特許第6455877号(P6455877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6455877
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】測量装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20190110BHJP
   G01C 1/00 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   G01C15/00 103A
   G01C1/00 T
   G01C15/00 102C
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-207003(P2014-207003)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-75616(P2016-75616A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】石田 健
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
(72)【発明者】
【氏名】河内 純平
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】中部 弘之
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−327862(JP,A)
【文献】 特開2009−294128(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/102841(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00− 1/14
G01C 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSS装置と、水平回転可能な托架部と、該托架部に鉛直方向に回転可能に設けられた望遠鏡部と、該望遠鏡部に設けられた画像取得部と、前記托架部及び前記望遠鏡部を回転駆動する駆動部と、前記托架部の水平角を検出する水平測角部と、前記望遠鏡部の鉛直角を検出する鉛直測角部と、基準クロック信号を生成する基準クロック信号発生部を有する制御装置とを具備する測量装置であって、
前記制御装置は前記GNSS装置から得られる信号より標準時刻を示す時刻信号を生成し
、該時刻信号に前記基準クロック信号に基づきタイムスタンプを付し、前記時刻信号と前記基準クロック信号とを関連付け、
前記望遠鏡部は視準完了時で停止され、
前記望遠鏡部が太陽を視準した時点で前記水平測角部により水平角を測定し、前記望遠鏡部が停止した状態で前記画像取得部により画像信号を取得し、
前記制御装置は、前記基準クロック信号に基づき前記画像信号にタイムスタンプを付し、該画像信号のタイムスタンプと前記基準クロック信号に基づき画像取得時の標準時刻を演算し、前記測量装置が設置された地点の緯度、経度と画像取得時の標準時刻に基づき該標準時刻での太陽の方位角を演算し、
前記制御装置は、取得した画像中の太陽像と視準位置との間の位置ずれを演算し、該位置ずれに基づき前記望遠鏡部の光軸の水平ずれ角を演算し、
前記水平測角部により測定した視準時点の水平角と、
前記水平ずれ角とに基づき画像取得時の水平角を求め、
該水平角を前記方位角で更新することを特徴とする測量装置。
【請求項2】
GNSS装置と、水平回転可能な托架部と、該托架部に鉛直方向に回転可能に設けられた望遠鏡部と、該望遠鏡部に設けられた画像取得部と、前記托架部及び前記望遠鏡部を回転駆動する駆動部と、前記托架部の水平角を検出する水平測角部と、前記望遠鏡部の鉛直角を検出する鉛直測角部と、基準クロック信号を生成する基準クロック信号発生部を有する制御装置とを具備する測量装置であって、
前記制御装置は前記GNSS装置から得られる信号より標準時刻を示す時刻信号を生成し
、該時刻信号に前記基準クロック信号に基づきタイムスタンプを付し、前記時刻信号と前記基準クロック信号とを関連付け、
前記測量装置は追尾機能を有し、前記制御装置は追尾作動を継続した状態で、前記画像取得部により画像信号を取得すると共に前記水平測角部により複数回水平角を測定し、画像信号、各水平角測定信号に対してタイムスタンプを付し、前記基準クロック信号と前記画像信号のタイムスタンプより画像取得時の標準時刻を演算し、該標準時刻での太陽の方位角を演算し、各水平角測定信号のタイムスタンプと各タイムスタンプに対応した水平角と
、前記画像信号のタイムスタンプと前記基準クロック信号に基づき画像取得時の水平角を演算し、該画像取得時の水平角を前記標準時刻での太陽の方位角で更新する
ことを特徴とする測量装置。
【請求項3】
前記制御装置は、取得した画像中の太陽像と視準位置との間の位置ずれを演算し、該位置ずれに基づき前記望遠鏡部の光軸の水平ずれ角を演算し、該水平ずれ角により更新する前記方位角を補正する請求項2の測量装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記水平測角部により水平角更新時の水平角を測定し、測定された水平角と前記画像取得時の水平角との偏差を求め、該偏差により前記方位角を補正する請求項2又は請求項3の測量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
測量を実施する為に測量装置を設置した場合、測量装置の基準方向を設定する為に真北を測定する。設置場所に於ける方位角を測定する方法の1つとして、太陽を利用して真北を測量する方法がある。
【0003】
測量装置が設置された位置(緯度、経度)が既知であり、設置位置から太陽を望遠鏡で視準し、視準した際の太陽の水平角を求め、緯度、経度と視準した時の時刻に基づき太陽の方位角を求め、前記水平角を方位角に置換(更新)することで真北を測量することができる。
【0004】
真北を測定する手段としては、測量装置を設置した後、測量装置が備えている望遠鏡で太陽を視準し、次に視準方向の鉛直角、水平角を測定している。この為、太陽を視準した時と方向角を測定する時の時間差が生じる。太陽は、地球の自転により高速(最大15秒角/秒)で移動しており、測定された水平角は実際の太陽の位置よりは時間差に太陽の速度を掛けた分だけずれている。
【0005】
この為、高精度で真北を測定する必要がある場合には、太陽の位置のずれは誤差となって現れるので、測定結果に太陽の位置のずれが含まれないより高精度の真北測量が行えることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−327862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は斯かる実情に鑑み、測定結果に太陽の位置のずれが含まれない高精度の真北測量が行える測量装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、GNSS装置と、水平回転可能な托架部と、該托架部に鉛直方向に回転可能に設けられた望遠鏡部と、該望遠鏡部に設けられた画像取得部と、前記托架部及び前記望遠鏡部を回転駆動する駆動部と、前記托架部の水平角を検出する水平測角部と、前記望遠鏡部の鉛直角を検出する鉛直測角部と、基準クロック信号を生成する基準クロック信号発生部を有する制御装置とを具備する測量装置であって、前記制御装置は前記GNSS装置から得られる信号より標準時刻を示す時刻信号を生成し、該時刻信号に前記基準クロック信号に基づきタイムスタンプを付し、前記時刻信号と前記基準クロック信号とを関連付け、前記望遠鏡部が太陽を視準した時点で前記水平測角部により水平角を測定すると共に前記画像取得部により画像信号を取得し、前記基準クロック信号に基づき前記画像信号にタイムスタンプを付し、該画像信号のタイムスタンプと前記基準クロック信号に基づき画像取得時の標準時刻を演算し、前記測量装置が設置された地点の緯度、経度と画像取得時の標準時刻に基づき該標準時刻での太陽の方位角を演算し、前記水平測角部により測定した水平角を前記方位角で更新する測量装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記望遠鏡部は視準完了時で停止させ、前記制御装置は取得した画像中の太陽像と視準位置との間の位置ずれを演算し、該位置ずれに基づき前記望遠鏡部の光軸の水平ずれ角を演算し、該水平ずれ角により更新する前記方位角を補正する測量装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記測量装置は追尾機能を有し、前記制御装置は追尾作動を継続した状態で、前記画像取得部により画像を取得すると共に前記水平測角部により複数回水平角を測定し、画像信号、各水平角測定信号に対してタイムスタンプを付し、前記基準クロック信号と前記画像信号のタイムスタンプより画像取得時の標準時刻を演算し、該標準時刻での太陽の方位角を演算し、各水平角測定信号のタイムスタンプと各タイムスタンプに対応した水平角と、前記画像信号のタイムスタンプと前記基準クロック信号に基づき画像取得時の水平角を演算し、該画像取得時の水平角を前記標準時刻での太陽の方位角で更新する測量装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記制御装置は、取得した画像中の太陽像と視準位置との間の位置ずれを演算し、該位置ずれに基づき前記望遠鏡部の光軸の水平ずれ角を演算し、該水平ずれ角により更新する前記方位角を補正する測量装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記制御装置は、前記水平測角部により水平角更新時の水平角を測定し、測定された水平角と前記画像取得時の水平角との偏差を求め、該偏差により前記方位角を補正する測量装置に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、GNSS装置と、水平回転可能な托架部と、該托架部に鉛直方向に回転可能に設けられた望遠鏡部と、該望遠鏡部に設けられた画像取得部と、前記托架部及び前記望遠鏡部を回転駆動する駆動部と、前記托架部の水平角を検出する水平測角部と、前記望遠鏡部の鉛直角を検出する鉛直測角部と、基準クロック信号を生成する基準クロック信号発生部を有する制御装置とを具備する測量装置であって、前記制御装置は前記GNSS装置から得られる信号より標準時刻を示す時刻信号を生成し、該時刻信号に前記基準クロック信号に基づきタイムスタンプを付し、前記時刻信号と前記基準クロック信号とを関連付け、前記望遠鏡部が太陽を視準した時点で前記水平測角部により水平角を測定すると共に前記画像取得部により画像信号を取得し、前記基準クロック信号に基づき前記画像信号にタイムスタンプを付し、該画像信号のタイムスタンプと前記基準クロック信号に基づき画像取得時の標準時刻を演算し、前記測量装置が設置された地点の緯度、経度と画像取得時の標準時刻に基づき該標準時刻での太陽の方位角を演算し、前記水平測角部により測定した水平角を前記方位角で更新するので、視準完了から画像取得時迄に時間が経過した場合でも、画像取得時の正確な標準時刻が取得でき、画像取得時の正確な方位角が測定できる。
【0014】
又本発明によれば、前記望遠鏡部は視準完了時で停止させ、前記制御装置は取得した画像中の太陽像と視準位置との間の位置ずれを演算し、該位置ずれに基づき前記望遠鏡部の光軸の水平ずれ角を演算し、該水平ずれ角により更新する前記方位角を補正するので、視準完了から時間が経過し、太陽が移動した場合でも正確な真北測量が行える。
【0015】
又本発明によれば、前記測量装置は追尾機能を有し、前記制御装置は追尾作動を継続した状態で、前記画像取得部により画像を取得すると共に前記水平測角部により複数回水平角を測定し、画像信号、各水平角測定信号に対してタイムスタンプを付し、前記基準クロック信号と前記画像信号のタイムスタンプより画像取得時の標準時刻を演算し、該標準時刻での太陽の方位角を演算し、各水平角測定信号のタイムスタンプと各タイムスタンプに対応した水平角と、前記画像信号のタイムスタンプと前記基準クロック信号に基づき画像取得時の水平角を演算し、該画像取得時の水平角を前記標準時刻での太陽の方位角で更新するので、追尾状態でも、画像取得時の正確な方位角、水平角が測定でき、正確な真北測量が行える。
【0016】
又本発明によれば、前記制御装置は、取得した画像中の太陽像と視準位置との間の位置ずれを演算し、該位置ずれに基づき前記望遠鏡部の光軸の水平ずれ角を演算し、該水平ずれ角により更新する前記方位角を補正するので、画像中で光軸と太陽像とが完全一致していない場合でも、正確な真北測量が行える。
【0017】
更に又本発明によれば、前記制御装置は、前記水平測角部により水平角更新時の水平角を測定し、測定された水平角と前記画像取得時の水平角との偏差を求め、該偏差により前記方位角を補正するので、追尾により望遠鏡の光軸の水平角の変化が測定で無視できないときも、正確な真北測量が行えるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例に係る測量装置の概略外観図である。
図2】該測量装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】本実施例中の広角カメラの受光素子上に於ける望遠鏡の視野と太陽視準位置との関係を示す説明図である。
図4】基準クロック信号を時間軸とし、該時間軸上に取得された信号を位置付け、整理した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0020】
図1図2は本発明が実施される測量装置1を示している。尚、用いられる測量装置1は、例えばトータルステーションであり、追尾機能を有している。測定点について測距光としてのパルスレーザ光線を照射し、測定点からの測距光の反射光(以下、反射光)を受光して、各パルス毎に測距を行い、測距結果を平均化して高精度の距離測定を行うものである。
【0021】
図1に示される様に、前記測量装置1は主に、図示しない三脚に取付けられる整準部2、該整準部2に設けられた基盤部3、該基盤部3に鉛直軸心を中心に回転可能に設けられた托架部4、該托架部4に水平軸心を中心に回転可能に設けられた望遠鏡部5、該望遠鏡部5に具備された画像取得部(後述)から構成されている。
【0022】
前記托架部4は表示部6、操作入力部7を具備し、前記望遠鏡部5は、測定対象物を視準する望遠鏡8と該望遠鏡8の光学系を共有する測距部11を有している。更に、前記望遠鏡8の光学系を通して視準方向の画像を取得する撮像部12を有している。又、前記望遠鏡部5は広角カメラ9を具備している。該広角カメラ9は前記望遠鏡8と平行な光軸を有し、該望遠鏡8の視準方向、或は略視準方向の広角画像を取得可能である。前記望遠鏡部5の光軸と前記広角カメラ9の光軸との距離は既知となっている。前記画像取得部は、前記広角カメラ9及び前記撮像部12によって構成され、或は前記広角カメラ9及び前記撮像部12のいずれか一方で構成される。
【0023】
又、前記測量装置1は、GNSS(Global Navigation Satelite System)装置10を備えている。該GNSS装置10は、衛星から発信される衛星信号を受信して前記測量装置1の位置(絶対座標)を測定し、又衛星信号に含まれる時刻信号からGNSS時刻信号を発する。
【0024】
尚、前記望遠鏡8の画角は、例えば1゜であり、前記広角カメラ9の画角は、例えば15゜〜30゜である。又、前記望遠鏡8と前記広角カメラ9とは光軸が異なっているが、両光軸間の距離は既知であり前記広角カメラ9と前記望遠鏡8間の視準方向のずれは演算により修正が可能である。
【0025】
前記広角カメラ9、前記撮像部12は、それぞれ撮像画像をデジタル画像信号として出力する。前記広角カメラ9、前記撮像部12が有する受光素子は、例えば画素の集合体であるCCD、CMOS等であり、受光する画素の位置が特定でき、又受光する画素の位置から、それぞれ光軸に対する画角が求められる様になっている。
【0026】
図2により、前記測量装置1の基本構成について説明する。
【0027】
上記した様に、前記望遠鏡部5は、前記望遠鏡8の光学系を共有する測距部11を内蔵し、該測距部11は測距光としてのパルスレーザ光線を前記光学系を介して射出すると共に測定対象物からの反射光を前記光学系を介して受光し、受光した反射光に基づき測定対象物迄の距離を光波距離測定する。
【0028】
尚、前記測距部11は、測定対象物がプリズムであった場合はプリズム測定方式での測定が可能であり、又プリズムでない場合はノンプリズム測定方式での測定が可能であり、測定対象物に対応して測定方式の切換えが可能となっている。
【0029】
前記托架部4には、該托架部4を水平方向に回転させる為の水平駆動部15が設けられると共に前記托架部4の前記基盤部3に対する水平回転角を検出し、視準方向の水平角を検出する水平測角部16が設けられる。又前記托架部4には、水平軸心を中心に前記望遠鏡部5を回転する鉛直駆動部17が設けられると共に前記望遠鏡部5の鉛直角を検出し、視準方向の鉛直角を測角する鉛直測角部18が設けられる。
【0030】
又、前記托架部4には傾斜検出部14が設けられ、該傾斜検出部14は前記托架部4の傾き、或は水平を検出する。
【0031】
前記托架部4には制御装置20が内蔵されている。該制御装置20は、前記傾斜検出部14の検出結果に基づき、前記整準部2を制御し、前記托架部4を水平に整準する。
【0032】
又、前記制御装置20は、前記水平駆動部15の駆動を制御して前記托架部4を水平方向に回転し、更に前記鉛直駆動部17の駆動を制御して前記望遠鏡部5を高低方向に回転する。前記托架部4の水平回転は前記水平測角部16によって検出され、検出された水平角は前記制御装置20に入力される。前記望遠鏡部5の鉛直回転は、前記鉛直測角部18によって検出され、検出された鉛直角は前記制御装置20に入力される。
【0033】
前記制御装置20は、前記水平測角部16からの検出結果、前記鉛直測角部18からの検出結果に基づき、及び前記水平駆動部15と前記鉛直駆動部17との協働により前記望遠鏡部5を所定の方向に向ける。
【0034】
図2を参照して、前記制御装置20について更に説明する。
【0035】
該制御装置20は、入出力制御部21、制御演算部22、記憶部23、前記広角カメラ9が取得した画像を記録する第1画像記録部24、前記撮像部12が取得した画像を記録する第2画像記録部25、前記広角カメラ9が取得した画像、前記撮像部12が取得した画像に基づき測定点、或は測定対象物を特定する等の画像処理を行う画像処理部26、基準クロック信号を発生する基準クロック信号発生部27、前記表示部6、前記操作入力部7等から構成されている。
【0036】
前記制御装置20は、前記記憶部23に格納された各種プログラム(後述)を実行することで、前記広角カメラ9により画像を取得し、該広角カメラ9が取得した画像に基づき太陽の検出、追尾、更に真北測量を実行し、前記撮像部12が取得した画像に基づき測定対象物を追尾する制御を行う。更に、前記制御装置20は、前記広角カメラ9が取得した画像、前記撮像部12が取得した画像に基づき、追尾を開始する前に測定対象物を画像中(望遠鏡視野内)に捕捉する為のサーチを行い、或は追尾中に測定対象物が画像から外れた場合に再度画像中に捕捉する為のサーチを行う。
【0037】
前記記憶部23には測定を実行させる為のシーケンスプログラム、前記表示部6に表示させる為の画像表示プログラム、測定に必要な計算を実行する為の演算プログラム、前記広角カメラ9及び前記撮像部12で取得した画像について画像処理を行う為の画像処理プログラム、処理された画像から太陽を視準させ、視準時の太陽の位置を演算し、真北測量を実行する真北測量プログラム、視準時、画像取得時、水平角測定時の間に時間差が発生する場合、時間差に基づく誤差を補正する補正プログラム、測定点を測距し、或は測定対象物を追尾して測距する測距プログラム等のプログラムが格納されている。
【0038】
前記制御演算部22には、前記測距部11、前記水平測角部16、前記鉛直測角部18からの測定結果が入力される。前記制御演算部22は、シーケンスプログラム、演算プログラム、測距プログラム等に基づき、距離測定、鉛直角、水平角の測定、測定誤差の補正を実行し、又画像表示プログラム等により測定結果を前記記憶部23に格納すると共に前記表示部6に表示する様になっている。
【0039】
前記画像処理プログラムは、前記画像処理部26に前記広角カメラ9が取得した画像、前記撮像部12が取得した画像に基づき測定点、或は測定対象物を抽出する等の画像処理を実行させる。
【0040】
又、前記制御演算部22は測距プログラムによる測定対象物の測距、測角を実行する通常測量モードと、真北測量プログラムによる真北測量を行う真北測量モードとを実行可能であり、前記操作入力部7から測量モードを選択することで、所要の測定を実行可能である。
【0041】
以下、測量を行う場合について説明する。
【0042】
先ず、前記測量装置1により水平方向に存在する測定対象物を測定する場合は、通常測量モードを選択し、前記望遠鏡8により測定対象物を視準して測定対象物迄の距離を測定する。
【0043】
次に、真北測量を実行する場合は、前記測量装置1を既知点、即ち緯度、経度が既知の点に設置し、前記整準部2により整準する。設置された位置の情報(緯度、経度)は前記GNSS装置10より取得され、前記制御装置20に入力される。或は、測量者が設置された位置の緯度、経度を前記操作入力部7により前記制御装置20に入力してもよい。
【0044】
又、真北測量を実行する場合、作業者による真北測量と、自動で行う真北測量とがある。
【0045】
作業者による真北測量では、前記望遠鏡8、前記広角カメラ9に減光フィルタを装着し、測量者が前記望遠鏡8により太陽を視準する。視準した時の前記望遠鏡8の鉛直角、水平角がそれぞれ前記水平測角部16、前記鉛直測角部18によって測定され、測定結果は前記制御装置20に入力される。更に、前記GNSS装置10が受信するGNSS信号には標準時刻についての時刻信号が含まれており、前記制御装置20は前記GNSS装置10により、測定時の標準時刻を取得し、この時刻と緯度、経度及び前記水平角、鉛直角に基づき太陽の方位角(水平角)を演算し、演算された水平角を前記水平測角部16が検出し水平角とする(更新する)ことで真北が測定される。
【0046】
本実施例によれば、以下の如く自動で真北測量を実行できる。
【0047】
真北測量モードを選択し、前記望遠鏡8、前記広角カメラ9に減光フィルタを装着する。
【0048】
先ず、真北測量について第1の方法について説明する。
【0049】
最初に太陽を視準する。太陽の視準は、測量者が目視で実行してもよく、或は、前記測量装置1の追尾機能を利用して実行してもよい。
【0050】
追尾機能により太陽を視準する場合、視準は太陽を撮像した画像に基づき行われる。この場合、画像は、前記望遠鏡8に設けられた前記撮像部12で取得した画像であってもよく、或は前記広角カメラ9で取得した画像であってもよい。以下の説明では、前記広角カメラ9を用いて視準する場合を説明する。
【0051】
測量者が前記広角カメラ9により太陽を捉える様、前記広角カメラ9を概略太陽の方向に向ける。前記広角カメラ9の視野は広いので概略の方向があっていれば、太陽は前記広角カメラ9に捉えることができる。前記操作入力部7より、自動で真北測量を行う為の指令を入力する。前記測量装置1は、前記広角カメラ9で取得した画像に基づき該広角カメラ9の光軸が太陽に合致する様、太陽を視準する。
【0052】
真北測量モードを選択した場合は、前記広角カメラ9が太陽を視準したとする太陽視準位置32は、前記望遠鏡8の視準位置(前記望遠鏡8の光軸)とはずらして設定してあり、前記広角カメラ9の太陽視準位置32と前記望遠鏡8の視準位置との関係は、図3に示される様に、前記望遠鏡8の視野31から完全に外れた位置となっている。又、太陽視準位置32と前記望遠鏡8の視準位置とのずれ量は、既知であり、又少なくとも前記望遠鏡8の視野からは外れる量とする。太陽視準位置32と前記望遠鏡8の視準位置とのずれ量は既知であるので、太陽視準位置32は演算により、前記望遠鏡8の視準位置に合致する様、補正することができる。
【0053】
図3は、前記広角カメラ9の画像30を示しており、又前記広角カメラ9が最終的に太陽を視準した状態を示している。図3では、太陽の像33は前記太陽視準位置32と合致している。前記望遠鏡8の視準位置に対して太陽視準位置32はどちらの方向にずらしてもよいが、真北測定に於いては、水平角の精度が重要であるので、水平角のキャリブレーション誤差を少なくする為、鉛直方向にずらしている。
【0054】
又、真北測量モードでは、前記広角カメラ9が撮像した画像が、前記表示部6に表示される様になっており、太陽を前記広角カメラ9で捉えたかどうかは、前記表示部6の画像によって容易に確認することができる。
【0055】
太陽の像33が、前記太陽視準位置32に合致する様に追尾され、太陽の像33が前記太陽視準位置32に合致した時点で、視準が完了したとして、追尾が完了し、前記望遠鏡部5が停止される。
【0056】
該望遠鏡部5が停止した時の、該望遠鏡部5の水平角(該望遠鏡8の光軸の水平角)θが、前記水平測角部16によって測定される。
【0057】
前記望遠鏡部5が停止した状態で、前記広角カメラ9による画像が取得され、更に、画像取得時にはタイムスタンプが付され、画像取得の正確な時刻はタイムスタンプを介して取得される(後述)。
【0058】
太陽の視準が完了した時と画像の取得時刻とでは時間のずれを生じる可能性があり、時間のずれがある場合は、太陽は時間のずれ分だけ移動している。更に、太陽の移動により、視準時に測定した水平角と画像取得時の太陽の水平角とはずれを生じている。両水平角間のずれは、画像上の太陽の像33の位置と光軸の位置とのずれの水平成分として現れる。
【0059】
画像取得時に画像信号に付されるタイムスタンプについて、前記制御演算部22より前記広角カメラ9に対して撮像指令信号(シャッタトリガ信号)が発せられ、前記広角カメラ9により画像が取得される。従って、シャッタトリガ信号が発せられた時が画像取得時刻として、前記画像信号に対して、前記基準クロック信号発生部27から発せられる基準クロック信号でタイムスタンプが付せられる。タイムスタンプが付せられた画像信号は、前記記憶部23に格納される。
【0060】
後述する様に、このタイムスタンプに基づき画像取得時の標準時刻が求められる。更に、この標準時刻と前記測量装置1が設置されている地点の緯度、経度により、画像取得時の太陽の方位角(水平角)Sが演算される。太陽が移動しないと仮定した場合は、或は処理時間が短く太陽の移動が測定に影響しない場合は、視準時の前記水平測角部16が検出した水平角をSに置換する(更新)することで、前記水平測角部16が検出する水平角を方位角と同等とすることができる。
【0061】
ところが、上記した様に、太陽は高速で移動しており、太陽の移動が無視できない測定状態、或は高精度が要求される場合は、画像上から太陽の位置と視準位置とのずれを求め、太陽の移動に伴うずれを補正する。
【0062】
前記画像処理部26は、前記第1画像記録部24に格納された画像を処理して太陽の像33を抽出すると共に、該太陽の像33の中心位置を検出する。前記太陽の像33の中心位置と前記太陽視準位置32とを比較し、前記太陽の像33の中心位置と前記太陽視準位置32との間のずれ量、ずれている方向を演算し、更にずれの水平成分を演算し、演算結果を前記制御演算部22に入力する。
【0063】
該制御演算部22は、画像上のずれδに基づき水平角のずれ角Δθを演算する。
【0064】
このずれ角Δθを考慮し、前記水平測角部16が測定した水平角θを(S−Δθ)で更新することで、真北測量が完了し、前記水平測角部16が測定する水平角を方位角とすることができる。
【0065】
尚、画像を複数回取得し、画像取得毎に画像信号にタイムスタンプを付し、各画像毎にずれ角Δθを求め、平均値を求めてもよい。
【0066】
上記した様に、取得される信号に対してそれぞれタイムスタンプを付すことで、信号を時系列に整理することができる。
【0067】
図4(A)は、基準クロックを時系列に配置した模式図であり、クロック信号列を時間軸とし、タイムスタンプに基づき時間軸上にGNSS信号、画像取得時刻を示したものである。
【0068】
前記基準クロック信号発生部27からは、基準クロック信号が発せられており、該基準クロック信号に基づき各種信号にタイムスタンプが付される。
【0069】
衛星からは1信号/秒で衛星信号が発信されているので、1秒毎に、GNSS信号が取得できる。又、衛星信号には標準時刻の信号が含まれており、前記GNSS装置10は衛星信号に基づき標準時刻を示す時刻信号(以下、GNSS時刻信号)を生成し、GNSS時刻信号を出力する。各GNSS時刻信号には、基準クロック信号に基づきタイムスタンプが付され、GNSS時刻信号と基準クロック信号との時間的な関連付けがなされる。
【0070】
GNSS時刻信号と基準クロック信号との時間的な関連付けがなされることで、基準クロック信号により生成される基準クロック信号列は、標準時刻の時間軸となる。又、GNSS時刻信号と基準クロック信号との関連付けされたデータは、前記入出力制御部21、前記制御演算部22を介して前記記憶部23に格納される。
【0071】
而して、時間軸上の画像取得位置と、GNSS時刻信号と基準クロック信号に基づき、前記画像取得の標準時刻が算出できる。この標準時刻と前記測量装置1が設置されている地点の緯度、経度により、画像取得時の太陽の方位角(水平角)Sが演算される。
【0072】
次に、真北測量について第2の方法について説明する。第2の方法では、追尾を実行しながら真北を測定する。
【0073】
前記測量装置1に太陽を視準させ、追尾を続行させる。追尾をしている状態で、画像取得及び前記水平測角部16による水平角を測定する。
【0074】
GNSS信号に基づきGNSS時刻信号を順次取得し、GNSS時刻信号毎に対してタイムスタンプを付す。又、画像取得時に画像信号にタイムスタンプを付す。水平角を複数回測定し、測定する度に角度測定信号にタイムスタンプを付す。
【0075】
図4(B)は基準クロック信号列を時間軸として、タイムスタンプに基づき時間軸上にGNSS時刻信号、画像取得信号、水平角測定信号を示したものである。又、タイムスタンプと基準クロック信号列(標準時刻の時間軸)から、画像取得時の標準時刻、水平角測定時の標準時刻をそれぞれ求めることができる。
【0076】
第1の方法と同様に、GNSS時刻信号のタイムスタンプ、画像取得信号のタイムスタンプとに基づき画像取得時の標準時刻が求められる。又、画像取得時の標準時刻、緯度、経度を基に太陽の方位角(水平角)Sが演算される。
【0077】
複数の水平角測定時刻と画像取得時刻との関係に基づき、更に各測定時刻で測定した水平角の値から、画像取得時の望遠鏡8の水平角θが補間により求められる。
【0078】
更に、望遠鏡8は、画像に基づき追尾を行っており、画像上の太陽の位置は、必ずしも太陽視準位置32と一致しているわけではない。画像上の前記太陽視準位置32に対する太陽の像33の位置ずれを求める。
【0079】
画像上の太陽の像33の位置ずれδを、画像上から求め、画像上の位置ずれδから水平角のずれΔθが演算される。
【0080】
更に、更新しようとする時の望遠鏡部5の水平角θ′が、前記水平測角部16によって測定され、画像取得時の前記望遠鏡部5の水平角θとのずれ(θ−θ′)が求められ、この(θ−θ′)と水平角のずれΔθを考慮することで、更新しようとする時の方位角が(S−Δθ+(θ′−θ))として求められ、前記水平測角部16が検出する角度が、(S−Δθ+(θ′−θ))によって更新される。
【0081】
従って、追尾を実行しつつ、真北測量が行える。更に、追尾を実行しつつ所要回数、真北測量を実行し、測定結果を平均化してもよい。
【0082】
更に、追尾、画像上のずれδの算出は、画像処理を伴うが、画像処理について以下の処理を行ってもよい。
【0083】
前記広角カメラ9の受光素子上には、前記望遠鏡8の前記視野31に相当する範囲が受光禁止範囲として設定される。
【0084】
前記制御演算部22は、太陽の中心位置と前記太陽視準位置32とから、前記太陽の像33の中心位置を前記太陽視準位置32迄移動させる為の経路を演算する。
【0085】
更に、前記制御演算部22は、受光素子上の太陽の中心位置を前記太陽視準位置32に合致させる場合に、最短距離で移動させた場合に前記太陽の像33の中心位置が前記望遠鏡8の前記視野31を通過する様な場合は、前記望遠鏡8の前記視野31を迂回して、前記太陽視準位置32に到達する様な経路を演算し、演算した経路に基づき前記水平駆動部15、前記鉛直測角部18を駆動制御する。
【0086】
或は、前記望遠鏡8の光学系に、電気式、機械式等の任意のシャッタを設け、前記広角カメラ9の真北測量モードでは、前記望遠鏡8の光路を遮断する様にしてもよい。
【0087】
本実施例では、真北測量を行う場合に、前記広角カメラ9を概略太陽に向けるだけで、その後は自動で真北測量が可能である。又、真北測量の進行状態、真北測量の結果は前記表示部6により確認できるので、作業性に優れる。
【0088】
尚、上記説明では、前記広角カメラ9で取得した画像に基づき真北測量を行ったが、前記望遠鏡8を介し、前記撮像部12で取得した画像に基づき真北測量を行ってもよいことは言う迄もない。
【符号の説明】
【0089】
1 測量装置
2 整準部
3 基盤部
5 望遠鏡部
6 表示部
7 操作入力部
8 望遠鏡
9 広角カメラ
10 GNSS装置
11 測距部
12 撮像部
14 傾斜検出部
15 水平駆動部
16 水平測角部
17 鉛直駆動部
18 鉛直測角部
20 制御装置
21 入出力制御部
22 制御演算部
23 記憶部
26 画像処理部
27 基準クロック信号発生部
31 視野
32 太陽視準位置
33 太陽の像
図1
図2
図3
図4