特許第6454890号(P6454890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6454890-ロータリーコネクタ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454890
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】ロータリーコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 39/00 20060101AFI20190110BHJP
   H01R 39/28 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   H01R39/00 D
   H01R39/28
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-167247(P2015-167247)
(22)【出願日】2015年8月10日
(65)【公開番号】特開2017-37827(P2017-37827A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】511040388
【氏名又は名称】株式会社ヒサワ技研
(72)【発明者】
【氏名】沢田 博史
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−229601(JP,A)
【文献】 特開2007−285397(JP,A)
【文献】 特開昭48−087234(JP,A)
【文献】 特公昭50−005775(JP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0037923(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R39/00−39/64
H01R13/00−13/08
H01R13/15−13/35
F16C19/00−19/56
F16C33/30−33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面が円形である外周部材と、前記外周部材に対して相対的に回転自在であり、前記外周部材の中空部に前記内周面と同軸に配設される軸体と、前記外周部材及び前記軸体間で半径方向に弾性変形しながら遊星運動するよう回転自在に配設される中空部を有するローラ集電子とを備え、前記ローラ集電子を介して、前記外周部材及び前記軸体を電気的に接続するコネクタにあって、前記ローラ集電子は、異なる直径を持つ異径形状で、なおかつその肉厚が一様で10μmから100μmであることを特徴とするロータリーコネクタ。
【請求項2】
ローラ集電子の外周面の直径が、その両端部が中央部に比して小径、又は両端部が中央部に比して大径となっており、その小径部と大径部との間は連続的に変化する面で構成されている請求項1に記載のロータリーコネクタ。
【請求項3】
前記ローラ集電子の外周形状が、前記ローラ集電子の軸方向中心部において大径部を1箇所持ち、この大径部を頂点とした傾斜部が、前記ローラ集電子両端部の前記小径部にかけて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリーコネクタ。
【請求項4】
前記ローラ集電子の外周形状が、前記ローラ集電子の軸方向両端部において大径部となり、この大径部を頂点とした傾斜部が、前記ローラ集電子の軸方向中心部に設けられた小径部にかけて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリーコネクタ。
【請求項5】
前記ローラ集電子の材質をニッケルとすることを特徴とする請求項1に記載のロータリーコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内周面が円形である外周部材と、外周部材に対して相対的に回転自在であり、外周部材の中空部に前記内周面と同軸に配設される軸体と、外周部材及び軸体間に、半径方向の弾性変形を伴い回転自在に配設される薄肉円筒形状のローラ集電子とを備え、このローラ集電子を介して、外周部材及び軸体を電気的に接続するロータリーコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
相対的に回転する部材同士を電気的に接続し、これらの間で電流を送給するための構造として、ローラ集電子型のロータリーコネクタが考案されている。
【0003】
ローラ集電子型ロータリーコネクタでは、外周部材と軸体が相対的に回転運動すると、薄肉円筒形状のローラ集電子は外周部材と軸体間の円環状空間で自転しながら公転運動する、いわゆる遊星運動を行う。ローラ集電子の材質はバネ性を備えた通電能力の高い材料、たとえばベリリウム銅、リン青銅が考えられる。
しかしながら前述のロータリーコネクタに於いても例えば5,000rpm.程度の高速回転ではローラ集電子が転動軌道から外れる、またはローラ集電子が破損するなどの問題があった。
【0004】
そのため、特許文献1のように、ローラ集電子を単純な薄肉の円筒形状ではなく、ローラ集電子軸方向中心位置を大径部とし、ローラ集電子両端部を小径部とし、大径部から小径部にかけて傾斜した形状を有する異径形状のローラ集電子とし、つまり、中心部が肉厚く、両端部が肉薄く異径形状のローラ集電子とし、このローラ集電子の外周形状に沿うよう形成され前記ローラ集電子と電気的に接触する内周面を有する外周部材、また同様にローラ集電子の外周形状に沿うよう形成され前記ローラ集電子と電気的に接触する外周面を有する軸体とにより構成されたことを特徴とするロータリーコネクタが考案されている。
【0005】
前述異径形状のローラ集電子を使用したロータリーコネクタでは、回転時のローラ集電子の転動軌道が安定し、より高速回転が可能となり、長寿命の製品を達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−229601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ローラ集電子の転動軌道をより安定させるため、ローラ集電子の外周の傾斜角を大きくすることが考えられるが、ローラ集電子の軸方向の長さを一定とした場合、傾斜角を大きくするとローラ集電子の軸方向中心付近はその両端部と比べると3倍以上の肉厚となり、ローラ集電子を弾性変形させるために必要なエネルギーが増加し、スムーズな回転がえられず、また短時間で集電子が破損するなどの問題があった。
そのため、よりスムーズな回転が得られ、磨耗の少ない長寿命のロータリーコネクタを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、下記のロータリーコネクタを提供するものである。
(1)内周面が円形である外周部材と、前記外周部材に対して相対的に回転自在であり、前記外周部材の中空部に前記内周面と同軸に配設される軸体と、前記外周部材及び前記軸体間で半径方向に弾性変形しながら遊星運動するよう回転自在に配設される中空部を有するローラ集電子とを備え、前記ローラ集電子を介して、前記外周部材及び前記軸体を電気的に接続するコネクタにあって、前記ローラ集電子は、異なる直径を持つ異径形状で、なおかつその肉厚が一様で10μmから100μmの範囲であることを特徴とするロータリーコネクタ。
(2)ローラ集電子の外周面の直径がその両端部が中央部に比して小径、又は両端部が中央部に比して大径となっており、その小径部と大径部との間は連続的に変化する面で構成されている(1)に記載のロータリーコネクタ。
(3)前記ローラ集電子の外周形状が、前記ローラ集電子の軸方向中心部において大径部を1箇所持ち、この大径部を頂点とした傾斜部が、前記ローラ集電子両端部の前記小径部にかけて形成されていることを特徴とする(1)に記載のロータリーコネクタ。
(4)前記ローラ集電子の外周形状が、前記ローラ集電子の軸方向両端部において大径部となり、この大径部を頂点とした傾斜部が、前記ローラ集電子の軸方向中心部に設けられた小径部にかけて形成されていることを特徴とする(1)に記載のロータリーコネクタ。
(5)前記ローラ集電子の材質をニッケルとすることを特徴とする(1)に記載のロータリーコネクタ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によればローラ集電子の傾斜角を大きくすることでローラ集電子の転動軌道が安定し、従来製品より高速回転が可能となる。またローラ集電子の肉厚を一様な薄肉とすることで、ローラ集電子を弾性変形させるのに必要なエネルギーが減少するため、よりスムーズな回転が得られ、磨耗の少ない長寿命のロータリーコネクタが達成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の異径形状のローラ集電子を使用したロータリーコネクタの例を示している。
図2図1におけるA−A’断面図の斜視図を示している。
図3】切削加工による従来の異径形状のローラ集電子の断面図を示している。
図4】本発明による異径形状のローラ集電子の例の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0012】
従来ローラ集電子は、ベリリウム銅の切削加工により製作し、図3に示すようにローラ集電子軸方向中心位置から上下に4度傾斜した形状であり、加工後、ローラ集電子外周面には銀めっきを施している。ローラ集電子肉厚の最も薄い箇所は図3に示す端面tであり、その厚さは0.13mm程度であり、これ以上肉厚を薄くすることは切削加工では困難であった。
【0013】
そこでローラ集電子の製造方法を電気鋳造にすることで肉厚を10μm〜100μm程度の均一な薄肉とすることが可能となり、また図4に示すローラ集電子の傾斜角度θを現状の4度から8度〜12度程度とすることで転動軌道を安定化することが可能となる。また、弾性力と復元力との点でその肉厚(図4のm)は55μm〜75μm程度が好ましい。
【0014】
ここで電気鋳造とはめっき技術の一種であり、原型に金属イオンを電着させた後、原型から電着層を剥離する製造方法である。また、炭素材料、セラミック材料または有機材料等の非金属の粒子を電気鋳造層中に分散させてもよい。炭素材料としては、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、セラミック材料としては、窒化ホウ素、チタンホウ化物、有機材料としてはフッ素樹脂、ポリイミド樹脂など特に耐熱性のある材料が使用できる。特に炭素材料は、導電性、摺動性の点で好ましい。
【0015】
通常の電気鋳造では原型に金属イオンを電着させた後、電着層から原型を引き抜くため図4に示す形状では原型を引き抜くことができないが、原型を複数の部品で構成することにより図4の形状とすることが可能である。
【0016】
さらにローラ集電子材質を現状のベリリウム銅からニッケルに変更することにより、転動時のすべりでローラ集電子外周面に施した銀めっきが剥離した際にもニッケルが露出することになり、ベリリウム銅の露出では酸化皮膜が生成されていた状況においても酸化皮膜の生成が抑制され、接触抵抗の増加、ノイズの発生を抑え、さらに長寿命の製品とすることが可能となる。ここでいうニッケルとは、ニッケルに鉄、銅、銀、金などの金属または非金属の分散物等を含んだまたは積層した場合も含まれる。
【符号の説明】
【0017】
1…ローラ集電子
2…外周部材
3…軸体
図1
図2
図3
図4