(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モータに用いられるバスバーユニットであって、 複数の金属製のバスバーを有し、 複数の前記バスバーの少なくとも1つは、 前記モータの中心軸に対して略周方向に延びる本体部と、 前記モータのコイルに電気的に接続される第1端子部と、 前記本体部の一方の端部と前記第1端子部とを繋ぐブリッジ部と、を有し、 前記第1端子部は、前記ブリッジ部と繋がると共に、周方向に延びる部分と、前記周方向に延びる部分の端部から径方向に延びると共に、前記モータのコイルと接続される部分と、を有し、 前記ブリッジ部は、複数の前記バスバーの他の少なくとも1つを跨ぎ、 前記本体部の軸方向位置と、前記第1端子部の軸方向位置とが、少なくとも部分的に重なるバスバーユニット。
請求項5に記載のバスバーユニットにおいて、 前記バスバーの板厚方向の屈曲を展開すると、 前記本体部と前記第1端子部とが、略同方向に延び、かつ、 前記ブリッジ部が、前記本体部および前記第1端子部とは異なる方向に延びるバスバーユニット。
静止部と、 前記中心軸を中心として回転可能に支持される回転部と、を有し、 前記静止部は、 前記中心軸に対して周方向に配列された複数のコイルと、 請求項1から請求項14までのいずれかに記載のバスバーユニットと、を有し、 前記回転部は、 前記複数のコイルの磁芯と対向するマグネットを有するモータ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、モータの中心軸と平行な方向を「軸方向」、モータの中心軸に直交する方向を「径方向」、モータの中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、本願では、軸方向を上下方向とし、コイルに対してバスバーユニット側を上として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、この上下方向の定義により、本発明に係るモータの製造時および使用時の向きを限定する意図はない。
【0012】
また、本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0013】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るバスバーユニット23Aの縦断面図である。このバスバーユニット23Aは、モータに用いられ、コイル43Aと外部電源とを電気的に接続する役割を果たす。
図1に示すように、バスバーユニット23Aは、2つの金属製のバスバー51A,52Aを有する。
【0014】
2つのバスバー51A,52Aのうちの一方のバスバー51Aは、本体部510Aと、第1端子部511Aと、ブリッジ部513Aとを有する。本体部510Aは、モータの中心軸9Aに対して略周方向に延びる。第1端子部511Aは、モータのコイル43Aに電気的に接続される。本体部510Aの軸方向位置と、第1端子部511Aの軸方向位置とは、少なくとも部分的に重なる。
【0015】
本体部510Aの一方の端部と第1端子部511Aとは、アーチ型のブリッジ部513Aにより繋がれる。また、
図1に示すように、ブリッジ部513Aは、他方のバスバー52Aを跨ぐ。
【0016】
このように、このバスバーユニット23Aでは、本体部510Aの端部から、ブリッジ部513Aを介して第1端子部511Aが延びている。このため、本体部510Aの途中から第1端子部511Aを軸方向または径方向に突出させる必要がない。これにより、材料の歩留まりを高めることができる。また、一方のバスバー51Aの本体部510Aと、他方のバスバー52Aとを、径方向に重なる位置に配置しながら、径方向に第1端子部511Aを延ばし、かつ、両バスバー51A,52Aの接触を避けることができる。その結果、バスバーユニット23Aのサイズを抑えることができる。
【0017】
<2.第2実施形態> <2−1.モータの全体構成> 続いて、本発明の第2実施形態について、説明する。
図2は、第2実施形態に係るモータ1の縦断面図である。本実施形態のモータ1は、例えば、自動車に搭載され、パワーステアリングの駆動力を発生させるために使用される。ただし、本発明のモータは、パワーステアリング以外の用途に使用されるものであってもよい。例えば、本発明のモータは、自動車の他の部位、例えばエンジン冷却用ファンやオイルポンプの駆動源として、使用されるものであってもよい。また、本発明のモータは、家電製品、OA機器、医療機器等に搭載され、各種の駆動力を発生させるものであってもよい。
【0018】
このモータ1は、ステータ22の径方向内側にロータ32が配置される、いわゆるインナロータ型のモータである。
図2に示すように、モータ1は、静止部2と回転部3とを有する。静止部2は、駆動対象となる機器の枠体に固定される。回転部3は、静止部2に対して、回転可能に支持される。
【0019】
本実施形態の静止部2は、ハウジング21、ステータ22、バスバーユニット23、下軸受部24、および上軸受部25を有する。
【0020】
ハウジング21は、筒状部211、底板部212、および蓋部213を有する。筒状部211は、ステータ22およびバスバーユニット23の径方向外側において、軸方向に略円筒状に延びる。底板部212は、ステータ22および後述するロータ32の下側において、中心軸9に対して略垂直に広がる。蓋部213は、バスバーユニット23の上側において、中心軸9に対して略垂直に広がる。ステータ22、バスバーユニット23、および後述するロータ32は、ハウジング21の内部空間に、収容される。
【0021】
筒状部211、底板部212、および蓋部213は、例えば、アルミニウムやステンレス等の金属により構成される。本実施形態では、筒状部211と底板部212とが一部材で構成され、蓋部213が他部材で構成されている。ただし、筒状部211と蓋部213とが一部材で構成され、底板部212が他部材で構成されていてもよい。
【0022】
ステータ22は、後述するロータ32の径方向外側に、配置される。ステータ22は、ステータコア41、インシュレータ42、および複数のコイル43を有する。ステータコア41は、電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板からなる。ステータコア41は、円環状のコアバック411と、コアバック411から径方向内側へ向けて突出した複数のティース412とを有する。コアバック411は、中心軸9と略同軸に配置される。また、コアバック411の外周面は、ハウジング21の筒状部211の内周面に、固定される。複数のティース412は、周方向に略等間隔に配列される。
【0023】
インシュレータ42は、絶縁体である樹脂からなる。各ティース412の上面、下面、および周方向の両端面は、インシュレータ42に覆われる。コイル43は、インシュレータ42の周囲に巻かれた導線431により、構成される。すなわち、本実施形態では、磁芯となるティース412の周囲に、インシュレータ42を介して、導線431が巻かれる。インシュレータ42は、ティース412とコイル43との間に介在することによって、ティース412とコイル43とが電気的に短絡することを、防止する。
【0024】
なお、インシュレータ42に代えて、ティース412の表面に、絶縁塗装が施されていてもよい。
【0025】
バスバーユニット23は、導体である銅などの金属からなるバスバー51〜54と、バスバー51〜54を保持する樹脂製のバスバーホルダ55とを有する。バスバー51〜54は、コイル43を構成する導線431と、電気的に接続される。また、モータ1の使用時には、外部電源から延びる導線が、バスバー51〜54に接続される。すなわち、コイル43と外部電源とが、バスバー51〜54を介して、電気的に接続される。
【0026】
図2の例では、ステータ22より上側、かつ、蓋部213より下側に、バスバーユニット23が配置されている。ただし、バスバーユニット23は、蓋部213より上側に配置されていてもよい。バスバーユニット23のより詳細な構造については、後述する。
【0027】
下軸受部24および上軸受部25は、ハウジング21と、回転部3側のシャフト31との間に配置される。本実施形態の下軸受部24および上軸受部25には、球体を介して外輪と内輪とを相対回転させるボールベアリングが、使用されている。これにより、ハウジング21に対してシャフト31が、回転可能に支持される。ただし
、ボールベアリングに代えて、すべり軸受や流体軸受等の他方式の軸受が、使用されていてもよい。
【0028】
本実施形態の回転部3は、シャフト31とロータ32とを有する。
【0029】
シャフト31は、中心軸9に沿って延びる柱状の部材である。シャフト31の材料には、例えばステンレスが使用される。シャフト31は、上述した下軸受部24および上軸受部25に支持されながら、中心軸9を中心として回転する。また、シャフト31の上端部311は、蓋部213より上方へ突出する。シャフト31の当該上端部311には、ギア等の動力伝達機構を介して、駆動対象となる装置が連結される。
【0030】
ロータ32は、ステータ22の径方向内側に位置し、シャフト31とともに回転する。ロータ32は、ロータコア61、複数のマグネット62、およびマグネットホルダ63を有する。ロータコア61は、電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板からなる。ロータコア61は、その中央に、軸方向に延びる挿入孔60を有する。シャフト31は、ロータコア61の当該挿入孔60に圧入される。これにより、ロータコア61とシャフト31とが、互いに固定される。
【0031】
複数のマグネット62は、ロータコア61の外周面に、例えば接着剤で固定される。各マグネット62の径方向外側の面は、ティース412の径方向内側の端面に対向する磁極面となっている。複数のマグネット62は、N極とS極とが交互に並ぶように、周方向に配列される。なお、複数のマグネット62に代えて、N極とS極とが周方向に交互に着磁された1つの円環状のマグネットが、使用されていてもよい。
【0032】
マグネットホルダ63は、ロータコア61に対して固定された樹脂製の部材である。マグネットホルダ63は、例えば、ロータコア61をインサート部品とするインサート成型により得られる。複数のマグネット62の下面および周方向の両端面は、マグネットホルダ63に接触する。これにより、各マグネット62が、周方向および軸方向に位置決めされる。また、マグネットホルダ63により、ロータ32全体の剛性が高められる。
【0033】
外部電源から、バスバー51〜54を介してコイル43に駆動電流が与えられると、ステータコア41の複数のティース412に、磁束が生じる。そして、ティース412とマグネット62との間の磁束の作用により、周方向のトルクが発生する。その結果、静止部2に対して回転部3が、中心軸9を中心として回転する。
【0034】
<2−2.コイルの接続構成について> 本実施形態のモータ1は、U相、V相、およびW相の三相交流により駆動する三相同期型のモータである。
図3および
図4は、コイル43を構成する導線431の接続構成を、概念的に示した図である。
図3および
図4に示すように、本実施形態のステータ22は、12個のコイル43を有する。12個のコイル43は、4つのU相コイル43(U1〜U4)、4つのV相コイル43(V1〜V4)、および4つのW相コイル43(W1〜W4)を含む。これらのコイル43は、U1、V1、W1、U2、V2、W2、U3、V3、W3、U4、V4、W4の順で、周方向に等角度間隔で配列される。
【0035】
図3中に概念的に示したように、本実施形態では、U1とU2、U3とU4、V1とV2、V3とV4、W1とW2、およびW3とW4の6組のコイル対が、それぞれ、1本の連続した導線431により、構成される。すなわち、
図4のように、これらの6組のコイル対が、それぞれ直列に接続される。また、U1,U2のコイル対と、U3,U4のコイル対とは、並列に接続されてU相コイル群UGを形成する。また、V1,V2のコイル対と、V3,V4のコイル対とは、並列に接続されて、V相コイル群VGを形成する。また、W1,W2のコイル対と、W3,W4のコイル対とは、並列に接続されて、W相コイル群WGを形成する。
【0036】
そして、これらのU相コイル群UG、V相コイル群VG、およびW相コイル群WGの一方の端部は、マイクロコントローラを含む回路基板70と、電気的に接続される。また、これらのU相コイル群UG、V相コイル群VG、およびW相コイル群WGの他方の端部は、中性点Nにおいて互いに電気的に接続される。すなわち、本実施形態では、U相コイル群UG、V相コイル群VG、およびW相コイル群WGが、Y結線にて接続される。
【0037】
また、
図3および
図4に示すように、本実施形態では、中心軸9を含む平面73により区分される一方の空間である第1空間71に、各コイル対の一方のコイル43(U1,V1,W1,U4,V4,W4)が配置される。これらのU1,V1,W1,U4,V4,W4のコイル43は、いずれも、回路基板70側に接続されるコイルである。また、本実施形態では、上述した平面73により区分される他方の空間である第2空間72に、各コイル対の他方のコイル43(U2,V2,W2,U3,V3,W3)が配置される。これらのU2,V2,W2,U3,V3,W3のコイル43は、いずれも、中性点N側に接続されるコイルである。なお、バスバー51〜54と回路基板70とを電気的に接続するためのインターフェースが存在してもよい。
【0038】
<2−3.バスバーユニットの構成について> 続いて、モータ1に用いられるバスバーユニット23の構成について、説明する。
図5は、バスバーユニット23の上面図である。
図5に示すように、バスバーユニット23は、U相用バスバー51、V相用バスバー52、W相用バスバー53、および中性点用バスバー54と、これらのバスバー51〜54を保持するバスバーホルダ55とを有する。バスバーホルダ55は、U相用バスバー51、V相用バスバー52、W相用バスバー53、および中性点用バスバー54のそれぞれの一部分をインサート部品とする樹脂成型品である。
【0039】
U相用バスバー51は、2つのU相用端子部511,512を有する。2つのU相用端子部511,512は、上述した第1空間71に配置される。また、U相用端子部511,512には、U1,U4の各コイル43から引き出された導線431の端部が、それぞれ接続される。すなわち、
図4に示したように、回路基板70とU1,U4の各コイル43とが、U相用バスバー51を介して、電気的に接続される。
【0040】
V相用バスバー52は、2つのV相用端子部521,522を有する。2つのV相用端子部521,522は、上述した第1空間71に配置される。また、V相用端子部521,522には、V1,V4の各コイル43から引き出された導線431の端部が、それぞれ接続される。すなわち、
図4に示したように、回路基板70とV1,V4の各コイル43とが、V相用バスバー52を介して、電気的に接続される。
【0041】
W相用バスバー53は、2つのW相用端子部531,532を有する。2つのW相用端子部531,532は、上述した第1空間71に配置される。また、W相用端子部531,532には、W1,W4の各コイル43から引き出された導線431の端部が、それぞれ接続される。すなわち、
図4に示したように、回路基板70とW1,W4の各コイル43とが、W相用バスバー53を介して、電気的に接続される。
【0042】
中性点用バスバー54は、6つの中性点用端子部541〜546を有する。6つの中性点用端子部541〜546は、上述した第2空間72に配置される。また、中性点用端子部541〜546には、U2,V2,W2,U3,V3,W3の各コイル43から引き出された導線431の端部が、それぞれ接続される。すなわち、
図4に示したように、中性点Nと、U2,V2,W2,U3,V3,W3の各コイル43とが、中性点用バスバー54を介して、電気的に接続される。
【0043】
図6は、U相用バスバー51、V相用バスバー52、およびW相用バスバー53の上面図である。
図7は、U相用バスバー51、V相用バスバー52、およびW相用バスバー53の斜視図である。
図6および
図7に示すように、本実施形態のU相用バスバー51、V相用バスバー52、およびW相用バスバー53は、いずれも、屈曲した帯状の板材である。これらのバスバー51〜53は、接近して配置されているものの、バスバーホルダ55により互いに絶縁される。
【0044】
U相用バスバー51は、本体部510、第1端子部511、第2端子部512、およびブリッジ部513を有する。本体部510は、V相用バスバー52より径方向内側において、略周方向に延びる。第1端子部511は、後述するV相用バスバー52の弧状部520より、径方向外側に位置する。本実施形態では、本体部510の軸方向の中央位置と、第1端子部511の軸方向の中央位置とが、略同一である。本体部510の一方の端部と、第1端子部511とは、アーチ型のブリッジ部513を介して繋がる。また、第2端子部512は、本体部510の他方の端部から、径方向外側へ延びる。
【0045】
第1端子部511および第2端子部512は、上面視において略U字状である。第1端子部511および第2端子部512のそれぞれの先端は、径方向内側へ向けられる。第1端子部511および第2端子部512は、モータ1に組み込まれたときに、上述したU相用端子部511,512となる。
【0046】
V相用バスバー52は、弧状部520と、一対の端子部521,522とを有する。弧状部520は、U相用バスバー51およびW相用バスバー53の各本体部510.530より径方向外側、かつ、U相用バスバー51およびW相用バスバー53の各第1端子部511,532より径方向内側において、略周方向に延びる。一対の端子部521,522は、弧状部520の周方向の両端から、それぞれ径方向外側へ延びる。
【0047】
一対の端子部521,522は、上面視において略U字状である。一対の端子部521,522のそれぞれの先端は、径方向内側へ向けられる。一対の端子部521,522は、モータ1に組み込まれたときに、上述したV相用端子部521,522となる。
【0048】
W相用バスバー53は、本体部530、第1端子部532、第2端子部531、およびブリッジ部523を有する。本体部530は、V相用バスバー52より径方向内側において、略周方向に延びる。第1端子部532は、V相用バスバー52の弧状部520より、径方向外側に位置する。本実施形態では、本体部530の軸方向の中央位置と、第1端子部532の軸方向の中央位置とが、略同一である。本体部530の一方の端部と、第1端子部532とは、アーチ型のブリッジ部533を介して繋がる。また、第2端子部531は、本体部530の他方の端部から、径方向外側へ延びる。
【0049】
第1端子部532および第2端子部531は、上面視において略U字状である。第1端子部532および第2端子部531のそれぞれの先端は、径方向内側へ向けられる。第1端子部532および第2端子部531は、モータ1に組み込まれたときに、上述したW相用端子部532,531となる。
【0050】
このように、本実施形態のU相用バスバー51、V相用バスバー52、およびW相用バスバー53は、それぞれ、屈曲した板材であり、その両端に端子部を有する。すなわち、本実施形態の各バスバー51〜53は、本体部510,530や弧状部520の途中から端子部を突出させていない。このような構造を採ることで、材料の歩留まりを高めることができる。
【0051】
特に、U相用バスバー51の本体部510、第1端子部511、および第2端子部512と、V相用バスバー52の弧状部520および一対の端子部521,522と、W相用バスバー53の本体部510、第1端子部511、および第2端子部512とは、いずれも、板材の厚み方向のみに屈曲する。このため、各バスバー51〜53の製造時に、これらの部分を容易に形成することができる。
【0052】
U相用バスバー51のブリッジ部513は、V相用バスバー52の弧状部520の上側を、アーチ状に跨ぐ。これにより、U相用バスバー51の本体部510とV相用バスバー52の弧状部520とを、径方向に重なる位置に配置しながら
、U相用バスバー51の第1端子部511を径方向に延ばすことができる。また、U相用バスバー51とV相用バスバー52との接触を避けることができる。
【0053】
W相用バスバー53のブリッジ部533は、V相用バスバー52の弧状部520の下側を、アーチ状に跨ぐ。これにより、W相用バスバー53の本体部530とV相用バスバー52の弧状部52とを、径方向に重なる位置に配置しながら、W相用バスバー53の第1端子部532を径方向に延ばすことができる。また、W相用バスバー53とV相用バスバー52との接触を避けることができる。
【0054】
また、本実施形態では、U相用バスバー51のブリッジ部513、V相用バスバー52の弧状部520、およびW相用バスバー53のブリッジ部533が、平面視において相互に交差する。このように、3つのバスバー51〜53を平面視において重なる位置に配置することで、3つのバスバー51〜53の全体としてのサイズが小型化される。
【0055】
なお、本実施形態では、U相用バスバー51のブリッジ部513が、V相用バスバー52の上側を通り、W相用バスバー53のブリッジ部533が、V相用バスバー52の下側を通る。しかしながら、U相用バスバー51のブリッジ部513が、V相用バスバー52の下側を通り、W相用バスバー53のブリッジ部533が、V相用バスバー52の上側を通ってもよい。
【0056】
また、本実施形態では、U相用バスバー51のブリッジ部513が、天板部514を有する。天板部514は、V相用バスバー52の弧状部520の上側に位置する。また、天板部514は、中心軸9に対して略垂直に広がる。このように、ブリッジ部513に平坦な天板部514を設けることで、ブリッジ部513の上方への突出を抑えることができる。その結果、U相用バスバー51の軸方向の高さを抑制できる。
【0057】
また、本実施形態では、W相用バスバー53のブリッジ部533が、天板部534を有する。天板部534は、V相用バスバー52の弧状部520の下側に位置する。また、天板部534は、中心軸9に対して略垂直に広がる。このように、ブリッジ部533に平坦な天板部534を設けることで、ブリッジ部533の下方への突出を抑えることができる。その結果、W相用バスバー53の軸方向の高さを抑制できる。
【0058】
また、本実施形態の構造では、U相用バスバー51とW相用バスバー53とを、同一形状とすることができる。このため、同一形状のバスバーを多量に製造し、それらのバスバーを、U相用バスバー51またはW相用バスバー53として用いることができる。これにより、材料の無駄をより減らすことができる。
【0059】
また、本実施形態では、U相用バスバー51の本体部510と、W相用バスバー53の本体部530とが、互いに異なる周方向位置に配置される。このため、U相用バスバー51の本体部510と、W相用バスバー53の本体部530とが、径方向に重ならない。これにより、複数のバスバー51〜53の径方向の重なりを減らすことができる。その結果、バスバーユニット23全体の径方向の寸法が、より抑制される。
【0060】
このように、UVW相のような複数相のコイルが周方向に交互に配置される場合、各相用のバスバーを複雑に絡み合うように配置する必要がある。そのような場合においても、本実施形態のように、2つ以上のバスバーの本体部を同一の径方向位置に配置すれば、バスバーユニットを径方向に小型化できる。
【0061】
<2−4.バスバーユニットの製造手順について>
図8は、バスバーユニット23の製造手順を示すフローチャートである。バスバーユニット23を製造するときには、まず、U相用バスバー51、V相用バスバー52、およびW相用バスバー53を、それぞれ準備する(ステップS1)。U相用バスバー51、V相用バスバー52、およびW相用バスバー53は、上述の通り、金属製の板材をプレス機で屈曲させることにより形成される。
【0062】
図9は、U相用バスバー51の作製時の様子を示した図である。
図9では、プレス機による加工の向きが、破線矢印で示されている。なお、破線矢印は、加工後の図に示している。U相用バスバー51を作製するときには、まず、1本の帯状の金属板90を、その板面に沿う方向に屈曲させる。これにより、
図9中の上から2段目の図のように、金属板90が、略S字状に湾曲する。すなわち、金属板90が、略同方向に延びる二箇所のストレート部91,92と、これらの間を斜めに繋ぐ中継部93とを有する状態となる。次に、中継部93を厚み方向に屈曲させて、二箇所のストレート部91,92を、同一の高さ位置に配置する。そうすると、
図9中の上から3段目の図のように、中継部93がアーチ状に湾曲する。その結果、ブリッジ部513が形成される。
【0063】
続いて、2つのストレート部91,92を、それぞれ厚み方向に屈曲させる。これにより、
図9中の上から4段目の図のように、本体部510、第1端子部511、および第2端子部512が形成される。その結果、本体部510、第1端子部511、第2端子部512、およびブリッジ部513を有するU相用バスバー51が得られる。
【0064】
なお、
図9の上から2段目の図のように、中継部93は、傾斜部931と一対の垂直部932とを有していてもよい。傾斜部931は、2つのストレート部91,92に対して、斜めに延びる。一対の垂直部932は、傾斜部931の両端部と、各ストレート部91,92との間に位置し、ストレート部91,92に対して略垂直に延びる。このような垂直部932があれば、2つのストレート部91,92の径方向の間隔を、広くとることができる。したがって、U相用バスバー51とV相用バスバー52との間に、絶縁のための距離をより広くとることができる。また、垂直部932があれば、中継部93を径方向に長くとることができる。したがって、中継部93を厚み方向に屈曲させやすい。
【0065】
仮に、製造後のU相用バスバー51の板厚方向の屈曲のみを展開したとすると、
図9の上から2番目の図の状態となる。すなわち、本体部510および第2端子部512に相当するストレート部91と、第1端子部511に相当するストレート部92とが、略同方向に延び、かつ、ブリッジ部513に相当する中継部93が、ストレート部91,92とは異なる方向に延びた状態となる。この形状は、従来技術ほど複雑な形状ではない。したがって、
図9の上から2段目の図のような形状をプレス加工で打ち抜いたとしても、従来よりも歩留まりを高めることができる。
【0066】
なお、W相用バスバー53は、U相用バスバー51と同形状であるため、
図9と同じ手順で作製できる。また、V相用バスバー52は、金属板90を、厚み方向のみに屈曲させて、弧状部520および一対の端子部521,522を形成することにより得られる。
【0067】
次に、中性点用バスバー54を準備する(ステップS2)。中性点用バスバー54は、例えば、複数のバスバー部材を、互いに接続することにより得られる。各バスバー部材は、例えば、帯状の金属板を、厚み方向に屈曲させることにより得られる。なお、中性点用バスバー54を準備するタイミングは、ステップS1より前であってもよく、ステップS1と同時であってもよい。
【0068】
U相用バスバー51、V相用バスバー52、W相用バスバー53、および中性点用バスバー54が揃うと、次に、樹脂成型用の金型の内部に、これらのバスバー51〜54を配置する(ステップS3)。ここでは、上下方向に配置された一対の金型により形成される空洞に、各バスバー51〜54の少なくとも一部分が配置される。
【0069】
続いて、金型内の空洞に、溶融樹脂を流し込む(ステップS4)。溶融樹脂は、金型に設けられたゲートから流し込まれ、U相用バスバー51、V相用バスバー52、W相用バスバー53、および中性点用バスバー54の表面に接触しつつ、空洞内に広がる。このとき、U相用バスバー51、V相用バスバー52、およびW相用バスバー53の隙間にも、溶融樹脂が入り込む。これにより、接近して配置される3つのバスバー51〜53が、互いに絶縁される。
【0070】
そして、金型内の空洞に溶融樹脂が行き渡ると、金型内の溶融樹脂を、冷却して固化させる(ステップS5)。金型内の溶融樹脂は、固化されることにより、バスバーホルダ55となる。また、溶融樹脂の固化とともに、U相用バスバー51、V相用バスバー52、W相用バスバー53、および中性点用バスバー54と、バスバーホルダ55とが、互いに固定される。これにより、バスバーユニット23が得られる。
【0071】
その後、一対の金型を開き、金型からバスバーユニット23を離型させる(ステップS6)。
【0072】
このように、本実施形態のバスバーユニット23は、インサート成型により得られる。インサート成型を利用すれば、バスバーホルダ55の成型と、各バスバー51〜54に対するバスバーホルダ55の固定とを、同時に行うことができる。したがって、バスバーホルダ55を単独で成型した後に、当該バスバーホルダ55に各バスバー51〜54を固定する場合と比べて、バスバーユニット23の製造工程を短縮できる。
【0073】
また、インサート成型を利用すれば、各バスバー51〜54の一部分を、バスバーホルダ55を構成する樹脂で、完全に覆うことができる。このため、バスバーユニット23の全体としての剛性を、より高めることができる。
【0074】
<3.変形例> 以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0075】
図10は、一変形例に係るバスバーユニット23Bの部分分解斜視図である。
図10の例では、バスバーホルダ55Bが、U相用バスバー51B、V相用バスバー52B、およびW相用バスバー53Bとは別に成型される。バスバーホルダ55Bは、その上面から下側へ向けて凹むバスバー保持溝551Bを有する。そして、バスバーホルダ55Bの成型後に、バスバーホルダ55Bのバスバー保持溝551Bに、U相用バスバー51B、V相用バスバー52B、およびW相用バスバー53Bが嵌められる。このとき、各バスバー51Bの、少なくとも一部分が、バスバー保持溝551B内に配置される。このようにすれば、難度の高いインサート成型を行うことなく、U相用バスバー51B、V相用バスバー52B、およびW相用バスバー53Bをバスバーホルダ55Bに保持させることができる。
【0076】
また、上記の実施形態では、U相用バスバー51およびW相用バスバー53に関して、本体部の軸方向の中央位置と、第1端子部の軸方向の中央位置とが、略同一となっていた。しかしながら、本体部の軸方向位置と、第1端子部の軸方向位置とは、少なくとも部分的に重なっていればよい。
【0077】
また、上記の実施形態では、U相用バスバー51およびW相用バスバー53が、V相用バスバー52を跨ぐブリッジ部を有していた。しかしながら、複数のバスバーのうちの1つのみが、他のバスバーを跨ぐブリッジ部を有していてもよい。また、バスバーユニットに含まれる全てのバスバーが、他のバスバーを跨ぐブリッジ部を有していてもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、U相用バスバー、V相用バスバー、およびW相用バスバーに本発明の構造を適用したときの例を説明したが、本発明の構造を、中性点用バスバーを含む複数のバスバーに適用してもよい。また、上記の実施形態では、三相同期型のモータに用いられるバスバーユニットについて説明したが、本発明のバスバーユニットは、三相以外の多相同期型のモータに用いられるものであってもよい。
【0079】
また、上記の実施形態では、
図9中の上から1段目に記載された帯状の金属板90を打ち抜き、当該金属板90を屈曲させていたが、
図9中の上から2段目に記載された略S字状の金属板を、直接打ち抜いてもよい。その場合にも、打ち抜かれる金属板は、従来ほど複雑な形状ではないため、従来よりも歩留まりを高めることができる。
【0080】
また、各部材の細部の
形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。