(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の架橋アクリレート系繊維は、架橋構造および2〜10mmol/gのカルボキシル基を有し、捲縮率が7%以上であることを特徴とする繊維である。カルボキシル基は、架橋アクリレート系繊維において吸放湿性、吸湿発熱性などの特性を発現させる要因であり、繊維中に2〜10mmol/g、より好ましくは5〜10mmol/g、さらに好ましくは5〜8mmol/gの範囲で含有させる。カルボキシル基量が2mmol/gを下回ると他の繊維と混用した繊維構造物などにおいて吸湿性能が十分に得られなくなり、10mmol/gを超えると吸湿あるいは吸水時に脆弱となり、繊維形状や吸湿性能を維持できなくなる。
【0009】
捲縮率はJIS L1015で規定され、捲縮率が高いほど繊維と繊維が絡み合いやすく、ウェブ、不織布、紡績糸などの繊維集合体としたときに嵩高くなる。本発明の繊維において捲縮率は7%以上であり、好ましくは10%以上である。捲縮率が7%を下回るとカード工程での繊維同士のつながりが悪くなり、また、繊維集合体としたときの嵩高さが低く、他の繊維と混用した中綿などにおいて、十分な厚みのある形状が得られなくなる。
【0010】
本発明の架橋アクリレート系繊維の嵩高性としては、布団や衣類の中綿用に用いる場合、後述する比容積として好ましくは35cm
3/g以上、より好ましくは40cm
3/g以上を有していることが望ましい。
【0011】
本発明の架橋アクリレート系繊維の吸湿性能としては、他の繊維と混用した繊維構造物において、実用的な混率水準で有意な吸湿性能を得る観点から、後述する吸湿率として好ましくは15%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは35%以上であることが望ましい。かかる吸湿率の上限は、特に限定されないものの、カルボキシル基導入量に限界があることから、概ね70%が上限となる。
【0012】
本発明の架橋アクリレート系繊維の原料繊維であるアクリロニトリル系繊維は、アクリロニトリル系重合体から公知の方法に準じて製造される。該重合体の組成としては、アクリロニトリルが40重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。後述するように、アクリロニトリル系繊維を形成するアクリロニトリル系共重合体のニトリル基とヒドラジン系化合物等の窒素含有化合物を反応させることで、繊維中に架橋構造が導入される。架橋構造は繊維物性に大きく影響する。アクリロニトリルの共重合組成が少なすぎる場合には、架橋構造が少なくならざるを得なくなり、繊維物性が不十分となる可能性があるが、アクリロニトリルの共重合組成を上記範囲とすることで良好な結果を得られやすくなる。
【0013】
アクリロニトリル系重合体におけるアクリロニトリル以外の共重合成分としては、アクリロニトリルと共重合可能な単量体であれば特に限定されず、具体的にはメタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体及びその塩、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボン酸基含有単量体及びその塩、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド等の単量体などが挙げられる。
【0014】
捲縮率の高い架橋アクリレート系繊維を得るための方法として、原料繊維のアクリロニトリル系繊維を2種以上のアクリロニトリル系重合体を複合したものとする手段が有効である。例えば、アクリロニトリル重合割合に差がある2種のアクリロニトリル系重合体を複合したアクリロニトリル系繊維を原料繊維とすることで、各アクリロニトリル系重合体の領域における架橋構造の導入量に差ができ、加水分解処理時の収縮の度合いに差が発生して捲縮を発現させることが可能となる。アクリロニトリル系重合体の複合構造は、サイド・バイ・サイドに接合されたものでも、ランダムに混合されてなるものでも構わないが、2種のアクリロニトリル系重合体をサイド・バイ・サイドに接合したものが好ましい。この場合、十分な捲縮率を得るには、2種のアクリロニトリル系重合体のアクリロニトリル重合割合の差を好ましくは1〜10%、さらに好ましくは1〜5%とし、2種のアクリロニトリル系重合体の複合比率を好ましくは20/80〜80/20、さらに好ましくは30/70〜70/30とする。
【0015】
また、本発明に採用するアクリロニトリル系繊維の形態としては、短繊維、トウ、糸、編織物、不織布等いずれの形態のものでもよく、また、製造工程中途品、廃繊維などでも採用できる。
【0016】
アクリロニトリル系繊維に架橋構造を導入するための架橋剤としては、従来公知のいずれの架橋剤も使用することができるが、窒素含有化合物を使用することが架橋反応の効率及び取扱いの容易さの点から好ましい。この窒素含有化合物は1分子中に2個以上の窒素原子を有することが必要である。1分子中の窒素原子の数が2個未満であると、架橋反応が生じないからである。かかる窒素含有化合物の具体例としては、架橋構造を形成しうるものであれば特に限定されないが、2個以上の1級アミノ基を有するアミノ化合物やヒドラジン系化合物が好ましい。2個以上の1級アミノ基を有するアミノ化合物としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミン系化合物、ジエチレントリアミン、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、N−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)などのトリアミン系化合物、トリエチレンテトラミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロピレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブチレンジアミンなどのテトラミン系化合物、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどであって2個以上の1級アミノ基を有するポリアミン系化合物などが例示される。また、ヒドラジン系化合物としては、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、臭化水素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネートなどが例示される。なお、1分子中の窒素原子の数の上限は特に限定されないが、12個以下であることが好ましく、さらに好ましくは6個以下であり、特に好ましくは4個以下である。1分子中の窒素原子の数が上記上限を超えると、架橋剤分子が大きくなり、繊維内に架橋構造を導入しにくくなる場合がある。
【0017】
架橋構造を導入する条件としては、特に限定されるものではなく、採用する架橋剤とアクリロニトリル系繊維との反応性や架橋構造の量、吸湿率、吸湿率差、繊維物性などを勘案し、適宜選定することができる。例えば、架橋剤としてヒドラジン系化合物を用いる場合は、ヒドラジン濃度として0.5〜40重量%となるように上記のヒドラジン系化合物を添加した水溶液に、上述したアクリロニトリル系繊維を浸漬し、50〜120℃、5時間以内で処理する方法などが挙げられる。
【0018】
架橋構造が導入された繊維には、アルカリ性金属化合物による加水分解処理が施される。該処理により、繊維中に存在しているニトリル基が加水分解され、カルボキシル基が形成される。具体的な処理条件としては、上述したカルボキシル基量などを勘案し、処理薬剤の濃度、反応温度、反応時間等の諸条件を適宜設定すればよいが、好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%の処理薬剤水溶液中、温度50〜120℃で1〜10時間処理する手段が工業的、繊維物性的にも好ましい。なお、上述の架橋導入処理および加水分解処理は、それぞれの処理薬剤を混合した水溶液を用いて、一括して処理することも可能である。
【0019】
ここで、カルボキシル基には、そのカウンターイオンが水素イオン以外の陽イオンである塩型カルボキシル基と、そのカウンターイオンが水素イオンであるH型カルボキシル基がある。その比率は任意に調整することが可能であるが、高い吸湿率を得るためにカルボキシル基の40%以上を塩型カルボキシル基とすることが望ましい。
【0020】
塩型カルボキシル基を構成する陽イオンの種類としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、マンガン、銅、亜鉛、銀などのその他の金属、NH
4、アミン等などの陽イオンが挙げられ、1種あるいは複数種を必要な特性に応じて選択することができる。特に、多価の金属イオンであるマグネシウム、カルシウム、亜鉛などを採用した場合には、捲縮率が高くなる傾向があり、好適である。例えば、2種のアクリロニトリル系重合体をサイド・バイ・サイドに接合したアクリロニトリル系繊維に対して、上述した架橋導入、加水分解を施して、カルボキシル基を形成し、カウンターイオンにマグネシウム、カルシウム、亜鉛等の多価金属イオンを選択すると捲縮率10%以上の架橋アクリレート系繊維を得られやすくなる。
【0021】
塩型カルボキシル基とH型カルボキシル基との比率を上記の範囲に調整する方法としては、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩などの金属塩によるイオン交換処理、硝酸、硫酸、塩酸、蟻酸などによる酸処理、あるいは、アルカリ性金属化合物などによるpH調整処理などを施す方法が挙げられる。
【0022】
また、本発明の架橋アクリレート系繊維おいては、繊維全体にカルボキシル基を存在させるようにすると、繊維の脆化や粘着性を抑制しつつ、より多くのカルボキシル基を導入することができるので、実用性が高く、吸湿性能も高い繊維とすることができる。多量のカルボキシル基を繊維の一部分に集中して存在させた場合、吸湿や吸水によってその部分が脆くなったり、粘着性を帯びたりすることがある。
【0023】
一方、カルボキシル基を繊維表層部のみに存在させた場合には、繊維中心部においては、カルボキシル基がほぼ存在しないため、吸湿等による脆化が抑えられて繊維がへたりにくくなり、嵩高性の向上に寄与できる。ただし、上述のように、繊維の脆化や粘着性の観点から、カルボキシル基量は抑制される。
【0024】
上述のようにして得られる本発明の架橋アクリレート系繊維は、高い吸湿率を有し、かつ実用的な嵩高さ及びカード加工性を得るために十分な捲縮を有する特徴を有するものである。このため、本発明の架橋アクリレート系繊維を繊維構造物の構成繊維として含有せしめた場合、その捲縮によって得られる嵩高さによって保温性が高められるとともに、体から発生する体液由来の蒸れ感が低減されて快適な湿度環境が実現されることが考えられる。
【0025】
本発明の架橋アクリレート系繊維は、単独で、あるいは、他の素材と組み合わせて繊維構造物を形成させることで、より有用なものとなる。かかる繊維構造物の外観形態としては、綿、糸、編地、織物、不織布、パイル布帛、紙状物等がある。該構造物内における本発明の架橋アクリレート系繊維の含有形態としては、他素材との混合により、実質的に均一に分布させたものや、複数の層を有する構造の場合には、いずれかの層(単数でも複数でも良い)に本発明の架橋アクリレート系繊維を集中して存在させたものや、夫々の層に本発明の架橋アクリレート系繊維を特定比率で分布させたもの等がある。
【0026】
本発明の繊維構造物において併用しうる他素材としては、特に制限はなく、公用されている天然繊維、有機繊維、半合成繊維、合成繊維が用いられ、さらには無機繊維、ガラス繊維等も用途によっては採用し得る。具体的な例としては、綿、麻、絹、羊毛、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、アクリル繊維などを挙げることができる。また、併用される他素材は羽毛、樹脂、粒子等の素材であってもよい。
【0027】
本発明の繊維構造物は、上記に例示した外観形態、含有形態及び他素材の組合せとして、無数のものが存在する。いかなる構造物とするかは、最終製品の使用態様(例えばシーズン性、運動性や内衣か中衣か外衣か、フィルター、カーテンやカーペット、寝具やクッション、インソール等としての利用の仕方など)、要求される機能、かかる機能を発現することへの架橋アクリレート系繊維の寄与の仕方等を勘案して適宜決定される。例えば、繊維構造物が中綿の場合であれば、ポリエステル、羊毛、羽毛などとの組み合わせが挙げられる。布団用中綿の場合、本発明の架橋アクリレート系繊維と羽毛を重量比で5:95〜75:25の割合で混用する事例が挙げられる。
【0028】
本発明の中綿の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の一般的な中綿の製造法を適用することができる。例えば、原料綿を解繊機で予備解繊・混合した後、カード機にてウェブ状に加工する方法を適用することができる。また、形態安定性を付与する目的でニードルパンチあるいはウォーターパンチ等の繊維を絡める工程、熱融着樹脂を使用した繊維間接着工程を追加してもよい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。実施例中の部及び百分率は、断りのない限り重量基準で示す。実施例中の特性の評価方法は以下の通りである。
【0030】
(1)カルボキシル基量
繊維試料約1gを、50mlの1mol/l塩酸水溶液に30分間浸漬する。次いで、繊維試料を、浴比1:500で水に浸漬する。15分後、浴pHが4以上であることを確認したら、乾燥させる(浴pHが4未満の場合は、再度水洗する)。次に、十分乾燥させた繊維試料約0.2gを精秤し(W1[g])、100mlの水を加え、さらに、15mlの0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液、0.4gの塩化ナトリウムおよびフェノールフタレインを添加して撹拌する。15分後、濾過によって試料繊維と濾液に分離し、引き続き試料繊維を、フェノールフタレインの呈色がなくなるまで水洗する。このときの水洗水と濾液をあわせたものを、フェノールフタレインの呈色がなくなるまで0.1mol/l塩酸水溶液で滴定し、塩酸水溶液消費量(V1[ml])を求める。得られた測定値から、次式によって全カルボキシル基量を算出する。
カルボキシル基量[mmol/g]=(0.1×15−0.1×V1)/W1
【0031】
(2)20℃×65%RH吸湿率
繊維試料約2.5gを、熱風乾燥器で105℃、16時間乾燥して重量を測定する(W2[g])。次に、該繊維試料を、温度20℃、65%RHに調節した恒温恒湿器に24時間入れる。このようにして吸湿した繊維試料の重量を測定する(W3[g])。これらの測定結果から、次式によって20℃×65%RH吸湿率を算出する。
20℃×65%RH吸湿率[%]=(W3−W2)/W2×100
【0032】
(3)捲縮率
JIS L1015により測定、算出する。
【0033】
(4)比容積(嵩高性)
JIS L1097により測定、算出する。
【0034】
(5)カード通過性
繊維長70mmの試料繊維50gを、温度30±5℃、50±10%RHに調節した室内で大和機工株式会社製サンプルローラーカード機(型番SC−300L)を用いてカードウェブを作成する。得られたウェブ形状について下記の基準で評価する。
○:絡合性が十分であり、斑のないウェブが得られる。
△:絡合性がやや不足し、ウェブに斑ができる。
×:絡合性が著しく不足して繊維同士が繋がらず、ウェブが得られない。
【0035】
[実施例1]
アクリロニトリル90重量%、アクリル酸メチルエステル10重量%のアクリロニトリル系重合体Ap(30℃ジメチルホルムアミド中での極限粘度[η]=1.5)、アクリロニトリル88重量%、酢酸ビニル12重量%のアクリロニトリル系重合体Bp([η]=1.5)をそれぞれ48重量%のロダンソーダ水溶液で溶解して、紡糸原液を調製した。特公昭39−24301号による複合紡糸装置にAp/Bpの複合比率が1/1となるようにそれぞれの紡糸原液を導き、常法に従って紡糸、水洗、延伸、捲縮、熱処理をして、単繊維繊度3.3dtexの重合体ApとBpを複合させたサイド・バイ・サイド型原料繊維を得た。
【0036】
該原料繊維に、水加ヒドラジンの20重量%水溶液中で、98℃×5時間架橋導入処理を行い、洗浄した。架橋導入された繊維を、3重量%硝酸水溶液中に浸漬し、90℃×2時間酸処理を行った。続いて3重量%水酸化ナトリウム水溶液中で90℃×2時間の加水分解処理を行い、3.5重量%硝酸水溶液で処理し、水洗した。得られた繊維を水に浸漬し、水酸化ナトリウムを添加してpH11に調整した後、繊維に含まれるカルボキシル基量の2倍に相当する硝酸マグネシウムを溶解させた水溶液に50℃×1時間浸漬することによりイオン交換処理を実施し、水洗、乾燥することにより、Mg塩型カルボキシル基を有する実施例1の架橋アクリレート系繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。また、該繊維の赤外線吸収測定を行ったところ、ニトリル基に由来する2250cm
−1付近の吸収が見られず、繊維全体でニトリル基の加水分解が進み、カルボキシル基が導入されたことが確認できた。
【0037】
[実施例2、3]
実施例1においてアクリロニトリル系重合体Ap/Bpの複合比率を表1に示す範囲で変化させること以外は同様にして、単繊維繊度3.3dtexのサイド・バイ・サイド型原料繊維を得た。この原料繊維を用いて、実施例1と同じ方法で架橋導入処理以降の処理を行い、Mg塩型カルボキシル基を有する実施例2及び3の架橋アクリレート系繊維を得た。これらの繊維の評価結果を表1に示す。また、これらの繊維の赤外線吸収測定においても、実施例1の架橋アクリレート系繊維と同様に、ニトリル基に由来する2250cm
−1付近の吸収は見られなかった。
【0038】
[実施例4]
実施例1において、硝酸マグネシウムの代わりに、硝酸カルシウムを使用すること以外は同様にして、Ca塩型カルボキシル基を有する実施例4の繊維を得た。該繊維の評価結果を表1に示す。
【0039】
[実施例5]
実施例1において得られたサイド・バイ・サイド型原料繊維に、水加ヒドラジン0.5重量%および水酸化ナトリウム2重量%を含有する水溶液中で、100℃×1時間、架橋導入処理及び加水分解処理を同時に行い、8重量%硝酸水溶液で処理し、水洗した。得られた繊維を水に浸漬し、水酸化ナトリウムを添加してpH9に調整した後、繊維に含まれるカルボキシル基量の2倍に相当する硝酸マグネシウムを溶解させた水溶液に50℃×1時間浸漬することによりイオン交換処理を実施し、水洗、乾燥することにより、Mg塩型カルボキシル基を有する実施例5の繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に示す。なお、かかる繊維の赤外線吸収測定においては、ニトリル基に由来する2250cm
−1付近に吸収があり、繊維表層部においてはニトリル基の加水分解が進行しているが、繊維中心部においてはニトリル基が残存していることが確認された。
【0040】
[比較例1]
実施例1において、アクリロニトリル系重合体Apを48重量%のロダンソーダ水溶液で溶解した紡糸原液のみを用いること以外は同様にして、単繊維繊度3.3dtexの重合体Apのみで構成された原料繊維を得た。この原料繊維を用いて、実施例1と同じ方法で架橋導入処理以降の処理を行い、比較例1の繊維を得た。該繊維の評価結果を表1に示す。
【0041】
[実施例6]
実施例1において、硝酸マグネシウムによるイオン交換処理を実施しないこと以外は同様にして、Na塩型カルボキシル基を有する実施例4の繊維を得た。該繊維の評価結果を表2に示す。
【0042】
[比較例2]
比較例1において、硝酸マグネシウムによるイオン交換処理を実施しないこと以外は同様にして、Na塩型カルボキシル基を有する比較例2の繊維を得た。該繊維の評価結果を表2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表1からわかるように、実施例1〜5は高い吸湿率と嵩高性を両立しているので、保温性を保持しながら調湿機能のある中綿として用いることが可能である。これに対して比較例1においては同等の吸湿率であるが嵩高性は低くなる。また、表2からわかるように、実施例6においては良好なカード加工性が得られるが、比較例2では捲縮率が低く、カード加工性が不良であった。