(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基台上に並列する一対のクロスリンク機構を介して昇降自在に支持されたワーク支持台と、各クロスリンク機構に併設されて前記ワーク支持台を昇降駆動する一対の昇降駆動用チエンと、各クロスリンク機構に併設された落下防止手段を備え、各落下防止手段が、各クロスリンク機構の基台側の水平移動自在な可動支軸の移動経路脇に固定されたラチェットギヤと、各可動支軸と連動して水平移動し且つ付勢力により前記ラチェットギヤに係合して、ワーク支持台の下降を阻止するラチェット爪と、ワーク支持台の下降時に各ラチェット爪を付勢力に抗してラチェットギヤから離脱した非係合姿勢に切り換えて保持するアクチュエーターを備えているリフターにおいて、
下降時強制落下防止機構が設けられ、この下降時強制落下防止機構は、一対の操作レバーとリンク機構を備え、前記一対の操作レバーは、前記非係合姿勢にある各ラチェット爪を、前記アクチュエーターの駆動力に抗してラチェットギヤと係合する係合姿勢に切り換えるものであり、前記リンク機構は、ワーク支持台の下降時における両可動支軸の移動量に差が生じたとき、その移動量の差を、移動量の大きい側の前記操作レバーの操作力に変換するものであり、このリンク機構によって片方の前記操作レバーが駆動されることにより、当該操作レバーが、前記移動量の大きい側のラチェット爪を係合姿勢に切り換えるように構成された、リフター。
前記各ラチェット爪には、当該ラチェット爪がアクチュエーターの駆動力に抗して係合姿勢に切り換えられたことを検出するセンサーが併設され、ワーク支持台の下降時に、片側のセンサーが、ラチェット爪が係合姿勢に切り換えられたことを検出したことに基づいて、昇降駆動用チエンの駆動用モーターの停止ロックが実行されるように構成された、請求項1に記載のリフター。
前記各ラチェット爪と、これら各ラチェット爪を操作する操作レバーとは、スプリングを介して互いに連結され、各操作レバーが前記スプリングを介して操作対象のラチェット爪を引っ張って係合姿勢に切り換えるように構成された、請求項1又は2に記載のリフター。
各クロスリンクの基台側の前記可動支軸は、基台上に各別に水平移動自在に支持された一対の可動台上に支承され、これら各可動台上に前記操作レバーが水平揺動自在に軸支され、前記リンク機構は、前記両可動台に跨るように配置されて、その長さ方向の2箇所が各可動台に水平揺動自在に軸支された1本の主リンクを備え、この主リンクが前記移動量の差によって水平に傾動したとき、当該主リンクの互いに逆方向に運動する2箇所に設定された操作点の内、前記移動量の大きい側の前記可動台に近い操作点の水平移動により、当該可動台上の前記操作レバーが操作されるように構成されている、請求項1〜3の何れか1項に記載のリフター。
前記主リンクは、その両端が前記操作点となり、これら両端の操作点より内側の中間点が前記各可動台上に軸支され、前記操作レバーは、各可動台上の可動支軸及びラチェット爪に対して、ワーク支持台の下降時における各可動台の移動方向側に軸支され、前記主リンクの両端の操作点は、前記操作レバーに対して前記可動支軸及びラチェット爪がある側に配置され、当該操作レバーの中間部と前記主リンクの両端の操作点との間には、当該主リンクの操作点が操作レバーに接近移動するときのみ、その主リンクの操作点の移動を操作レバーに伝える伝動リンクが介在され、この操作レバーの遊端部とラチェット爪とが連結されている、請求項4に記載のリフター。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、昇降駆動用チエンによって左右一対のクロスリンク機構を起伏動作させることにより、ワーク支持台を昇降させるように構成されたリフターにおいては、ワーク支持台を上昇させているときに前記昇降駆動用チエンが破断したときは、ラチェットギヤとラチェット爪とから成る前記落下防止手段によって、ワーク支持台の急激な下降、即ち、落下を阻止出来るが、前記昇降駆動用チエンを、ワーク支持台の下降を許す方向に駆動して、ワーク支持台を下降させているときは、前記落下防止手段のラチェット爪をアクチュエーターにより非係合姿勢に切り換えて保持しているので、このワーク支持台を下降させているときに、昇降駆動用チエンが破断したときは、前記落下防止手段による落下防止作用が働かないので、大きな事故につながることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるリフターを提案するものであって、本発明に係るリフターは、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、基台(12)上に並列する一対のクロスリンク機構(13A,13B)を介して昇降自在に支持されたワーク支持台(14)と、各クロスリンク機構(13A,13B)に併設されて前記ワーク支持台(14)を昇降駆動する昇降駆動用チエン(30a,30b)と、各クロスリンク機構(13A,13B)に併設された落下防止手段(16)を備え、各落下防止手段(16)が、各クロスリンク機構(13A,13B)の基台(12)側の水平移動自在な可動支軸(22)の移動経路脇に固定されたラチェットギヤ(37)と、各可動支軸(22)と連動して水平移動し且つ付勢力により前記ラチェットギヤ(37)に係合して、ワーク支持台(14)の下降を阻止するラチェット爪(38)と、ワーク支持台(14)の下降時に各ラチェット爪(38)を付勢力に抗してラチェットギヤ(37)から離脱した非係合姿勢に切り換えて保持するアクチュエーター(39)を備えているリフターにおいて、
下降時強制落下防止機構(46)が設けられ、この下降時強制落下防止機構(46)は、一対の操作レバー(47a,47b)とリンク機構(48〜49b)を備え、前記一対の操作レバー(47a,47b)は、前記非係合姿勢にある各ラチェット爪(38)を、前記アクチュエーター(39)の駆動力に抗してラチェットギヤ(37)と係合する係合姿勢に切り換えるものであり、前記リンク機構(48〜49b)は、ワーク支持台(14)の下降時における両可動支軸(22)の移動量に差が生じたとき、その移動量の差を、移動量の大きい側の前記操作レバー(47a/47b)の操作力に変換するものであり、このリンク機構(48〜49b)によって片方の前記操作レバー(47a/47b)が駆動されることにより、当該操作レバー(47a/47b)が、前記移動量の大きい側のラチェット爪(38)を係合姿勢に切り換える構成になっている。
【発明の効果】
【0006】
上記のように本発明の構成は、ワーク支持台を支持する一対のクロスリンク機構の基台側の可動支軸を、特許文献1に記載のように、1本の共通支軸の両端部で構成するのではなく、各別に水平移動自在にして、ワーク支持台を下降させているときに片側のクロスリンク機構に併設の昇降駆動用チエンが破断したとき(現実には、2本の昇降駆動用チエンが同時に破断してしまうようなことは無いことを前提にしている)、このチエン破断側のクロスリンク機構がフリーになって、ワーク支持台側から受ける重力によって反対側のクロスリンク機構よりも急速に倒伏する現象が生じるようにし、この現象を捉えて、チエン破断側のクロスリンク機構に併設の落下防止手段のラチェット爪を、アクチュエーターの駆動力に抗して、強制的且つ機械的に係合姿勢に切り換えるものである。
【0007】
従って、係る本発明の構成によれば、一対のクロスリンク機構で支持されているワーク支持台を、両クロスリンク機構に併設の昇降駆動用チエンのワーク支持台下降方向への駆動(ワーク支持台の下降を許す方向への駆動)によって下降させているときに、片側の昇降駆動用チエンが破断したとき、その破断したチエン側のクロスリンク機構が重力で倒伏するのを、当該クロスリンク機構に併設のラチェット爪をアクチュエーターの駆動力に抗して強制的に係合姿勢に切り換えてラチェットギヤに係合させることにより、自動的に制止することが出来る。この結果、片側の昇降駆動用チエンの破断によって、ワーク支持台が大きく傾きながら下降するような事態を回避出来、安全を確保出来る。
【0008】
尚、上記のような動作が生じたとき、破断していない他方の昇降駆動用チエンをワーク支持台下降方向に駆動し続けると、結果的に、この他方の昇降駆動用チエン側が下がるようにワーク支持台が傾斜してしまうことになる。しかしながら、ワーク支持台を下降させるときには、ラチェット爪が被係合姿勢に切り換わっていることが条件になるので、ラチェット爪が係合姿勢にあるか被係合姿勢にあるかを検出するセンサーは、昇降駆動用チエンの駆動制御系に必須のものである。従って、当該センサーを、ワーク支持台を下降させている行程中に片側のラチェット爪が係合姿勢に切り換わったことを検出する手段として利用することにより、ワーク支持台を下降させている行程中での当該センサーの検出信号に基づいて、両昇降駆動用チエンの駆動用モーターを非常停止ロックさせ、ワーク支持台を殆ど傾斜させることなく非常停止させて、安全を確保出来る。
【0009】
上記本発明を実施する場合、上記のように、前記各ラチェット爪(38)には、当該ラチェット爪(38)がアクチュエーター(39)の駆動力に抗して係合姿勢に切り換えられたことを検出するセンサー(40)を併設し、ワーク支持台(14)の下降時に、片側のセンサー(40)が、ラチェット爪(38)が係合姿勢に切り換えられたことを検出したことに基づいて、昇降駆動用チエン(30a,30b)の駆動用モーター(31)が停止されるように構成することが出来るが、その他、前記各ラチェット爪(38)と、これら各ラチェット爪(38)を操作する操作レバー(47a,47b)とは、スプリング(52a,52b)を介して互いに連結し、各操作レバー(47a,47b)が前記スプリング(52a,52b)を介して操作対象のラチェット爪(38)を引っ張って係合姿勢に切り換えるように構成することが出来る。この構成によれば、操作レバーによりラチェット爪を係合姿勢に切り換えるとき、当該ラチェット爪がラチェットギヤの歯先端に当接するようなタイミングであっても、一時的に前記スプリングの変形により操作レバーの操作力を吸収させ、その後、当該スプリングの弾性復帰力でラチェット爪を確実にラチェットギヤの歯間に係合させることが出来る。又、一般的には、ラチェット爪に作用する重力でのみ当該ラチェット爪を係合姿勢の方向に付勢することが出来るが、前記操作レバーが初期位置にある状態での前記スプリングの初期応力がラチェット爪を係合姿勢に付勢するように構成して、ラチェット爪の働きを確実に行わせることが出来る。
【0010】
又、各クロスリンク機構(13A,13B)の基台(12)側の前記可動支軸(22)は、基台(12)上に各別に水平移動自在に支持された一対の可動台(22a,22b)上に支承し、これら各可動台(22a,22b)上に前記操作レバー(47a,47b)を水平揺動自在に軸支し、前記リンク機構には、前記両可動台(22a,22b)に跨るように配置されて、その長さ方向の2箇所が各可動台(22a,22b)に水平揺動自在に軸支された1本の主リンク(48)を設け、この主リンク(48)が前記移動量の差によって水平に傾動したとき、当該主リンク(48)の互いに逆方向に運動する2箇所に設定された操作点(55a,55b)の内、前記移動量の大きい側の前記可動台(22a/22b)に近い操作点(55a/55b)の水平移動により、当該可動台(22a/22b)上の前記操作レバー(47a/47b)が操作されるように構成することが出来る。この構成により、両可動台の移動量の差に基づいて両操作レバーの内の特定の一方に対して操作力を与えるための構成が簡単に実施することが出来る。
【0011】
更に、上記の構成を採用する場合、前記主リンク(48)は、その両端を前記操作点(55a,55b)とし、これら両端の操作点(55a,55b)より内側の中間点を各可動台(22a,22b)上に軸支し、前記操作レバー(47a,47b)は、各可動台(22a,22b)上の可動支軸(22)及びラチェット爪(38)に対して、ワーク支持台(14)の下降時における各可動台(22a,22b)の移動方向側に軸支し、前記主リンク(48)の両端の操作点(55a,55b)は、前記操作レバー(47a,47b)に対して前記可動支軸(22)及びラチェット爪(38)がある側に配置し、当該操作レバー(47a,47b)の中間部と前記主リンク(48)の両端の操作点(55a,55b)との間には、当該主リンク(48)の操作点(55a,55b)が操作レバー(47a,47b)に接近移動するときのみ、その主リンク(48)の操作点(55a,55b)の移動を操作レバー(47a,47b)に伝える伝動リンク(49a,49b)を介在し、この操作レバー(47a,47b)の遊端部とラチェット爪(38)とを連結することが出来る。この構成により、ワーク支持台の単位下降量に対する可動支軸(可動台)の水平運動量が少なくなる、ワーク支持台の下降行程の後半においても、主リンクの傾斜角度に対する操作レバーの運動量を大きくすることが容易であり、ワーク支持台の下降行程の後半における昇降駆動用チエンの破断時でも、操作レバーを必要角度だけ運動させて確実にラチェット爪を係合姿勢に切り換えることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜
図4において、搬送用走行体1は、その走行経路に沿って敷設された左右一対の支持用ガイドレール2上を転動する左右一対前後二組の車輪3と、片側のガイドレール2の外側に並列するように敷設された左右横方向の振れ止め用ガイドレール4に嵌合する前後一対の振れ止め用ローラー5、及び片側のガイドレール2の内側に並列するように敷設された上下動防止用ガイドレール6に嵌合する前後一対の上下動防止用ローラー7を備えることにより、一定走行経路に沿って走行自在に構成されている。この搬送用走行体1の走行駆動手段は如何なるものであっても良いが、例えば
図4に仮想線で示すように、この搬送用走行体1の走行方向と平行な直線状の左右両側面8に圧接して、搬送用走行体1を左右両側から挟む摩擦駆動輪9と、当該摩擦駆動輪9を回転駆動するモーターを備えた摩擦駆動手段10を使用することが出来る。
【0014】
上記の搬送用走行体1上には中間架台11を介して基台12が設置され、この基台12上に、左右一対のクロスリンク機構13A,13Bを介してワーク支持台14が平行昇降自在に支持されると共に、このワーク支持台14の昇降駆動手段15と落下防止手段16が併設されている。クロスリンク機構13A,13Bは左右対称構造のもので、互いに連結された上下2段のクロスリンク17,18を備え、下段クロスリンク17の内側リンク17aの下端が、基台12上の後端側の左右両側に支持された左右水平向きに位置固定支軸19に支承され、下段クロスリンク17の外側リンク17bの下端が、基台12上の前半部の左右両側に敷設されたスライドレール20に前後水平移動自在に支持された可動台21a,21b上に左右水平向きに支持されて、位置固定支軸19に対し前後水平移動自在となっている可動支軸22a,22bを介して支承され、上段クロスリンク18の外側リンク18aの上端が、ワーク支持台13を支持する架台23の後端側の左右両側で前記位置固定支軸19の真上に支持された左右水平向きの位置固定支軸24に支承され、上段クロスリンク18の内側リンク18bの上端が、前記架台23の前半部の左右両側に敷設されたスライドレール25に前後水平移動自在に支持された可動台26a,26bに左右水平向きに支持されて、位置固定支軸24に対し前後水平移動自在となっている可動支軸27a,27bに支承されている。17c,18cは、上下各クロスリンク機構17,18の中間支点軸であり、28,29は、上下両クロスリンク機構17,18を互いに連結する連結支軸である。
【0015】
上記のクロスリンク機構13A,13Bの構成により、ワーク支持台14は、基台12側の左右一対の可動支軸22a,22bとワーク支持台14側の左右一対の可動支軸27の水平前後移動を伴って、搬送用走行体1側の基台12に対して水平姿勢を保って垂直に昇降移動可能に支持されている。このワーク支持台14を昇降駆動する昇降駆動手段15は、各クロスリンク機構13A,13Bに併設された左右一対の昇降駆動用チエン30a,30bと、これら両昇降駆動用チエン30a,30bを同期駆動する減速機付きモーター31から構成されている。左右一対の昇降駆動用チエン30a,30bは、その上端が、各クロスリンク機構13A,13Bの後ろ側で、ワーク支持台14側の架台23の下側に連結固定されると共に、中間部が、各クロスリンク機構13A,13Bの後ろ側で、搬送用走行体1側の基台12上に軸支された駆動歯輪32と係合し、当該駆動歯輪32から後方水平に延出する部分が、搬送用走行体1側の中間架台11上に支持された前後水平方向に長い角筒状の収容ケーシング33内に収容される。
【0016】
これら昇降駆動用チエン30a,30bは、直線状態から片側にのみ屈曲可能なもので、その屈曲可能な側に前記駆動歯輪32が係合し、当該駆動歯輪32からワーク支持台14側の架台23までの領域が垂直棒状になって、ワーク支持台14を支持する構成となっている。各昇降駆動用チエン30a,30bに係合する左右一対の、互いに同心状の駆動歯輪32は、左右一対のクロスリンク機構13A,13Bの中間位置で基台12上に設置された前記減速機付きモーター31の、互いに同心状で左右両側に突出する駆動軸に、左右一対の伝動軸34a,34bを介して連動連結され、減速機付きモーター31によって同一方向に同一速度で同期駆動される。
【0017】
従って、減速機付きモーター31によって左右一対の駆動歯輪32を、この駆動歯輪32から上向きに両昇降駆動用チエン30a,30bを繰り出す方向に回転駆動させることにより、昇降駆動用チエン30a,30bが収容ケーシング33内から引き出されると共に駆動歯輪32から上向きに繰り出され、垂直な棒状体となって、架台23を介してワーク支持台14を押し上げて上昇移動させることになる。逆に減速機付きモーター31によって左右一対の駆動歯輪32を逆回転駆動させることにより、架台23を介してワーク支持台14を支持している垂直棒状の両昇降駆動用チエン30a,30bが駆動歯輪32側に引き下げられて下降し、支持されていたワーク支持台14が下降移動することになる。駆動歯輪32から後方に繰り出される昇降駆動用チエン30a,30bは、収容ケーシング33内に挿入される。
【0018】
前記落下防止手段16は、両クロスリンク機構13A,13Bの下端側の可動台21a,21bの前後移動領域の外側に並設されたラチェット機構35a,35bと、下降時強制落下防止機構46を備えている。これらラチェット機構35a,35bの詳細を、
図5〜
図7に基づいて説明すると、両ラチェット機構35a,35bは互いに左右対称構造のものであり、スライドレール20と平行に基台12上に敷設された帯状基板36、この帯状基板36上にスライドレール20と平行に敷設されたラチェットギヤ37、可動支軸22a,22bの外端部側に、当該可動支軸22a,22bの周りに回転自在に支持されたラチェット爪38、このラチェット爪解放用のアクチュエーター(ソレノイド)39、及びラチェット爪動作検出用のセンサー40から構成されている。
【0019】
ラチェット爪38より外側に突出する可動支軸22a,22bの外端には、当該可動支軸22a,22bの周りに回転自在に軸受け部材41が支持され、この軸受け部材41から後方に延出するように連設された垂直側板42の内側に前記アクチュエーター39が取り付けられ、当該アクチュエーター39の引込み動作軸39aの外端部が、可動支軸22a,22bの上側に突出するラチェット爪38の二股状突出部38a内に嵌合し、当該二股状突出部38aに設けられた大径孔43と、この大径孔43内に遊嵌するように、アクチュエーター39の引込み動作軸39aの外端部に取り付けたピン44によって、アクチュエーター39の引込み動作軸39aとラチェット爪38とが連結されている。又、センサー40は、前記軸受け部材41にブラケット45を介して取り付けられ、その検出端(投受光用開口)がラチェット爪38の側面を無接触で検出する反射式光電スイッチから成るものである。前記軸受け部材41と垂直側板42とは、これらとアクチュエーター39に働く重力により、下側辺が帯状基板36に摺接する状態で、可動支軸22a,22bと一体に前後水平方向に移動することが出来る。
【0020】
ラチェット爪38は、このラチェット爪38に働く重力により、先端の爪部がラチェットギヤ37側に落ち込む方向に、可動支軸22a,22bの周りに回転する付勢力を受けており、この付勢力によりラチェット爪38は、
図7Aに示すように、先端の爪部がラチェットギヤ37の歯間に嵌合する係合姿勢となり、ラチェット爪38がラチェットギヤ37の歯を乗り越えるときは、
図7Bに示すように、前記付勢力に抗してラチェット爪38が可動支軸22a,22bの周りに上動して通過姿勢となるが、この可動支軸22a,22bの周りでのラチェット爪38の上下揺動は、アクチュエーター39の引込み動作軸39aの外端のピン44に対するラチェット爪38側の大径孔43の遊動範囲内で行われ、アクチュエーター39の引込み動作軸39aには負荷が作用しない。そしてラチェット爪38の係合姿勢と通過姿勢との間の上下揺動は、ラチェット爪38の側面がセンサー40の検出領域に入り込まない範囲内で行われるので、センサー40はOFF状態にある。アクチュエーター39に通電してその引込み動作軸39aを引込み、
図8Aに示すように、引込み動作軸39aのピン44によってラチェット爪38を前記付勢力に抗して可動支軸22a,22bの周りに引き上げることにより、ラチェット爪38は、ラチェットギヤ37に対して解放された非係合姿勢に切り換えられ、このとき、ラチェット爪38の側面がセンサー40の検出領域に入り込み、センサー40はON状態に切り換わる。
【0021】
下降時強制落下防止機構46は、
図3〜
図7に示すように、左右一対のラチェット機構35a,35bにおける各ラチェット爪38を強制操作する操作レバー47a,47bと、両操作レバー47a,47bを択一的に操作するために、両クロスリンク機構13A,13Bにおける基台12側の可動支軸22a,22bを支持する可動台21a,21b間に跨って配置された主リンク48、及びこの主リンク48の両端部と同一側の操作レバー47a,47bとを連動させる伝動リンク49a,49bを備えている。各操作レバー47a,47bは、可動支軸22a,22b及びラチェット爪38の前方側で左右横向きに配置されたもので、その内端部が、各可動台21a,21bの前側辺に付設された支持板50a,50b上に、垂直支軸51a,51bにより水平揺動自在に軸支された左右横向きのもので、その外端部と、その後方に位置する各ラチェット爪38の二股状突出部38aの前端部とが、前後縦向きの引張コイルスプリング52a,52bを介して連結されている。
【0022】
又、各可動台21a,21bには、可動支軸22a,22bの位置の内側に取り付けられて内方に片持ち状に延出する支持板53a,53bが設けられ、この支持板53a,53bの内端部上に、主リンク48の両端から内側に離れた中間2箇所が、それぞれ垂直支軸54a,54bによって水平揺動自在に軸支され、この主リンク48の垂直支軸54a,54bから外側に離れた両端の操作点55a,55bには、前後縦向きの伝動リンク49a,49bの後端部が垂直支軸によって水平揺動自在に軸支され、各伝動リンク49a,49bの前端部には、その前後長さ方向に沿って長孔56が設けられ、これら長孔56に嵌合する垂直ピン57が、左右横向きの各操作レバー47a,47bの垂直支軸51に近い長さ方向中間位置に上向きに突設されている。左右一対のクロスリンク機構13A,13Bは、正常な動作時には、同期して起伏運動をするものであって、その基台12側の可動支軸22a,22bを支承する左右一対の可動台21a,21bは、常に両可動支軸22a,22bが同心状態を保つように同期して前後移動するものである。係る状態では
図5に示すように、主リンク48と各操作レバー47a,47bは、各可動台21a,21bの前後移動方向に対して直交する左右横向き姿勢にあり、各伝動リンク49a,49bは、各可動台21a,21bの前後移動方向と平行な前後縦向きの姿勢にある。このとき、各操作レバー47a,47b側の垂直ピン57が、各伝動リンク49a,49bの長孔56の前端(主リンク48の両端の操作点55a,55bに近い側の端)にある。
【0023】
尚、各ラチェット爪38が、
図7Aに示す係合姿勢と
図7Bに示す通過姿勢との間で上下揺動するときは、引張コイルスプリング52には殆ど負荷がかからないように構成しているが、ラチェット爪38が係合姿勢から通過姿勢に向かって上動するときに、引張コイルスプリング52が若干引っ張られるように構成して、ラチェット爪38が、重力だけでなく引張コイルスプリング52a,52bの引張力で係合姿勢に保持されるように構成しても良い。
【0024】
以上の構成によれば、ワーク支持台14が
図2に示す下降限高さにあるときは、両クロスリンク機構13A,13Bの基台12側の左右一対の可動支軸22a,22bは、
図5及び
図7Aに示すように、その前後水平方向の移動範囲内の前端に相当する前進限位置FPにあり、係る状態からワーク支持台14を、
図1に示す上昇限高さまでの範囲内で上昇させるときは、先に説明したように、昇降駆動手段15の減速機付きモーター31を稼働させて、昇降駆動用チエン30a,30bによりワーク支持台14を押し上げ上昇移動させれば良い。このとき、各クロスリンク機構13A,13Bが倒伏姿勢から起立姿勢に変化するのに伴って、各クロスリンク機構13A,13Bの基台12側の可動支軸22a,22bが前記前進限位置FPから後方に移動することになるが、この間、ラチェット機構35a,35bの各ラチェット爪38は、
図7Aに示す係合姿勢と、
図7Bに示す通過姿勢との間で、可動支軸22a,22bの周りで上下揺動している。昇降駆動用チエン30a,30bによりワーク支持台14を正常に押し上げ上昇移動させているときは、左右一対のクロスリンク機構13A,13Bは互いに同期して倒伏姿勢から起立姿勢に変化するので、各クロスリンク機構13A,13Bの基台12側の可動支軸22a,22bは、互いに同心状態を保って後方に同期移動することになる。
【0025】
ワーク支持台14が所定高さ、例えば
図1に示す上昇限高さに達したならば、昇降駆動手段15の減速機付きモーター31を停止させ、昇降駆動用チエン30a,30bの押し上げ駆動を停止させると、その時点で、若しくは若干の時間遅れを伴って、落下防止手段16のラチェット機構35a,35bにおける各ラチェット爪38が、
図7Aに示す係合姿勢となって、可動支軸22a,22bの前進移動、即ち、クロスリンク機構13A,13Bの倒伏運動を阻止するので、ワーク支持台14は所定高さで安定的に保持される。若し、ワーク支持台14を上昇移動させている途中に、このワーク支持台14を支持している昇降駆動用チエン30a,30bの何れかが破断するような事故が生じても、ワーク支持台14の下降は、クロスリンク機構13A,13Bの倒伏運動、即ち、可動支軸22a,22bの前進移動を伴うので、その可動支軸22a,22bの前進移動が、ラチェット機構35a,35bの各ラチェット爪38がラチェットギヤ37に係合することにより、瞬時に阻止されるので、ワーク支持台14の落下事故は確実に防止出来る。
【0026】
勿論、昇降駆動用チエン30a,30bが両方とも同時に破断することは現実には生じないので、破断していない側の昇降駆動用チエン30a/30bは、減速機付きモーター31からの駆動力を受けて継続してワーク支持台14を押上げ、ワーク支持台14を傾動させることになる。このような不都合な事態を避けるために、例えば、両クロスリンク機構13A,13Bの基台12側の可動支軸22a,22b(可動台34a,34b)に前後方向の相対移動が生じたことを検出するセンサーなどを利用して、上記異常事態を速やかに検出させ、この検出に基づいて減速機付きモーター31の非常停止や異常発生報知などの対策を講じるのが望ましい。
【0027】
ワーク支持台14が、
図1に示す上昇限高さまで押し上げられて停止しているとき、両クロスリンク機構13A,13Bの基台12側の可動支軸22a,22bは、
図5及び
図8Bに示す後退限位置RPにある。この上昇限高さにあるワーク支持台14を下降させるとき、或いは、上昇限高さより低い任意の高さまで押し上げられて停止しているワーク支持台14を下降させるときは、落下防止手段16のラチェット機構35a,35bにおける各アクチュエーター39に通電して、
図8Aに示すように、ラチェット爪38を、ラチェットギヤ37から解放された非係合姿勢に切り換えると同時に、昇降駆動手段15の減速機付きモーター31を逆回転駆動し、昇降駆動用チエン30a,30bを引き下げるように駆動する。現実には、ワーク支持台14側から受ける重力により、ラチェットギヤ37に強く噛み込んでいるラチェット爪38を、アクチュエーター39の駆動力で非係合姿勢に切り換えることは容易でないので、最初に昇降駆動手段15の減速機付きモーター31を一定短時間だけ正回転駆動して、昇降駆動用チエン30a,30bによりワーク支持台14を若干押し上げるようにし、ラチェット機構35a,35bの各ラチェットギヤ37に対するラチェット爪38の噛み込み力を解消した状態にし、この状態でアクチュエーター39を起動して、ラチェット爪38を非係合姿勢に切り換え、その後、昇降駆動用チエン30a,30bを引き下げるように駆動することが出来る。
【0028】
昇降駆動手段15の減速機付きモーター31には、その伝動軸34a,34b側(出力軸側)からモーター軸側を回転することが出来ない構造(例えばウオームギヤ利用の減速機)の減速機を備えたものを使用することにより、当該減速機付きモーター31により引き下げ方向に駆動される昇降駆動用チエン30a,30bの下降に追従して、ワーク支持台14を所定の速度で安定的に下降させることが出来る。このように、昇降駆動用チエン30a,30bの引き下げ駆動によりワーク支持台14を正常速度で下降移動させているときは、左右一対のクロスリンク機構13A,13Bは互いに同期して起立姿勢から倒伏姿勢に変化するので、各クロスリンク機構13A,13Bの基台12側の可動支軸22a,22bは、互いに同心状態を保って前方に同期移動することになる。若し、この下降の途中で、昇降駆動用チエン30a,30bの何れかが破断すれば、ワーク支持台14の左右両側辺の内、破断した昇降駆動用チエン30a/30bが支持する側の側辺は、重力で勢いよく降下しようとするが、落下防止手段16のラチェット機構35a,35bにおける各ラチェット爪38は、
図8Aに示すように非係合姿勢に切り換えられているので、落下防止機能を失っている。
【0029】
このような事態に陥ったとき、前記下降時強制落下防止機構46が機能する。例えば昇降駆動用チエン30a,30bの内、クロスリンク機構13A側の昇降駆動用チエン30aが破断したとすると、クロスリンク機構13Aがワーク支持台14側の重力を受けて、反対側のクロスリンク機構13Bよりも早く倒伏姿勢に変化しようとするので、
図9に示すように、クロスリンク機構13A側の可動台21a(可動支軸22a)が、反対側のクロスリンク機構13B側の可動台21b(可動支軸22b)よりも高速で前進移動することになる。この結果、両可動台21a,21b間に、
図9に示す移動量の差δが発生する。このため、両可動台21a,21bに垂直支軸54a,54bで中間2箇所が軸支されている主リンク48は、移動量の大きい方の可動台21aの側が、移動量の小さい方の可動台21bの側よりも先行するように水平に傾動することになる。尚、このとき主リンク48の中間2箇所を各可動台21a,21bに軸支する垂直支軸54a,54bは、前後方向に直線運動するので、何れか片側の垂直支軸54a/54bに嵌合する主リンク48側の1つの軸孔を、左右横向きの長孔に形成しておくか又は、垂直支軸54a,54bに嵌合する主リンク48側の2つの軸孔の遊び代を若干大きくしておけば良い。
【0030】
上記のように主リンク48が水平に傾動すると、
図9に示すように、当該主リンク48の可動台21a側の操作点55aが初期位置より大きく前方に移動して伝動リンク49aを前方に押し出し、その長孔56の後端と垂直ピン57を介して、操作レバー47aを垂直支軸54aの周りで前方へ水平揺動させることになる。この結果、
図8Bに示すように、当該操作レバー47aが引張コイルスプリング52aを介して、クロスリンク機構13A側のラチェット機構35aのラチェット爪38を可動支軸22の周りに前方下方へ引き込み、非係合姿勢にあった当該ラチェット爪38を、アクチュエーター39の駆動力に抗して強制的に係合姿勢に切り換え、ラチェットギヤ37の歯間に係合させることになる。このとき、ラチェット爪38の先端の爪部がラチェットギヤ37の歯先端に当接するタイミングであるときは、引張コイルスプリング52aが一時的に伸長して、操作レバー47aの操作力を吸収し、ラチェット爪38の先端の爪部がラチェットギヤ37の歯間に対応する次のタイミングでラチェット爪38を係合姿勢に切り換える。この一連の動作により、破断した昇降駆動用チエン30a側のラチェット機構35aには、ラチェット爪38とラチェットギヤ37とによる落下防止機能が働き、その時点で、破断した昇降駆動用チエン30a側のクロスリンク機構13Aの倒伏運動が阻止される。
【0031】
上記の例とは逆に、反対側の昇降駆動用チエン30bが破断したときは、主リンク48が逆方向に水平傾動して、破断した昇降駆動用チエン30b側のラチェット機構35bに、ラチェット爪38とラチェットギヤ37とによる落下防止機能が働き、その時点で、破断した昇降駆動用チエン30b側のクロスリンク機構13Bの倒伏運動が阻止される。
【0032】
而して、上記のように水平に傾動する主リンク48の他方の操作点55b(又は操作点55a)は、
図9に示すように、初期位置よりも少し後方に移動して、伝動リンク49b(又は伝動リンク49a)を後方に引き込むことになるが、このときの動作は、当該伝動リンク49b/49aの長孔56が操作レバー47b/47aの垂直ピン57に対して後方に遊動するだけで、操作レバー47b/47aに対して操作力は働かない。従って、破断していない昇降駆動用チエン30b/30a側のクロスリンク機構13B/13Aの倒伏運動は、当該昇降駆動用チエン30b/30aの下方への引き込み駆動に伴って継続されるが、この状況は、結果的にワーク支持台14の傾動につながり、好ましくない。従って、先に説明したように、両クロスリンク機構13A,13Bの基台12側の可動支軸22a,22b(可動台21a,21b)に前後方向の相対移動が生じたことを検出するセンサーなどを利用して、上記異常事態を速やかに検出させ、この検出に基づいて減速機付きモーター31の非常停止と、ワーク支持台14の下降操作時にはアクチュエーター39のONからOFF(通電断)への切換え、及び異常発生報知などの対策を講じるのが望ましい。
【0033】
このワーク支持台14の下降操作時における対策手段としては、上記の下降時強制落下防止機構46の働きにより、破断した昇降駆動用チエン30a/30b側のラチェット機構35a/35bのラチェット爪38が、操作レバー47a/47bによって強制的に非係合姿勢から係合姿勢に切り換えられたことを、当該ラチェット機構35a/35b側のラチェット爪動作検出用センサー40のON→OFF動作によって検出出来るので、この動作に連動して、減速機付きモーター31の非常停止と、ワーク支持台14の下降操作時にはアクチュエーター39のONからOFF(通電断)への切換え、及び異常発生報知などの対策を実行させることが出来る。
【0034】
尚、本発明のもっとも好ましい実施例を図と共に説明したが、この実施例の具体構成に限定されるものではない。例えば、主リンク48は、その両端を両可動台21a,21b側に垂直支軸54a,54bにて軸支し、これら両端よりも内側の中間2箇所を操作点55a,55bとすることも出来る。この場合、操作点55a,55bの運動方向が上記実施例とは前後逆方向になるので、操作レバー47a,47bや伝動リンク49a,49bを主リンク48の後方側に配設し、操作レバー47a,47bにより各ラチェット機構35a,35bのラチェット爪38を後ろ側から前方に押して、係合姿勢に強制切換え出来るように構成することが考えられる。更に、伝動リンク49a,49bを無くし、上記実施例における主リンク48の両端に操作レバー47a,47bを直接又はバネを介して連設し、当該操作レバー47a,47bの先端部で各ラチェット機構35a,35bのラチェット爪38を前方に引き込むか又は後ろ側から前方に押すように構成することも可能である。しかしながら、ワーク支持台14の単位昇降量に対する各クロスリンク機構13A,13Bの基台12側の可動支軸22a,22b(可動台21a,21b)の前後移動量は、ワーク支持台14の中間高さから下降限高さまでの領域と比べて、ワーク支持台14の上昇限高さから中間高さまでの領域では非常に小さくなる。従って、上記実施例に示した構成、即ち、左右一対の可動台21a,21b間の僅かな移動量の差に基づいて、片側の操作レバー47a/47bを大きく運動させることが出来る構成は、ワーク支持台14が上昇限高さから中間高さまでの領域で下降しているときに、昇降駆動用チエン30a/30bが破断したときでも、確実に所期の落下防止動作を行わせることが出来る。