(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
人力で車輪を回転させる自転車の場合、一旦走り出せば、小さな力で走行することができるが、発進時、加速時、登坂等の漕ぎ始めでは、特に大きな反発力を受け、入力したエネルギーの一部が、衝撃として膝、足首、腰などに跳ね返り、人体に大きな負荷を発生させるだけでなく、入力エネルギーを効率的に利用できず、推進力の低下につながっていた。そして、急発進、急加速を行う場合、急な坂道を登る場合、自転車の運転者の体重や積み荷の重量が重い場合などには、特に人体への負荷(抗力)が大きくなり、その分、必要なエネルギーも増大していた。
自転車の場合、足の上下運動をクランクによって回転運動に変換するため、特に上死点及び下死点においてスムーズに脚力を伝達することは困難であり、膝や足首への負担増加を招くと共に、トルクの途切れ、スピードの低下が発生し、低速で走行する場合には、ふらつきが発生し易く、走行の安定性が低下するという問題点があった。
そこで、従来から、自転車において、走行時の衝撃を吸収すること、回転効率の向上を図ること、推進力、加速を滑らかにして運転者の疲労を軽減すること等を目的として、様々な構造が検討されている。
【0003】
例えば、(特許文献1)には、「巡航運転モードのときはペダルの回転半径が小さく、加重な負荷がかかる運転モードに入ると、抗力に対応してペダルの回転半径が自動的に伸長し、大きな回転モーメントが得られる、自動伸縮変化型クランク機構を備えた自転車」が開示されている。
(特許文献2)には、「第1フレーム部材に固定可能であり、内部に形成された収納空間と収納空間の内周面から内方に突出する少なくとも一つの第1突出部とを有する第1部材と、第2フレーム部材に固定可能であり第1部材の収納空間内に相対回転自在に配置され、外周面から外方に突出する第2突出部を有する第2部材と、第1部材と第2部材との間に両突出部で区画されて形成される2種の空間のうち一方に装着され、第1突出部と第2突出部とに保持されかつ内周面と外周面との少なくともいずれか一方との間に隙間をあけて配置され、両部材の相対回転により伸縮する第1弾性部材と、を備えた自転車用緩衝装置」が開示されている。
(特許文献3)には、「外周に多数の歯を備えたギヤ本体と、該ギヤ本体を支持する支持体とから成り、これらギヤ本体と支持体との間に、これらギヤ本体と支持体との一方から他方に動力を伝える動力伝達部を設けて、この動力伝達部に、ギヤ本体と支持体とを所定角度相対回転可能とする隙間を設けると共に、動力伝達部と異なる部位に、隙間を保持し、かつ、ギヤ本体と支持体との相対回転時弾性変形して、隙間を吸収し、動力伝達部からの動力伝達を可能とする弾性体を設けたことを特徴とする自転車用駆動ギヤ」が開示されている。
(特許文献4)には、「前歯車の内側周壁内に、該前歯車の回転方向と逆方向に巻装された巻バネが組み込まれて、該巻バネの作用によりペダルアームの過大踏み圧によるトルクが巻バネに蓄積され、ペダル入力の不足時には蓄積されたトルクが補足されて、ペダルによる回転効率が向上せられる構成を特徴とする自転車の動力伝達装置。」が開示されている。
(特許文献5)には、「自転車のギヤ軸に複数個のばね受け片を放射状に突設した金具を嵌着し、ばね受け片の外周縁に内周面が支えられてギヤ軸と同芯に回動する環状体を嵌装してクランクの基端部とし環状体内周面にばね押し片をばね受け片に対応するように突設し、ばね受け片とばね押し片の間にばね体を挿入配置することにより、力を受けてクランクが回転すると基端部の環状体も共にギヤ軸に先行して回転し、突設したばね押し片はばね体を圧縮し、その反力がばね受け片を押してギヤ軸を回転さすことを特徴とする自転車のクランク装置」が開示されている。
【0004】
しかし、上記従来の技術は、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)の自転車は、抗力に対応してペダルの回転半径を自動的に伸長させるので、クランク機構の構造が複雑になり、部品点数が増加し、動作安定性、組立作業性、量産性に欠けるという課題を有していた。
また、抗力が大きな時にペダルの回転半径を大きくすることにより、小さな入力で大きな出力を得ることができ、漕ぎ始めなどにおける負荷を低減することはできるが、ペダルの軌跡が円軌道を描くことができず、無理な漕ぎ方をする必要があるため、膝や足首などに大きな負担がかかるという課題を有していた。
(2)(特許文献2)の自転車用緩衝装置は、第1フレーム部材又は第2フレーム部材に路面から衝撃が作用すると、第1部材と第2部材とが相対回転し、両突出部で区画される空間の一方に装着された第1弾性部材が両突出部に挟まれて圧縮変形して弾性復元力が発生し衝撃が吸収されるものであるが、サスペンション組立体が外側部材によって主フレーム部材に固定されているため、クランクの初動時の衝撃エネルギーを吸収して蓄積し、蓄積されたエネルギーを弾性体の復元時に回転力に変換して推進力として有効に利用することができず、回転効率や加速性の向上、回転トルクの均一化などに関しては考慮されていなかった。
(3)(特許文献3)の自転車用駆動ギヤは、踏込み開始時の駆動力による衝撃を緩和することを目的としており、弾性体を動力伝達部と異なる部位でギヤ本体と支持体との間に設け、弾性体を捩るように変形させる構造であるため、弾性体が変形し難く、エネルギーを蓄積し難いので、弾性体の復元を有効に回転力に変換することが困難で、エネルギーの有効利用性に欠けるという課題を有していた。
また、部品点数が多く、構造が複雑で量産性に欠けると共に、ギヤ本体と支持体が弾性体を介して一体化されているため、ギヤ本体や弾性体を交換することが困難であり、メンテナンス性に欠けるという課題を有していた。
(4)(特許文献4)の自転車の動力伝達装置は、ペダルの過大踏み圧によるトルクを蓄積し、蓄積されたトルクをペダル入力の不足時に補足して踏み圧入力を安定化してペダルによる回転効率の向上を図ること、推進、加速を滑らかにして疲労を軽減することを目的としているが、トルクの蓄積、補足をゼンマイ(板バネ)状バネやコイル状バネなどの巻バネによって行っているため、巻バネを巻き終わってトルクが蓄積されるまでに時間がかかり、その間はペダル軸が前歯車に対して空回りして動力を伝達することができず、著しく使用性に欠けるという課題を有していた。
また、巻バネが破損した場合、ペダル軸から前歯車に動力を伝達することができず、走行不能になるため、動力伝達の確実性、安定性に欠けるという課題を有していた。
(5)(特許文献5)の自転車のクランク装置は、クランクの基端部である環状体の内周面が、ばね受け片の外周縁に支えられているので、環状体の内周面とばね受け片の外周縁との間の摩擦力により、クランクとギヤ軸が共周りし易く、環状体をギヤ軸に先行して回転させることが困難で、ばね体を確実に圧縮することができず、動作安定性に欠け、上死点での蓄力(衝撃エネルギーの吸収)と下死点での復元が十分に行われず、回転効率や加速性の向上、回転トルクの均一化の効果が不十分であるという課題を有していた。
また、ギヤ軸の両端にクランク装置を取り付けなければならないため、部品点数が増加し、装置全体が複雑化、大型化し、省スペース性、量産性に欠けると共に、両端のクランクの位相によってギヤ軸に捩れが発生し、入力されたエネルギーの蓄力や蓄力されたエネルギーの回転力への変換を効率的に行うことができず、耐久性、動作安定性、効率性に欠けるという課題を有していた。
【0005】
そこで、本発明者は、上記従来の課題を解決すべく、人力によって車輪を回転させて走行する自転車の回転軸に配設することにより、発進,加速,登坂等の初動時や走行中に外部から受ける大きな負荷などによって生じる衝撃エネルギーや過大な入力エネルギーを確実に吸収して蓄え、人体への負荷を大幅に低減できると共に、蓄えたエネルギーを入力エネルギーが減少した時或いは途切れた時に回転軸の回転に無駄なく有効に利用することができ、回転伝達の確実性、効率性に優れ、部品点数の少ない簡素な構成で軽量化を図ることができ、分解や組立が容易でメンテナンス性、生産性に優れ、既存の自転車に簡便に組込むことができ、量産性、組立作業性、省スペース性、汎用性に優れる自転車用回転伝達機構を備えることにより、使用者の足腰などにかかる負荷を低減することができ、重い荷物を運搬する際や体重の重い人を乗せた際にも、加速性、回転トルクの均一性、低速運転時の安定性に優れ、複雑な操作が不要で、運転者の膝や足首などにかかる負荷を低減することができ、女性や年配者或いは重い荷物や子供を乗せる主婦等でも手軽に運転することができ、坂道や抵抗の大きな道でも楽に走行することができる日用品としてだけでなく、加速性、回転トルクの均一性、低速運転時の安定性に優れ、リハビリ用や競技用としても使用することができ、動作の安定性、取り扱い性、汎用性に優れた自転車の提供を目的として、以下のような構成の自転車を提案している(特許文献6)。
すなわち、(特許文献6)には、「回転軸を有する内部回転部材と前記内部回転部材の前記回転軸に回動自在に配設される外部回転部材とを有する自転車用回転伝達機構と、前記自転車用回転伝達機構の前記内部回転部材の前記両端部に180度の位相差で配設される左右のクランクアームと、前記クランクアームの端部に回動自在に配設されるペダルと、を備えた自転車であって、
前記内部回転部材が、前記回転軸と一体に形成され又は前記回転軸の外周に固設され前記回転軸の外周側に突出する1以上の外周凸部を有し、
前記外部回転部材が、前記内部回転部材の前記外周凸部の側部位置で前記回転軸に回動自在に挿設される側板部と、前記内部回転部材の前記外周凸部の外側で前記回転軸と同心円状に前記側板部の外周に立設される外筒部と、前記外筒部の内周側に突出するように前記側板部及び/又は前記外筒部と一体に形成され或いは前記側板部及び/又は前記外筒部に固定され前記内部回転部材の前記外周凸部と交互に配置される1以上の内周凸部と、を有し、
前記外部回転部材の前記側板部又は前記外筒部にチェーンリングが形設又は固設され、
前記外周凸部と前進する際の前記外周凸部の回転方向側の前記内周凸部との間に弾性変形部が配設され、前記内部回転部材と前記外部回転部材が相対的に回転する際に、前記弾性変形部が、前記外周凸部と前記内周凸部の間に挟まれて弾性変形することを特徴とする自転車。」が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、好適な実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施の形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
[実施の形態1]
(回転伝達機構の構成)
まず、本発明の実施の形態1における回転伝達機構の構成について、
図1〜
図6を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態1における回転伝達機構を示す表面図、
図2は、当該回転伝達機構を示す裏面図、
図3は、
図1のIII−III線矢視断面図、
図4は、当該回転伝達機構を示す分解表面図、
図5は、当該回転伝達機構を構成する内部回転部材を示す裏面図、
図6は、当該回転伝達機構の、カバー部を取り外した状態を示す表面図である。
【0027】
図1〜
図6に示すように、本実施の形態の回転伝達機構1は、例えば自転車のクランク軸等の回転軸に挿通される内部回転部材3と、内部回転部材3に回動自在に配設される外部回転部材4と、を備えている。
【0028】
内部回転部材3は、円盤状の内部回転部材本体3aと、内部回転部材本体3aの表面と裏面にそれぞれ一体形成された低背円柱状の凸部3b,3cと、凸部3bに形成された断面が略長円状の圧入用凹部3dと、凸部3cと内部回転部材本体3aを貫通して圧入用凹部3dに至る四角筒状のクランク軸挿通孔3eと、を備えている。
また、内部回転部材3は、内部回転部材本体3aに一体形成され内部回転部材本体3aの外周側に突出する5つの外周凸部3fを備えており、当該外周凸部3fの表面と裏面にはそれぞれベアリング用ボール3g,3hが回転可能に保持されている。ボール3g,3hは、外周凸部3fの径方向突出高さに対して45〜65%、好ましくは58〜62%の位置にある。
【0029】
外部回転部材4は、内部回転部材3の外周凸部3fの側部位置で内部回転部材3の凸部3cに回動自在に挿設された側板部4aと、内部回転部材3の外周凸部3fの外側で側板部4aの外周にネジ留め固定された円環部4bと、側板部4aに対向配置された状態で凸部3bに回動自在に挿設されると共に、円環部4bにネジ留め固定されたカバー部4cと、を備えている。尚、内部回転部材3は、外周凸部3fの表面と裏面に保持されたベアリング用ボール3g,3hがそれぞれカバー部4c、側板部4a上を転がりながら回転する。これにより、内部回転部材3を滑らかに回転させることができる。
また、外部回転部材4は、円環部4bの内周側に突出するように円環部4bに一体形成され内部回転部材3の外周凸部3fと交互に配置された5つの内周凸部4dを備えている。
さらに、外部回転部材4の円環部4bの裏面側の外周部には、チェーンリング5が固設されている。
【0030】
回転伝達機構1は、次のような手順で組み立てられる。すなわち、まず、
図2,
図3に示すように、円環部4bの裏面側から当該円環部4bに側板部4aをネジ留め固定する。次いで、
図3,
図4,
図6に示すように、内部回転部材3の裏面側の凸部3cを側板部4aの表面側から当該側板部4aの挿通孔4eに挿通することにより、内部回転部材3を円環部4b内に配置する。次いで、
図1,
図3,
図4に示すように、内部回転部材3の表面側の凸部3bにカバー部4cの挿通孔4fを挿通し、当該カバー部4cを円環部4bの表面にネジ留め固定する。
【0031】
図6(a)に示すように、外周凸部3fと前進する際の当該外周凸部3fの回転方向側の内周凸部4dとの間には、合成ゴム製の弾性変形部6が配設されており、内部回転部材3と外部回転部材4が相対的に回転する際に、弾性変形部6が、外周凸部3fと内周凸部4dの間に挟まれて弾性変形(圧縮変形)するようにされている。ここで、弾性変形部6の側方への変形は、側板部4aとカバー部4cとにより阻止され、これにより、入力されるエネルギーの一部を弾性変形部6に効率的に蓄力することが可能となる。
【0032】
図6(b)に示すように、本実施の形態の回転伝達機構1において、外周凸部3fは、回転方向側の面が回転方向と反対側の面よりも10〜15%程度、好ましくは12〜13%程度広くなっている。このため、外周凸部3fと前進する際の当該外周凸部3fの回転方向側の内周凸部4dとの間に配設された弾性変形部6を、従来よりも広い範囲で圧縮変形させて、圧縮(弾性)エネルギーを効率良く弾性変形部6に蓄えることができる。この圧縮(弾性)エネルギーは、回転エネルギーに変換されて、自転車等の推進力として利用される。
より具体的には、外周凸部3fは、回転方向側の面が回転方向と反対側の面よりも緩やかな傾きをもって形成されており、かつ、回転方向側の面と内部回転部材本体3aとの境界部分にアールがつけられている。このような形状とすることによって外周凸部3fの回転方向側の面を広くしたことにより、外周凸部3fの高さを低くすることが可能となり、回転伝達機構1の小型化を図ることができる。また、外周側に向かうにつれて弾性変形部6の圧縮距離が大きくなるため、より多くの圧縮エネルギーを蓄えることができる。
また、円環部4bの厚みを調整することにより、回転伝達機構1の回転時における遠心力を調整することができるので、回転の慣性力を調整することができる。
【0033】
内周凸部4dのうち、外周凸部3fの回転方向側の面と対向する面は、凹んだ状態に形成されている。このため、外周凸部3fと前進する際の当該外周凸部3fの回転方向側の内周凸部4dとの間に配設される弾性変形部6の量を増やすことができるので、推進力として利用するのに十分な量の圧縮(弾性)エネルギーを弾性変形部6に蓄えることができる。この凹みは、弾性変形部6の体積に対して2〜5%であることが好ましい。この凹みが大きすぎると、弾性変形部6の圧縮が不十分となるからである。
【0034】
(回転伝達機構の使用例)
次に、本実施の形態における回転伝達機構1の使用例について、
図7,
図8をも参照しながら説明する。
【0035】
図7は、本発明の実施の形態1における回転伝達機構を、自転車に使用した例を示す要部断面平面図、
図8は、当該回転伝達機構の、カバー部
4cを取り外した状態で、かつ、弾性変形部が弾性変形(圧縮変形)された状態を示す表面図である。
【0036】
図7に示すように、回転軸としての自転車のクランク軸2は、自転車のフレームと一体のクランク軸保持部7に左右のボールベアリング8a,8bを介して回動自在に保持されている。クランク軸2の右側端部には、内部回転部材3のクランク軸挿通孔3e(
図3参照)を挿通して固定することにより、回転伝達機構1が装着されている。また、クランク軸2の左右両端には、クランクアーム9a,9bが互いに180度の位相差をもって固定されている。
図7中、参照符号10は、クランク軸2にクランクアーム9a,9bを固定するためのクランクアーム固定部材である。クランク軸2は、内部回転部材3のクランク軸挿通孔3eの四角筒と嵌合しており、両者は一体的に回転する。
クランクアーム9a,9bの端部には、回動自在なペダル(図示せず)が配設されている。
【0037】
以上のようにして自転車のクランク軸2に装着された回転伝達機構1の動作について、
図6〜8を参照しながら説明する。
【0038】
図7において、運転者がクランクアーム9a,9bの端部に配設されたペダル(図示せず)を踏むと、クランク軸2と共に内部回転部材本体3aの外周に突設された外周凸部3fが、
図6,
図8の矢印aの方向に回転する。
そして、クランク軸2が回転して、外周凸部3fが内周凸部4dに近づくと、弾性変形部6が、外周凸部3fと内周凸部4dの間に挟まれることによって圧縮され、入力エネルギーの一部が弾性変形部6に蓄えられる。
クランク軸2の回転の初期(
図6→
図8)では弾性変形部6が弾性変形するが、変形後は、クランク軸2の回転力が外周凸部3fから内周凸部4dに伝達され、クランク軸2からチェーンリング5までが略一体となって回転し、チェーンリング5に張設されたチェーン(図示せず)によって後輪側のスプロケットへと確実に回転が伝達される。
弾性変形(圧縮変形)された弾性変形部6は、ペダルからの入力が途切れたり弱まったりした時に復元し、復元エネルギーとして内周凸部4dを押圧して、外部回転部材4及びチェーンリング5を進行方向に回転させる。すなわち、弾性変形部6の圧縮(弾性)エネルギーが、回転エネルギーに変換されて、自転車の推進力として利用される。
【0039】
尚、本実施の形態においては、クランクアーム9a,9bがクランク軸2の左右両端のみに固定されている場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。例えば、
図9に示すように、クランクアーム9bの回転伝達機構1と対向する面に圧入用凸部11を設け、当該圧入用凸部11を内部回転部材3の圧入用凹部3dに圧入すると共に、クランクアーム9bをクランク軸2の右端に固定するようにしてもよい。かかる構成によれば、クランクアーム9bと内部回転部材3を完全に一体化することができるので、ペダルの踏み動作を内部回転部材3の外周凸部3fの回転動作に確実に変換することが可能となる。
【0040】
また、本実施の形態においては、外周凸部3fと内周凸部4dを5つずつ設けた場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。外周凸部3fと内周凸部4dの数は、それぞれ1つ又は複数であればよいが、弾性変形部6が蓄えた力を円周方向に伝えるためには、外周凸部3fと内周凸部4dの数は、4つ以上であることが好ましく、また、弾性変形部6の体積を十分に確保するためには、外周凸部3fと内周凸部4dの数は、8つ以下であることが好ましい。
【0041】
また、本実施の形態においては、外周凸部3fが内部回転部材本体3aに一体形成されている場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。外周凸部は、内部回転部材本体に固設されていてもよい。
また、本実施の形態においては、内周凸部4dが円環部4bに一体形成されている場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。内周凸部は、円環部に固設されていてもよい。
【0042】
また、本実施の形態においては、弾性変形部が合成ゴム製の弾性変形部6である場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。
弾性変形部は、内部回転部材3と外部回転部材4が相対的に回転する際に弾性変形(圧縮変形)し、変形後は内部回転部材3と外部回転部材4の間で回転を伝達できるものであればよく、弾性変形部の変形量、弾性率などは、使用者の好みに応じて、適宜、選択することができる。弾性変形部としては、合成ゴムの他に、例えば、外周凸部3fと内周凸部4dの間に封入される気体などを用いることもできる。
【0043】
また、本実施の形態においては、自転車に使用される回転伝達機構1を例に挙げて説明したが、本発明の回転伝達機構は必ずしもかかる用途に限定されるものではない。本発明の回転伝達機構は、車輪を有する機構、例えば土木用一輪車、車椅子、人力車、リヤカー等に用いることもでき、同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
[実施の形態2]
(回転伝達機構の構成)
次に、本発明の実施の形態2における回転伝達機構の構成について、
図10〜
図12を参照しながら説明する。
【0045】
図10は、本発明の実施の形態2における回転伝達機構を示す表面図、
図11は、当該回転伝達機構を示す裏面図、
図12は、
図10のXII−XII線矢視断面図である。
【0046】
図10〜
図12に示す本実施の形態の回転伝達機構12は、上記実施の形態1の回転伝達機構1(
図1〜
図3等参照)と比較すると、内部回転部材の構成のみが異なっている。このため、上記実施の形態1の回転伝達機構1の構成部材と同じ構成部材には同一の参照符号を付し、その説明は省略する。
【0047】
図10〜
図12に示すように、本実施の形態の回転伝達機構12の内部回転部材3’は、円盤状の内部回転部材本体3aと、内部回転部材本体3aの表面と裏面にそれぞれ一体形成された低背円柱状の凸部3b,3cと、凸部3bと内部回転部材本体3aと凸部3cを貫通して形成されたスプライン穴3’dと、を備えている。
また、内部回転部材3’は、内部回転部材本体3aに一体形成され内部回転部材本体3aの外周側に突出する5つの外周凸部3fを備えており、当該外周凸部3fの表面と裏面にはそれぞれベアリング用ボール3g,3hが回転可能に保持されている(
図4,
図5参照)。
【0048】
(回転伝達機構の使用例)
次に、本実施の形態における回転伝達機構12の使用例について、
図13,
図14をも参照しながら説明する。
【0049】
図13は、本発明の実施の形態2における回転伝達機構を、電動アシスト自転車に使用した例を示す要部断面分解平面図、
図14は、当該回転伝達機構を、電動アシスト自転車に使用した例を示す要部断面平面図である。
【0050】
本実施の形態の回転伝達機構12は、電動アシスト自転車のクランク軸に装着して使用される。
図13,
図14に示すように、電動アシスト自転車のモータ駆動ユニット13には、左右に貫通した状態で回転軸としてのクランク軸14が回動自在に保持されている。クランク軸14の右側端部には、内部回転部材3’のスプライン穴3’dと嵌合するスプライン14aがクランク軸14と同心状に固着されており、当該スプライン14aに内部回転部材3’のスプライン穴3’dを挿通することにより、
クランク軸14の右側端部に回転伝達機構12が装着されている。また、クランク軸14の左右両端には、クランクアーム15a,15bが互いに180度の位相差をもって固定されている。
図13,
図14中、参照符号16は、クランク軸14にクランクアーム15a,15bを固定するためのクランクアーム固定部材である。
クランクアーム15a,15bの端部には、回動自在なペダル(図示せず)が配設されている。
【0051】
モータ駆動ユニット13内には、クランク軸14の近傍に位置してトルクセンサが配設されており、ペダルからの踏力による人力駆動力を当該トルクセンサによって検出することができるようにされている。そして、トルクセンサによる検出結果に応じてモータが駆動し、クランク軸14の回転をアシストすることができるようにされている(補助駆動力)。
【0052】
以上のようにして電動アシスト自転車のクランク軸14に装着された回転伝達機構12の動作は、上記実施の形態1の場合とほぼ同じである。但し、上記実施の形態1の場合と異なり、ペダルからの踏力による人力駆動力がトルクセンサによって検出され、人力駆動力に対応したモータの補助駆動力(アシスト力)が加えられる。これにより、急な坂道でも楽に走行することが可能となる。そして、このように本発明の回転伝達機構を電動アシスト自転車のクランク軸に装着して使用することにより、運転者の疲労を格段に軽減することが可能となる。
【0053】
[実施の形態3]
(回転伝達機構の構成)
次に、本発明の実施の形態3における回転伝達機構の構成について、
図15〜
図18を参照しながら説明する。
【0054】
図15は、本発明の実施の形態3における回転伝達機構を示す表面図、
図16は、当該回転伝達機構を示す裏面図、
図17は、
図15のXVII−XVII線矢視断面図、
図18は、当該回転伝達機構の、カバー部を取り外した状態を示す表面図である。
【0055】
図15〜
図18に示すように、本実施の形態の回転伝達機構17は、例えば電動アシスト自転車のクランク軸等の回転軸に挿通される内部回転部材18と、内部回転部材18に回動自在に配設される外部回転部材19と、を備えている。
【0056】
内部回転部材18は、円盤状の内部回転部材本体18aと、内部回転部材本体18aの表面と裏面の外周にそれぞれ一体形成された低背円筒状の凸部18b,18cと、内部回転部材本体18aを貫通して形成されたクランク軸挿通孔18dと、を備えている。ここで、クランク軸挿通孔18dの裏面側は、スプライン穴18eとなっている。
また、内部回転部材18は、内部回転部材本体18aに一体形成され内部回転部材本体18aの外周側に突出する6つの外周凸部18fを備えており、当該外周凸部18fの表面と裏面にはそれぞれベアリング用ボール18g,18hが回転可能に保持されている。ボール18g,18hは、外周凸部18fの径方向突出高さに対して45〜65%、好ましくは58〜62%の位置にある。
【0057】
外部回転部材19は、内部回転部材18の外周凸部18fの側部位置で内部回転部材18の凸部18cに回動自在に挿設された側板部19aと、内部回転部材18の外周凸部18fの外側で側板部19aの外周にネジ留め固定された円環部19bと、側板部19aに対向配置された状態で凸部18bに回動自在に挿設されたカバー部19cと、を備えている。尚、内部回転部材18は、外周凸部18fの表面と裏面に保持されたベアリング用ボール18g,18hがそれぞれカバー部19c、側板部19a上を転がりながら回転する。これにより、内部回転部材18を滑らかに回転させることができる。
また、外部回転部材19は、円環部19bの内周側に突出するように円環部19bに一体形成され内部回転部材18の外周凸部18fと交互に配置された6つの内周凸部19dを備えている。側板部19aとカバー部19cは、内周凸部19dにネジ留め固定されている。
さらに、外部回転部材19の円環部19bの裏面側の外周部には、チェーンリング20が固設されている。
【0058】
図18(a)に示すように、外周凸部18fと前進する際の当該外周凸部18fの回転方向側の内周凸部19dとの間には、合成ゴム製の弾性変形部21が配設されており、内部回転部材18と外部回転部材19が相対的に回転する際に、弾性変形部21が、外周凸部18fと内周凸部19dの間に挟まれて弾性変形(圧縮変形)するようにされている。ここで、弾性変形部21の側方への変形は、側板部19aとカバー部19cとにより阻止され、これにより、入力されるエネルギーの一部を弾性変形部21に効率的に蓄力することが可能となる。
【0059】
図18(b)に示すように、本実施の形態の回転伝達機構17において、外周凸部18fは、回転方向側の面が回転方向と反対側の面よりも10〜15%程度、好ましくは12〜13%程度広くなっている。このため、外周凸部18fと前進する際の当該外周凸部18fの回転方向側の内周凸部19dとの間に配設された弾性変形部21を、従来よりも広い範囲で圧縮変形させて、圧縮(弾性)エネルギーを効率良く弾性変形部6に蓄えることができる。この圧縮(弾性)エネルギーは、回転エネルギーに変換されて、電動アシスト自転車等の推進力として利用される。
より具体的には、外周凸部18fは、回転方向側の面が回転方向と反対側の面よりも緩やかな傾きをもって形成されており、かつ、回転方向側の面と内部回転部材本体18aとの境界部分にアールがつけられている。このような形状とすることによって外周凸部18fの回転方向側の面を広くしたことにより、外周凸部18fの高さを低くすることが可能となり、回転伝達機構17の小型化を図ることができる。また、外周側に向かうにつれて弾性変形部21の圧縮距離が大きくなるため、より多くの圧縮エネルギーを蓄えることができる。
【0060】
内周凸部19dのうち、外周凸部18fの回転方向側の面と対向する面は、凹んだ状態に形成されている。このため、外周凸部18fと前進する際の当該外周凸部18fの回転方向側の内周凸部19dとの間に配設される弾性変形部21の量を増やすことができるので、推進力として利用するのに十分な量の圧縮(弾性)エネルギーを弾性変形部21に蓄えることができる。この凹みは、弾性変形部21の体積に対して2〜5%であることが好ましい。この凹みが大きすぎると、弾性変形部21の圧縮が不十分となるからである。
【0061】
(回転伝達機構の使用例)
次に、本実施の形態における回転伝達機構17の使用例について、
図19〜
図21をも参照しながら説明する。
【0062】
図19は、本発明の実施の形態3における回転伝達機構を、電動アシスト自転車に使用した例を示す要部断面分解平面図、
図20は、当該回転伝達機構を、電動アシスト自転車に使用した例を示す要部断面平面図、
図21は、当該回転伝達機構の、カバー部
19cを取り外した状態で、かつ、弾性変形部が弾性変形(圧縮変形)された状態を示す表面図である。
【0063】
本実施の形態の回転伝達機構17は、電動アシスト自転車のクランク軸に装着して使用される。
図19,
図20に示すように、電動アシスト自転車のモータ駆動ユニット13には、左右に貫通した状態で回転軸としてのクランク軸14が回動自在に保持されている。クランク軸14の右側端部には、内部回転部材18のスプライン穴18eと嵌合するスプライン14aがクランク軸14と同心状に固着されており、当該スプライン14aに内部回転部材18のスプライン穴18eを挿通することにより、クランク軸14の右側端部に回転伝達機構17が装着されている。また、クランク軸14の左右両端には、クランクアーム15a,15bが互いに180度の位相差をもって固定されている。
図19,
図20中、参照符号16は、クランク軸14にクランクアーム15a,15bを固定するためのクランクアーム固定部材である。
クランクアーム15a,15bの端部には、回動自在なペダル(図示せず)が配設されている。
【0064】
モータ駆動ユニット13内には、クランク軸14の近傍に位置してトルクセンサが配設されており、ペダルからの踏力による人力駆動力を当該トルクセンサによって検出することができるようにされている。そして、トルクセンサによる検出結果に応じてモータが駆動し、クランク軸14の回転をアシストすることができるようにされている(補助駆動力)。
【0065】
以上のようにして電動アシスト自転車のクランク軸14に装着された回転伝達機構17の動作について、
図18〜
図21を参照しながら説明する。
【0066】
図20において、運転者がクランクアーム15a,15bの端部に配設されたペダル(図示せず)を踏むと、クランク軸14と共に内部回転部材本体18aの外周に突設された外周凸部18fが、
図18,
図21の矢印bの方向に回転する。
そして、クランク軸14が回転して、外周凸部18fが内周凸部19dに近づくと、弾性変形部21が、外周凸部18fと内周凸部19dの間に挟まれることによって圧縮され、入力エネルギーの一部が弾性変形部21に蓄えられる。
クランク軸14の回転の初期(
図18→
図21)では弾性変形部21が弾性変形するが、変形後は、クランク軸14の回転力が外周凸部18fから内周凸部19dに伝達され、クランク軸14からチェーンリング20までが略一体となって回転し、チェーンリング20に張設されたチェーン(図示せず)によって後輪側のスプロケットへと確実に回転が伝達される。
弾性変形(圧縮変形)された弾性変形部21は、ペダルからの入力が途切れたり弱まったりした時に復元し、復元エネルギーとして内周凸部19dを押圧して、外部回転部材19及びチェーンリング20を進行方向に回転させる。すなわち、弾性変形部21の圧縮(弾性)エネルギーが、回転エネルギーに変換されて、電動アシスト自転車の推進力として利用される。
【0067】
また、ペダルからの踏力による人力駆動力がトルクセンサによって検出され、人力駆動力に対応したモータの補助駆動力(アシスト力)が加えられる。これにより、急な坂道でも楽に走行することが可能となる。
【0068】
以上のように本発明の回転伝達機構を電動アシスト自転車のクランク軸に装着して使用することにより、運転者の疲労を格段に軽減することが可能となる。
【0069】
尚、本実施の形態においては、外周凸部18fと内周凸部19dを6つずつ設けた場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。外周凸部18fと内周凸部19dの数は、それぞれ1つ又は複数であればよいが、弾性変形部21が蓄えた力を円周方向に伝えるためには、外周凸部18fと内周凸部19dの数は、4つ以上であることが好ましく、また、弾性変形部21の体積を十分に確保するためには、外周凸部18fと内周凸部19dの数は、8つ以下であることが好ましい。
【0070】
また、本実施の形態においては、外周凸部18fが内部回転部材本体18aに一体形成されている場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。外周凸部は、内部回転部材本体に固設されていてもよい。
また、本実施の形態においては、内周凸部19dが円環部19bに一体形成されている場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。内周凸部は、円環部に固設されていてもよい。
【0071】
また、本実施の形態においては、弾性変形部が合成ゴム製の弾性変形部21である場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。
弾性変形部は、内部回転部材18と外部回転部材19が相対的に回転する際に弾性変形(圧縮変形)し、変形後は内部回転部材18と外部回転部材19の間で回転を伝達できるものであればよく、弾性変形部の変形量、弾性率などは、使用者の好みに応じて、適宜、選択することができる。弾性変形部としては、合成ゴムの他に、例えば、外周凸部18fと内周凸部19dの間に封入される気体などを用いることもできる。
【0072】
また、本実施の形態においては、電動アシスト自転車に使用される回転伝達機構17を例に挙げて説明したが、本発明の回転伝達機構は必ずしもかかる用途に限定されるものではない。本発明の回転伝達機構は、車輪を有する機構、例えば通常の自転車、土木用一輪車、車椅子、人力車、リヤカー等に用いることもでき、同様の作用効果を得ることができる。
【0073】
[実施の形態4]
(回転伝達機構の構成)
次に、本発明の実施の形態4における回転伝達機構の構成について、
図22を参照しながら説明する。
【0074】
図22は、本発明の実施の形態4における回転伝達機構の、カバー部を取り外した状態を示す表面図である。
【0075】
図22に示すように、本実施の形態の回転伝達機構22は、例えば自転車のクランク軸等の回転軸に挿通される内部回転部材23と、内部回転部材23に回動自在に配設される外部回転部材24と、を備えている。本実施の形態の回転伝達機構22は、自転車以外にも車輪を有する機構、及び、ロボット(関節部分等)に使用することが可能である。
【0076】
内部回転部材23は、円盤状の内部回転部材本体23aと、内部回転部材本体23aの表面と裏面の外周にそれぞれ一体形成された低背円柱状の凸部23b,23c(凸部23cについては図示せず)と、内部回転部材本体23aを貫通して形成されたクランク軸挿通孔23dと、を備えている。
また、内部回転部材23は、内部回転部材本体23aに一体形成され内部回転部材本体23aの外周側に突出する5つの外周凸部23fを備えており、当該外周凸部23fの表面と裏面にはそれぞれベアリング用ボール(図示せず)回転可能に保持されている。
外周凸部23fは、回転方向側の面が回転方向と反対側の面よりも緩やかな傾きをもって形成されており、かつ、回転方向側の面と内部回転部材本体23aとの境界部分にアールがつけられている。
【0077】
外部回転部材24は、内部回転部材23の外周凸部23fの側部位置で内部回転部材23の凸部23cに回動自在に挿設された側板部24aと、内部回転部材23の外周凸部23fの外側で側板部24aの外周にネジ留め固定された円環部24bと、側板部24aに対向配置された状態で凸部23bに回動自在に挿設されたカバー部(図示せず)と、を備えている。尚、内部回転部材23は、外周凸部23fの表面と裏面に保持されたベアリング用ボールがそれぞれカバー部、側板部24a上を転がりながら回転する。これにより、内部回転部材23を滑らかに回転させることができる。
また、外部回転部材24は、円環部24bの内周側に突出するように円環部24bに一体形成され内部回転部材23の外周凸部23fと交互に配置された5つの内周凸部24dを備えている。側板部24aとカバー部は、内周凸部24dにネジ留め固定されている。
さらに、外部回転部材24の円環部24bの裏面側の外周部には、チェーンリング25が固設されている。
【0078】
外周凸部23fには電磁石Aが取り付けられており、前進する際の当該外周凸部23fの回転方向側の内周凸部24dには永久磁石Bが取り付けられている。
永久磁石Bは、電磁石Aと対向する側の磁極がS極となるように内周凸部24dに取り付けられている。
電磁石Aは、永久磁石Bと対向する側の極性をN極とS極で切り替えることができるようにされている。磁極の切り替えは、例えば、流す電流の向きを変えることによって実現することができる。また、磁極の切り替えは、例えば、クランク軸が止まったタイミングで行われ、クランク軸が止まったかどうかの判断は、例えば、電動アシスト自転車のモータ駆動ユニットに内蔵されるトルクセンサを用いて行うことができる。
【0079】
(回転伝達機構の動作)
次に、本実施の形態における回転伝達機構22の動作について、
図23をも参照しながら説明する。ここでは、例えば、当該回転伝達機構22を自転車のクランク軸に装着した場合を例に挙げて説明する。
【0080】
図23は、本発明の実施の形態4における回転伝達機構の動作説明図である。
【0081】
図22に示すように、最初、外周凸部23fに取り付けられた電磁石Aは、内周凸部24dに取り付けられた永久磁石Bと対向する側の極性がN極となっている。この状態で、運転者がクランクアームの端部に配設されたペダルを踏むと、クランク軸と共に内部回転部材本体23aの外周に突設された外周凸部23fが、
図22,
図23(1)の矢印cの方向に回転し、電磁石Aが取り付けられた外周凸部23fが永久磁石Bが取り付けられた内周凸部24dに当接する(電磁石AのN極と永久磁石BのS極がくっつく)。外周凸部23fが内周凸部24dに当接した後は、クランク軸の回転力が外周凸部23fから内周凸部24dに伝達され、クランク軸からチェーンリング25までが略一体となって回転し、チェーンリング25に張設されたチェーン(図示せず)によって後輪側のスプロケットへと確実に回転が伝達される。
【0082】
運転者がクランクアームの端部に配設されたペダルを踏むのを止めると、クランク軸の回転が止まり、トルクセンサがこれを検出する。そして、トルクセンサから電流制御部に信号が送られ、当該電流制御部により、電磁石Aに流れる電流の向きが変えられて、電磁石Aの、永久磁石Bと対向する側の極性がN極からS極に切り替えられる(
図23(2)参照)。その結果、
図23(2),(3)に示すように、永久磁石Bが取り付けられた内周凸部24dが電磁石Aが取り付けられた外周凸部23fから離れていく(電磁石AのS極と永久磁石BのS極が反発し合う)(
図23(3)の矢印d参照)。これにより、外部回転部材24が回転し、当該外部回転部材24は、内周凸部24dが外周凸部23fに当接した状態で内部回転部材23(クランク軸)と共に更に回転した後、停止する。
クランク軸の回転が止まると、トルクセンサがこれを検出する。そして、トルクセンサから電流制御部に信号が送られ、当該電流制御部により、電磁石Aに流れる電流の向きが変えられて、電磁石Aの、永久磁石Bと対向する側の極性がS極からN極に切り替えられる(
図23(1)参照)。その結果、電磁石Aが取り付けられた外周凸部23fが永久磁石Bが取り付けられた内周凸部24dに近づいていき、電磁石Aが取り付けられた外周凸部23fが永久磁石Bが取り付けられた内周凸部24dに当接する(電磁石AのN極と永久磁石BのS極がくっつく)。このとき、クランク軸は、内部回転部材23と共に一旦回転した後、停止する。
クランク軸の回転が止まると、トルクセンサがこれを検出する。そして、トルクセンサから電流制御部に信号が送られ、当該電流制御部により、電磁石Aに流れる電流の向きが変えられて、電磁石Aの、永久磁石Bと対向する側の極性がN極からS極に切り替えられる(
図23(2)参照)。その結果、
図23(3)に示すように、永久磁石Bが取り付けられた内周凸部24dが電磁石Aが取り付けられた外周凸部23fから離れていく(電磁石AのS極と永久磁石BのS極が反発し合う)(
図23(3)の矢印d参照)。これにより、外部回転部材24が回転し、当該外部回転部材24は、内周凸部24dが外周凸部23fに当接した状態で内部回転部材23(クランク軸)と共に更に回転した後、停止する。
以上の動作が繰り返されて、外部回転部材24からチェーンリング25までが略一体となって回転し、チェーンリング25に張設されたチェーン(図示せず)によって後輪側のスプロケットへと回転が伝達される。
【0083】
尚、本実施の形態においては、外周凸部23fに電磁石Aが取り付けられ、前進する際の外周凸部23fの回転方向側の内周凸部24dに永久磁石Bが取り付けられている場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。外周凸部23fに永久磁石を取り付け、前進する際の外周凸部23fの回転方向側の内周凸部24dに電磁石を取り付けるようにしてもよい。また、外周凸部23fと前進する際の外周凸部23fの回転方向側の内周凸部24dの双方に電磁石を取り付けるようにしてもよい。
【0084】
また、本実施の形態においては、外周凸部23fと内周凸部24dを5つずつ設けた場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。外周凸部23fと内周凸部24dの数は、それぞれ1つ又は複数であればよい。
【0085】
また、本実施の形態においては、外周凸部23fが内部回転部材本体23aに一体形成されている場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。外周凸部は、内部回転部材本体に固設されていてもよい。
また、本実施の形態においては、内周凸部24dが円環部24bに一体形成されている場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。内周凸部は、円環部に固設されていてもよい。
【0086】
また、本実施の形態においても、
図24に示すように、上記実施の形態1〜4と同様に、外周凸部23fと前進する際の当該外周凸部23fの回転方向側の内周凸部24dとの間に弾性変形部26を配設するようにしてもよい。
さらに、外周凸部23fの回転方向と反対側の面にエラストマ等からなる弾性部材27を取り付けて、ダンパ効果を持たせるようにしてもよい。