特許第6455151号(P6455151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6455151スタッドレスタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6455151
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】スタッドレスタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20190110BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20190110BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20190110BHJP
   C08J 9/32 20060101ALI20190110BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20190110BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   C08L7/00
   C08L9/00
   C08L27/12
   C08J9/32CEQ
   C08J3/22CEW
   B60C1/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-805(P2015-805)
(22)【出願日】2015年1月6日
(65)【公開番号】特開2016-124999(P2016-124999A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
【審査官】 楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−075845(JP,A)
【文献】 特開2012−172020(JP,A)
【文献】 特開2013−224355(JP,A)
【文献】 特開2013−224361(JP,A)
【文献】 特開2011−201968(JP,A)
【文献】 特開2001−191719(JP,A)
【文献】 DuPont Dow elastomers ,Viton fluoroelastomer A Product of Dupont Dow Elastomers,1998年,1-16,URL,https://rainierrubber.com/wp-content/uploads/2014/01/Viton-Selection-Guide.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00
C08J 3/22
C08J 9/32
C08L 9/00
C08L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムおよびブタジエンゴムを含む平均ガラス転移温度が−70℃以下のジエン系ゴム100質量部に対し、水に対する接触角が93度以上のフッ素ゴムを1〜25質量部配合してなり、前記フッ素ゴムのガラス転移温度が−25℃以下であることを特徴とするスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに熱膨張性マイクロカプセルを0.5〜20質量部配合することを特徴とする請求項1に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記熱膨張性マイクロカプセル(X)と前記フッ素ゴム(Y)とを、質量比(X/Y)=(15/85)〜(70/30)の範囲でマスターバッチ化したものを配合することを特徴とする請求項1または2に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに前記ジエン系ゴムとは相溶しない架橋性オリゴマーまたはポリマーを0.3〜30質量部配合し、前記架橋性オリゴマーまたはポリマーが、水酸基、シラン官能基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、カルボキシ基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つ以上の反応性官能基を有する、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、脂肪族系、飽和炭化水素系、アクリル系もしくは植物由来系の重合体または共重合体であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに使用したスタッドレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤに関するものであり、詳しくは、氷上性能およびウェット性能を同時に高め得るスタッドレスタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スタッドレスタイヤの氷上性能(氷上での制動性)を向上させるために多くの手段が提案されている。例えば、ゴムに硬質異物や中空ポリマーを配合し、これによりゴム表面にミクロな凹凸を形成することによって氷の表面に発生する水膜を除去し、氷上摩擦を向上させる手法が知られている(例えば特許文献1参照)。
しかし、中空ポリマーを配合するとトレッドゴム中に空洞が形成され、ゴム強度が低下し、湿潤状態の路面における制動性(ウェット性能)が低下するという問題点がある。
このように、氷上性能およびウェット性能を同時に高めることは当業界では困難な事項とされてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−35736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、氷上性能およびウェット性能を同時に高め得るスタッドレスタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の平均ガラス転移温度を有するジエン系ゴムに対し、特定の物性を有するフッ素ゴムを特定量で配合することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0006】
1.天然ゴムおよびブタジエンゴムを含む平均ガラス転移温度が−70℃以下のジエン系ゴム100質量部に対し、水に対する接触角が93度以上のフッ素ゴムを1〜25質量部配合してなることを特徴とするスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
2.前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに熱膨張性マイクロカプセルを0.5〜20質量部配合することを特徴とする前記1に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
3.前記熱膨張性マイクロカプセル(X)と前記フッ素ゴム(Y)とを、質量比(X/Y)=(15/85)〜(70/30)の範囲でマスターバッチ化したものを配合することを特徴とする前記1または2に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
4.前記フッ素ゴムのガラス転移温度が−25℃以下であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
5.前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに前記ジエン系ゴムとは相溶しない架橋性オリゴマーまたはポリマーを0.3〜30質量部配合し、前記架橋性オリゴマーまたはポリマーが、水酸基、シラン官能基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、カルボキシ基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つ以上の反応性官能基を有する、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、脂肪族系、飽和炭化水素系、アクリル系もしくは植物由来系の重合体または共重合体であることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
6.前記1〜5のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに使用したスタッドレスタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定の平均ガラス転移温度を有するジエン系ゴムに対し、特定の物性を有するフッ素ゴムを特定量で配合したので、氷上性能およびウェット性能を同時に高め得るスタッドレスタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0009】
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、天然ゴム(NR)およびブタジエンゴム(BR)を少なくとも含有する。
本発明で使用されるジエン系ゴム100質量部中、NRとBRの合計は50質量部以上であることが好ましく、NRとBRの合計が70質量部以上であることがさらに好ましい。
またジエン系ゴムは、NRおよびBR以外のものを配合することもでき、例えばイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
また本発明で使用されるジエン系ゴムは、平均ガラス転移温度が−70℃以下であることが必要である。平均ガラス転移温度が−70℃を超えると、氷上性能を改善することができない。平均ガラス転移温度は、ガラス転移温度の平均値であり、各ジエン系ゴムのガラス転移温度と各ジエン系ゴムの配合割合から平均値として算出することができる。
【0010】
(フッ素ゴム)
本発明で使用されるフッ素ゴムとしては、例えばフッ化ビニリデン系ゴム、フルオロシリコーンゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、テトラフルオロエチレンパーフルオロビニルエーテル系ゴム等が挙げられる。
【0011】
フッ素ゴムは、ジエン系ゴムと非相溶であることからトレッドゴム中に約0.1μm〜100μmの程度なドメインを形成し、表面粗さを上げることが可能となり、また撥水性のゴムであることから、路面とタイヤ接地面との間の水膜を除去し、ミクロな接地面積を増加させ、氷上性能を向上させることができる。この観点から、フッ素ゴムの水に対する接触角は93度以上であることが必要であり、98度以上であるのがさらに好ましい。また、NRおよびBRを必須成分として含むジエン系ゴムの平均ガラス転移温度に対し、フッ素ゴムのガラス転移温度は通常高いものであるので、低温tanδを上げることが可能であり、ウェット性能の向上に繋がる。
【0012】
また本発明では、フッ素ゴムのガラス転移温度は−25℃以下であることが好ましい。この形態によれば、氷上性能への効果が大きくなるという点で有利となる。ガラス転移温度は−25℃以下のフッ素ゴムとしては、テトラフルオロエチレンパーフルオロビニルエーテル系ゴムを好ましく使用することができる。
【0013】
(熱膨張性マイクロカプセル)
本発明では、その効果をさらに高めるという観点から、熱膨張性マイクロカプセルを配合することができる。熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂で形成された殻材中に、熱膨張性物質を内包した構成からなる。熱膨張性マイクロカプセルの殻材はニトリル系重合体により形成することができる。
またマイクロカプセルの殻材中に内包する熱膨張性物質は、熱によって気化または膨張する特性をもち、例えば、イソアルカン、ノルマルアルカン等の炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種類が例示される。イソアルカンとしては、イソブタン、イソペンタン、2−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン等を挙げることができ、ノルマルアルカンとしては、n−ブタン、n−プロパン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等を挙げることができる。これらの炭化水素は、それぞれ単独で使用しても複数を組み合わせて使用してもよい。熱膨張性物質の好ましい形態としては、常温で液体の炭化水素に、常温で気体の炭化水素を溶解させたものがよい。このような炭化水素の混合物を使用することにより、未加硫タイヤの加硫成形温度域(150℃〜190℃)において、低温領域から高温領域にかけて十分な膨張力を得ることができる。
このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えばスェーデン国エクスパンセル社製の商品名「EXPANCEL 091DU−80」または「EXPANCEL 092DU−120」等、或いは松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアー F−85D」または「マツモトマイクロスフェアー F−100D」等を使用することができる。
【0014】
本発明によれば、熱膨張性マイクロカプセルを配合する際に、フッ素ゴムとマスターバッチ化しておくことが好ましい。これにより、熱膨張性マイクロカプセルの周りにフッ素ゴムが存在しやすくなり撥水性のフッ素ゴムによりはじかれた水分が熱膨張性マイクロカプセルに入り込みやすくなり、氷上性能をさらに高めることができる。
マスターバッチ化は、氷上性能を高めるという観点から、熱膨張性マイクロカプセル(X)とフッ素ゴム(Y)とを、質量比(X/Y)=(15/85)〜(70/30)の範囲で行うことが好ましい。さらに好ましい質量比(X/Y)は、(20/80)〜(65/35)である。
【0015】
(架橋性オリゴマーまたはポリマー)
本発明では、前記のフッ素ゴムによりもたらされる効果をさらに高めるという観点から、水酸基、シラン官能基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、カルボキシ基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つ以上の反応性官能基を有する、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、脂肪族系、飽和炭化水素系、アクリル系もしくは植物由来系の重合体または共重合体である架橋性オリゴマーまたはポリマーを配合するのが好ましい。
このような架橋性オリゴマーまたはポリマーは公知であり、例えば特許第5229431号公報に開示されている。
【0016】
前記架橋性オリゴマーまたはポリマーは、ジエン系ゴムに相溶せず、架橋性を有するオリゴマーまたはポリマーである。ここで、「(前記ジエン系ゴムに)相溶しない」とは、前記ジエン系ゴムに包含される全てのゴム成分に対して相溶しないという意味ではなく、前記ジエン系ゴムおよび前記架橋性オリゴマーまたはポリマーに用いる各々の具体的な成分が互いに非相溶であることをいう。
【0017】
前記架橋性オリゴマーまたはポリマーとしては、例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、脂肪族系、飽和炭化水素系、アクリル系もしくは植物由来系の重合体または共重合体等が挙げられる。
これらのうち、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、アクリル系もしくは植物由来系の重合体または共重合体であるのが好ましい。
【0018】
ここで、前記ポリエーテル系の重合体または共重合体としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
また、前記ポリエステル系の重合体または共重合体としては、例えば、低分子多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等)と多塩基性カルボン酸(例えば、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)との縮合物(縮合系ポリエステルポリオール);ラクトン系ポリオール;等が挙げられる。
また、前記ポリオレフィン系の重合体または共重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体(EPR、EPDM)、ポリブチレン、ポリイソブチレン、水添ポリブタジエン等が挙げられる。
また、前記ポリカーボネート系の重合体または共重合体としては、例えば、ポリオール化合物(例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等)とジアルキルカーボネートとのエステル交換反応により得られるもの等が挙げられる。
また、前記アクリル系の重合体または共重合体としては、例えば、アクリルポリオール;アクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリレートの単独ポリマー;これらアクリレートを2種以上組み合わせたアクリレート共重合体;等が挙げられる。
また、前記植物由来系の重合体または共重合体としては、例えば、ヒマシ油、大豆油などの植物油脂;ポリ乳酸などを改質したポリエステルポリオールなどから誘導される各種エラストマー;等が挙げられる。
【0019】
本発明においては、前記架橋性オリゴマーまたはポリマーは、分子間で架橋することにより、タイヤの氷上性能がより良好となる理由から、水酸基、シラン官能基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、カルボキシ基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つ以上の反応性官能基を有しているのが好ましい。
ここで、前記シラン官能基は、いわゆる架橋性シリル基とも呼ばれ、その具体例としては、加水分解性シリル基;シラノール基;シラノール基をアセトキシ基誘導体、エノキシ基誘導体、オキシム基誘導体、アミン誘導体などで置換した官能基;等が挙げられる。
これらの官能基のうち、ゴムの加工時に前記架橋性オリゴマーまたはポリマーが適度に架橋され、タイヤの氷上性能が更に良好となり、耐摩耗性もより良好となる理由から、シラン官能基、イソシアネート基、酸無水物基またはエポキシ基を有しているのが好ましく、中でも加水分解性シリル基またはイソシアネート基を有しているのがより好ましい。
【0020】
ここで、前記加水分解性シリル基としては、具体的には、例えば、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基等が挙げられる。
これらのうち、加水分解性と貯蔵安定性のバランスが良好となる理由から、アルコキシシリル基であるのが好ましく、具体的には、下記式(1)で表されるアルコキシシリル基であるのがより好ましく、メトキシシリル基、エトキシシリル基であるのが更に好ましい。
【0021】
【化1】
【0022】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、aは1〜3の整数を表す。aが2または3の場合、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、aが1の場合、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0023】
また、前記イソシアネート基は、ポリオール化合物(例えば、ポリカーボネート系ポリオールなど)の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とを反応させた際に残存するイソシアネート基のことである。
なお、前記ポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0024】
本発明においては、前記反応性官能基は、前記架橋性オリゴマーまたはポリマーの少なくとも主鎖の末端に有しているのが好ましく、主鎖が直鎖状である場合は1.5個以上有しているのが好ましく、2個以上有しているのがより好ましい。一方、主鎖が分岐している場合は3個以上有しているのが好ましい。
【0025】
また、本発明においては、前記架橋性オリゴマーまたはポリマーの重量平均分子量または数平均分子量は、前記ジエン系ゴムへの分散性やゴム組成物の混練加工性が良好となり、更に後述する微粒子を前記架橋性オリゴマーまたはポリマー中で調製する際の粒径や形状の調整が容易となる理由から、300〜30000であるのが好ましく、500〜25000であるのがより好ましい。
ここで、重量平均分子量および数平均分子量は、いずれもゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0026】
なお本発明において、架橋性オリゴマーまたはポリマーは、前記ジエン系ゴムに配合する前に架橋させておいてもよいし、前記ジエン系ゴムと混合する際に架橋するようにしてもよい。架橋性オリゴマーまたはポリマーはマトリックスゴムよりも柔らかいことで路面に追従しやすくなり、実接地面積を上げると同時に、摩耗によりトレッドゴムの接地面で凹部を形成し、この凹部に水分が侵入することから氷上性能が向上する。このとき、撥水性のフッ素ゴムの存在により該凹部への水分の侵入が促進され、氷上性能がさらに向上する。
【0027】
本発明では、平均粒子径が1〜200μmの三次元架橋した微粒子を配合することもできる。前記微粒子の平均粒子径は、タイヤの表面が適度に粗くなり、氷上性能がより良好となる理由から、1〜50μmであるのが好ましく、5〜40μmであるのがより好ましい。ここで、平均粒子径とは、レーザー顕微鏡を用いて測定した円相当径の平均値をいい、例えば、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置LA−300(堀場製作所社製)、レーザー顕微鏡VK−8710(キーエンス社製)などで測定することができる。
【0028】
本発明においては、前記微粒子の含有量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対して例えば0.1〜12質量部であり、0.3〜10質量部であるのが好ましく、0.5〜10質量部であるのがより好ましい。
前記微粒子を所定量含有することにより、氷上性能および耐摩耗性がいずれも良好となる。これは、前記微粒子の弾性により局所的にかかる歪みが分散され、応力も緩和されるため、氷上性能および耐摩耗性が向上したと考えられる。
【0029】
また、本発明においては、前記微粒子は、予め前記架橋性オリゴマーまたはポリマー中において、前記架橋性オリゴマーまたはポリマーと相溶しないオリゴマーまたはポリマー(d1)を三次元架橋させた微粒子であるのが好ましい。これは、前記架橋性オリゴマーまたはポリマーが前記微粒子の溶媒として機能するとともに、これらの混合物をゴム組成物に配合する際に、前記架橋性オリゴマーまたはポリマーおよび前記微粒子のゴム組成物における分散性および分散性が向上する効果が期待できるためと考えられる。ここで、「(前記架橋性オリゴマーまたはポリマーと)相溶しない」とは、前記架橋性オリゴマーまたはポリマーに包含される全ての成分に対して相溶しないという意味ではなく、前記架橋性オリゴマーまたはポリマーおよび前記オリゴマーまたはポリマー(d1)に用いる各々の具体的な成分が互いに非相溶であることをいう。
【0030】
前記オリゴマーまたはポリマー(d1)としては、例えば、ポリカーボネート系、脂肪族系、飽和炭化水素系、アクリル系もしくは植物由来系の重合体または共重合体等が挙げられる。ここで、脂肪族系の重合体または共重合体としては、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体などの液状ジエン系ポリマー;クロロプレンゴム;ブチルゴム;ニトリルゴム;これらの一部水添物や後述する反応性官能基を有する変成物;等が挙げられる。また、飽和炭化水素系の重合体または共重合体としては、例えば、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、エチレンプロピレン、エピクロルヒドリン、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、ポリイソブチレン、アクリルゴム等が挙げられる。また、前記ポリカーボネート系の重合体または共重合体としては、例えば、ポリオール化合物(例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等)とジアルキルカーボネートとのエステル交換反応により得られるもの等が挙げられる。また、アクリル系の重合体または共重合体としては、例えば、アクリルポリオール;アクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリレートの単独ポリマー;これらアクリレートを2種以上組み合わせたアクリレート共重合体;等が挙げられる。また、植物由来系の重合体または共重合体としては、例えば、ヒマシ油、大豆油などの植物油脂;ポリ乳酸などを改質したポリエステルポリオールなどから誘導される各種エラストマー;等が挙げられる。
【0031】
これらのうち、脂肪族系の重合体または共重合体であるのが好ましく、タイヤの氷上性能および耐摩耗性がより良好となる理由から、液状ジエン系ポリマーであるのがより好ましい。ここで、液状ポリイソプレンの市販品としては、例えば、クラプレンLIR−30、クラプレンLIR−50(以上、クラレ社製)、Poly ip(出光興産社製)等が挙げられる。また、液状ポリブタジエンとしては、クラプレンLBR−305(クラレ社製)などのホモポリマータイプ;Poly bd(出光興産社製)などの1,2−結合型ブタジエンと1,4−結合型ブタジエンとのコポリマータイプ;クラプレンL−SBR−820(クラレ社製)などのエチレンと1,4−結合型ブタジエンと1,2−結合型ブタジエンとのコポリマータイプ;等が挙げられる。
【0032】
本発明においては、前記オリゴマーまたはポリマー(d1)は、前記架橋性オリゴマーまたはポリマー中において前記オリゴマーまたはポリマー(d1)のみを三次元架橋させることができる理由から、前記架橋性オリゴマーまたはポリマーが有する上述した反応性官能基と異なり、かつ、反応しない、水酸基、シラン官能基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、カルボキシ基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つ以上の反応性官能基を有しているのが好ましい。
ここで、前記シラン官能基は、いわゆる架橋性シリル基とも呼ばれ、その具体例としては、前記架橋性オリゴマーまたはポリマーが有するシラン官能基と同様、例えば、加水分解性シリル基;シラノール基;シラノール基をアセトキシ基誘導体、エノキシ基誘導体、オキシム基誘導体、アミン誘導体などで置換した官能基;等が挙げられる。
なお、前記オリゴマーまたはポリマー(d1)を三次元架橋させた後においては、前記架橋性オリゴマーまたはポリマーは、前記オリゴマーまたはポリマー(d1)と同一の反応性官能基(例えば、カルボキシ基、加水分解性シリル基など)を有していてもよく、既に有している官能性官能基を前記オリゴマーまたはポリマー(d1)と同一の反応性官能基に変成してもよい。
これらの官能基のうち、前記オリゴマーまたはポリマー(d1)の三次元架橋が容易に進行する理由から、水酸基、シラン官能基、カルボキシ基または酸無水物基を有しているのが好ましく、カルボキシ基または酸無水物基を有しているのがより好ましい。
ここで、カルボキシ基を有している液状ポリイソプレンの市販品としては、例えば、クラプレンLIR−410(イソプレン−マレイン酸モノメチルエステル変性イソプレン共重合体、数平均分子量:25000、クラレ社製)等が挙げられ、酸無水物基を有している液状ポリイソプレンの市販品としては、例えば、クラプレンLIR−403(イソプレン−無水マレイン酸変性イソプレン共重合体、数平均分子量:34000、クラレ社製)等が挙げられる。
【0033】
本発明においては、前記反応性官能基は、前記オリゴマーまたはポリマー(d1)の少なくとも主鎖の末端に有しているのが好ましく、主鎖が直鎖状である場合は1.5個以上有しているのが好ましく、2個以上有しているのがより好ましい。一方、主鎖が分岐している場合は3個以上有しているのが好ましい。
【0034】
また、本発明においては、前記オリゴマーまたはポリマー(d1)の重量平均分子量または数平均分子量は特に限定されないが、微粒子の粒子径と架橋密度が適度になり、タイヤの氷上性能がより良好になる理由から、1000〜100000であるのが好ましく、3000〜60000であるのがより好ましい。
【0035】
前記架橋性オリゴマーまたはポリマー中で前記オリゴマーまたはポリマー(d1)を三次元架橋させ微粒子を調製する方法は、例えば、前記オリゴマーまたはポリマー(d1)が有する前記反応性官能基を利用して三次元架橋する方法等が挙げられ、具体的には、前記反応性官能基を有する前記オリゴマーまたはポリマー(d1)と、水、触媒および前記反応性官能基と反応する官能基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分(d2)と、を反応させて三次元架橋させる方法等が挙げられる。
【0036】
ここで、前記成分(d2)の水は、前記オリゴマーまたはポリマー(d1)が加水分解性シリル基、イソシアネート基、酸無水物基を反応性官能基として有している場合に好適に用いることができる。また、前記成分(d2)の触媒としては、例えば、シラノール基の縮合触媒(シラノール縮合触媒)等が挙げられる。前記シラノール縮合触媒としては、具体的には、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫ジアセテート、テトラブチルチタネート、オクタン酸第一錫等が挙げられる。また、前記成分(d2)の前記反応性官能基と反応する官能基を有する化合物としては、例えば、水酸基含有化合物、シラノール化合物、ヒドロシラン化合物、ジイソシアネート化合物、アミン化合物、オキサゾリジン化合物、エナミン化合物、ケチミン化合物等が挙げられる。
【0037】
本発明においては、前記架橋性オリゴマーまたはポリマー中で前記オリゴマーまたはポリマー(d1)を三次元架橋させて微粒子を調製する際に、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。前記溶媒の使用態様としては、前記オリゴマーまたはポリマー(d1)に良溶媒となり、かつ、前記架橋性オリゴマーまたはポリマーの貧溶媒となる可塑剤、希釈剤、溶剤を用いる態様、および/または、前記記架橋性オリゴマーまたはポリマーの良溶媒となり、かつ、前記オリゴマーまたはポリマー(d1)に貧溶媒となる可塑剤、希釈剤、溶剤を用いる態様が挙げられる。
このような溶媒としては、具体的には、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、n−オクタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素;キシレン、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどのテルペン系有機溶剤等が挙げられる。
【0038】
また、本発明においては、前記架橋性オリゴマーまたはポリマー中で前記オリゴマーまたはポリマー(d1)を三次元架橋させて微粒子を調製する際に、界面活性剤、乳化剤、分散剤、シランカップリング剤等の添加剤を用いて調製するのが好ましい。
【0039】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、フッ素ゴムを1〜25質量部配合してなることを特徴とする。
フッ素ゴムの配合量が1質量部未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に25質量部を超えると氷上性能およびウェット性能が低下する。
フッ素ゴムのさらに好ましい配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、4〜25質量部である。
【0040】
前記熱膨張性マイクロカプセルを使用する場合、その配合量はジエン系ゴム100質量部に対し、例えば0.5〜20質量部であり、1〜18質量部が好ましい。
前記架橋性オリゴマーまたはポリマーを使用する場合、その配合量はジエン系ゴム100質量部に対し、0.3〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がさらに好ましい。
【0041】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、シリカ、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;シランカップリング剤;老化防止剤;可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0042】
また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに適しており、トレッド、とくにキャップトレッドに適用し、スタッドレスタイヤとするのがよい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0044】
標準例、実施例1〜12および比較例1〜4
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で170℃、10分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で加硫ゴム試験片の物性を測定した。なお、実施例9〜12では、熱膨張性マイクロカプセル(X)とフッ素ゴム(Y)とを質量比(X/Y)=(2/10)あるいは(16/10)の割合でマスターバッチ化したものを配合した。
【0045】
氷上性能:前記加硫ゴム試験片を偏平円柱状の台ゴムにはりつけ、インサイドドラム型氷上摩擦試験機にて氷上摩擦係数を測定した。測定温度は−1.5℃、荷重5.5kg/cm3、ドラム回転速度は25km/hである。結果は標準例の値を100として指数で示した。指数が大きいほどゴムと氷の摩擦力が良好であり、氷上性能に優れることを示す。
ウェット性能:JIS K6394に準拠して、岩本製作所社製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、伸長変形歪率=10±2%、振動数=20Hz、温度0℃の条件下でtanδ(0℃)を測定し、この値をもってウェット性能を評価した。結果は、標準例を100として指数で示した。指数が大きいほど、ウェット性能が良好であることを示す。
【0046】
【表1】
【0047】
*1:NR(BON BUNDIT製STR20。Tg=−62℃)
*2:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220。Tg=−106℃)
*3:SBR(日本ゼオン(株)製Nipol A1502。Tg=−51℃)
*4:カーボンブラック(東海カーボン(株)製シーストKH)
*5:シリカ(東ソー・シリカ(株)製NipsilAQ)
*6:亜鉛華(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*7:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸)
*8:老化防止剤6C(FLEXSYS製SANTOFLEX6PPD)
*9:老化防止剤RD(大内新興化学工業(株)製ノクラック224)
*10:シランカップリング剤(エボニックジャパン(株)製Si69)
*11:アロマオイル(昭和シェル石油(株)製エクストラクト4号S)
*12:架橋性ポリマー((株)カネカ製S203H、加水分解性シリル基末端ポリオキシプロピレングリコール)
*13:フッ素ゴム−1(デュポン社製Viton A200、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、水に対する接触角=95度、ガラス転移温度=−17℃)
*14:フッ素ゴム−2(ダイキン工業(株)製ダイエルLT302、テトラフルオロエチレンパーフルオロビニルエーテル系ゴム、水に対する接触角=101度、ガラス転移温度=−32℃)
*15:EPM(三井化学(株)製EPM0045、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、水に対する接触角=88度)
*16:熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬(株)製マツモトマイクロスフェアF−100D)
*17:硫黄(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄)
*18:加硫促進剤CZ(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G)
*19:加硫促進剤DPG(Flexsys社製Perkacit DPG)
【0048】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜12で得られたゴム組成物は、特定の平均ガラス転移温度を有するジエン系ゴムに対し、特定の物性を有するフッ素ゴムを特定量で配合したので、従来の代表的な標準例に対し、氷上性能およびウェット性能が共に向上していることが分かる。
実施例2と実施例4の比較から、ガラス転移温度が−25℃以下であるフッ素ゴムを用いた実施例4は、氷上性能が向上している。
実施例2と実施例6の比較、また、実施例4と実施例8の比較から、熱膨張性マイクロカプセルを配合した実施例6および8は、氷上性能が向上している。
実施例6と実施例9の比較から、熱膨張性マイクロカプセルとフッ素ゴムとを特定の比率でマスターバッチ化した実施例9は、氷上性能が向上している。この傾向は、実施例7と実施例10の比較でも認められる。
実施例12は、架橋性ポリマーを配合した例であり、氷上性能が格段に向上している。
これに対し、比較例1はフッ素ゴムの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、氷上性能およびウェット性能の向上効果に乏しい。
比較例2は、フッ素ゴムの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、氷上性能およびウェット性能が悪化した。
比較例3は、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が本発明で規定する上限を超えているので、氷上性能が悪化した。
比較例4は、標準例に対しエチレン−プロピレン共重合体ゴムを配合した例であり、本発明の接触角の規定を満たさないため、氷上性能の向上効果に乏しい。またウェット性能も向上しない。
なお、実施例1〜3、実施例5〜7、実施例9〜10は参考例である。