特許第6455615号(P6455615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立工機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6455615-打撃作業機 図000002
  • 特許6455615-打撃作業機 図000003
  • 特許6455615-打撃作業機 図000004
  • 特許6455615-打撃作業機 図000005
  • 特許6455615-打撃作業機 図000006
  • 特許6455615-打撃作業機 図000007
  • 特許6455615-打撃作業機 図000008
  • 特許6455615-打撃作業機 図000009
  • 特許6455615-打撃作業機 図000010
  • 特許6455615-打撃作業機 図000011
  • 特許6455615-打撃作業機 図000012
  • 特許6455615-打撃作業機 図000013
  • 特許6455615-打撃作業機 図000014
  • 特許6455615-打撃作業機 図000015
  • 特許6455615-打撃作業機 図000016
  • 特許6455615-打撃作業機 図000017
  • 特許6455615-打撃作業機 図000018
  • 特許6455615-打撃作業機 図000019
  • 特許6455615-打撃作業機 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6455615
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】打撃作業機
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20190110BHJP
【FI】
   B25B21/02 G
   B25B21/02 F
【請求項の数】12
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-30188(P2018-30188)
(22)【出願日】2018年2月22日
(62)【分割の表示】特願2016-571904(P2016-571904)の分割
【原出願日】2016年1月8日
(65)【公開番号】特開2018-86723(P2018-86723A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2018年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-17758(P2015-17758)
(32)【優先日】2015年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-141594(P2015-141594)
(32)【優先日】2015年7月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 卓宏
(72)【発明者】
【氏名】東海林 潤一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 翔太
(72)【発明者】
【氏名】益子 弘識
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕太
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−220569(JP,A)
【文献】 特開平7−116969(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/162862(WO,A1)
【文献】 特開2000−317854(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0276168(US,A1)
【文献】 実開平1−170570(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/02
B25D 15/00 − 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータにより駆動され、かつ、作業工具を支持する工具支持部材と、前記工具支持部材に回転方向の打撃力を加えるハンマと、を備えた打撃作業機であって、
前記工具支持部材と同心状に配置され、かつ、前記ハンマを前記工具支持部材に対して軸線方向及び回転方向に移動可能に支持するとともに、前記モータの動力を前記工具支持部材に伝達する回転部材と、
前記ハンマを前記軸線に沿った方向で前記工具支持部材に近づく向きで押圧するハンマスプリングと、
前記モータの回転数を制御する制御部と、
前記制御部に接続され、かつ、作業者によって操作されるスイッチと、
を備え、
前記工具支持部材に対する前記ハンマの回転方向で、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃した第1位置から、前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力に抗して前記工具支持部材から離れる向きで前記軸線方向に移動した後、前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力によって前記工具支持部材に近づく向きで前記軸線方向に移動して、前記工具支持部材を再び打撃する第2位置に前記ハンマが至るように構成され、
前記スイッチを操作すると、前記工具支持部材に対して前記ハンマが前記第1位置から前記第2位置に至るまでの前記ハンマの回転角度を変更可能である、打撃作業機。
【請求項2】
モータと、前記モータにより駆動され、かつ、作業工具を支持する工具支持部材と、前記工具支持部材に回転方向の打撃力を加えるハンマと、を備えた打撃作業機であって、
前記工具支持部材と同心状に配置され、かつ、前記ハンマを前記工具支持部材に対して軸線方向及び回転方向に移動可能に支持するとともに、前記モータの動力を前記工具支持部材に伝達する回転部材と、
前記ハンマを前記軸線方向に押圧するハンマスプリングと、
前記モータの回転数を制御する制御部と、
前記制御部に接続され、かつ、作業者によって操作されるスイッチと、
を備え、
前記工具支持部材に対する前記ハンマの回転方向で、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃した第1位置から、前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力に抗して前記工具支持部材から離れる向きで前記軸線方向に移動した後、前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力によって前記工具支持部材に近づく向きで前記軸線方向に移動して、前記工具支持部材を再び打撃する第2位置に前記ハンマが至るように構成され、
前記スイッチを操作すると、前記工具支持部材に対して前記ハンマが前記第1位置から前記第2位置に至るまでの前記ハンマの回転角度が異なるモードを選択可能である、打撃作業機。
【請求項3】
前記ハンマは、回転方向で互いに等角度をおいて配置される複数個の第1係合部を備え、
前記工具支持部材は、回転方向に互いに等角度をおいて配置され、かつ、前記複数個の第1係合部により別々に打撃される複数個の第2係合部を備え、
前記スイッチを操作すると、前記モータの回転数が異なる複数の駆動モードを切り替えて選択可能であり、
前記駆動モードは、
前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力に抗して前記工具支持部材から離れる向きで前記軸線方向に移動して前記第1係合部が前記第2係合部を1個越え、前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力によって前記工具支持部材に近づく向きで前記軸線方向に移動して前記第2係合部を打撃する第1のモードと、
前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力に抗して前記工具支持部材から離れる向きで前記軸線方向に移動して前記第1係合部が前記第2係合部を2個越え、前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力によって前記工具支持部材に近づく向きで前記軸線方向に移動して前記第2係合部を打撃する第2のモードと、
を有する、請求項1または2に記載の打撃作業機。
【請求項4】
前記スイッチを操作すると、前記モータの回転数が異なる複数の駆動モードを切り替えて選択可能であり、
前記複数の駆動モードは、
前記モータの回転数が第1回転数に制御されることにより、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記ハンマが前記工具支持部材を第1の回数打撃する第1のモードと、
前記モータの回転数が前記第1回転数より高い第2回転数に制御されることにより、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記ハンマが前記第1の回数より少ない第2の回数打撃する第2のモードと、
を有する、請求項1または2に記載の打撃作業機。
【請求項5】
前記第2回転数は、前記第1回転数より高い、請求項3に記載の打撃作業機。
【請求項6】
前記ハンマは、前記回転方向で互いに等角度をおいて配置される3個の第1係合部を備え、
前記工具支持部材は、前記回転方向で互いに等角度をおいて配置され、かつ、前記3個の第1係合部により別々に打撃される3個の第2係合部を備えている、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の打撃作業機。
【請求項7】
前記スイッチの操作により前記第1のモードが選択されると、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記第1係合部は前記第2係合部を3回打撃し、
前記スイッチの操作により前記第2のモードが選択されると、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記第1係合部は前記第2係合部を1.5回打撃するように構成した、請求項6に記載の打撃作業機。
【請求項8】
前記モータは、電圧が印加されて動力を発生する電動モータであり、
前記制御部は、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃する回数を変更し、
前記制御部は、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃する動作が開始された後に、前記電動モータに印加する電圧を制御して前記モータの回転数を上昇させることにより、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃する回数を減少させる、請求項3乃至7のいずれか1項に記載の打撃作業機。
【請求項9】
前記モータは、電圧が印加されて動力を発生する電動モータであり、
前記制御部は、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃する回数を変更し、
前記制御部は、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃する動作が開始された後に、前記電動モータに印加する電圧を制御して前記モータの回転数を低下させることにより、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃する回数を増加する、請求項3乃至7のいずれか1項に記載の打撃作業機。
【請求項10】
前記制御部は、前記ハンマが前記工具支持部材を複数回打撃した後に、前記電動モータに印加する電圧を上昇させて前記モータの回転数を上昇させる、請求項8または9に記載の打撃作業機。
【請求項11】
前記制御部は、前記回転部材の回転数を上昇させた後に、更に前記回転部材の回転数を変更可能である、請求項10に記載の打撃作業機。
【請求項12】
前記モータに電圧を印加する蓄電池を有し、
前記蓄電池の電圧が所定値以上の場合には、前記スイッチの操作によって設定された前記第1のモードまたは前記第2のモードで前記モータを駆動し、
前記蓄電池の電圧が前記所定値未満の場合には、前記第1のモードで前記モータを駆動するように構成した、請求項8乃至11のいずれか1項に記載の打撃作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンマで工具支持部材に回転方向の打撃力を加える打撃作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの回転力をハンマに伝達して、ハンマで工具支持部材に回転方向の打撃力を加える打撃作業機が知られており、その打撃作業機が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された打撃作業機は、ハウジングと、ハウジング内に設けたモータと、モータの回転力が伝達されるスピンドルと、スピンドルの外周面に設けた第1カム溝と、スピンドルの外周に取り付けられた円筒状のハンマと、ハンマに設けられた第1係合部と、ハンマの内周面に設けられた第2カム溝と、第1カム溝及び第2カム溝により保持されたカムボールと、ハウジングにより回転可能に支持された工具支持部材と、工具支持部材に設けられた第2係合部と、ハンマを工具支持部材に向けて押し付ける弾性部材としてのばねと、を備えている。工具支持部材に締め付け工具が取り付けられる。締め付け工具に、ねじ部材の頭部が入る凹部が設けられる。
【0003】
モータの回転力がスピンドルに伝達されると、その回転力はカムボールを介してハンマに伝達され、かつ、第1係合部及び第2係合部を介して工具支持部材に伝達され、ねじ部材が締め付けられる。ねじ部材を締め付けるために必要な回転力が低い場合は、ハンマはスピンドルの軸線方向に移動することはなく、第1係合部は第2係合部を乗り越えない。
【0004】
これに対して、ねじ部材を締め付けるために必要な回転力が増加すると、ハンマは弾性部材の力に抗して、工具支持部材から離れる向きでスピンドルの軸線方向に移動し、第1係合部は第2係合部を乗り越える。次いで、ハンマは弾性部材の力で工具支持部材に近づく向きでスピンドルの軸線方向に移動し、第1係合部が第2係合部を打撃する。このようにして、ハンマから工具支持部材に回転方向の打撃力が加えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−88264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された打撃作業機においては、ハンマから工具支持部材に加えられる回転方向の打撃力が不十分となる場合があり、未だ改善の余地があった。例えば、特許文献1に記載された打撃作業機において、打撃力を増加させるためには、弾性部材のばね定数等を高くする必要がある。すると、第1係合部を第2係合部から離脱させるために必要なトルクが、結果的に高くなり、ねじ締め作業がしにくくなるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、ハンマから工具支持部材に加えられる回転方向の打撃力を増加することの可能な、打撃作業機を提供することにある。また、第1係合部を第2係合部から離脱させるために必要なトルクを高くすることなく、打撃力を増加することの可能な、打撃作業機を提供することにある。さらに、ねじ部材の締め付けを速くすることの可能な打撃作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態の打撃作業機は、モータと、前記モータにより駆動され、かつ、作業工具を支持する工具支持部材と、前記工具支持部材に回転方向の打撃力を加えるハンマと、を備えた打撃作業機であって、前記工具支持部材と同心状に配置され、かつ、前記ハンマを前記工具支持部材に対して軸線方向及び回転方向に移動可能に支持するとともに、前記モータの動力を前記工具支持部材に伝達する回転部材と、前記ハンマを前記軸線に沿った方向で前記工具支持部材に近づく向きで押圧するハンマスプリングと、前記モータの回転数を制御する制御部と、前記制御部に接続され、かつ、作業者によって操作されるスイッチと、を備え、前記工具支持部材に対する前記ハンマの回転方向で、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃した第1位置から、前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力に抗して前記工具支持部材から離れる向きで前記軸線方向に移動した後、前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力によって前記工具支持部材に近づく向きで前記軸線方向に移動して、前記工具支持部材を再び打撃する第2位置に前記ハンマが至るよう構成され、前記スイッチを操作すると、前記工具支持部材に対して前記ハンマが前記第1位置から前記第2位置に至るまでの前記ハンマの回転角度を変更可能である。
【0009】
他の実施形態の打撃作業機は、モータと、前記モータにより駆動され、かつ、作業工具を支持する工具支持部材と、前記工具支持部材に回転方向の打撃力を加えるハンマと、を備えた打撃作業機であって、前記工具支持部材と同心状に配置され、かつ、前記ハンマを前記工具支持部材に対して軸線方向及び回転方向に移動可能に支持するとともに、前記モータの動力を前記工具支持部材に伝達する回転部材と、前記ハンマを前記軸線方向に押圧するハンマスプリングと、前記モータの回転数を制御する制御部と、前記制御部に接続され、かつ、作業者によって操作されるスイッチと、備え、前記工具支持部材に対する前記ハンマの回転方向で、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃した第1位置から、前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力に抗して前記工具支持部材から離れる向きで前記軸線方向に移動した後、前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力によって前記工具支持部材に近づく向きで前記軸線方向に移動して、前記工具支持部材を再び打撃する第2位置に前記ハンマが至るよう構成され、前記スイッチを操作すると、前記工具支持部材に対して前記ハンマが前記第1位置から前記第2位置に至るまでの前記ハンマの回転角度が異なるモードを選択可能である。
【0010】
また、前記ハンマは、回転方向で互いに等角度をおいて配置される複数個の第1係合部を備え、前記工具支持部材は、回転方向に互いに等角度をおいて配置され、かつ、前記複数個の第1係合部により別々に打撃される複数個の第2係合部を備え、前記スイッチを操作すると、前記モータの回転数が異なる複数の駆動モードを切り替えて選択可能であり、前記駆動モードは、前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力に抗して前記工具支持部材から離れる向きで前記軸線方向に移動して前記第1係合部が前記第2係合部を1個越え、前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力によって前記工具支持部材に近づく向きで前記軸線方向に移動して前記第2係合部を打撃する第1のモードと、前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力に抗して前記工具支持部材から離れる向きで前記軸線方向に移動して前記第1係合部が前記第2係合部を2個越え、前記ハンマが前記ハンマスプリングの押圧力によって前記工具支持部材に近づく向きで前記軸線方向に移動して前記第2係合部を打撃する第2のモードと、を有する。
【0011】
また、前記スイッチを操作すると、前記モータの回転数が異なる複数の駆動モードを切り替えて選択可能であり、前記複数の駆動モードは、前記モータの回転数が第1回転数に制御されることにより、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記ハンマが前記工具支持部材を第1の回数打撃する第1のモードと、前記モータの回転数が前記第1回転数より高い第2回転数に制御されることにより、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記ハンマが前記第1の回数より少ない第2の回数打撃する第2のモードと、を有する。
【0012】
さらに、前記第2回転数は、前記第1回転数より高い。
さらに、前記ハンマは、前記回転方向で互いに等角度をおいて配置される3個の第1係合部を備え、前記工具支持部材は、前記回転方向で互いに等角度をおいて配置され、かつ、前記3個の第1係合部により別々に打撃される3個の第2係合部を備えている。
【0013】
さらに、前記スイッチの操作により前記第1のモードが選択されると、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記第1係合部は前記第2係合部を3回打撃し、前記スイッチの操作により前記第2のモードが選択されると、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記第1係合部は前記第2係合部を1.5回打撃するように構成した。
【0014】
さらに、前記モータは、電圧が印加されて動力を発生する電動モータであり、前記制御部は、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃する回数を変更し、前記制御部は、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃する動作が開始された後に、前記電動モータに印加する電圧を制御して前記モータの回転数を上昇させることにより、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃する回数を減少させる。
さらに、前記モータは、電圧が印加されて動力を発生する電動モータであり、前記制御部は、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃する回数を変更し、前記制御部は、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃する動作が開始された後に、前記電動モータに印加する電圧を制御して前記モータの回転数を低下させることにより、前記ハンマが前記工具支持部材に対して1回転する間に、前記ハンマが前記工具支持部材を打撃する回数を増加する。
【0015】
さらに、前記制御部は、前記ハンマが前記工具支持部材を複数回打撃した後に、前記電動モータに印加する電圧を上昇させて前記モータの回転数を上昇させる。
さらに、前記制御部は、前記回転部材の回転数を上昇させた後に、更に前記回転部材の回転数を変更可能である。
さらに、前記モータに電圧を印加する蓄電池を有し、前記蓄電池の電圧が所定値以上の場合には、前記スイッチの操作によって設定された前記第1のモードまたは前記第2のモードで前記モータを駆動し、前記蓄電池の電圧が前記所定値未満の場合には、前記第1のモードで前記モータを駆動するように構成した。
【発明の効果】
【0016】
一実施形態の打撃作業機によれば、ハンマから工具支持部材に加えられる回転方向の打撃力を増加することができる。また、ねじ部材の締め付けを速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の打撃作業機のハウジングの内部構造を示す正面断面図である。
図2】本発明の打撃作業機に蓄電池を取り付けた部分的な正面図である。
図3図1の打撃作業機に用いるスピンドル、ハンマ、アンビルの組み立て状態を示す斜視図である。
図4】(A)は、図1の打撃作業機に用いるハンマ、アンビルの側面図、(B)は、スピンドル、ハンマ、アンビルの正面図である。
図5図3に示すスピンドル、ハンマ、アンビルの分解斜視図である。
図6】(A)は、図5に示すスピンドルの側面図、(B)は、図5に示すスピンドルの正面図である。
図7】スピンドルに設けたカム溝と、ハンマに設けたカム溝とを示す展開図である。
図8】本発明の打撃作業機の制御系統を示すブロック図である。
図9】打撃作業機の構成要素の諸元及び制御の例を示す図表である。
図10】本発明の打撃作業機に用いる電動モータの回転数の経時変化を示す線図である。
図11】本発明の打撃作業機で実行可能な制御例1のフローチャートである。
図12】本発明の打撃作業機において、電動モータの回転数と蓄電池の電圧との関係を示す線図である。
図13】(A),(B)は、ハンマの突起がアンビルの突起を打撃する動作を示す模式図である。
図14】本発明の打撃作業機で実行可能な制御例2のフローチャートである。
図15図14の制御例2に対応するタイムチャートである。
図16図14の制御例2に対応するタイムチャートである。
図17】本発明の打撃作業機で実行可能な制御例3のフローチャートである。
図18図17の制御例3に対応するタイムチャートである。
図19】(A)は、ハンマが1回転する間に突起を3回打撃する場合の軌跡であり、(B)は、ハンマが1回転する間に突起を1.5回打撃する場合の軌跡である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1及び図2に示す打撃作業機10は、ねじ部材を回転させて締め付け、相手材としての木材やコンクリートに固定する作業、ねじ部材を緩める作業に用いるインパクトドライバである。打撃作業機10は、中空のハウジング11を有しており、ハウジング11は、モータケース12と、モータケース12に連続するグリップ14と、を備えている。ハンマケース13が、モータケース12に固定されており、グリップ14に装着部15が設けられている。
【0020】
モータケース12内に電動モータ16が設けられている。電動モータ16は、電機子としてのステータ20と、界磁としてのロータ21と、を備えている。ステータ20は、モータケース12内に回転しないように設けられており、ステータ20は、ステータコア22と、ステータコア22に巻かれ、かつ、電流が供給される3本のコイル23U,23V,23Wを備えている。
【0021】
ロータ21は、出力軸17と、出力軸17に固定されたロータコア21Aと、ロータコア21Aの回転方向に沿って配置された複数個の永久磁石24と、を備えている。出力軸17は2個の軸受18,19により回転可能に支持されている。3本のコイル23U,23V,23Wに電流が供給されると回転磁界が形成され、ロータ21が回転する。複数個の永久磁石24は、極性が異なる永久磁石24を回転方向に沿って交互に配置してある。電動モータ16は、電流が流れるブラシを用いないブラシレス電動モータであり、電動モータ16は、3本のコイル23U,23V,23Wに供給する電流の向きをそれぞれ切り替えることにより、ロータ21の回転方向を切り替えることができる。
【0022】
ハウジング11内に、モータケース12内とハンマケース13内とを仕切る隔壁25が設けられている。隔壁25はハウジング11に対して回転しないように取り付けられている。隔壁25は軸受19を支持し、モータケース12は軸受18を支持している。ロータ21は軸線A1を中心として回転可能である。
【0023】
環状のハンマケース13は軸孔26を有しており、軸孔26に、円筒状のスリーブ30により回転可能に支持されたアンビル27が配置されている。アンビル27は金属製であり、かつ、軸線A1を中心として回転可能である。また、アンビル27は、ハンマケース13の内部から、モータケース12の外部に亘って設けられており、アンビル27に工具保持孔28が設けられている。工具保持孔28は、モータケース12の外に開口されている。工具保持孔28に、作業工具としてのドライバビット29が着脱される。
【0024】
また、アンビル27に、工具保持孔28と同心状に支持軸31が設けられている。支持軸31は、ハンマケース13内に配置されている。さらに、アンビル27の外周面において、ハンマケース13内に配置された箇所には、突起32が複数個設けられている。具体的には、3個の突起32が、アンビル27の回転方向に等角度の間隔、つまり、120度間隔で配置されている。3個の突起32は、図3図5のように、アンビル27の外周面から径方向に突出している。3個の突起32は、互いに平行な第1側面及び第2側面を備えている。第1側面及び第2側面は、アンビル27の径方向に沿って配置されている。アンビル27の回転方向で突起32の単体の幅は、アンビル27の径方向で一定である。
【0025】
一方、ハンマケース13内に減速機33が設けられている。減速機33は、軸線A1に沿った方向で、軸受19とアンビル27との間に配置されている。減速機33は、電動モータ16の回転力をアンビル27に伝達する動力伝達装置であり、減速機33はシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。
【0026】
減速機33は、出力軸17と同心状に配置されたサンギヤ34と、サンギヤ34の外周側を取り囲むように設けたリングギヤ35と、サンギヤ34及びリングギヤ35に噛み合わされた複数のピニオンギヤ36を自転、かつ、公転可能に支持したキャリヤ37と、を有する。サンギヤ34は中間軸38の外周面に形成されており、中間軸38は出力軸17と共に一体回転する。リングギヤ35は隔壁25に固定されており、かつ、回転しない。キャリヤ37は、軸受39により回転可能に支持されている。軸受39は隔壁25により支持されている。キャリヤ37は、図6(A),(B)のように環状である。
【0027】
また、キャリヤ37と共に軸線A1を中心として一体回転するスピンドル40が、ハンマケース13内に設けられている。スピンドル40は金属製であり、かつ、軸線A1に沿った方向でアンビル27と軸受39との間に配置されている。スピンドル40の軸線A1方向における端部に、支持孔41が形成されている。支持孔41へ支持軸31が挿入されており、スピンドル40とアンビル27とは、相対回転可能である。スピンドル40の外周面に、V字形状のカム溝42が2本設けられている。カム溝42は、傾斜縁42A,42Bを備え、2つの傾斜縁42A,42Bは、アンビル27に向けて凸となる形状である。傾斜縁42Aと直線B1との間に鋭角側のリード角θ1が形成される。傾斜縁42Bと直線B1との間に鋭角側のリード角θ1が形成される。直線B1は軸線A1に対して交差、つまり、直角である。
【0028】
また、ハンマケース13内に、金属製のハンマ43が収容されている。ハンマ43は環状であり、かつ、軸孔44を備えている。スピンドル40は軸孔44に配置されている。ハンマ43は、軸線A1に沿った方向で、減速機33とアンビル27との間に配置されている。ハンマ43は、スピンドル40に対して回転可能であり、かつ、軸線A1に沿った方向に移動可能である。
【0029】
ハンマ43は、外筒部45及び内筒部80を有しており、外筒部45は内筒部80の外側に配置されている。内筒部80の内周面にカム溝46が2個形成されている。2個のカム溝46は、ハンマ43の円周方向で互いに異なる範囲に配置されている。カム溝46は、図7のように三角形状であり、カム溝46は、軸線A1に沿った方向に延ばされ、かつ、互いに平行な側縁46A,46Bと、側縁46Aにつながる傾斜縁46Cと、側縁46Bにつながる傾斜縁46Dと、を有する、また、傾斜縁46Cと傾斜縁46Dとが湾曲部46Eを介してつながっている。湾曲部46Eは、アンビル27から離れる向きに凸となっている。直線C1と傾斜縁46Cとの間に鋭角側のリード角θ2が設定されている。直線C1と傾斜縁46Dとの間に鋭角側のリード角θ2が設定されている。リード角θ1とリード角θ2とは同じ値である。直線C1は軸線A1に対して交差し、かつ、直角である。
【0030】
そして、1本のカム溝42及び1個のカム溝46を1組として、1個のカムボール47が保持されている。このため、ハンマ43は、スピンドル40及びアンビル27に対して、カムボール47が転動可能な範囲で軸線A1に沿った方向に移動可能である。また、ハンマ43は、スピンドル40に対して、カムボール47が転動可能な範囲で回転可能である。
【0031】
さらに、ハンマ43は、外筒部45と内筒部80との間に形成した保持溝48を有する。保持溝48は減速機33に向けて開口されている。保持溝48は軸線A1を中心として環状に設けられている。さらに、保持溝48にハンマスプリング49が配置されている。ハンマスプリング49は金属製であり、圧縮荷重を受けて反発力を生じる。また、キャリヤ37に、環状のプレート50が取り付けられており、ハンマスプリング49の端部がプレート50に接触している。ハンマスプリング49は、軸線A1に沿った方向の荷重が加えられた状態で、プレート50とハンマ43との間に配置されている。ハンマスプリング49の押圧力はハンマ43に加えられ、ハンマ43は軸線A1に沿った方向でアンビル27に近づく向きで押されている。
【0032】
さらに、ハンマ43におけるアンビル27側の端部には、軸線A1に沿った方向に突出された突起51が複数個設けられている。突起51は、ハンマ43の回転方向に等角度の間隔で3個設けられている。つまり、3個の突起51は、互いに120度間隔で配置されている。ハンマ43の径方向で、3個の突起51が配置された範囲は、3個の突起32が配置された範囲と重なっている。3個の突起51は、ハンマ43の端面視で三角形状であり、いずれかの頂点51Aが、各突起51の内周端に配置されている。つまり、各突起51は、三角形の2辺に相当する第1側面及び第2側面を、それぞれ備えている。
【0033】
次に、打撃作業機10における電動モータ16の制御系統を、図1図2図8を参照して説明する。装着部15に着脱される蓄電池52が設けられている。装着部15に本体側端子53が設けられている。蓄電池52は、収容ケース52Aと、収容ケース52A内に収容した複数の電池セル52Bとを有する。電池セル52Bは、充電及び放電が可能な二次電池であり、電池セル52Bは、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケルカドミウム電池を用いることができる。蓄電池52は直流(DC:Direct Current)電源である。蓄電池52は、電池セル52Bの電極に接続された電池側端子54を有し、蓄電池52が装着部15に取り付けられると本体側端子53と電池側端子54とが接続される。
【0034】
蓄電池52の電流を電動モータ16に供給する経路に、インバータ回路55が設けられている。インバータ回路55は、3相ブリッジ形式に接続されたFET(Field effect transistor )からなる6個のスイッチング素子Q1〜Q6を備える。スイッチング素子Q1〜Q3は、蓄電池52の正極側にそれぞれ接続され、スイッチング素子Q4〜Q6は、蓄電池52の負極側にそれぞれ接続されている。軸受18と電動モータ16との間にインバータ回路基板56が設けられており、インバータ回路55は、インバータ回路基板56に設けられている。
【0035】
また、インバータ回路基板56に、ロータ21の回転位置を検出するロータ位置検出センサ57が設けられている。ロータ位置検出センサ57はホールICにより構成されており、ロータ位置検出センサ57は、インバータ回路基板56に対して、ロータ21の回転方向に所定の間隔毎、例えば、角度60度毎に3個配置されている。3個のロータ位置検出センサ57は、永久磁石24により形成される磁界をそれぞれ検出し、かつ、検出結果に応じた信号をそれぞれ出力する。
【0036】
また、装着部15内に制御回路基板58が設けられている。制御回路基板58にモータ制御部59が設けられている。モータ制御部59は、演算部60と、制御信号出力回路61と、モータ電流検出回路62と、電池電圧検出回路63と、ロータ位置検出回路64と、モータ回転数検出回路65と、制御回路電圧検出回路66と、スイッチ操作検出回路67と、印加電圧設定回路68と、を有している。
【0037】
ロータ位置検出センサ57から出力される信号は、ロータ位置検出回路64に入力され、ロータ位置検出回路64はロータ21の回転位相を検出し、ロータ位置検出回路64から出力された信号は演算部60に入力される。
【0038】
演算部60は、処理プログラムとデータに基づいて、インバータ回路55への駆動信号を出力する中央処理装置(CPU)と、処理プログラムや制御データを記憶するためのROMと、データを一時記憶するためのRAMと、を含むマイクロコンピュータである。
【0039】
蓄電池52からインバータ回路55に電力を供給する経路に抵抗Rsが配置されており、モータ電流検出回路62は、抵抗Rsの電圧降下から、電動モータ16に供給される電流値を検出し、検出信号を演算部60へ出力する。電池電圧検出回路63は、蓄電池52からインバータ回路55に供給される電圧を検出し、検出信号を演算部60へ出力する。
【0040】
ロータ位置検出回路64は、各ロータ位置検出センサ57の出力信号を受けて、ロータ21の位置信号を演算部60及びモータ回転数検出回路65へ出力する。モータ回転数検出回路65は、入力される位置信号からロータ21の回転数を検出し、その検出結果を演算部60へ出力する。
【0041】
蓄電池52の電圧は、制御回路電圧供給回路69を介して所定電圧値でモータ制御部59の全体に供給される。また、制御回路電圧検出回路66は、制御回路電圧供給回路69を介してモータ制御部59に供給される蓄電池52の電圧を検出し、検出結果を演算部60へ出力する。
【0042】
また、装着部15の外面にタクタイルスイッチ71が設けられており、作業者がタクタイルスイッチ71を操作してモードを選択することで、電動モータ16の目標回転数を設定することができる。目標回転数は、単位時間あたりにおけるロータ21の回転数である。電動モータ16の目標回転数を設定するモードは、例えば、低速モード、中速モード、高速モードの3段階に切り替え可能である。中速モードで設定される目標回転数は、低速モードで設定される目標回転数よりも高く、高速モードで設定される目標回転数は、中速モードで設定される目標回転数よりも高い。タクタイルスイッチ71の操作で設定された目標回転数は、スイッチ操作検出回路67により検出され、スイッチ操作検出回路67から出力された信号は、演算部60に入力される。さらに、印加電圧設定回路68は、目標回転数に応じて電動モータ16に印加する電圧を設定し、演算部60へ信号を入力する。
【0043】
さらに、回転方向切替スイッチ72が設けられており、作業者は回転方向切替スイッチ72を操作して、電動モータ16の回転方向を切り換える。回転方向切替スイッチ72から出力される信号は、演算部60に入力される。グリップ14にトリガ73及びDCスピードコントロールスイッチ74が設けられている。DCスピードコントロールスイッチ74は、作業者がトリガ73の操作でオンまたはオフされる。DCスピードコントロールスイッチ74がオンまたはオフされる信号は、演算部60へ入力される。
【0044】
演算部60は、各種の回路及び各種のスイッチから入力される信号に基づいて、電動モータ16のコイル23U,23V,23Wに供給する電流の向き、インバータ回路55のスイッチング素子Q1〜Q6のオン・オフタイミング、スイッチング素子Q1〜Q6のオン割合いとしてのデューティ比を求め、その信号を制御信号出力回路61へ出力する。
【0045】
演算部60は、トリガ73を操作してDCスピードコントロールスイッチ74がオンすると、ロータ位置検出回路64の位置検出信号に基づいて、所定のスイッチング素子Q1〜Q3を、それぞれ交互にオン・オフ動作するスイッチング制御を実行するための駆動信号、所定のスイッチング素子Q4〜Q6をそれぞれスイッチング制御するためのパルス変調幅信号を形成して制御信号出力回路61に出力する。
【0046】
制御信号出力回路61は、演算部60からの駆動信号に基づいて、スイッチング素子Q1のゲートにスイッチング素子駆動信号を出力し、スイッチング素子Q2のゲートにスイッチング素子駆動信号を出力し、スイッチング素子Q3のゲートにスイッチング素子駆動信号を出力し、スイッチング素子Q4のゲートにパルス幅変調信号を出力し、スイッチング素子Q5のゲートにパルス幅変調信号を出力し、スイッチング素子Q6のゲートにパルス幅変調信号を出力する。つまり、3個のスイッチング素子Q1〜Q3は、スイッチング素子駆動信号により別々にオン・オフされ、3個のスイッチング素子Q4〜Q6は、パルス幅変調信号により別々にオン・オフされ、そのオン割合であるデューティ比が制御される。
【0047】
この制御により、コイル23U,23V,23Wのそれぞれに、所定の通電の向き、所定の通電タイミング、所定の期間で交互に通電が行われ、ロータ21が、目標回転方向及び目標回転数で回転される。目標回転方向は、作業者が回転方向切替スイッチ72を操作して設定し、目標回転数は、作業者がタクタイルスイッチ71を操作して設定する。
【0048】
上記の制御により、6個のスイッチング素子Q1〜Q6の各ドレインまたは各ソースは、スター結線されたコイル23U,23V,23Wに別個に接続または遮断される。インバータ回路55に印加される電圧は、U相に対応する電圧Vuとしてコイル23Uに供給され、V相に対応する電圧Vvとしてコイル23Vに供給され、W相に対応する電圧Vwとしてコイル23Wに供給される。また、演算部60は、目標回転数に応じてPWM(Pulse Width Modulation)信号のパルス幅、つまり、デューティ比を変化させる。なお、トリガ73の操作量に応じてPWM信号のデューティ比を変化させれば、ロータ21の回転数を調整することができる。
【0049】
また、演算部60は、モータ回転数検出回路65から入力される信号に基づいて、ロータ21の実際の回転数を検出する。そして、演算部60は、パルス幅変調信号のデューティ比を制御して、ロータ21の実際の回転数を目標回転数に近づけるように、フィードバック制御を実行する。デューティ比を変更してロータ21の実際の回転数を変更する場合、印加電圧設定回路68で設定される印加電圧は、一定であるものとする。なお、トリガ73の操作が解除されてDCスピードコントロールスイッチ74がオフすると、インバータ回路55のスイッチング素子Q1〜Q6が、常時オフされ、電流はコイル23U,23V,23Wに供給されず、ロータ21は停止する。
【0050】
また、ハウジング11または装着部15に表示部70が設けられており、表示部70は液晶ディスプレイまたはランプにより構成されている。演算部60から表示部70に表示信号が出力される。作業者は、表示部70を目視して、電動モータ16を制御するモード、ロータ21の実際の回転数、蓄電池52の電圧を確認可能である。
【0051】
ここで、打撃作業機10の構成要素の諸元及び制御の例を、図9を参照して説明する。蓄電池52の定格電圧は、タクタイルスイッチ71で設定されるモードに関わりなく、18Vである。なお、蓄電池52の満充電状態における電圧は21.5Vである。インバータ回路55のスイッチング素子Q1〜Q6を制御するデューティ比は、高速モードで90〜100%、中速モードで55〜65%、低速モードで15〜25%に設定される。ロータ21の目標回転数は、高速モードで23,000rpm に設定され、中速モードで14,000rpm に設定され、低速モードで4,000rpmに設定される。
【0052】
ハンマ43のイナーシャはモードに関わりなく0.37kg・cm2 であり、リード角θ1,θ2は、モードに関わりなく、共に32.00[deg ]に設定され、ハンマスプリング49のばね定数は、モードに関わりなく33.54kgf /cmに設定される。また、図4(B)に示すように、突起32と突起51とが係合する長さL1は3.4mmである。長さL1は、軸線A1に沿った方向で、突起32と突起51とが係合する幅の最大値である。
【0053】
次に、打撃作業機10の使用例を説明する。電動モータ16のロータ21が回転すると、出力軸17の回転力は、減速機33のサンギヤ34に伝達される。サンギヤ34に回転力が伝達されると、リングギヤ35が反力要素となり、キャリヤ37が出力要素となる。すなわち、サンギヤ34の回転力がキャリヤ37に伝達されるとき、サンギヤ34の回転速度に対してキャリヤ37の回転速度が減速されることで、回転力が増幅される。なお、減速機33は、入力要素としてのサンギヤ34と、出力要素としてのキャリヤ37との間の変速比が一定であり、変速比を変更できない。
【0054】
キャリヤ37に回転力が伝達されると、スピンドル40はキャリヤ37と共に一体回転し、スピンドル40の回転力は、カムボール47を介してハンマ43に伝達される。すると、ハンマ43が回転を開始した位置から、1/3回転する前に突起51と突起32とが係合し、ハンマ43の回転力がアンビル27に伝達される。そして、ハンマ43と、アンビル27とが一体回転し、アンビル27の回転力はドライバビット29を介して対象物に伝達され、ねじ部材が締め付けられる。
【0055】
その後、ねじ部材の締め付けが行われて、アンビル27を回転させるために必要な回転力が高くなると、スピンドル40の回転速度がハンマ43の回転速度を超えて、スピンドル40がハンマ43に対して回転する。アンビル27を回転させるために必要な回転力は、ねじ部材の太さまたは長さが大きくなる程増加する。スピンドル40がハンマ43に対して回転すると、カムボール47とカム溝46との接触面で生じる反力により、ハンマ43がハンマスプリング49の押圧力に抗して、アンビル27から離れる向きで軸線A1に沿った方向に移動する。ハンマ43がアンビル27から離れる向きで移動することを後退と呼ぶ。ハンマ43が後退すると、ハンマスプリング49が受ける圧縮荷重が増加し、ハンマスプリング49の反発力が増加する。
【0056】
ハンマ43が後退して突起51が突起32から離れると、ハンマ43の回転力はアンビル27に伝達されなくなるとともに、突起51が突起32を乗り越える。突起51が突起32を乗り越えた時点で、ハンマスプリング49がハンマ43に加える押圧力は、ハンマ43を後退させる向きの力を超える。すると、カムボール47がカム溝42,46に沿って転動することで、ハンマ43がスピンドル40に対して回転し、かつ、ハンマ43はアンビル27に近づく向きで移動する。ハンマ43がアンビル27に近づく向きで移動することを前進と呼ぶ。その後、ハンマ43の突起51が、アンビル27の突起32に衝突し、アンビル27に回転方向の打撃力が加えられる。
【0057】
以後、ロータ21が回転している間、上記の作用を繰り返し、打撃作業機10によるねじ部材の締め付け作業が継続される。なお、電動モータ16のロータ21の回転方向が、ねじ部材を締め付ける場合とは逆になると、ねじ部材が緩められる。
【0058】
打撃作業機10は、ハンマ43がアンビル27に対して1回転、つまり、360度回転する間に、突起51が突起32に衝突する打撃回数を変更することができる。ハンマ43の突起51は3個あり、アンビル27の突起32は3個あり、各突起51がそれぞれ各突起32を同時に打撃する。
【0059】
そして、低速モードまたは中速モードが選択されていると、図13(A)に示すように、ハンマ43の突起51が、アンビル27の実線で示す突起32を1個越えると、越えた突起32の隣に位置する破線で示す突起32を打撃する。このため、ハンマ43が1回転する間の打撃回数は、図9のように3.0回である。
【0060】
一方、高速モードが選択されていると、図13(B)に示すように、ハンマ43の突起51がアンビル27の突起32を2個越える。つまり、突起51は、打撃した実線で示す突起32と、打撃した突起32の隣に位置する破線で示す突起32を越え、回転方向で越えた突起32の前方に位置する、実線で示す突起32を打撃する。このように、ハンマ43が1回転する間の打撃回数は1.5回である。この打撃回数は、ハンマ43が2回転する間における打撃回数3回に1/2を乗算して求めた値である。
【0061】
図13では、横軸にハンマ43の回転方向の位置が示され、縦軸に軸線A1方向の位置が示されている。図13(A),(B)では、突起32,51が、共に四角形で表されている。また、一点鎖線は、ハンマ43の回転方向で突起51の後方の角部51aの移動軌跡を表す延長線である。また、二点鎖線は、ハンマ43の回転方向で突起51の前方の角部51bの移動軌跡を表す延長線である。
【0062】
このように、ロータ21の目標回転数が変化すると、打撃回数が異なる理由は、以下の通りである。その理由は、ロータ21の目標回転数が変更されてロータ21の実際の回転数が上昇すると、ハンマ43の回転速度が高くなるからである。つまり、ハンマ43の回転方向において、ハンマ43が後退を開始する回転方向の第1位置から、ハンマ43が前進して突起51が突起32を打撃する第2位置に至るまでの回転角度は、ロータ21の実際の回転数が高いほど大きくなる。ハンマ43が、第1位置から第2位置まで至る際の回転角度は、低速モードまたは中速モードが選択されていると60度である。ハンマ43が、第1位置から第2位置まで至る際の回転角度は、高速モードが選択されていると120度である。また、ロータ21の回転数が高いほど回転力も高い。
【0063】
そして、ハンマ43がアンビル27を打撃する時の打撃エネルギは、各種の条件、例えば、リード角θ1,θ2、ハンマ43の回転力、ハンマ43の回転速度、ハンマスプリング49のばね定数、ハンマ43のイナーシャにより定まる。そして、打撃エネルギは、ハンマ43の回転速度が高いほど大きくなる。したがって、ねじ部材を締め付けるために必要な回転力に応じて、目標回転数を変更することで、打撃作業機10で生じる打撃力不足を回避できる。すなわち、高速モードが選択されている場合の打撃エネルギは、低速モードまたは中速モードが選択されている場合の打撃エネルギよりも大きくなる。
【0064】
電動モータ16の回転数の経時変化の例を、図10を参照して説明する。図10は、時刻t0で電動モータ16が回転を開始し、時刻t1で実際の回転数が、各モードにおける目標回転数に到達する例を示す。電動モータ16の実際の回転数が所定値N1以下における打撃回数は3.0回であり、電動モータ16の実際の回転数が所定値N1を超えると、打撃回数は1.5回である。所定値N1は回転数14,000rpm よりも高く、かつ、回転数23,000rpm よりも低い。
【0065】
なお、図9及び図10を参照して説明した打撃回数は、ハンマ43の1個の突起51が、アンビル27の1個の突起32を打撃することを示している。この場合、低速モードまたは中速モードが選択されていると、ハンマ43の突起51がアンビル27の突起32を1個越えると、越えた突起32の隣に位置する突起32を打撃する。つまり、ハンマ43が1回転する間の打撃回数は3回である。打撃回数3回は、ハンマ43が2回転する間の打撃回数6に1/2を乗算して求めた値である。つまり、本実施例では、ハンマ43が1回転する間の打撃回数を求めている。
【0066】
一方、高速モードが選択されていると、ハンマ43の突起51がアンビル27の突起32を2個越え、回転方向で越えた突起32の前方に位置する突起32を打撃する。つまり、ハンマ43が1回転する間の打撃回数は1.5回、すなわち、ハンマ43が2回転する間の打撃数が3回となる。また、ハンマ43からアンビル27に加わる打撃力、つまり、回転方向の衝撃トルクは、打撃回数1.5回の場合の方が、打撃回数3回の場合よりも高い。これは、突起51が突起32を越えてから、次の突起32に衝突するまでの周長が相対的に長いからである。なお、本明細書に記載されている打撃力、衝撃トルクは、瞬間的に発生する大きな回転力を意味する。また、ねじ部材を締め付けるために必要な回転力は、作業負荷と呼ぶこともできる。
【0067】
(制御例1)
次に、モータ制御部59が実行する制御例1を、図11のフローチャートを参照して説明する。モータ制御部59は、ステップS1で作業者がタクタイルスイッチ71を操作して決定したモードを判別する。モータ制御部59は、ステップS2でトリガ73が操作されDCスピードコントロールスイッチ74がオンされたことを検知すると、電動モータ16を回転する。つまり、ねじ部材の締め付けが開始される。
【0068】
モータ制御部59は、ステップS3でボルトの締め付けか、ビスの締め付けかを判断する。ビスは、木ねじとも呼ばれる。ねじ部材がボルトであるかビスであるかにより、モータ電流検出回路62で検出される実効電流値が異なる。これは、ボルトの径はねじ部材の径よりも太く、ボルトの回転抵抗はビスの回転抵抗よりも大きいからである。すなわち、ボルトを締め付ける際の実効電流値は、ビスを締め付ける際の実効電流値よりも高い。
【0069】
さらに、ねじ部材の径以外の条件により実効電流値が異なるため、実効電流値に基づいて、ビスとボルトとを判別することも可能である。例えば、ビスの外周面に雄ねじが設けられており、ビスは、雌ねじが設けられていない相手材に対して固定される。つまり、ビスは回転中に相手の一部を削るか、または塑性変形させながら相手材に食い込む。これに対して、ボルトは外周面に雄ねじが設けられており、ボルトは、雌ねじが設けられた相手材に対して固定される。つまり、ボルトの雄ねじと相手材の雌ねじとが噛み合いながら、ボルトが回転する。
【0070】
このため、ボルトを締め付ける場合の作業負荷は、ねじ部材を締め付ける場合の作業負荷よりも小さい。また、ボルトの軸部にスプリングワッシャが取り付けられていると、ボルトを回転させるために必要な回転力は、ビスに比べて更に大きくなる加する。このように、ビスとボルトとを比べると、必要な回転力が異なり、かつ、実効電流値も異なる。なお、ボルトが固定される相手材は、雌ねじを有するナットと、雌ねじが形成された構造物と、を含む。構造物は、壁、床、天井、ハウジング、ブラケットを含む。
【0071】
また、モータ制御部59は、ステップS4において、ステップS1で決定されたモードに応じて設定する。各モードにおけるロータ21の目標回転数は、図9に示す通りであり、各モードでハンマ43が1回転する間にアンビル27を打撃する回数は、図9に示す通りである。
【0072】
さらにモータ制御部59は、ステップS4で電動モータ16の回転数を制御するにあたり、ステップS3の判別結果を利用することもできる。上記のように、ボルトを締め付ける場合の実効電流値は、ビスを締め付ける場合の実効電流値よりも高い。このため、ボルトの締付時には、インバータ回路55の耐久性が低下する可能性がある。この不都合を回避するため、ボルトの締付けによりインバータ回路55の耐久性が低下しないように、打撃パワーを抑制すると、実効電流の低いビスの締め付け時に、打撃パワーが不足する可能性がある。
【0073】
そこで、ステップS4で中速モードまたは高速モードでロータ21の回転数を制御するにあたり、ねじ部材がボルトであるかビスであるかの判別結果に応じて、ロータ21の回転数を制御すれば、決定したモードと、締め付けるねじ部材の種類とが適合しない場合でも、ボルトの締め付け時におけるインバータ回路55の耐久性の低下を抑制でき、かつ、ビスの締め付け時における電動モータ16のパワー不足を防止できる。
【0074】
例えば、ステップS4において、高速モードでは、ボルトを締め付ける際にロータ21の実際の回転数の上昇勾配が緩やかな第1制御を実行し、ビスを締め付ける場合に、ロータ21の実際の回転数の上昇勾配が急激な第2制御を実行可能である。ちなみに、第1制御を実行する仕様の打撃作業機10は、作業者が使い易い。これに対して、第2制御を実行する仕様の打撃作業機10は、第1制御を実行する仕様の打撃作業機10に比べてビスの締め速度が速く、高性能である。
【0075】
また、モータ制御部59は、高速モードが選択されているとステップS5で以下の制御を行う。モータ制御部59は、ステップS5で蓄電池52の電圧が所定値以下に低下すると、ロータ21の目標回転数を14,000rpm に設定または変更する。所定値は、実現可能なロータ21の回転数の最大値が23,000rpm となる電圧である。モータ制御部59が、ステップS5の制御を行う理由は、以下の通りである。
【0076】
高速モードが選択されている場合に、ロータ21の回転数が21,000rpm 以下になると、ハンマ43が1回転する間に突起51が突起32を2個乗り越えることができず、突起51が、乗り越えるべき2個目の突起32の角部分に接触する可能性がある。すると、突起51が乗り越えるべき突起32に接触した際の衝撃で打撃作業機10が振動し、操作性が低下する可能性がある。突起51が、乗り越えるべき2個目の突起32に接触することとなるロータ21の回転数を、打撃不良エリアと呼ぶ。そこで、蓄電池52の電圧が所定値以下に低下した場合に、ステップS5のようにロータ21の目標回転数を14,000rpm に設定または変更すれば、ハンマ43が1回転する間の打撃回数が3.0回となる。つまり、突起51が突起32を1個ずつ乗り越え、突起51が乗り越えるべき突起32に接触することを回避できる。
【0077】
モータ制御部59は、ステップS6でトリガ73の操作が解除されDCスピードコントロールスイッチ74がオフされたことを検知すると、電動モータ16を停止し、図11のフローチャートを終了する。
【0078】
ステップS5の制御を、図12の線図を参照して説明する。ステップS5の判断に用いる所定値は17.5Vである。このため、電圧が17.5Vに低下すると、ロータ21の回転数は14,000rpm に制御される。したがって、蓄電池52の電圧が17.5Vよりも低い場合においては、本来、回転数としては21,000rpmとなる電圧である17.5V時に、回転数を14,000rpmに下げるため、結果として、デューティ比を大幅に小さくできるので、電圧21.5V〜18Vの範囲に比べて、蓄電池52の電圧が10Vに低下するまでの時間を長くできる利点がある。蓄電池52は電圧10V以下で停止し、電動モータ16を回転することができない。また、蓄電池52の電圧が17.5Vよりも低くなると、ロータ21の回転数は14,000rpmと低くなるものの、ハンマ43が1回転する間の打撃回数は3.0回になる。したがって、ビスの締め付けを開始した後のある時点から、ビスの締め付け完了時点までに要する時間を、なるべく短くすることができる。
【0079】
さらに、打撃作業機10は、ロータ21の回転数を制御するために、高速モード、中速モード、低速モードを備えている。このため、作業者は、ねじ部材の種類がビスかボルトかではなく、ねじ部材の長さに応じて各モードを選ぶこともできる。この場合、モータ制御部59は、図11のステップS3の判断と、判断結果に応じた制御と、は行わなくてもよい。例えば、長いビスを締め付ける場合に高速モードを選択すると、締め付けを開始してから締め付けを完了するまでの時間をなるべく短くでき、作業者はストレス無しでビスの締め付けができる。また、高速モードを選択して短いビスを締め付けることも可能である。つまり、作業者は、モードを切替えるのが面倒であれば、ビスの長さに関わりなく、高速モードを用いても支障はない。但し、高速モードを選択すると、ロータ21の回転数が早すぎて慣れていないと打撃作業機10を使いにくい。例えば、化粧版に対して短いビスを面一で締付ける作業等を行う際には使いにくい。
【0080】
これに対して、短いビスを締め付ける場合に、高速モードを選択すると使いにくいと感じた作業者は、中速モードに切り替えることも可能である。すなわち、上記のような高速モードでは使いにくい場合に中速モードを選択することが可能である。中速モードにおける電動モータ16のパワーは、高速モードにおける電動モータ16のパワーよりも低い。このため、打撃作業機10から作業者の手に伝わる振動も低く、かつ、ビスの締め付け速度は、高速モードに比べて中速モードの方が低いため、中速モードの方が作業者は打撃作業機10を使い易い。なお、単純にロータ21の回転数を低くしただけでは、ビスの締め付け速度は大幅に低下してしまうが、本発明では高速モードに比べて中速モードの打撃数を多くすることで、ビスの締め付け速度が大幅に低下することを防止している。
【0081】
このように、ハンマ43に突起51を3個設け、アンビル27に突起32を3個設け、かつ、低速、または、中速モードではハンマ43の突起51がアンビル27の突起32を1個越えた後に突起32を打撃し、一方、高速モードではハンマ43の突起51がアンビル27の突起32を2個越えた後に突起32を打撃することにより、ロータ21の回転数が大きく異なる2箇所の地点で、最適な打撃タイミングを得ることができる。この2箇所の地点とは、ロータ21の回転数が23,000rpmの地点とロータ21の回転数が14,000rpmの地点とを意味する。
【0082】
また、最適な打撃タイミングとは、ロータ21の回転数が速すぎることでハンマバック量が大きくなり、結果としてスピンドル40のカムエンドを打撃したり、或いは、ロータ21の回転数が遅すぎることでハンマバック量が小さくなり、結果としてプレヒットやオーバーシュートといった打撃不良状態にならずに、ハンマ43の突起51が所定のアンビル27の突起32を確実に打撃するという意味である。
【0083】
本実施形態において、リード角θ1、θ2は、24度〜34度の範囲内で任意に設定可能である。また、モータ制御部59は、高速モードにおける目標回転数を20,000rpm 〜25,000rpm の範囲内で任意に設定可能である。回転数25,000rpm は、高速モードの上限値である。さらに、モータ制御部59は、中速モードにおける目標回転数を11,000rpm 〜14,000rpm の範囲内で設定する。目標回転数14,000rpm は、中速モードの上限値である。
【0084】
また、モータ制御部59は、図11のステップS5で蓄電池52の電圧低下により、ロータ21の回転数が21,000rpm まで低下した際に、目標回転数を、高速モードの下限値と中速モードの上限値との間に1秒以上維持しないようにすることも可能である。つまり、モータ制御部59は、ロータ21の回転数が21,000rpm まで低下すると、瞬時に目標回転数を14,000rpm に設定または変更する。
【0085】
(制御例2)
さらに、モータ制御部59は、打撃作業機10でビスを締め付ける場合に図14の制御例2を実行可能である。モータ制御部59は、ステップS11で蓄電池52の電圧が17V以上か否かを判断する。ステップS11の判断に用いる電圧は、ハンマ43が1回転する間に打撃回数を1.5回にできるロータ回転数に基づいて定めた値である。つまり、17V以上の電圧を電動モータ16に印加してロータ21の回転数を制御すると、ハンマ43が1回転する間の打撃回数を1.5回にできる。これに対して、17V未満の電圧を電動モータ16に印加してロータ21の回転数を制御すると、電動モータ16のパワー不足により打撃不良、つまり、ハンマ43が突起32を同時に2個越えることができない現象が起きる可能性がある。
【0086】
モータ制御部59は、ステップS11でYesと判断すると、ステップS12に進み、トリガ73が操作されて電動モータ16を駆動するにあたり、ロータ21の目標回転数を10,000rpm に設定する。また、モータ制御部59は、ステップS12でインバータ回路のデューティ比を60%未満に設定する。ロータ21の目標回転数が10,000rpmに設定された状態で、ビスの締め付けを行うと、ハンマ43が1回転する間の打撃回数は3である。
【0087】
そして、モータ制御部59は、ステップS13において、モータ電流検出回路62で検出される実効電流値が、第1しきい値以上か否かを判断する。第1しきい値は、ビスの締め付けが行われている場合に、ロータ21の実回転数を目標回転数を10,000rpm に維持するために必要な電流値である。モータ制御部59は、ステップS13でNoと判断すると、ステップS12の制御を継続する。
【0088】
モータ制御部59は、ステップS13でYesと判断するとステップS14に進み、ロータ21の目標回転数を20,000rpm に設定して電動モータ16を駆動し、図14のフローチャートを終了する。また、モータ制御部59は、ステップS14でインバータ回路のデューティ比を60%以上に設定する。一方、モータ制御部59は、ステップS11でNoと判断するとステップS15に進み、トリガ73が操作されて電動モータ16を駆動するにあたり、モータ電流検出回路62で検出される実効電流値に関わりなく、ロータ21の目標回転数を10,000rpm に設定し、図14のフローチャートを終了する。
【0089】
図15は、図14のステップS11〜S14に対応するタイムチャートの例である。時刻t11でトリガスイッチがオンされてから、時刻t12までの間、ロータ21の目標回転数は10,000rpm に設定され、かつ、インバータ回路のデューティ比は60%未満である。また、時刻t11〜時刻t12の間、ハンマが1回転する間に打撃が行われず、かつ、実効電流値は、第1しきい値未満である。ハンマが1回転する間の打撃回数は、時刻t12から3回になっているが、実効電流値は、第1しきい値未満である。このため、ロータの目標回転数は、時刻t12以降も10,000rpm に設定されている。
【0090】
実効電流値が時刻t13で第1しきい値以上になると、ロータの目標回転数は上昇し、かつ、インバータ回路を制御するデューティ比が60%以上に増加している。なお、時刻t12〜時刻t13の間、ハンマは複数回、回転しており複数回の打撃が行われている。実行電流値は、図15の時刻t12〜時刻t13の間で脈動していることが分かる。この実行電流値の脈動は、打撃によって生じたものであり、脈動の回数と同じ回数の打撃が行われている。具体的には、3回の打撃が行われている。実効電流値は、3回の打撃が行われるタイミングで低くなっている。
【0091】
ロータの目標回転数が時刻t14で20,000rpm になると、インバータ回路を制御するデューティ比の増加割合いが低下する。ハンマが1回転する間の打撃回数は、時刻t14で3回から1.5回に減少している。なお、電動モータのロータの回転数は、時刻t14以降において、トリガ73の操作量に応じて変更することができる。すなわち、トリガ73の操作量に応じてPWM信号のデューティ比を変更することにより、ロータの回転数を調整することができる。
【0092】
図16は、図14のステップS11及びS15に対応するタイムチャートの例である。時刻t21でトリガスイッチがオンされてから、時刻t22までの間、ロータ21の目標回転数は10,000rpm に設定され、かつ、インバータ回路を制御するデューティ比は100%未満に制御されている。また、ハンマが1回転する間に打撃は行われず、かつ、実効電流値は第1しきい値未満である。そして、時刻t22以降は、ハンマが1回転する間の打撃回数が3回になっている。
【0093】
実効電流値が時刻t23で第1しきい値以上になると、インバータ回路のデューティ比は60%以上に設定されるが、ロータの目標回転数は増加しない。また、ロータの目標回転数は、時刻t24以降も10,000rpm に維持されている。
【0094】
このように、モータ制御部59が図14の制御例を実行すると、蓄電池52の電圧が17V未満であると、モータ電流検出回路62で検出される実行電流値に関わりなく、ロータ21の目標回転数が10,000rpm に設定され、ハンマ43が1回転する間の打撃回数は3回に維持される。したがって、打撃不良、つまり、ハンマ43が突起32を同時に2個越えない現象を回避でき、作業者の操作フィーリングが低下することを防止できる。
【0095】
モータ制御部59は、実効電流値が第1しきい値以上であり、かつ、第2しきい値未満である場合の目標回転数を、実効電流値が第1しきい値未満である場合の目標回転数よりも高く設定する。したがって、実効電流値が第1しきい値以上であり、かつ、第2しきい値未満である場合のビスの締め付け速度を、実効電流値が第1しきい値未満である場合のビスの締め付け速度よりも高くできる。また、ビスの締め付けを開始してから、ビスの締め付けが完了するまでの時間を、なるべく短くできる。
【0096】
さらに、ハンマ43がアンビル27を打撃する動作を開始する前におけるドライバビット29の回転数は、ハンマ43がアンビル27を打撃する動作を開始した後におけるドライバビット29の回転数よりも低い。したがって、ハンマ43がアンビル27を打撃する動作を開始する前に、ドライバビット29がカムアウトすることを抑制できる。
【0097】
(制御例3)
さらに、モータ制御部59は、打撃作業機10でボルトまたはビスを締め付ける場合に図17の制御例3を実行可能である。モータ制御部59は、トリガ73が操作されると、ステップS21でロータ21の目標回転数を10,000rpm に設定し、電動モータ16を駆動する。また、モータ制御部59は、デューティ比を60%未満に設定する。ロータ21の目標回転数が10,000rpmに設定された状態で、ねじ部材の締め付けを行うと、ハンマ43が1回転する間の打撃回数は3である。ステップS21の制御は、ステップS12の制御と同じである。
【0098】
そして、モータ制御部59は、ステップS22において、モータ電流検出回路62で検出される実効電流値が、第1しきい値以上か否かを判断する。ステップS22で行う判断の意味は、ステップS13の判断の意味と同じである。モータ制御部59は、ステップS22でNoと判断すると、ステップS21の制御を継続する。
【0099】
モータ制御部59は、ステップS22でYesと判断するとステップS23に進み、モータ電流検出回路62で検出される実効電流値が、第2しきい値以上か否かを判断する。第2しきい値は、締め付けているねじ部材がボルトであるか否かを判断するための値であり、第2しきい値は第1しきい値よりも大きい。例えば、ボルトを締め付けている最中に、スプリングワッシャに圧縮荷重が加わった場合の実行電流値は、ビスを締め付けている場合の実効電流値よりも高くなる。第2しきい値以上の実効電流値である場合の作業負荷は、第1しきい値から第2しきい値未満の実効電流値である場合の作業負荷よりも大きい。モータ制御部59は、実効流値が第2しきい値未満であると、ビスを締め付けていると判断し、実効電流値が第2しきい値以上であると、ボルトを締め付けていると判断する。
【0100】
モータ制御部59は、ステップS23でNoと判断すると、ステップS24の制御を実行する。モータ制御部59は、ステップS24において、ロータ21の目標回転数を10,000rpm に設定し、電動モータ16を駆動する。また、モータ制御部59は、ステップS24の制御を実行する際のデューティ比を80%に設定する。
【0101】
モータ制御部59は、ステップS24の制御を実行後、ステップS25において、モータ電流検出回路62で検出される実効電流値が、第2しきい値以上か否かを判断する。ステップS25の判断の意味は、ステップS23の判断の意味と同じである。モータ制御部59は、ステップS25でNoと判断すると、ステップS24の制御を継続する。
【0102】
モータ制御部59は、ステップS25でYesと判断すると、ステップS26に進み、モータ電流検出回路62で検出される実効電流値が、第3しきい値以上か否かを判断する。第3しきい値は、ボルトの締め付け過程が完了に近づいているか否かを判断するための値であり、第3しきい値は第2しきい値よりも大きい。例えば、スプリングワッシャの圧縮により発生する反力が最大値に近くなった場合の実効電流値は、スプリングワッシャの圧縮が開始された時点の実効電流値よりも高くなる。つまり、第3しきい値以上の実効電流値となる作業負荷は、第2しきい値以上であり、かつ、第3しきい値未満の実効電流値となる作業負荷よりも大きい。
【0103】
モータ制御部59は、ステップS26でNoと判断すると、ステップS27に進み、電動モータ16の駆動する際に、ロータ21の目標回転数を10,000rpm に設定し、かつ、デューティ比60%に設定する。モータ制御部59は、ステップS27の制御を実行中、ステップS28でモータ電流検出回路62で検出される実効電流値が、第3しきい値以上か否かを判断する。ステップS28の判断の意味は、ステップS26の判断の意味と同じである。
【0104】
モータ制御部59は、ステップS28でNoと判断すると、ステップS27の制御を継続する。モータ制御部59は、ステップS28でYesと判断すると、ステップS29に進んでロータ21の目標回転数を10,000rpm 未満に設定し、かつ、デューティ比30%に設定して電動モータ16を駆動し、図17の制御例を終了する。また、モータ制御部59は、ステップS26でYesと判断すると、ステップS29に進む。
【0105】
さらに、モータ制御部59は、ステップS23でYesと判断すると、ステップS30でモータ電流検出回路62で検出される実効電流値が、第3しきい値以上か否かを判断する。ステップS30の判断の意味は、ステップS26の判断の意味と同じである。モータ制御部59は、ステップS30でNoと判断するとステップS27に進み、ステップS30でYesと判断するとステップS29に進む。
【0106】
図18は、図17の制御例3に対応するタイムチャートの例である。モータ制御部59は、時刻t31でトリガスイッチがオンされてから、時刻t32までの間、ロータ21の目標回転数を10,000rpm に設定する。時刻t31から時刻t32の間、ハンマが1回転する間に打撃が行われず、かつ、実効電流値は、第1しきい値未満である。また、モータ制御部59は、デューティ比を30%以上であり、かつ、60%未満に制御する。ハンマが1回転する間の打撃回数は、時刻t32で3回となるが、実効電流値が第1しきい値未満であるため、モータ制御部59は、ロータの目標回転数を10,000rpm に維持する。
【0107】
モータ制御部59は、時刻t33で実効電流値が第1しきい値以上になると、インバータ回路を制御するデューティ比を60%以上に制御し、かつ、ロータの目標回転数を上昇させる。なお、ハンマは、時刻t32〜時刻t33の間に複数回回転しており、複数回の打撃が行われている。実行電流値は、図18の時刻t32〜時刻t33の間で脈動していることが分かる。この実行電流値の脈動は、打撃によって生じたものであり、脈動の回数数と同じ回数打撃していることになる。具体的には、3回の打撃が行われている。実効電流値が低くなっているタイミンングで打撃が行われている。モータ制御部59は、時刻t34でロータの目標回転数を20,000rpm に設定し、かつ、インバータ回路を制御するデューティ比を80%に設定している。ハンマが1回転する間の打撃回数は、時刻t34で3回から1.5回に減少している。
【0108】
モータ制御部59は、時刻t35で実効電流値が第2しきい値以上になると、デューティ比を80%から60%に変更し、かつ、ロータの目標回転数を10,000rpm に設定する。ハンマが1回転する間の打撃回数は、時刻t35で1.5回から3回に増加している。
【0109】
さらに、モータ制御部59は、時刻t36で実効電流値が第3しきい値以上になると、デューティ比を60%から30%に変更し、かつ、ロータの目標回転数を10,000rpm 未満に設定する。このため、実効電流値は、時刻t36以降に第1しきい値未満になる。なお、ハンマが1回転する間の打撃回数は、時刻t36以降も3回である。
【0110】
モータ制御部59は、制御例3においても、実効電流値が第1しきい値以上であり、かつ、第2しきい値未満である場合の目標回転数を、実効電流値が第1しきい値未満である場合の目標回転数よりも高く設定する。したがって、実効電流値が第1しきい値以上であり、かつ、第2しきい値未満である場合のボルトの締め付け速度を、実効電流値が第1しきい値未満である場合のボルトの締め付け速度よりも高くできる。また、ボルトの締め付けを開始してから、ボルトの締め付けが完了するまでの時間を、なるべく短くできる。
【0111】
また、モータ制御部59は、実効電流値が第2しきい値未満から第2しきい値以上になると、ロータ21の目標回転数を20,000rpm から10,000rpm に低下する。このため、ハンマ43が1回転する間の打撃回数は、1.5回から3回に切り替わる。したがって、ボルトの締め付けが完了に近い状態で、ハンマ43からアンビル27に加わる打撃力が、作業負荷よりも過大になることを抑制できる。したがって、ハンマ43及びアンビル27が受けるダメージを低減し、かつ、ハンマ43及びアンビル27を保護できる。制御例3において、制御例2と同じ処理を実行するステップは、制御例2と同じ効果を得られる。
【0112】
図19は、ハンマ43がアンビル27を打撃する際の軌跡である。図19(A)は、ハンマ43が1回転する間に突起32を3回打撃する場合の軌跡である。ハンマ43は突起32を1個づづ順次打撃する。図19(B)は、ハンマ43が1回転する間に突起32を1.5回打撃する場合の軌跡である。ハンマ43は、突起32を1個飛ばして打撃する。
【0113】
制御例2及び制御例3において、モータ制御部59が電動モータ16の回転数を変更する方法は、電圧を一定とし、かつ、インバータ回路のデューティ比を変更する方法に代え、電動モータ16に印加する電圧を変更する方法でもよい。この場合、電動モータに印加する電圧が高くなることに比例して、電動モータの実回転数は高くなる。例えば、図14のステップS14で電動モータ16に印加する電圧は、図14のステップS12で電動モータ16に印加する電圧よりも高く設定する。
【0114】
また、図17のステップS24で電動モータ16に印加する電圧は、図17のステップS21で電動モータ16に印加する電圧よりも高く設定する。さらに、図17のステップS27で電動モータ16に印加する電圧は、図17のステップS24で電動モータ16に印加する電圧よりも低く設定する。さらに、図17のステップS29で電動モータ16に印加する電圧は、図17のステップS27で電動モータ16に印加する電圧よりも低く設定する。
【0115】
実施の形態で説明した事項と、本発明の構成との対応関係は、以下の通りである。アンビル27が、本発明の工具支持部材に相当し、ハンマ43が、本発明のハンマに相当し、打撃作業機10が、本発明の打撃作業機に相当し、スピンドル40が、本発明の回転部材に相当し、モータ制御部59及びインバータ回路55が、本発明の制御部に相当し、低速モード及び中速モードが、本発明の第1回転モード、第1状態に相当し、高速モードが、本発明の第2回転モード、第2状態に相当する。
【0116】
また、3個の突起51が、本発明における複数個の第1係合部及び3個の第1係合部に相当し、3個の突起32が、本発明における複数個の第2係合部及び3個の第2係合部に相当する。カム溝42が、本発明の第1カム溝に相当し、カム溝46が、本発明の第2カム溝に相当し、カムボール47が、本発明の転動体に相当し、ハンマスプリング49が、本発明の付勢部材に相当し、電動モータ16が、本発明の電動モータに相当し、ハウジング11が、本発明のハウジングに相当し、ステータ20が、本発明のステータに相当し、ロータ21が、本発明のロータに相当し、コイル23U,23V,23Wが、本発明のコイルに相当する。
【0117】
さらに、インバータ回路55が、本発明のインバータ回路に相当し、スイッチング素子Q1〜Q6が、本発明のスイッチング素子に相当し、タクタイルスイッチ71が、本発明の回転数設定機構に相当し、蓄電池52が、本発明の直流電源に相当し、回転数4,000rpmが、本発明の第1目標回転数に相当し、回転数14,000rpm が、本発明の第2目標回転数に相当し、回転数20,000〜25,000rpm が、本発明の第3目標回転数に相当する。また、回転数4,000rpm及び14,000rpm が、本発明の第1回転数に相当し、回転数20,000〜25,000rpmが、本発明の第2回転数に相当する。傾斜縁42A,42Bが、本発明の第1傾斜縁に相当し、傾斜縁46C,46Dが、本発明の第2傾斜縁に相当し、直線B1,C1が、本発明の直線に相当し、リード角θ1が、本発明の第1傾斜角に相当し、リード角θ2が、本発明の第2傾斜角に相当し、回転角度である60度及び120度が、本発明の所定角度に相当する。
【0118】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、作業工具は、ねじ部材としてのビスを締め付けるドライバビット、ねじ部材としてのボルトの頭部を挿入する凹部を備えたドライバビットを含む。凹部を備えたドライバビットは、ソケットまたはボックスとも呼ばれるれる。また、作業工具は、雌ねじを有するナットを回転させて、雄ねじを有するボルトに固定する構造を含む。この場合、作業工具は、ナットを収容する凹部を有する。つまり、作業工具により回転するねじ部材は、ボルト、ビス、ナットを含む。ナットは、スプリングワッシャが取り付けられたナットでもよい。さらに、作業工具は、木材、コンクリート等に穴をあけるドリルビットを含む。本発明の第1係合部及び第2係合部は、互いに係合して回転力を伝達する。第1係合部は、ハンマから軸線方向に突出した突起、またはハンマから径方向に突出した突起を含む。第2係合部は、工具支持部材から軸線方向に突出した突起、または工具支持部材から径方向に突出した突起を含む。
【0119】
また、減速機に代えて、入力要素と出力要素との間の変速比を段階的または無段階に変更可能な変速機を設けることもできる。この場合、ハウジングに変速比切り替えスイッチを設け、作業者が変速比切り替えスイッチを操作して、変速機の変速比を変更する。そして、変速機の変速比を制御してスピンドルの回転数を変更することができる。変速比切り替えスイッチが、本発明の制御部に相当する。つまり、本発明の制御部は、モータの回転数を制御して回転部材の回転数を制御する制御部と、変速機の変速比を変更して回転部材の回転数を制御する制御部と、を含む。また、ねじ部材の締め付けを速くするとは、ねじ部材の回転速度を速くすること、ねじ部材の締め付けを開始してから、締め付けを完了するまでの時間をなるべく速くすること、を含む。
【0120】
さらに、電動モータに電流を供給する電源は、蓄電池のような直流電源の他、交流電源を含む。交流電源を電源として用いる場合、電動モータと交流電源とが、電力ケーブルにより接続される。さらに、電動モータは、ブラシレス電動モータに代えて、ブラシ付き電動モータを用いることも可能である。本発明の回転数設定機構は、作業者が押して操作するスイッチまたはボタン、往復動作可能なレバー、回転動作可能なノブ、液晶ディスプレイに設けたタッチスイッチを含む。本発明の回転部材は、モータの回転力を工具支持部材に伝達する要素であり、回転部材は、スピンドル、ギヤ、プーリ、プラネタリギヤ機構のキャリヤを含む。
【0121】
本発明のモータは、電動モータの他、油圧モータ、空気圧モータ、内燃機関を含む。内燃機関は、吸入空気量を制御することにより出力軸の回転数を変更可能である。油圧モータは、油圧室の油圧を制御して出力軸の回転数を変更可能である。空気モータは、空気の供給速度を制御して出力軸の回転数を変更可能である。本発明の付勢部材は、金属製の弾性体、例えば、コイルスプリングを含む。
【符号の説明】
【0122】
10…打撃作業機、11…ハウジング、16…電動モータ、20…ステータ、21…ロータ、23U,23V,23W…コイル、27…アンビル、32,51…突起、40…スピンドル、42,46…カム溝、42A,42B,46C,46D…傾斜縁、43…ハンマ、47…カムボール、49…ハンマスプリング、52…蓄電池、55…インバータ回路、59…モータ制御部、71…タクタイルスイッチ、B1,C1…直線、Q1〜Q6…スイッチング素子、θ1,θ2…リード角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19