特許第6455300号(P6455300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6455300
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】超音波流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20060101AFI20190110BHJP
【FI】
   G01F1/66 101
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-91234(P2015-91234)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-206127(P2016-206127A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古儀 史也
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 康弘
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3689977(JP,B2)
【文献】 特開2006−17568(JP,A)
【文献】 特開2007−189871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信部と送信部と送受信切替部とを備え、測定管内の測定流体から得られる超音波信号に基づいて前記測定流体の流量を求めるように構成された超音波流量計において、
所定の駆動電力を供給する電源部としてスイッチングレギュレータが前記受信部と前記送信部と前記送受信切替部のそれぞれに個別に設けられ、
流量測定における前記受信部が動作する前後のタイミングで、前記送信部と前記送受信切替部に設けられたスイッチングレギュレータの動作を一時的に停止させる制御手段を設けたことを特徴とする超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量計に関し、詳しくは、電源部から発生するスイッチングノイズの影響低減に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波流量計の流量測定方法としては、
a)伝搬時間差法や透過法
配管内に流れる流体に超音波を放射し、流体内を透過した際の上流・下流のトランスデューサの受信信号の伝搬時間差によって流量を求める
b)ドップラー法や反射相関法
流体内に含まれる気泡や夾雑物からの反射信号から超音波の伝搬する測線上の流速分布を求め、流量を計算する
などがある。
【0003】
図6は、従来から用いられている超音波流量計の一例を示す構成説明図である。図4において、超音波流量計は、超音波信号の送受信を行う検出部10と、各部の統括的な制御や信号処理などを行う制御部20と、各部に所定の駆動用電力を供給する電源部30で構成されている。
【0004】
検出部10は、被測定流体が流れる測定管11と、測定管11を挟むようにして測定管11の外壁にそれぞれの超音波信号の伝搬経路が測定管11の管軸に対して所定の角度で斜め方向に交わる位置関係で上流側と下流側に対向配置された超音波信号を送受信する超音波変換素子を含むセンサ12、13などで構成されている。
【0005】
制御部20は、送受信切替部21、送信部22、受信部23、信号処理部24、表示部25などで構成されている。
【0006】
送受信切替部21は、一方のセンサ12が送信部22に接続されているときは他方のセンサ13が受信部23に接続され、一方のセンサ12が受信部23に接続されているときは他方のセンサ13が送信部22に接続されるようにセンサ12、13の送受を相補的に切り替える。
【0007】
信号処理部24は、所定のプログラムにしたがって、センサ12、13を所定のタイミングで駆動するための送受信タイミング信号の生成や、センサ12、13の検出信号に基づく流量演算などを行い、演算結果を表示部25に出力する。
【0008】
表示部25は、信号処理部24の演算結果をはじめ、作業者の操作に応じて内部にあらかじめ設定されている個々の機器に固有のパラメータなども表示する。
【0009】
ところで、超音波流量計の小型化や高効率化を図るために、電源部としてスイッチングレギュレータを利用することが多くなっている。
【0010】
ところが、スイッチングレギュレータは、図7に示すように、スイッチングによる電圧の急激な変化によって発生するスパイクノイズや、使用する部品のESR(等価直列抵抗)によって発生するリップルノイズ等のノイズの発生源となる。
【0011】
図8は超音波流量計の伝搬時間差法における受信波形例図であり、(a)はノイズの影響がない場合を示し、(b)はノイズの影響を受けた場合を示している。伝搬時間差法では、電源部で発生したノイズが配線、空間を通して受信部に重畳されると、到達時刻のばらつきが大きくなってしまう。
【0012】
図9は超音波流量計の反射相関法における受信波形例図であり、(a)はノイズの影響がない場合を示し、(b)はノイズの影響を受けた場合を示している。反射相関法では、電源部で発生したノイズが配線、空間を通して受信部に重畳されると、微小な受信信号がノイズに埋もれしまい、異常な値を出力するなどにより測定できなくなるという問題が発生する。
【0013】
非特許文献1には、伝搬時間差方式の超音波流量計の測定原理や構成などについて記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】福原 聡、外3名、「超音波流量計 US350」、横河技報、横河電機株式会社、2004年1月20日、Vol.48 No.1(2004) p.29−32
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記の影響を回避するために、電源部をノイズの小さいシリーズレギュレータで構成することや、電源部と制御部を隔離するなどが考えられる。
【0016】
しかし、電源部をシリーズレギュレータで構成した場合には、消費電力の効率が低下するとともに、小型化が難しいという問題が発生する。
【0017】
また、電源部のノイズの影響は、回路の構成や配置を最適化することによってかなり低減できるが、装置の形状に制約がある場合はそれらの実現は困難となる。
【0018】
本発明は、これらの課題を解決するものであり、その目的は、スイッチングレギュレータなどで発生する電源部のノイズの影響を、装置の形状による制約などを受けることなく低減できる超音波流量計を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
受信部と送信部と送受信切替部とを備え、測定管内の測定流体から得られる超音波信号に基づいて前記測定流体の流量を求めるように構成された超音波流量計において、
所定の駆動電力を供給する電源部としてスイッチングレギュレータが前記受信部と前記送信部と前記送受信切替部のそれぞれに個別に設けられ、
流量測定における前記受信部が動作する前後のタイミングで、前記送信部と前記送受信切替部に設けられたスイッチングレギュレータの動作を一時的に停止させる制御手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
これらにより、超音波流量計で用いられるスイッチングレギュレータから発生する電源部のリップルノイズなどの周期的ノイズの影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例を示す構成説明図である。
図2】本発明に基づく具体的な電源部の構成例を示す説明図である。
図3図2の送受信シーケンス動作の流れを説明する動作説明図である。
図4】本発明の他の実施例を示す構成説明図である。
図5図4の送受信シーケンス動作の流れを説明する動作説明図である。
図6】従来から用いられている超音波流量計の一例を示す構成説明図である。
図7】スイッチングレギュレータに発生するノイズの説明図である。
図8】超音波流量計の伝搬時間差法における受信波形例図である。
図9】超音波流量計の反射相関法における受信波形例図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示す構成説明図であり、図6と共通する部分には同一の符号を付けている。図1図6の異なる点は、信号処理部24には電源制御部24aが設けられていて、この電源制御部24aから電源部30に電源部30の動作を制御する制御信号が出力されていることである。
【0026】
信号処理部24の電源制御部24aから電源部30に供給される制御信号は、制御部20の信号処理部24をたとえばFPGA(Fieled Programmable Gate Array)で構成することにより、電源部30が任意のタイミング・長さで動作するように設定できる。
【0027】
図2は、本発明に基づく具体的な電源部30の構成例を示す説明図である。図2において、電源部30は、複数nのレベルシフタ31と、複数nのプルダウン回路32と、集積回路化された複数nのスイッチングレギュレータ33と、複数n−1のコンデンサ34などで構成されている。
【0028】
大半のスイッチングレギュレータ33としては、たとえばイネーブル信号ENにより外部からスイッチング動作を任意にオン/オフできるように構成されたものを用いる。
【0029】
具体的には、スイッチングレギュレータ331は常に受信部23に所定の出力電圧を供給する。
【0030】
スイッチングレギュレータ332は、イネーブル信号ENに応じて、送受信切替部21に所定の駆動電圧を供給する。
【0031】
スイッチングレギュレータ33nは、イネーブル信号ENに応じて、送信部22に所定の駆動電圧を供給する。
【0032】
送受信切替部21および送信部22に所定の駆動電圧を供給するスイッチングレギュレータ332〜33nは、受信部23の受信動作時には使用しないことから、たとえばイネーブル信号ENなどで外部から動作を一時的に停止できるように構成されたものを用いる。
【0033】
スイッチングレギュレータ332〜33nのイネーブル信号ENの入力端子(以下EN入力端子という)には信号処理部24の電源制御部24aで生成された制御信号が入力されるが、制御信号が入力されていない場合でも正常にこれらレギュレータ332〜33nが動作するようにプルダウン回路32でプルダウンされている。なお、レギュレータ332〜33nの回路構成に応じて、プルダウン回路32に代えてプルアップ回路を用いる。
【0034】
スイッチングレギュレータ332〜33nのEN入力端子に入力される制御信号は、それぞれレベルシフタ31でスイッチングレギュレータ332〜33nの動作電圧にレベル変換される。
【0035】
また、これらEN入力端子に制御信号が入力されるスイッチングレギュレータ332〜33nの出力端子には、所定の出力電圧を維持するための電解コンデンサ等の静電容量が大きいコンデンサ34が接続されている。
【0036】
図3は、図2の送受信シーケンス動作の流れを説明する動作説明図である。(a)は超音波信号の送受信シーケンス例であり、超音波信号の受信は、超音波信号の送信に対して任意の時間後に行うものとする。
【0037】
スイッチングレギュレータを用いた従来の機器では、スイッチングレギュレータは電源スイッチが投入された以降は電源スイッチが遮断されるまでの間、常時連続的に動作することが一般的であって、超音波流量計の場合も例外ではなく、受信部23の受信動作時も動作しているために、少なからずスイッチングレギュレータのスイッチングノイズの影響を受けていた。
【0038】
これに対し、本発明では、(b)に示すように信号処理部24の電源制御部24aで生成された制御信号を用いて、受信部23が動作する前後の任意のタイミングで、送受信切替部21や送信部22などの受信部23の動作時には使用していない回路に駆動電圧を供給するスイッチングレギュレータ332〜33nの動作を停止させる。
【0039】
これにより、(c)に示すようにこれらスイッチングレギュレータ332〜33nから発生するノイズを最小にでき、受信部23の受信波形に与える影響を小さくできる。
【0040】
また、スイッチングレギュレータ332〜33nの動作停止時は(d)に示すように回路の待機電流により電圧降下が発生するが、スイッチングレギュレータ332〜33nの出力端子には電解コンデンサ等の静電容量の大きいコンデンサ34が接続されているので、許容できる電圧降下範囲内の所定の出力電圧を維持することができる。
【0041】
図4は、本発明の他の実施例を示す構成説明図である。図4の実施例では、EN入力端子を有するスイッチングレギュレータ33とシリーズレギュレータ35を組み合わせて、いずれか一方のレギュレータから出力電圧を供給する。
【0042】
図4において、スイッチングレギュレータ33とシリーズレギュレータ35のそれぞれのEN入力端子には信号処理部24から動機制御信号がレベルシフト回路31およびプルダウン回路32を介して入力され、電圧入力端子には共通の入力電圧Vinが入力されている。そして、スイッチングレギュレータ33とシリーズレギュレータ35の出力端子は、ダイオード36を介して共通に接続されている。
【0043】
ここで、スイッチングレギュレータ33は高効率であるがノイズが比較的大きいという特性を有し、シリーズレギュレータ35は低効率であるがノイズは小さいという特性を有している。
【0044】
したがって、これらスイッチングレギュレータ33とシリーズレギュレータ35のEN入力端子を利用して両者の優れた特性をうまく組み合わせて超音波流量計の駆動電源として用いることで、超音波流量計におけるノイズの影響を低減できる。
【0045】
図5は、スイッチングレギュレータ33とシリーズレギュレータ35の特性をうまく組み合わせた図4の送受信シーケンス動作の流れを説明する動作説明図である。(a)は超音波信号の送受信シーケンスであり、超音波信号の受信は、図3と同様に、超音波信号の送信に対して任意の時間後に行うものとする。
【0046】
制御信号は、(b)に示すように、超音波信号の送信時にはスイッチングレギュレータ33を動作させ、超音波信号の受信時にはシリーズレギュレータ35を動作させる。
【0047】
電源部30を構成するレギュレータから発生するノイズに着目すると、(c)に示すように、スイッチングレギュレータ33が動作している超音波信号の送信時は比較的大きなノイズが発生するが、シリーズレギュレータ35が動作する超音波信号の受信時になると発生するノイズの大きさはかなり低下する。
【0048】
なお、電源部30の出力電圧は、(d)に示すように、これらスイッチングレギュレータ33とシリーズレギュレータ35の切替に伴ってわずかながら変動するが、この電源部30の出力電圧の変動分が制御部20の動作に悪影響を与えることはない。
【0049】
そして、超音波流量計は、超音波信号の送受に伴ってスイッチングレギュレータ33とシリーズレギュレータ35を切り替えながら、安定に動作する。
【0050】
また、上記実施例では、透過型の超音波流量計について説明したが、本発明は透過型に限るものではなく、反射型の超音波流量計にも適用できる。
【0051】
以上説明したように、本発明によれば、スイッチングレギュレータで発生する電源部のリップルノイズなどの周期的ノイズの影響を低減できる超音波流量計を実現できる。
【符号の説明】
【0052】
10 検出部
11 測定管
12、13 センサ
20 制御部20
21 送受信切替部
22 送信部
23 受信部
24 信号処理部
24a 電源制御部
25 表示部
30 電源部
31 レベルシフタ
32 プルダウン回路
33 スイッチングレギュレータ
34 コンデンサ
35 シリーズレギュレータ
36 ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9