(54)【発明の名称】レジスト層付ブランク、その製造方法、マスクブランクおよびインプリント用モールドブランク、ならびに転写用マスク、インプリント用モールドおよびそれらの製造方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記現像促進層により、前記レジスト層において、少なくとも前記露光部の表面が変質していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレジスト層付ブランク。
前記基板は、その表面に薄膜を有しており、前記レジスト層は前記薄膜の表面に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレジスト層付ブランク。
請求項5または6に記載のレジスト層付ブランクは、前記基板が波長200nm以下の光に対して透光性を有する透光性基板であり、前記薄膜は遮光膜を有しているバイナリー型マスクブランクであることを特徴とするレジスト層付マスクブランク。
請求項5または6に記載のレジスト層付ブランクは、前記基板が波長200nm以下の光に対して透光性を有する透光性基板であり、前記薄膜は前記波長200nm以下の光に対して半透過性の光半透過膜を有しているハーフトーン型位相シフトマスクブランクであることを特徴とするレジスト層付マスクブランク。
請求項5または6に記載のレジスト層付ブランクは、前記基板が低熱膨張基板であり、前記薄膜は、多層反射膜、吸収体膜を少なくとも有している反射型マスクブランクであることを特徴とするレジスト層付マスクブランク。
基板上に形成され、ポジ型のレジスト材料で構成されているレジスト層に関して、前記レジスト層にベーク処理を行うことにより、水性現像液に対する前記レジスト層の未露光部の溶解速度を0.05nm/秒以下とする溶解速度調整工程と、
前記レジスト層の少なくとも露光部上に前記水性現像液を行き渡らせる契機となる現像促進層を前記レジスト層の上に形成する現像促進層形成工程と、を有し、
前記レジスト層の厚みが200nm以下であることを特徴とするレジスト層付ブランクの製造方法。
基板上に形成され、ポジ型のレジスト材料で構成されているレジスト層に関して、前記レジスト層にベーク処理を行うことにより、前記レジスト層の未露光部の表面における水に対する接触角を66°以上とする接触角調整工程と、
前記レジスト層の少なくとも露光部上に水性現像液を行き渡らせる契機となる現像促進層を前記レジスト層の上に形成する現像促進層形成工程と、を有し、
前記レジスト層の厚みが200nm以下であることを特徴とするレジスト層付ブランクの製造方法。
所定の凹凸パターンが形成されたブランクの最表面に形成され、ポジ型のレジスト材料で構成されているレジスト層に関して、前記レジスト層にベーク処理を行うことにより、水性現像液に対する前記レジスト層の未露光部の溶解速度を0.05nm/秒以下とする溶解速度調整工程と、
前記レジスト層の少なくとも露光部上に前記水性現像液を行き渡らせる契機となる現像促進層を前記レジスト層の上に形成する現像促進層形成工程と、
前記レジスト層から形成されたレジストパターンをマスクとして、所定の凹凸パターンが形成された前記ブランクに対して第2の所定の凹凸パターンを形成する工程と、
を有し、
前記ブランクの凸部における前記レジスト層の厚みが200nm以下であることを特徴とする転写用マスクの製造方法。
所定の凹凸パターンが形成されたブランクの最表面に形成され、ポジ型のレジスト材料で構成されているレジスト層に関して、前記レジスト層にベーク処理を行うことにより、前記レジスト層の未露光部の表面における水に対する接触角を66°以上とする接触角調整工程と、
前記レジスト層の少なくとも露光部上に水性現像液を行き渡らせる契機となる現像促進層を前記レジスト層の上に形成する現像促進層形成工程と、
前記レジスト層から形成されたレジストパターンをマスクとして、所定の凹凸パターンが形成された前記ブランクに対して第2の所定の凹凸パターンを形成する工程と、
を有し、
前記ブランクの凸部における前記レジスト層の厚みが200nm以下であることを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、情報通信機器の高性能化、ストレージメディアの大容量化に伴い、半導体素子の回路パターン、ストレージメディアの凹凸パターン等の微細化がますます進んでいる。これらのパターンの微細化を進めるために、露光光の波長の短波長化等に加え、転写用マスクに形成される設計パターンのさらなる微細化が求められている。
【0011】
フォトリソグラフィ技術では、転写用マスクとしてのフォトマスクに形成されている設計パターンを縮小投影してウエハ上に転写しているため、フォトマスクに形成される設計パターンは回路パターンよりも大きい。しかしながら、回路パターンの寸法が露光光の波長(たとえば、193nm(ArFエキシマレーザー))よりも非常に小さくなると、光の干渉に起因してパターンの解像性が低下し、設計パターンをウエハ上に転写しても、設計パターンと転写された回路パターンとが一致しないという問題が生じる。このような問題を解決するために、たとえば、フォトマスクに補助パターンを形成している。このような補助パターンとしては、ウエハ上には転写されず回路パターンの形成を補助するSRAF(Sub Resolution Assist Feature)が知られている。光の干渉による解像性の低下を光の干渉をもって相殺することを目的とするため、このSRAFの寸法としては40nm以下の線幅が要求されている。
【0012】
また、ナノインプリントリソグラフィ技術では、インプリント用モールドに形成されたパターンが被転写体にそのまま転写されるが、該モールドに形成されているパターン(たとえば、ラインアンドスペースパターン)の線幅は30nm以下とすることが求められている。
【0013】
転写用マスクやインプリント用モールドにおいて、形成される設計パターンを微細化する際には、設計パターンを形成する際に利用されるレジストパターンの微細化が求められる。しかしながら、レジストパターンの微細化を進めると、設計上のレジストパターンの線幅と、形成されたレジストパターンの線幅と、に差異が生じる、すなわち、CD(Critical Dimension)シフト量が多くなるという問題が生じてしまう。
【0014】
ポジ型レジストの場合、レジスト材料から構成されるレジスト層の現像時に、レジスト層の未露光部の側面が現像液により溶解されるためである。レジスト層の未露光部は現像液に対して溶けにくくなっているものの、全く溶解しないわけではない。そのため、現像液によりレジスト層の未露光部が側面方向から溶解すると、レジストパターンの線幅が小さくなり、場合によっては、レジストパターンの欠損が生じてしまう。
【0015】
また、レジストパターンの微細化により、レジストパターンの線幅に対するレジストパターンの厚みが大きくなると(レジストパターンのアスペクト比が大きくなると)、レジストパターンの倒れ等につながり、所望のレジストパターンが得られなくなってしまう。そのため、レジストパターンを微細化するには、レジスト層の厚みを薄くせざるを得ない。
【0016】
上記に加え、現像液による未露光部の溶解は等方的に進行するため、未露光部の溶解は、側面方向からだけでなく、レジストパターンの厚み方向からも進行する。すなわち、残存すべき未露光部の厚みが小さくなり、パターンのコントラストが低くなるという問題が生じる。レジストパターンをマスクにしてドライエッチング等を行う場合に、エッチングすべき薄膜等のパターン形成が完了する前にレジストが消失してしまうためである。この問題は、特にレジストパターンの微細化を進める場合に顕著になってしまう。
【0017】
CDシフト量の増大および未露光部(レジストパターン)の厚みの減少の問題に関しては、現像液に対してレジスト層の未露光部をより溶けにくくすることが考えられる。このようにすることにより、パターンの微細化は実現できるものの、レジスト層の未露光部がより溶けにくくなると、現像液がレジスト層にはじかれやすくなり、現像液がレジスト層の露光部(溶解されるべき部分)に接触あるいは浸透しにくくなってしまう。その結果、ホール、スペース等となるべき露光部が現像液により溶解されず、ホールが形成されない(ホールミッシング)という問題や、ラインの端部にスペース部分となるべき部分が残存し、断面T字形状(T−top形状)となる問題が生じてしまう。換言すれば、形成されるべきパターンが形成されず、レジストパターンの解像性が悪化してしまう。
【0018】
以上より、レジストパターンの微細化とレジストパターンの解像性とは同時に実現できないという問題が生じてしまう。
【0019】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされ、形成される所定のパターン(ライン、スペース、ホール等)の微細化と該パターンの解像性との両立可能なレジスト層付ブランクおよびその製造方法を提供することを目的とする。また、レジスト層付ブランクは、転写用マスクブランクまたはインプリントモールド用ブランクに適用することができ、これらを用いる転写用マスクまたはインプリントモールドの製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、まず、現像液に対するレジスト層の未露光部の溶解性を制御して、上記の問題を解決しようとした。しかしながら、レジストパターンの微細化が進むと、溶解性の制御だけでは、レジストパターンの微細化とレジストパターンの解像性とを両立できず、上記の問題が解決できないことを見い出した。
【0021】
そこで、本発明者は、レジストパターンの微細化を進めるためにレジストパターンの未露光部の側面方向からの溶解を抑制する一方、該パターンの解像性を確保するためにレジストパターンの露光部の厚み方向からの溶解を確実に進ませることにより、上記の問題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0022】
具体的には、本発明者は、まず、現像液に対するレジスト層の未露光部の溶解速度を非常に小さくした(あるいは、レジスト層の未露光部の表面における水の接触角を大きくした)。このようにすることにより、レジストパターンの微細化が実現できるものの、レジストパターンの露光部の厚み方向からの溶解が進まない恐れがある。これは、レジスト層の未露光部の撥水性が上がり(水接触角が大きくなり)、その影響により、現像液が露光部にも接触しにくくなるからである。
【0023】
そこで、本発明者は、レジスト層の上に現像促進層を形成した。この現像促進層は、現像液をレジスト層の露光部の表面に確実に接触させる(レジスト層の表面の濡れ性を上げて現像液を露光部上に滞留させる、レジスト層の表面を変質させて、現像液が露光部に浸透しやすいようにする等)ことができる層である。換言すれば、現像促進層は現像液の呼び水となる層である。
【0024】
このようにすることにより、現像液に起因するレジストパターンの未露光部の側面方向からの溶解を抑制でき、しかも、レジストパターンの露光部上に現像液を行き渡らせて厚み方向からの溶解を確実に進ませることができる。
【0025】
(構成1)
本発明の構成は、
基板と、前記基板上に形成され、ポジ型のレジスト材料で構成されているレジスト層と、を有するレジスト層付ブランクであって、
前記レジスト層の厚みが200nm以下であり、
水性現像液に対する前記レジスト層の未露光部の溶解速度が0.05nm/秒以下であり、
前記レジスト層の少なくとも露光部上に前記水性現像液を行き渡らせる契機となる現像促進層が前記レジスト層上に形成されていることを特徴とするレジスト層付ブランクである。
【0026】
なお、本明細書において、「レジスト層付ブランク」とは、フォトリソグラフィ法によって形成したレジストパターンをマスクとしてレジスト層の下地にパターンを形成する基板や薄膜付基板をいい、具体的には、転写用マスクの製造に用いるマスクブランク基板やインプリント用モールドに使用されるインプリント用モールドブランクなどが挙げられる。
また「水性現像液」とは、溶媒の主体として水を使用している現像液をいい、現像に係る溶質成分の成分は特に限定されない。具体的な水性現像液としては、たとえば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液のほか、テトラメチルアンモニウムヒドライド水溶液(TMAH水溶液)等の有機アルカリ性水溶液などが挙げられる。
【0027】
ポジ型のレジストは、レジスト組成物を基板表面に塗布したあと、ベーク処理によって組成物に含まれるポリマー成分を重合させる。
露光前にレジスト層の重合状態を上げると、レジスト層の現像液に対する溶解性が低くなっている。このようなレジスト層は、未露光部(レジストパターンのライン部分)の表面及び側面が現像液によって溶解(侵食)されにくい。その一方、重合が進行しているレジスト層は、表面の極性が低くなるので、水性現像液の濡れ性が悪くなり、本来現像液によって溶解されるはずの露光部にも現像液がしみ込みにくくなり、パターンのスペース部分にレジストが残存する現象が生じる場合がある。微細なパターンを形成する場合には、露光部への現像液の浸透がより悪くなるため、困難になる。
本構成は、レジスト層の表面に現像促進層を有するため、水性現像液は最初に現像促進層に浸透し、次いでレジスト層の露光部を浸潤して溶解する。
したがって、レジスト層の露光部が現像液によって流し出され、水性現像液に溶解しにくく現像過程での寸法変動が少ない未露光部が確実に残る。結果、たとえば、パターン寸法が40nm以下の微細なパターンであっても設計通りのパターン形成をすることができる。
【0028】
(構成2)
また、本発明の構成は、
基板と、前記基板上に形成され、ポジ型のレジスト材料で構成されているレジスト層と、を有するレジスト層付ブランクであって、
前記レジスト層の厚みが200nm以下であり、
前記レジスト層の未露光部の表面における水に対する接触角が66°以上であり、
前記レジスト層の少なくとも露光部上に水性現像液を行き渡らせる契機となる現像促進層が前記レジスト層上に形成されていることを特徴とするレジスト層付ブランクである。
【0029】
レジスト層は、レジスト層形成時の重合処理(ベーク処理)等により、レジスト表面の疎水性が上がり、表面エネルギーが低くなる。これは、レジスト層の樹脂成分の重合によるレジスト層表面の極性の低下やレジスト表面の表面活性の低下などが考えられる。この場合、未露光部は水性現像液に接触しにくくなり未露光部の溶解が抑制される。その一方、未露光部によってはじかれた現像液が露光部に確実に接触するわけではなく、露光部にも現像液が接触しない領域が発現することがある。
本構成によると、未露光部の現像液への接触が抑制される一方、現像促進層によって露光部の表面に水性現像液が湿潤するため、パターンのスペース部分にレジストが残存する現象が効果的に抑制される。
【0030】
(構成3)
上記の構成1または2において、前記現像促進層が水溶性であることが好ましい。
現像促進層が水溶性であれば、現像時に水性現像液によって流し出されるため、現像促進層の除去にかかる工程を加える必要がない。
【0031】
(構成4)
上記の構成1から3のいずれかにおいて、前記現像促進層により、前記レジスト層において、少なくとも前記露光部の表面が変質していることが好ましい。
レジスト層の表面が現像促進層によって変質されていると、現像時にレジスト層の表面をより確実に湿潤することができる。
【0032】
(構成5)
上記の構成1から4のいずれかにおいて、前記基板は表面に薄膜を有しており、前記レジスト層は前記薄膜の表面に形成されていることが好ましい。
【0033】
(構成6)
上記の構成5において、前記薄膜は、さらにハードマスク膜を有していることが好ましい。
【0034】
(構成7)
上記の構成5または6において、前記レジスト層付ブランクは、前記基板が波長200nm以下の光に対して透光性を有する透光性基板であり、前記薄膜は遮光膜を有しているバイナリー型のマスクブランクであることが好ましい。
【0035】
(構成8)
また、前記レジスト層付ブランクは、前記基板が波長200nm以下の光に対して透光性を有する透光性基板であり、前記薄膜は前記波長200nm以下の光に対して半透過性の光半透過膜を有しているハーフトーン型位相シフトマスクブランクであることが好ましい。
【0036】
(構成9)
また、前記レジスト層付ブランクは、前記基板が低熱膨張基板であり、前記薄膜は、多層反射膜、吸収体膜を少なくとも有している反射型マスクブランクであることが好ましい。
【0037】
(構成10)
上記の構成1から6のいずれかにおいて、前記レジスト層付ブランクは、インプリントモールド用ブランクであることが好ましい。
【0038】
(構成11)
本発明の別の構成は、
上記の構成7から9のいずれかに記載のレジスト層付ブランクを用いて製造され、前記薄膜に所定のパターンが形成されていることを特徴とする転写用マスクである。
【0039】
(構成12)
本発明の別の構成は、
上記の構成10に記載のレジスト層付ブランクを用いて製造され、前記基板またはその表面の薄膜に所定のパターンが形成されていることを特徴とするインプリント用モールドである。
【0040】
(構成13)
本発明の別の構成は、
基板上に形成され、ポジ型のレジスト材料で構成されているレジスト層に関して、前記レジスト層にベーク処理を行うことにより、水性現像液に対する前記レジスト層の未露光部の溶解速度を0.05nm/秒以下とする溶解速度調整工程と、
前記レジスト層の少なくとも露光部上に前記水性現像液を行き渡らせる契機となる現像促進層を前記レジスト層の上に形成する現像促進層形成工程と、を有し、
前記レジスト層の厚みが200nm以下であることを特徴とするレジスト層付ブランクの製造方法である。
【0041】
(構成14)
本発明の別の構成は、
基板上に形成され、ポジ型のレジスト材料で構成されているレジスト層に関して、前記レジスト層にベーク処理を行うことにより、前記レジスト層の未露光部の表面における水に対する接触角を66°以上とする接触角調整工程と、
前記レジスト層の少なくとも露光部上に水性現像液を行き渡らせる契機となる現像促進層を前記レジスト層の上に形成する現像促進層形成工程と、を有し、
前記レジスト層の厚みが200nm以下であることを特徴とするレジスト層付ブランクの製造方法である。
【0042】
(構成15)
上記の構成13または14において、前記基板は、薄膜を有しており、前記レジスト層は薄膜の表面に形成することが好ましい。
【0043】
(構成16)
本発明の別の構成は、
上記の構成13から15のいずれかにより製造したレジスト層付ブランクに所定のパターンを形成する工程を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法である。
【0044】
(構成17)
本発明の別の構成は、
上記の構成13から15のいずれかにより製造したレジスト層付ブランクの前記基板に所定のパターンを形成する工程を有することを特徴とするインプリント用モールドの製造方法である。
【0045】
(構成18)
本発明のさらに別の構成は、
基板と、前記基板上に形成され、ポジ型のレジスト材料で構成されているレジスト層と、を有するレジスト層付マスクブランクであって、
所定の凹凸パターンが形成されたブランクの凸部における前記レジスト層の厚みが200nm以下であり、
水性現像液に対する前記レジスト層の未露光部の溶解速度が0.05nm/秒以下であり、
前記レジスト層の少なくとも露光部上に前記水性現像液を行き渡らせる契機となる現像促進層が前記レジスト層上に形成されていることを特徴とするレジスト層付マスクブランクである。
【0046】
(構成19)
また、本発明のさらに別の構成は、
基板と、前記基板上に形成され、ポジ型のレジスト材料で構成されているレジスト層と、を有するレジスト層付ブランクであって、
所定の凹凸パターンが形成されたブランクの凸部における前記レジスト層の厚みが200nm以下であり、
前記レジスト層の未露光部の表面における水に対する接触角が66°以上であり、
前記レジスト層の少なくとも露光部上に水性現像液を行き渡らせる契機となる現像促進層が前記レジスト層上に形成されていることを特徴とするレジスト層付マスクブランクである。
【0047】
(構成20)
本発明のさらに別の構成は、
上記の構成18または19のレジスト層付マスクブランクを用いて製造され、前記基板の表面の薄膜に所定のパターンが形成されていることを特徴とする転写用マスクである。
【0048】
(構成21)
本発明のさらに別の構成は、
所定の凹凸パターンが形成されたブランクの最表面に形成され、ポジ型のレジスト材料で構成されているレジスト層に関して、前記レジスト層にベーク処理を行うことにより、水性現像液に対する前記レジスト層の未露光部の溶解速度を0.05nm/秒以下とする溶解速度調整工程と、
前記レジスト層の少なくとも露光部上に前記水性現像液を行き渡らせる契機となる現像促進層を前記レジスト層の上に形成する現像促進層形成工程と、
前記レジスト層から形成されたレジストパターンをマスクとして、所定の凹凸パターンが形成された前記ブランクに対して第2の所定の凹凸パターンを形成する工程と、
を有し、
前記ブランクの凸部における前記レジスト層の厚みが200nm以下であることを特徴とする転写用マスクの製造方法である。
【0049】
(構成22)
また、本発明のさらに別の構成は、
所定の凹凸パターンが形成されたブランクの最表面に形成され、ポジ型のレジスト材料で構成されているレジスト層に関して、前記レジスト層にベーク処理を行うことにより、前記レジスト層の未露光部の表面における水に対する接触角を66°以上とする接触角調整工程と、
前記レジスト層の少なくとも露光部上に水性現像液を行き渡らせる契機となる現像促進層を前記レジスト層の上に形成する現像促進層形成工程と、
前記レジスト層から形成されたレジストパターンをマスクとして、所定の凹凸パターンが形成された前記ブランクに対して第2の所定の凹凸パターンを形成する工程と、
を有し、
前記ブランクの凸部における前記レジスト層の厚みが200nm以下であることを特徴とする転写用マスクの製造方法である。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、形成される所定のパターン(ライン、スペース、ホール等)の微細化と該パターンの解像性との両立可能なレジスト層付ブランクおよびその製造方法を提供することができる。また、レジスト層付ブランクは、転写用マスクブランクまたはインプリントモールド用ブランクに適用することができ、これらを用いる転写用マスクまたはインプリントモールドの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
[実施の形態1]
本実施形態では、本発明を図面に示す実施形態に基づき、以下の順序で詳細に説明する。
1.レジスト層付マスクブランク
1−1.マスクブランク
1−2.レジスト層
1−3.現像促進層
2.転写用マスク
3.転写用マスクの製造方法
3−1.マスクブランク準備工程
3−2.レジスト層形成工程
3−3.溶解速度調整工程
3−4.現像促進層形成工程
3−5.露光工程および現像工程
4.本実施形態の効果
5.変形例等
【0053】
(1.レジスト層付マスクブランク)
図1(a)に示すように、本実施形態に係るレジスト層付マスクブランク10は、基板1の少なくとも一方の主面上に薄膜2が形成されたマスクブランク5と、レジスト層7と、現像促進層9と、を有しており、レジスト層7および現像促進層9が薄膜2上にこの順で形成されている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0054】
(1−1.マスクブランク)
本実施形態に係るマスクブランクは、基板1の少なくとも一方の主面上に薄膜2が形成されていれば、特に制限されず、公知の構成を採用することができる。以下では、マスクブランクのいくつかの構成について説明する。
【0055】
(1−1−1.バイナリー型マスクブランク)
バイナリー型マスクブランクは、透過型のマスクブランクの1種であり、フォトリソグラフィ法により微細パターンを形成するために用いられる転写用マスクの基になるものである。バイナリーマスクでは、実質的に露光光を透過しない遮光膜が形成されており、露光光が透過するか否かが2値的に決まる。
【0056】
バイナリー型マスクブランクにおいては、基板1は透光性基板であり、薄膜2は、遮光膜を有している。透光性基板は、公知の基板を用いればよく、波長が200nm以下の光に対して透光性を有していればよい。本実施形態では、たとえば、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、無アルカリガラス等の透明材料で構成されている。したがって、本実施形態に係るバイナリー型マスクブランクから得られる転写用マスクは、露光光として、ArFエキシマレーザー(波長:193nm)、F
2エキシマレーザー(波長:157nm)等を用いることができる。
【0057】
遮光膜は、波長が200nm以下の光に対して遮光性を有していれば、公知の組成で構成することができる。具体的には、クロム、タンタル、ルテニウム、タングステン、チタン、ハフニウム、モリブデン、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ロジウム等の遷移金属単体あるいはその化合物を含む材料で構成されていればよい。たとえば、クロムや、クロムに酸素、窒素、炭素等の元素から選ばれる1種以上の元素を添加したクロム化合物で構成してもよいし、タンタルに、酸素、窒素、ホウ素等の元素から選ばれる1種以上の元素を添加したタンタル化合物で構成してもよい。
【0058】
また、遮光膜は、遷移金属およびケイ素(遷移金属シリサイド、特にモリブデンシリサイドを含む)の化合物を含む材料から構成されていてもよい。この場合、遮光膜は、遷移金属およびケイ素の化合物を含む材料からなり、たとえば、遷移金属およびケイ素と、酸素および/または窒素と、を主たる構成要素とする材料が挙げられる。また、遮光膜は、遷移金属と、酸素、窒素および/またはホウ素を主たる構成要素とする材料から構成されていてもよい。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、クロム等が適用可能である。
【0059】
遮光膜は、遮光層と表面反射防止層との2層から構成されていてもよいし、この2層に加え、さらに遮光層と基板10との間に裏面反射防止層が形成された3層から構成してもよい。遮光膜をモリブデンシリサイドの化合物で形成する場合には、遮光層(MoSi等)と表面反射防止層(MoSiON等)との2層構造や、この2層構造に、さらに遮光層と基板1との間に裏面反射防止層(MoSiON等)を加えた3層構造とする構成が例示される。
【0060】
また、遮光膜の膜厚方向における組成が連続的または段階的に異なるように構成された組成傾斜膜としてもよい。
【0061】
遮光膜の膜厚は特に制限されず、たとえば、露光光に対して光学濃度(OD:Optical Density)が2.5以上となるように決定すればよい。
【0062】
また、薄膜2がハードマスク膜を有していてもよい。このハードマスク膜は遮光膜上に形成され、エッチングマスクとして機能する。具体的には、このハードマスク膜は、遮光膜をエッチングするエッチャントに対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)ような材料で構成する。本実施形態では、たとえば、クロムや、クロムに酸素、窒素、炭素等の元素を添加したクロム化合物からなる材料で構成することが好ましい。このとき、ハードマスク膜に反射防止機能を持たせることにより、遮光膜上にハードマスク膜を残した状態で転写用マスクを作製してもよい。
【0063】
また、薄膜2がエッチングストッパー層を有していてもよい。このエッチングストッパー層は、基板と遮光膜の間に形成され、両者とエッチング選択性を有するような材料で構成される。本実施形態では、たとえば、クロムや、クロムに酸素、窒素、炭素等の元素を添加したクロム化合物からなる材料で構成することが好ましい。エッチングストッパー層は、ハードマスク膜と同期して剥離することができる材料を選択してもよい。
【0064】
(1−1−2.ハーフトーン型位相シフトマスクブランク)
ハーフトーン型位相シフトマスクブランクは、透過型のマスクブランクの1種であり、フォトリソグラフィ法により微細パターンを形成するために用いられる位相シフトマスクの基になるものである。
【0065】
このハーフトーン型位相シフトマスクにおいては、実質的に露光に寄与しない強度の光を透過させる光半透過部と、実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部と、が形成されており、光半透過部を透過する光の位相が、光透過部を透過する光の位相に対して実質的に反転した関係になるように構成している。光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過する光は、互いに相手の領域に回りこむが、上記の構成により回折現象が生じて回り込んだ光が互いに打ち消しあうため、境界部における光強度をほぼゼロとすることができる。その結果、境界部のコントラスト、すなわち、解像度を向上させることができる。
【0066】
ハーフトーン型位相シフトマスクブランクにおいては、基板1は透光性基板であり、薄膜2は、光半透過膜を有している。透光性基板は、バイナリー型マスクブランクと同様に、公知の基板を用いればよく、波長が200nm以下の光に対して透光性を有していればよい。本実施形態では、たとえば、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、無アルカリガラス等の透明材料で構成されている。したがって、本実施形態に係るバイナリー型マスクブランクから得られる転写用マスクは、露光光として、ArFエキシマレーザー(波長:193nm)、F
2エキシマレーザー(波長:157nm)等を用いることができる。
【0067】
光半透過膜は、波長が200nm以下の光を、実質的に露光に寄与しない強度(たとえば、露光光の1%〜30%)で透過させ、所定の位相差(たとえば、180°)を有していれば、公知の組成で構成されていればよい。具体的には、遷移金属およびケイ素(遷移金属シリサイドを含む)の化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属およびケイ素と、酸素および/または窒素を主たる構成要素とする材料が例示される。遷移金属としては、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、クロム等が適用可能である。
【0068】
また、薄膜2を、1以上の光半透過膜と遮光膜とが積層された構成として、多階調マスクブランクとしてもよい。この場合、光半透過膜の材料については、上記のハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜を構成する材料に加え、クロム、タンタル、チタン、アルミニウム等の金属単体や合金あるいはそれらの化合物を含む材料を用いてもよい。
【0069】
また、光半透過膜上に遮光膜を有する構成の場合、上記の光半透過膜が遷移金属およびケイ素を含む材料から構成されていれば、遮光膜の材料としては、光半透過膜に対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)材料で構成することが好ましい。具体的には、クロムや、クロムに酸素、窒素、炭素等の元素を添加したクロム化合物が例示される。
【0070】
光半透過膜を構成する材料の組成比や膜厚は、露光光に対して所定の透過率となるように調整される。遮光膜を構成する材料についても、上記のバイナリー型マスクブランクが有する遮光膜を構成する材料が適用可能である。遮光膜を構成する材料の組成や膜厚は、光半透過膜と遮光膜との積層構造において所定の遮光性能(光学濃度)となるように調整される。
【0071】
また、バイナリー型マスクブランクと同様に、薄膜2がハードマスク膜を有していてもよい。このハードマスク膜は遮光膜あるいは光半透過膜上に形成され、エッチングマスクとして機能する。
【0072】
(1−1−3.反射型マスクブランク)
反射型マスクブランクは、フォトマスクブランクの1種であり、フォトリソグラフィ法により微細パターンを形成するために用いられる反射型フォトマスクの基になるものである。この反射型フォトマスクでは、露光光として、たとえば、波長が13.5nmであるEUV(Extreme Ultra Violet)光を用いるが、EUV光は物質に吸収されやすいため、上述したような屈折光学系を利用する透過型のマスクは採用できず、反射光学系を利用する反射型マスクが用いられる。具体的には、反射型マスクにおいて、EUV光を反射する反射膜とEUV光を吸収する吸収体膜とが形成されており、これらがマスクパターンを形成している。
【0073】
反射型マスクブランクにおいては、露光時の熱による被転写パターンの歪みを抑えるために、基板1は低熱膨張基板であり、薄膜2は、少なくとも反射膜および吸収体膜を有している。低熱膨張基板を構成する材料としては、約0±1.0×10
−7/℃の範囲内、より好ましくは約0±0.3×10
−7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するガラス材料であるSiO
2−TiO
2系ガラスを好ましく用いることができる。
【0074】
薄膜2においては、反射膜は多層反射膜であり、吸収体膜は多層反射膜上にパターン状に形成されている。
【0075】
多層反射膜は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層して形成される。多層反射膜としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜等が例示される。露光光の波長により、材質を適宜選択することができる。
【0076】
また、吸収体膜は、EUV光を吸収する機能を有するもので、たとえばタンタル(Ta)単体またはTaを主成分とする材料を好ましく用いることができる。このような吸収体膜の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状または微結晶の構造を有しているものが好ましい。
【0077】
また、吸収体膜上にエッチングマスクとしてのハードマスク膜を形成してもよい。また、多層反射膜上に吸収体膜をパターニングする際にエッチングストッパーの役割を果たす保護膜を形成してもよい。
【0078】
(1−2.レジスト層)
上述した各種のマスクブランクにおいて、薄膜2上にはレジスト層7が形成されている。レジスト層7は、エネルギービーム等の照射により露光する材料で形成されており、レジスト層7を露光、現像して得られるレジストパターンは、マスクに形成されることになる微細パターンに対応する。本実施形態では、数十nm程度の微細パターンに対応するために、レジスト層7を構成する材料として、ポジ型の化学増幅型レジストを用いる。
【0079】
化学増幅型レジストとしては、公知のものを用いることができ、たとえば、ベースポリマーと、光酸発生剤と、を少なくとも含むものが例示される。
【0080】
ベースポリマーは、酸の発生に伴い、現像液(アルカリ性水溶液等)に対する溶解性が増大するポリマーであれば特に限定されない。光酸発生剤も、公知のものであれば特に限定されない。
【0081】
本実施形態では、上記の化学増幅型レジストは、塩基性物質を含むことが好ましい。塩基性物質としては、後述する現像促進層を構成する材料(酸性物質、塩基性物質等)との組み合わせを考慮して決定することが好ましい。
【0082】
化学増幅型レジストは、上記の成分以外に、界面活性剤、増感剤、光吸収剤、酸化防止剤等の他の成分を含んでもよい。
【0083】
本実施形態では、水性現像液に対するレジスト層7の未露光部の溶解速度(以降、Rminともいう)が0.05nm/秒以下であり、0.03nm/秒以下であることが好ましく、0.01nm/秒以下であることがより好ましい。換言すれば、レジスト層7の未露光部は現像液に対して非常に溶けにくいことが好ましい。このようにすることにより、レジスト層7の未露光部の側面方向および厚み方向からの溶解を抑制することができ、レジストパターンのやせ細りおよび膜べりを防止することができる。その結果、レジストパターンに対応してマスクに形成されるべき微細パターンが設計通りに形成され、解像性も確保される。
【0084】
本明細書では、Rmin(単位はnm/秒)は、室温(23℃)における2.38%濃度TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)に対する未露光部の溶解速度として規定される。なお、上述の規定において、TMAHはRminを規定するための水性現像液として用いられているだけであり、本発明において、水性現像液がTMAHに限定されることを意味しているのではない。
【0085】
また、本実施形態では、レジスト層7の未露光部の表面における水の接触角が66°以上であり、68°以上が好ましく、特に70°以上であることが好ましい。水の接触角が大きいということは、レジスト層7の未露光部に水が接触しにくくなる(たとえば、未露光部表面における水の濡れ性が小さくなる)ことを意味する。したがって、水性の現像液も未露光部に接触しにくくなるため、未露光部の溶解が抑制される。
【0086】
すなわち、レジスト層7の未露光部の溶解を抑制するために、Rminの上限値を規定することによりレジスト層7そのものの溶解性を低減してもよいし、水の接触角の下限値を規定することによりレジスト層7に現像液が接触しにくくなるようにしてもよい。
【0087】
レジスト層7の厚みは薄い方が好ましく、本実施形態では、200nm以下であり、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは80nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下である。レジストパターンの倒れ等が生じないように、レジストパターンを形成する際のアスペクト比を小さくするためである。具体的には、アスペクト比は2.5以下が好ましく2未満が特に好ましい。本実施形態では、レジスト層7が上記の性質を有しているため、レジスト層7の厚みを上記の範囲内とした場合であっても、レジストパターンの膜減りが最小限に抑制され、形成されるべき微細パターンのコントラストを十分に確保することができる。
【0088】
(1−3.現像促進層)
本実施形態では、レジスト層7上に現像促進層9が形成されている。現像促進層9は、レジスト層7の少なくとも露光部上に水性現像液を行き渡らせる契機となる層である。具体的には、水性現像液に対する未露光部の溶解性を非常に小さくした状態を維持しつつ、露光部には水性現像液を十分に接触させて露光部を確実に溶解することができる層である。換言すれば、現像液が通常到達しにくい露光部上に、現像液の呼び水となる層を形成する。本実施形態では、以下に示す2つの手法により、現像液の呼び水となる層を形成しているが、該層の形成はこれらに限定されない。また、2つの手法を組み合わせてもよい。
【0089】
1つ目の手法は、水溶性の現像促進層9を形成する手法であり、2つ目の手法は、現像促進層9の存在によりレジスト層7の表層部分を変質させる手法である。
【0090】
(1−3−1.水溶性現像促進層)
レジスト層7の未露光部は、上述したように現像液に対する溶解性が非常に小さくなっており、しかも疎水性であるため、現像液をはじきやすく、未露光部の近傍に存在する露光部に近づこうとする現像液まではじいてしまう。その結果、露光部に現像液が接触しにくい場合がある。しかしながら、未露光部が現像液をはじきやすいこと自体は、パターンのやせ細りや膜べりを抑制するために必要である。
【0091】
そこで、現像液を露光部に確実に接触させるために、現像促進層9を水溶性の層として構成している。このようにすることにより、現像時には、水性現像液はまず現像促進層9に容易に接触・浸透して現像促進層9を溶解する。現像促進層9は、レジスト層7上に形成されているため、現像促進層9全体が溶解された後には、現像液はレジスト層7上に滞留しやすくなり、その結果、露光部にも接触しやすくなる。すなわち、現像促進層9が存在しない場合には、未露光部の疎水性に起因して、現像液がはじかれ露光部に到達しにくいのに比べて、現像促進層9を設け、水溶性とすることにより、現像促進層9の溶解を介して現像液を露光部に行き渡らせることが可能となる。したがって、露光部は確実に溶解されることとなり、レジストパターンに抜けが生じることなく、所定のレジストパターンを解像度よく形成することができる。
【0092】
本実施形態では、現像促進層9を構成する材料をポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアニリン等とすることにより、現像促進層9を水溶性とすることができる。
【0093】
(1−3−2.現像促進層によるレジスト層表面の変質)
現像促進層9の存在により、レジスト層7の表面を変質させてもよい。具体的には、レジスト層7の表面部分のみが現像液に接触・浸透しやすい形態に変化するように現像促進層9を形成してもよい。
【0094】
本実施形態では、このような現像促進層9を形成するために、現像促進層9を構成する材料として、酸性物質および塩基性物質を含有した材料を用いる。該材料を含む現像促進層9の内部においては、酸性物質と塩基性物質とが反応することにより、塩が生じる。この塩をレジスト層7の表層部分に浸透(移行)させる。その結果、塩が移行したレジスト層7の表層部分では、現像促進層9から移行した成分とレジスト層7が元来有する成分とが共存する。したがって、レジスト層7の表層部分は現像促進層9からの移行成分により変質し、レジスト層7とは別の層として、新たな層(変質層8)が現像促進層9とレジスト層7との間に形成される。すなわち、この変質層8は、現像促進層9がレジスト層7の上に形成される前には、レジスト層7の一部であった層である。
【0095】
変質層8は、現像時に、現像促進層9が除去される際にある程度除去されることになる。なぜなら、変質層8は、現像促進層9が有する成分とレジスト層7が有する成分とが共存したものであり、疑似的に露光された状態になり、現像液に対する溶解性が向上し変質層8が除去されることになるためである。
【0096】
変質層8が除去されることは、レジスト層7の表層部分が除去されることを意味するため、変質層除去後のレジスト層7の表面状態は、除去前に比べて変化し(たとえば、表面が粗くなり)、レジスト層7表面に現像液が接触しやすくなる(レジスト層7表面における現像液の濡れ性が向上する)。その結果、露光部を確実に溶解することができる。換言すれば、変質層8の形成および除去により、レジスト層7の表面において露光部へ現像液が到達しにくい状態を改善して、露光部に現像液を行き渡らせることが可能となる。なお、変質していない未露光部は、現像液に対する溶解速度が非常に小さい状態あるいは水の接触角が大きい状態を維持しているため、ほとんど溶解しない。
【0097】
さらに、現像液が露光部に接触することを阻害するような物質(たとえば、界面活性剤)が、表面張力の影響により、レジスト層7の表層部分に存在している場合であっても、表層部分を変質層8に変えてこれを除去する際に、該物質も除去されるため、現像液がレジスト層7の露光部に接触しやすくなる。
【0098】
なお、レジスト層7の薄膜化の実現やレジストパターンのコントラストの確保の観点から、レジストパターンの膜べりを抑制する必要がある。したがって、本実施形態では、変質層8の厚みは、0.1nm以上20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。レジスト層7の厚みに対して、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。厚みを上記の範囲内とすることにより、レジスト層7の表層部分(変質層8)の除去による膜べりを最小限とすることができる。
【0099】
変質層8の厚みを求める方法としては、たとえば、公知の組成分析方法(XPS等)を用いて変質層8を特定し、変質層8の厚みを求めてもよいし、以下に示す「減膜法」を用いて求めてもよい。
【0100】
減膜法は、変質層8を設けない場合のレジスト層7に対する現像の際の減膜量(厚み方向のレジスト層7の減少量)と、変質層8を設ける場合のレジスト層7に対する現像の際の減膜量の差分を変質層8の厚さと認定する方法である。上述したように、変質層8には、現像促進層9の塩が入り込んでいるため、露光部、未露光部にかかわらず、現像液に対してより溶解しやすくなっている。したがって、変質層8を設ける場合と設けない場合とにおける減膜量の差分が、変質層8が除去されることにより生じる減膜量に相当する。すなわち、減膜量の差分を変質層8の厚みとすることができる。
【0101】
現像促進層9の存在により、上述した変質層8を形成するには、レジスト層7と現像促進層9との組み合わせを適切なものとすることが好ましい。その組み合わせについては、本発明者が検討中であるが、現在、本発明者が把握しているレジスト層7および現像促進層9の構成について以下に説明する。
【0102】
まず、レジスト層7は塩基性物質を含有している状態であって、現像促進層9の塩基性物質は、レジスト層7の塩基性物質よりも嵩高いようにすることが好ましい。なお、本明細書における「嵩高さ」とは、堅い置換基等により分子の末端の構成単位が立体的に拡がって他の分子との配列や分子内の回転運動が妨害される状態を示す。また、本明細書における「嵩高さ」とは、具体的には、α炭素上の置換基のファンデルワールス容積をいい、分子量で一義的に規定されるものではなく、t−ブチル基のように分岐構造を有すると増加する指標である。
【0103】
上述したように、現像促進層9から入り込む塩は、酸性物質と塩基性物質とが反応して生成される。そのため、該塩には塩基性物質が含まれている。そこで、現像促進層9の塩基性物質が、レジスト層7の塩基性物質よりも嵩高ければ、現像促進層9の塩基性物質を含有する塩が、レジスト層7の全体に入り込むことを防ぐことができる。
【0104】
レジスト層7の全体が変質層8になってしまうと、現像液に対するレジスト層7の溶解速度、特に未露光部の溶解速度が上がってしまい、上述したRminの範囲から外れてしまう。その結果、現像時に、レジストパターンの膜べりが大きくなると共に、側面方向からの溶解も進んでしまい、レジストパターンの微細化と解像性とを両立できなくなってしまう。したがって、上記のような塩基性物質の嵩高さの規定を設けることが好ましい。さらに、上記の嵩高さの規定に従うのならば、塩を形成せず現像促進層9の中で遊離している塩基性物質がレジスト層7にむやみに入り込むのを防ぐことも可能となる。
【0105】
なお、塩基性物質の嵩高さについては、公知の方法で調べればよく、たとえば、二次イオン質量分析法(SIMS)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)等の質量分析法や、X線光電子分光法(XPS)を用いても構わない。
【0106】
また、レジスト層7は塩基性物質を含有している状態であって、現像促進層9の塩基性物質は、レジスト層7の塩基性物質よりも分子が大きいようにすることが好ましい。上記の嵩高さの規定と同様の効果を発揮するためである。
【0107】
なお、ここでいう「分子が大きい」とは、文字通り「分子の大きさ」の大小についてのものである。この分子の大きさは、上述した公知の方法を用いて規定しても構わない。また、簡易的な手法として一例を挙げると、塩基性物質の分子量を比較して、分子量が大きい物質を「分子が大きい」とみなしても構わない。
【0108】
好適な一例を挙げると、レジスト層7の塩基性物質は低級アミンであり、現像促進層9の塩基性物質はそれよりも高級アミンであることが好ましい。このほか、レジスト層7の塩基性物質であるアミンよりも、現像促進層9の塩基性物質であるアミンの方が置換基の質量数の合計が大きい場合も「分子が大きい」といえる。
【0109】
また、現像促進層9の酸性物質は芳香族化合物であるのが好ましく、特にポリアニリンであることが好ましい。また、現像促進層9の塩基性物質はアミンであるのが好ましく、具体的にはテトラアルキルアンモニウムヒドライド系の4級アンモニウム塩であるのが好ましい。さらに好ましくは、現像促進層9が酸性物質としてポリアニリンを含み、塩基性物質として4級アンモニウム塩を含む。この場合、現像促進層9はポリアニリン系樹脂を主成分として構成されることになる。このようにすることにより、現像促進層9が水溶性のポリマーから構成されるため、(1−3−1)において述べたように現像促進層9が水溶性である場合に得られる効果も得られる。なお、ここで言う主成分とは、組成比において50%を超えて存在する成分のことを指す。
【0110】
(2.転写用マスク)
図1(a)に示すレジスト層付マスクブランク10を用いることにより、形成される所定のレジストパターン(ラインアンドスペース、スペース、ホール等)の微細化と該レジストパターンの解像性とを両立できる。そして、レジストパターンをマスクとして、薄膜2をエッチングすることにより、
図1(b)に示すように、基板1上の薄膜2に、レジストパターンに対応する微細なパターンが形成された本実施形態に係る転写用マスク12が得られる。
【0111】
(3.転写用マスクの製造方法)
次に、転写用マスクを製造する方法について詳細に説明する。上記の転写用マスクは、まず、上述したレジスト層付マスクブランクを製造し、該マスクブランクを基にして製造される。
図2は、本実施形態に係るレジスト層付マスクブランクの製造方法の製造工程を示す説明図である。
【0112】
(3−1.マスクブランク準備工程)
まず、基板1上に薄膜2が形成されたマスクブランク5を準備する。マスクブランクとしては特に制限されず、たとえば、上述した各種のマスクブランクが例示される。本実施形態においては、
図2(a)に示すように、合成石英ガラスから構成される基板1の上に薄膜2を形成したマスクブランク5を準備する。基板1上に、薄膜2を形成するための手法としては、スパッタリング法等の公知の技術を利用すればよい。また、薄膜2の組成、成膜条件等も公知の組成および条件とすればよい。
【0113】
(3−2.レジスト層形成工程)
続いて、
図2(b)に示すように、マスクブランク5の薄膜2上にポジ型の化学増幅型レジスト材料から構成されるレジスト層7を形成する。具体的には、スピンコート法等の公知の技術を利用して、化学増幅型レジスト材料の成分を含むレジスト液を薄膜2上に塗布して、レジスト層7を形成すればよい。レジスト液を調製する際に用いる溶剤は特に制限されず、公知の溶剤を用いればよい。
【0114】
(3−3.溶解速度調整工程)
続いて、薄膜2上に形成されたレジスト層7に関して、現像液に対する溶解速度(Rmin)を調整する。レジスト層7の溶解速度は、主として、ベーク処理時の温度(ベーク温度)により変化し、ベーク温度が高くなると、溶解速度が低下する傾向にある。具体的なベーク温度に対するRmin値の変化の例を
図5に示す。
図5は、ポジ型レジストであって電子線描画用の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を、ガラス基板上に塗布し、120℃から160℃の定温で10分間ベーク処理を行った場合のRminの変化を示している。なお、ベーク時間を長くすることによっても、Rminを調整することができる。
【0115】
また、レジスト層7を構成する化学増幅型レジスト材料の組成を変化させてもRminを調整できる。本実施形態では、レジスト層7に対してベーク処理を行うことにより溶解速度を調整する。したがって、用いる化学増幅型レジスト材料に応じて、現像液に対する溶解速度が0.05nm/秒以下となるように、ベーク温度を制御すればよい。なお、後述する露光工程において、露光されたレジスト層7(露光部)は、現像液に溶解しやすくなるが、露光されないレジスト層7(未露光部)の現像液に対する溶解速度は、本工程で調整された溶解速度が維持されている。
【0116】
なお、レジスト層7に対してベーク処理を行うことにより、未露光部の表面における水の接触角も上昇する。水の接触角は、主として、ベーク処理時の温度(ベーク温度)により変化し、ベーク温度が高くなると、接触角が大きくなる傾向にある。
図5にベーク温度に対する水接触角の関係を示す。
図5のグラフにかかるレジスト層7のベーク条件は、前述と同様である。
図5に示すように、ベーク温度を上昇させると水接触角が大きくなる。水接触角が大きなレジスト層7になると水性現像液が未露光部に接触しにくくなるため、未露光部が水性現像液に溶解しにくくなる。未露光部のレジスト層に対する水接触角が66°以上、好ましくは68°以上、より好ましくは70°以上であると、未露光部とレジスト現像液の接触が抑制される。
【0117】
また、レジスト層7を構成する化学増幅型レジスト材料の組成によっても未露光部の表面における水の接触角は異なる。したがって、用いる化学増幅型レジスト材料に応じて、水の接触角が66°以上となるように、ベーク温度を制御すればよい。
【0118】
(3−4.現像促進層形成工程)
溶解速度調整工程の後、
図2(c)に示すように、レジスト層7を被覆するように現像促進層9を形成する。具体的には、スピンコート法等の公知の技術を利用して、現像促進層9の構成材料の成分を含むコート液をレジスト層7上に塗布して現像促進層9を形成すればよい。現像促進層9を形成後、ベーク処理を行う。現像促進層9の存在によりレジスト層7の表面を変質させる場合には、
図2(d)に示すように、現像促進層9のベーク処理時あるいは処理後に、現像促進層9に含まれる塩をレジスト層7に移行させ、上述した変質層8を形成する。以下に詳細を説明する。
【0119】
現像促進層9に含まれる塩は、現像促進層9の内部に存在する酸性物質と塩基性物質とが反応することにより生じる。このような現像促進層9の構成材料を含むコート液の具体例としては、酸性物質がポリアニリンであり塩基性物質がアミンである場合、コート液のうち90質量%以上を水とするのが好ましい。このようにすることにより、現像促進層9の中に過度に塩を存在させることがなくなり、適切な厚みの変質層8を形成することが容易に可能となる。また、レジスト層7および現像促進層9の両方に塩基性物質が含まれていたとしても、コート液において90質量%以上を水とすることにより、化学増幅型レジストからなるレジスト層7に含まれる塩基性物質に比べて、コート液を用いて形成される現像促進層9に含まれる塩基性物質の濃度を薄くすることができる。そして、この濃度差を利用することにより、現像促進層9の中の塩基性物質を、変質層8およびその下のレジスト層7には浸透しないようにすることが可能となる。
【0120】
なお、変質層8が形成されるメカニズムは、たとえば、以下のように考えることができる。
【0121】
レジスト層7に含まれる塩基性物質と、現像促進層9に含まれる塩基性物質と、が同種の化合物(たとえば共にアミン)である場合、両塩基性物質は混じり合いやすい。しかしながら、上記のように現像促進層9の構成材料を含むコート液の濃度を薄くすると、現像促進層9に含まれる塩基性物質は、濃度差により一定以上の深さには浸透しない。すなわち、レジスト層7の表層部分を超えてその下のレジスト層7には浸透しにくくなる。その結果、レジスト層7と現像促進層9との間に両塩基性物質が集まる部分が形成される。そのうち、レジスト層7が、現像促進層9の塩(すなわち、ポリアニリンにアミンが結合した塩)を受け入れるようになる。その結果、レジスト層7の表層部分が変質層8へと変化する。
【0122】
以上の工程を経て、洗浄等のその他の処理を適宜行うことにより、
図2(d)に示すように、本実施形態に係るレジスト層付マスクブランク10は製造される。
【0123】
(3−5.露光工程および現像工程)
次に、
図3に示すように、製造されたレジスト層付マスクブランクを用いて、レジスト層をパターニングすることにより、転写用マスクを製造する。まず、
図3(a)に示すように、レジスト層付マスクブランク10に対し、電子線描画機等を用いて、転写用マスクに形成されるべきパターンに対応するパターンがレジスト層7に形成されるように露光を行う。露光後に、露光されたレジスト層7(露光部7a)および露光されないレジスト層7(未露光部7b)が形成される。
【0124】
続いて、露光後のレジスト層付マスクブランク10を、水性現像液を用いて現像する(
図3(b)参照)。水性現像液は、溶媒の主体として水を使用している現像液をいう。本実施形態では、水性現像液は、レジスト層の露光部7aを溶解可能な液であれば特に制限されず、たとえば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)等のアルカリ性水溶液が例示される。
【0125】
現像時には、まず現像促進層が溶解され、その際に変質層の少なくとも一部も溶解除去される。その結果、変質層の直下に位置するレジスト層7に現像液が接触する。そして、
図3(c)に示すように、露光されたレジスト層(露光部7a)は現像液により溶解除去され、レジストパターン7pが形成される。このとき、レジスト層付マスクブランク10は、上述した構成を有しているため、露光部7aは確実に溶解除去される一方、未露光部7bの溶解速度は非常に小さい状態が維持されているため、側面方向からも厚み方向からもほとんど溶解されず、レジストパターン7pのやせ細りや膜べりが生じない。
【0126】
したがって、形成されたレジストパターン7pをマスクとして、薄膜2をエッチングすることにより、設計通りのパターンが形成された転写用マスクを得ることができる(
図3(d)および(e)参照)。
【0127】
(4.本実施形態の効果)
本実施形態では、微細なレジストパターンを形成する際のレジストパターンのやせ細りを防止するために、レジスト層の未露光部を現像液に溶けにくくした状態を維持しつつ、露光部に現像液が接触あるいは浸透しやすいように、現像液の呼び水となる現像促進層をレジスト層の上に形成している。このようにすることにより、未露光部の側面方向および厚み方向からの溶解をできるだけ抑制しつつ、露光部に現像液が確実に接触するため、未露光部をほとんど溶解することなく露光部のみを確実に溶解することができる。
【0128】
したがって、形成するレジストパターンが微細になったとしても、レジストパターンのやせ細りおよび膜べりを防止できるため、レジストパターンの欠損の恐れが低減され、しかも、露光部に現像液が接触できないことに起因するパターンの抜けを防止することができる。すなわち、パターンの微細化と解像性とを両立することができる。したがって、レジストパターンのコントラストを確保でき、レジストパターンの微細化に不可欠なレジスト層の薄膜化も容易に実現することができる。
【0129】
レジスト層の未露光部を現像液に溶けにくくした状態を実現するには、まず、レジスト層の未露光部そのものを現像液に溶けにくくすることが考えられる。この場合には、現像液に対する未露光部の溶解速度(Rmin)を0.05nm/秒以下とする。別の手法としては、未露光部に現像液が接触しにくくすることが考えられる。この場合には、現像液が水性であるため、未露光部の表面における水の接触角を66°以上とする。
【0130】
また、現像促進層を現像液の呼び水となる層とするために、現像促進層を水溶性としている。このようにすることにより、レジスト層の上に形成されている現像促進層に水性現像液が接触しやすく、現像促進層が溶解した後には、残存する現像液がレジスト層の上に滞留しやすくなる。その結果、レジスト層の露光部に現像液が到達しやすくなり、露光部が確実に溶解され、レジストパターンの抜けが防止できる。
【0131】
また、現像促進層の存在により、レジスト層の表面を変質している。具体的には、現像促進層を構成する材料に含まれる酸性物質と塩基性物質との反応に生じる塩をレジスト層に移行させ、現像促進層とレジスト層との間に、レジスト層の表層部分(未露光部および露光部)が変質して形成された変質層が生じさせている。この変質層はレジスト層と異なり現像液に接触・溶解しやすいため、変質層の直下に存在するレジスト層の露光部に現像液が十分に接触することとなる。その結果、露光部は確実に溶解され、レジストパターンの抜けが防止できる。なお、レジスト層の未露光部が変質して変質層となった部分については、現像液により溶解しやすくなるが、変質していない未露光部については、Rminが上記の範囲内であるため、現像液により溶けにくい状態が維持されているため、レジストパターンの膜べりはほぼ変質層の厚み程度に抑制できる。したがって、レジスト層の膜べりに起因するパターンのコントラストの低下は生じない。
【0132】
本実施形態では、レジスト層の未露光部のRminを上記の範囲内とする方法として、レジスト層をベーク処理している。ベーク処理時の温度を高くすることにより、レジスト層が焼き固められ、Rminが低下する傾向にあるためである。また、このベーク処理をすることにより、未露光部の表面における水の接触角も大きくなる傾向にあるため、接触角が66°以上とする場合にも、ベーク処理を行えばよい。
【0133】
また、本実施形態に係るレジスト層付マスクブランクは、レジスト層および現像促進層の構成により、レジストパターンの微細化と解像性とを両立しているため、マスクブランクの構成には制限されない。したがって、マスクブランクの構成を種々の構成とすることができる。たとえば、マスクブランクが、バイナリー型マスクブランクであってもよいし、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクであってもよいし、反射型マスクブランクであってもよい。
【0134】
(5.変形例)
上述した実施形態では、レジスト層付マスクブランクと、該マスクブランクから製造される転写用マスクと、について述べたが、上述したレジスト層および現像促進層の構成を有していれば、レジスト層および現像促進層は他のブランク上に形成されていてもよい。たとえば、インプリント用モールドブランク上に上述したレジスト層および現像促進層が形成されていてもよい。
【0135】
インプリント用モールドブランクは、たとえば、ナノインプリントリソグラフィ法により微細パターンを形成するために用いられるインプリント用モールドの基になるものである。このインプリント用モールドは、該モールドを被転写体(たとえば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等)に接触させて、該モールドに形成されている微細パターンを被転写体に1対1に転写する。
【0136】
インプリント用モールドにおいては、基板は透明材料で構成されており、薄膜2はハードマスク膜を有している。透明材料としては、たとえば、石英、サファイア等が例示される。また、ハードマスク膜としては、クロムあるいはクロムを含む化合物等が例示される。
【0137】
そして、レジストパターンをマスクとして、薄膜2および基板1をエッチングすることにより、
図4に示すように、基板1の表面1aに微細なパターンが形成されたインプリント用モールド13が得られる。
【0138】
(レジスト層の構成材料と現像促進層の構成材料との相性)
上述した実施形態では、レジスト層が塩基性物質を有しており、現像促進層における塩基性物質の嵩高さや大きさによって現像促進層における塩の入り込み度合を規定している。しかしながら、これは一例であり、そもそも塩基性物質に依存せず他の物質によって塩の入り込み度合が決定される可能性もある。また、変質層が形成可能であれば、現像促進層に含まれる酸性物質および塩基性物質として、上述した化合物以外の化合物を使用してもよい。
【0139】
現像促進層の塩基性物質としては、水に可溶で比較的嵩高な構造やを有するアミン系化合物が挙げられる。アミン系化合物の分子に含まれる炭素原子の数は、1〜30であると好ましい。具体的には、ピペラジン、モルホリン、ペンチルアミン、ジプロピルアミン、エチレンジアミン、2−ヘプチルアミン、2−アミノピリジン、2−アミノエタノール、シクロヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、2−ジメチルアミノエタノール、、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン、3−ジメチルアミノプロピオニトリル、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチル−n−ドデシルアミン、(S)−(+)−2−アミノ−1−ブタノール、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン等が例示される。
【0140】
また、塩基性物質が4級アミンである場合、アンモニウムハイドライドであることが好ましい。たとえば、下記の一般式(1)に示されるアンモニウムヒドロキシド化合物であることが好ましい。式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4としては、炭素数1〜7のアルキル基、アルコール基、および、アリール基が挙げられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムハイドライド、エチルトリメチルアンモニウムハイドライド、テトラエチルアンモニウムハイドライド、トリエチルブチルアンモニウムハイドライド、トリブチルエチルアンモニウムハイドライド、テトラnブチルアンモニウムハイドライド、テトラsブチルアンモニウムハイドライド、テトラtブチルアンモニウムハイドライド等が例示される。
【0142】
また、現像促進層の酸性物質としては、カルボキシ基、スルホ基等の酸性基を有する有機酸類であることが好ましいが、芳香族、脂肪族は問わない。カルボキシ基を有する酸性物質として、飽和脂肪酸類、不飽和脂肪酸類、芳香族脂肪酸類等が例示される。また、スルホ基を有する有機酸類として、ベンゼンスルホン酸類、アルキルベンゼンスルホン酸類、アミノベンゼンスルホン酸類、アルキル置換アミノベンゼンスルホン酸類等が例示される。
【0143】
[実施の形態2]
上記の実施形態においては、バイナリー型マスクブランクの場合(それに加えハーフトーン型位相シフトマスクブランクや反射型マスクブランク)を例示した。その一方、本発明に係るマスクブランクを他の型の転写用マスクの形成に適用しても構わない。例えば、基板1または基板1上に形成された薄膜2をエッチング等により掘り込んで段差(凹凸)を形成し、位相シフタ部を設けることにより、レベンソン型の転写用マスク12やトライトーン型の転写用マスク12を作製しても構わない。
【0144】
なお、レベンソン型の転写用マスク12やトライトーン型の転写用マスク12を作製する場合も、上記の実施形態に示したバイナリー型等の転写用マスク12を作製する場合も、共に、上記の実施形態に示したマスクブランク5から作製することが可能である。しかしながら、後述の
図6に示すように、例えばレベンソン型の転写用マスク12を作製する場合、一度、上記の実施形態に示したマスクブランク5に対して掘り込みを行って(第1の)所定の凹凸パターンを形成した後、再びレジスト層(第2のレジスト層7’)を当該マスクブランク5に形成することになる。第2のレジスト層7’を形成する時点においても、上記の実施形態で詳述した特徴を適用できる。以下、説明する。
【0145】
レベンソン型の転写用マスク12の製造方法について説明する。以降、特記が無い場合は上記の実施形態と同様とする。
【0146】
上記の実施形態に示したマスクブランク5を用意し、
図3(e)の段階まで当該マスクブランク5を加工する。この場合ももちろん水溶性現像促進層9(ひいては変質層8)をレジスト層7の上に設けておく。
【0147】
その後、
図6(a)に示すように、薄膜2をマスクとして透光性基板に対してエッチングを行う。
【0148】
そして本例においては、
図6(b)に示すように、薄膜2が存在する状態の透光性基板に対し、第2のレジスト層7’を形成する。なお、第2のレジスト層7’の材料や形成条件等々は上記の実施形態と同様とすればよい。また、この場合においても水溶性現像促進層9(ひいては変質層8)を第2のレジスト層7’の上に設けておく。なお、
図6(b)において水溶性現像促進層9の最表面に凹みが形成されている理由は、透光性基板の凹みの影響が最表面にも多少なりとも及ぼされる様子を概略的に示すという意図があるためである。
【0149】
次に、
図6(c)に示すように、第2のレジスト層7’に対して露光を行い、現像する。その結果、第2のレジストパターン7’pが形成される。
【0150】
そしてこの状態で、
図6(d)に示すように、第2のレジストパターン7’pをマスクとして薄膜2を除去する。こうして第2の所定の凹凸パターンを形成する。
【0151】
最後に、
図6(e)に示すように、第2のレジストパターン7’pを除去し、レベンソン型の転写用マスクを完成させる。
【0152】
次に、トライトーン型の転写用マスクの製造方法について説明する。
【0153】
上記の実施形態に示したマスクブランクを用意する。ただ、本例のマスクブランクにおける薄膜2は、
図7(a)に示すように、透光性基板側から順に、光半透過膜2a(例えばMoSiON)、遮光膜2b(例えばCrONやTaN)、により構成されている。この場合ももちろん水溶性現像促進層9(ひいては変質層8)をレジスト層7の上に設けておく。
【0154】
上記のマスクブランクに対し、
図7(b)(c)に示すように、レジストパターン7pをマスクとして遮光膜2bに対してエッチングを行い、レジストパターン7pを除去する。
【0155】
その後、
図7(d)に示すように、遮光膜2bに対してエッチングを行う。こうして(第1の)所定の凹凸パターンを形成しておく。
【0156】
そして本例においては、
図8(a)に示すように、光半透過膜2aが形成された状態の透光性基板に対し、第2のレジスト層7’を形成する。なお、第2のレジスト層7’の材料や形成条件等々は上記の実施形態と同様とすればよい。また、この場合においても水溶性現像促進層9(ひいては変質層8)を第2のレジスト層7’の上に設けておく。なお、
図8(a)において水溶性現像促進層9の最表面に凹みが形成されている理由は、透光性基板の凹みの影響が最表面にも多少なりとも及ぼされる様子を概略的に示すという意図があるためである。
【0157】
次に、
図8(b)に示すように、第2のレジスト層7’に対して露光を行い、現像する。その結果、第2のレジストパターン7’pが形成される。
【0158】
そしてこの状態で、
図8(c)に示すように、第2のレジストパターン7’pをマスクとして光半透過膜2aを除去して基板1を露出させる。
【0159】
その後、
図8(d)に示すように、第2のレジストパターン7’pを除去する。こうして第2の所定の凹凸パターンを形成し、トライトーン型転写用マスクを完成させる。
【0160】
上述の通り、レベンソン型の転写用マスクの作製途中のレジスト層付きブランク(
図6(b))やトライトーン型の転写用マスクの作製途中のレジスト層付きブランク(
図8(a))においても、上記の実施形態と同様、水溶性現像促進層9(ひいては変質層8)を第2のレジスト層7’の上に形成している。そのため、本実施形態においても本発明の技術的思想は適用し得る。
【0161】
本実施形態の構成をまとめると、以下のようになる。
「基板と、前記基板上に形成され、ポジ型のレジスト材料で構成されているレジスト層と、を有するレジスト層付ブランクであって、
“所定の凹凸パターンが形成されたブランクの凸部における”前記レジスト層の厚みが200nm以下であり、
水性現像液に対する前記レジスト層の未露光部の溶解速度が0.05nm/秒以下であり、
前記レジスト層の少なくとも露光部上に前記水性現像液を行き渡らせる契機となる現像促進層が前記レジスト層上に形成されていることを特徴とするレジスト層付ブランク。」
【0162】
上記の規定は、上記の第2のレジスト層7’に焦点を当てている。詳しく言うと、第2のレジスト層7’が形成されると、例えばレベンソン型の転写用マスク12の作製途中のレジスト層付きブランクの場合だと、
図6(c)に示すように、透光性基板の掘り込み部分(凹部)から第2のレジスト層7’の厚さを測定すると相当な厚さとなってしまう。これはトライトーン型の場合であっても
図8(b)に示す通り同様である。
【0163】
しかしながら、上記の実施形態においてレジスト層7の厚さを200nm以下に規定している理由は、レジストパターンの倒れ等が生じないように、レジストパターンを形成する際のアスペクト比を小さくするためである。
図6(c)や
図8(b)を見ればわかるように、レベンソン型のような透光性基板の掘り込み部分や、トライトーン型の半透過膜の掘り込み部分に形成された第2のレジスト層7’においてはレジストパターンの倒れ等の心配がほぼ無い。むしろレジストパターンの倒れ等は、所定のパターンが形成された基板または薄膜を備えるブランクの凸部の最表面の第2のレジスト層7’の厚さに依るところが大きい。そのため、上記の規定においては“ブランクの凸部における”レジスト層の厚みを200nm以下と規定している。こうすることにより本実施形態においても上記の実施形態と同様の効果が得られることは自ずと把握可能である。そのため上記の但し書きが無くとも、レジスト層の厚さと言えば、ブランクの下面から最も離れた部分であってブランクの最上面におけるレジスト層の厚みのことを指すことは一義的に把握される。
【0164】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。たとえば、[実施の形態1]の内容と[実施の形態2]の内容とを適宜組み合わせても構わないし、適宜組み合わせた内容を種々に改変しても構わない。
【実施例】
【0165】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0166】
(実施例1)
(マスクブランク準備工程)
本実施例においては、基板上に光半透過膜および遮光膜をこの順で形成したものを位相シフトマスクブランクとして作製した。
【0167】
まず、合成石英ガラスからなり透光性を有する基板上に、枚葉式DCスパッタ装置を用いて、膜厚69nmの単層のMoSiN膜を光半透過膜として形成した。その際の条件としては、以下のようにした。
【0168】
スパッタターゲットにモリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(原子%比 Mo:Si=10:90)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N
2)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス圧0.3Pa,ガス流量比 Ar:N
2:He=5:49:46)で、DC電源の電力を2.8kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行った。スパッタリング後、250℃で5分間の加熱処理(アニール処理)を行った。
【0169】
なお、光半透過膜は、ArFエキシマレーザー(波長193nm)用の位相シフト膜でもある。なお、この位相シフト膜は、ArFエキシマレーザー(波長193nm)に対し、透過率は5.24%、位相差が173.85度となっていた。
【0170】
その後、光半透過膜の上に、枚葉式DCスパッタ装置を用いて遮光膜を形成した。遮光膜は、以下のように3層構造とした。
【0171】
まず、第1の遮光膜として、膜厚30nmのCrOCN層を形成した。その際の条件としては、以下のようにした。
【0172】
スパッタターゲットにクロムターゲットを使用し、アルゴンと二酸化炭素と窒素とヘリウムの混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比 Ar:CO
2:N
2:He=22:39:6:33)中で、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリングを行った。
【0173】
次に、第2の遮光膜として、膜厚4nmのCrN層を形成した。その際の条件としては、以下のようにした。
【0174】
クロムターゲットを使用し、アルゴンと窒素の混合ガス雰囲気(ガス圧0.1Pa,ガス流量比 Ar:N
2=83:17)中で、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリングを行った。
【0175】
最後に、第3の遮光膜として、膜厚14nmのCrOCN層を形成した。その際の条件としては、以下のようにした。
【0176】
クロムターゲットを使用し、アルゴンと二酸化炭素と窒素とヘリウムの混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比 Ar:CO
2:N
2:He=21:37:11:31)中で、DC電源の電力を1.8kWとし、反応性スパッタリングを行った。
【0177】
以上の工程により、膜厚の合計が48nmの遮光膜を形成した。なお、この遮光膜は、位相シフト膜との積層構造において波長193nmでの光学濃度(O.D.)が3.1であった。
【0178】
こうして、本実施例におけるマスクブランクを作製した。
【0179】
(レジスト層形成工程)
上記のマスクブランクの遮光膜に対しHMDS処理を所定の条件で施した。その後、ポジ型レジストであって電子線描画用の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を、遮光膜上にスピンコートした。
【0180】
(溶解速度調整工程)
その後、加熱乾燥装置を用いて、135℃−10分の条件でベーク処理を行った。レジスト層の膜厚は100nmとした。ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.05nm/秒であった。また、水接触角はおよそ66.8°であった。
【0181】
(現像促進層形成工程)
続いて、現像促進層の構成材料の成分が含まれるコート液を、レジスト層の上にスピンコートした。なお、コート液における溶媒として、水とイソプロピルアルコールとを用いた。質量比は、水:IPA=90:10とした。コート液における溶質として、三菱レイヨン社製アクアセーブ(登録商標)を用いた。この時、溶質と溶媒の質量比は、溶質:溶媒=1〜3:97〜99とした。その後、加熱乾燥装置を用いて所定の加熱乾燥処理(ベーク処理)を行った。現像促進層の膜厚は20nmとした。現像促進層形成工程におけるベーク処理により、レジスト層の表層部分に対して現像促進層の塩を入り込ませることにより、変質層を形成した。なお、減膜法を用いて変質層の厚さを求めた結果、変質層の厚さは5nmであった。
【0182】
以上の工程を経て、本実施例におけるレジスト層付マスクブランクを作製した。
【0183】
(解像性評価)
得られたレジスト層付マスクブランクに対し、50kVの電子線による描画露光を行い、その後120℃においてベーク処理(PEB:Post Exposure Bake)を行った。描画露光処理では、パターン寸法がそれぞれ、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、及び、80nmのラインパターンと、ホール径がそれぞれ、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、及び、80nmのホールパターンとが形成されるようにした。続いて、現像液として2.38%TMAHを用いて、60秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。尚、現像促進層は現像液によって剥離された。
【0184】
次に、形成されたレジストパターンに対して評価を行った。
ラインパターンとして、80〜50nmまでのラインを形成することができた。40nmのラインパターンでは、ライン部分に細りが確認され、30nmのラインアンドスペースパターンでは一部にラインの倒れが確認された。
また、ホールパターンとして、80〜40nmのホールパターンを形成することができた。ホールの径を30nmとしたパターンではホール径が明確に拡大している領域があり、隣接するホールと一部接続している領域が確認された。
【0185】
このことから、本実施例にかかる仕様のレジスト層付マスクブランクを使用することで、パターン寸法が50nm程度のレジストパターンを形成することができると考えられる。また、描画条件等の補正を行うことで、現像時のライン部分の細りの改善が期待でき、パターン寸法が40nm程度のレジストパターンを形成することができると考えられる。
【0186】
また、本実施例の構成によれば、30nmの微細なホールパターンにおいても、水性現像液の露光部の溶解が可能であったことから、現像時間を短縮することも可能であると考えられる。
【0187】
(転写用マスクの作製)
続いて、上述の現像促進層形成工程まで同様に製作したレジスト層付マスクブランクに対し、50kVの電子線による描画露光を行い、その後120℃においてベーク処理(PEB:Post Exposure Bake)を行った。レジストパターンとしては、ラインアンドスペースパターンはパターンの凸部(ライン)の幅が40nm、パターンの凹部(スペース)の幅が40nmとなるようにした。なお、上記の評価に基づいて、描画露光時のDOSE量の補正を行った。続いて、現像液として2.38%TMAHを用いて、60秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
このレジストパターンをマスクにして、遮光膜および光半透過膜をエッチングして位相シフトマスクを作製したところ、位相シフトマスクには、レジストパターン形状に対して優れた転写精度でパターンが形成されていた。
【0188】
(実施例2)
本実施例においては、実施例1における溶解速度調整工程におけるベーク処理温度を140℃−10分の条件としたほかは、同一の方法でレジスト層付マスクブランクを製造した。なお、ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.03nm/秒であり、水接触角は、約67.2°であり、また、レジスト層表面に形成される変質層の厚みは3nmであった。
【0189】
次いで、実施例1と同様の方法で解像性を評価したところ、ラインパターンとしては、寸法が80〜40nmまでのラインを形成することができた。30nmのラインパターンでは、ライン部分に細りが確認された。
また、ホールパターンとしては80〜40nmのホールパターンを形成することができた。ホールの径が30nmのパターンではホール径が拡大している領域があった。
このことから、本実施例にかかる仕様のレジスト層付マスクブランクを使用することで、パターン寸法が40nm程度のレジストパターンを形成することができると考えられる。また、描画条件等の補正を行うことで、パターン寸法が40nm未満のレジストパターンを形成することができると考えられる。
【0190】
続いて、現像促進層を形成したレジスト層付マスクブランクに対し、50kVの電子線による描画露光を行い、その後120℃においてベーク処理(PEB:Post Exposure Bake)を行った。レジストパターンとしては、ラインアンドスペースパターンはパターンの凸部(ライン)の幅が40nm、パターンの凹部(スペース)の幅が40nmとなるようにした。続いて、現像液として2.38%TMAHを用いて、60秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
【0191】
ライン部分の寸法を複数点で測定したところ、その平均は、37.3nmであり、ライン部分のやせ細りを7%以下に抑えることができた。このことから、描画条件のわずかな変更により、さらに寸法精度の高いレジストパターンを形成することができることが分かった。
また、レジストパターンの膜べり量は5nm以下であった。
【0192】
このレジストパターンをマスクにして、遮光膜および光半透過膜をエッチングして位相シフトマスクを作製したところ、位相シフトマスクには、レジストパターン形状に対して優れた転写精度でパターンが形成されていた。
【0193】
(実施例3)
本実施例においては、実施例1における溶解速度調整工程におけるベーク処理温度を155℃−10分の条件としたほかは、同一の方法でレジスト層付マスクブランクを製造した。なお、ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.01nm/秒であり、水接触角は、72.3°であった。また、レジスト層表面に形成される変質層の厚みは1nmであった。
【0194】
次いで、実施例1と同様の方法で解像性を評価したところ、80nm〜30nmのすべてのラインパターンにおいてもラインを形成することができた。
また、ホールパターンは80nm〜30nmのすべてのホールパターンを形成することができた。
このことから、本実施例にかかる仕様のレジスト層付マスクブランクを使用することで、パターン寸法が30nm以下のレジストパターンを形成することができると考えられる。
【0195】
続いて、本実施例にかかる現像促進層形成工程まで同様に製作したレジスト層付マスクブランクに対し、50kVの電子線による描画露光を行い、その後120℃においてベーク処理(PEB:Post Exposure Bake)を行った。レジストパターンとしては、ラインアンドスペースパターンはパターンの凸部(ライン)の幅が40nm、パターンの凹部(スペース)の幅が40nmとなるようにした。続いて、現像液として2.38%TMAHを用いて、60秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
【0196】
次にレジストパターンのライン部分の寸法を複数点で測定したところ、その平均は、39.3nmであり、ライン部分のやせ細りを2%以下に抑えることができた。このことから、描画条件のわずかな変更により、さらに寸法精度の高いレジストパターンを形成することができることが分かった。
また、レジストパターンの膜べり量は2nm以下であった。
【0197】
このレジストパターンをマスクにして、遮光膜および光半透過膜をエッチングして位相シフトマスクを作製したところ、位相シフトマスクにはレジストパターン形状に対して優れた転写精度で薄膜パターンが形成されていた。
【0198】
(実施例4)
本実施例においては、実施例2において作製したマスクブランクの遮光膜上にハードマスク膜を形成したものを位相シフトマスクブランクとして作製した。
まず、実施例1のマスクブランクの遮光膜上に、枚葉式DCスパッタ装置を用いて膜厚5nmのエッチングマスクとしてのハードマスク膜を形成してハードマスク膜上にレジスト層を形成し、レジスト層の厚みを50nmとした以外は、実施例2と同様にして、本実施例におけるレジスト層付マスクブランクを作製した。ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.03nm/秒であった。
【0199】
なお、ハードマスク膜は、Siターゲットを用い、アルゴン(Ar)と窒素(N
2)と酸素(O
2)の混合ガス雰囲気(Ar:N
2:O
2=20:57:23[体積%])中で、反応性スパッタリングを行うことにより、膜厚5[nm]のSiONを成膜した。
【0200】
次に、実施例1と同様の現像促進層を形成したレジスト層付マスクブランクに対し、50kVの電子線による描画露光を行った。レジストパターンとしては、ラインアンドスペースパターンはパターンの凸部(ライン)の幅が40nm、パターンの凹部(スペース)の幅が40nmとなるようにした。
【0201】
その後120℃においてベーク処理(PEB:Post Exposure Bake)を行った。続いて、現像液として2.38%TMAHを用いて、60秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
【0202】
ライン部分の寸法を複数点で測定したところ、その平均は、37.2nmであり、ライン部分のやせ細りを7%以下に抑えることができた。このことから、描画条件のわずかな変更により、さらに寸法精度の高いレジストパターンを形成することができることが分かった。
また、レジストパターンの膜べり量は5nm以下であった。
【0203】
続いて、このレジストパターンをマスクにして、ハードマスク膜をエッチングし、エッチングされたハードマスク膜をマスクとして、遮光膜および光半透過膜をエッチングして位相シフトマスクを作製したところ、位相シフトマスクにはレジストパターン形状に対して優れた転写精度でパターンが形成されていた。
【0204】
(実施例5)
本実施例においては、基板上に遮光膜およびハードマスク膜をこの順で形成したものをバイナリー型マスクブランクとして作製した。
【0205】
まず、合成石英ガラスからなり透光性を有する基板上に、枚葉式DCスパッタ装置を用いて、膜厚50nmの単層のMoSiN膜を遮光膜として形成した。その際の条件としては、以下のようにした。
【0206】
スパッタターゲットにモリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(原子%比 Mo:Si=21:79)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N
2)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス圧0.3Pa,ガス流量比 Ar:N
2:He=5:49:46)で、DC電源の電力を2.1kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行った。スパッタリング後、250℃で5分間の加熱処理(アニール処理)を行った。
【0207】
その後、遮光膜上に、枚葉式DCスパッタ装置を用いてCrOCNからなるハードマスク膜を形成した。具体的には、スパッタターゲットにクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO
2)と窒素(N
2)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比 Ar:CO
2:N
2:He=22:39:6:33)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚10nmのCrOCN層を成膜した。
【0208】
以上の工程により、本実施例におけるマスクブランクを作製した。
【0209】
得られたマスクブランクのハードマスク膜上に実施例1と同様のポジ型レジストを用いて厚みが50nmのレジスト層形成し、本実施例におけるレジスト層付マスクブランクを作製した。なお、レジスト層形成時のベーク処理は、155℃−10分とした。なお、ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.01nm/秒であった。
【0210】
次に、実施例1と同様の現像促進層を形成したレジスト層付マスクブランクに対し、50kVの電子線による描画露光を行った。レジストパターンとしては、ラインアンドスペースパターンはパターンの凸部(ライン)の幅が40nm、パターンの凹部(スペース)の幅が40nmとなるようにした。
【0211】
その後120℃においてベーク処理(PEB:Post Exposure Bake)を行った。続いて、現像液として2.38%TMAHを用いて、60秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
【0212】
ライン部分の寸法を複数点で測定したところ、その平均は、39.2nmであり、ライン部分のやせ細りを2%以下に抑えることができた。このことから、本実施例の構成によれば、描画等の条件を変更しなくても高精度なレジストパターンを形成できることが分かった。また、描画条件等をわずかに変更することにより。さらに寸法精度の高いレジストパターンを形成することができると考えられる。
また、レジストパターンの膜べり量は2nm以下であった。
【0213】
続いて、このレジストパターンをマスクにして、ハードマスク膜をエッチングし、エッチングされたハードマスク膜をマスクとして、遮光膜をエッチングしてフォトマスクを作製したところ、レジストパターン形状に対して優れた転写精度でパターンが形成されていた。
【0214】
(実施例6)
本実施例においては、基板上に遮光膜および表面反射防止膜を形成したものをバイナリー型マスクブランクとして作製した。
【0215】
まず、合成石英ガラスからなり透光性を有する基板上に、枚葉式DCスパッタ装置を用いて、膜厚42nmの単層のTaN膜を遮光膜として形成した。その際の条件としては、以下のようにした。
【0216】
スパッタターゲットにタンタル(Ta)からなるターゲットを用い、キセノン(Xe)と窒素(N
2)の混合ガス雰囲気(ガス圧0.3Pa,ガス流量比 Xe:N
2=42:58で、DC電源の電力を2.8kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行った。
【0217】
その後、TaN膜からなる遮光膜上に、枚葉式DCスパッタ装置を用いて膜厚9nmのTaO膜を表面反射防止膜として形成した。TaO膜の組成は、Ta:48原子%,O:52原子%とした。また、TaO膜を形成する際の条件としては、以下のようにした。スパッタターゲットにタンタル(Ta)からなるターゲットを用い、アルゴン(Ar)と酸素(O
2)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.3Pa,ガス流量比 Ar:O
2=64:36)とし、DC電源の電力を3.0kWとした。
【0218】
以上の工程により、本実施例におけるマスクブランクを作製した。
【0219】
得られたマスクブランクの反射防止膜上に実施例1と同様のポジ型レジストを用いて厚みが80nmのレジスト層形成し、本実施例におけるレジスト層付マスクブランクを作製した。なお、レジスト層形成時のベーク処理は、140℃−10分とした。なお、ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.03nm/秒であった。
【0220】
次に、実施例1と同様の現像促進層を形成したレジスト層付マスクブランクに対し、50kVの電子線による描画露光を行った。レジストパターンとしては、ラインアンドスペースパターンはパターンの凸部(ライン)の幅が40nm、パターンの凹部(スペース)の幅が40nmとなるようにした。
【0221】
その後120℃においてベーク処理(PEB:Post Exposure Bake)を行った。続いて、現像液として2.38%TMAHを用いて、60秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
【0222】
ライン部分の寸法を複数点で測定したところ、その平均は、37.3nmであり、ライン部分のやせ細りを7%以下に抑えることができた。このことから、描画条件のわずかな変更により、さらに寸法精度の高いレジストパターンを形成することができることが分かった。
また、レジストパターンの膜べり量は5nm以下であった。
【0223】
続いて、このレジストパターンをマスクにして、表面反射防止膜をエッチングし、エッチングされた表面反射防止膜をマスクとして、遮光膜をエッチングしてフォトマスクを作製したところ、レジストパターン形状に対して優れた転写精度でパターンが形成されていた。
【0224】
(実施例7)
本実施例においては、実施例6において作製したマスクブランクの表面反射防止膜上にハードマスク膜を形成したものをバイナリー型マスクブランクとして作製した。
【0225】
実施例6のマスクブランクの表面反射防止膜上に、枚葉式DCスパッタ装置を用いて、膜厚が4nmのエッチングマスクとしてのハードマスク膜を形成し、ハードマスク膜上にレジスト層を形成し、レジスト層の厚みを50nmとし、露光描画前のベーク温度を155℃−10分とした以外は、実施例6と同様にして、本実施例におけるレジスト層付マスクブランクを作製した。ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.03nm/秒であった。
【0226】
なお、ハードマスク膜の組成は、Cr:79原子%,N:21原子%とした。また、ハードマスク膜を形成する際の条件としては、以下のようにした。スパッタターゲットにクロム(Cr)からなるターゲットを用い、アルゴン(Ar)と窒素(N
2)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.1Pa,ガス流量比 Ar:N
2=83:17)とし、DC電源の電力を1.7kWとした。
【0227】
次に、実施例1と同様の現像促進層を形成したレジスト層付マスクブランクに対し、50kVの電子線による描画露光を行った。レジストパターンとしては、ラインアンドスペースパターンはパターンの凸部(ライン)の幅が40nm、パターンの凹部(スペース)の幅が40nmとなるようにした。
【0228】
その後120℃においてベーク処理(PEB:Post Exposure Bake)を行った。続いて、現像液として2.38%TMAHを用いて、60秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
【0229】
ライン部分の寸法を複数点で測定したところ、その平均は、37.4nmであり、ライン部分のやせ細りを7%以下に抑えることができた。このことから、描画条件のわずかな変更により、さらに寸法精度の高いレジストパターンを形成することができることが分かった。
また、レジストパターンの膜べりは5nm以下であった。
【0230】
続いて、このレジストパターンをマスクにして、ハードマスク膜をエッチングし、エッチングされたハードマスク膜をマスクにして、遮光膜および表面反射防止膜をエッチングしてフォトマスクを作製したが、フォトマスクには設計通りのパターンが形成されていた。
【0231】
(実施例8)
本実施例においては、基板上に多層反射膜、保護膜、吸収体膜および低反射膜をこの順で形成したものを反射型マスクブランクとして作製した。
【0232】
まず、SiO
2−TiO
2ガラスからなる基板上に、イオンビームスパッタ装置を用いて、Mo膜とSi膜とが交互に積層された合計膜厚280nmの多層反射膜を形成した。その際の条件としては、以下のようにした。
【0233】
ガラス基板上にイオンビームスパッタリング法により、多層反射膜を形成した。具体的には、Siターゲットを用いて、低屈折率層としてSi層を成膜し、Moターゲットを用いて、高屈折率層としてMo層を成膜し、これを1周期として40周期積層した。そして、最後にSiターゲットを用いて、低屈折率層としてSi層をした。
【0234】
その後、多層反射膜上に、DCマグネトロンスパッタリングにより保護膜を形成した。詳しくは、Ruターゲットを用いて、アルゴンガス(Ar)の雰囲気下でRu膜を成膜した。
【0235】
次に、保護膜上に、DCマグネトロンスパッタリングにより、吸収体層及び低反射層をその順で積層して吸収体膜を形成して反射型マスクブランクを製造した。詳しくは、TaB合金ターゲットを用いて、キセノンガス(Xe)及び窒素ガス(N
2)の混合ガス雰囲気下で吸収体層のTaBN層を成膜し、次にアルゴンガス(Ar)及び酸素ガス(O
2)の混合ガス雰囲気下で低反射層のTaBO層を成膜した。
【0236】
以上の工程により、本実施例におけるマスクブランクを作製した。
【0237】
得られた反射型マスクブランクの表面に実施例1と同様のポジ型レジストを用いて厚みが50nmのレジスト層形成し、本実施例におけるレジスト層付マスクブランクを作製した。なお、レジスト層形成時のベーク処理は、155℃−10分とした。なお、ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.01nm/秒であった。
【0238】
実施例1と同様の現像促進層を形成したレジスト層付マスクブランクに対し、50kVの電子線による描画露光を行い、その後120℃においてベーク処理(PEB:Post Exposure Bake)を行った。レジストパターンとしては、ラインアンドスペースパターンはパターンの凸部(ライン)の幅が30nm、パターンの凹部(スペース)の幅が30nmとなるようにした。続いて、現像液として2.38%TMAHを用いて、60秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
【0239】
ライン部分の寸法を複数点で測定したところ、その平均は、29.1nmであり、ライン部分のやせ細りを3%以下に抑えることができた。
【0240】
このことから、本実施例によれば、描画等の条件を変更しなくても高精度なレジストパターンを形成できることが分かった。また、描画条件等をわずかに変更することにより。さらに寸法精度の高いレジストパターンを形成することができると考えられる。
また、レジストパターンの膜べりは2nm以下であった。
【0241】
続いて、このレジストパターンをマスクにして、低反射膜をエッチングし、エッチングされた低反射膜をマスクとして、吸収体膜をエッチングして反射型マスクを作製した。作製した反射型マスクでは、寸法精度のよい吸収体膜パターンが形成されていた。
【0242】
(実施例9)
本実施例においては、基板上にハードマスク膜を形成したものをインプリント用モールドブランクとして作製した。
【0243】
まず、合成石英ガラスからなり透光性を有する基板上に、枚葉式DCスパッタ装置を用いてハードマスク膜を形成した。ハードマスク膜の組成は、Cr:79原子%,N:21原子%とした。また、ハードマスク膜を形成する際の条件としては、以下のようにした。スパッタターゲットにクロム(Cr)からなるターゲットを用い、アルゴン(Ar)と窒素(N
2)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.1Pa,ガス流量比Ar:N
2=83:17とし、DC電源の電力を1.7kWとした。
【0244】
以上の工程により、本実施例におけるモールドブランクを作製した。
【0245】
得られたモールドブランクのハードマスク膜上に実施例1と同様のポジ型レジストを用いて厚みが50nmのレジスト層形成し、本実施例におけるレジスト層付モールドブランクを作製した。なお、レジスト層形成時のベーク処理は、155℃−10分とした。なお、ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.01nm/秒であった。
【0246】
その後、実施例1と同じ条件で、露光および現像を行い、レジストパターンを形成した。形成されたレジストパターンに対して評価を行ったが、レジストパターンのやせ細りや膜べりは抑制されていた。
【0247】
続いて、このレジストパターンをマスクにして、ハードマスク膜をエッチングし、エッチングされたハードマスク膜をマスクとして、基板をエッチングしてモールドを作製したところ、モールドにはレジストパターン形状に対して優れた転写精度でパターンが形成されていた。
【0248】
(実施例10)
本実施例においては、実施例1でも採用した位相シフトマスクブランクを使用してトライトーン型の転写用マスク12を作製した。当該転写用マスク12の具体的な構成を
図9に示す。
図9(a)は、本実施例におけるトライトーン型の転写用マスク12(トライトーンマスク20)の模式的な平面図であり、
図9(b)はトライトーンマスク20の模式的な断面図である。なお本実施例は、先に示した
図7(a)〜(d)および
図8(a)までは同様である。
本実施例におけるトライトーンマスク20は、透光性基板の表面が露出した透過領域21と光半透過膜の露出部からなるハーフトーン領域22と、その光半透過膜と遮光膜が形成された領域よりなる遮光領域23とを有している。
【0249】
本実施例のトライトーンマスク20では、
図9(a)に示すように、透過領域21の形成ピッチが150nmで3×3の格子状に並んだパターンを形成した。透過領域21の形状は、50nm×50nmの正方形パターンとした。透過領域21はハーフトーン領域22の内部に形成されており、言い換えると、ハーフトーン領域22は透過領域21の周囲を取り囲むような形状のパターンとした。ハーフトーン領域22は、外形が100nm×100nmの正方形パターンとした。
【0250】
本実施例のトライトーンマスク20は、まずハーフトーン領域22の外形形成によって遮光領域23を形成し、次いで、ハーフトーン領域22及び透過領域21を形成して製作した。
【0251】
<遮光領域22の形成>
まず、実施例1でも採用した位相シフトマスクブランクの遮光膜の表面に、ポジ型レジストであって電子線描画用の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピンコートした。
次に、溶解速度調整工程においてベーク処理温度を155℃−10分の条件とし、レジスト層付マスクブランクを製造した。なお、ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.01nm/秒であった。
【0252】
上記レジスト層の表面に実施例1と同様の現像促進層を形成し、そのレジスト層付マスクブランクに対して50kVの電子線による描画露光を行った。その後120℃においてベーク処理(PEB:Post Exposure Bake)を行った。レジストパターンとしては、100nm×100nmの正方形パターンを50nmの間隔で縦横3列ずつ、合計9か所に形成した。続いて、現像液として2.38%TMAHを用いて、60秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
【0253】
隣り合うハーフトーンパターン22の間にある遮光領域23の寸法(ライン部分の寸法)を測定したところ、その平均は49.2nmであり、ライン部分のやせ細りを2%以下に抑えることができた。レジストパターンの膜べり量は2nm以下であった。
このレジストパターンをマスクにして、遮光膜をエッチングしてハーフトーン領域22の外形を形成し、遮光領域23を形成した。
【0254】
<透過領域21パターン及びハーフトーン領域22パターンの形成>
次に、遮光領域23が形成されたマスクブランクの表面に、ポジ型レジストであって電子線描画用の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を遮光膜領域23上の膜厚が100nmとなるように、表面にスピンコートした。
次に、溶解速度調整工程におけるベーク処理温度を155℃−10分の条件とし、レジスト層を形成した。ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.01nm/秒であった。
【0255】
そして、上記レジスト層の表面に実施例1と同様の現像促進層を形成し、そのレジスト層付マスクブランクに対して50kVの電子線による描画露光を行った。その後描画露光後のマスクブランクに対し、120℃においてベーク処理(PEB:Post Exposure Bake)を行った。レジストパターンとしては、先に形成したハーフトーン領域22外形の内部に50nm×50nmの正方形パターンを中心が同一になるように形成した。続いて、現像液として2.38%TMAHを用いて、60秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
【0256】
形成したレジストパターンのスペース部分(透過領域21部分)の正方形の一辺の寸法は平均50.9nmであり、正確な寸法でスペース部分を形成することができた。このレジストパターンをマスクにして、フッ素系ガスによって光半透過膜をドライエッチングして透過領域21とハーフトーン領域22を形成した。
【0257】
以上の方法で製作したトライトーンマスク20における位置精度を確認したところ、透過領域21とハーフトーン領域22外形の中心のずれは、すべて1nm以下であり、位置精度に優れたトライトーンマスク20を製造することができた。
【0258】
(比較例1)
比較例1では、実施例1において作製した位相シフトマスクブランクを用いた。該マスクブランクの遮光膜に対しHMDS処理を所定の条件で施した。その後、ポジ型レジストであって電子線描画用の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を、遮光膜上にスピンコートした。
【0259】
その後、加熱乾燥装置を用いて、125℃−10分の条件でベーク処理を行った。レジスト層の膜厚は100nmとした。以上の工程を経て、比較例1におけるレジスト層付マスクブランクを作製した。なお、ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH))に対する溶解速度は、0.12nm/秒であった。
【0260】
その後、実施例1と同様の方法で解像性を評価したところ、ラインパターンとしては、寸法が50nmまでのラインを形成することができたが、明らかな細りが確認された。また40nmのラインパターンでは、倒れが確認され、30nmのラインパターンでは消失された部分があった。
【0261】
また、ホールパターンはホール径が30nm及び40nmのホールパターンにおいて、ホールの欠損が確認された。また、ホール径が70nm及び80nmのホールパターンでは、隣接するパターンと連結してしまう箇所が確認された。
【0262】
続いて、本比較例にかかるレジスト層付マスクブランクに対し、パターンの凸部(ライン)の幅が40nm、パターンの凹部(スペース)の幅が40nmのラインアンドスペースとなるように露光および現像を行い、レジストパターンを形成したが、アスペクト比が大きいためラインアンドスペースパターンの倒れが生じ、所定のレジストパターンが形成できなかった。
【0263】
(比較例2)
比較例2では、実施例1において作製した位相シフトマスクブランクを用いた。該マスクブランクの遮光膜に対しHMDS処理を所定の条件で施した。その後、ポジ型レジストであって電子線描画用の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を、遮光膜上にスピンコートした。
【0264】
その後、加熱乾燥装置を用いて、125℃−10分の条件でベーク処理を行った。レジスト層の膜厚は80nmとした。ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.12nm/秒であった。
以上の工程を経て、比較例2におけるレジスト層付マスクブランクを作製した。
【0265】
その後、40nm幅のラインアンドスペースパターン、スペースパターン、ホール径が40nmのホールパターンが形成されるように、露光および現像を行い、レジストパターンを形成した。このとき、ラインアンドスペースパターンの倒れは抑制されたものの、現像液によるレジストパターンの溶解が進んだため、遮光膜のエッチング時に、マスクとなるべきレジストパターンが消失してしまい、マスクされるべき遮光膜がエッチングされ、遮光膜の厚みが減少し、所定の性能を発揮できなかった。
【0266】
(比較例3)
比較例3では、実施例3において作製した位相シフトマスクブランクを用いた。該マスクブランクの遮光膜に対しHMDS処理を所定の条件で施した。その後、ポジ型レジストであって電子線描画用の化学増幅型レジストPRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を、遮光膜上にスピンコートした。
【0267】
その後、加熱乾燥装置を用いて、155℃−10分の条件でベーク処理を行った。レジスト層の膜厚は80nmとした。ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.01nm/秒であった。
以上の工程を経て、比較例3におけるレジスト層付マスクブランクを作製した。
【0268】
その後、40nm幅のラインアンドスペースパターン、スペースパターン、ホールパターンが形成されるように、露光および現像を行い、レジストパターンを形成した。このとき、レジストパターンの溶解が抑制され、スペースパターンおよびホールパターンにT−top形状が見られた。その結果、遮光膜のエッチング時に、エッチングが阻害され、遮光膜のパターンが未解像となった。
【0269】
(比較例4)
比較例4では、実施例1において作製した位相シフトマスクブランクを用いた。該マスクブランクの遮光膜に対しHMDS処理を所定の条件で施した。その後、ポジ型レジストであって電子線描画用の化学増幅型レジストPRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を、遮光膜上にスピンコートした。
【0270】
その後、加熱乾燥装置を用いて、125℃−10分の条件でベーク処理を行った。レジスト層の膜厚は50nmとした。ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.12nm/秒であった。
【0271】
続いて、実施例1と同様にして、現像促進層を形成した。このとき、変質層も形成されていた。以上の工程を経て、比較例4におけるレジスト層付マスクブランクを作製した。
【0272】
その後、40nm幅のラインアンドスペースパターン、スペースパターン、ホール径が40nmのホールパターンが形成されるように、露光および現像を行い、レジストパターンを形成した。このとき、現像液によるレジストパターンの溶解が進んで薄くなったため、遮光膜のエッチング時に、マスクとなるべきレジストパターンが消失してしまい、マスクされるべき遮光膜がエッチングされ、遮光膜が消失し、ラインアンドスペースパターンが未解像となった。
【0273】
(比較例5)
比較例5では、実施例9において作製したインプリント用モールドブランクを用いた。
【0274】
得られたモールドブランクのハードマスク膜に対しHMDS処理を所定の条件で施した。その後、ポジ型レジストであって電子線描画用の化学増幅型レジストPRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を、遮光膜上にスピンコートした。
【0275】
その後、加熱乾燥装置を用いて、135℃−10分の条件でベーク処理を行った。レジスト層の膜厚は30nmとした。ベーク処理後のレジスト層の現像液(2.38%TMAH)に対する溶解速度は0.05nm/秒であった。
【0276】
続いて、実施例1と同様にして、現像促進層を形成した。このとき、変質層も形成されていた。以上の工程を経て、比較例5におけるレジスト層付インプリント用モールドブランクを作製した。
【0277】
その後、30nm幅のラインアンドスペースが形成されるように、露光および現像を行い、レジストパターンを形成した。このとき、現像液によるレジストパターンの溶解が進んだため、ハードマスク膜のエッチング時に、マスクとなるべきレジストパターンが消失してしまい、マスクされるべきハードマスク膜がエッチングされ、ハードマスク膜が消失し、基板のエッチングにおいて、ラインアンドスペースパターンが未解像となった。