(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流路切替弁が切り替えられることによって、前記第1熱交換流路に排気を流す潤滑油加熱モードと、前記第2熱交換流路に排気を流す熱媒体加熱モードと、前記第1熱交換流路および前記第2熱交換流路の両方に排気を流して排気温度を調整する排気温度調整モードと、前記バイパス流路に排気を流すバイパスモードとを切り替えるように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の排熱回収装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された車両の排熱回収装置では、潤滑油については、排気ガスにより加熱されたエンジン冷却水を介して二次的に加熱されるため、エンジン冷却水が所定温度に到達しない間は潤滑油を加熱することができず、潤滑油の昇温速度は、先に加熱されるエンジン冷却水の昇温速度に依存する。このため、潤滑油およびエンジン冷却水を共に早期に昇温させることができないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、潤滑油および潤滑油以外の熱媒体を共に早期に昇温させることが可能な車両の排熱回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の
第1の局面における車両の排熱回収装置は、エンジンからの排気ガスを排出する排気経路に設けられ、排気と潤滑油との熱交換を行う第1熱交換部と、排気経路の第1熱交換部の上流に設けられ、排気と潤滑油以外の熱媒体との熱交換を行う第2熱交換部と、
第1熱交換部を含む第1熱交換流路と、第2熱交換部を含む第2熱交換流路と、排気を第1熱交換部および第2熱交換部を介さずにバイパスさせるバイパス流路と、第1熱交換流路、第2熱交換流路およびバイパス流路に対して、排気が流れる流路を切り替える流路切替弁と、排気の温度を検出する排気温度検出部と、を備え
、排気温度検出部により検出された排気温度に基づいて、流路切替弁を切り替えるように構成されている。
【0008】
この発明の
第1の局面における車両の排熱回収装置では、上記構成を有することによって、排気と潤滑油との熱交換と、排気と潤滑油以外の熱媒体との熱交換とを、第1熱交換部および第2熱交換部において同時進行させることができる。この際、上流側の第2熱交換部において潤滑油以外の熱媒体との熱交換により程良く冷却された排気を用いて下流側の第1熱交換部において潤滑油を加熱することができる。したがって、排気により加熱された潤滑油以外の熱媒体を介在させて潤滑油を二次的に加熱する場合と異なり、潤滑油および潤滑油以外の熱媒体を共に早期に昇温させることができる。また、潤滑油を早期に昇温させることにより潤滑油の粘度(粘性抵抗)が早期に低下されるので、エンジン内部や変速機内部の可動部における摺動抵抗が早期に減少されて燃費を改善することができる。
【0010】
また、排気温度検出部により検出された排気温度に応じて流路を切り替えて第1熱交換流路、第2熱交換流路またはバイパス流路のいずれかに排気を流すことができるので、排気温度に応じて、排気と潤滑油とを熱交換させる動作モード、排気と潤滑油以外の熱媒体とを熱交換させる動作モード、排気と潤滑油および潤滑油以外の熱媒体とを同時進行的に熱交換させる動作モード、または、潤滑油および潤滑油以外の熱媒体のいずれとも熱交換を行わない動作モードのいずれかに容易に切り替えることができる。
【0011】
この発明の第2の局面における車両の排熱回収装
置は、
エンジンからの排気ガスを排出する排気経路に設けられ、排気と潤滑油との熱交換を行う第1熱交換部と、排気経路の第1熱交換部の上流に設けられ、排気と潤滑油以外の熱媒体との熱交換を行う第2熱交換部と、第1熱交換部を含む第1熱交換流路と、第2熱交換部を含む第2熱交換流路と、排気を第1熱交換部および第2熱交換部を介さずにバイパスさせるバイパス流路と、第1熱交換流路、第2熱交換流路およびバイパス流路に対して、排気が流れる流路を切り替える流路切替弁と、潤滑油または潤滑油以外の熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検出部と、
を備え、熱媒体温度検出部により検出された潤滑油または潤滑油以外の熱媒体の温度に基づいて、流路切替弁を切り替えるように構成されている
、第1熱交換部を含む第1熱交換流路と、第2熱交換部を含む第2熱交換流路と、排気を第1熱交換部および第2熱交換部を介さずにバイパスさせるバイパス流路と、第1熱交換流路、第2熱交換流路およびバイパス流路に対して、排気が流れる流路を切り替える流路切替弁と、潤滑油または潤滑油以外の熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検出部と、をさらに備え、熱媒体温度検出部により検出された潤滑油または潤滑油以外の熱媒体の温度に基づいて、流路切替弁を切り替えるように構成されている。
【0012】
この発明の第2の局面による車両の排熱回収装置では、上記のように構成することにより、熱媒体温度検出部により検出された潤滑油または潤滑油以外の熱媒体の温度に応じて流路を切り替えて第1熱交換流路、第2熱交換流路またはバイパス流路のいずれかに排気を流すことができるので、潤滑油または潤滑油以外の熱媒体の温度に応じて、排気と潤滑油との熱交換、排気と潤滑油以外の熱媒体との熱交換、または、潤滑油および潤滑油以外の熱媒体のいずれとも熱交換を行わない動作モードに容易に切り替えることができる。
【0013】
上記
第1の局面による車両の排熱回収装置において、好ましくは、排気温度に加えて排気流量に基づいて、排気が流れる流路が流路切替弁により切り替えられるように構成されている。
【0014】
このように構成すれば、排気温度のみならず排気流量にも応じて、排気と潤滑油との熱交換、排気と潤滑油以外の熱媒体との熱交換、または、潤滑油および潤滑油以外の熱媒体のいずれとも熱交換を行わない動作モードに切り替えることができるので、潤滑油の昇温速度および潤滑油以外の熱媒体の昇温速度を適切に制御することができる。したがって、潤滑油および潤滑油以外の熱媒体を共に効率よく昇温させることができる。
【0015】
上記
第1または第2の局面による車両の排熱回収装置において、好ましくは、流路切替弁が切り替えられることによって、第1熱交換流路に排気を流す潤滑油加熱モードと、第2熱交換流路に排気を流す熱媒体加熱モードと、第1熱交換流路および第2熱交換流路の両方に排気を流して排気温度を調整する排気温度調整モードと、バイパス流路に排気を流すバイパスモードとを切り替えるように構成されている。
【0016】
このように構成すれば、排気熱を適切に利用して潤滑油および潤滑油以外の熱媒体の早期昇温を図りつつ、排熱回収装置通過後の排気温度も適切に調整することができる。また、車両側(熱利用側)の要求に応じて潤滑油を加熱して粘度を早期に低下させたり、潤滑油以外の熱媒体を加熱して車両暖房要求時の熱源を早期に確保したりするなど、排熱利用の用途を広く確保することができる。
【0017】
上記
第1または第2の局面による車両の排熱回収装置において、好ましくは、流路切替弁は、第1熱交換流路および第2熱交換流路の上流に位置し、排気の流路を切り替える第1流路切替弁と、第1熱交換流路および第2熱交換流路の下流に位置し、排気の流路を切り替える第2流路切替弁と、を含む。
【0018】
このように構成すれば、第1流路切替弁および第2流路切替弁の各々の切り替え位置に応じて、第1熱交換流路のみへの排気の流通、第2熱交換流路のみへの排気の流通、第2熱交換流路および第1熱交換流路の順での排気の流通、または、バイパス流路への排気の流通のいずれかの態様(動作モード)に容易に切り替えることができる。
【0019】
なお、上記
第1または第2の局面による車両の排熱回収装置において以下のような構成も考えられる。
【0020】
(付記項1)
すなわち、上記
第1または第2の局面による車両の排熱回収装置において、第1熱交換流路および第2熱交換流路は、断熱層を介して互いに隣接するように配置されている。
【0021】
(付記項2)
また、上記
第1または第2の局面による車両の排熱回収装置において、排気経路における第1熱交換流路、第2熱交換流路およびバイパス流路の上流および下流には、排気流路が接続されており、第1熱交換流路、第2熱交換流路およびバイパス流路は、排気流路の排気流れに対して直交する方向に並んで配置されている。
【0022】
(付記項3)
また、上記第1熱交換流路、第2熱交換流路およびバイパス流路が排気流路の排気流れに対して直交する方向に並ぶ車両の排熱回収装置において、第1熱交換流路、第2熱交換流路およびバイパス流路は、排気流路の排気流れに対して直交する方向に沿って、バイパス流路、第2熱交換流路および第1熱交換流路の順に配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
(第1実施形態)
[排熱回収装置の構造]
図1〜
図3を参照して、本発明の第1実施形態による排熱回収装置20(車両の排熱回収装置の一例)の構成について説明する。
【0026】
排熱回収装置20は、
図1に示すように、車両(自動車)100の排気装置10に組み込まれている。排気装置10は、エンジン5に接続される排気マニホールド11と、車両後方に延びる排気管12(排気経路の一例)とを含んでいる。また、排気管12には、触媒コンバータ13と、マフラー(消音器)14とが設けられている。そして、排熱回収装置20は、触媒コンバータ13とマフラー14との間に配置されている。
【0027】
エンジン5から排出される排気ガス(以下、排気という)は、温度が最大で約800℃に達する。そして、排熱回収装置20は、大気に捨てられる排気熱を回収する役割を有する。また、排熱回収装置20により回収された排気熱は、車両100の他の熱源として再利用される。このような熱源として、エンジン暖機用の熱源や車内暖房用の熱源がある。
【0028】
ここで、第1実施形態では、排熱回収装置20は、熱交換器31(第1熱交換部の一例)と熱交換器32(第2熱交換部の一例)とを備えている。熱交換器31では排気と潤滑油(エンジンオイル)との熱交換が行われ、熱交換器32では排気とエンジン冷却水(潤滑油以外の熱媒体の一例)との熱交換が行われるように構成されている。また、排熱回収装置20は、排気との熱交換の一態様として、熱交換器32が熱交換器31の上流に設けられる配置構成を得ることが可能に構成されている。
【0029】
[排熱回収装置の詳細な構造]
排熱回収装置20は、
図2に示すように、上流側および下流側が排気管12に接続された本体部21を備えている。なお、本体部21の上流側には触媒コンバータ13(
図1参照)が配置され、下流側にはマフラー14(
図1参照)が配置されている。また、本体部21は、排気管12よりもサイズ(外径)が拡大されている。
【0030】
本体部21は、流路22a(第1熱交換流路の一例)と、流路22b(第2熱交換流路の一例)と、流路22c(バイパス流路の一例)とを有する。排熱回収装置20が車両100(
図1参照)の下面に設置された状態で、排気流れ方向に直交する重力下向き方向(矢印Z2方向)に沿って、流路22c(上段)、流路22b(中段)および流路22a(下段)の順に配置されている。なお、流路22cと流路22bとは壁部24を隔てて互いに平行に配置され、流路22bと流路22aとは壁部25を隔てて互いに平行に配置されている。
【0031】
壁部24の上流端(X1側)には、切替弁41(第1流路切替弁の一例)が設けられるとともに、壁部25の下流端(X2側)には、切替弁42(第2流路切替弁の一例)が設けられている。切替弁41は、エンジン5を制御する制御部(ECU)3によるモータ(図示せず)の回転制御とともに矢印P1方向またはP2方向に回動されることにより、流路22cの入口を開閉する役割を有する。また、切替弁42は、制御部3により矢印Q1方向またはQ2方向に回動されることにより、流路22aの出口を開閉する役割を有する。
【0032】
そして、熱交換器31は、本体部21内の流路22aに設置されるとともに、熱交換器32は、本体部21内の流路22bに設置されている。一方、流路22cには何も設置されていない。また、
図1に示すように、熱交換器31は、オイル循環通路1を介してエンジン5のオイルパン5aに接続されるとともに、熱交換器32は、冷却水通路2を介してラジエター6に接続されている。なお、エンジン5およびラジエター6内を循環する冷却水通路2はヒータコア7にも接続されており、冷却水通路2のエンジン冷却水(温水)は暖房要求に応じてヒータコア7にも流通される。なお、熱交換器31が設置された流路22aと、熱交換器32が設置された流路22bとは、断熱層26を介して互いに隣接している。なお、断熱層26には、熱伝導率の小さいセラミックスシートなどが用いられている。
【0033】
また、排熱回収装置20には、排気温度センサ43(排気温度検出部の一例)が本体部21の上流側の排気管12内に設けられている。排気温度センサ43は、触媒コンバータ13を通過した後でかつ熱交換前の排気温度を検出する役割を有する。
【0034】
そして、第1実施形態では、排熱回収装置20においては、4通りの態様A〜D(
図3参照)により排気を流通させることが可能に構成されている。すなわち、
図2に示すように、排気温度センサ43により検出された排気温度と排気管12を流通する排気流量とによる制御部3の演算結果に基づいて切替弁41および42の位置が切り替えられることにより、本体部21内での排気の流し方が4通りに切り替えられる。これにより、熱交換器31および32の各々の熱交換機能がエンジン5の排気温度および排気流量に応じて使い分けられるように構成されている。なお、排気流量については吸気路(図示せず)中に設けられたエアフローセンサ(図示せず)の検出結果に基づいて制御部3側で把握される。
【0035】
[排熱回収装置の動作態様]
まず、態様Aとして、
図3に示すように、切替弁41がP1側で切替弁42がQ2側に位置した場合、排気は、流路22bおよび22cには流通されず、流路22aのみを通過して下流配管23へと流通される。これにより、排熱回収装置20は、熱交換器31にのみ排気を流して潤滑油を加熱する「潤滑油加熱モード」として使用される。なお、制御部3(
図2参照)により排気流量が所定値G1以下でかつ排気温度が所定値T1未満であると判断された場合に、潤滑油加熱モードが実行される。なお、所定値T1は、潤滑油の発火点未満に設定される。なお、
図3では、便宜的に制御部3および排気温度センサ43(
図2参照)の図示を省略している。
【0036】
また、態様Bとして、切替弁41がP1側で切替弁42がQ1側に位置した場合、排気は流路22aおよび22cには流通されず、流路22bのみを流通される。これにより、排熱回収装置20は、熱交換器32(流路22b)にのみ排気を流してエンジン冷却水を加熱する「冷却水加熱モード」(熱媒体加熱モードの一例)として使用される。なお、排気流量が所定値G1以下かつ排気温度が所定値T2以下(T1<T2)であり、かつ、暖房要求が発生したと判断された場合に、冷却水加熱モードが実行される。
【0037】
また、態様Cとして、切替弁41がP2側で切替弁42がQ2側に位置した場合、流路22c、22bおよび22aが排気流れ方向に沿って直列的に接続される。この際、流路22c、22bおよび22aのみならず切替弁41および42の弁体部分も往復蛇行する排気経路の一部を構成する。そして、排気は、流路22c(矢印X2方向)、熱交換器32(矢印X1方向)および熱交換器31(矢印X2方向)の順に流通される。したがって、熱交換器32において排気とエンジン冷却水との熱交換が行われ、その後、熱交換器31において排気と潤滑油との熱交換が行われる。これにより、熱交換器32により排気温度がある程度下げられた状態で熱交換器31により潤滑油が加熱される。このように、排熱回収装置20は、熱交換器31(流路22a)および熱交換器32(流路22b)の両方に排気を流して潤滑油の加熱とエンジン冷却水の加熱とを共に行って排気温度を調整する「排気温度調整モード」として使用される。なお、排気流量が所定値G1以下でかつ排気温度が所定値T1以上T2以下であると判断された場合に、排気温度調整モードが実行される。
【0038】
また、態様Dとして、切替弁41がP2側で切替弁42がQ1側に位置した場合、排気は流路22aおよび22bには流通されず、流路22cのみを流通される。これにより、排熱回収装置20は、流路22cにのみ排気を流す「バイパスモード」として使用される。なお、排気流量が所定値G1よりも大きいか、または、排気温度が所定値T2よりも大きいと判断された場合に、バイパスモードが実行される。
【0039】
したがって、エンジン5の始動直後において排気流量が所定値G1以下でかつ排気温度が所定値T1未満の場合には、潤滑油加熱モード(態様A)が実行され、その後、排気流量が所定値G1以下でかつ排気温度が所定値T1以上T2以下となった場合には、排気温度調整モード(態様C)に移行される。また、排気流量が所定値G1以下かつ排気温度が所定値T2以下(T1<T2)であり、かつ、暖房要求が生じた場合には、冷却水加熱モード(態様B)に移行される。また、排気流量が所定値G1よりも大きいか、または、排気温度が所定値T2よりも大きい場合には、バイパスモード(態様D)が実行される。
【0040】
なお、
図2に示すように、潤滑油を加熱する熱交換器31が本体部21内の最下段に配置されている。これにより、流路22aの排気熱が熱交換器31に留まることなく上方の熱交換器32(流路22b)や流路22cへと移動しやすくなっている。また、熱交換器31は、熱交換器32を隔てて流路22cと遠ざけられている。これにより、バイパスモードにおいて流路22cを流通する高温の排気熱が下方の熱交換器31(流路22a)に影響しにくくなっている。したがって、排熱回収装置20では、潤滑油を適切に加熱する一方、潤滑油の過剰な加熱が極力抑制されるように構成されている。排熱回収装置20は、上記のように構成されている。
【0041】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0042】
第1実施形態では、排気管12における熱交換器31の上流に熱交換器32を設けることによって、排気と潤滑油との熱交換と、排気とエンジン冷却水との熱交換とを、熱交換器31および熱交換器32において同時進行させることができる。この際、上流側の熱交換器32においてエンジン冷却水との熱交換により程良く冷却された排気を用いて下流側の熱交換器31において潤滑油を加熱することができる。したがって、排気により加熱されたエンジン冷却水を介在させて潤滑油を二次的に加熱する場合と異なり、潤滑油およびエンジン冷却水を共に早期に昇温させることができる。また、潤滑油を早期に昇温させることにより潤滑油の粘度(粘性抵抗)が早期に低下されるので、エンジン5の内部や変速機内部の可動部における摺動抵抗が早期に減少されて燃費を改善することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、切替弁41および42と排気温度センサ43とを設けることによって、排気温度センサ43により検出された排気温度に応じて流路22a〜22cのいずれかに排気を流すことができるので、排気温度に応じて、排気と潤滑油とを熱交換させる動作モード(態様A)、排気とエンジン冷却水とを熱交換させる動作モード(態様B)、排気と潤滑油およびエンジン冷却水とを同時進行的に熱交換させる動作モード(態様C)、または、排気をバイパスさせる動作モード(態様D)のいずれかに容易に切り替えることができる。
【0044】
また、第1実施形態では、排気温度に加えて排気流量に基づいて流路22a〜22cのいずれかに切り替えるように構成することによって、排気温度のみならず排気流量にも応じて、排気と潤滑油との熱交換、排気とエンジン冷却水との熱交換、または、潤滑油およびエンジン冷却水のいずれとも熱交換を行わない動作モード(態様A〜D)に切り替えることができるので、潤滑油の昇温速度およびエンジン冷却水の昇温速度を適切に制御することができる。したがって、潤滑油およびエンジン冷却水を共に効率よく昇温させることができる。
【0045】
また、第1実施形態では、潤滑油加熱モードと、冷却水加熱モードと、排気温度調整モードと、バイパスモードとを切替弁41および42により切り替えることによって、排気熱を適切に利用して潤滑油およびエンジン冷却水の早期昇温を図りつつ、排熱回収装置20を通過した後の排気温度も適切に調整することができる。また、車両100側の要求に応じて潤滑油を加熱して粘度を早期に低下させたり、エンジン冷却水を加熱して車両暖房要求時の熱源を早期に確保したりするなど、排熱利用の用途を広く確保することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、上流側に切替弁41を設けるとともに下流側に切替弁42を設けることによって、各々の切り替え位置(P1、P2、Q1およびQ2)に応じて、流路22aのみへの排気の流通、流路22bのみへの排気の流通、流路22bおよび流路22aの順での排気の流通、または、流路22cへの排気の流通のいずれかの動作モード(態様A〜D)に容易に切り替えることができる。
【0047】
また、第1実施形態では、流路22aおよび流路22bを、断熱層26を介して互いに隣接配置することによって、熱交換器31および32間で熱の授受が生じるのを抑制することができる。すなわち、排気温度調整モード時に下流側の熱交換器31が上流側の熱交換器32の熱影響を壁部25を介して直接的に受けるのを抑制することができる。これにより、熱交換器31における潤滑油の昇温速度を正確に制御することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、本体部21の排気流れに対して直交する矢印Z2方向に沿って、流路22c、22bおよび22aの順に配置することによって、高温の排気が流通する流路22cと潤滑油加熱用の熱交換器31(流路22a)とが互いに遠ざけられるので、バイパスモード時に高温の排気(排気熱)に起因して潤滑油が過剰に加熱されるのを抑制することができる。また、潤滑油加熱モードや排気温度調整モードでは、流路22aを流通する排気熱が熱交換器31に留まることなく上方の熱交換器32や流路22cへと移動しやすくなる。これによっても、潤滑油が過剰に加熱するのを抑制することができる。
【0049】
(第1実施形態の第1変形例)
図2および
図4を参照して、第1実施形態の第1変形例について説明する。この第1実施形態の第1変形例では、熱交換器31および32の位置関係を上記第1実施形態と異ならせている。なお、図中、上記第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付す。
【0050】
排熱回収装置120では、
図4に示すように、熱交換器32、流路22cおよび熱交換器31が矢印Z2方向に沿ってこの順に配置されている。したがって、切替弁41がP1側で切替弁42がQ2側に位置した態様Aでは、潤滑油加熱モードが得られ、切替弁41がP2側で切替弁42がQ1側に位置した態様Bでは、冷却水加熱モードが得られる。また、切替弁41がP2側で切替弁42がQ2側に位置した態様Cでは、排気温度調整モードが得られ、切替弁41がP1側で切替弁42がQ1側に位置した態様Dでは、バイパスモードが得られる。なお、その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0051】
第1実施形態の第1変形例では、熱交換器31および32の位置関係を第1実施形態と異ならせても「排気温度調整モード」を得ることができる。すなわち、エンジンまわりの設計上の制約などからオイル循環通路1や冷却水通路2のレイアウトが排熱回収装置20(
図2参照)の場合と異なっていても、これに対応して潤滑油およびエンジン冷却水を共に早期に昇温させることが可能な排熱回収装置120を構成することができる。
【0052】
(第1実施形態の第2変形例)
図5を参照して、第1実施形態の第2変形例について説明する。この第1実施形態の第2変形例では、熱交換器31および32の位置関係をさらに異ならせた例について説明する。なお、図中、上記第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付す。
【0053】
排熱回収装置125では、
図5に示すように、熱交換器32、熱交換器31および流路22cが矢印Z2方向に沿ってこの順に配置されている。したがって、切替弁41がP1側で切替弁42がQ1側に位置した態様Aでは、潤滑油加熱モードが得られ、切替弁41がP2側で切替弁42がQ1側に位置した態様Bでは、冷却水加熱モードが得られる。また、切替弁41がP2側で切替弁42がQ2側に位置した態様Cでは、排気温度調整モードが得られ、切替弁41がP1側で切替弁42がQ1側に位置した態様Dでは、バイパスモードが得られる。なお、排熱回収装置125のその他の構成および効果については、上記第1実施形態の第1変形例と同様である。
【0054】
(第2実施形態)
[排熱回収装置の構造]
図2および
図6〜
図8を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、排熱回収装置220の構造を上記第1実施形態と異ならせた例について説明する。
【0055】
排熱回収装置220は、
図6に示すように、本体部61を備える。本体部61は、流路64(バイパス流路の一例)と、流路64まわりに円環状に形成された流路62a(第1熱交換流路の一例)および流路62b(第2熱交換流路の一例)とを含む。
【0056】
ここで、第2実施形態では、流路62aおよび流路62bは、X方向に延びる流路64に対して同軸状に配置されている。なお、排気流れ方向に沿って上流側(X1側)に流路62bが配置され、その下流側(X2側)に流路62aが配置されている。また、流路64は、流路62a(X2側の流路)に開口する入口64aおよび出口64bと、流路62b(X1側の流路)に開口する入口64cおよび出口64dとを有している。
【0057】
流路62aは、流路64の外周面に沿って延びる内部空間201を有しており、上流側の入口64aと下流側の出口64bとを介して流路64に接続されている。なお、入口64aおよび出口64bは、流路64のZ1側の内面に所定の開口面積を有して設けられている。また、内部空間202を有する流路62bについても流路62aの場合と同様に構成されている。
【0058】
また、内部空間201には、入口64aおよび出口64bを隔てるフランジ状の壁部65が設けられている。そして、壁部65の半径内側の端部には切替弁81(第1流路切替弁の一例)が設けられている。同様に、内部空間202にも壁部66および切替弁82(第2流路切替弁の一例)が設けられている。切替弁81は、矢印R1(R2)方向に回動されることにより流路64と出口64b(流路62a)との開閉状態を切り替える役割を有し、切替弁82は、流路64と出口64d(流路62b)との開閉状態を切り替える役割を有する。また、切替弁81および82は、排気温度センサ43により検出された排気温度と排気管12を流通する排気流量とに基づいて開閉動作が行われる。
【0059】
そして、第2実施形態では、排気と潤滑油との熱交換を担う熱交換器71(第1熱交換部の一例)が流路62a内に設置されるとともに、排気とエンジン冷却水との熱交換を担う熱交換器72(第2熱交換部の一例)が流路62b内に設置されている。なお、熱交換器71は、
図7に示すように、内部を潤滑油が流通する伝熱管71aが流路62aの内部空間201に沿って周状(螺旋状)に巻回されており、隣り合う伝熱管71aの間をすり抜けながら排気が流通されるように構成されている。この場合、排気は、半径方向外側に向かって放射状に流れる。また、伝熱管71aは、本体部61の外部でオイル循環通路1に接続されている。なお、熱交換器72についても伝熱管72aの内部に冷却水通路2のエンジン冷却水が流通される点を除いて熱交換器71と同様に構成されている。
【0060】
そして、本体部61においては、切替弁81および82が個別に切り替えられることにより、潤滑油加熱モード、冷却水加熱モード、排気温度調整モードおよびバイパスモードが個別に切り替えられるように構成されている
【0061】
たとえば、
図7に示す排気との熱交換の1つの態様(排気温度調整モード:態様G)として、排気流れ方向に沿って熱交換器72が熱交換器71の上流に配置される構成が得られる。すなわち、流路64を矢印X2方向に流れる排気は、R1側に位置する切替弁82により入口64cを介して内部空間202に流入し熱交換器72を経て出口64dを介して一旦流路64に戻される。その後、排気は、R1側に位置する切替弁81により入口64aを介して内部空間201に流入し熱交換器71を経て出口64bを介して再び流路64に戻される。また、この態様Gに加えて、排熱回収装置220においても、態様E、FおよびH(いずれも
図8参照)で排気を流通させることが可能に構成されている。
【0062】
[排熱回収装置の動作態様]
図8に示すように、切替弁82がR2側で切替弁81がR1側に位置する態様Eでは、排気は流路64、流路62aおよび流路64の順に流通される。これにより、排熱回収装置220は、熱交換器71にのみ排気を流す「潤滑油加熱モード」として使用される。
【0063】
また、切替弁82がR1側で切替弁81がR2側に位置する態様Fでは、排気は流路64、流路62bおよび流路64の順に流通される。これにより、排熱回収装置220は、熱交換器72にのみ排気を流す「冷却水加熱モード」として使用される。
【0064】
また、上述した態様Gでは、上流側の熱交換器72で排気とエンジン冷却水との熱交換が行われ、その後、下流側の熱交換器71で排気と潤滑油との熱交換が行われる。これにより、排熱回収装置220は、潤滑油の加熱とエンジン冷却水の加熱とを同時進行させて排気温度を調整する「排気温度調整モード」として使用される。
【0065】
また、切替弁82および81が共に各々のR2側に位置する態様Hでは、排気は流路64のみを矢印X2方向に沿って流通される。これにより、排熱回収装置220は、流路64にのみ排気を流す「バイパスモード」として使用される。
【0066】
なお、
図6および
図7に示すように、熱交換器71および72は、上記第1実施形態のように共通の壁部を隔てて隣接するように配置されていない。すなわち、熱交換器71および72は、流路62bを隔ててX方向に隣接配置されている。したがって、熱交換器71と熱交換器72とが相互に熱影響しにくい構造であるので、断熱層26(
図2参照)は設けられていない。なお、第2実施形態のその他の構成については、上記第1実施形態と同様である。
【0067】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、熱交換器71が設けられた流路62aと熱交換器72が設けられた流路62bとを流路64に対して同軸状に配置して本体部61を構成した場合であっても、熱交換器71の上流に熱交換器72を設けることができる。そして、切替弁81および82により流路62aおよび62bの開閉状態を個別に切り替えて排気温度調整モードを実現することができる。したがって、潤滑油およびエンジン冷却水を共に早期に昇温させることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0068】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0069】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、熱交換器32にエンジン冷却水を流通させるとともに熱交換器31においてエンジン冷却水との熱交換後の排気を用いて潤滑油を加熱したが、本発明はこれに限られない。潤滑油の温度制御が可能であるならば、エンジン冷却水以外の熱媒体を利用して排気温度を事前に低下させてもよい。潤滑油以外の熱媒体としては、熱交換器32がヒートパイプの場合には、管内に封入された水、アルコールまたは代替フロン類などの作動液(冷媒)が挙げられる。また、車両の冷暖房に車両搭載型の吸収式ヒートポンプシステムを用いる場合には、再生器と吸収器との間を循環する吸収液(LiBr水溶液)が挙げられる。ヒートパイプの熱源、吸収式ヒートポンプにおける再生器の熱源に、熱交換器32において回収される排気熱が再利用可能である。
【0070】
また、上記第1および第2実施形態では、熱交換器31においてエンジンオイルを加熱したが、本発明はこれに限られない。潤滑油としては、オートマチックトランスミッション(AT)に供給されるATフルード(ATオイル)や、無段変速機(CVT)内の摺動部に供給される潤滑油が挙げられる。排気熱を利用してこれらの潤滑油を加熱して粘度を早期に低下させることによってもエンジン5の燃費を改善することができる。
【0071】
また、上記第1および第2実施形態では、排気温度および排気流量に基づいて切替弁41(81)および42(82)により流路を切り替えて排熱回収装置20(120、125、220)を各動作モードで動作させたが、本発明はこれに限られない。たとえば、潤滑油またはエンジン冷却水の温度に基づいて排熱回収装置を動作させてもよい。一例として、
図6に示すように、オイル循環通路1に油温センサ3(熱媒体温度検出部の一例)を設けるとともに冷却水通路2に水温センサ4(熱媒体温度検出部の一例)を設けておく。そして、油温センサ3により検出された潤滑油温度または水温センサ4により検出された冷却水温度による制御部3の演算結果に基づいて切替弁81および82の位置を切り替えてもよい。これによっても潤滑油およびエンジン冷却水を共に早期に昇温させることができる。また、この構成は、排熱回収装置20(
図1参照)にも適用することが可能である。
【0072】
また、上記第1および第2実施形態では、断熱層26にセラミックスシートなどを用いたが、本発明はこれに限られない。たとえば、流路22a〜22cが互いに接する壁部の中に、断熱層としての空気層(空気が満たされた空間)を設けてもよい。
【0073】
また、上記第1実施形態では、流路22a〜22cを排気流れ方向に直交する重力方向に沿って配置したが、本発明はこれに限られない。すなわち、流路22a〜22cを排気流れ方向に直交する左右の水平方向に沿って配置してもよい。
【0074】
また、上記第1実施形態およびその変形例では、熱交換器31の上方に熱交換器32を配置したが、本発明はこれに限られない。すなわち、熱交換器32の上方に熱交換器31を配置してもよい。
【0075】
また、上記第2実施形態では、伝熱管71a(72a)を螺旋状に巻回して熱交換器71(72)を構成したが、本発明はこれに限られない。中空円盤状の伝熱板を所定間隔毎に複数積層して伝熱板間に異種の熱交換流体を交互に流通させるように各々の流路を溶接により封止して構成されるプレート式熱交換器を用いて本体部61内を構成してもよい。