特許第6455958号(P6455958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6455958燃料棒のセラミック含有被覆管に二重にシールされた端栓
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6455958
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】燃料棒のセラミック含有被覆管に二重にシールされた端栓
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/10 20060101AFI20190110BHJP
   G21C 3/06 20060101ALI20190110BHJP
【FI】
   G21C3/10 200
   G21C3/06 200
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-546094(P2016-546094)
(86)(22)【出願日】2015年2月11日
(65)【公表番号】特表2017-515094(P2017-515094A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】US2015015325
(87)【国際公開番号】WO2015175034
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2018年1月24日
(31)【優先権主張番号】14/205,823
(32)【優先日】2014年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ポミルリーヌ、ラドゥ、オー
(72)【発明者】
【氏名】ラホーダ、エドワード、ジェイ
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2-257090(JP,A)
【文献】 特開平5-180986(JP,A)
【文献】 特表2008-501977(JP,A)
【文献】 特開2012-233734(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/017621(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/10
G21C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水冷式原子炉炉心の原子燃料棒のセラミック含有被覆管(22)を封止する方法であって、
管壁
外面
当該管壁によって形成されるキャビティ、
第1の開端部、
第2の開端部、および
内径(34)
を有する当該被覆管(22)を提供するステップと、
それぞれが、頂面、底面、外面、当該頂面と当該底面の間を延びる縦方向部分、および当該被覆管(22)の当該内径(34)より小さい外径(32)を有する、第1の端栓(16)および第2の端栓(16)を提供するステップと、
当該第1の端栓(16)を当該被覆管の当該第1の開端部に挿入して封止するステップと、
当該キャビティ内に原子燃料(20)および押さえ装置(24)を装填するステップと、
当該第2の端栓(16)の当該外面の少なくとも一部にろう材(30)を付着させて第1のコーティングを形成させるステップと、
当該第1のコーティングを有する当該第2の端栓(16)を当該被覆管(22)の当該第2の開端部に挿入して、当該第2の端栓(16)の当該底面が当該キャビティ内の一部を占め、当該頂面が当該被覆管(22)の閉じた第2の端部を形成するようにするステップと、
当該第1のコーティングを有する当該第2の端栓(16)を、当該ろう材(30)の融点以上の温度に加熱して当該ろう材(30)の少なくとも一部を融解させるステップと、
当該第1のコーティングを有する当該第2の端栓(16)を冷却して当該第2の端栓と当該被覆管(22)との間に第1のシールを形成させるステップと、
当該第2の端栓(16)の当該頂面当該被覆管(22)の当該外面の少なくとも一部にSiCから成る第2のコーティング(42)を付着させて当該被覆管(22)に第2のシールを形成させるステップと
から成る方法。
【請求項2】
前記第2の端栓(16)に開口(40)を設けて前記キャビティ内にガスを送り込めるようにするステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記開口(40)を前記ろう材(30)で充填するステップをさらに含む、請求項2の方法。
【請求項4】
前記第1の端栓(16)を封止するステップが、
前記第1の端栓(16)の前記外面の少なくとも一部にろう材(30)を付着させて第1のコーティングを形成させるステップと、
当該第1のコーティングを有する前記第1の端栓(16)を前記被覆管(22)の前記第1の開端部に挿入して、前記第1の端栓の前記底面が前記キャビティ内の一部を占め、前記頂面が前記被覆管(22)の閉じた第2の端部を形成するようにするステップと、
当該第1のコーティングを有する前記第1の端栓(16)を、当該ろう材(30)の融点以上の温度に加熱して当該ろう材(30)の少なくとも一部を融解させるステップと、
当該第1のコーティングを有する前記第1の端栓(16)を冷却して前記第1の端栓(16)と前記被覆管(22)との間に第1のシールを形成させるステップと、
前記第1の端栓(16)の前記頂面前記被覆管(22)の少なくとも一部にSiCから成る第2のコーティング(42)を付着させて前記被覆管(22)に第2のシールを形成させるステップと
を含む、請求項1の方法。
【請求項5】
水冷式原子炉のセラミック複合材被覆管(22)であって、シリコンカーバイドを含む材料から成り、第1の開端部、第2の開端部、原子燃料(20)が配置される内部キャビティおよび内径(34)を有し、当該被覆管(22)は、
それぞれが、頂面、底面、外面、当該頂面と当該底面の間を延びる縦方向部分、および当該被覆管(22)の当該内径(34)より小さい外径(32)を有する、第1の端栓(16)および第2の端栓(16)と、
当該外径(32)と当該内径(34)との間に位置するろう付けコーティング(30)と、
SiC含有コーティングと
を有するものであり、
当該第1および第2の端栓(16)のそれぞれの当該頂面と当該被覆管(22)の当該少なくとも一部とに当該SiC含有コーティングが施されており、
当該第1および第2の端栓(16)のそれぞれの当該頂面がそれぞれ第1および第2の閉端部を形成するように、当該第1および第2の端栓(16)が当該第1および第2の開端部にそれぞれ挿入されていることを特徴とする被覆管(22)
【請求項6】
前記第2のコーティング(42)を付着させるステップは、化学蒸着法と化学気相含浸法から成る群より選択された付着プロセスを含む、請求項1の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷式原子炉のセラミック含有物質から成る燃料棒被覆管に関し、具体的には、燃料棒被覆管の一端または両端に二重シールを施すことに関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子炉(PWR)、重水炉(例えばCANDU)、沸騰水型原子炉(BWR)などの典型的な水冷式原子炉の炉心には、多数の燃料集合体が含まれており、各燃料集合体は、複数の細長い燃料要素または燃料棒から成る。燃料集合体には、望まれる炉心のサイズおよび原子炉のサイズに応じて、さまざまなサイズおよび設計のものがある。燃料棒はそれぞれ、例えば二酸化ウラン(UO)、二酸化プルトニウム(PuO)、二酸化トリウム(ThO)、窒化ウラン(UN)およびウラン・シリサイド(USi)のうちの1つ以上の物質またはそれらの混合物などの原子燃料用核分裂性物質を含んでいる。燃料棒の少なくとも一部は、ホウ素もしくはホウ素化合物、ガドリニウムもしくはガドリニウム化合物、エルビウムもしくはエルビウム化合物等、またはそれらの混合物などの中性子吸収材を含むことがある。中性子吸収材は、原子燃料ペレット積層体の形態をとるペレットの上またはその内部に存在することがある。環状または粒子状の燃料を使用することもできる。
【0003】
各燃料棒は、核分裂性物質を封じ込める働きをする被覆管を有している。燃料棒は、アレイ状にひとまとめにして、高い核分裂率を維持するに十分な中性子束が炉心内に発生して、大量のエネルギーが熱として放出されるようにする。炉心で発生する熱を抽出して電力などの有用な仕事を生産するために、水などの冷却材を炉心内へ圧送する。
【0004】
燃料棒被覆管の構成成分はジルコニウム(Zr)であるが、ニオブ(Nb)、スズ(Sn)、鉄(Fe)およびクロム(Cr)など他の金属を最大約2重量%含むことができる。当技術分野では最近、シリコンカーバイド(SiC)などのセラミック含有物質を構成成分とする燃料棒被覆管が開発されている。燃料棒被覆管の各端部には、栓またはキャップが付いている。さらに燃料棒内には、原子燃料ペレットの積層構成を維持する金属ばねなどの押さえ装置が設けられている。
【0005】
図1は先行技術の設計例であり、燃料ペレット積層体10、ジルコニウム系被覆管12、ばね押さえ装置14および端栓16を示している。端栓のうち、押さえ装置14に最も近い位置にあるものを一般に上部端栓と称する。
【0006】
被覆管内の燃料を炉心環境から隔離するには、被覆管の端栓を封止する必要がある。Ti系またはAl−Si系組成物などさまざまな材料を用いる公知のシール技術と、SiC被覆管と端栓を封止するろう付けや他の従来法がある。これらの材料は高い機械的強度と気密性を実現できることが実証されている。しかし、これらの公知のシール材には、原子炉環境に晒される構成部分に必要なレベルの耐腐食性がないなどの欠点がある。また、放電プラズマ焼結など一部の公知シール技術は、大量生産をする場合経済的に引き合わない。
【0007】
したがって、当技術分野では、燃料棒被覆管、特にSiC含有被覆管向けの、以下の特徴および特性のうち1つ以上を有するシール技術を開発することが望まれる。
・通常運転、想定内運転事象、稀発事故および限界故障の発生時と発生後において機械的強度を保証すること。
・照射時と原子炉特有の腐食環境下において、端栓と被覆管との接合部の気密性を保証すること。
・(燃料ペレットおよび押さえ装置を)完全に装填した被覆管に適合する接合技術であること。
・典型的な最大圧力300psiのヘリウムまたは他の熱伝導性充填ガスによる燃料の加圧が可能であること。
・接合技術が、商用大量生産を可能にすること。
【0008】
本発明の一つの目的は、燃料ペレットを封じ込めるセラミック複合材の被覆管に用いる、高強度で、気密封止され、商業的に有用かつ実現可能であると共に、原子炉環境の照射に耐え得る端栓シールの製造方法を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
一局面において、本発明は、水冷式原子炉炉心の原子燃料棒のセラミック含有被覆管を封止する方法を提供する。本方法では、管壁、当該管壁によって形成されるキャビティ、第1の開端部、第2の開端部および内径を有する被覆管を提供する。本方法はさらに、それぞれが頂面、底面、外面、当該頂面と底面の間を延びる縦方向部分、および被覆管の内径より小さい外径を有する、第1の端栓および第2の端栓を提供するステップと、当該第1の端栓を当該被覆管の当該第1の開端部に挿入して封止するステップと、当該キャビティ内に原子燃料および押さえ装置を装填するステップと、当該第2の端栓の当該外面の少なくとも一部にろう材を付着させて第1のコーティングを形成させるステップと、当該第1のコーティングを有する当該第2の端栓を当該被覆管の当該第2の開端部に挿入して、当該第2の端栓の当該底面が当該キャビティ内の一部を占め、当該頂面が当該被覆管の閉じた第2の端部を形成するようにするステップと、当該第1のコーティングを有する当該第2の端栓を、当該ろう材の融点以上の温度に加熱して当該ろう材の少なくとも一部を融解させるステップと、当該第1のコーティングを有する当該第2の端栓を冷却して当該第2の端栓と当該被覆管との間に第1のシールを形成させるステップと、当該第2の端栓の当該頂面および当該被覆管の少なくとも一部にSiCから成る第2のコーティングを付着させて当該被覆管に第2のシールを形成させるステップとを含む。
【0010】
或る特定の実施態様において、本方法は、当該第2の端栓に開口を設けて当該キャビティ内にガスを送り込めるようにするステップをさらに含む。当該開口は、当該ろう材で充填することができる。
【0011】
さらに、当該第2の端栓を当該被覆管の当該第2の開端部に封止するための上述の方法を用いて、当該第1の端栓を当該被覆管の当該第1の開端部に封止することができる。
【0012】
別の一局面において、本発明は、水冷式原子炉の原子燃料棒被覆管の開端部を封止する方法を提供する。当該被覆管は、シリコンカーバイドを含む材料から作られており、第1の開端部、第2の開端部、原子燃料が配置される内部キャビティおよび内径を有する。本方法は、当該原子燃料棒被覆管、第1の端栓、第2の端栓およびろう付け組成物を提供するステップと、当該ろう付け組成物を当該第1の端栓および当該第2の端栓の少なくとも一部に施すステップと、当該ろう付け組成物を加熱してコーティングを形成させるステップと、当該コーティングを有する当該第1の端栓を当該原子燃料被覆管の当該第1の開端部に、かつ当該コーティングを有する当該第2の端栓を当該原子燃料被覆管の当該第2の開端部に挿入するステップであって、当該第1および第2の端栓がそれぞれ頂面、底面および両表面間を延びる縦方向部分を有し、当該底面が当該内部キャビティ内の一部を占め、当該頂面が当該被覆管の第1の閉端部および第2の閉端部を形成し、当該第1の端栓および当該第2の端栓がそれぞれ外径を有し、当該外径が当該被覆管の当該内径より小さいため両者の間に形成される空間の一部が、当該第1および第2の端栓に施されたコーティングにより少なくとも部分的に満たされるようにするステップとから成る。
【0013】
或る特定の実施態様において、本方法は、当該第1および第2の開端部にそれぞれ挿入された当該第1および第2の端栓の当該頂面と当該被覆管の少なくとも一部とにSiC含有組成物を施して第2のコーティングを形成させることにより第2のシールを提供するステップをさらに含む。この方法では、当該内部キャビティに燃料を装填する前および装填時に1つの端栓のみを当該被覆管に挿入し、燃料装填の完了後に当該第2の端栓を挿入する。
【0014】
さらに別の一局面において、本発明は、水冷式原子炉のセラミック複合材被覆管を提供する。当該被覆管は、シリコンカーバイドを含む材料から作られており、第1の開端部、第2の開端部、原子燃料が配置される内部キャビティおよび内径を有する。当該複合材は、第1の端栓および第2の端栓と、当該第1の端栓および当該第2の端栓の少なくとも一部に施されたろう付け組成物と、当該ろう付け組成物を加熱することによって当該第1および第2の端栓のそれぞれに形成された第1のコーティングと、当該第1および第2の開端部にそれぞれ挿入された当該第1および第2の端栓のそれぞれの頂面と当該被覆管の少なくとも一部とに施されたSiC含有組成物であって、当該第1および第2の端栓のそれぞれの当該頂面がそれぞれ第1および第2の閉端部を形成するSiC含有組成物と、当該第1および第2の端栓のそれぞれの当該頂面と当該被覆管の当該少なくとも一部とに施された当該SiC含有組成物によって形成される第2のコーティングとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0016】
図1】燃料ペレット、押さえばね、および端部キャップを含む先行技術のジルコニウム合金燃料棒の拡大縦断面図である。
【0017】
図2】本発明の或る特定の実施態様に基づく封止されたセラミック複合材燃料棒被覆管の断面図であり、当該被覆管は、内側のろう付け部と、CVI/CVDによって端栓を覆うように施されたSiCコーティングとを有する。
【0018】
図3】本発明の或る特定の実施態様に基づく封止されたセラミック複合材燃料棒被覆管の断面図であり、当該被覆管は端面のろう付け部と、CVI/CVDによって端栓を覆うように施されたSiCコーティングとを有する。
【0019】
図4】本発明のある特定の実施態様に基づき被覆管の端部に二重シールを施す方法を略示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は概して、燃料棒被覆管と、被覆管の端部を封止する方法とに関する。燃料棒被覆管は、典型的には、キャビティを有し、両端に開口のある細長い管体である。このキャビティは燃料ペレットを収容し、典型的には、例えば燃料ペレットの積層構成を維持するばねなどの押さえ装置を有する。燃料棒被覆管は、水冷式原子炉の炉心に配置される。被覆管の各開端部にあって、それを封止する端部キャップまたは端栓は、炉心内を循環する原子炉冷却材が燃料棒被覆管内に入るのを防ぐ。
【0021】
本発明は、被覆管の端部(例えば端部キャップ)を包み込むまたはその一部を包み込む二重シールを含む。二重シールは、2つのステップから成る方法で提供できる。1つ目のステップでは、従来のろう付け技術を使用して、燃料棒被覆管の内面および/または端面に端栓を固着封止する。公知のろう付け技術には、アルミニウム・ケイ素(Al−Si)シール化合物を使用するものが含まれる。もう1つのステップでは、従来の化学蒸着法(CVD)または化学気相含浸法(CVI)を使用して、被覆管に端栓を結合するシール障壁を形成する。本明細書および請求項で使用するCVIという用語は、分解された気体状のセラミック基前駆物質を用いて、空孔内にセラミック基材を付着させることを意味し、CVDという用語は、分解された気体状のセラミック基前駆物質を用いて表面にセラミック基材を付着させることを意味する。
【0022】
被覆管はセラミック含有物質から成る。セラミックは脆弱であることが知られているため、被覆管の材料は、セラミックと別の材料とを組み合わせるのが一般的である。燃料棒被覆管をシリコンカーバイド(SiC)から作るのは当技術分野で公知である。
【0023】
被覆管の適切な材料の非限定的な例として、シリコンカーバイド(SiC)繊維強化複合材が挙げられる。この複合材は、2層または3層から成ることがある。2層の複合材は、高純度β相またはα相の化学量論的SiCの被覆管の少なくとも一部が、β相SiCを含浸させた連続的なβ相化学量論的SiC繊維層によって覆われたものである。3層の複合材は、細粒β相SiCの外部保護層をさらに含む。或る特定の事例において、繊維成分にプレストレスをかけてトウ(短繊維)にし、トウを逆巻きオーバーラップさせて、厚さ1マイクロメートル未満の炭素または黒鉛若しくは窒化ホウ素で覆われる繊維が滑りを許容する弱い界面を持つようにするのが一般的である。このプロセスは、耐亀裂進展性を高めるために実施することができる。参照により本願に含まれるFeinroth等の米国特許公報第2006/0039524A1号は、このような原子燃料管、および周知プロセスである化学気相含浸法(CVI)またはポリマー含浸焼成法(PIP)による基材の緻密化を記述している。
【0024】
本発明は、当技術分野で公知の多種多様な被覆管組成物および設計に適用でき、非限定的な例として、モノリシック系や、内側がモノリシックSiCで外側がSiC繊維とSiC基材の複合体であるデュプレックス系が挙げられる。
【0025】
本発明の或る特定の実施態様において、端栓の材料組成は被覆管と同じである。端栓は、2つ同時に、または一方を他方より先に、被覆管の両端部に挿入することができる。従来の燃料装填プロセスでは、1つの端栓を被覆管の開端部に挿入し固着して当該端部を封止した後、燃料ペレットおよび積層体押さえ装置を被覆管に装填し、もう1つの端栓を被覆管のもう1つの開端部に挿入固着する。代替策として、燃料ペレットおよび積層体押さえ装置を被覆管に装填し、続いて、両方の端栓を被覆管の両開端部に挿入固着することができる。
【0026】
本発明によると、各端栓はろう材などの接合材により被覆管の開端部に接合され、封止される。本願に記載するように、このステップは、当技術分野で公知の従来の組成物、装置およびプロセスにより実施できる。使用する接合材は、第2のステップで実施されるCVIまたはCVDプロセス時に接合の健全性を確保するに十分な強度および高温耐性があるものを選択する。別の実施態様において、接合材は、原子炉環境において十分な耐腐食性を示すことができるものでもそうでないものでもよい。接合材は端栓の外面の少なくとも一部に付着させ、コーティングを形成するようにしてもよい。端栓の構造は一般的に、頂面、底面、および両表面間を延びる縦方向部分から成り、当該縦方向部分は外径を有する。外径は、頂面から底面まで一定の場合もあれば、端栓の縦方向部分に沿ってばらつきのある場合もある。底面は一般的に被覆管のキャビティ内に位置し、頂面は被覆管の端面に位置する。例えば、端栓の頂面は被覆管の端面と実質的に同一平面のこともあれば、被覆管の端面より突出することもある。接合材を被覆管の内面(例えばキャビティの壁)に付着させてもよく、付着位置は、端栓が被覆管に挿入されたところであるのが好ましい。付着後に、接合材を熱硬化させてコーティングを形成させる。本明細書および請求項で使用する、接合材についての「硬化」という用語は、材料を被覆管に接合して強度と封止能力を共に提供するプロセスを意味する。接合材を硬化させる熱処理温度は、SiCの付着を伴うCVIまたはCVDプロセスに通常必要とされる温度(約1000℃)より高い。接合材の非限定的な一例として、Si含有率が約60%を超えるAl−Siが挙げられる。チタン箔やTi系など他の化合物を使用することもできる。
【0027】
この第1の封止ステップ時、燃料棒を従来設計におけるようにヘリウム(He)などの不活性ガスによって例えば最大300psiの圧力に加圧してもよい。あるいは、同様のまたはより高い熱伝導率を有する水素など他の充填ガスで加圧してもよい。代替策として、端栓の中央に孔または開口を設け、そこからガスを引き入れて燃料棒を加圧することができる。その後、孔または開口に、前述のような接合材を少なくとも部分的に充填して封止する。従来設計の燃料棒端栓は中央に孔が設けられているが、与圧室内で高温ろう付けによる封止を行う或る特定の実施態様では、端栓中央の孔または開口は不要である。
【0028】
上述の第1の封止ステップに続く第2の封止ステップでは、CVIまたはCVDにより、端栓の表面(例えば頂面)を含めた燃料棒被覆管の表面にSiCを付着させる。CVIおよびCVDに関連する工程は有意な時間を要するので、このステップを複数の燃料棒に対して同時に実施することに利点がある。或る特定の実施態様では、被覆管の頂部および上部端栓の上に優先的に付着が生じるように、CVIまたはCVD反応炉内の温度が制御される。本願で前述したように、積層体押さえ装置のすぐ近くに位置する端栓を一般に「上部」端栓と称する。
【0029】
図2は、本発明のある特定の実施態様に基づく二重シールを施された燃料棒被覆管22の一部を示すが、被覆管の内面には接合部30(端部キャップを被覆管に封止する接合材)が存在する。図2に示すように、被覆管22の中に燃料ペレット20積層体および押さえ装置24が収容されている。燃料ペレット20は、押さえ装置24によって定位置に保持される。上部端栓26は被覆管22の端部に挿入され、二重シールによって固定される。第1のシールは、上部端栓26の外面と被覆管22の内面との間に付着したろう材30を含む。上部端栓26の外径32は被覆管22の内径34より小さい。したがって、外径32と内径34の間に隙間があり、この隙間の少なくとも一部をろう材30が占める。或る特定の実施態様において、ろう材30は、Si、Al、C、Ti、Zr、Ca、Na、Mg、K、Li、Ce、Fe、Cr、Ni、Zn、Pbおよびそれらの組み合わせから成る群より選択される。或る特定の実施態様において、ろう材は析出物の形態をとる。
【0030】
図2は、被覆管22の内部に不活性ガスを圧送するために上部端栓26の中央に設けられた充填孔40も示している。不活性ガスを供給後に、充填孔40にろう材30を挿入して開口を封止する。本発明において、充填孔40は随意的である。
【0031】
図2はさらに、上部端栓26の頂面と被覆管22の少なくとも一部を覆うように付着したセラミック含有コーティング42を示す。或る特定の実施態様において、コーティング42はSiCから成り、従来のCVIまたはCVDプロセスにより施される。コーティング42は、被覆管22の端部および端栓26の頂面全体を完全に包み込むのに効果的である。
【0032】
本発明によると、ろう材30およびコーティング42は、被覆管22に収容される燃料ペレットを二重に気密封止して、漏れのないようにする。
【0033】
図3は、主として被覆管22の端面にシールが施された、本発明のある特定の実施態様による二重シール燃料棒被覆管22を示す。図3は、図2と同様に、セラミック複合材被覆管22、燃料ペレット20積層体、押さえ装置24、上部端栓26、充填孔40、セラミック含有コーティング42およびろう材30を示している。図3において、ろう材30は被覆管22の端面(例えば角張った端部36)に付着している。すなわち、ろう材30は、被覆管22の角張った端部36と上部端栓26との間に施される。
【0034】
或る特定の実施態様では、図2および3に示すろう材30の付着方法を組み合わせることで、被覆管端面(例えば角張った端部36)に付着させたろう材30と、上部端栓26の外径32が被覆管22の内径34より小さいため隙間が形成される被覆管22の内壁に付着させたろう材30とにより上部端栓26を二重にシールすることができる。この実施態様ではさらに、充填孔40に充填したろう材30が示されている。
【0035】
図4は、本発明の方法を流れ図で示す。まず、端栓のない、または1つの端栓がシール材により取り付けられたセラミック複合材被覆管を用意する(50)。セラミック複合材被覆管に、原子燃料および押さえばねなどの装置を装填する(52)。次に、セラミック複合材被覆管の開端部にある1つまたは2つの端栓をろう材により封止するが、ろう材は、セラミック複合材の内部の界面に施したり(54)、セラミック複合材の外端部と端栓との界面に施したり(56)、あるいは、その両方を実施する。端栓およびセラミック複合材被覆管を、約10〜120分間にわたり、最高2500℃、好ましくは1000℃〜2500℃の温度に加熱して(58)、燃料棒を気密封止する(60)。最後に、CVIおよび/またはCVDにより、端栓およびセラミック複合材被覆管の少なくとも一部にセラミック材のシール層を付着させて(62)、気密封止された燃料棒に二重シールされた端部接合部を形成させる(64)。
【実施例】
【0036】
実施例1
長さ12フィートのSiC複合材被覆管が燃料製造業者に提供された。被覆管の一方の端部に、Siが60%、Alが40%のろう材合金化合物が施されたSiC栓を、毎分100℃の速度で1300℃まで加熱して、その温度を30秒間保つ間に押し込み、その後、室温まで放冷することにより、当該端部を封止した。次に、このセラミック被覆管にセラミック状のウランペレットおよび押さえばねを装填し、Heガスを入れて300psiaまで加圧した。被覆管のもう一方の端部に、Siが60%、Alが40%のろう材合金化合物が施されたSiC栓を、毎分100℃の速度で1300℃まで加熱して、その温度を30秒間保つ間に押し込み、その後、室温まで放冷することにより、最後の端栓を取り付けた。次に、耐化学性を付与するために、1000℃のCVDプロセスにより、燃料棒全体に10ミクロンのSiCコーティングを施した。
【0037】
実施例2
一方の端部が封止済みの長さ12フィートのSiC複合材被覆管が燃料製造業者に提供された。被覆管に、セラミック状のウランペレットおよび押さえばねを装填した。被覆管の開端部に、Siが60%、Alが40%のろう材合金化合物が施されたSiC栓を、毎分100℃の速度で1300℃まで加熱して、その温度を30秒間保つ間に押し込み、その後、室温まで放冷することにより、中央に充填孔のあるSiCの端栓を被覆管の開端部に取り付けた。被覆管をまず排気してから、Heガスを入れて300psiaまで加圧した。Siが60%、Alが40%のろう材合金化合物を充填孔に導入し、当該端部を毎分100℃の速度で1300℃まで加熱し、その温度を30秒間保ってから、栓と燃料棒との間の保持圧力を維持しながら室温まで放冷した。次に、耐化学性を付与するために、1000℃のCVDプロセスにより、燃料棒全体に10ミクロンのSiCコーティングを施した。
【0038】
一般に、燃料棒被覆管の端栓を二重にシールするにあたり、本発明は以下の情報を考慮する。
・上部(第2の)端栓接合部の近傍(押さえ装置がある位置)におけるセラミック複合材被覆管の温度は、冷却水の温度に近いかそれと同じ温度と考えられる(冷却水が液体と蒸気のいずれの形態かによらない)。したがって、300℃〜400℃の範囲で気密性および機械的強度を保つことができるシール技術で十分である。しかしそれでは、必要な耐腐食性を得るには不十分な可能性がある。
・被覆管と端栓接合部が長時間にわたり高温の蒸気に晒される、例えば全交流電源喪失のような設計基準外事故の際には、燃料棒のSiC部分のみが長時間にわたり保護を提供すると予想される。
【0039】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何らも制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物である。
図1
図2
図3
図4