパー部2dの略C字形状を成す側方の開口部分が、リブ片6cの高さ位置になるように移動させ、更に弁軸2bを中心に回転させることで、リブ片6cがストッパー部2d内に入ることで、ストッパー部2dが支持部材6のリブ片6cに昇降自在に係合する。
以上のようにして、本実施例の遠隔操作式の排水装置の施工が完了する。
【0016】
以下に、上記実施例の遠隔操作式の排水装置の動作について説明する。
上記第一実施例の遠隔操作式の排水装置を使用する場合、
図4に示したように、まず操作部4に操作を加えて排水口1aを閉口した状態とする。この状態において、スライド部3bは作動部本体3a内に収納され、スライド部3b先端の第二磁石部3cは、排水口1a下方から離間した位置に配置されている。
遠隔操作用弁部材21は、物理的には排水口1a内部や継手部材5の内部に干渉する形状では無いため、排水口1a内を降下し、弁体部2aが排水口1aを覆って排水口1aを閉口した状態となる。
この状態より操作部4のタッチパネル4cに操作を加え、排水口1aを開口するように操作を行うと、作動部3のステッピングモーターが作動し、
図6に示したように、第二磁石部3cが排水口1aの直下となる位置までスライド部3bが突出する。すると、第一磁石部2cの磁石と第二磁石部3cの磁石とが反発し、この反発力によって遠隔操作用弁部材21の磁石部、弁軸2b、弁体部2aが上昇する。支持部材6は排水口1aに係合し固定されており、該支持部材6がガイド部として機能するため、遠隔操作用弁部材21は排水口1aに対して傾いたりせず、単純に上昇のみを行う。
結果、排水口1aから弁体部2aが離間して排水口1aが開口する。浴槽B内に浴湯等が溜まっていた場合、排水口1aから排水口1a内を通過し、継手部材5、排水配管の内部を通過して床下配管から下水側に排出される。尚、遠隔操作用弁部材21のストッパー部2dが、
図7及び
図8に示したように、排水口1aに係合固定されている支持部材6のリブ片6cと係合しており、第一磁石部2cと第二磁石部3cの磁力の反発で生じる応力の強さに関係なく、遠隔操作式弁部材が排水口1aから飛び出すことは無い。尚、ここで「遠隔操作式弁部材が排水口1aから飛び出す」とは、例えば遠隔操作式弁部材の弁軸2bが円筒部6bから完全に抜け出て、排水装置の適正な動作が不可能になるなど、「遠隔操作用弁部材21が、通常の使用箇所以外の処に移動し、操作部4の操作によっても排水口1aを開閉できなくなった状態」を意味するものであって、単純に「遠隔操作用弁部材21が排水口1a内以外の場所にある」という意味ではない。
この状態より操作部4のタッチパネル4cに操作を加え、排水口1aを閉口するように操作を行うと、作動部3のステッピングモーターが作動しスライド部3bが作動部本体3a側に後退する。これにより、第二磁石部3cが縦管部5cの直下となる位置から移動し、第一磁石部2cの磁石と第二磁石部3cの磁石とが離間して磁力の反発で生じる応力が弱まるため、遠隔操作用弁部材21の磁石部、弁軸2b、弁体部2aが降下する。この時は、開口時同様に支持部材6がガイド部として機能するため、遠隔操作用弁部材21は排水口1aに対して傾いたりせず、単純に降下する。
結果、排水口1aを弁体部2aが覆い、排水口1aが閉口した
図5の状態に戻る。
以降、この操作を繰り返すことで、操作部4を操作することにより、遠隔操作にて排水口1aを開閉することができる。
尚、ストッパー部2dの、リブ片6cとの係合を解除するための開口箇所は、
図3等から明らかなように、側面の中間部分であり、意図的に遠隔操作用弁部材21を昇降の中間位置で停止させ、更にリブ片6cがストッパー部2dの開口箇所を抜ける方向に回転させない限り、係合が解除されることは無い。このため、事実上、意図的に遠隔操作用弁部材21を支持部材6から取り外そうとしない限り、遠隔操作用弁部材21が排水口1aから外れることは無く、上記のような、遠隔操作用弁部材21の動作が上下方向への単純な昇降である通常の遠隔操作式の排水装置の使用において、遠隔操作用弁部材21が排水口1aから外れることは無い。
また、操作部4でのタッチパネル4cの操作については、単に「触れれば開口し、再度触れれば閉口する」といった単純なものではなく、例えば「タッチパネル4c上で複数回指先を右に回転させれば開口、左に回転させれば閉口」「タッチパネル4cを数秒間長押しすることで開口と閉口を繰り返す」といった、任意による特定の手順を加えた際のみ開閉を行うように設定してなり、単にパネルを手で触れただけで、または浴槽Bの開口に蓋を載せた際に蓋がタッチパネル4cに触れただけで、排水口1aの開閉操作を誤って行う、ということが無いように構成されてなる。また、排水口1aが開口状態か、閉口状態かも、タッチパネル4c上に表示される。
【0017】
更に、上記実施例の遠隔操作式の排水装置において、停電又は断線、ステッピングモーターや制御基板の異常等により故障し、且つ排水口1aが開口する状態、即ち、第二磁石部3cが排水口1aの直下となる位置までスライド部3bが突出した状態で停止した場合、そのままであれば、遠隔操作用弁部材21が磁力の反発により上昇して、弁体部2aが排水口1aより離間し排水口1aが開口したままの状態となるが、本実施例の遠隔操作式の排水装置では、以下のようにして、使用者の手動操作により、排水口1aを閉口するようにすることができる。
上記のように排水口1aが開口状態のまま、遠隔操作式の排水装置が故障して停止した場合、使用者は、まず遠隔操作用弁部材21のストッパー部2dと支持部材6のリブ片6cとの係合を解除した上で、排水口1aから遠隔操作用弁部材21を取り外す。遠隔操作用弁部材21のストッパー部2dと支持部材6のリブ片6cとの係合の解除は、ストッパー部2dとリブ片6cの係合の手順を逆に行うことで容易に行うことができる。
更に、弁軸2bの係合部9aと第一磁石部2cの被係合部9bとの係合を解除し、弁軸2bから第一磁石部2cを取り外す。
これにより、弁軸2bから磁力が失われ、作動部3が遠隔操作用弁部材21を押し上げる機能が失われる。
本実施例の遠隔操作用弁部材21は、物理的には排水口1a内部や継手部材5の内部に干渉する形状では無く、第一磁石部2cを取り外し、磁力の反発も無くなった為、遠隔操作用弁部材21が排水口1aの閉口時作動部3に干渉しない弁部材、即ち手動用弁部材22となり、
図9に示したように、排水口1aを、手動用弁部材22にて閉口することができる(ここでいう「閉口時に干渉する構造」とは、「物的接触による干渉」だけを指し示すものではなく、例えば「閉口を不可能とする磁力による干渉」等、閉口の障害となる全ての干渉を示すものである)。尚、ストッパー部2dは排水口1a閉口時、
図11に示したように、リブ片6cの間に入り込み、仮に偶然ストッパー部2dの下端がリブ片6cに当たってもそのまま左右いずれかの方向にずれるため、弁体部2aが排水口1aを覆うことの障害にはならない。また、前述のとおり、意図して係合させない限り、ストッパー部2dとリブ片6cは係合しないため、この手動用弁部材22を手に取って行う操作の際に、ストッパー部2dがリブ片6cに係合して排水口1aから手動用弁部材22が取り出せなくなる、と言うことも無い。
即ち、第一磁石部2cを取り外したことで、遠隔操作用弁部材21は、手動用弁部材22とすることができる。
また、排水口1aを開口する場合は、
図10に示したように、排水口1aから手動にて手動用弁部材22を取り外すことで、排水口1aを開口することができる。
以降、排水口1aを閉口する場合は、
図9に示したように、使用者が排水口1aに直接手動用弁部材22を手に取り、排水口1aに挿入することで弁体部2aが排水口1aを覆って排水口1aを閉口することができる。
また、排水口1aを開口する場合は、
図10に示したように、使用者が直接手動用弁部材22を手に取り、排水口1aから取り出すことで弁体部2aが排水口1aから離間し、排水口1aを閉口することができる。
【0018】
また、手動用弁部材22による排水口1aの開閉を容易にするために、
図12に示したような取手体7を手動用弁部材22に取り付けても良い。
本実施例の
図12に示した取手体7は、弁体部2aの上面全体と、弁体部2a下面をパッキングに干渉しない位置まで覆うように嵌合するカバー部7aと、該カバー部7aの上面に設けられた、棒状にして側面に貫通する穴を設けたツマミ部7bと、浴槽Bの上方内側面に吸着される吸盤体7と、一端をツマミ部7bに、他端を吸盤体7に、それぞれ接続される金属材のボールチェーンからなるチェーン体7dと、から構成される。
上記のように構成した取手体7を、段落0016に記載した手動用弁部材22に使用する場合、まずカバー部7aを弁体部2aに覆うようにして嵌合させる。
更に浴槽Bの上方内側面に吸盤体7を吸着させて取り付けることで、取手体7の手動用弁部材22及び洗面器W1への取り付けが完了する。
上記した取手体7のツマミ部7b、またはチェーン体7dを使用者が保持することで、直接弁体部2aを掴む場合よりも、排水口1aから手動用弁部材22を取り出し、また挿入する作業を容易に行うことができる。
【0019】
また、上記実施例のように、遠隔操作用弁部材21の構成を変更して手動用弁部材22とする以外に、例えば別途ゴム素材からなる手動専用の弁部材を用意して手動用弁部材22としても良い。この別途に設けた手動用弁部材22が支持部材6に干渉する場合は、支持部材6と排水口1aとの係合固定を解除して支持部材6を排水口1aから取り出し、手動用弁部材22の使用に障害の無いように構成しても構わない。
また、この別途に設けた手動用弁部材22には、
図13に示したように、段落0018に記載したものと同様の、棒状にして側面に貫通する穴を設けたツマミ部7bと、浴槽Bの上方内側面に吸着される吸盤体7と、一端をツマミ部7bに、他端を吸盤体7に、それぞれ接続される金属材のボールチェーンからなるチェーン体7dとからなる取手体7を備えても良い。この場合の手動用弁部材22の浴槽Bへの施工方法、使用方法、及び効果は段落0018の実施例の浴槽Bへの施工方法、使用方法、及び効果と同様である。
【0020】
次に、本発明の第二実施例について、図面を参照しつつ説明する。
図13乃至
図18に示した、本発明の第二実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下に記載する、槽体としての洗面器W1を備えた洗面台Wに施工される排水装置であって、排水口本体1、手動用弁部材22に構成を変更可能な遠隔操作用弁部材21、継手部材5、作動部3、操作部4、その他の部材から構成されてなる。
洗面台Wは、上方が開口した箱体であって、その底面に、排水口本体1を取り付けるための取付孔B1を備えた洗面器W1と、該洗面器W1を上方に載置する、開閉自在な扉を備えたキャビネット部W2と、から構成される。
排水口本体1は略円筒形状を成す部材であって、その上端部分外周側には、側面方向に突出するフランジ部1bを設けると共に、フランジ部1bの下方外側面には、雄ネジを螺刻してなり、その内部には排水口1aを形成する。また、上記雄ネジに螺合する雌ネジを螺刻したナット部材1dを備えてなる。また、排水口本体1の上端部分は洗面器W1の取付孔B1に、下端部分は継手部材5に、それぞれ水密的に接続される。
遠隔操作用弁部材21は、上記排水口1aに配置されて排水口1aを閉口する部材であって、以下に記載する弁体部2a、弁軸2b、支持部材6、第一磁石部2cより構成されてなる。
弁体部2aは、略円盤状にして、排水口1aを覆い、排水口1aを閉口する部材であって、リング状にパッキングを備えてなり、該パッキングが排水口1a周縁に当接することで排水口1a周縁と水密的に当接する。
弁軸2bは、弁体部2aの中央から垂下される棒状の金属材から構成されてなり、その下端には内部に永久磁石を収納した第一磁石部2cを備えてなる。
支持部材6は、遠隔操作用弁部材21が排水口1a内を昇降する際に傾かないようにするガイドと、排水中の毛髪や塵芥を捕集するヘアキャッチャーを兼ねる部材であって、排水口1aの内周に当接するリング状の外枠部6a、円筒形状にして弁軸2bが摺動自在に挿入される円筒部6b、及び外枠部6aと円筒部6bとを繋ぐと共に排水中の毛髪等を捕集する複数のリブ片6c、から構成される。
継手部材5は、排水口本体1の下端に接続される円筒を略L字形状に屈曲させた部材であって、排水口1aの直下に配置される上流側の縦管部5cと、下流側にして端部に排出口を有する横管部5dとからなり、その下方に、以下に記載する作動部3を取り付け固定してなる。
作動部3は、電力によって作動し、遠隔操作用弁部材21を上下動させる部材であって、以下に記載した、作動部本体3a、スライド部3b、第二磁石部3c、から構成される。
作動部本体3aは、側面に進退自在にスライド部3bを収納可能な開口を備えたケーシング体であって、その内部にステッピングモーターを内蔵してなり、このステッピングモーターを利用して、後述するスライド部3bを任意の定めた位置まで進退移動させることができる。
ステッピングモーターとは、通常の単純に回転するだけのモーターとは異なり、通電の手順を制御することで、モーターの回転の回数を制御できるモーターである。これを利用し、モーターの軸に歯車又はねじ構造を設け、後述するスライド部3bにこれに対応する歯車又はねじ構造を設けることで、作動部3を任意の定めた位置まで進退移動させることができる。
スライド部3bは作動部本体3aの内部に収納され、作動部本体3aの開口部から水平移動に進退自在に移動する部材であって、その先端部に、後述する第二磁石部3cを着脱自在に取り付けるピン体を有する係合部9aを備えてなる。
第二磁石部3cは、スライド部3bの先端に着脱自在に取り付けられる被係合部9bを備えた部材であって、上記した遠隔操作用弁部材21の第一磁石部2cに反発するように方向を調整された永久磁石を収納してなる。
尚、上記のように、スライド部3bの係合部9aと、第二磁石部3cの被係合部9bとは着脱自在に係合するが、リブ片6cの凹凸等を利用して、係合する際の方向は常に第一磁石部2cと第二磁石部3cの磁石が反発する方向(以下「適正な方向」)とした時のみ係合するように構成されており、適正な方向以外の方向では係合しないように構成されている。このため、第一磁石部2cの永久磁石と第二磁石部3cの永久磁石とは常に反発する方向に配置される。
また、上記のように構成された作動部3は、施工完了時、操作部4より排水口1aを開口するように操作を受けるとスライド部3bの先端にある第二磁石部3cが継手部材5の縦管部5cの直下位置にて停止し、排水口1aを閉口するように操作を受けると縦管部5c直下を離間して作動部本体3a側に移動する。これらの動作において、ステッピングモーターへの通電はスライド部3bの進退動作の際にのみ行われる。
第一磁石部2cと第二磁石部3cの磁力の反発で生じる応力は、遠隔操作用弁部材21を上昇させるには充分な強さを有しているが、ステッピングモーターに通電が無い状態でも、作動部3の歯車又はねじ構造等構成部材の摩擦等による静止状態を崩す程の強さは有していない。このため、静止状態のスライド部3bが、第一磁石部2cと第二磁石部3cの磁力の反発で生じる応力によっていずれかの方向に移動させられる、ということは無く、また停止状態を維持するために作動部3に通電を行う必要も無い。
操作部4は、排水口1aの開閉を操作する部材であって、洗面器W1の天面部分に配置され、排水口1aの開閉を操作する部材である。
また、本実施例では、特に詳細に図示はしないが、操作部本体4bと作動部3はそれぞれに制御基板を備えてユニット化されてなる。
また、操作部本体4bと作動部3は、通電及びデジタル化した内容での情報伝達(排水口1aへの開閉の指示等)の両方を同時に行うことができる、USB規格の接続端末を両端に備えた配線部材Lにて接続される。当然、操作部本体4bと作動部3の接続用の端末も、USB規格の接続端末である。また、図示しないが、作動部3及び操作部4を作動させる為の電力は、屋内電源(コンセント)から作動部3に供給され、更にこのUSB規格の配線部材Lによって作動部3から操作部4に供給される。
また、その他の部材として、継手部材5の下流側端部と、下水側の配管に繋がる床下配管とを接続する、管体をS字形状に屈曲させたトラップ部を含む配管部材Pを備えてなる。
また、詳述しないが、本実施例において、水密的な接続が必要な箇所には、接着剤またはパッキング等を利用し、水密的な接続が行われる。
【0021】
上記のように構成した遠隔操作式の排水装置は、以下のようにして、槽体である洗面台Wの洗面器W1に施工される。
施工前の作業として、継手部材5の下方に、作動部3を取り付け固定しておく。
まず、排水口本体1を、洗面器W1底面に設けられた取付孔B1に挿通し、フランジ部1bの下面を、取付孔B1の周縁上面に当接した状態とする。更にナット部材1dの雌ネジを、排水口本体1の雄ネジに螺合させ、フランジ部1b下面とナット部材1d上面とで取付孔B1の周縁を挟持するようにして排水口本体1を洗面器W1に固定する。
次に、操作部4を洗面器W1の天面部分に取り付け固定する。
次に、作動部3が取り付けられた状態の継手部材5を、排水口本体1の下流側端部に接続する。
次に、操作部4と作動部3とを、前述のようにUSB規格の接続端末を利用した配線部材Lにて接続し、情報伝達と通電とを行うことが可能なようにする。
次に、トラップ部を備えた排水配管を介して、継手部材5の排出口と床下配管を接続する。
更に、排水口1aに遠隔操作用弁部材21を配置して、本実施例の遠隔操作式の排水装置の施工が完了する。
【0022】
以下に、上記実施例の遠隔操作式の排水装置の動作について説明する。
上記第二実施例の遠隔操作式排水栓装置を使用する場合、まず操作部4に操作を加えて、
図15に示したように、排水口1aを閉口した状態とする。この状態において、スライド部3bは作動部本体3a内に収納され、スライド部3b先端の第二磁石部3cは、継手部材5の縦管部5c下方から離間した位置に配置されている。
遠隔操作用弁部材21は、物理的には排水口1a内部や継手部材5の内部に干渉する形状では無いため、磁力の反発が無い状態では、排水口1a内を降下し、弁体部2aが排水口1aを覆って排水口1aを閉口した状態となる。
この状態より操作部4に操作を加え、排水口1aを開口するように操作を行うと、作動部3のステッピングモーターが作動し、第二磁石部3cが縦管部5cの直下、即ち排水口1aの直下となる位置までスライド部3bが突出する。すると、第一磁石部2cの磁石と第二磁石部3cの磁石とが反発し、この反発力によって遠隔操作用弁部材21が上昇するが、支持部材6がガイドとして排水口1a内面に当接しているため、遠隔操作用弁部材21は排水口1aに対して傾いたりせず、単純に上昇のみを行う。
結果、
図16に示したように、排水口1aから弁体部2aが離間して排水口1aが開口する。洗面器W1内に吐水があった場合、排水口1aから排水口1a内を通過し、継手部材5、排水配管の内部を通過して床下配管から下水側に排出される。
この状態より操作部4に操作を加え、排水口1aを閉口するように操作を行うと、作動部3のステッピングモーターが作動し、スライド部3bが作動部本体3a側に後退する。これにより、第二磁石部3cが排水口1aの直下となる位置から移動し、第一磁石部2cの磁石と第二磁石部3cの磁石とが離間して反発力が弱まるため、遠隔操作用弁部材21が降下する。この時は、開口時同様に支持部材6がガイドとして機能するため、遠隔操作用弁部材21は排水口1aに対して傾いたりせず、単純に降下する。
結果、排水口1aを弁体部2aが覆い、排水口1aが閉口した
図15の状態に戻る。
以降、この操作を繰り返すことで、操作部4を操作することにより、遠隔操作にて排水口1aを開閉することができる。
【0023】
更に、上記実施例の遠隔操作式の排水装置において、停電又は断線、ステッピングモーターや制御基板の異常等により故障し、且つ排水口1aが開口する状態、即ち、第二磁石部3cが排水口1aの直下となる位置までスライド部3bが突出した状態で停止した場合、そのままであれば、遠隔操作用弁部材21が磁力の反発により上昇して、弁体部2aが排水口1aより離間し排水口1aが開口したままの状態となるが、本実施例の遠隔操作式の排水装置では、以下のようにして、使用者の手動操作により、排水口1aを閉口するようにすることができる。
上記のように排水口1aが開口状態のまま、遠隔操作式の排水装置が故障して停止した場合、使用者はキャビネット部W2の扉を開き、キャビネット部W2内に施工された排水配管に対して、スライド部3bと第二磁石部3cとの係合を解除し、スライド部3bから第二磁石部3cを分離する。
これにより、作動部3が遠隔操作用弁部材21を押し上げる機能が失われる。
遠隔操作用弁部材21は、物理的には排水口1a内部や継手部材5の内部に干渉する形状では無く、第二磁石部3cを取り外したため磁力の反発も無くなった為、遠隔操作用弁部材21が排水口1aの閉口時作動部3に干渉しない構造となる(ここでいう「閉口時に干渉する構造」とは、「物的接触による干渉」だけを指し示すものではなく、例えば「閉口を不可能とする磁力による干渉」等、閉口の障害となる全ての干渉を示すものである)。即ち、遠隔操作用弁部材21は、第二磁石部3cが分離することで、遠隔操作用弁部材21自体は何ら構造的に変化は無いが、手動用弁部材22として機能することができる。
以降、排水口1aを閉口する場合は、
図17に示したように、使用者が排水口1aに直接手動用弁部材22を手に取り、排水口1aに挿入することで弁体部2aが排水口1aを覆って排水口1aを閉口することができる。
また、排水口1aを開口する場合は、
図18に示したように、使用者が直接手動用弁部材22を手に取り、排水口1aから取り出すことで弁体部2aが排水口1aから離間し、排水口1aを閉口することができる。
【0024】
また、手動用弁部材22による開閉を容易にするために、段落0018に記載したものと同様の取手体7や、段落0019に記載したものと同様の別途の手動用弁部材22を利用しても良い。
【0025】
本発明の実施例は以上のようであるが本発明は上記実施例に限定される物ではなく、主旨を変更しない範囲において自由に変更が可能である。
例えば、上記第一実施例、第二実施例は、いずれも磁力を用いた電動式の遠隔操作式の排水装置であるが、これに代えて、特許文献1に記載の遠隔操作式の排水装置のように、レリースワイヤを用いた手動式の遠隔操作式の排水装置に本発明を利用しても構わない。この場合、例えばインナーワイヤの先端部分、又は弁部材の下端部分に、インナーワイヤのストローク以上の長さを有するアダプターを取り付ける構成とすることで、インナーワイヤが排水口1aを開口させるだけ前進した状態で故障が生じた場合でも、アダプターを取り外すことで、遠隔操作用弁部材21は排水口1aを覆って排水口1aを閉口することができる。即ち、遠隔操作用弁部材21を手動用弁部材22とすることができる。