(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電波強度調整手段は、前記電磁波送信手段にて送信される電磁波の電波強度を前記所定の最大値まで大きく調整した後に、前記検出手段により検出される前記読取個数が前記記憶手段に記憶される前記限界読取個数未満であると前記判定手段により判定されると、前記電磁波送信手段にて送信される電磁波の電波強度を所定の最小値まで小さく調整することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
前記検出手段による検出結果に応じて前記記憶手段に記憶される前記限界読取個数を更新可能な更新手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯端末。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、無線通信に関して読取速度を向上しつつ消費電力を低減する等の更なる性能が求められている。この要求を満たすために、単に読取速度の向上に重きを置いてしまうと、RFIDタグの読取枚数は増加するものの、その増加したRFIDタグを処理するために大幅に電力が消費されてしまう。また、消費電力低減を重視しすぎてしまうと、携帯端末のパフォーマンス力が落ち、読取速度の向上が困難になる。特に、RFIDタグを利用した棚卸し作業等、密集している大量のRFIDタグを読み取る携帯端末では、この問題が顕著になる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、情報処理手段の処理能力に応じて無線通信に関する省電力化を図り得る携帯端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、RFIDタグ(60)と無線通信することで前記RFIDタグに記憶されている情報を読み取る携帯端末(10)であって、前記RFIDタグに対して電磁波を送信する電磁波送信手段(30)と、前記電磁波送信手段による電磁波の送信に応じて前記RFIDタグから送信される電磁波を受信する電磁波受信手段(30)と、前記電磁波受信手段により受信した電磁波に応じて前記RFIDタグに記憶されている情報を読み取る処理を行う情報処理手段(21)と、前記情報処理手段により一定時間あたりに処理されている前記RFIDタグの読取個数(N)を検出する検出手段(21)と、前記情報処理手段により前記一定時間あたりに処理可能な前記RFIDタグの読取個数を限界読取個数(N1)として記憶する記憶手段(22)と、前記検出手段により検出される前記読取個数が前記記憶手段に記憶される前記限界読取個数以上であるか否かについて判定する判定手段(21)と、前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を調整する電波強度調整手段(21)と、を備え、前記電波強度調整手段は、前記検出手段により検出される前記読取個数が前記記憶手段に記憶される前記限界読取個数以上であると前記判定手段により判定されると、前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を小さく
し、前記検出手段により検出される前記読取個数が前記記憶手段に記憶される前記限界読取個数未満であると前記判定手段により判定されると、前記電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を大きくし、前記電波強度調整手段により前記電磁波送信手段にて送信される電磁波の電波強度が所定の最大値まで大きく調整された後に、前記検出手段により検出される前記読取個数が前記記憶手段に記憶される前記限界読取個数未満であると前記判定手段により判定されると、当該携帯端末の移動を促す報知を行う報知手段を備えることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明では、情報処理手段により一定時間あたりに処理されているRFIDタグの読取個数が検出手段により検出されており、検出手段により検出される読取個数が記憶手段に記憶される限界読取個数以上であると判定手段により判定されると、電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度が電波強度調整手段により小さく調整される。
【0008】
一定時間あたりに情報処理手段にて処理できるRFIDタグの読取個数には限界があり、この限界読取個数よりも多い個数のRFIDタグを読取対象とするように電波強度が大きな電磁波を送信しても、情報処理手段にて処理されるRFIDタグの一定時間あたりの読取個数が増えず、RFIDタグの読取速度が高くなることはない。特に、大量に密集しているRFIDタグを読み取る場合等には、無駄に大きな電波強度にて電磁波を送信している場合が多くなる。
【0009】
そこで、検出手段により検出される読取個数が限界読取個数以上であると判定されると、電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度を小さくすることで、処理能力が低い情報処理手段であっても、無駄に大きな電波強度にて電磁波が送信されることを抑制することができる。しがたって、情報処理手段の処理能力に応じて無線通信に関する省電力化を図ることができる。
【0010】
さらに、検出手段により検出される読取個数が記憶手段に記憶される限界読取個数未満であると判定手段により判定されると、電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度が電波強度調整手段により大きく調整される。
【0011】
検出手段により検出される読取個数が限界読取個数未満である場合には、情報処理手段はRFIDタグの読み取りに関して余裕がある処理負荷状態となるため、送信される電磁波の電波強度を大きくしても無駄に大きな電波強度にて電磁波が送信されることもない。このため、情報処理手段の処理能力に応じた無線通信に関する省電力化を図りつつ、RFIDタグの読取速度を高めることができる。
【0012】
特に、電波強度調整手段により電磁波送信手段にて送信される電磁波の電波強度が所定の最大値まで大きく調整された後に、検出手段により検出される読取個数が記憶手段に記憶される限界読取個数未満であると判定手段により判定されると、当該携帯端末の移動を促す報知が報知手段により行われる。
【0013】
送信される電磁波の電波強度が所定の最大値の場合に検出手段により検出される読取個数が限界読取個数未満であると、その携帯端末の位置にて読み取り可能なRFIDタグをほとんど読み取ってしまっている可能性が高い。すなわち、読み取り可能なRFIDタグがほとんどない状態でも、無駄に大きな電波強度にて電磁波が送信されている状態となる。このような場合には、報知手段により携帯端末の移動を促す報知を行うことで、今までの携帯端末の位置では読み取れなかった残りのRFIDタグを読み取ることができ、無駄に大きな電波強度の電波が送信されることを抑制して無線通信に関する省電力化を図ることができる。
【0014】
請求項
2の発明では、電波強度調整手段により、電磁波送信手段にて送信される電磁波の電波強度が所定の最大値まで大きく調整された後に、検出手段により検出される読取個数が記憶手段に記憶される限界読取個数未満であると判定手段により判定されると、電磁波送信手段にて送信される電磁波の電波強度が所定の最小値まで小さく調整される。
【0015】
上述のように報知手段により携帯端末の移動を促す報知がなされるような場合には、携帯端末が移動するまでの間、RFIDタグを読み取れる可能性は低い。このような場合には、電磁波の電波強度を所定の最小値に調整することで、無駄に大きな電波強度にて電磁波が送信されることを抑制して無線通信に関する省電力化を図ることができる。
【0016】
請求項
3の発明では、報知手段により当該携帯端末の移動を促す報知がなされた後に、移動検知手段により当該携帯端末の移動が検知されると、電磁波送信手段により送信される電磁波の電波強度が電波強度調整手段により大きく調整される。
【0017】
これにより、移動した携帯端末が残りのRFIDタグを読み取れる状態になったことが推定されるので、所定の最小値に調整されていた電磁波の電波強度を大きくすることで、残りのRFIDタグを読み取りやすい状態に迅速に移行することができる。
【0018】
請求項
4の発明では、検出手段による検出結果に応じて記憶手段に記憶される限界読取個数が更新手段により更新可能となっている。このため、情報処理手段がRFIDタグを読み取る処理だけでなく他の処理を行う場合でも、その処理状況に応じた限界読取個数を設定でき、無駄に大きな電波強度にて電磁波が送信されることを確実に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る携帯端末を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る携帯端末10は、ユーザによって携帯されて様々な場所で用いられる携帯型の情報端末として構成されており、アンテナを介して送受信される電磁波を媒介としてRFIDタグ60に記憶されている情報を読み書きするRFIDタグリーダライタとしての機能に加えて、バーコードや二次元コードなどの情報コードを読み取る情報コードリーダとしての機能を兼ね備え、読み取りを二方式で行いうる構成となっている。
【0021】
図1(A)(B)に示すように、携帯端末10は、ABS樹脂等の合成樹脂材料により形成される上側ケース11aおよび下側ケース11bが組み付けられて構成される長手状の筐体11によって外郭が形成されている。また、上側ケース11aには、所定の情報を入力する際に操作されるファンクションキーおよびテンキー等のキー操作部25や、所定の情報を表示するための表示部24等が配置されている。また、下側ケース11bには、下方に向けて開口する読取口12が形成されている。
【0022】
図2(A)に示すように、携帯端末10の筐体11内には、携帯端末10全体を制御する制御部21が設けられている。この制御部21は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有し、メモリ22とともに情報処理装置を構成している。メモリ22には、後述するタグ読取処理を実行するための所定のプログラム等が制御部21により実行可能に予め格納されている。また、制御部21には、LED23、表示部24、キー操作部25、バイブレータ26、ブザー27、加速度センサ28、外部インタフェース29などが接続されている。
【0023】
キー操作部25は、制御部21に対して操作信号を与える構成をなしており、制御部21は、この操作信号を受けて操作信号の内容に応じた動作を行う。また、LED23、表示部24、バイブレータ26およびブザー27は、制御部21によって制御される構成をなしており、それぞれ、制御部21からの指令を受けて動作する。
【0024】
加速度センサ28は、3軸方向の加速度を検出可能な公知の3軸加速度センサ(3軸モーションセンサ)であって、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれの方向の加速度を検出し、この検出結果に応じた加速度信号を制御部21に出力するように構成されている。この加速度センサ28により、3軸方向(X軸方向、Y軸方向,Z軸方向)の加速度が検出されることで、当該携帯端末10の3軸方向に関する位置や移動状態をそれぞれ検出(算出)することができる。
【0025】
外部インタフェース29は、外部機器等との間でのデータ通信を行うためのインタフェースとして構成されており、制御部21と協働して通信処理を行う構成をなしている。また、筐体11内には、図略の電源部が設けられており、この電源部やバッテリ等によって制御部21や各種電気部品に電力が供給されるようになっている。
【0026】
また、制御部21には、非接触通信部30および情報コード読取部40が接続されている。
まず、非接触通信部30について、
図2(B)を用いて説明する。
非接触通信部30は、アンテナ34および制御部21と協働してRFIDタグ60との間で電磁波による通信を行ない、RFIDタグ60に記憶されるデータの読取り、或いはRFIDタグ60に対するデータの書込みを行なうように機能するものである。この非接触通信部30は、公知の電波方式で伝送を行う回路として構成されており、
図2(B)にて概略的に示すように、送信回路31、受信回路32、整合回路33などを有している。
【0027】
送信回路31は、キャリア発振器、符号化部、増幅器、送信部フィルタ、変調部などによって構成されており、キャリア発振器から所定の周波数のキャリア(搬送波)が出力される構成をなしている。また、符号化部は、制御部21に接続されており、当該制御部21より出力される送信データを符号化して変調部に出力している。変調部は、キャリア発振器からのキャリア(搬送波)、及び符号化部からの送信データが入力される部分であり、キャリア発振器より出力されるキャリア(搬送波)に対し、通信対象へのコマンド送信時に符号化部より出力される符号化された送信符号(変調信号)によってASK(Amplitude Shift Keying)変調された被変調信号を生成し、増幅器に出力している。増幅器は、入力信号(変調部によって変調された被変調信号)を所定のゲインで増幅し、その増幅信号を送信部フィルタに出力しており、送信部フィルタは、増幅器からの増幅信号をフィルタリングした送信信号を、整合回路33を介してアンテナ34に出力している。このようにしてアンテナ34に送信信号が出力されると、その送信信号が電磁波として当該アンテナ34より外部に放射される。このように電磁波を送信する非接触通信部30は、「電磁波送信手段」の一例に相当し得る。
【0028】
一方、アンテナ34によって応答信号として受信された電磁波は、整合回路33を介して受信回路32に入力される。この受信回路32は、受信部フィルタ、増幅器、復調部、二値化処理部、複号化部などによって構成されており、アンテナ34を介して受信された応答信号を受信部フィルタによってフィルタリングした後、増幅器によって増幅し、その増幅信号を復調部によって復調する。そして、その復調された信号波形を二値化処理部によって二値化し、復号化部にて復号化した後、その復号化された信号を受信データとして制御部21に出力している。このように電磁波を受信する非接触通信部30は、「電磁波受信手段」の一例に相当し、制御部21は、「情報処理手段」の一例に相当し得る。
【0029】
ここで、携帯端末10の読取対象となるRFIDタグ60の電気的構成について、
図3を参照して説明する。
図3に示すように、RFIDタグ60は、アンテナ61,電源回路62,復調回路63,制御回路64,メモリ65,変調回路66などによって構成されている。電源回路62は、アンテナ61を介して受信した携帯端末10からの送信信号(キャリア信号)を整流、平滑して動作用電源を生成するものであり、その動作用電源を、制御回路64をはじめとする各構成要素に供給している。
【0030】
また、復調回路63は、送信信号(キャリア信号)に重畳されているデータを復調して制御回路64に出力している。メモリ65は、ROM,EEPROM等の各種半導体メモリによって構成されており、制御プログラムやRFIDタグ60を識別するための識別情報(タグID)、或いはRFIDタグ60の用途に応じたデータなどが記憶されている。制御回路64は、メモリ65から上記情報やデータを読み出し、それを送信データとして変調回路66に出力する構成をなしており、変調回路66は、応答信号(キャリア信号)を当該送信データで負荷変調してアンテナ61から反射波(電磁波)として送信するように構成されている。
【0031】
次に、情報コード読取部40について、
図2(C)を用いて説明する。
情報コード読取部40は、情報コードを光学的に読み取るように機能するもので、
図2(C)に示すように、CCDエリアセンサからなる受光センサ43、結像レンズ42、複数個のLEDやレンズ等から構成される照明部41などを備えた構成をなしており、制御部21と協働して読取対象Rに付された情報コードC(バーコードや二次元コード等)を読み取るように機能する。
【0032】
この情報コード読取部40によって読み取りを行う場合、まず、制御部21によって指令を受けた照明部41から照明光Lfが出射され、この照明光Lfが読取口12を通って読取対象Rに照射される。そして、照明光Lfが情報コードCにて反射した反射光Lrは読取口12を通って装置内に取り込まれ、結像レンズ42を通って受光センサ43に受光される。読取口12と受光センサ43との間に配される結像レンズ42は、情報コードCの像を受光センサ43上に結像させる構成をなしており、受光センサ43はこの情報コードCの像に応じた受光信号を出力する。受光センサ43から出力された受光信号は、画像データとしてメモリ22(
図2(A))に記憶され、情報コードCに含まれる情報を取得するためのデコード処理に用いられるようになっている。なお、情報コード読取部40には、受光センサ43からの信号を増幅する増幅回路や、その増幅された信号をデジタル信号に変換するAD変換回路等が設けられているがこれらの回路については図示を省略している。
【0033】
次に、携帯端末10を利用した棚卸し作業時に、制御部21にて実行されるタグ読取処理について説明する。
棚卸し作業では、密集した商品にそれぞれ付された大量のRFIDタグ60を読み取る必要がある。これに対して、一定時間(単位時間)あたりに制御部21にて読取処理可能なRFIDタグ60の読取個数には限界があり、その限界となる読取個数(以下、限界読取個数N1ともいう)は、主に制御部21の性能によって決まるものである。このため、限界読取個数N1よりも多い個数のRFIDタグ60を読取対象とするように非接触通信部30にて電波強度の大きな電磁波が送信されることで大量のRFIDタグ60が検出されても、制御部21にて読取処理されるRFIDタグ60の一定時間あたりの読取個数が増えず、RFIDタグ60の読取速度が高くなることはない。すなわち、読取個数が限界読取個数N1と同等以上であると、無駄に大きな電波強度にて電磁波を送信している可能性が高い。
【0034】
そこで、本実施形態では、無駄に大きな電波強度での電磁波の送信を抑制することで省電力化を図るため、制御部21の性能に応じた一定時間あたりの限界読取個数N1が予め設定されてメモリ22に記憶される。そして、この限界読取個数N1と、上記一定時間あたりに実際に制御部21にて読取処理しているRFIDタグ60の個数(以下、読取個数Nともいう)との比較結果に応じて、非接触通信部30により送信される電磁波の電波強度が調整される。特に、本実施形態では、大量のRFIDタグ60が検出された際に、制御部21の読取処理による上記一定時間あたりの最大読取個数が実測されて、この実測された最大読取個数が上記限界読取個数N1としてメモリ22に記憶されている。例えば、上記一定時間を10秒としたときに500個のRFIDタグ60が読取処理されていると、限界読取個数N1は、読取個数500個と同等または僅かに小さい数値に設定されてメモリ22に記憶される。なお、メモリ22は、「記憶手段」の一例に相当し得る。
【0035】
以下、非接触通信部30から送信される電磁波の電波強度を読取個数Nおよび限界読取個数N1に基づいて調整した状態でRFIDタグ60を読み取るタグ読取処理について、
図4のフローチャートを参照して詳述する。
キー操作部25に対して所定の操作がなされることで、制御部21によりタグ読取処理が開始されると、
図4のステップS101に示す処理にて、非接触通信部30により送信される電磁波の電波強度がその読取環境等を考慮した所定の最大値に調整される。続いて、ステップS103にてRFIDタグ60を検出するための処理がなされ、調整された電波強度の電磁波を利用して大量のRFIDタグ60のデータが検出されて収集される。
【0036】
次に、ステップS105に示す処理にて、上述のように検出された大量のRFIDタグ60について一定時間あたりに制御部21にて読取処理しているRFIDタグ60の読取個数Nが検出される。なお、ステップS105の処理を実施する制御部21は、「検出手段」の一例に相当し得る。
【0037】
続いて、ステップS107に示す判定処理にて、検出されたRFIDタグ60の読取個数Nがメモリ22に記憶されている限界読取個数N1以上であるか否かについて判定される。ここで、読取個数Nが限界読取個数N1以上であると(S107でYes)、無駄に大きな電波強度にて電磁波を送信していると判断されて、ステップS109に示す処理にて、非接触通信部30により送信される電磁波の電波強度が1段階下げられるように調整される。なお、ステップS107の判定処理を実施する制御部21は、「判定手段」の一例に相当し、ステップS109の処理および後述するステップS115の処理を実施する制御部21は、「電波強度調整手段」の一例に相当し得る。
【0038】
電波強度が1段階下げられてもRFIDタグ60が検出される状態が継続されると、ステップS111にてYesと判定されて、上記ステップS103からの処理がなされる。すなわち、読取個数Nが限界読取個数N1と同等である状態が継続される間(S107でYes)、非接触通信部30により送信される電磁波の電波強度が段階的に下げられるように調整され、読取個数Nが限界読取個数N1未満になると電波強度を下げる調整が停止される(S107でNo)。この読取個数Nが限界読取個数N1未満になったときの電波強度での電磁波は、無駄に大きな電波強度ではなく、省電力化を図る上でその読取環境等に適した電波強度となっている。
【0039】
そして、電磁波の電波強度が上記最大値から段階的に下げられていた状態で読取個数Nが限界読取個数N1未満になると(S107でNo)、ステップS113に示す判定処理にて、電磁波の電波強度が上記最大値でないことからNoと判定される。この場合には、制御部21はRFIDタグ60の読み取りに関して余裕がある処理負荷状態となるため、送信される電磁波の電波強度を大きくしても無駄に大きな電波強度にて電磁波が送信されることもない。このため、読取速度を向上させる目的で、ステップS115に示す処理にて、非接触通信部30により送信される電磁波の電波強度が1段階上げられるように調整される。そして、RFIDタグ60が検出される状態が継続されていると、ステップS111にてYesと判定されて、上記ステップS103からの処理が繰り返される。
【0040】
このステップS103からの繰り返し処理中に、読取個数Nが限界読取個数N1未満であることから段階的に上げられていた電波強度が上記最大値に達すると、ステップS113にてYesと判定される。送信される電磁波の電波強度が上記最大値の場合に検出される読取個数Nが限界読取個数N1未満であると、その携帯端末10の位置にて読み取り可能なRFIDタグ60をほとんど読み取ってしまっている可能性が高い。すなわち、読み取り可能なRFIDタグ60がほとんどない状態でも、無駄に大きな電波強度にて電磁波が送信されている状態となる。一方、ステップS103からの繰り返し処理中に、その携帯端末10の位置にて読み取り可能なRFIDタグ60を全て読み取ってしまうと、ステップS111にてNoと判定される。
【0041】
上述のようにステップS113にてYesと判定されるかステップS111にてNoと判定されると、ステップS117に示す報知処理がなされる。この処理では、周囲に検出可能なRFIDタグ60がないことを示す情報と未読の他のRFIDタグ60を読み取るために移動を促す情報とが表示部24に表示されることで報知される。なお、この報知は、表示部24の表示だけでなく、LED23の点灯状態、バイブレータ26の振動、ブザー27の鳴動等を利用して行ってもよい。表示部24およびLED23、バイブレータ26、ブザー27等は、「報知手段」の一例に相当し得る。
【0042】
このような報知がなされた後、ステップS119に示す処理にて、非接触通信部30により送信される電磁波の電波強度がその読取環境等を考慮した所定の最小値に調整される。読み取り可能なRFIDタグ60がほとんどない状態では、電磁波の送信自体が無駄となる可能性が高いからである。なお、上記ステップS119に示す処理では、非接触通信部30による電磁波の送信自体を停止することもできる。
【0043】
そして、ステップS121に示す判定処理にて、加速度センサ28の検出結果に基づいて携帯端末10が移動しているか否かについて判定される。ここで、携帯端末10の移動が検知されない場合には、ステップS121にてNoとの判定が繰り返され、非接触通信部30により送信される電磁波の電波強度が上記最小値に調整される状態が継続される。なお、ステップS121の判定処理実施する制御部21および加速度センサ28は、「移動検知手段」の一例に相当し得る。
【0044】
その後、上記報知を受けたユーザが携帯端末10を移動させると、加速度センサ28の検出結果に基づいて携帯端末10の移動が検知されて、ステップS121にてYesと判定される。そして、全てのRFIDタグ60を読み取っていない場合には(S123でNo)、ステップS101からの処理がなされて、非接触通信部30により送信される電磁波の電波強度が上記最大値に調整された状態で、移動先にて残りのRFIDタグ60を読み取るための処理が継続されることとなる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る携帯端末10では、制御部21により一定時間あたりに処理されているRFIDタグ60の読取個数Nが検出されており(S105)、検出される読取個数Nがメモリ22に記憶される限界読取個数N1以上であると判定されると(S107でYes)、非接触通信部30により送信される電磁波の電波強度が小さく調整される(S109)。
【0046】
このように、検出される読取個数Nが限界読取個数N1以上であると判定されると、非接触通信部30により送信される電磁波の電波強度を小さくすることで、処理能力が低い制御部21であっても、無駄に大きな電波強度にて電磁波が送信されることを抑制することができる。しがたって、制御部21の処理能力に応じて無線通信に関する省電力化を図ることができる。
【0047】
また、検出される読取個数Nがメモリ22に記憶される限界読取個数N1未満であると判定されると(S107でNo)、非接触通信部30により送信される電磁波の電波強度が大きく調整される(S115)。このように、検出される読取個数Nが限界読取個数N1未満である場合には、制御部21はRFIDタグ60の読み取りに関して余裕がある処理負荷状態となるため、読取個数Nと限界読取個数N1との比較結果に基づいて送信される電磁波の電波強度を適度に大きくすることで、制御部21の処理能力に応じた無線通信に関する省電力化を図りつつ、RFIDタグ60の読取速度を高めることができる。
【0048】
さらに、非接触通信部30にて送信される電磁波の電波強度が上記最大値まで大きく調整された後に、検出される読取個数Nがメモリ22に記憶される限界読取個数N1未満であると判定されると(S113でYes)、当該携帯端末10の移動を促す報知が表示部24による表示等により行われる(S117)。
【0049】
このように、その携帯端末10の位置にて読み取り可能なRFIDタグ60をほとんど読み取ってしまっている場合には、携帯端末10の移動を促す報知を行うことで、今までの携帯端末10の位置では読み取れなかった残りのRFIDタグ60を読み取ることができ、無駄に大きな電波強度の電波が送信されることを抑制して無線通信に関する省電力化を図ることができる。
【0050】
さらにまた、非接触通信部30にて送信される電磁波の電波強度が上記最大値まで大きく調整された後に、検出される読取個数Nがメモリ22に記憶される限界読取個数N1未満であると判定されると(S113でYes)、非接触通信部30にて送信される電磁波の電波強度が上記最小値まで小さく調整される(S119)。
【0051】
このように、携帯端末10が移動するまでの間、RFIDタグ60を読み取れる可能性が低いような場合には電磁波の電波強度を上記最小値に調整することで、無駄に大きな電波強度にて電磁波が送信されることを抑制して無線通信に関する省電力化を図ることができる。
【0052】
特に、表示部24の表示等により当該携帯端末10の移動を促す報知がなされた後に、当該携帯端末10の移動が検知されると(S121でYes)、非接触通信部30により送信される電磁波の電波強度が大きく調整される(S101)。
【0053】
これにより、移動した携帯端末10が残りのRFIDタグ60を読み取れる状態になったことが推定されるので、上記最小値に調整されていた電磁波の電波強度を大きくすることで、残りのRFIDタグ60を読み取りやすい状態に迅速に移行することができる。
【0054】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)メモリ22に記憶される限界読取個数N1は、更新可能であってもよい。例えば、制御部21がRFIDタグ60を読み取る処理と異なる通信処理等の他の処理を並行して行うような環境では、制御部21の処理負荷が変動する可能性が高い。このような場合には、例えば、その読取作業開始時に、制御部21の読取処理による上記一定時間あたりの最大読取個数を実測することで、この実測された最大読取個数に対して同等または僅かに小さい数値となるようにメモリ22に記憶される限界読取個数N1を更新することができる。これにより、制御部21がRFIDタグ60を読み取る処理だけでなく他の処理を行う場合でも、その処理状況に応じた限界読取個数N1を設定(更新)でき、無駄に大きな電波強度にて電磁波が送信されることを確実に抑制することができる。なお、上記更新処理を行う制御部21は、「更新手段」の一例に相当し得る。
【0055】
(2)上記実施形態では、1つの限界読取個数N1が予め用意されてメモリ22に記憶されているが、これに限らず、制御部21の処理負荷に応じた複数パターンの限界読取個数N1が予め用意されてメモリ22に記憶されてもよい。これにより、タグ読取処理中に制御部21の処理負荷に応じて最適な限界読取個数N1を選択することで、省電力化に関してより実状に即した電磁波の電波強度に調整することができる。
【0056】
(3)上記ステップS119では、非接触通信部30により送信される電磁波の電波強度が上記最小値に調整されることに限らず、携帯端末10の移動が検知されるまで上記ステップS109と同様に電波強度が段階的に下げられるように調整されてもよい。