特許第6455227号(P6455227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6455227
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】打撃工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20190110BHJP
【FI】
   B25B21/02 G
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-38515(P2015-38515)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-159383(P2016-159383A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】星 智幸
(72)【発明者】
【氏名】大森 和博
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−188612(JP,A)
【文献】 特公昭48−004680(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/02
B25D 15/00 − 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端工具を保持する先端工具保持部と、
前記先端工具保持部よりも後方側に設けられ、前記先端工具保持部側に突出し前記先端工具保持部を打撃する第1突出部を有するハンマと、
前記ハンマを往復移動可能に収容するハンマケースと、
前記ハンマケースに支持され、前記先端工具保持部を回転可能に支持する軸受部と、
を備えた打撃工具であって、
前記ハンマは、前記第1突出部よりも前方に突出する第2突出部を有し、
前記ハンマの往復方向において、前記第2突出部は前記軸受部とオーバーラップすることを特徴とする打撃工具。
【請求項2】
前記軸受部は、前記先端工具保持部を支持する支持部と、前記支持部から前記先端工具保持部の径方向外側に張り出すフランジ部と、を有し、
前記ハンマの往復方向において、前記第2突出部は前記フランジ部とオーバーラップすることを特徴とする請求項1に記載の打撃工具。
【請求項3】
前記第2突出部の内周部は前記フランジ部の外周に当接可能であることを特徴とする請求項2に記載の打撃工具。
【請求項4】
前記フランジ部の外周面に弾性体を設けたことを特徴とする請求項2又は3に記載の打撃工具。
【請求項5】
前記ハンマケースの内周面に、前記第2突出部が当接可能な弾性体を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の打撃工具。
【請求項6】
先端工具を保持する先端工具保持部と、
前記先端工具保持部よりも後方側に設けられ、前記先端工具保持部側に突出し前記先端工具保持部を打撃する第1突出部を有するハンマと、
前記ハンマを往復移動可能に収容するハンマケースと、
前記ハンマケースに支持され、前記先端工具保持部を回転可能に支持する軸受部と、
を備えた打撃工具であって、
前記ハンマケースの内部には、前記ハンマの往復方向に対して交差する方向に前記ハンマが傾いた際に前記ハンマが接触する弾性体が設けられ、
前記ハンマは、前記第1突出部よりも前方に突出する第2突出部を有し、
前記軸受部は、前記先端工具保持部を支持する支持部と、前記支持部から前記先端工具保持部の径方向外側に張り出すフランジ部と、を有し、
前記ハンマの往復方向において、前記第2突出部は前記フランジ部とオーバーラップすると共に、前記弾性体は前記フランジ部の外周に設けられて前記第2突出部と接触可能であることを特徴とする打撃工具。
【請求項7】
先端工具を保持する先端工具保持部と、
前記先端工具保持部よりも後方側に設けられ、前記先端工具保持部側に突出し前記先端工具保持部を打撃する第1突出部を有するハンマと、
前記ハンマを往復移動可能に収容するハンマケースと、
前記ハンマケースに支持され、前記先端工具保持部を回転可能に支持する軸受部と、
を備えた打撃工具であって、
前記ハンマケースの内部には、前記ハンマの往復方向に対して交差する方向に前記ハンマが傾いた際に前記ハンマが接触する弾性体が設けられ、
前記ハンマは、前記第1突出部よりも前方に突出する第2突出部を有し、
前記弾性体は、前記第2突出部が当接可能に前記ハンマケースの内周面に設けたことを特徴とする打撃工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源の動力を先端工具保持部に伝達する打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力源の動力を先端工具保持部に伝達する打撃工具が知られており、その打撃工具の例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された打撃工具はインパクトドライバであり、インパクトドライバは、第1ケースとしての打撃工具本体(ハウジング)と、第2ケースとしてのハンマケースと、を有する。ハウジング内に、出力軸を備えた電動モータ、出力軸の回転力が伝達される減速機が収容されている。減速機は遊星歯車により構成されており、遊星歯車機構の入力軸に連結され、遊星歯車機構の出力軸にスピンドルが連結されている。
【0003】
ハンマケースはハウジングの開口端に取り付けられており、ハンマケース内に、スピンドルから出力された回転力が伝達されるハンマ、ハンマの回転力が伝達され先端工具保持部となるアンビル、アンビルを支持するメタル軸受が収容されている。アンビルの一部は、ハンマケースの外に配置されており、アンビルに先端工具が取り付けられる。さらに、アンビルに支持孔が設けられており、支持孔にスピンドルの端部が挿入されて、スピンドルが回転可能に支持されている。そして、支持孔内にグリースが保持されている。また、ハンマケース内に、円筒形状のメタル軸受が設けられており、アンビルはメタル軸受により回転可能に支持されている。
【0004】
特許文献1に記載されたインパクトドライバは、電動モータの回転力が減速機、スピンドル、ハンマを経由してアンビルに伝達され、アンビルに取り付けられた先端工具によりネジ等の締結部材が締付けられる。ネジの締付け負荷が高くなると、ハンマがアンビルから離れる向きで移動し、かつ、ハンマがアンビルに対して所定角度の範囲内で回転する。そして、ハンマの爪がアンビルの爪を乗り越えるとハンマはアンビルに近づく向きで移動し、かつ、ハンマからアンビルに対して回転方向の打撃力が加えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−174656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1に記載された打撃工具においては、ハンマがアンビルを打撃する際に、打撃による衝撃でハンマが傾き、アンビルには出力軸に対して傾くような力が発生する。
【0007】
そのため、打撃時に傾いたハンマによってアンビルも傾いた状態で回転する。このアンビルの傾いた状態での回転では、アンビルとメタル軸受との面圧が通常より高くなり、かじりを発生させてしまうことがあった。
【0008】
本発明の目的は、打撃時のハンマの傾きを抑制する打撃工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、先端工具を保持する先端工具保持部と、前記先端工具保持部よりも後方側に設けられ、前記先端工具保持部側に突出し前記先端工具保持部を打撃する第1突出部を有するハンマと、前記ハンマを往復移動可能に収容するハンマケースと、を備えた打撃工具であって、前記ハンマは、前記第1突出部よりも前方に突出する第2突出部を有し、前記ハンマの往復方向において、前記第2突出部は前記先端工具保持部とオーバーラップすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、打撃時のハンマの傾きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態となる打撃工具の部分的な断面図である。
図2】本発明の実施の形態となる打撃工具のハンマを示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A断面図、である。
図3】本発明の別の実施の形態となる打撃工具の部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1に示す打撃工具10は、ネジの締め付けまたは緩めに用いるインパクトドライバである。打撃工具10は、中空の工具本体11を有している。工具本体11は、ハウジング12と、ハウジング12の前後方向(図中左右方向)の前方側の開口端に固定されたハンマケース13とにより構成されている。ハウジング12の内部空間Aには駆動源となる電動モータ14が設けられており、電動モータ14の回転軸15は前後方向に延び、2個の軸受16及び17により回転可能に支持されている。不図示の正逆切替スイッチを操作することで電動モータ14の回転軸15の回転方向を切り替えることができる。図1において、ハウジング12に対してハンマケース13が位置する側を前側、反対を後側とする。
【0013】
ハウジング12の内部空間Aとハンマケース13の内部空間Bとを仕切る隔壁18が設けられている。隔壁18は環状に形成されており、隔壁18の内周面と回転軸15の外周面との間に軸受17が配置されている。また、ハウジング12と回転軸15との間に軸受16が配置されている。回転軸15は中心線Cを中心として回転する。
【0014】
ハンマケース13は軸孔19を有しており、軸孔19に、アンビル23を回転可能に支持する支持部となるメタル軸受20(メタル)が取り付けられている。メタル20はハンマケース13の軸孔19に圧入されて固定されている。メタル20はアンビル23の外周部を支持する支持部20aと、支持部20aの端部に連続して設けられ径方向外側に張り出すフランジ21とから構成されている。フランジ21の外周部には弾性体22例えば樹脂が、フランジ21の外周部全周に亘って一体成形されている。メタル20の内部に、先端工具保持部としてのアンビル23が回転可能に配置されている。アンビル23は中心線Cを中心として回転可能である。また、アンビル23は、ハンマケース13の内部空間Bから、工具本体11(ハンマケース13)の外部に亘って設けられており、アンビル23の中心線Cを中心とする工具保持孔24が設けられている。工具保持孔24は工具本体11の外部に開口されており、工具保持孔24にビット等の先端工具54が着脱され保持される。
【0015】
また、アンビル23には、工具保持孔24と同心状に支持孔23aが設けられている。支持孔23aはハンマケース13の内部空間Bに向けて開口されている。支持孔23aは工具保持孔24につながっていない。更に、アンビル23の外周面において、ハンマケース13の内部空間Bに配置された箇所には、突出部25(アンビル爪部)が2個設けられている。2個の突出部25は、アンビル23の円周方向に180度間隔で配置されている。
【0016】
一方、ハンマケース13の内部空間Bには、減速機26が設けられている。減速機26は、中心線Cに沿った方向で、軸受17とアンビル23との間に配置されている。減速機26は、電動モータ14の回転力すなわちトルクをアンビル23に伝達する動力伝達装置であり、減速機26はシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。
【0017】
減速機26は、回転軸15と同心状に配置されたサンギヤ27と、サンギヤ27の外周側を取り囲むように設けたリングギヤ28と、サンギヤ27及びリングギヤ28に噛み合わされた複数のピニオンギヤ29と、複数のピニオンギヤ29を自転可能且つ公転可能に支持するキャリア30とを有する。サンギヤ27は回転軸15の一端側に取り付けられた中間軸31の外周面に形成されており、中間軸31は回転軸15と一体回転する。リングギヤ28は隔壁18に固定されている。更に、リングギヤ28の外周面とハンマケース13の内周面との間を密封するため、その間に密封装置となるOリング32が介在されている。
【0018】
キャリア30は、ピニオンギヤ29が取り付けられたピニオンピン33と、ピニオンピン33の長手方向の両端にそれぞれ接続された第1構成片34及び第2構成片35とを有している。第1構成片34は環状であり、第1構成片34の内部に中間軸31の一部が配置されている。隔壁18と第1構成片34との間に軸受36が設けられており、第1構成片34は軸受36により回転可能に支持されている。
【0019】
第2構成片35は、中心線Cに沿った方向で、アンビル23と第1構成片34との間に配置されている。また、キャリア30と共に中心線Cを中心として一体回転するスピンドル37が設けられている。スピンドル37は、中心線Cに沿った方向でアンビル23と軸受36との間に配置されており、スピンドル37であって軸受36に近い側の端部に第2構成片35が連続して設けられている。すなわち、第2構成片35は、スピンドル37の外周面に形成した外向きフランジである。
【0020】
また、スピンドル37を取り囲む環状プレート38が設けられている。さらに、スピンドル37の外周であって、プレート38の内側にストッパ39が設けられている。ストッパ39は、衝撃力を吸収もしくは緩和するダンパでありゴム状弾性体である。
【0021】
一方、スピンドル37であってアンビル23側の端部に、中心線Cに沿った方向に突出された軸部40が形成されている。軸部40は支持孔23aに配置されており、スピンドル37がアンビル23を介してメタル20により回転可能に支持されている。スピンドル37の外周面であって、軸部40とストッパ39との間に略V字形状のカム溝41が設けられている。
【0022】
また、ハンマケース13の内部空間Bにハンマ42が収容されており、ハンマ42はスピンドル37を取り囲むように設けられている。ハンマ42は略環状、略円筒形状である。ハンマ42は、中心線C沿った方向で、減速機26とアンビル23との間に配置されている。ハンマ42は、スピンドル37に対して相対回転可能であり、かつ、中心線Cに沿った方向でスピンドル37に対して相対移動可能である。すなわち、ハンマ42は、中心線Cに沿って前後方向に往復移動可能、言い換えれば、往復運動可能である。
【0023】
ハンマ42は、外筒部43および内筒部44を有しており、外筒部43は内筒部44の外側に配置されている。内筒部44の内周面にカム溝45が形成されている。内筒部44の後方側端面及び外筒部43の後方側端面は、中心線Cに沿った方向で同じ位置にある。
【0024】
そして、スピンドル37のカム溝41及びハンマ42のカム溝45によりスチールボール(鋼球)46が保持されている。このため、ハンマ42は、スピンドル37に対して、スチールボール46が転動可能な範囲で中心線Cに沿った前後方向に移動可能である。また、ハンマ42は、スピンドル37に対して、スチールボール46が転動可能な範囲で中心線Cを中心とする円周方向(回転方向)に移動可能である。
【0025】
更に、ハンマ42は外筒部43と内筒部44との間に形成した保持溝47を有する。保持溝47は減速機26に向けて開口されている。保持溝47は中心線Cを中心として環状に設けられている。保持溝47の底にはスチールボール48が設けられている。スチールボール48は、保持溝47の底を埋めるように円周方向に複数個配置されている。保持溝47におけるスチールボール48よりもプレート38に近い箇所に、環状のプレート49が設けられている。
【0026】
更に、中心線Cに沿った方向で、プレート38とプレート49の間に圧縮ばね50が介在されている。圧縮ばね50の一部は保持溝47に配置されており、圧縮ばね50の押圧力が、プレート49及びスチールボール48を介してハンマ42に加えられる。すなわち、ハンマ42は、圧縮ばね50の押圧力により、中心線Cに沿った方向でアンビル23に向けて押されている。
【0027】
ハンマ42におけるアンビル23側には、中心線Cに沿った方向に突出された第1突出部となる突出部51(ハンマ爪部)が設けられている。突出部51は、ハンマ42の円周方向において180度の間隔で2個設けられている。ハンマ42の突出部51及びアンビル23の突出部25は中心線Cを中心として同一円周上に配置されており、ハンマ42が中心線Cに沿った方向に移動すると、突出部51と突出部25とが係合または解放される。
【0028】
更に、ハンマ42におけるアンビル23側の端部には、中心線Cに沿った方向に突出した第2突出部となる環状の環状突出部52が全周に亘って設けられている。ハンマ42の環状突出部52の内周面は、メタル20のフランジ21外周面と中心線Cに沿った方向でオーバーラップしている。環状突出部52は突出部51(ハンマ爪部)よりもアンビル23側に突出している。
【0029】
次に、打撃工具となるインパクトドライバ10の動作を説明する。電動モータ14が停止している状態では、圧縮ばね50に押圧されているハンマ42は、アンビル23に接触して停止している。電動モータ14に不図示の電力源(電池パック又は商用電源)から電力が供給されて回転軸15が回転すると、回転軸15のトルクつまり回転力は減速機26のサンギヤ27に伝達される。サンギヤ27に回転力が伝達されると、リングギヤ28が反力要素となり、キャリア30が出力要素となる。すなわち、サンギヤ27の回転力がキャリア30に伝達されるとき、サンギヤ27の回転速度に対してリングギヤ30の回転速度が減速されることで、回転力が増幅される。
【0030】
キャリア30に回転力が伝達されると、スピンドル37がキャリア30と共に一体回転する。スピンドル37の回転力は、スチールボール46を介してハンマ42に伝達される。ハンマ42の回転力は、ハンマ42の突出部51とアンビル23の突出部25との係合力によりアンビル23に伝達され、アンビル23が回転する。アンビル23の回転力は先端工具54を介してネジに伝達され、ネジが対象物、例えば、木材にねじ込まれる。
【0031】
その後、ネジが木材にねじ込まれて、木材とネジとの摩擦抵抗が増加し、先端工具54を回転させるために必要なトルクが高くなると、アンビル23の回転が停止して、アンビル23とハンマ42とが相対回転する。すると、スチールボール46とカム溝45との接触面で生じる反力により、ハンマ42がアンビル23から離れる向きで移動する。ハンマ42がアンビル23から離れる向きで移動することを後退と呼ぶ。
【0032】
ハンマ42は、圧縮ばね50の押圧力に抗して中心線Cに沿って後方側に移動する。すると、スチールボール46が、カム溝41の端部に近づく向きで移動し、突出部51と突出部25との係合が解放され、ハンマ42の回転力はアンビル23に伝達されなくなる。
【0033】
更に、ハンマ42の往復動作方向の端部、つまり、内筒部44の端部がストッパ39に衝突し、スチールボール46がカム溝41の端部に到達する。内筒部44の端部がストッパ39に衝突するとストッパ39が弾性変形し、ストッパ39は、ハンマ42がアンビル23から離れる向きで移動する際の運動エネルギを吸収する。ストッパ39は、ハンマ42が中心線Cに沿ってアンビル23から離れる向きで動作する範囲を規制する。
【0034】
更に、ハンマ42の回転が継続されて、突出部51が突出部25を乗り越えると、ハンマ42をアンビル23から離れさせる方向の力よりも、圧縮ばね50がハンマ42に加える押圧力の方が高くなる。すると、スチールボール46がカム溝41及び45に沿って転動することで、ハンマ42とスピンドル37とが相対回転し、且つ、ハンマ42はアンビル23に近づく向きで中心線Cに沿って移動する。ハンマ42がアンビル23に近づく向きで移動することを前進と呼ぶ。
【0035】
その後、回転しているハンマ42の突出部51が、停止しているアンビル23の突出部25に衝突し、アンビル23に回転方向の打撃力が加えられる。なお、電動モータ14の回転軸15の回転方向を、ネジを締付ける際とは逆にすると、ネジを緩めることができる。
【0036】
ここで、本実施の形態によるアンビル23とメタル20とのかじり抑制構造を説明する。中心線Cに沿った方向においてハンマ42がスビンドル37に支持されている領域が短い(少ない)。そのため、ハンマ42はスピンドル37に対して中心線Cと交差する方向に傾き易い。ハンマ42が傾いた状態でアンビル23を打撃すると、アンビル23がメタル20に対して傾いてしまいかじりが生じてしまう。
【0037】
そこで、本実施の形態によれば、ハンマ42がスピンドル37に対して傾いた場合でも、その傾きを抑制するようにハンマ42を構成している。具体的には、上述したように、ハンマ42のアンビル23側の端部に、中心線Cに沿ってアンビル23側に突出した環状の環状突出部52が全周に亘って設けている。更に、その環状突出部52は、メタル20のフランジ21と中心線Cに沿った方向でオーバーラップさせている。
【0038】
この構成により、ハンマ42がスピンドル37に対して傾いた場合、環状突出部52の内周面がフランジ21の外周面に当接する。メタル20はハンマケース13の軸孔19に圧入されているため、ハンマケース13に対して傾くことはない。すなわち、ハンマ42(環状突出部52)がメタル20のフランジ21に当接してもフランジ21がハンマケース13に対して傾くことがないため、フランジ21がストッパとなりハンマ42がそれ以上傾くことを抑制することができる。
【0039】
従って、ネジの締付け作業中のハンマ42の前進移動において、打撃直前にハンマ42とメタル20(フランジ21)が係合(当接)したとしても、打撃の衝撃によるハンマ42の傾きを抑制することができる。これにより、アンビル23には回転方向の力、すなわち、トルクのみが伝達される。その結果、アンビル23には、傾く力が働かなくなるため、アンビル23とメタル20に発生していたかじりを抑制することが可能となる。
【0040】
また、フランジ21の外周面に弾性体22を設けることで、ハンマ42が傾いてフランジ21に当接する際に生じる振動や騒音、フランジ21に加わる力を低減することが可能となる。
【0041】
次に、第2の実施の形態におけるハンマ42の傾きを抑制する構成について図3を用いて説明する。ハンマケース13の内周面には弾性体53例えば樹脂が一体成形されている。弾性体53は中心線Cに沿った方向において環状突出部52とオーバーラップして設けられている。本実施の形態の打撃工具10は、ネジの締付け作業中のハンマ42の前進移動において、打撃直前にのみハンマ42とハンマケース13の内周面の弾性体53が係合(当接)可能となっている。この構成によって、第1の実施の形態と同様、打撃の衝撃によるハンマ42の傾きを抑制することができる。つまり、ハンマ42の傾きによるアンビル23の傾きを低減させることができ、アンビル23とメタル20に生じていたかじりを抑制することが可能となる。また、この構成でもハンマ42が傾いてフランジ21に当接する際に生じる振動や騒音、フランジ21に加わる力を低減することが可能となる。
【0042】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図1に示されたフランジ21に弾性体22を設けた構成と、図3に示されたハンマケース13に弾性体53を設けた構成とを組み合わせることもできる。また、環状突出部52を全周に亘って環状(円筒状)に構成したが、全周の内の複数個所に突出部52を設けるようにしても良い。すなわちハンマ42が傾いた際にフランジ21に当接可能な形状であれば良い。また、第2の実施の形態において、弾性体53をハンマ42の後端部と当接可能に設けても良い。
【0043】
また、上述した実施の形態ではアンビルに直接、先端工具を取り付ける構成としたが、アンビルに、アダプタやエクステンションバーを介して、間接的に先端工具を取り付ける構成としても良い。更に、電動モータの回転軸の中心線が、ハンマの往復動作する中心線と一致する構成としたが、それら中心線が略平行に位置する構成あるいは交差する構成であっても良い。更に、インパクトレンチ等、ハンマによってアンビルを打撃する構成であれば本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10は打撃工具(インパクトドライバ)、11は工具本体、12はハウジング、13はハンマケ−ス、14は電動モータ、15は回転軸、16は軸受、17は軸受、18は隔壁、19は軸孔、20はメタル、20aは支持部、21はフランジ、22は弾性体、23はアンビル、23aは支持孔、24は工具保持孔、25は突出部、26は減速機、27はサンギヤ、28はリングギヤ、29はピニオンギヤ、30はキャリア、31は中間軸、32はOリング、33はピニオンピン、34は第1構成片、35は第2構成片、36は軸受、37はスピンドル、38はプレート、39はストッパ、40は軸部、41はカム溝、42はハンマ、43は外筒部、44は内筒部、45はカム溝、46はスチールボール、47は保持溝、48はスチールボール、49はプレート、50は圧縮ばね、51は突出部、52は環状突出部、53は弾性体、54は先端工具である。
図1
図2
図3