特許第6455864号(P6455864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星電子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6455864-ポリヌクレオチド及びその用途 図000009
  • 特許6455864-ポリヌクレオチド及びその用途 図000010
  • 特許6455864-ポリヌクレオチド及びその用途 図000011
  • 特許6455864-ポリヌクレオチド及びその用途 図000012
  • 特許6455864-ポリヌクレオチド及びその用途 図000013
  • 特許6455864-ポリヌクレオチド及びその用途 図000014
  • 特許6455864-ポリヌクレオチド及びその用途 図000015
  • 特許6455864-ポリヌクレオチド及びその用途 図000016
  • 特許6455864-ポリヌクレオチド及びその用途 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6455864
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】ポリヌクレオチド及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20190110BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20190110BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20190110BHJP
【FI】
   C12N15/11 ZZNA
   C12Q1/6876 Z
   C12Q1/6844 Z
【請求項の数】17
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-238119(P2013-238119)
(22)【出願日】2013年11月18日
(65)【公開番号】特開2014-100144(P2014-100144A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2016年11月2日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0131026
(32)【優先日】2012年11月19日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】朴 東 賢
(72)【発明者】
【氏名】洪 性 宇
(72)【発明者】
【氏名】朴 卿 希
(72)【発明者】
【氏名】李 妙 龍
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−515149(JP,A)
【文献】 特表2008−527979(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/120803(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0039039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸の3’末端に由来する少なくともつの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、
前記標的核酸の5’末端に由来する少なくともつの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域、および
前記第2相補領域の5’末端側に、前記標的核酸に対して相補的ではない第3領域を含み、
前記第1相補領域の長さが、2から残基のヌクレオチドであり、
前記第2相補領域の長さが、6から12残基のヌクレオチドであり、
前記第1相補領域が、前記第2相補領域の3’末端側に位置するポリヌクレオチドからなる前記標的核酸を増幅するための逆転写プライマー。
【請求項2】
前記第1相補領域が、前記標的核酸の3’末端のヌクレオチドに由来する2から残基の連続ヌクレオチドに対して相補的であることを特徴とする請求項1に記載の逆転写プライマー。
【請求項3】
前記第2相補領域が、前記標的核酸の5’末端のヌクレオチドに由来する6から12残基の連続ヌクレオチドに対して相補的であることを特徴とする請求項1または2に記載の逆転写プライマー。
【請求項4】
前記標的核酸の長さが、15から200残基のヌクレオチドであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の逆転写プライマー。
【請求項5】
前記標的核酸が、RNAであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の逆転写プライマー。
【請求項6】
前記標的核酸が、非コードRNA(non−coding RNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、トランスファーRNA(tRNA)またはデキャッピングmRNAであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の逆転写プライマー。
【請求項7】
前記第3領域が、プライマー配列、制限酵素認識部位またはプローブ結合部位を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の逆転写プライマー。
【請求項8】
前記第1相補領域及び前記第2相補領域のうち少なくとも一つが、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)またはヌクレオチド類似体を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の逆転写プライマー。
【請求項9】
前記第3領域が、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)またはヌクレオチド類似体を含むことを特徴とする請求項1から2および4から8のいずれか一項に記載の逆転写プライマー。
【請求項10】
標的核酸の3’末端に由来する少なくともつの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、及び
前記標的核酸の5’末端に由来する少なくともつの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域、および
前記第2相補領域の5’末端側に、前記標的核酸に対して相補的ではない第3領域を含み、
前記第1相補領域の長さが、2から残基のヌクレオチドであり、
前記第2相補領域の長さが、6から12残基のヌクレオチドであり、
前記第1相補領域が、前記第2相補領域の3’末端側に位置するポリヌクレオチドを含有することを特徴とする、前記標的核酸を増幅するための組成物。
【請求項11】
標的核酸の3’末端に由来する少なくともつの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、及び
前記標的核酸の5’末端に由来する少なくともつの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域、および
前記第2相補領域の5’末端側に、前記標的核酸に対して相補的ではない第3領域を含み、
前記第1相補領域の長さが、2から残基のヌクレオチドであり、
前記第2相補領域の長さが、6から12残基のヌクレオチドであり、
前記第1相補領域が、前記第2相補領域の3’末端側に位置するポリヌクレオチドを含有することを特徴とする、前記標的核酸を増幅するためのキット。
【請求項12】
標的核酸の3’末端に由来する少なくともつの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、及び前記標的核酸の5’末端に由来する少なくともつの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域、および前記第2相補領域の5’末端側に、前記標的核酸に対して相補的ではない第3領域を含み、前記第1相補領域の長さが、2から残基のヌクレオチドであり、前記第2相補領域の長さが、6から12残基のヌクレオチドであり、前記第1相補領域が、前記第2相補領域の3’末端方向に位置するポリヌクレオチド、並びに前記標的核酸をハイブリダイズさせるプロセスと、
前記ハイブリダイズされたポリヌクレオチド及び標的核酸を、核酸ポリメラーゼの存在下でインキュベートし、前記ポリヌクレオチドの3’末端から、前記標的核酸に相補的なヌクレオチド配列を生成するプロセスと、を含むことを特徴とする、前記標的核酸に相補的なヌクレオチド配列を生成する方法。
【請求項13】
前記核酸ポリメラーゼが、鎖置換活性を有することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記鎖置換活性を有する核酸ポリメラーゼが、逆転写酵素であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記逆転写酵素が、HIV、MMLVまたはAMVから由来する逆転写酵素であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記標的核酸が、RNAであることを特徴とする請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記標的核酸が、非コードRNA(non−coding RNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、トランスファーRNA(tRNA)またはデキャッピングmRNAであることを特徴とする請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的核酸の3’末端及び5’末端に相補的な相補領域を含むポリヌクレオチド及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸の増幅は、核酸ポリメラーゼの存在下で、プライマーの3’末端からヌクレオチド配列を伸長することを含む。前記プライマーは、標的核酸に対して相補的な配列を含む。ヌクレオチド配列を伸長させるため、プライマーと標的核酸は、特異的に安定してお互いにハイブリダイズされる必要があるが、プライマーの長さが短くなると、一般的には標的配列に対する特異性が低下する。短い標的核酸は、プライマーのデザインに困難さを伴う。プライマーと標的核酸がハイブリダイズした核酸産物の安定性は、相補的な配列の長さに比例することが知られている。一方、プライマーの長さが長くなれば、増幅される核酸の長さが短くなる。従って、プライマーを特異的に安定して標的核酸に結合させ、増幅される標的核酸に対する特異性を向上させるポリヌクレオチドの開発が、依然として要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0112644号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0071332号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従って、増幅される標的核酸に対する特異性を向上させるポリヌクレオチドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者らは、標的核酸の3’末端からの少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、及び標的核酸の5’末端からの少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域を含み、前記第1相補領域が、前記第2相補領域の3’末端側に位置するポリヌクレオチドによれば上記課題を解決できることを見出し、本願発明の完成に至った。本発明は、以下の内容をその骨子とする。
(1)標的核酸の3’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、及び標的核酸の5’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域を含み、前記第1相補領域が、前記第2相補領域の3’末端側に位置するポリヌクレオチド。
(2)前記第1相補領域が、前記標的核酸の3’末端のヌクレオチドに由来する2から7残基の連続ヌクレオチドに対して相補的であることを特徴とする(1)に記載のポリヌクレオチド。
(3)前記第2相補領域が、前記標的核酸の5’末端のヌクレオチドに由来する3から20残基の連続ヌクレオチドに対して相補的であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリヌクレオチド。
(4)前記第1相補領域の長さが、2から7残基のヌクレオチドであることを特徴とする(1)から(3)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
(5)前記第2相補領域の長さが、3から20残基のヌクレオチドであることを特徴とする(1)から(4)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
(6)前記標的核酸の長さが、15から200残基のヌクレオチドであることを特徴とする(1)から(5)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
(7)前記標的核酸が、RNAであることを特徴とする(1)から(6)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
(8)前記標的核酸が、非コードRNA(non−coding RNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、トランスファーRNA(tRNA)またはデキャッピングmRNAであることを特徴とする(1)から(7)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
(9)前記第2相補領域の5’末端側に、前記標的核酸に対して相補的ではない第3領域をさらに含むことを特徴とする(1)から(8)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
(10)前記第3領域が、プライマー配列、制限酵素認識部位またはプローブ結合部位を含むことを特徴とする(9)に記載のポリヌクレオチド。
(11)前記第1相補領域及び前記第2相補領域のうち少なくとも一つが、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)またはヌクレオチド類似体を含むことを特徴とする(1)から(10)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
(12)前記第3領域が、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)またはヌクレオチド類似体を含むことを特徴とする(9)から(11)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
(13)標的核酸の3’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、及び標的核酸の5’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域を含み、前記第1相補領域が、前記第2相補領域の3’末端側に位置するポリヌクレオチドを含有することを特徴とする、標的核酸を増幅するための組成物。
(14)標的核酸の3’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、及び標的核酸の5’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域を含み、前記第1相補領域が、前記第2相補領域の3’末端側に位置するポリヌクレオチドを含有することを特徴とする、標的核酸を増幅するためのキット。
(15)標的核酸の3’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、及び標的核酸の5’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域を含み、前記第1相補領域が、前記第2相補領域の3’末端方向に位置するポリヌクレオチド、並びに標的核酸をハイブリダイズさせるプロセスと、前記ハイブリダイズされたポリヌクレオチド及び標的核酸を、核酸ポリメラーゼの存在下でインキュベートし、前記ポリヌクレオチドの3’末端から、前記標的核酸に相補的なヌクレオチド配列を生成するプロセスと、を含むことを特徴とする、標的核酸に相補的なヌクレオチド配列を生成する方法。
(16)前記核酸ポリメラーゼが、鎖置換活性を有することを特徴とする(15)に記載の方法。
(17)前記鎖置換活性を有するポリメラーゼが、逆転写酵素であることを特徴とする(16)に記載の方法。
(18)前記逆転写酵素が、HIV、MMLVまたはAMVから由来する逆転写酵素であることを特徴とする(17)に記載の方法。
(19)前記標的核酸が、RNAであることを特徴とする(15)から(18)のいずれか一つに記載の方法。
(20)前記標的核酸が、非コードRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、トランスファーRNA(tRNA)またはデキャッピングmRNAであることを特徴とする(15)から(19)のいずれか一つに記載の方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリヌクレオチドを使用すれば、標的核酸の3’末端に結合する領域(相補的な配列の長さ)を減らしつつ、標的核酸を優れた特異性で増幅することができる。
【0007】
本発明の組成物及びキットを使用すれば、標的核酸を優れた特異性で増幅することができる。
【0008】
本発明の標的核酸に相補的なヌクレオチド配列を生成する方法によれば、標的核酸に相補的なヌクレオチド配列を優れた特異性で生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態であるポリヌクレオチド、及び本発明の一実施形態である標的核酸に相補的なヌクレオチド配列を生成する方法を示す図面である。
図2図2は、本発明の一実施形態であるポリヌクレオチドによる、プライミング効果を示すグラフである。
図3図3は、第1相補領域及び第2相補領域の長さと、プライミング効果との関係を示すグラフである。
図4図4は、本発明の一実施形態であるポリヌクレオチドの使用による検出感度を示すグラフである。
図5A図5Aは、標的核酸であるmiR−16についての、本発明の一実施形態のポリヌクレオチドの検出感度を示すグラフである。
図5B図5Bは、標的核酸であるmiR−21についての、本発明の一実施形態のポリヌクレオチドの検出感度を示すグラフである。
図5C図5Cは、標的核酸であるmiR−206についての、本発明の一実施形態のポリヌクレオチドの検出感度を示すグラフである。
図6A図6Aは、標的核酸であるmiR−16についての特異性を示すグラフである。
図6B図6Bは、標的核酸であるmiR−210についての特異性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付された図面を参照しつつ、本発明の望ましい実施形態について詳細に説明する。この点において、本発明は異なる実施形態を有しても良く、本明細書に明記された記載に限定されて解釈されるべきものではない。
【0011】
実施形態は、本願発明の詳細な説明の態様を単に説明するため、図面を参照し、以下に記載される。本明細書で使用される「及び/又は」という語句は、関連するリスト項目のいずれか、及び一つ以上の組み合わせの全てを含む。「少なくとも一つの」のような表現は、要素(elements)のリストの前で使用されるときは、要素のリストの全体を修正(modify)し、当該リストの個々の要素を修正しない。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、標的核酸の3’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、及び標的核酸の5’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域を含み、前記第1相補領域が、前記第2相補領域の3’末端側に位置するポリヌクレオチドが提供される。
【0013】
本発明に係るポリヌクレオチドの第1相補領域は、標的核酸の3’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに相補的である。例えば、本発明に係るポリヌクレオチドの第1相補領域は、標的核酸の3’末端のヌクレオチドに由来する、2残基、3残基、4残基、5残基、6残基または7残基の連続ヌクレオチドに対して相補的である。例えば、第1相補領域は、長さが2残基から7残基のヌクレオチドである。第1相補領域は、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA:peptide nucleic acid)、ロックド核酸(LNA:locked nucleic acid)またはヌクレオチド類似体(nucleotide analogue)を含んでもよい。
【0014】
本発明に係るポリヌクレオチドの第2相補領域は、標的核酸の5’末端に由来する連続ヌクレオチドの一つ以上に対して相補的である。例えば、本発明に係るポリヌクレオチドの第2相補領域は、標的核酸の5’末端のヌクレオチドに由来する、3残基、4残基、5残基、6残基、7残基、8残基、9残基、10残基、11残基、12残基、13残基、14残基、15残基、16残基、17残基、18残基、19残基または20残基の連続ヌクレオチドに対して相補的である。例えば、第2相補領域は、長さが3残基から20残基のヌクレオチドである。第2相補領域は、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)またはヌクレオチド類似体を含んでもよい。
【0015】
本発明に係るポリヌクレオチドの第1相補領域は、第2相補領域の3’末端側に位置することができる。第1相補領域と第2相補領域は、互いに離隔していないか、または一つ以上のヌクレオチドによって離隔されていてもよい。
【0016】
本発明に係るポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAでもある。また、本発明に係るポリヌクレオチドは、ヌクレオチド類似体、例えば、ペプチド核酸(PNA)及びロックド核酸(LNA)を含んでもよい。本発明に係るポリヌクレオチドの第2相補領域は、例えば、ヌクレオチド類似体、例えば、ペプチド核酸(PNA)及びロックド核酸(LNA)を含んでもよい。ヌクレオチド類似体、例えば、ペプチド核酸(PNA)及びロックド核酸(LNA)は、第2相補領域だけではなく、第1相補領域にも含まれてもよい。すなわち、本発明の一実施形態は、第1相補領域及び第2相補領域のうち少なくとも一つが、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)またはヌクレオチド類似体を含む。本発明に係るポリヌクレオチドは、一本鎖でもある。ポリヌクレオチドの長さは、7残基から200残基、7残基から180残基、7残基から150残基、7残基から130残基、7残基から100残基、7残基から80残基、7残基から50残基、7残基から30残基、7残基から20残基、7残基から15残基、または10残基から40残基でもある。
【0017】
本発明において、標的核酸は、DNA、RNA、またはDNAとRNAとのキメラでもある。標的核酸は、一本鎖または二本鎖でもある。標的核酸は、長さが15残基から200残基、15残基から180残基、15残基から150残基、15残基から130残基、15残基から100残基、15残基から80残基、15残基から50残基、15残基から40残基、または15残基から30残基のヌクレオチドでもある。標的核酸は、低分子RNAでもある。標的核酸である低分子RNAは、例えば、非コード(non−coding)RNA、マイクロRNA(miRNA:micro RNA)、低分子干渉RNA(siRNA:small interfering RNA)、トランスファーRNA(tRNA)またはデキャッピング(decapping)メッセンジャーRNA(mRNA)でもある。真核細胞の天然mRNAは、5’キャップ構造を有する。しかし、生物学的試料またはそれから分離されたmRNAの保管中または処理中に、mRNAは分解されることもある。その場合、分離産物は、天然mRNAの5’キャップ構造を有さないこともある。5’キャップ構造は、三リン酸結合を介するmRNAの5’末端のリボース糖の5’−OHに7−メチルグアニレートが結合した構造、またはその結合分解産物として、mRNAの5’末端のリボース糖の5’−OHにグアニレートが結合した構造である。また、標的核酸は、200残基以上のヌクレオチドを有するRNAでもよく、GC含有量が30%未満であるか80%以上である30残基の連続した配列領域を有するRNAでもよく、相補的配列を分子内に有することにより分子内二次構造(secondary structure)を形成することができる5残基以上の連続したヌクレオチドを該RNAは含み、お互いに相補的な5残基以上の連続したヌクレオチドを該RNAは含み、またはこれらの組み合わせである。
【0018】
本発明に係るポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの第2相補領域の5’末端側に、標的核酸に対して相補的ではない第3領域をさらに含んでもよい。第3領域は、第2相補領域の5’末端側に位置することができる。例えば、本発明に係るポリヌクレオチドは、5’−第3領域−第2相補領域−第1相補領域−3’、という形態でもある。例えば、第3領域は、長さが3残基から200残基のヌクレオチドである。例えば、第3領域は、3残基から200残基、3残基から180残基、3残基から150残基、3残基から130残基、3残基から100残基、3残基から80残基、3残基から50残基、3残基から40残基、または3残基から30残基でもある。第3領域は、プライマー配列、制限酵素認識部位、またはプローブ結合部位を含んでもよい。第3領域は、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)またはヌクレオチド類似体を含んでもよい。第3領域と第2相補領域は、離隔していないか、または一つ以上のヌクレオチドによって離隔されていてもよい。その場合、第3領域と第2相補領域とのリンカーは、プライマー結合部位、制限酵素認識部位またはプローブ結合部位を含んでもよい。
【0019】
本発明に係るポリヌクレオチドは、鋳型依存的な核酸合成において、プライマーとして機能することができる。従って、本発明に係るポリヌクレオチドは、プライマーとして使用されることもある。本発明に係るポリヌクレオチドは、試料中の標的核酸の存在を確認するためのプローブとして使用されることもある。
【0020】
本発明に係るポリヌクレオチドの一実施形態において、第1相補領域と第3領域との間に第2相補領域を位置させることにより、第1相補領域の長さを短くすることができ、逆転写によって生成されるDNAの長さを増大させることができる。生成されるDNAの長さが増大されることにより、標的核酸であるRNAに特異的なプライマーをデザインすることが容易になる。さらに、第2相補領域が存在することにより、標的核酸の検出において、感度及び特異性を向上させることができる。
【0021】
本発明の別の実施形態では、標的核酸の3’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、及び標的核酸の5’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域を含み、前記第1相補領域が、前記第2相補領域の3’末端側に位置するポリヌクレオチドを含有することを特徴とする、標的核酸を増幅するための組成物が提供される。
【0022】
本発明に係る組成物において、ポリヌクレオチド及び標的核酸は、前述の通りである。
【0023】
本発明に係る組成物は、標的核酸を増幅するための組成物である。増幅プロセスは、公知の核酸増幅方法でもよい。標的核酸の増幅は、DNA増幅またはRNA増幅でもある。増幅方法は、サーマルサイクリング(thermal cycling)、または等温(isothermal)条件下で行われるものでもある。増幅プロセスの例としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:polymerase chain reaction)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA:strand displacement amplification)、ローリングサークル増幅(RCA:rolling circle amplification)などが挙げられる。増幅方法はまた、RNA増幅方法を含んでもよい。増幅方法は例えば、逆転写(RT:reverse transcription)または逆転写PCR(RT−PCR)を含んでもよい。増幅プロセスは、標的核酸配列またはそれに相補的な配列のコピー数を増加させるプロセスである。本明細書で使用される「PCR」という語句は、核酸ポリメラーゼを用いて、標的核酸に特異的に結合するプライマー対から標的核酸を増幅する方法である。
【0024】
従って、本発明に係る組成物は、標的核酸の増幅に要求される公知のマテリアル(material)をさらに含むこともある。例えば、本発明に係る組成物は、核酸ポリメラーゼ、核酸ポリメラーゼ活性に適したバッファー、補助因子、及び/または基質をさらに含むこともある。核酸ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素(reverse transcriptase)、及びそれらの組み合わせから選択してもよい。「逆転写」という語句は、RNAを鋳型にした、RNA配列に相補的なDNA鎖の合成を指す。核酸ポリメラーゼは、鎖置換活性を有することもある。例えば、レトロウイルス、例えば、HIV(human immunodeficiency virus)、MMLV(moloney murine leukemia virus)またはAMV(avian myeloblastosis virus)から由来する一つ以上の逆転写酵素でもよい。核酸ポリメラーゼは、3’−>5’エキソヌクレアーゼ活性(exonuclease activity)を有さないこともある。本発明に係る組成物は、逆転写またはPCR増幅に必要なマテリアルを含むこともある。
【0025】
本発明の別の実施形態では、標的核酸の3’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、及び標的核酸の5’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域を含み、前記第1相補領域が、前記第2相補領域の3’末端側に位置するポリヌクレオチドを含有することを特徴とする、標的核酸を増幅するためのキットが提供される。
【0026】
本発明に係るキットにおいて、ポリヌクレオチド及び標的核酸は、前述の通りである。
【0027】
本発明に係るキットは、標的核酸を増幅するためのキットである。増幅プロセスは、公知の核酸増幅方法でもよい。標的核酸の増幅は、DNA増幅またはRNA増幅でもある。増幅方法は、サーマルサイクリング、または等温条件下で行われるものでもある。増幅プロセスの例としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、ローリングサークル増幅(RCA)などが挙げられる。増幅方法はまた、RNA増幅方法を含むこともある。例えば、逆転写(RT)または逆転写PCR(RT−PCR)が挙げられる。増幅プロセスは、標的核酸配列、またはそれに相補的な配列のコピー数を増加させる。「PCR」という語句は、核ポリメラーゼを用いて、標的核酸に特異的に結合するプライマー対から標的核酸を増幅する方法である。
【0028】
従って、本発明に係るキットは、標的核酸の増幅に要求される公知のマテリアルをさらに含むこともある。例えば、本発明に係るキットは、核酸ポリメラーゼ、核酸ポリメラーゼ活性に適したバッファー、補助因子、及び/または基質をさらに含むこともある。例えば、本発明に係るキットは、標的核酸をさらに含んでもよい。核酸ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、及びそれらの組み合わせから選択してもよい。「逆転写」という語句は、RNAを鋳型にした、RNA配列に相補的なDNA鎖の合成を指す。核酸ポリメラーゼは、鎖置換活性を有することもある。例えば、レトロウイルス、例えば、HIV、MMLVまたはAMVから由来する逆転写酵素でもよい。核酸ポリメラーゼは、3’−>5’エキソヌクレアーゼ活性を有さないこともある。本発明に係るキットは、逆転写またはPCR増幅に必要なマテリアルを含むこともある。また、本発明に係るキットは、標的核酸を増幅するための使用についての説明書をさらに含んでもよい。
【0029】
本発明の別の実施形態では、標的核酸の3’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、及び標的核酸の5’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域を含み、前記第1相補領域が、前記第2相補領域の3’末端方向に位置するポリヌクレオチド、並びに標的核酸をハイブリダイズさせるプロセスと、前記ハイブリダイズされたポリヌクレオチド及び標的核酸を、核酸ポリメラーゼの存在下でインキュベートし、前記ポリヌクレオチドの3’末端から、前記標的核酸に相補的なヌクレオチド配列を生成するプロセスと、を含むことを特徴とする、標的核酸に相補的なヌクレオチド配列を生成する方法が提供される。
【0030】
本発明に係る方法は、標的核酸の3’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、及び標的核酸の5’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域を含み、前記第1相補領域は、前記第2相補領域の3’末端方向に位置するポリヌクレオチド、並びに標的核酸とをハイブリダイズさせるプロセスを含む。
【0031】
本発明に係る方法において、ポリヌクレオチド及び標的核酸は、前述の通りである。すなわち、本発明に係る方法において、標的核酸は、DNA、RNA、またはDNAとRNAとのキメラでもある。また、本発明に係る方法においては、標的核酸は、非コードRNA(non−coding RNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、トランスファーRNA(tRNA)またはデキャッピングmRNAでもよい。
【0032】
ハイブリダイズプロセスは、公知の方法によって行われる。ハイブリダイズプロセスは例えば、核酸のハイブリダイゼーションに適切な公知のバッファー内で、ポリヌクレオチドと標的核酸とをインキュベートすることにより、行われる。ハイブリダイズプロセスは、適切な温度、例えば、0℃から25℃、例えば4℃で行われる。ハイブリダイズ温度は、選択されるポリヌクレオチドと標的核酸の配列及び長さによって適宜選択される。ハイブリダイズプロセスは、適切な時間、例えば、1時間から12時間(一晩)行われる。
【0033】
本発明に係る方法は、ハイブリダイズされた試料を、核酸ポリメラーゼ存在下でインキュベートし、標的核酸に相補的なヌクレオチド配列を、本発明に係るポリヌクレオチドの3’末端から生成するプロセスを含む。
【0034】
核酸ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素及びそれらの組み合わせから選択してもよい。「逆転写」という語句は、RNAを鋳型にした、RNA配列に相補的なDNA鎖の合成を指す。核酸ポリメラーゼは、鎖置換活性を有するものでもよい。鎖置換活性を有する核酸ポリメラーゼは、逆転写酵素でもよい。逆転写酵素は、例えば、レトロウイルス、例えば、HIV、MMLVまたはAMVから由来する逆転写酵素でもよい。核酸ポリメラーゼは、3’ −>5’エキソヌクレアーゼ活性を有さないこともある。
【0035】
インキュベートプロセスは、核酸ポリメラーゼの活性に適切な条件で行われる。インキュベートプロセスは、核酸ポリメラーゼ、核酸ポリメラーゼ活性に適したバッファー、補助因子及び基質の存在下で行われる。例えば、インキュベートプロセスは、逆転写またはPCR増幅に必要なマテリアルの存在下で行われるものが挙げられる。
【0036】
インキュベートプロセス(生成プロセス)を経て、標的核酸に相補的なヌクレオチド配列が、本発明に係るポリヌクレオチドの3’末端から生成される。生成プロセスでは、ポリヌクレオチドの3’末端から伸長し、標的核酸とハイブリダイズしたポリヌクレオチドの5’末端を核酸ポリメラーゼが置換させることを含む。
【0037】
本発明に係る方法は、生産された産物、すなわち、標的核酸に相補的なヌクレオチド配列が存在するか否かを測定するプロセスをさらに含んでもよい。測定の結果、生産された産物が存在する場合、試料内に標的核酸が存在する。生産された産物が存在しない場合、試料内に標的核酸が存在しない。
【0038】
また、本発明に係る方法は、生産された産物、すなわち、標的核酸に相補的なヌクレオチド配列を鋳型にして、核酸を増幅するプロセスをさらに含んでもよい。増幅プロセスは、公知の方法によって行われる。増幅方法については、前述の通りである。
【0039】
以下、本発明について、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がそれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
[実施例1.二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの製造]
本実施例では、標的核酸の3’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第1相補領域、及び標的核酸の5’末端に由来する少なくとも一つの連続ヌクレオチドに対して相補的な第2相補領域を含み、前記第1相補領域が、前記第2相補領域の3’末端側に位置するポリヌクレオチド(以下、「二重ハイブリダイゼーションプライマー(dual hybridization primer)」または「二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマー(dual hybridization reverse transcription primer)」と称する。)を使用して、標的核酸に相補的な配列を二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの3’末端から生成させた。対照群として、第2相補領域を有しない一般的なプライマー(以下、「線形プライマー(linear primer)」、「3’プライミング逆転写プライマー(3’ priming reverse transcription primer)」、または「3’プライミングプライマー」と称する。)を使用した。また、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーは、第2相補領域の5’末端側に、標的核酸に対して相補的ではない領域(第3領域)を含む。標的核酸に対して相補的ではない領域(第3領域)は、ユニバーサルPCRプライマー配列を含む。
【0041】
図1において、「1」は、標的核酸を示す。「1a」は、標的核酸の3’末端領域を示し、2a部分に対して相補的な核酸配列を有する。「1b」は、標的核酸の5’末端領域を示し、2b部分に対して相補的な核酸配列を有する。「2」は、逆転写プライマーを示す。「2a」は、逆転写プライマーの3’末端部分を示し、1a部分に対して相補的な核酸配列を有する(第1相補領域)。「2b」は、逆転写プライマーの5’末端部分(図1(B)においては、さらにその5’末端側に第3領域が存在する。)を示し、1b部分に対して相補的な核酸配列を有する(第2相補領域)。「2c」は、PCRプライマー配列を含み、標的核酸に対して相補的ではない配列を有する(第3領域)。「3」は、逆転写酵素によって合成されたDNAを示す。「3b」は、1bと同一の核酸配列であり、ハイブリダイズされた2b部分を逆転写酵素が1bに置換させながら生成した部分を示す。
【0042】
[実施例2.二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーによる標的核酸の検出効果]
二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーと3’プライミング逆転写プライマーとの標的核酸の検出効果を、それぞれ比較した。
【0043】
標的核酸であるmiRNA、3’プライミングプライマー、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマー及びmiRNA特異的PCRプライマーの配列を、表1に示す。表1の二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーにおいて、下線部分の核酸配列は標的核酸の3’末端に対して相補的な第1相補領域を示し、小文字で示した部分は標的核酸の5’末端に対して相補的な第2相補領域を示している。
【0044】
【表1】
【0045】
さらに、ユニバーサルPCRプライマーの配列は、5’−CGGTGAGGTCTTTGGTTCAT−3’(配列番号61)である。
【0046】
二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの第1相補領域の長さは、4残基であり、第2相補領域の長さは、6残基から8残基である。
【0047】
二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの使用による標的核酸の検出を、PCRによって確認した。Super Script III reverse transcriptase(Invitrogen)を使用して、マイクロRNAをcDNAに変換した。逆転写反応のために、12μlのRTマスターミックス(5μlの水、2μlの5×バッファー液、2μlの15mM MgCl、1μlの0.1Mジチオトレイトール(DTT)、1μlの10mM dNTPs、1μlのRNAseOUT(Invitrogen)及び1μlのSuper Script III酵素)を、96ウェルプレート内で、2μlの10μM DH(dual−hybridization)−RTプライマー(二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマー)及び5μlの鋳型と混合した。なお、鋳型としては、コピー数5×10のmiRNAを用いた。逆転写反応は、16℃で30分、42℃で1時間、70℃で15分間インキュベートし、該反応によりcDNAを得て、続いて、80μlのTE(pH7.6の10mM Tris、0.1mM EDTA)によってcDNAを5倍希釈した。逆転写反応後に、希釈されたcDNAの5μlと、下記の試薬を混合して20μlの最終反応体積にし、LC480 PCR装置(Roche)を使用して、96ウェル・オプティカルPCRプレートにて、定量的PCR(qPCR:quantitative PCR)を3回反復測定した。PCR反応混合物は、10μlの2×SYBRグリーンPCRマスターミックス(Exiqon)、0.1μlの10uMユニバーサルプライマー、0.1μlの10μM miRNA特異的プライマー、4.8μlの水、及び5μlの試料(前記cDNA)を含む。定量的PCRは、製造業者が推奨する条件にて行い、アンプリコン種類(増幅産物)の分析のために、解離溶解曲線をそれぞれの測定後に生成した。
【0048】
図2は、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの使用によるプライミング効果を示すグラフである。図2〜5Cにおいて、Cp(crossing point、Cp値)は、サンプルからの蛍光強度が閾値に達して検出可能となるサイクル数を示す。Cp値が低いほど、少ないサイクル数で標的核酸が検出されたこと、すなわち逆転写によって合成されたDNAが多いことを意味する。図2に示すように、3’プライミング逆転写プライマーを使用した場合に比べ、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーを使用した場合、Cp値が著しく低下した。
【0049】
[実施例3.第1相補領域及び第2相補領域の長さによる標的核酸の検出効果]
第1相補領域と第2相補領域との長さ(残基数)による標的核酸の検出効果を確認した。
【0050】
標的核酸であるmiRNA: 5’−CGGUGAGGUCUUUGGUUCAUUAGCAGCACGUAAAUAUUGGCG−3’(配列番号62)
miRNA特異的PCRプライマー: 5’−CGCGCTAGCAGCACGTAAAT−3’(配列番号63)
ユニバーサルPCRプライマー: 5’−GTGCAGGGTCCGAGGT−3’(配列番号64)
3’プライミング逆転写プライマー及び二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの配列を、表2に示す。表2において、核酸配列の下線部分は標的核酸の3’末端に対して相補的な第1相補領域を示し、小文字で示した部分は標的核酸の5’末端に対して相補的な第2相補領域を示している。
【0051】
【表2】
【0052】
第1相補領域及び第2相補領域の長さによる標的核酸の検出を、実施例2に記載した定量的PCR法で確認した。
【0053】
図3は、第1相補領域及び第2相補領域の長さによるプライミング効果を示すグラフである。図3において、「RTx」(xは2から6の整数である。)のうちの「x」は、標的核酸の3’末端に特異的な配列の残基数、すなわち第1相補領域の残基数を示す。図3に示すように、標的核酸の5’末端に特異的な配列(すなわち、第2相補領域)を逆転写プライマーに含めることで、逆転写プライマーのうち、標的配列の3’末端に特異的な部分(すなわち、第1相補領域)の長さを短くすることができる。
【0054】
[実施例4.標的核酸miR−210に係わる検出感度の確認]
標的核酸であるmiR−210に対して、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーと3’プライミング逆転写プライマーとの検出感度を比較した。
【0055】
標的核酸としてのmiR−210、3’プライミングプライマー、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマー、miRNA特異的PCRプライマーの配列及びユニバーサルPCRプライマーを、表3に示す。表3において、核酸配列の下線部分は標的核酸の3’末端に対して相補的な第1相補領域を示し、小文字で示した部分は標的核酸の5’末端に対して相補的な第2相補領域を示している。
【0056】
【表3】
【0057】
二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの使用による標的核酸の検出を、実施例2に記載した定量的PCR法で確認した。
【0058】
図4は、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの使用による検出感度を示す。図4に示すように、3’プライミング逆転写プライマーを使用した場合に比べ、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーを使用した場合にCp値が著しく低下した。
【0059】
[実施例5.標的核酸miR−16、miR−21及びmiR−206に係わる検出感度の確認]
標的核酸であるmiR−16、miR−21及びmiR−206それぞれに対して、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの検出感度を比較した。
【0060】
標的核酸としてのmiR−16、miR−21及びmiR−206、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマー、miRNA特異的PCRプライマーの配列及びユニバーサルPCRプライマーを、表4に示す。表4において、核酸配列の下線部分は標的核酸の3’末端に対して相補的な第1相補領域を示し、小文字で示した部分は標的核酸の5’末端に対して相補的な第2相補領域を示している。
【0061】
【表4】
【0062】
二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの使用による標的核酸の検出を、実施例2に記載した定量的PCR法で確認した。
【0063】
図5AはmiR−16についての検出感度、図5BはmiR−21についての検出感度、図5CはmiR−206についての検出感度を示す。図5Aから図5Cに示すように、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーを使用した場合、Cp値が著しく低かった。
【0064】
[実施例6.標的核酸miR−16及びmiR−210に対する検出特異性の確認]
標的核酸であるmiR−16及びmiR−210それぞれに対して、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの検出特異性を確認した。
【0065】
標的核酸であるmiR−16及びmiR−210、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマー、miRNA特異的PCRプライマーの配列及びユニバーサルPCRプライマーを、表5に示す。表5において、核酸配列の下線部分は標的核酸の3’末端に対して相補的な第1相補領域を示し、小文字で示した部分は標的核酸の5’末端に対して相補的な第2相補領域を示している。表5において太字の核酸は、置換された核酸を示す。例えば、miR16−M1Aは、miR−16の5’末端から最初の核酸であるウラシル(U)がアデノシン(A)に置換された配列であるということを示す。以下、表5中のmiR16−M1AからmiR16−M22Uまでを「変異miR16」、miR210−M1AからmiR210−M22Gまでを「変異miR210」と総称する。
【0066】
【表5】
【0067】
核酸配列が置換された標的核酸に係わる二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの特異性を、実施例2に記載した定量的PCR法で確認した。
【0068】
図6AはmiR−16に関する特異性、及び図6BはmiR−210に関する特異性を示す。図6A(または図6B)において、ΔCp値は、変異miR16(または変異miR210)を用いた場合のCp値から、miR−16(またはmiR−210)を用いた場合のCp値を差し引いた値である。図6Aまたは図6Bにおいて、ΔCp値が高いほど、使用プライマーのmiR−16(またはmiR−210)に対する特異性が高いことを意味する。図6A及び図6Bから分かるように、5’末端及び3’末端で、3’プライミングプライマーに比べ、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーで向上した特異性が示された。
【0069】
[実施例7.Let−7ファミリーの間の交差反応性の確認]
Let−7ファミリーについて、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの検出特異性(交差反応性)を確認した。
【0070】
標的核酸、二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマー及びmiRNA特異的PCRプライマーの配列を、表6に示す。表6において、核酸配列の下線部分は標的核酸の3’末端に対して相補的な第1相補領域を示し、小文字で示した部分は標的核酸の5’末端に対して相補的な第2相補領域を示している。表6において太字の核酸は、Let−7aに対して、Let−7ファミリーに属するその他のmiRにおいて置換されている核酸を示す。
【0071】
【表6】
【0072】
Let−7ファミリーに対する二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの交差反応性(%)を実施例2に記載した定量的PCR法で確認した。
【0073】
【表7】
【0074】
表7は、Let−7ファミリーに対する二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの交差反応性(%)を示す。交差反応性は以下の方法により算出した。すなわち、miRNAから得られたCp値とmiRNAのアイソフォームから得られたCp値との差(ΔCp値)を算出し、ΔCp値が1の場合は2倍の差があるもの仮定して交差反応性を算出した。交差反応性が低いほど、表的配列に対する特異性が高いことを示す。表7に示すように、Let−7ファミリーに対する二重ハイブリダイゼーション逆転写プライマーの交差反応性は、5%未満と非常に低いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のポリヌクレオチド及びその用途は、例えば、核酸増幅関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 標的核酸、
1a 標的核酸の3’末端領域、
1b 標的核酸の5’末端領域、
2 逆転写プライマー、
2a 逆転写プライマーの3’末端領域(第1相補領域)、
2b 逆転写プライマーの5’末端領域(第2相補領域)、
2c 標的核酸に対して相補的ではない配列(第3領域)、
3 逆転写酵素によって合成されたDNA、
3b 標的核酸の5’末端領域にハイブリダイズされた逆転写プライマーの5’末端領域を置換しつつ、逆転写酵素が生成した部分。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]