特許第6455191号(P6455191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6455191
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】油圧モータ制御装置及び作業車両
(51)【国際特許分類】
   F15B 20/00 20060101AFI20190110BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20190110BHJP
   B66C 13/20 20060101ALI20190110BHJP
   B66C 15/00 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   F15B20/00 F
   F15B11/08 C
   F15B11/08 B
   B66C13/20
   B66C15/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-19133(P2015-19133)
(22)【出願日】2015年2月3日
(65)【公開番号】特開2016-142352(P2016-142352A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】川淵 直人
(72)【発明者】
【氏名】増田 尚隆
【審査官】 角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−81131(JP,A)
【文献】 特開昭51−42301(JP,A)
【文献】 特開2009−263092(JP,A)
【文献】 実開昭64−25964(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22
20/00−21/14
B66C 13/00−15/06
F16H 61/14
61/38−61/64
B60T 13/00−13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機に駆動されて作動油を供給する油圧ポンプ、及び上記油圧ポンプから供給された作動油によって駆動される油圧モータが接続され、油圧的に閉じた第1油圧回路と、
上記油圧モータを制動するブレーキと、
上記油圧モータの両端に生じる油圧差を検出する検出部と、
上記油圧モータの駆動を指示するオペレータの操作を受け付ける操作部と、
上記油圧ポンプ及び上記ブレーキを制御する制御部と、を備えており、
上記制御部は、
上記操作部が未操作であることに応じて、上記油圧ポンプに作動油の供給を停止させ且つ上記ブレーキに上記油圧モータを制動させ、
上記操作部の未操作時に上記検出部で検出された上記油圧差を監視し、
上記操作部の未操作時における上記油圧差が閾値未満のときに上記操作部が操作されたことに応じて、上記ブレーキによる上記油圧モータの制動を解除し、且つ上記操作部が受け付けた操作に対応する方向及び流量の作動油を上記油圧ポンプに供給させ、
上記操作部の未操作時における上記油圧差が上記閾値以上のときに上記操作部が操作されたことに応じて、上記ブレーキによる上記油圧モータの制動を継続する油圧モータ制御装置。
【請求項2】
上記検出部は、上記第1油圧回路における上記油圧モータの一端側及び他端側の油圧を検出する一対のセンサを有しており、一対の上記センサそれぞれで検出された油圧の差を上記油圧差として検出する請求項1に記載の油圧モータ制御装置。
【請求項3】
上記油圧ポンプから上記油圧モータに供給される作動油の方向及び流量を制御するレギュレータが接続された第2油圧回路を、さらに備えており、
上記検出部は、上記第2油圧回路における上記レギュレータの一端側及び他端側の油圧を検出する一対のセンサを有しており、一対の上記センサそれぞれで検出された油圧の差を上記油圧差として検出する請求項1又は2に記載の油圧モータ制御装置。
【請求項4】
上記制御部は、上記操作部の未操作時における上記油圧差が上記閾値以上であることに応じて、該油圧モータ制御装置の異常を報知する請求項1から3のいずれかに記載の油圧モータ制御装置。
【請求項5】
下部走行体と、
上記下部走行体の上部に配置された上部作業体と、
上記下部走行体に対して上部作業体を旋回させる請求項1から4のいずれかに記載の油圧モータ制御装置と、を備える作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、油圧モータを安全に駆動する油圧モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、容量可変の油圧ポンプと、油圧ポンプから供給される作動油によって駆動される油圧モータと、油圧モータを制動するブレーキとを備える油圧アクチュエータ駆動装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の油圧アクチュエータ駆動装置において、油圧ポンプ及び油圧モータが接続された油圧回路は、閉回路である。また、ブレーキは、油圧ポンプの中立状態において油圧モータを制動し、油圧モータを駆動させる操作をオペレータがしたことによって制動を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−127478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の油圧アクチュエータ駆動装置を構成する機器の故障等によって、中立状態であるべき油圧ポンプから作動油が排出されると、ブレーキによって制動されている油圧モータに作動油が供給される。この状態でブレーキによる油圧モータの制動が解除されると、油圧モータがオペレータの意図しない動作をする可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、油圧回路を構成する機器の故障に起因した油圧モータの意図しない動作を抑制した油圧モータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る油圧モータ制御装置は、原動機に駆動されて作動油を供給する油圧ポンプ、及び上記油圧ポンプから供給された作動油によって駆動される油圧モータが接続され、油圧的に閉じた第1油圧回路と、上記油圧モータを制動するブレーキと、上記油圧モータの両端に生じる油圧差を検出する検出部と、上記油圧モータの駆動を指示するオペレータの操作を受け付ける操作部と、上記油圧ポンプ及び上記ブレーキを制御する制御部とを備える。そして、上記制御部は、上記操作部が未操作であることに応じて、上記油圧ポンプに作動油の供給を停止させ且つ上記ブレーキに上記油圧モータを制動させ、上記操作部の未操作時に上記検出部で検出された上記油圧差を監視し、上記操作部の未操作時における上記油圧差が閾値未満のときに上記操作部が操作されたことに応じて、上記ブレーキによる上記油圧モータの制動を解除し、且つ上記操作部が受け付けた操作に対応する方向及び流量の作動油を上記油圧ポンプに供給させ、上記操作部の未操作時における上記油圧差が上記閾値以上のときに上記操作部が操作されたことに応じて、上記ブレーキによる上記油圧モータの制動を継続する。
【0007】
上記構成によれば、油圧回路を構成する機器の故障によって、中立状態であるべき油圧ポンプから作動油が排出されて油圧モータの両端に油圧差が生じている場合に、操作部が操作されてもブレーキによる油圧モータの制動が解除されない。そのため、当該油圧差によって油圧モータがオペレータの意図しない動作をすることを抑制できる。
【0008】
(2) 一例として、上記検出部は、上記第1油圧回路における上記油圧モータの一端側及び他端側の油圧を検出する一対のセンサを有しており、一対の上記センサそれぞれで検出された油圧の差を上記油圧差として検出する。
【0009】
(3) 他の例として、該油圧モータ制御装置は、上記油圧ポンプから上記油圧モータに供給される作動油の方向及び流量を制御するレギュレータが接続された第2油圧回路をさらに備える。そして、上記検出部は、上記第2油圧回路における上記レギュレータの一端側及び他端側の油圧を検出する一対のセンサを有しており、一対の上記センサそれぞれで検出された油圧の差を上記油圧差として検出する。
【0010】
このように、油圧モータの両端の油圧差を検出するためのセンサは、第1油圧回路に配置されてもよいし、第2油圧回路に配置されてもよい。
【0011】
(4) 好ましくは、上記制御部は、上記操作部の未操作時における上記油圧差が上記閾値以上であることに応じて、該油圧モータ制御装置の異常を報知する。
【0012】
上記構成によれば、油圧モータの制動が解除されない(すなわち、油圧モータが駆動しない)原因を、オペレータに認識させることができる。
【0013】
(5) 本発明に係る作業車両は、下部走行体と、上記下部走行体の上部に配置された上部作業体と、上記下部走行体に対して上部作業体を旋回させる請求項1から4のいずれかに記載の油圧モータ制御装置とを備える。
【0014】
上記構成によれば、オペレータの意図と異なる上部作業体の旋回を抑制することができる。但し、油圧モータの用途は、上部作業体を旋回させることに限定されず、例えば、ウインチによるロープの繰り出し及び巻き取り等であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、油圧回路を構成する機器の故障によって、中立状態であるべき油圧ポンプから排出された作動油によって油圧モータの両端に生じている油圧差によって、当該油圧モータがオペレータの意図しない動作をすることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係るラフテレーンクレーン10の概略図である。
図2図2は、本実施形態に係る油圧アクチュエータ回路40の油圧系統図である。
図3図3は、ラフテレーンクレーン10の機能ブロック図である。
図4図4は、旋回処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施形態は、本発明の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0018】
[ラフテレーンクレーン10]
本実施形態に係るラフテレーンクレーン10は、図1に示されるように、下部走行体20と、上部作業体30と、油圧アクチュエータ回路40(図2参照)とを主に備える。ラフテレーンクレーン10は、下部走行体20によって目的地まで走行し、当該目的地で上部作業体30に所定の動作をさせるものである。ラフテレーンクレーン10は、作業車両の一例である。但し、作業車両の具体例はこれに限定されず、例えば、オールテレーンクレーン、高所作業車等であってもよい。
【0019】
[下部走行体20]
下部走行体20は、左右一対の前輪21と、左右一対の後輪22とを有する(図1では、右側のみを図示)。前輪21及び後輪22は、トランスミッション(図示省略)を介して伝達されるエンジン(図示省略)の駆動力によって回転される。
【0020】
また、下部走行体20は、アウトリガ23、24を有する。アウトリガ23、24は、下部走行体20から左右方向に張り出した位置において地面に接地する張出状態と、地面から離間した状態で下部走行体20に格納される格納状態とに状態変化が可能である。上部作業体30の動作時にアウトリガ23、24を張出状態とすることにより、ラフテレーンクレーン10の姿勢が安定する。一方、アウトリガ23、24は、下部走行体20の走行時に格納状態とされる。
【0021】
[上部作業体30]
上部作業体30は、旋回ベアリング31を介して下部走行体20に旋回可能に支持されている。上部作業体30は、油圧アクチュエータ回路40によって下部走行体20に対して旋回される。より詳細には、上部作業体30に設けられた旋回ピニオン(不図示)が下部走行体20に設けられた旋回ギヤ(図示省略)の周りを公転することによって、上部作業体30が下部走行体20に対して旋回する。
【0022】
上部作業体30は、伸縮ブーム32と、フック33と、キャビン34とを主に備える。伸縮ブーム32は、起伏シリンダ35によって起伏され、伸縮シリンダ(図示省略)によって伸縮される。フック33は、伸縮ブーム32の先端に吊り下げられており、ウインチ(図示省略)によって昇降される。キャビン34は、上部作業体30を旋回させる操作を受け付ける操作レバー51(図3参照)を有する。
【0023】
[油圧アクチュエータ回路40]
油圧アクチュエータ回路40は、図2に示されるように、第1油圧回路41と、第2油圧回路42と、ブレーキ43とを主に備える。第1油圧回路41には、油圧ポンプ44と、油圧モータ45と、一対のセンサS1、S2とが接続されている。また、第1油圧回路41は、油圧的に閉じた閉回路である。第2油圧回路42には、油圧ポンプ46と、切替バルブ47と、レギュレータ48と、一対のセンサS3、S4とが接続されている。油圧アクチュエータ回路40、操作レバー51、及び後述する制御部50(図3参照)は、油圧モータ制御装置の一例である。
【0024】
油圧ポンプ44は、第1油圧回路41を通じて油圧モータ45に作動油を供給する。油圧ポンプ44は、原動機の一例であるエンジンEの駆動力が伝達されることによって駆動される。油圧ポンプ44から第1油圧回路41に供給される作動油の方向及び流量は、後述するレギュレータ48によって制御される。すなわち、油圧ポンプ44は、供給する作動油の方向及び流量を変更可能な容量可変型のポンプである。
【0025】
油圧モータ45は、第1油圧回路41を通じて油圧ポンプ44から供給された作動油によって駆動される。すなわち、油圧モータ45は、油圧ポンプ44から供給される作動油の向きに応じた回転方向に、作動油の量に応じた回転数で回転する。油圧モータ45は、例えば、上部作業体30に設けられた旋回ピニオンを回転させることによって、上部作業体30を下部走行体20に対して旋回させる。
【0026】
油圧ポンプ46は、タンク(図示省略)に貯留された作動油を、切替バルブ47を通じてレギュレータ48に供給する。油圧ポンプ46は、エンジンEの駆動力が伝達されることによって駆動される。
【0027】
切替バルブ47は、油圧ポンプ46から供給される作動油のレギュレータ48に対する流通向き及び流量を切り替える。切替バルブ47は、4ポート(a、b、c、d)3位置(位置α、位置β、位置γ)の切替式の電磁比例弁である。ポートaは油圧ポンプ46に接続され、ポートbはタンクに接続され、ポートcはレギュレータ48の第1室48Aに接続され、ポートdはレギュレータ48の第2室48Bに接続される。
【0028】
位置αの切替バルブ47は、レギュレータ48の第1室48Aに作動油を供給し、レギュレータ48の第2室48Bから排出された作動油をタンクに戻す。また、位置βの切替バルブ47は、レギュレータ48の第2室48Bに作動油を供給し、レギュレータ48の第1室48Aから排出された作動油をタンクに戻す。さらに、位置γの切替バルブ47は、レギュレータ48のピストン48Cを中立位置に戻す。切替バルブ47の位置及び流量は、制御部50によって制御される。
【0029】
レギュレータ48は、第1室48Aと、第2室48Bと、第1室48A及び第2室48Bを隔てるピストン48Cとを備える。レギュレータ48は、油圧ポンプ44から油圧モータ45に供給される作動油の方向及び流量を制御する。より詳細には、油圧ポンプ44から供給される作動油の方向は、ピストン48Cの移動向きに応じて制御される。また、油圧ポンプ44から供給される作動油の流量は、ピストン48Cの移動量に応じて制御される。
【0030】
センサS1は、油圧モータ45の一端側において第1油圧回路41の油圧を検出する。センサS2は、油圧モータ45の他端側において第1油圧回路41の油圧を検出する。センサS3は、レギュレータ48の一端側において第2油圧回路42の油圧を検出する。センサS4は、レギュレータ48の他端側において第2油圧回路42の油圧を検出する。また、センサS1〜S4は、検出した油圧の大きさに応じた検出信号を制御部50に出力する。センサS1〜S4は、油圧モータ45の両端に生じる油圧差を、直接的或いは間接的に検出する検出部の一例である。
【0031】
ブレーキ43は、油圧モータ45を制動する。ブレーキ43は、油圧モータ45を制動する制動状態と、油圧モータ45の制動を解除する解除状態とに状態変化が可能である。ブレーキ43の状態は、制御部50によって制御される。
【0032】
[制御部50]
制御部50は、油圧アクチュエータ回路40の動作を制御する。制御部50は、例えば、メモリに記憶されたプログラムを読み出して実行するCPU(Central Processing Unit)で実現されてもよいし、ハードウェア回路によって実現されてもよいし、これらを組み合わせて実現されてもよい。制御部50には、図3に示されるように、操作レバー51と、センサS1〜S4と、切替バルブ47と、ブレーキ43と、報知部52とが接続されている。
【0033】
操作レバー51は、油圧モータ45の駆動(換言すれば、上部作業体30の旋回)を指示するオペレータの操作を受け付ける。操作レバー51は、オペレータの操作に応じた操作信号を制御部50に出力する。本実施形態において、オペレータによって操作されていない操作レバー51は、操作信号を出力しない。一方、オペレータによって操作されている操作レバー51は、操作方向(倒伏方向)及び操作量(倒伏角度)に応じた操作信号を出力する。操作レバー51は、操作部の一例である。但し、操作部の具体例は操作レバー51に限定さず、例えば、ペダル等であってもよい。
【0034】
報知部52は、ラフテレーンクレーン10(特に、油圧アクチュエータ回路40)の状態をオペレータに報知する。報知部52の具体例は特に限定されないが、メッセージやアニメーションを表示する表示部であってもよいし、音声を出力するスピーカであってもよいし、点灯或いは消灯される警告灯であってもよい。
【0035】
制御部50は、操作レバー51から出力される操作信号、及びセンサS1〜S4から出力される検出信号に基づいて、ブレーキ43の状態(制動状態/解除状態)と、切替バルブ47の位置(位置α/位置β/位置γ)及び流量と、報知部52とを制御する。図4を参照して、油圧アクチュエータ回路40を制御して上部作業体30を旋回させる旋回処理の詳細を説明する。
【0036】
[油圧アクチュエータ回路40の動作]
まず、操作レバー51が操作される前(すなわち、操作レバー51が未操作である場合)において、ブレーキ43は制動状態であり、切替バルブ47は位置γである。すなわち、油圧ポンプ44は作動油を供給しない中立状態であり、油圧モータ45は停止している。また、旋回処理中のエンジンEは、常に駆動されているものとする。そして、制御部50は、センサS1、S2の検出信号及び操作レバー51の操作信号を監視する(S11、S12)。
【0037】
まず、制御部50は、操作レバー51から操作信号が出力されていないとき(すなわち、操作レバー51の未操作時)に油圧モータ45の両端に生じる油圧差を監視する(S11:Yes&S12:No)。制御部50は、例えば、一対のセンサS1、S2から出力された検出信号に基づいて油圧モータ45の両端に生じる油圧差を算出する。
【0038】
次に、制御部50は、操作レバー51の未操作時における油圧差が閾値未満のときに操作レバー51から操作信号が出力されたことに応じて(S11:Yes&S12:Yes)、ブレーキ43を解除状態にする(S13)。これにより、油圧モータ45が回転可能な状態になる。但し、この時点では、油圧モータ45の両端の油圧差が0或いは極めて小さいので、ブレーキ43による制動が解除されても油圧モータ45は駆動されない。
【0039】
次に、制御部50は、操作レバー51の操作方向に応じて切替バルブ47を位置α或いは位置βに移動させ、操作レバー51の操作量に応じた量の作動油を油圧ポンプ46からレギュレータ48に供給する(S14)。これにより、油圧ポンプ44から油圧モータ45に、操作レバー51の操作方向に応じた方向で且つ操作量に応じた流量の作動油が供給され、油圧モータ45が駆動される。その結果、上部作業体30は、下部走行体20に対して旋回する。
【0040】
次に、制御部50は、操作レバー51からの操作信号の出力が停止するまで(S15:No)、ステップS14の処理を継続して実行する。すなわち、制御部50は、操作レバー51から出力される操作信号の変化(すなわち、操作レバー51の操作方向、及び/又は、操作量の変化)に応じて、切替バルブ47の位置及び油圧ポンプ46からレギュレータに48に供給される作動油の量を調整する。
【0041】
次に、制御部50は、操作レバー51から操作信号が出力されなくなったことに応じて(S15:Yes)、切替バルブ47を位置γに移動させ(S16)、ブレーキ43を制動状態にする(S17)。これにより、ピストン48Cが中立位置に戻り、油圧ポンプ44から油圧モータ45への作動油の供給が停止し、油圧モータ45が停止する。すなわち、旋回していた上部作業体30が停止する。そして、制御部50は、操作レバー51の未操作時における油圧差を再び監視する(S11、S12)。
【0042】
一方、制御部50は、操作レバー51の未操作時における油圧差が閾値以上であることに応じて(S11:No&S12:No)、油圧アクチュエータ回路40の異常を報知部52を通じて報知する(S18)。このときに操作レバー51から操作信号が出力されたとしても、制御部50は、ブレーキ43を解除状態にせず、制動状態を維持する。これにより、油圧モータ45は、その両端に生じている油圧差によって駆動されない。
【0043】
[本実施形態の作用効果]
上記の実施形態によれば、油圧アクチュエータ回路40を構成する機器(例えば、切替バルブ47、レギュレータ48等)の故障によって、中立状態であるべき油圧ポンプ44から作動油が排出されて油圧モータ45の両端に油圧差が生じている場合に、操作レバー51が操作されてもブレーキ43による油圧モータ45の制動が解除されない。そのため、当該油圧差によって油圧モータ45がオペレータの意図しない動作をすることを抑制できる。
【0044】
また、ステップS11において油圧差が閾値以上になる場合とは、例えば、切替バルブ47或いはレギュレータ48が故障した場合が考えられる。すなわち、オペレータによる操作レバー51の操作が終了しても、切替バルブ47が位置γに戻らない場合、或いはピストン48Cが中立位置に戻らない場合、ブレーキ43によって油圧モータ45は制動されているものの、油圧ポンプ44から油圧モータ45へ作動油が供給され続ける。その結果、油圧モータ45の両端には、油圧差が生じることになる。
【0045】
そして、切替バルブ47が故障した場合、レギュレータ48の両端にも油圧差が生じることになる。そこで、制御部50は、一対のセンサS3、S4から出力された検出信号に基づいてレギュレータ48の両端に生じる油圧差を算出し、当該油圧差を油圧モータ45の両端に生じる油圧差として閾値と比較してもよい。すなわち、ステップS12では、センサS1、S2の検出信号を用いてもよいし、センサS3、S4の検出信号を用いてもよいし、その両方を用いてもよい。なお、センサS1、S2で検出される油圧差と比較される第1閾値と、センサS3、S4で検出される油圧差と比較される第2閾値とは、異なる値であってもよい。
【0046】
また、制御部50は、操作レバー51の未操作時における油圧差が閾値以上である場合に、ブレーキ43を解除状態にすることなく、油圧アクチュエータ回路40の異常を報知部52を通じて報知する。これにより、油圧モータの制動が解除されない(すなわち、上部作業体30が旋回しない)原因を、オペレータに認識させることができる。
【0047】
さらに、図4に示される制御を上部作業体30を旋回させる油圧アクチュエータ回路40に適用することにより、オペレータの意図と異なる上部作業体30の旋回を抑制することができる。但し、油圧モータ45の用途は、上部作業体30を旋回させることに限定されず、例えば、ウインチによるロープの繰り出し及び巻き取り等であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10・・・ラフテレーンクレーン
20・・・下部走行体
30・・・上部作業体
40・・・油圧アクチュエータ回路
41・・・第1油圧回路
42・・・第2油圧回路
43・・・ブレーキ
44・・・油圧ポンプ
45・・・油圧モータ
48・・・レギュレータ
50・・・制御部
51・・・操作レバー
52・・・報知部
S1〜S4・・・センサ
図1
図2
図3
図4