特許第6454902号(P6454902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェレスト テクノロジーズ, インコーポレイテッドの特許一覧

特許6454902明瞭な親水性及び撥油性置換を有するシラン及びシリコーン
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6454902
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】明瞭な親水性及び撥油性置換を有するシラン及びシリコーン
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20190110BHJP
【FI】
   C07F7/18 G
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-542139(P2017-542139)
(86)(22)【出願日】2016年2月10日
(65)【公表番号】特表2018-505895(P2018-505895A)
(43)【公表日】2018年3月1日
(86)【国際出願番号】US2016017303
(87)【国際公開番号】WO2016133755
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2017年10月10日
(31)【優先権主張番号】62/118,180
(32)【優先日】2015年2月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511232363
【氏名又は名称】ジェレスト テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】パン, ユーリン
(72)【発明者】
【氏名】アークルズ, バリー, シー.
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−111774(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0234813(US,A1)
【文献】 特開2011−174001(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/090299(WO,A1)
【文献】 国際公開第2000/053661(WO,A1)
【文献】 特開平06−016813(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1300645(KR,B1)
【文献】 特開2008−143836(JP,A)
【文献】 特開2008−024759(JP,A)
【文献】 特表2003−511519(JP,A)
【文献】 英国特許第01014156(GB,B)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0082850(US,A1)
【文献】 特開2007−308674(JP,A)
【文献】 Macromolecules,2001年,34(4),p.931-936
【文献】 Macromolecules,2000年,33(5),p.1503-1504
【文献】 Macromolecular Chemistry and Physics ,1998年,199(9),p.1865-1871
【文献】 Macromolecular Chemistry and Physics ,1998年,199(9),p.1859-1864
【文献】 Chemical Communications (Cambridge) ,1997年,(19),p.1825-1826
【文献】 Solid State Ionics ,1996年,91(3,4),p.169-173
【文献】 Polymer Preprints (American Chemical Society, Division of Polymer Chemistry) ,2000年,41(1),p.309-310
【文献】 Silicon Chemistry,2002年,1(2),p.121-128
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I)を有するシリコン化合物:
【化1】

(式中、Rfは、4個以上の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状全フッ化炭化水素であり、Rは、メチル又はエチル基であり、R’は、H又はCHであり、mは、1〜24の整数であり、R”は、1〜11個の炭素原子を有するアルキレン基であり、nは、であり、Xは、H、Cl、又はアルコキシ基である)。
【請求項2】
Rfが、4〜10の炭素原子を有する、請求項1に記載のシリコン化合物。
【請求項3】
mが、2〜6の整数である、請求項1に記載のシリコン化合物。
【請求項4】
R”が、CHCHCHである、請求項1に記載のシリコン化合物。
【請求項5】
Xが、Cl、OCH、又はOCである、請求項1に記載のシリコン化合物。
【請求項6】
請求項1に記載のシリコン化合物の加水分解縮合によって形成されたポリマー状のシロキサン化合物。
【請求項7】
(トリデカフルオロオクチル)(メトキシポリエチレンオキシプロピル)ジクロロシランである、請求項1に記載のシリコン化合物。
【請求項8】
〜8個のエチレンオキシド単位を有する(トリデカフルオロオクチル)(メトキシポリエチレンオキシプロピル)ジメトキシシランである、請求項1に記載のシリコン化合物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の名称]
[0001]明瞭な親水性及び撥油性置換を有するシラン及びシリコーン
【0002】
[関連出願の相互参照]
[0002]本出願は、2015年2月19日出願の米国特許仮出願第62/118,180号の優先権を主張し、その開示を参照により本明細書に組み込む。
【0003】
[発明の背景]
[0003]透明な機能表面、特に統合ディスプレイ及び医療機器に関連するものがバイオバーデン及び環境汚染に曝露されると、機能問題と衛生問題の両方が生じて、機器性能に干渉する又は機器破損を引き起こすおそれがある。その結果、自己洗浄性であるとされている被覆への関心がますます高まっている。これらの被覆は時には超アンフィフォビック性又は超オムニフォビック性と呼ばれる。防曇及び防氷被覆はしばしば同じ概念に関係している。物理的トポグラフィ及び製造技術の制御が被覆性能の実現において必須な要素であると同時に、提案される被覆のほぼすべてが、撥油性用に非常に低極性な成分、例えば全フッ化炭化水素など、又は親水性用に非プロトン性高極性な成分、例えばポリエーテルなどを含有するビルディングブロックを利用している。シラン及びシリコーンは、薄膜を形成できる能力のためにこれらの被覆用ビルディングブロックとしてしばしば関心を持たれている。
【0004】
[0004]これまで、単一のケイ素原子において明瞭な低極性及び高極性置換を含むシラン及びシリコーンの例はほとんどないが、1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロアルキルシラン及びポリエチレンオキシシランは周知である。ドデシルオキシポリエチレンオキシプロピルシランなどの、高極性及び低極性のブロックが単一置換において組み合わされている例はもっと限られている。被覆の構造をナノ構造レベルで制御するためには、ケイ素原子においての置換により独立の低極性及び高極性を有するシランを提供することが、表面処理としてもシリコーンモノマーとしても非常に望ましい。撥油性及び親水性を分子レベルで独立して制御することによって、環境的又は生物学的汚染由来の粘着性膜を形成しにくい表面を構造化する好機がもたらされる。さらに、これらの材料に由来するポリマー状のシロキサンは、潜在的界面活性剤である。
【0005】
[発明の概要]
[0005]一実施形態では、本発明は、次式(I)を有するシリコン化合物に関する:
【化1】
【0006】
[0006](式中、Rfは、4個以上の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状全フッ化炭化水素であり、Rは、メチル又はエチル基であり、R’は、H又はCHであり、mは、1〜約24の整数であり、R”は、1〜約11個の炭素原子を有する炭化水素架橋であり、nは、0〜2の整数であり、Xは、H、Cl、又はアルコキシ基である)。
【0007】
[0007]本発明はまた、[(メトキシポリエチレンオキシ)アルキル]ヒドリドジクロロシランを含む。
【0008】
[0008]さらなる一実施形態では、本発明は、次式(II)を有するシロキサンポリマーに関する:
【化2】

(式中、Rfは、4個以上の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状全フッ化炭化水素であり、Rは、メチル又はエチル基であり、R’は、H又はCHであり、mは、1〜約24の整数であり、R”は、1〜約11個の炭素原子を有する炭化水素架橋であり、pは、0〜100の整数である)。
【0009】
[発明の詳細な説明]
[0009]本発明は、次式(I)を有する一連の新規なシリコン化合物に関する:
【化3】
【0010】
[0010]式(I)において、Rfは、4個以上の炭素原子(好ましくは4〜約10)を有する直鎖状又は分岐状全フッ化炭化水素であり、Rは、メチル又はエチル基であり、R’は、H又はCHであり、mは、1〜約24、好ましくは約2〜6の整数であり、R”は、1〜約11個の炭素原子を有する炭化水素架橋、好ましくはCHCHCHであり、nは、0〜2の整数であり、Xは、H、Cl、又はアルコキシ基、好ましくはメトキシ若しくはエトキシである。したがって、本発明の好ましい一実施形態(n=1)では、これらの材料は、親水性置換基及び撥油性置換基を含有する。これらの置換は、環境的又は生物学的汚染由来の粘着性膜を形成しにくい表面を構造化する好機を提供する。
【0011】
[0011]本発明による例示的な材料として、
ビス(ノナフルオロヘキシル)ジクロロシラン、
6〜8個のエチレンオキシ単位を有する(トリデカフルオロオクチル)(メトキシポリエチレンオキシプロピル)ジクロロシラン、
6〜8個のエチレンオキシ単位を有する(トリデカフルオロオクチル)(メトキシポリエチレンオキシプロピル)ジメトキシシラン、
ビス[メトキシ(トリエチレンオキシ)プロピル]ジクロロシラン、
ビス[メトキシ(トリエチレンオキシ)プロピル]ジメトキシシラン、及び
ビス[メトキシ(トリエチレンオキシ)プロピル]ジエトキシシランが挙げられる。これらの材料は、特にシリカ質基材の湿潤性及び放出特性を変えて、表面改質における有用性をもたらすと予想される。
【0012】
[0012]本発明の材料は、本発明に包含されてもいる新規な多段階合成を使用して調製することができる。本方法は、1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロアルキルトリクロロシラン又はアルコキシポリエチレンオキシアルキルトリクロロシランから出発する。各々のヒドリドジクロロシランへの変換は、ヒドリド移行反応によってなされる。次に、ヒドリドジクロロシランを適当なオレフィンと反応させ、次いで、確立したエステル化手順によってアルコキシシランに転化することができる。
【0013】
[0013]この手順の新規な点は、段階的ヒドロシリル化技術になるという点である。ジクロロシランの部分的ヒドロシリル化は、非常に低い収率でしか進行しない。さらに、直接ジシリル化はまったく起こらない。特定の理論に拘泥するものではないが、中間体のジクロロシランが活性白金(又は他の)触媒錯体と相互作用することが推測される。
【0014】
[0014]同じ技術を施用して、本発明の範囲内の化合物でもあるビス(ペルフルオロアルキル)ジクロロシラン、及び6個超のEO(エチレンオキシ)単位を有するビス[(メトキシポリエチレンオキシ)アルキル]ジクロロシランを製造することができる。このような化合物は、式(RfCHCHSiX及び[R(OCHCHR’)OR”]SiXで記載することができる。さらに、[(メトキシ(ポリエチレンオキシ)アルキル]ヒドリドジクロロシラン、例えば式[R(OCHCHR’)OR”]SiHXを有するものなども本発明の範囲内にある。これらの式において、Rf、X、R、R’、R”、及びmは、先に記載した通りである。
【0015】
[0015]シロキサン又はシリコーンは、こうした材料を加水分解縮合することによって調製することができる。加水分解中にトリメチルクロロシランなどの末端キャッピング種又はジメチルジクロロシランなどのコモノマーを存在させることによって、加水分解縮合を改変することができる。これらのシロキサンは、次式(II)を有するポリマーとして通常記載することができる:
【化4】

式(II)において、Rfは、4個以上の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状全フッ化炭化水素であり、Rは、メチル又はエチル基であり、R’は、H又はCHであり、mは、1〜約24の整数であり、R”は、1〜約11個の炭素原子を有する炭化水素架橋であり、pは、0〜100の整数である。
【0016】
[0016]次に、本発明を以下の非限定的な例に関して説明する。
【0017】
実施例1:ノナフルオロヘキシルジクロロシランの合成
【化5】

[0017]窒素雰囲気下で、加熱マントル、マグネティックスターラー、ポット温度計、滴下漏斗、及びドライアイス冷却器を装備した1L容の3つ口フラスコに、ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン(457.8g)及びテトラデシル(トリヘキシル)ホスホニウムクロリド(15.4g)を装入した。混合物を80℃に加熱し、ジメチルクロロシラン(124.9g)を混合物に滴下漏斗により1時間にわたって添加した。ポット温度は軽クロロシラン還流(light chlorosilane refluxing)のために低下した。添加完了後、反応を6〜8時間還流した。ポット温度が75℃にゆっくり上昇した。これは、ジメチルクロロシランのジメチルジクロロシランへの転化を示す。反応を室温に冷却した。混合物のGC分析(低温法)は約84%の完了を示した。ポットを窒素保護下で注意深くベントした。蒸留により粗生成物386.6g(純度63.5%、収率58.0%)を得た。
【0018】
実施例2:ビス(ノナフルオロヘキシル)ジクロロシランの合成
【化6】

[0018]1ガロン容のオートクレーブに、実施例1の生成物(242.9g)とノナフルオロヘキセン(168.81g)と5%塩化白金酸六水和物(CPA)とを含むTHF(0.5mL)を装入した。反応を密閉し、180℃(PSI約75)で24時間加熱した。反応を室温に冷却した。混合物のGC分析は反応の完了を示した。粗反応を蒸留により精製して、表題化合物を収率37.1%(152.0g)、沸点142〜148℃/50mmHg、密度(20℃)1.54g/ml、屈折率(20℃):1.3440、H NMR(CDCl):1.39(m、4H)及び2.30(m、4H)にて得た。
【0019】
実施例3:(トリデカフルオロオクチル)ジクロロシランの合成
【化7】

[0019]窒素雰囲気下で、加熱マントル、マグネティックスターラー、ポット温度計、滴下漏斗、及びドライアイス冷却器を装備した1L容の3つ口フラスコに、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン(481.6g)及びテトラデシル(トリヘキシル)ホスホニウムクロリド(12.8g)を装入した。混合物を85℃に加熱し、ジメチルクロロシラン(104.1g)を混合物に滴下漏斗により1〜2時間にわたってゆっくり添加した。ジメチルクロロシランの約半分を添加した後、反応を60℃に冷却した。GC分析は30%の転化を示した。軽質分を完全真空下で室温で取り除いた。反応を100℃で加熱し、ジメチルクロロシランの添加を再開した。添加完了後、反応を75℃で1〜2時間加熱した。反応を室温に冷却した。混合物のGC分析は約48%の完了を示した(二水素化物生成を観察開始)。ポットを窒素保護下で注意深くベントした。蒸留により生成物355.3g(純度53.6、収率42.2%)を得た。
【0020】
実施例4:(トリデカフルオロオクチル)(メトキシポリエチレンオキシプロピル)ジクロロシラン(6〜8個のEO)の合成
【化8】

[0020]窒素雰囲気下で、加熱マントル、マグネティックスターラー、ポット温度計、滴下漏斗、及びドライアイス冷却器を装備した1L容の3つ口フラスコに、アリルオキシ(ポリエチレンオキシド)メチルエーテル(MW約350、約6〜8個のエチレンオキシド単位)(117.6g)を装入し、次いで、90℃で加熱した。実施例3の生成物(10mL)を滴下漏斗により添加し、続いて、5%塩化白金酸六水和物を含むTHF(0.5mL)を添加した。発熱反応が直ちに観察され、反応混合物は無色から暗褐色に変化した。発熱が観察されるとすぐに、実施例3からの生成物の添加を、90〜110℃の間の反応温度を維持できる速度で滴下漏斗により継続した。添加完了後、5%塩化白金酸六水和物を含むTHF0.25mLをさらに添加し、反応を100℃で45分間加熱した。反応の進行をH NMRでモニターした。アリルオキシ(ポリエチレンオキシド)メチルエーテルのオレフィンピークがもはや存在しなくなったらすぐに、軽質分を蒸留により除去し、蒸留からの残渣をそれ以上精製せずに次のステップに進めた。
【0021】
実施例5:(トリデカフルオロオクチル)(メトキシポリエチレンオキシプロピル)ジメトキシシラン(6〜8個のEO)の合成
【化9】

[0021]マグネティックスターリング(magnetic stirring)、ポット温度計、滴下漏斗、及び水凝縮器を装備した2L容のフラスコに、実施例4の生成物(334.8g)を装入し、次いで、90〜120℃に加熱した。オルトギ酸トリメチル(TMOF)(89.14g)を、塩化メチル放出を制御できる速度で滴下漏斗により添加した。添加完了後、反応混合物のpHをモニターした。反応のpHが酸性であった場合、TMOFをさらに添加して、反応を完了させた。軽質分を減圧蒸留により除去した。続いて、5wt%の木炭を残渣に添加し、混合物を50〜60℃で3〜4時間撹拌して、着色を除去し、生成物を収率40.2%(132.3g)、密度(20℃)1.24g/ml、屈折率(20℃):1.3968、H NMR(CDCl):0.66(m,2H)、0.80(m,2H)、1.63(m,2H)、2.05(m,2H)、3.34(s,3H)、3.43(m,2H)、3.55(s,6H)、及び3.56〜3.63(m,24H)にて得た。
【0022】
[0022]表面改質を調べるために、ホウケイ酸ガラススライドを5%表題化合物トルエン溶液に浸した。スライドを空気乾燥させ、次いで、110℃で10分間加熱し、続いて、エタノールで濯いだ。乾燥したスライドは、水では37℃及びヘキサデカンでは23℃の接触角をそれぞれ示した。
【0023】
実施例6:メトキシトリエチレンオキシプロピルジクロロシランの合成
【化10】

[0023]窒素雰囲気下で、加熱マントル、マグネティックスターラー、ポット温度計、滴下漏斗、及びドライアイス冷却器を装備した1L容の3つ口フラスコに、メトキシトリエチレンオキシプロピルトリクロロシラン(339.7g)及びテトラデシル(トリヘキシル)ホスホニウムクロリド(13.0g)を装入した。混合物を85℃に加熱し、ジメチルクロロシラン(104.1g)を混合物に滴下漏斗により1〜2時間にわたってゆっくり添加した。ジメチルクロロシランの約半分を添加した後、反応を60℃に冷却した。GC分析は30%の転化を示した。軽質分を完全真空下で室温で取り除いた。反応を100℃で加熱し、ジメチルクロロシランの添加を再開した。添加完了後、反応を75℃で1〜2時間加熱した。反応を室温に冷却し、ポットを窒素保護下で注意深くベントした。蒸留により生成物238.4g(純度60.7%、収率78%、密度(20℃)1.013g/ml)を得た。
【0024】
実施例7:ビス(メトキシトリエチレンオキシプロピル)ジクロロシランの合成
【化11】

[0024]窒素雰囲気下で、加熱マントル、マグネティックスターラー、ポット温度計、滴下漏斗、及びドライアイス冷却器を装備した1L容の3つ口フラスコに、アリルオキシ(トリエチレンオキシド)メチルエーテル(76.8g)を装入し、次いで、90℃で加熱した。実施例6の生成物(10mL)を滴下漏斗により添加し、続いて、5%塩化白金酸六水和物を含むTHF(0.5mL)を添加した。発熱反応が直ちに観察された。発熱が観察されるとすぐに、実施例3からの生成物の添加を、90〜110℃の間の反応温度を維持できる速度で滴下漏斗により継続した。温度が90℃未満に低下した場合、5%CPAを含むTHFをさらに添加した。添加完了後、5%塩化白金酸六水和物を含むTHF0.25mLをさらに添加し、反応を100℃で45分間加熱した。反応の進行をH NMR及びGC分析でモニターし、実施例6からの未反応生成物が存在した場合、アリルオキシ(トリエチレンオキシド)メチルエーテルをさらに添加した。アリルオキシ(ポリエチレンオキシド)メチルエーテルのオレフィンピークがもはや存在しなくなったらすぐに、軽質分を蒸留により除去した。蒸留からの残渣をワイプトフィルムエバポレータを使用して精製して、所望生成物を収率58.4%(139.6g)、GC純度95.0%、密度(20℃)1.110g/ml、屈折率(20℃):1.4618、H NMR(CDCl3):1.14(m,4H)、1.58(m,4H)、3.19(s,6H)、3.20〜3.45(m,28H)にて得た。
【0025】
実施例8:ビス(メトキシトリエチレンオキシプロピル)ジメトキシシランの合成
【化12】

[0025]マグネティックスターリング、ポット温度計、滴下漏斗、ビグリューカラム、及び蒸留ヘッドを装備した1L容のフラスコに、実施例7の生成物(127.4g)を装入し、次いで、90〜120℃に加熱した。オルトギ酸トリメチル(TMOF)(53.06g)を、塩化メチル放出を制御できる速度で滴下漏斗により添加した。TMOFの添加が完了した後、反応を140℃で加熱して、ギ酸メチルを留去した。オルト酢酸トリメチル(TMOA)(15.02g)を、塩化メチル放出を制御できる速度で滴下漏斗により添加した。添加完了後、反応混合物のpHをモニターした。反応のpHが酸性であった場合、TMOFをさらに添加して、反応を完了させた。次いで、軽質分を減圧蒸留により除去した。生成物(残渣)は、収率95%(125.1g、密度(20℃)1.060g/ml、屈折率(20℃):1.4518、H NMR(CDCl3):0.42(m,4H)、1.45(m,4H)、3.14(m,6H)、3.19(m,6H)、3.20〜3.45(m,28H)の茶色物として得られた。
【0026】
実施例9:トリメチルシロキシ末端を有するポリ(トリデカフルオロオクチル)(メトキシポリエチレンオキシプロピル)6〜8シロキサンの合成
【化13】

[0026]マグネティックスターリング、ポット温度計、滴下漏斗、及び冷却器を装備した100mL容のフラスコに、(トリデカフルオロオクチル)(メトキシポリエチレンオキシプロピル)6〜8ジメトキシシラン14g、トリメチルクロロシラン0.04g、及びトリメチルメトキシシラン0.33gを装入した。DI水0.38gを上記混合物に20〜40℃のポット温度で添加した。添加完了後、反応混合物を30〜50℃でさらに90分間加熱した。混合物から30℃のポット温度で約1mmHgの減圧で揮発性物質を除去して、粘性液体14.7gを密度(20℃)1.450g/ml、屈折率(20°):1.4047;MW=2000にて得た。
【0027】
[0027]上述の実施形態の広範な本発明の概念から逸脱することなく、上述の実施形態に変更を施すことは、当業者なら理解されよう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨及び範囲内にある改変形態を包含するものであることを理解されたい。