特許第6456052号(P6456052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6456052燃料電池用の流路装置、燃料電池並びに燃料電池積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456052
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】燃料電池用の流路装置、燃料電池並びに燃料電池積層体
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0258 20160101AFI20190110BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20190110BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20190110BHJP
【FI】
   H01M8/0258
   H01M8/249
   H01M8/10 101
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-131440(P2014-131440)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-11996(P2015-11996A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2017年6月21日
(31)【優先権主張番号】10 2013 212 180.6
(32)【優先日】2013年6月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マークス ケッテラー
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン マース
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−051060(JP,A)
【文献】 特開2007−213855(JP,A)
【文献】 特開2003−346841(JP,A)
【文献】 特開2001−185173(JP,A)
【文献】 特開2007−179910(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0099479(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0258
H01M 8/249
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池(10)用の流路装置(1)であって、
当該流路装置(1)は少なくとも、流入開口部(4)を備えた流入区間(2)と、流出開口部(5)を備えた流出区間(3)とを有しており、
前記流入区間(2)は、前記燃料電池(10)の活性面(11)の第1の側(12)に流体を供給するように構成されており、
前記流出区間(3)は、前記燃料電池(10)の前記活性面(11)の第2の側(13)から前記流体を排出するように構成されており、
少なくとも2つの流路(20、21、22)が、前記流入開口部(4)から前記活性面(11)を通って、前記流出開口部(5)へと、前記流体のために通流可能である、流路装置において、
前記少なくとも2つの流路(20、21、22)の長さが同じであるように、前記流入区間(2)と前記流出区間(3)とが前記燃料電池(10)に配置されており
前記流入開口部(4)が前記活性面(11)の前記第1の側(12)に対して垂直に配置され、かつ、前記流出開口部(5)が前記活性面(11)の前記第2の側(13)に対して垂直に配置されるように、前記流入区間(2)と前記流出区間(3)とが前記活性面(11)に対して配置されており、
ここで前記流入区間(2)と前記流出区間(3)とは、前記活性面(11)に関して対角線上に配置されている、
ことを特徴とする、燃料電池(10)用の流路装置(1)。
【請求項2】
前記流路装置(1)は、燃料流体または冷却流体を案内するように構成されている、請求項1載の、燃料電池(10)用の流路装置(1)。
【請求項3】
活性面(11)と流路装置(1)とを備えた燃料電池(10)であって、
当該流路装置(1)は少なくとも、流入開口部(4)を備えた流入区間(2)と、流出開口部(5)を備えた流出区間(3)とを有しており、
前記流入区間(2)は、前記燃料電池(10)の活性面(11)の第1の側(12)に流体を供給するように構成されており、
前記流出区間(3)は、前記燃料電池(10)の前記活性面(11)の第2の側(13)から前記流体を排出するように構成されており、
少なくとも2つの流路(20、21、22)が、前記流入開口部(4)から前記活性面(11)を通って、前記流出開口部(5)へと、前記流体のために通流可能である、燃料電池において、
前記少なくとも2つの流路(20、21、22)の長さが同じであるように、前記流入区間(2)と前記流出区間(3)とが前記燃料電池(10)に配置されており
前記流路装置(1)は、
前記流入開口部(4)が前記活性面(11)の前記第1の側(12)に対して垂直に配置され、かつ、前記流出開口部(5)が前記活性面(11)の前記第2の側(13)に対して垂直に配置されるように、前記流入区間(2)と前記流出区間(3)とが前記活性面(11)に対して配置されており、ここで前記流入区間(2)と前記流出区間(3)とは、前記活性面(11)に関して対角線上に配置されている、流路装置(1)である、
ことを特徴とする燃料電池(10)。
【請求項4】
前記流路装置(1)は、燃料流体または冷却流体を案内するように構成されている流路装置(1)である、請求項記載の燃料電池(10)。
【請求項5】
前記流入区間(2)と前記活性面(11)の前記第1の側(12)との間、および/または前記活性面(11)の前記第2の側(13)と前記流出区間(3)との間に、分配構造(14)が配置されている、請求項3または4記載の燃料電池(10)。
【請求項6】
前記燃料電池(10)は、ポリマー電解質燃料電池(10)である、請求項からまでのいずれか1項記載の燃料電池(10)。
【請求項7】
少なくとも2つの燃料電池(10)を有しており、
前記少なくとも2つの燃料電池(10)のうちの少なくとも1つは、請求項からまでのいずれか1項に記載の燃料電池(10)である、
ことを特徴とする燃料電池積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載された、燃料電池用の流路装置(Leitungsvorrichtung)に関する。この流路装置は少なくとも、流入開口部を備えた流路区間と、流出開口部を備えた流出区間とを有している。ここでこの流入区間は、流体を、燃料電池の活性面の第1の側へと供給するように構成されており、流出区間は、燃料電池の活性面の第2の側から流体を排出するように構成されており、流体のために少なくとも2つの流路が、流入開口部から、活性面を通って、流出開口部へと通流可能である。さらに本発明は、請求項5の上位概念に記載されている燃料電池に関する。この燃料電池は活性面と、流路装置とを有している。この流路装置は、少なくとも、流入開口部を備えた流入区間と、流出開口部を備えた流出区間とを有している。ここでこの流入区間は、流体を、燃料電池の活性面の第1の側に供給するように構成されており、流出区間は、流体を、燃料電池の活性面の第2の側から排出するように構成されており、流体のために少なくとも2つの流路が、流入開口部から、活性面を通って、流出開口部へと通流可能である。さらに、本発明は、少なくとも2つの燃料電池を有する燃料電池積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、殊に、水素のみによって動作する燃料電池は、今日、純粋な水だけを廃棄物として放出するので、将来の動力として有効である。このような燃料電池は活性面を有しており、この活性面において水素の反応、ひいては電気エネルギーの生成が生じる。燃料電池に流体、例えば、反応に必要な燃料または冷却流体を供給するために、この流体は燃料電池に供給されなければならない。このために、流路装置が設けられている。この流路装置は、流体の供給および排出のために使用される。流路装置は、燃料電流の活性面に配置され、燃料電池の他のコンポーネント、例えばバイポーラプレート、電流取り出しプレートまたは終端プレートの隣で、燃料電池の構成部分を形成する。
【0003】
燃料電池の効率的な動作を保証するためには、供給された流体を、燃料電池内に均一に分布させることが必要である。これは、この流体が例えば燃料であるのか、または、冷却剤であるのかに依存しない。図1には、従来技術に即した、燃料電池10内の流路装置1の配置が示されている。これは殊に、流入区間2と流出区間3とを有している。流路装置1の流入区間2はここで、流入開口部4を有している。この流入開口部4は、Y方向23において、燃料電池10の活性面11の第1の側12に直接的に対向している。流路装置1の流出区間3の流出開口部5は、相応に、Y方向23において、活性面11の第2の側13に対向している。例として、3つの流路20、21、22が示されている。この上を、流路装置1を通って供給されたないしは排出される流体が、流入区間2から、活性面11を通って、流出区間3へと流れることができる。3つの流路の長さが著しく異なっていることが明らかに見て取れる。ここでは殊に、X方向24における、流路20、21、22のコンポーネントがこの差をもたらしている。しかし流体が流れる際には、最も小さい抵抗を有している流路20、21、22が有利である。この抵抗は、流路20、21、22の長さに依存している。従って、流体が流れるのには、より長さが短い流路20、21、22が有利である。これは、図示の例では、流路22である。これによって、燃料電池10の活性面11における流体の均一な分布は実現されず、保証もされない。従来技術では、分配構造14を設けることが公知である。これによって、活性面11への流体供給における差が阻止される。しかしこのような分配構造14の製造は極めて手間がかかる。さらに分配構造14は、コストがかかり、かつ、供給された流体用の流れ抵抗を高めてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、燃料電池用の公知の流路装置、公知の燃料電池および燃料電池積層体の上述した欠点を少なくとも部分的に除去するということである。殊に、本発明の課題は、できるだけ容易かつ低コストに、燃料電池の活性面での流体の均一な分布を保証する、燃料電池用の流路装置、燃料電池並びに燃料電池積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題は、少なくとも2つの流路の長さが同じまたは実質的に同じであるように、流入区間と流出区間とが燃料電池に配置可能である、燃料電池用の流路装置によって解決される。また、上述の課題は、少なくとも2つの流路の長さが同じまたは実質的に同じであるように、流入区間と流出区間とが燃料電池に配置されている、ことを特徴とする燃料電池によって解決される。また、上述の課題は、少なくとも2つの燃料電池を有しており、少なくとも2つの燃料電池のうちの少なくとも1つが上記の燃料電池である、ことを特徴とする燃料電池積層体によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】冒頭部分に記載した従来技術
図2】本発明の燃料電池
図3】燃料電池に本発明の流路装置を配置する方法の例
【発明を実施するための形態】
【0007】
上述の課題は、独立請求項1の特徴部分の構成を有する、燃料電池用の流路装置によって、および独立請求項5の特徴部分の構成を有する燃料電池によって、並びに、請求項9の特徴部分の構成を有する燃料電池積層体によって解決される。本発明の別の特徴および詳細は、従属請求項、明細書および図面から明らかである。ここで、本発明の流路装置に関連して記載された特徴および詳細は、当然ながら、本発明の燃料電池ないしは本発明の燃料電池積層体との関連においても有効であり、また、この逆も当てはまる。従って、個々の発明の態様に対する開示内容に関して、常に、相互関係がとられる、ないしは相互関係を取ることができる。
【0008】
本発明の第1の態様では、この課題は、燃料電池用の流路装置によって解決される。ここでこの流路装置は少なくとも、流入開口部を備えた少なくとも1つの流路区間と、流出開口部を備えた少なくとも1つの流出区間とを有している。ここで流入区間は、燃料電池の活性面の第1の側に流体を供給するように構成されており、流出区間は、燃料電池の活性面の第2の側から流体が排出されるように構成されている。さらに、流体用に少なくとも2つの流路が、流入開口部から、活性面を通って、流出開口部へと通流可能である。殊に、本発明の流路装置は、次の特徴を有している。すなわち、少なくとも2つの流路が同じ長さ、または実質的に同じ長さになるように、流入開口部と流出開口部とを、燃料電池に配置することができるという特徴を有している。
【0009】
本発明の流路装置によって、流路装置が配置されている燃料電池に、流体が供給される。この流体はここで、例えば、冷却用流体、例えば脱イオン化された水または水とグリコールとの混合液または反応剤として使用される燃料である。本発明の流路装置はここで少なくとも、流入区間と流出区間とを有している。流入区間と流出区間は、ここで殊に、燃料電池の活性面に配置可能である。この配置はここで殊に次のように行われる。すなわち、流入区間が活性面の第1の側に配置され、流出区間が活性面の第2の側に配置されるように行われる。動作時に、流体は、流入区間の流入開口部から流れ出る。流入開口部と燃料電池の活性面との間に、集積容器を設けることができる。この中で流体は殊に自身で分布する。流体はこれに続いて、活性面の第1の側へと流れ、活性面を通り、活性面の第2の側から、流出区間内の流出開口部へと流れる。ここでこの第2の側と、排出部分との間にも同様に、集積容器を設けることができる。流体の流れに対してはここで、少なくとも2つの流路が可能である。これらは殊に、活性面の2つの貫通可能性によって生じ得る。当然ながら、2つよりも多くの流路も可能である。ここで本発明の流路は、殊に、例えば流路部材によって設定される流れの可能性ではなく、流れの道である。流体は少なくとも活性面外で、これに、別の流路を用いずに従う。要約すると、流体は、流入区間の流入開口部から流れ出て、活性面を通り、再び流出区間内の流出開口部を通って流路装置内に入る。殊に、流体が活性面に均一に分布することを保証するために、本発明では、流入区間と流出区間とが既に次のように燃料電池に配置可能である。すなわち、種々の流路の長さが同じまたは実質的に同じになるように、配置可能である。これによって、いずれの流路にも流体が特に有利に流れることがなくなることが保証される。流路の、同じまたは実質的に同じ長さによって、次のことが保証される。すなわち、別の、長さに依存しない要因を無視すれば、全ての流路に対して流体が流れる確率が同じまたは実質的に同じである、ということが保証される。殊にこれによって、全ての、可能な流路を均一に流れる。燃料電池に、本発明と相応に、流入区間と流出区間とを設けることによって、この配置のみによって次のことが保証される。すなわち、燃料電池の活性面内で流体の均一な分布が実現されることが保証される。コストのかかる分配構造はこのようにして回避される。これによって全体的に、本発明の流路装置は特に容易かつ低コストに、燃料電池に均一に流体を供給することができる。
【0010】
本発明の流路装置では、さらに、流入開口部が活性面の第1の側と同じ幅または実質的に同じ幅を有し、流出開口部が活性面の第2の側と同じ幅または実質的に同じ幅を有する。これによって、流入開口部が活性面の第1の側に対して平行または実質的に平行に配置可能であり、流出開口部が活性面の第2の側に対して平行または実質的に平行に配置可能であるように、流入区間と流出区間とを活性面に配置することができる。これによって、流路装置の流入区間は活性面の第1の側に直接的に対向し、流路装置の流出区間は、活性面の第2の側に直接的に隣接する。この流体は、流入開口部の幅全体にわたって均一に、流路装置から、燃料電池の第1の側の方向において流れる。活性面を通って流れた後、この流体は、再び、流出開口部の幅全体にわたって、流出区間内に流れ込む。このようにして特に容易に、全ての可能な流路が、殊に活性面の外側で同じ長さを有していることが保証される。流入開口部と流出開口部は、活性面の第1の側ないしは第2の側と実質的に同じ幅を有しているので、流体の高いスループットが得られる。これは例えば殊に、本発明の流路装置を、燃料電池用の冷却流体をガイドするために使用する場合に、有利である。燃料電池は、この場合には、特に良好かつ迅速に冷却される。理想的な温度領域における燃料電池の動作は、これによって特に容易に可能になる。
【0011】
さらに、本発明の流路装置では、流入区間と流出区間とが次のように活性面に配置可能である。すなわち、流入開口部が活性面の第1の側に対して垂直にまたは実質的に垂直に配置可能であり、流出開口部が活性面の第2の側に対して垂直にまたは実質的に垂直に配置可能であるように配置可能である。ここで、この流入区間と流出区間は、活性面に関して、対角線上にまたは実質的に対角線上に配置可能である。これによって殊に、次のことが保証される。すなわち、流入区間と流出区間とが活性面の外側に位置し、これによって、活性面と流路区間との間に重畳が生じない、ということが保証される。第1の側に対して流入開口部を垂直に配置することによって、流体ははじめに、第1の側に対して平行に流れ、この上方で分配される。このために例えば、集積容器が流入区間の流入開口部と、活性面の第1の側との間に配置される。次に、流体は、この流出方向に対して垂直に、活性面の第1の側を通って、活性面内に流れ込み、これに続き、第2の側を通って活性面から再び出る。活性面から流出した後、流体は、流出区間の流出開口部へと流れる。これは同様に、活性面の第2の側に関して垂直に配置されている。ここでも同様に、活性面の第2の側と、流出区間の流出開口部との間に、集積容器が配置される。このような配置によって、および殊に、活性面に対して対角の流入区間と流出区間の配置によっても、同様に次のことが保証される。すなわち、全ての可能な流路が同じまたは実質的に同じ長さであることが保証される。これによって、全ての可能な流路は、ほぼ同じ圧力降下を有し、これによって、活性面全体にわたった、流体の均一な分布が得られる。活性面に関して流入区間と流出区間とを側方に配置することによって、流入区間と流出区間とを特に省スペースに形成することができる。殊に、燃料電池の空間的に制限された用途、例えばポータブルおよびモバイルの用途において、これは有利である。
【0012】
さらに、本発明の流路装置では、この流路装置は燃料流体または冷却流体を導くように形成されている。殊に、燃料電池の動作に必要な全ての流体が、燃料電池の本発明の流路装置によって供給される。本発明の流路装置のこのような種々の設計バリエーションによって、ここで、各使用されている流体の種々の要求条件に対応することができる。これによって、本発明の流路装置の用途は特に広くなる。
【0013】
本発明の別の態様では、この課題は、活性面と流路装置とを有する燃料電池によって解決される。この流路装置は、少なくとも、流入開口部を備えた流入区間と、流出開口部を備えた流出区間とを有する。ここでこの流入区間は、燃料電池の活性面の第1の側に流体を供給し、流出区間は、燃料電池の活性面の第2の側から流体を流出させるように構成されており、少なくとも2つの流路は流入開口部から活性面を通って、流出開口部へと、流体のために通流可能である。殊に、本発明の燃料電池は次の特徴を有している。すなわち、少なくとも2つの流路が同じまたは実質的に同じ長さであるように、流入区間と流出区間とが燃料電池に配置されるように、流入区間と流出区間とが燃料電池に配置されている、という特徴を有している。
【0014】
殊に別の流路部材を用いずに生じる流路上では、流路の長さが同じまたは実質的に同じなので、流路に沿った圧力降下も同じまたは実質的に同じである。これによって、次のことが実現される。すなわち、全ての可能な流路を流体が同じ確率で流れることが実現される。これによって、燃料電池、殊に燃料電池の活性面に流体を均一に供給することが保証される。コストのかかる流路構造および/または分配構造が、このようにして回避される。付加的にそれぞれ流入区間および/または流出区間と活性面との間に設けられる集積容器も、これによって極めて容易に、かつ殊にこのような流路構造および/または分配構造を用いずに形成され得る。従って燃料電池に流路装置を、本発明と相応に配置することによって、特に低コストに製造可能な燃料電池が実現される。
【0015】
特に有利には、本発明の燃料電池では、流路装置が、本発明の第1の態様に従って形成されている。従って本発明の第1の態様に即した流路装置に対して記載された全体的な利点は、当然ながら、本発明の第1の態様に即したこのような流路装置を有する本発明の燃料電池に対しても生じる。
【0016】
さらに、本発明の燃料電池では、流入区間と活性面の第1の側との間および/または活性面の第2の側と流出区間との間に、分配構造が取り付けられている。このような分配構造によって、種々の流路の長さの平均性がさらに上昇される。流路装置内の配置によって既に、種々の流路が同じまたは実質的に同じ長さであるので、使用されている分配構造は特に容易に形成される。分配構造としては例えばチャネル、流路および/または管状の孔が考えられる。ここですでに、このような容易な分配構造によって、この場合には、種々の流路の長さがさらに調整される。これによって、燃料電池の活性面への流体の特に均一な供給が実現される。
【0017】
さらに、本発明の燃料電池では、燃料電池はポリマー電解質燃料電池である。ポリマー電界質燃料電池はここで低温型燃料電池である。これは殊にプロトン交換膜を有している。流路装置によって供給される流体はここで殊に、酸素、空気、水素および/または冷却流体である。従って流路装置の本発明の配置による燃料電池の活性面における流体の均一な分布によって、一方では、燃料電池の特に高い効率が得られ、他方では、燃料電池の効果的な冷却が得られる。当然ながら、本発明の構造様式に即した別の燃料電池タイプに流路装置を設けることもできる。本発明の燃料電池の特に幅の広い用途が、これによって可能である。
【0018】
本発明の付加的な態様では、この課題は、少なくとも2つの燃料電池を有する燃料電池積層体によって解決される。殊に、本発明の燃料電池積層体は次の特徴を有する。すなわち、少なくとも2つの燃料電池のうちの少なくとも1つが、本発明の第2の態様に従って形成されている、という特徴を有している。従って本発明の第2の態様に従った燃料電池に対して記載された全ての利点は、当然ながら、本発明の第2の対象に従ったこのような燃料電池を少なくとも1つ有している本発明の燃料電池積層体に対しても得られる。
【0019】
本発明の流路装置およびその発展形態並びにその利点、本発明の燃料電池およびその発展形態並びにその利点および本発明の燃料電池積層体およびその発展形態並びにその利点を以降で、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
図2には、本発明の燃料電池10が示されている。燃料電池10はここで、殊に、第1の側12と第2の側13とを備えた活性面11を有している。本発明の燃料電池10には、流路装置1によって、流体が供給される。この流体はここで、例えば水素等の燃料または冷却流体であり得る。この流体はここで、流路装置1の流入区間2の流入開口部4から流れ出て、第1の側12を通って、燃料電池10の活性面11内に入り、これを貫流する。次に、流体は活性面11の第2の側13から再び流出し、流出開口部5を通って、流路装置1の流出区間3内に入る。これは流体を、再び排出する。流入区間2と流出区間3との間のこの流れは、種々の流路20、21、22の上で行われる。これらの、可能な3つの流路20、21、22は、図2に示されている。本発明では、流路装置1の流入区間2と流出区間3は、次のように、燃料電池10の活性面11に関して配置されている。すなわち、流路20、21、22の長さが同じまたは実質的に同じ長さになるように配置されている。これによって、示された流路20、21、22に沿った圧力降下は、各流路20、21、22に対して少なくとも近似的に同じ大きさになる。従って、流路20、21、22のいずれも、貫流時に有利ではない。従って、燃料電池10の全体的な活性面11に均一に、流体が供給される。流路20、21、22の同じ長さまたは実質的に同じ長さは、ここで既に、流路装置1の流入区間2と流出区間3とを、活性面11に関して、本発明と相応に配置することだけで実現される。殊に、X方向24における流路20、21、22の長さはここで、流入区間2と流出区間3とを、図1に示された、従来技術の実施例と比べて対角線上に配置することによって適合される。流入開口部4と活性面11の第1の側12との間にも、活性面11の第2の側13と流出開口部5の間にも配置されている、同様に示された分配構造14は、これによって特に容易に形成され得る。分配構造14のコストのかかる構造が、このようにして回避される。分配構造14は、この場合には、例えば、ガイドプレートを配置するだけで形成される。分配構造14を簡単な集積容器によって形成することも可能である。ここでは、流体はさらなる案内なく、自身で分布する。要約すると、流路装置1を本発明のように配置することによって、殊に図示の実施例では、燃料電池の活性面11に関して、流入区間2と流出区間3とを対角線上に配置することによって、同じ長さないしは実質的に同じ長さの流路20、21、22ひいては燃料電池の活性面11への均一な流体分布が保証される。ここでは、流入区間2の流入開口部4と流出区間3の流出開口部5とがそれぞれ、活性面11の第1の側12ないしは第2の側13に対して垂直に配置されている。さらにこれによって、流入区間2と流出区間3が活性面11外に位置することが保証される。これによって、活性面11と流路区間2、3とは重ならない。
【0021】
図3a、3bおよび3cは、燃料電池10の流路装置1の流入区間2と流出区間3の種々の配置の可能性を示している。3つの図の各々はここで、空気ないしは酸素用の流路装置6と、冷却流体用の流路装置7と、水素用の流路装置8とを有している。当然ながら、ここで燃料電池10は、次のように形成されている。すなわち、個々の流体の意図しない混合が回避されるように形成されている。図3aは、流路装置1の配置を示している。これは既に図2に示されている。全ての流路装置1は、燃料電池10の活性面11に対して対角線上に配置されている。既に図2において記載された全ての利点は、当然ながら、全ての3つの流路装置6、7、8に対して得られる。図3bには、流路装置1の配置の別の例が示されている。ここでも、全ての流路装置1は、燃料電池10の活性面11に関して対角線に配置されている。ここで、冷却流体用の流路装置7と水素用の流路装置8はともに、同じ対角線に関して配置されており、空気用の流路装置6は活性面11の第2の対角線に関して配置されている。当然ながら、種々の流路装置6、7、8の別の区分も可能である。従って、例えば、冷却流体用の流路装置7も、水素用の流路装置8も、活性面11に関して異なる対角線上に配置可能である。種々の要求の仕様の考慮はこのようにして保証される。図3cでは同様に、冷却流体用の流路装置7と、水素用の流路装置8とが、燃料電池10の活性面11に対して対角線上に配置されている。これとは異なり、空気用の流路装置6は、次のように、活性面11に関して配置されている。すなわち、これが活性面11に対して平行であるように配置されている。流路装置6の流体、この場合には空気は、流路装置6の幅全体にわたって流れ出る。これによって、極めて高い体積スループットが得られる。従ってこれによって、特に効率的な、燃料電池10への空気ないしは酸素の供給が保証される。当然ながら、図3a、3bおよび3cに示された、燃料電池10への本発明の流路装置1の配置例を任意に組み合わせることも可能である。これによって、本発明の燃料電池10を、種々の要望に特別に合わせて形成することが可能になる。
図1
図2
図3