【文献】
ガラスコード試験方法 強熱減量(LOI),日本,セントラルグラスファイバー株式会社,2017年11月10日,[平成29年11月10日検索],インターネット,,URL,http://www.centralfiberglass.com/jp/glass_fiber/products/gc/gc_test2.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)ポリアミド樹脂と、(B)ガラス繊維と、を、単軸又は多軸の押出機によって前記(B)ポリアミド樹脂を溶融させた状態で混練して、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得る工程を有し、
前記(A)ポリアミド樹脂が、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010、及びポリアミド1012、並びにこれらの少なくとも1種を構成成分として含む共重合ポリアミドからなる群より選ばれる1種以上であり、
前記(B)ガラス繊維は、表面処理剤及び/又は集束剤が塗布されたものであり、
前記(B)ガラス繊維の強熱減量を10回測定したときの平均値Xと、ばらつきσと、が、下記(1)式および(2)式を満たす、
6σ/X×100≦25・・・(1)
0.1≦X≦1.0・・・(2)
前記ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物中のガラス繊維の解繊性の向上方法
(但し、
(A)ポリアミド樹脂と、(B)ポリカルボジイミド化合物を含むガラス繊維集束剤を含有するガラス繊維とを含むガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物であって、
前記(A)の成分中、カルボキシル基末端濃度に対するアミノ基末端濃度の比が0.63以下である、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物、を除く)。
前記表面処理剤及び/又は前記集束剤は、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸と該アクリル酸を除く共重合性モノマーとのコポリマー、前記ホモポリマー又は前記コポリマーと第1級、第2級若しくは第3級アミンとの塩、エポキシ樹脂、並びに、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを含む共重合体からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載のガラス繊維の解繊性の向上方法。
前記表面処理剤及び/又は前記集束剤は、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と、該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体と、を含む共重合体を含む、請求項1又は2に記載のガラス繊維の解繊性の向上方法。
前記ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物が、前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、前記(B)ガラス繊維の含有量が1〜200質量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス繊維の解繊性の向上方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
[ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物]
本実施の形態に係るガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、
(A)ポリアミド樹脂と、(B)ガラス繊維と、を含み、
前記(A)ポリアミド中の50質量%以上は、炭素数/窒素数の比(C/N比)が7以上のポリアミドであり、
前記(B)ガラス繊維は、表面処理剤及び/又は集束剤が塗布されたものであり、
前記(B)ガラス繊維の強熱減量を10回測定したときの平均値Xと、ばらつきσとが、下記(1)式及び(2)式を満たす。
6σ/X×100≦25・・・(1)
0.1≦X≦1.0・・・(2)
【0012】
以下、本実施の形態に係るガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の各構成要素について詳細に説明する。
【0013】
[(A)ポリアミド樹脂]
「ポリアミド樹脂」とは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。本実施の形態で用いられる(A)ポリアミド樹脂としては、特に限定されないが、例えば、(a)ラクタムの開環重合で得られるポリアミド樹脂、(b)ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド樹脂、(c)ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド樹脂、並びにこれらの共重合物が挙げられる。(A)ポリアミド樹脂は、1種で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。以下、本実施の形態における(A)ポリアミド樹脂の原料について説明する。
【0014】
上記(a)ポリアミド樹脂の原料となるラクタムとしては、特に限定されないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカラクタム、及びドデカラクタムなどが挙げられる。
【0015】
また、上記(b)ポリアミド樹脂の原料となるω−アミノカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸などが挙げられる。なお、上記(a)ポリアミド樹脂及び/又は(b)ポリアミド樹脂は、それぞれ2種以上のラクタム又はω−アミノカルボン酸を併用して縮合させたものであってもよい。
【0016】
続いて、上記(c)ポリアミド樹脂の原料となるジアミン(単量体)としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2−メチルペンタンジアミンや2−エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p−キシリレンジアミンやm−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
【0017】
他方、上記(c)ポリアミド樹脂の原料となるジカルボン酸(単量体)としては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸やセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;フタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0018】
上記(c)ポリアミド樹脂は、それぞれ1種単独又は2種以上のジアミン及びジカルボン酸を併用して縮合させたものであってもよい。
【0019】
本実施の形態で用いうる(A)ポリアミド樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、及びポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、並びにこれらの少なくとも1種を構成成分として含む共重合ポリアミドが挙げられる。中でも好ましくは、ポリアミド610、ポリアミド612、及びポリアミド9T、並びにこれらの少なくとも1種を構成成分として含む共重合ポリアミドからなる群より選択された1種以上である。
【0020】
また、上記共重合ポリアミドとしては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合物、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合物、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2−メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合物が挙げられる。
【0021】
本実施形態で用いられる(A)ポリアミド樹脂は、(A)ポリアミド中の50質量%以上が、炭素数/窒素数の比(C/N比)が7以上のポリアミド樹脂であり、C/N比は8以上が好ましい。また、炭素数/窒素数の比(C/N比)の上限は特に限定されないが、15以下が好ましく、12以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。このようなポリアミドを含むことにより、低吸水性、耐ロングライフクーラント(LLC)性、及び耐塩化カルシウム性に優れる。
【0022】
また、炭素数/窒素数の比(C/N比)が7以上であるポリアミド樹脂の含有量は、50質量%以上であり、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%がもっとも好ましい。一般的に、C/Nが7以上の(A)ポリアミド樹脂を50質量%以上含むガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物では、解繊性が悪化する傾向にある。これに対し、本実施の形態に係るガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物では、後述するように、ガラス繊維の強熱減量の平均値Xと、ばらつきσと、が所定の関係を満たすことにより、低吸水性、耐ロングライフクーラント(LLC)性、及び耐塩化カルシウム性により優れるという炭素数/窒素数の比(C/N比)が7以上であるポリアミド樹脂の特性を維持しつつ、その上加工性、特に解繊性に優れるものとなる。
【0023】
炭素数/窒素数の比(C/N比)が7以上であるポリアミド樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010、及びポリアミド1012、及びポリアミド9T並びにこれらの少なくとも1種を構成成分として含む共重合ポリアミドからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。このようなポリアミド樹脂を用いることにより、低吸水性、耐ロングライフクーラント(LLC)性、及び耐塩化カルシウム性により優れる傾向にある。
【0024】
[(B)ガラス繊維]
本実施の形態係るガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、表面処理剤及び/又は集束剤が塗布されている(B)ガラス繊維を含む。表面処理剤及び/又は集束剤が塗布されていることにより、加工性、特に解繊性により優れる。(B)ガラス繊維の表面処理剤及び/又は集束剤としては、特に限定はされないが、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリカルボジイミド化合物、アクリル酸のホモポリマー、及びアクリル酸と該アクリル酸を除く共重合性モノマーとのコポリマー、前記ホモポリマー又は前記コポリマーと第1級、第2級又は第3級アミンとの塩、エポキシ樹脂、並びに、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを含む共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、又は2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記ポリウレタン樹脂としては、(B)ガラス繊維の表面処理剤及び/又は集束剤として一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、m−キシリレンジイソシアナート(XDI)、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)やイソホロンジイソシアナート(IPDI)等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるものが好適に使用できる。
【0026】
上記ポリカルボジイミド化合物としては、特に限定されないが、例えば、一以上のカルボジイミド基(−N=C=N−)を含有する化合物を縮合することにより得られるものが挙げられる。
【0027】
上記アクリル酸のホモポリマーの重量平均分子量は、1,000〜90,000が好ましく、より好ましくは1,000〜50,000であり、さらに好ましくは1,000〜2,5000である。なお、本明細書における重量平均分子量は、GPCにより測定して求めることができる。
【0028】
上記アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーを構成する共重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマー、エステル系モノマーが挙げられる。このような共重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、及びこれらのエステル化合物からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。上記したモノマーのうちエステル系モノマーを1種以上有することが好ましい。
【0029】
上記アクリル酸のホモポリマー又はコポリマーと、第1級、第2級又は第3級アミンと、の塩を形成するアミンとしては、特に限定されないが、具体的には、トリエチルアミン、トリエタノールアミンやグリシンが挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20〜90%が好ましく、30〜80%がより好ましく、40〜60%がさらに好ましい。
【0030】
上記塩を形成するアクリル酸のホモポリマー又はコポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、3,000〜50,000が好ましい。重量平均分子量が3,000以上であることにより、ガラス繊維の集束性がより向上する傾向にある。また、重量平均分子量が50,000以下であることにより、得られる成形体の機械的特性がより向上する傾向にある。
【0031】
上記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、少なくとも2つ以上のグリシジル基を有する化合物を用いるのが好ましく、中でもビスフェノールとエピハロヒドリンとを反応させることによって得られるエポキシ樹脂が好適である。尚、(B)ガラス繊維の集束性を考慮すると、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、180g/当量以上が好ましく、450〜1900g/当量がより好ましい。
【0032】
本実施の形態に係るガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、表面処理剤及び/又は集束剤として、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と、該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体と、を含む共重合体を含むことが好ましい。このような共重合体を含むことにより、得られる成形体の機械的特性により優れる傾向にある。上記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸や無水シトラコン酸が挙げられる。この中でも無水マレイン酸が好ましい。一方、上記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートが挙げられる。中でもエチレンやスチレン、ブタジエンが好ましい。
【0033】
カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と、該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体と、の組み合わせの中でも、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、及びこれらの混合物がより好ましい。
【0034】
また、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体と、を含む共重合体の重量平均分子量は、2,000以上が好ましく、より好ましくは2,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは5,000〜500,000である。重量平均分子量が上記範囲内であることにより、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。
【0035】
ガラス繊維の表面処理剤及び/又は集束剤として、シランカップリング剤を使用することも好適である。上記シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。中でも、上記の列挙成分から選択される1種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
【0036】
ガラス繊維の表面処理剤及び/又は集束剤を調製する際には潤滑剤を使用することが好適である。潤滑剤としては、特に限定されないが、例えば、目的に適した通常の液体又は固体の任意の滑剤材料が使用可能である。このような潤滑剤としては、特に限定されないが、例えば、カルナウバワックスやラノリンワックス等の動植物系若しくは鉱物系のワックス;脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、若しくは脂肪酸エーテル、又は芳香族系エステル若しくは芳香族系エーテル等の界面活性剤が挙げられる。
【0037】
本実施の形態においては、(B)ガラス繊維の強熱減量を10回測定したときの平均値Xと、ばらつきσ(標準偏差)とが、以下の(1)式及び(2)式を満たす。6σ/X×100は20以下が好ましく、15以下がより好ましい。
6σ/X×100≦25・・・(1)
0.1≦X≦1.0・・・(2)
【0038】
一般に、ガラス繊維に表面処理剤及び/又は集束剤を塗布する場合、ガラス繊維表面において表面処理剤及び/又は集束剤のムラ(塗布量のばらつき)が発生することがある。このばらつきが解繊性に与える影響は顕著であり、解繊性が良好となったり、急に悪化したりすることがある。このような影響は、特に、(A)ポリアミド中の50質量%以上が、炭素数/窒素数の比(C/N比)が7以上のポリアミド樹脂である場合に顕著に表れる傾向にある。しかしながら、本実施の形態においては、6σ/X×100が25以下であることにより、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の加工時の(B)ガラス繊維の解繊性と、得られる成形体の機械的特性とがより優れる。また、ガラス繊維の解繊性に優れるため、得られた組成物を成形した際に成形体表面に(B)ガラス繊維が現れることが抑制され、外観不良をより低減できる。
【0039】
ここでいう平均値X、ばらつきσは一般的な統計学上の公式より求めることができる。また、(B)ガラス繊維を含め、一般的な生産工程の安定性を判断する尺度として、得られたもののデータの平均値に対する広がり幅を判断するために±3σを用いることから、広がり幅6σと平均値Xの関係の比である6σ/X×100をガラス繊維の強熱減量のばらつきの尺度として使用した。なお、6σ/X×100の制御方法は、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維の引取り速度の調整と表面処理剤又は/集束剤の塗布量を適宜制御することで制御することができる。
【0040】
(B)ガラス繊維の強熱減量を10回測定したときの平均値Xは0.1〜1.0であり、好ましくは0.2〜1.0であり、より好ましくは0.2〜0.8であり、さらに好ましくは0.2〜0.6である。Xが0.1以上であることにより、ガラス繊維の表面処理及び/又は集束性をより維持できる傾向にある。一方、X1.0以下であることにより、ガラス繊維の解繊性がより向上する傾向にある。
【0041】
[塗布方法]
(B)ガラス繊維は、表面処理剤及び/又は集束剤が塗布されたものである。ガラス繊維の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、公知のガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、上記のガラス繊維の表面処理剤及び/又は集束剤を、ガラス繊維に塗布してガラス繊維ストランドを製造し、製造したガラス繊維ストランドを乾燥することによって連続的に反応させて得ることができる。
【0042】
なお、(B)ガラス繊維の状態としては、特に限定されないが、例えば、上記ガラス繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。なお、ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、又はストランドを乾燥した後に切断してもよい。
【0043】
かかるガラス繊維の表面処理剤及び/又は集束剤の使用量は、ガラス繊維100質量%に対し、固形分率として0.1〜1.0質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜1.0質量%であり、さらに好ましくは0.2〜0.8質量%であ、もっとも好ましくは0.2〜0.6質量%である。ガラス繊維の表面処理剤及び/又は集束剤の使用量が、ガラス繊維100質量%に対し、固形分率として0.1質量%以上であることにより、ガラス繊維の表面処理及び/又は集束性をより維持できる傾向にある。一方、使用量がガラス繊維100質量%に対し、固形分率として1.0質量%以下であることにより、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の熱安定性がより向上する傾向にある。
【0044】
ここで、上記した(A)ポリアミド樹脂100質量部に対し、上記の(B)ガラス樹脂の含有量は、好ましくは1〜200質量部であり、より好ましくは5〜150質量部であり、さらに好ましくは15〜100質量部である。(B)ガラス樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の流動性及び得られる成形体の外観が共に一層優れたものとなる傾向にある。
【0045】
[(C)結晶核剤]
本実施の形態に係るガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、(C)結晶核剤をさらに含むことが好ましい。(C)結晶核剤を含むことにより、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の成形性がより優れる傾向にある。(C)結晶核剤としては、特に限定されないが、例えば、タルク、窒化ホウ素、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、窒化珪素、フェニルホスホン酸亜鉛、カーボンブラック、チタン酸カリウム、及び二硫化モリブデンからなる群から選択される1種以上が挙げられる。このなかでも、造核剤効果の観点から、タルク、窒化ホウ素、カーボンブラック、マイカ、カオリン、及びフェニルホスホン酸亜鉛からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、タルク、窒化ホウ素、及びカーボンブラックからなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。なお、(C)結晶核剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
また、(C)結晶核剤の数平均粒子径は、0.01〜10μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましく、1〜10μmがさらに好ましい。数平均粒子径が上記範囲内であることにより、核剤効果により優れる傾向にある。(C)結晶核剤の数平均粒子径の測定は、成形体をギ酸などのポリアミドが可溶な溶媒で溶解し、得られた不溶成分の中から、100個の核剤を任意に選択し、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)などで観察し、その平均を算出することにより求めることができる。
【0047】
ここで、上記した(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、上記の(C)結晶核剤の含有量は、好ましくは0.001〜0.9質量部であり、より好ましくは0.001〜0.5質量部であり、さらに好ましくは0.001〜0.09質量部である。含有量を0.001質量部以上とすることにより、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の耐熱性が一層向上する傾向にある。また、含有量を0.9質量部以下とすることにより、一層靭性に優れる成形体が得られる傾向にある。
【0048】
[熱安定剤]
本実施の形態に係るガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物おいては、さらに熱安定剤を添加してもよい。熱安定剤としては、特に限定されないが、好ましい熱安定剤としては、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物と、を含む混合物である。
【0049】
上記銅塩としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化銅(ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅など)、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅及びステアリン酸銅、並びにエチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤に銅の配位した銅錯塩が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
上記で列挙した銅塩の中でも、好ましくはヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅及び酢酸銅よりなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはヨウ化銅及び/又は酢酸銅である。上記銅塩を用いることにより、得られる成形体の耐熱エージング性に優れ、且つ押出時のスクリューやシリンダー部の金属腐食(以下、単に「金属腐食」ともいう)を抑制可能なガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得ることができる傾向にある。
【0051】
ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物中の銅塩の含有量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.2質量部であり、より好ましくは0.01〜0.15質量部であり、さらに好ましくは0.02〜0.15質量部である。含有量が上記範囲内であることにより、得られる成形体の耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を抑制可能なガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得ることができる傾向にある。
【0052】
また、(B)ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物100質量%に対し、銅元素の含有濃度として、好ましくは20〜1000ppmであり、より好ましくは30〜500ppmであり、さらに好ましくは50〜300ppmである。銅元素の含有濃度が上記範囲内であることにより、得られる成形体の耐熱エージング性がより向上する傾向にある。
【0053】
上記アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、特に限定されないが、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム及び塩化ナトリウム、並びにこれら2種以上の混合物が挙げられる。中でも、好ましくはヨウ化カリウム及び臭化カリウム、並びにこれらの混合物であり、より好ましくはヨウ化カリウムである。上記アルカリ金属のハロゲン化物及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物を用いることにより、得られる成形体の耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を抑制可能なガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得ることができる傾向にある。
【0054】
ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物中のアルカリ金属のハロゲン化物及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部であり、より好ましくは0.1〜3質量部であり、さらに好ましくは0.2〜2質量部である。含有量が上記の範囲内であることにより、得られる成形体の耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を抑制可能なガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得ることができる傾向にある。
【0055】
銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物とのモル比(ハロゲン/銅)は、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物全体において、2〜50が好ましく、より好ましくは10〜40であり、さらに好ましくは15〜30である。モル比(ハロゲン/銅)が2以上であることにより、得られる成形体の耐熱エージング性を一層向上させることができ、また銅の析出及び金属腐食を抑制することができる傾向にある。一方、上記のモル比(ハロゲン/銅)が50以下であることにより、耐熱性、靭性などの機械的な物性を殆ど損なうことなく、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を用いて成形体を得る際の成形機のスクリュー等の腐食を防止できる傾向にある。尚、ここでいうハロゲンのモル数は、銅塩としてハロゲン化銅を使用した場合、ハロゲン化銅に由来するハロゲンと、アルカリ又はアルカリ土類金属のハロゲン化物に由来するハロゲンの合計モル数を意味する。
【0056】
[ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物に含まれうる他の成分]
上記した成分の他に、本実施の形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じてさらに他の成分を添加してもよい。他の成分としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維以外の無機充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光劣化防止剤、可塑剤、滑剤、離型剤、難燃剤、着色剤、染色剤や顔料などを添加してもよいし、他の熱可塑性樹脂を混合してもよい。ここで、上記した他の成分はそれぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての、好適な含有率は様々である。そして、当業者であれば、上記した他の成分ごとの好適な含有率は容易に設定可能である。
【0057】
[ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の製造方法]
本実施の形態において、(B)ガラス繊維、(A)ポリアミド樹脂、及びその他の成分を複合化する方法としては、特に限定されないが、例えば、単軸又は多軸の押出機によってポリアミド樹脂を溶融させた状態で混練する方法が挙げられる。チョップドストランドを用いる場合、上流側供給口と下流側供給口とを備えた二軸押出機を使用し、上流側供給口からポリアミド樹脂を供給して溶融させた後、下流側供給口からチョップドストランドを供給して溶融混練する方法を用いることが好ましい。また、ガラス繊維ロービングを用いる場合も、公知の方法で複合することができる。
【0058】
このようにして得られるガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、特に限定されること
なく、例えば、射出成形による各種部品の成形体として利用できる。
【0059】
〔成形体〕
本実施の形態に係る成形体は、上記ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を含む。本実施の形態に係る成形体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、射出成形、ブロー成形、シート成形等により得ることができる。このようにして得られた成形体は、例えば、自動車用、機械工業用、電気・電子用、産業資材用、工業材料用、日用・家庭品用として好適に使用できる。
【実施例】
【0060】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0061】
[評価方法]
以下では、実施例及び比較例で行った評価の方法について説明する。
【0062】
<強熱減量(ガラス繊維の表面処理剤及び/又は集束剤の付着量)>
ガラス繊維の表面処理剤及び/又は集束剤により処理されたガラス繊維を、10g精秤した後、650℃の電気炉において1時間加熱した。この間の質量減少分を強熱減量(ガラス繊維の表面処理剤及び/又は集束剤の付着量)とした。この操作を同一のガラス繊維について10回分実施し付着量の平均値Xとばらつきσを算出した。
【0063】
<シャルピー衝撃強度>
実施例及び比較例で得られたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレットを、射出成形機(PS−40E:日精樹脂株式会社製)を用いて、ISO 3167に準拠し、多目的試験片A型の成形片に成形した。成形条件は、射出及び保圧の時間25秒、冷却時間15秒、金型温度80℃、溶融樹脂温度290℃に設定した。得られた成形片を切削して、厚さ80mm×巾10mm×長さ4mmの多目的試験片(A型)を作製した。該多目的試験片(A型)を用いて、ISO 179/1eAに準拠し、成形体のノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。
【0064】
<引張強度>
上記シャルピー衝撃強度試験で作製した多目的試験片(A型)を用いて、ISO 527に準拠し、引張速度5mm/分で引張試験を行い、引張強度を測定した。
【0065】
<解繊性の評価>
実施例及び比較例で得られたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレットを、1kg秤量した後、ペレット断面からガラス繊維の束が0.5mm以上飛び出しているペレットを未解繊ペレットとして分別し、未解繊ペレットの個数を数えた。この操作を10回実施し、その平均値を未解繊の数とした。
【0066】
<吸水率(%)>
上記シャルピー衝撃強度試験で作製した多目的試験片(A型)を用いて、成形後の絶乾状態(dry as mold)で、試験前質量(吸水前質量)を測定した。次いで、多目的試験片(A型)を80℃の純水中に24時間浸漬させた。その後、水中から試験片を取り出し、表面の付着水分をふき取り、恒温恒湿(23℃、50RH%)雰囲気下に30分放置後、試験後質量(吸水後質量)を測定した。吸水前質量に対しての吸水後質量の増分を吸水量とし、吸水前質量に対する吸水量の割合を求めた。この操作を3回実施し、その平均値を成形体の吸水率(%)とした。
【0067】
<浸漬後の引張強度保持率(%)>
上記シャルピー衝撃強度試験で作製した多目的試験片(A型)を、130℃のエチレングリコール50%水溶液(LLC)に24時間浸漬した試験片と、720時間浸漬した試験片を準備した。これら2種類の試験片を室温に放置した後、引張試験を行い、引張強度を測定した。720時間浸漬後に測定した引張強度の、24時間浸漬後に測定した引張強度に対する割合を浸漬後の引張強度保持率として求めた。
【0068】
<耐塩化カルシウム性>
(1)上記シャルピー衝撃強度試験で作製した多目的試験片(A)を90℃で48時間熱水浸漬処理した後、(2)試験片を片持ち曲げ装置に装着して、(3)支点にかかる応力が200kg/cm
2なるように試験片端に荷重をつけた。(4)支点部試験片表面にガーゼをのせ試験片上にクリップで固定し、(5)5%塩化カルシウム溶液をガーゼに染み込ませ、100℃のオーブンで2時間放置した。(6)オーブンより取出した後、23℃で1時間さらに放置した。(7)上記(4)〜(6)を20サイクル繰り返し、20サイクル後に試験片を取出し、水洗後、クラックの有無を目視で観察した。クラック発生したものは×、クラック発生が認められなかったものは○とした。
【0069】
[原料の調製]
1.ポリアミド樹脂
<製造例1:ポリアミド610(以下、「PA−1」と略記する)>
ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との等モル塩1600kgを蒸留水に添加し、原料モノマーの50質量%水溶液を得た。得られた水溶液を、下部に放出ノズルを有する約4,000リットル容のオートクレーブ中に仕込み、50℃で混合しつつオートクレーブ内を窒素で置換した。
【0070】
続いて、温度を50℃から約150℃まで約1時間かけて昇温した。その際、オートクレーブ内の圧力を0.15MPa程度(ゲージ圧)に保つため、水を系外に除去しながら加熱を続けた。その後、オートクレーブを密閉状態にし、温度を150℃から約220℃まで約1時間かけて昇温して圧力を1.77MPa程度(ゲージ圧)まで上昇させた。
【0071】
続いて、温度を約220℃から約270℃まで約1時間かけて昇温する一方、圧力は約1.77MPaに維持させつつ水を系外に除去していくことで加熱を行った。その後、約1時間かけて圧力を大気圧まで減圧し、大気圧になった後、下部ノズルからストランド状にペレットを排出して、水冷、カッティングを行い、PA−1のペレットを得た。得られたペレットを窒素気流中、90℃で4時間乾燥した。PA−1の98%硫酸相対粘度[ηr:25℃、1g/100ml]は2.51、C/N比=8であった。なお、本明細書における硫酸相対粘度の測定方法として、JIS K 6920を採用した。
【0072】
<製造例2:ポリアミド66(以下、「PA−2」と略記する)>
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1500g、並びに全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの50質量%水溶液を得た。得られた水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内を窒素で置換した。この水溶液を、110〜150℃の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を220℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま内部温度が270℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
【0073】
その後、約1時間かけて圧力を大気圧まで減圧し、大気圧になった後、下部ノズルからストランド状にペレットを排出して、水冷、カッティングを行い、PA−2のペレットを得た。得られたペレットを窒素気流中、90℃で4時間乾燥した。PA−2の98%硫酸相対粘度[ηr:25℃、1g/100ml]は2.71、C/N比=6であった。
【0074】
[ガラス繊維の製造]
<製造例3>
まず、固形分として、ポリウレタン樹脂2質量%、エチレン無水マレイン酸共重合体6質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%、カルナウバワックス0.1質量%となるように水で希釈し、ガラス繊維の表面処理剤と集束剤の混合液を得た。
【0075】
得られた混合液を、溶融防糸された平均直径10μmのガラス繊維に対して、回転ドラムに巻き取られる途中に設けたアプリケーターによって塗布した。この際、混合液がガラス繊維100wt%に対して0.45±0.05wt%になるように設定して、塗布した。そして、その後に乾燥することによって、上記ガラス繊維が表面処理剤及び集束剤で処理されたガラス繊維束のロービングを得た。その際、ガラス繊維は1,000本の束となるようにした。ガラス繊維の表面処理剤及び集束剤の塗布量は、0.45質量%であった。これを3mmの長さに切断して、ガラス繊維チョップドストランド(以下、「GF−1」と略記する)を得た。
【0076】
<製造例4>
まず、固形分として、ポリウレタン樹脂2質量%、エチレン無水マレイン酸共重合体6質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%、カルナウバワックス0.1質量%となるように水で希釈し、ガラス繊維の表面処理剤と集束剤の混合液を得た。
【0077】
得られた混合液を、溶融防糸された平均直径10μmのガラス繊維に対して、回転ドラムに巻き取られる途中に設けたアプリケーターによって塗布した。この際、混合液がガラス繊維100wt%に対して0.45±0.1wt%になるように設定して、塗布した。そして、その後に乾燥することによって、上記ガラス繊維が表面処理剤及び集束剤で処理されたガラス繊維束のロービングを得た。その際、ガラス繊維は2,000本の束となるようにした。ガラス繊維の表面処理剤及び集束剤の塗布量は、0.46質量%であった。これを3mmの長さに切断して、ガラス繊維チョップドストランド(以下、「GF−2」と略記する)を得た。
【0078】
<製造例5>
まず、固形分として、ポリウレタン樹脂2質量%、ビスフェノールA系エポキシ樹脂(エポキシ当量450g/当量)6質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%、カルナウバワックス0.1質量%となるように水で希釈し、ガラス繊維の表面処理剤と集束剤の混合液を得た。
【0079】
得られた混合液を、溶融防糸された平均直径10μmのガラス繊維に対して、回転ドラムに巻き取られる途中に設けたアプリケーターによって塗布した。この際、混合液がガラス繊維100wt%に対して0.4±0.05wt%になるように設定して、塗布した。そして、その後に乾燥することによって、上記ガラス繊維が表面処理剤及び集束剤で処理されたガラス繊維束のロービングを得た。その際、ガラス繊維は1,000本の束となるようにした。ガラス繊維の表面処理剤及び集束剤の塗布量は、0.38質量%であった。これを3mmの長さに切断して、ガラス繊維チョップドストランド(以下、「GF−3」と略記する)を得た。
【0080】
<製造例6>
まず、固形分として、ポリウレタン樹脂2質量%、ビスフェノールA系エポキシ樹脂(エポキシ当量450g/当量)6質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%、カルナウバワックス0.1質量%となるように水で希釈し、ガラス繊維の表面処理剤と集束剤の混合液を得た。
【0081】
得られた混合液を、溶融防糸された平均直径10μmのガラス繊維に対して、回転ドラムに巻き取られる途中に設けたアプリケーターによって塗布した。この際、混合液がガラス繊維100wt%に対して0.4±0.1wt%になるように設定して、塗布した。そして、その後に乾燥することによって、上記ガラス繊維が表面処理剤及び集束剤で処理されたガラス繊維束のロービングを得た。その際、ガラス繊維は2,000本の束となるようにした。ガラス繊維の表面処理剤及び集束剤の塗布量は、0.38質量%であった。これを3mmの長さに切断して、ガラス繊維チョップドストランド(以下、「GF−4」と略記する)を得た。
【0082】
<製造例7>
まず、固形分として、ポリウレタン樹脂2質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%、カルナウバワックス0.1質量%となるように水で希釈し、ガラス繊維の表面処理剤と集束剤の混合液を得た。
【0083】
得られた混合液を、溶融防糸された平均直径10μmのガラス繊維に対して、回転ドラムに巻き取られる途中に設けたアプリケーターによって塗布した。この際、混合液がガラス繊維100wt%に対して0.1±0.05wt%になるように設定して、塗布した。そして、その後に乾燥することによって、上記ガラス繊維が表面処理剤及び集束剤で処理されたガラス繊維束のロービングを得た。その際、ガラス繊維は2,000本の束となるようにした。ガラス繊維の表面処理剤及び集束剤の塗布量は、0.10質量%であった。これを3mmの長さに切断して、ガラス繊維チョップドストランド(以下、「GF−5」と略記する)を得た。
【0084】
<製造例8>
まず、固形分として、ポリウレタン樹脂2質量%、エチレン無水マレイン酸共重合体6質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%、カルナウバワックス0.1質量%となるように水で希釈し、ガラス繊維の表面処理剤と集束剤の混合液を得た。
【0085】
得られた混合液を、溶融防糸された平均直径10μmのガラス繊維に対して、回転ドラムに巻き取られる途中に設けたアプリケーターによって塗布した。この際、混合液がガラス繊維100wt%に対して1.2±0.05wt%になるように設定して、塗布した。そして、その後に乾燥することによって、上記ガラス繊維が表面処理剤及び集束剤で処理されたガラス繊維束のロービングを得た。その際、ガラス繊維は2,000本の束となるようにした。ガラス繊維の表面処理剤及び集束剤の塗布量は、1.20質量%であった。これを3mmの長さに切断して、ガラス繊維チョップドストランド(以下、「GF−6」と略記する)を得た。
【0086】
[結晶核剤]
カーボンブラック(以下、「CB」と略記する)
商品名:三菱(登録商業)カーボンブラック#980(三菱化学社製)
【0087】
[実施例1〜2、比較例1〜4、参考例1〜3]
押出機の上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、且つ9番目のバレルに下流側供給口を有する、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機(ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ))を用いた。上記二軸押出機において、上流側供給口からダイまでを290℃、スクリュー回転数300rpm、及び吐出量25kg/時間に設定した。かかる条件下で、下記表1の上部に記載された割合となるように、上流側供給口より上記製造例1又は2で作製したポリアミド樹脂、CBを供給し、下流側供給口より製造例3〜8で作製したガラス繊維チョップドストランドを供給した。そして、これらを溶融混練することでガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレットを製造した。得られたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を用いて各評価をした。これらの評価結果などを下記表1に記載した。
【0088】
【表1】
【0089】
表1より、実施例1と比較例1とを比較すると、式(1)の要件を満たす実施例1は機械的特性と解繊性に優れることが確認された。一方で、式(1)の要件を満たさない比較例1は未解繊ペレットが多発し、解繊性に劣ることが確認された。
【0090】
また、実施例2と比較例2とを比較すると、ガラス繊維の集束剤としてエポキシ樹脂等の他種のものを用いた場合でも、6σ/X×100をコントロールすることで解繊性に優れることが確認された。さらに、実施例1と実施例2を比較すると、ガラス繊維の集束剤としてカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と、該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体と、を含む共重合体を用いることにより、解繊性の改善効果、及び機械的特性がより良好であることが確認された。尚、参考例1〜3のように、C/N比が7未満であるポリアミド66では、解繊性の課題がないことがわかり、解繊性はC/N比が7以上のポリアミドに特有の課題であることが確認された。すなわち、C/Nが7以上のポリアミド樹脂では、強度を向上させるために表面処理剤及び/又は集束剤を使用すると、これにより強度は向上する傾向にあるが、解繊性が悪化する傾向にあることが分かった。これに対し、本発明では、ガラス繊維の強熱減量の平均値Xと、ばらつきσと、が所定の関係を満たすことにより、C/Nが7以上のポリアミド樹脂を用いた場合にでも解繊性に優れることが分かった。