【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、塩水を用いてベントナイトを崩落させる上述の方法では、そのときに発生する大量のベントナイトスラリーを別途処理する必要があるとともに、何より、ベントナイトスラリーというあらたな放射性廃棄物が発生する事態を招く。
【0009】
また、これを解決すべく、ドライアイスをブラスト材としてベントナイトに吹き付けることで、該ベントナイトを粉砕除去する方法も提案されている(非特許文献2)。
【0010】
しかしながら、オーバーパックが埋設される緩衝材は、外径が2m以上、高さが3m以上の大きさになるため、粉砕除去に長時間を要する懸念がある。
【0011】
一方、上述の粉砕除去をオーバーパックの一部が露出するだけにとどめてその露出部分を利用してオーバーパックを引き上げようとしても、他の部分がベントナイトに埋設されたままであるため、オーバーパックの引上げに伴ってその周面にベントナイトから大きな摩擦力が作用し、オーバーパックに不測の破損が生じかねない。
【0012】
そのため、結局は、オーバーパックを取り囲むベントナイトのうち、かなりの部分を粉砕除去せざるを得ず、長時間の粉砕除去作業を余儀なくされるという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、放射性廃棄物がオーバーパックに封入されてなる廃棄体を、あらたな放射性廃棄物を発生させることなく、しかも安全かつ短時間に緩衝材から取り出すことが可能な
廃棄体の回収方法を提供することを目的とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る廃棄体の回収方法は
請求項1に記載したように、オーバーパックに放射性廃棄物が封入されてなる廃棄体を緩衝材に埋設する形で定置した人工バリア構造であって、前記オーバーパックを円錐台状に形成してなる人工バリア構造から前記廃棄体を回収する方法において、
前記オーバーパックの大径側端面を覆う緩衝材を該大径側端面が露出するように除去した後、前記廃棄体の材軸回りに沿ったトルクを該廃棄体に作用させることで前記オーバーパックの周面とその周囲に拡がる緩衝材との付着を切り、しかる後、前記廃棄体を前記大径側端面が位置する側に引き抜くものである。
【0017】
また、本発明に係る廃棄体の回収方法は
請求項2に記載したように、オーバーパックに放射性廃棄物が封入されてなる廃棄体を緩衝材に埋設する形で定置した人工バリア構造であって、前記オーバーパックを円錐台状に形成するとともに前記廃棄体を前記オーバーパックの大径側端面が処分坑道側となるように処分孔方式で定置してなる人工バリア構造から前記廃棄体を回収する方法において、
前記オーバーパックの大径側端面を覆う緩衝材を該大径側端面が露出するように前記処分坑道側から除去した後、前記廃棄体の材軸回りに沿ったトルクを該廃棄体に作用させることで前記オーバーパックの周面とその周囲に拡がる緩衝材との付着を切り、しかる後、前記廃棄体を前記処分坑道側に引き抜くものである。
【0018】
[
参考発明]
参考発明に係る人工バリア構造においては、オーバーパックに放射性廃棄物が封入されてなる廃棄体を緩衝材に埋設する形で定置するにあたり、オーバーパックを円錐台状に形成してある。
【0019】
従来計画されているような円柱状の廃棄体の場合、該廃棄体を緩衝材から引き抜こうとすると、その引抜き操作に伴って、オーバーパックの周面にそれを取り囲む緩衝材から大きな摩擦力が作用するとともに、引抜きが進行しても、廃棄体と緩衝材とは当接したままであるため、上述の摩擦力は、接触面積の減少に伴って徐々に小さくなることはあっても、大きく減少することはない。
【0020】
そのため、引抜きによる廃棄体の回収には長時間を要し、のみならずオーバーパックに大きな摩擦力が作用することにより、引抜き操作の際に不測の被害が生じることも懸念される。
【0021】
しかし、本発明のようにオーバーパックを円錐台状に形成すると、該オーバーパックの大径側端面が位置する側に廃棄体をわずかに移動させるだけで、オーバーパックの周面が緩衝材から離間し、該緩衝材からは摩擦力が作用しなくなる。
【0022】
そのため、引抜きによる回収を短時間に終了させることができるとともに、引抜き操作による摩擦力によって廃棄体に不測の損傷が生じるのを未然に回避することが可能となる。なお、廃棄体をオーバーパックの大径側端面が位置する側にわずかに移動させるためには、オーバーパックの周面とその周囲に拡がる緩衝材との付着が予め切れていることが前提となるが、付着切断のための方法は任意であって、廃棄体を緩衝材の埋設位置に押し込む、廃棄体を緩衝材の埋設位置から引っ張る、廃棄体をその材軸回りにねじるといった操作から適宜選択すればよい。
【0023】
参考発明に係る人工バリア構造を構築するにあたり、オーバーパックの大径側端面が回収予定側となるように廃棄体を定置する限り、該廃棄体をどのように定置するかは任意であって、縦置きするか横置きするかは問わないし、処分坑道内に直接定置される場合(処分坑道縦置き方式、処分坑道横置き方式)にも
参考発明を適用することができるが、処分坑道のトンネル底面から下方に向けて又は処分坑道のトンネル側面から側方に向けてそれぞれ掘削形成された処分孔に定置する場合、すなわち処分孔縦置き方式又は処分孔横置き方式の場合には、オーバーパックの大径側端面が処分坑道側となるように廃棄体を定置すればよい。
【0024】
本発明に係る廃棄体の回収方法においては、上述したように円錐台状に形成されたオーバーパックに放射性廃棄物が封入されてなる廃棄体を緩衝材から引き抜くにあたり、まず、オーバーパックの大径側端面を覆う緩衝材を除去することで、該大径側端面を露出させる。
【0025】
次に、廃棄体の材軸回りに沿ったトルクを該廃棄体に作用させることにより、オーバーパックの周面とその周囲に拡がる緩衝材との付着を切る。また、必要に応じて、廃棄体を緩衝材の埋設位置に押し込む、廃棄体を緩衝材の埋設位置から引っ張るといった操作を適宜加える。
【0026】
このようにすると、オーバーパック周面と緩衝材との付着力が消失するため、廃棄体を引き抜く際、該付着力が引抜き操作の抵抗となることはない。
【0027】
また、オーバーパックを円錐台状に形成してあるため、廃棄体の引抜き操作が開始された以降は、オーバーパックの周面が緩衝材から離間し、該緩衝材から摩擦力が作用することもない。
【0028】
そのため、廃棄体の材軸回りに沿ったトルクを該廃棄体に作用させてから廃棄体を引き抜くようにすれば、該廃棄体を、その材軸に沿ってオーバーパックの大径側端面が位置する側に容易に引き抜くことが可能となる。
【0029】
本発明に係る廃棄体の回収方法は、任意の形で定置された廃棄体すべてに適用することが可能であるが、処分孔縦置き方式又は処分孔横置き方式で定置された廃棄体に対しては、オーバーパックの大径側端面を覆う緩衝材を除去する作業は処分坑道側から行うとともに、オーバーパックの周面とその周囲に拡がる緩衝材との付着を切った後は、処分坑道側に廃棄体を引き抜くようにすればよい。