特許第6456154号(P6456154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人東京工業大学の特許一覧

<>
  • 特許6456154-回路遮断器 図000017
  • 特許6456154-回路遮断器 図000018
  • 特許6456154-回路遮断器 図000019
  • 特許6456154-回路遮断器 図000020
  • 特許6456154-回路遮断器 図000021
  • 特許6456154-回路遮断器 図000022
  • 特許6456154-回路遮断器 図000023
  • 特許6456154-回路遮断器 図000024
  • 特許6456154-回路遮断器 図000025
  • 特許6456154-回路遮断器 図000026
  • 特許6456154-回路遮断器 図000027
  • 特許6456154-回路遮断器 図000028
  • 特許6456154-回路遮断器 図000029
  • 特許6456154-回路遮断器 図000030
  • 特許6456154-回路遮断器 図000031
  • 特許6456154-回路遮断器 図000032
  • 特許6456154-回路遮断器 図000033
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6456154
(24)【登録日】2018年12月28日
(45)【発行日】2019年1月23日
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 83/02 20060101AFI20190110BHJP
   H01H 9/54 20060101ALI20190110BHJP
   H01H 33/59 20060101ALN20190110BHJP
【FI】
   H01H83/02 E
   H01H9/54 A
   !H01H33/59 B
【請求項の数】7
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-7868(P2015-7868)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2016-134274(P2016-134274A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年12月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/次世代パワーエレクトロニクス/次世代パワーモジュールの応用に関する基盤研究開発/次世代パワーモジュールを使用したパワーエレクトロニクス機器とその統合システムの包括的研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】赤木 泰文
(72)【発明者】
【氏名】萩原 誠
【審査官】 杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/038008(WO,A1)
【文献】 特開2003−123599(JP,A)
【文献】 特開2014−235834(JP,A)
【文献】 特開昭62−123921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 83/00−83/22
H01H 9/54− 9/56
H01H 33/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外部接続端子を有する第1のインダクタと、
1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器と、該半導体電力変換器に対して直列に接続される電流制御用インダクタと、からなる第1のユニットであって、前記第1のインダクタの前記第1の外部接続端子とは反対側の端子に接続される第1のユニットと、
1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器と、該半導体電力変換器に対して直列に接続される電流制御用インダクタと、からなる第2のユニットであって、前記第1の外部接続端子に一端が接続される第2のユニットと、
前記第1のインダクタと前記第1のユニットとの接続点に一端が接続される機械的遮断器と、
前記第1のユニットの前記第1のインダクタが接続される側とは反対側の端子と、前記第2のユニットの前記第1の外部接続端子が接続される側とは反対側の端子と、の間に接続される第2のインダクタと、
前記回路遮断器に接続された外部配線上において過電流が発生したか否かを検知する過電流検知部と、
前記機械的遮断器に対する開極動作および前記半導体電力変換器の電力変換動作を制御する制御部と、
を備え
前記制御部は、
前記過電流検知部が過電流を検知したとき、前記機械的遮断器に対して開極動作の開始を指令する開極指令を出力する第1の指令手段と、
前記開極指令が出力されてから前記機械的遮断器の開極動作が完了するまでの間に前記機械的遮断器に流れる電流をゼロに収束させる直流電流を、前記半導体電力変換器に出力させる電力変換指令を出力する第2の指令手段と、
前記機械的遮断器の開極動作が完了した時に、前記半導体電力変換器内の前記半導体スイッチをオフするオフ指令を出力する第3の指令手段と、
を有することを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
互いに直列接続された前記第1のインダクタおよび前記第1のユニットの組と、互いに直列接続された前記第2のインダクタおよび前記第2のユニットの組とは、並列に接続され、
前記第1のユニットの前記第1のインダクタが接続される側とは反対側の端子を、前記第1の外部接続端子の極性とは反対の極性の端子または第1のグランド端子とし、
前記機械的遮断器の前記第1のインダクタおよび前記第1のユニットが接続される側とは反対側の端子を、第2の外部接続端子とし、
前記第2のユニットと前記第2のインダクタとの接続点を、前記第2の外部接続端子の極性とは反対の極性の端子または第2のグランド端子とする請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
互いに直列接続された前記第1のインダクタおよび前記第2のユニットの組と、互いに直列接続された前記第1のユニットおよび前記第2のインダクタの組と、前記機械的遮断器とは、並列に接続され、
前記第1のユニットと前記第2のインダクタとの接続点を、第3の外部接続端子とし、
前記回路遮断器は、前記第1の外部接続端子の極性とは反対側の端子もしくは第3のグランド端子と、前記第3の外部接続端子の極性とは反対側の端子もしくは第4のグランド端子とを備える請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記第1のユニットおよび前記第2のユニットにおいて、前記電流制御用インダクタは、互いにカスケード接続された複数個の前記半導体電力変換器のうちのいずれかの半導体電力変換器に直列に接続される請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路遮断器。
【請求項5】
前記半導体電力変換器は、
内部に設けられた半導体スイッチを指令に応じてスイッチング動作させることにより、第1の直流側および第2の直流側のうち一方から入力された直流電流を所望の大きさおよび極性の直流電流に変換してもう一方に出力するDCDCコンバータであって、直流電流の入出力方向を前記第1の直流側と前記第2の直流側との間で双方向に切換え可能なDCDCコンバータと、
前記第2のインダクタまたは当該半導体電力変換器とは異なる他の前記半導体電力変換器が接続される前記第1の直流側、とは反対側の前記第2の直流側に並列に接続されるエネルギー蓄積部と、
前記エネルギー蓄積部に並列に接続され、前記エネルギー蓄積部に印加された直流電圧が、予め設定された電圧以下の場合は所定の抵抗値を示し、それ以外の場合は前記所定の抵抗値よりも低い抵抗値を示す非線形抵抗と、
を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路遮断器。
【請求項6】
前記半導体スイッチは、
オン時に一方向に電流を通す半導体スイッチング素子と、
該半導体スイッチング素子に逆並列に接続された帰還ダイオードと、
を有する請求項1〜のいずれか一項に記載の回路遮断器。
【請求項7】
前記機械的遮断器は、固定接触子と、前記固定接触子に接触する閉路位置と前記固定接触子から分離される開路位置との間を移動可能な可動接触子と、を有し、指令に応じて前記可動接触子が前記開路位置に移動することにより開極して電流路を遮断する請求項1〜のいずれか一項に記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地絡や短絡などの事故発生時に電流路を遮断する回路遮断器に関し、特に、機械スイッチ方式と半導体スイッチ方式とを併用したハイブリッド方式の回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直流を用いた給電システムが注目されている。直流給電システムは、既存の交流給電システムと比較して変換器損失、送電損失および設置コストを低減できる利点がある。日本では、例えば、直流380[V]、変換器容量500[kW]クラスの直流給電システム、路面電車(600[V]、750[V])や直流電車(1000[V]、1500[V])用の直流給電システムなどが実用化されている。また、数10[kV]以上の高圧用途では、例えば将来の洋上風力発電システムの大量設置を想定し、電圧形変換器を用いた多端子直流送電システム(HVDC:high−voltage direct−current)の導入が期待されている。
【0003】
直流給電システムにおいて地絡事故や短絡事故が発生した場合、過電流が発生する。事故発生からの電流の増加率([A/s])は、直流給電システムが有する直流インダクタンスに反比例する。例えば電圧形変換器を用いて直流電圧を生成した場合、直流インダクタンスが小さいため、過電流が生じる恐れがあるので、高速に動作可能な直流遮断器を設置する必要がある。
【0004】
直流遮断器は、機械スイッチ方式、半導体スイッチ方式、およびハイブリッド方式の3種類に分類できる。
【0005】
このうち、機械スイッチ方式は、例えば、真空遮断器、ガス遮断器もしくは空気吹付遮断器などの機械的遮断器(サーキットブレーカ:Circuit Breaker)とLC共振回路とを用いて電流を遮断するものである(例えば、非特許文献1参照。)。機械スイッチ方式では、パワーデバイスを使用しないため定常損失は発生しない。
【0006】
また、半導体スイッチ方式は、パワーデバイス(電力用半導体素子)を用いて遮断器を構成することで、高速な遮断時間(1[ms]以下)を実現する(例えば、非特許文献2参照。)。
【0007】
また、ハイブリッド方式は、高速動作可能な機械的遮断器とパワーデバイスとを併用することで、電流の高速遮断と損失低減を両立する点に特長があり、各種回路が提案されている(例えば、非特許文献3参照。)。図17は、一般的なハイブリッド方式の回路遮断器を例示する回路図である。例えば図17に示すように、ハイブリッド方式の回路遮断器100は、電流制限用インダクタ61、機械的遮断器(サーキットブレーカ:Circuit Breaker)62、転流補助半導体スイッチ63、主半導体スイッチ64、アレスタ(非線形抵抗)65より主回路を構成する。正常時は電流制限用インダクタ61、機械的遮断器62、転流補助半導体スイッチ63を介して負荷に電力を供給し、地絡や短絡などの事故時には転流補助半導体スイッチ63をターンオフすることで主半導体スイッチ64に転流する。転流補助半導体スイッチ63の必要耐圧は主半導体スイッチ64の数%程度であるため、半導体スイッチ方式と比較し定常損失を低減できる利点がある。また、転流に必要な時間は0.2[ms]以下であり、1[ms]以内に開極可能な機械的遮断器62を用いることで、遮断時間を2[ms]以下にすることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】B・バックマン(B.Bachmann)、G・モーザ(G.Mauthe)、E・ルーオス(E.Ruoss)、H・P・リップス(H.P.Lips)著、「500kV風冷式高圧直流給電回路遮断器(Development of a 500kV Airblast HVDC Circuit Breaker)」、(米国)、米国電気電子学会トランザクション(IEEE Transactions)、電気機器およびシステム(Power Apparatus and Systems)、Vol.PAS−104、No.9、pp.2460−2466、1985年9月
【非特許文献2】C・メイヤーズ(C.Meyer)、S・シュレーダー(S.Schroder)、R・W・デドンカー(R.W.De Doncker)著、「分散電力システムを有する中電圧システムのためのソリッドステート回路遮断器および電流制限器(Solid−State Circuit Breakers and Current Limiters For Medium−Voltage Systems Having Distributed Power Systems)」、(米国)、米国電気電子学会トランザクション(IEEE Transactions)、パワーエレクトロン(Power Electron)、Vol.19、No.5、pp.1333-1340、2004年9月
【非特許文献3】M・シュトイラー(M.Steurer)、K・フレーリッヒ(K.Frohlich)、W・ホラウス(W.Holaus)、K・カルテネッガー(K.Kaltenegger)著、「新しい中電圧用ハイブリッド電流制限回路遮断器:原理および試験結果(A Novel Hybrid Current−Limiting Circuit Breaker For Medium Voltage:Principle and Test Results」、(米国)、米国電気電子学会トランザクション(IEEE Transactions)、パワーデリ(Power Deli)、Vol.18、No.2、pp.460−467、2003年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
機械スイッチ方式による回路遮断器は、パワーデバイスを使用しないため定常損失は発生しない利点があるものの、電流遮断までの所要時間(開極時間)が30〜100[ms]と長いため、直流インダクタンスが大きい電流形変換器には適用できるが、電圧形変換器への適用は困難である。
【0010】
また、半導体スイッチ方式による回路遮断器は、内部の半導体スイッチには定常的に電流が流れるため、定常損失が発生する問題がある。また、電流遮断時には内部の半導体スイッチに直流電圧以上の高電圧が印加されるため、複数のパワーデバイスを直列接続することで高耐圧化を図る必要がある。この場合、半導体スイッチのオン電圧増加が問題となる。例えば、直流320[kV]の場合、半導体スイッチのオン電圧は100[V]以上となる。半導体スイッチには定常的に電流が流れるため、オン電圧に起因する損失低減が課題となる。
【0011】
また、上述のハイブリッド方式の回路遮断器は、転流補助半導体スイッチの必要耐圧は主半導体スイッチの数%程度であるため半導体スイッチ方式と比較して定常損失を低減でき、また、機械スイッチ方式と比較しても遮断時間を短縮することができる利点がある。しかしながら、転流補助半導体スイッチには正常時に依然として定常電流が流れるため、定常損失をゼロにはできない。
【0012】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、正常時には定常損失がゼロであり事故発生時には高速に電流路を遮断することができる回路遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を実現するために、本発明においては、回路遮断器は、第1の外部接続端子を有する第1のインダクタと、1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器と、この半導体電力変換器に対して直列に接続される電流制御用インダクタと、からなる第1のユニットであって、第1のインダクタの第1の外部接続端子とは反対側の端子に接続される第1のユニットと、1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器と、この半導体電力変換器に対して直列に接続される電流制御用インダクタと、からなる第2のユニットであって、第1の外部接続端子に一端が接続される第2のユニットと、第1のインダクタと第1のユニットとの接続点に一端が接続される機械的遮断器と、第1のユニットの第1のインダクタが接続される側とは反対側の端子と、第2のユニットの第1の外部接続端子が接続される側とは反対側の端子と、の間に接続される第2のインダクタと、を備える。
【0014】
また、本発明の第1の態様によれば、互いに直列接続された第1のインダクタおよび第1のユニットの組と、互いに直列接続された第2のインダクタおよび第2のユニットの組とは、並列に接続され、第1のユニットの第1のインダクタが接続される側とは反対側の端子を、第1の外部接続端子の極性とは反対の極性の端子または第1のグランド端子とし、機械的遮断器の第1のインダクタおよび第1のユニットが接続される側とは反対側の端子を、第2の外部接続端子とし、第2のユニットと第2のインダクタとの接続点を、第2の外部接続端子の極性とは反対の極性の端子または第2のグランド端子とする。
【0015】
また、本発明の第2の態様によれば、互いに直列接続された第1のインダクタおよび第2のユニットの組と、互いに直列接続された第1のユニットおよび第2のインダクタの組と、機械的遮断器とは、並列に接続され、第1のユニットと第2のインダクタとの接続点を、第3の外部接続端子とし、回路遮断器は、第1の外部接続端子の極性とは反対側の端子もしくは第3のグランド端子と、第3の外部接続端子の極性とは反対側の端子もしくは第4のグランド端子とを備える。
【0016】
また、上述の第1の態様および第2の態様において、第1のユニットおよび第2のユニットにおいて、電流制御用インダクタは、互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器のうちのいずれかの半導体電力変換器に直列に接続されるようにしてもよい。
【0017】
また、半導体電力変換器は、内部に設けられた半導体スイッチを指令に応じてスイッチング動作させることにより、第1の直流側および第2の直流側のうち一方から入力された直流電流を所望の大きさおよび極性の直流電流に変換してもう一方に出力するDCDCコンバータであって、直流電流の入出力方向を第1の直流側と第2の直流側との間で双方向に切換え可能なDCDCコンバータと、第2のインダクタまたは当該半導体電力変換器とは異なる他の半導体電力変換器が接続される第1の直流側、とは反対側の第2の直流側に並列に接続されるエネルギー蓄積部と、エネルギー蓄積部に並列に接続され、エネルギー蓄積部に印加された直流電圧が、予め設定された電圧以下の場合は所定の抵抗値を示し、それ以外の場合は所定の抵抗値よりも低い抵抗値を示す非線形抵抗と、を有するようにしてもよい。
【0018】
また、回路遮断器は、当該回路遮断器に接続された外部配線上において過電流が発生したか否かを検知する過電流検知部と、機械的遮断器に対する開極動作および半導体電力変換器の電力変換動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、過電流検知部が過電流を検知したとき、機械的遮断器に対して開極動作の開始を指令する開極指令を出力する第1の指令手段と、開極指令が出力されてから機械的遮断器の開極動作が完了するまでの間に機械的遮断器に流れる電流をゼロに収束させる直流電流を、半導体電力変換器に出力させる電力変換指令を出力する第2の指令手段と、機械的遮断器の開極動作が完了した時に、半導体電力変換器内の半導体スイッチをオフするオフ指令を出力する第3の指令手段と、を有する。
【0019】
また、上述の半導体スイッチは、オン時に一方向に電流を通す半導体スイッチング素子と、該半導体スイッチング素子に逆並列に接続された帰還ダイオードと、を有するようにしてもよい。
【0020】
また、機械的遮断器は、固定接触子と、固定接触子に接触する閉路位置と固定接触子から分離される開路位置との間を移動可能な可動接触子と、を有し、指令に応じて可動接触子が開路位置に移動することにより開極して電流路を遮断する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、正常時には定常損失がゼロであり事故発生時には高速に電流路を遮断することができる回路遮断器を実現することができる。
【0022】
本発明による回路遮断器は、機械的遮断器および半導体電力変換器を備えるいわゆるハイブリッド遮断器であるが、正常時には機械的遮断器はオンされて電源側から負荷側に電力が供給され、半導体電力変換器はダイオード動作するのみであるので、正常時の回路遮断器の定常損失をゼロにすることができる。
【0023】
また、本発明によれば、地絡事故や短絡事故により過電流が発生した場合、機械的遮断器および半導体電力変換器の動作を適宜制御することにより、高速に電流路を遮断することができる。
【0024】
また、本発明によれば、カスケード接続する半導体電力変換器の個数を適宜調整するだけで回路遮断器の高耐圧化も容易に実現できる。
【0025】
また、本発明によれば、半導体電力変換器内のDCDCコンバータを双方向DCDCコンバータとして構成することにより、直流電流の振幅および極性に関わりなく電流路を遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施例による回路遮断器を示す回路図である。
図2】本発明の第1の実施例および第2の実施例による回路遮断器における半導体電力変換器を説明する回路図である。
図3】本発明の第1の実施例および第2の実施例による回路遮断器における電流制御用インダクタの配置例を説明する回路図である。
図4】本発明の第1の実施例および第2の実施例による回路遮断器における第1のインダクタおよび第2のインダクタの変形例を説明する回路図である。
図5】本発明の第1の実施例による回路遮断器における制御系を説明するブロック図である。
図6】本発明の第1の実施例による回路遮断器の動作フローを示すフローチャートである。
図7】本発明の第1の実施例による回路遮断器の正常時の動作を説明する等価回路を示す図である。
図8】本発明の第1の実施例による回路遮断器の負荷側の事故発生直後の動作を説明する等価回路を示す図である。
図9】本発明の第1の実施例による回路遮断器における半導体電力変換器が電力変換動作を行うときの動作を説明する等価回路を示す図である。
図10】本発明の第1の実施例による回路遮断器における半導体電力変換器が電力変換動作を終了したときの動作を説明する等価回路を示す図である。
図11】本発明の第1の実施例による回路遮断器内の半導体電力変換器における変換器電流を制御するための電力変換指令を説明する制御ブロック図であって、(A)は第1のユニットを流れる変換器電流を制御するための電力変換指令を説明する図であり、(B)は第2のユニットを流れる変換器電流を制御するための電力変換指令を説明する図である。
図12】本発明の第1の実施例による回路遮断器のシミュレーションに用いた回路図であり、(A)は回路遮断器にRL負荷を接続したときに回路遮断器の至近端で短絡事故が発生した場合の回路図を示し、(B)は回路遮断器に回生負荷を接続したときに回路遮断器の至近端で短絡事故が発生した場合の回路図を示す。
図13図12に示すシミュレーション回路図の回路パラメータを説明する図である。
図14】本発明の第1の実施例による回路遮断器を図12(A)のシミュレーション回路にて動作させた場合のシミュレーション波形を示す図である。
図15】本発明の第1の実施例による回路遮断器を図12(B)のシミュレーション回路にて動作させた場合のシミュレーション波形を示す図である。
図16】本発明の第2の実施例による回路遮断器における半導体電力変換器を説明する回路図である。
図17】一般的なハイブリッド方式の回路遮断器を例示する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明による回路遮断器は、第1のインダクタと、第1のユニットと、第2のユニットと、機械的遮断器と、第2のインダクタと、を備える。第1のインダクタは、第1の外部接続端子を有する。第1のユニットは、1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器と、この半導体電力変換器に対して直列に接続される電流制御用インダクタと、からなり、第1のインダクタの第1の外部接続端子とは反対側の端子に接続される。第2のユニットは、1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器と、この半導体電力変換器に対して直列に接続される電流制御用インダクタと、からなり、第1の外部接続端子に一端が接続される。第1のユニットおよび第2のユニットにおける半導体電力変換器は、内部に設けられた半導体スイッチを指令に応じてスイッチング動作させることにより所定の直流電流を出力するものである。機械的遮断器は、指令に応じて開極して電流路を遮断するものであり、第1のインダクタと第1のユニットとの接続点に一端が接続される。第2のインダクタは、第1のユニットの第1のインダクタが接続される側とは反対側の端子と、第2のユニットの第1の外部接続端子が接続される側とは反対側の端子と、の間に接続される。第1のインダクタおよび第2のインダクタは事故電流制限用インダクタである。以下、具体的な回路構成について、第1および第2の実施例にて説明する。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施例による回路遮断器を示す回路図であり、図2は、本発明の第1の実施例および第2の実施例による回路遮断器における半導体電力変換器を説明する回路図である。以降、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。本発明の実施例による回路遮断器1は、第1のインダクタ11と、第1のユニット12と、第2のユニット13と、機械的遮断器14と、第2のインダクタ15と、を備える。また、互いに直列接続された第1のインダクタ11および第1のユニット12の組と、互いに直列接続された第2のインダクタ15および第2のユニット13の組とが並列に接続される。図1に示す例では、回路遮断器1は、適用される直流給電システムに対して第1のユニット12および第2のユニット13が並列になるよう設置されるものであり、第1のインダクタ11が電源側に位置し、かつ機械的遮断器14が負荷側に位置するよう、直流給電システム上に設置される。
【0029】
事故電流制限用インダクタとして機能する第1のインダクタ11は、一端に第1の外部接続端子T1を有する。第1の外部接続端子T1には電源側の回路が接続される。
【0030】
第1のユニット12は、1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器21−1と、この半導体電力変換器21−1に対して直列に接続される電流制御用インダクタ22−1とからなる。第1のインダクタ11の、第1の外部接続端子T1とは反対側の接続点P1に、第1のユニット12は接続される。
【0031】
半導体電力変換器21−1は、第1のインダクタ11と後述する機械的遮断器14との接続点P1から分岐した配線上に、単独でもしくは複数個が互いにカスケード接続された状態で設けられる。なお、本明細書では、半導体電力変換器21−1が1個の場合は電流制御用インダクタ22−1が接続される側を「第1の直流側」と称し、複数個の半導体電力変換器21−1が互いにカスケード接続される場合は当該半導体電力変換器21−1とは異なる他の半導体電力変換器21−1が接続される側を同じく「第1の直流側」と称する。また、「第1の直流側」とは反対側の直流側を、「第2の直流側」と称する。一例として、図1では、複数個(N個、ただしNは2以上の整数)の半導体電力変換器21−1が第1の直流側にて互いにカスケード接続された場合を示している。カスケード接続する半導体電力変換器21−1の個数を適宜調整するだけで回路遮断器1の高耐圧化を容易に実現できる。
【0032】
半導体電力変換器21−1は、DCDCコンバータ31と、エネルギー蓄積部32と、非線形抵抗33と、を有し、DCDCコンバータ31の内部に設けられた半導体スイッチを指令に応じてスイッチング動作させることにより所定の直流電流を出力する。
【0033】
半導体電力変換器21−1内のDCDCコンバータ31は、双方向DCDCコンバータとして構成される。一例として、図2に示す例では、半導体電力変換器21−1内のDCDCコンバータ31を2象限双方向DCDCコンバータ(チョッパセル)として構成する。すなわち、半導体電力変換器21−1内のDCDCコンバータ31は、半導体スイッチのスイッチング動作により、第1の直流側および第2の直流側のうち一方から入力された直流電流を所望の大きさおよび極性の直流電流に変換してもう一方に出力するものであり、直流電流の入出力方向は、第1の直流側と第2の直流側との間で双方向に切換え可能である。半導体電力変換器21−1内のDCDCコンバータ31を双方向DCDCコンバータとして構成することにより、直流電流の振幅および極性に関わりなく電流路を遮断することができる。半導体スイッチは、オン時に一方向に電流を通す半導体スイッチング素子Sと、この半導体スイッチング素子Sに逆並列に接続された帰還ダイオードDとで構成される。半導体スイッチング素子Sの例としては、IGBT、サイリスタ、GTO(Gate Turn−OFF thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがあるが、スイッチング素子の種類自体は本発明を限定するものではなく、その他の半導体素子であってもよい。なお、代替例として、半導体電力変換器21−1内のDCDCコンバータ31として、図2に示す2象限双方向DCDCコンバータの代わりに4象限双方向DCDCコンバータを用いてもよい。4象限双方向DCDCコンバータは、一般的な単相フルブリッジインバータと等価である。
【0034】
半導体電力変換器21−1内のエネルギー蓄積部32は、DCDCコンバータ31の第2の直流側に並列に接続される。エネルギー蓄積部32の例としては、直流コンデンサがある。直流コンデンサの場合、回路遮断器1を動作させる際にはDCDCコンバータ31を動作させて初期充電しておく。
【0035】
半導体電力変換器21−1内の非線形抵抗33は、エネルギー蓄積部32に並列に接続され、エネルギー蓄積部32に印加された直流電圧が、予め設定された電圧(以下、「動作電圧」と称する。)以下の場合は所定の抵抗値を示し、それ以外の場合は所定の抵抗値よりも低い抵抗値を示す素子である。非線形抵抗33の例としては、MOV(Metal Oxide Variable Resistor)(「バリスタ」あるいは「アレスタ」とも称する)がある。非線形抵抗33の動作電圧VRは、使用するパワーデバイスの電圧定格に制限される。例えば、3.3[kV]耐圧のパワーデバイスを使用する場合、非線形抵抗33の動作電圧VRは3.3[kV]以下に設定する必要がある。
【0036】
直流コンデンサ32と非線形抵抗33とは並列に接続されているので、第1のインダクタ11および電流制御用インダクタ22−1の蓄積エネルギーによって直流コンデンサ32が充電される際には、直流コンデンサ32の充電電圧が徐々に上昇して非線形抵抗33の動作電圧に達すると、その後は直流コンデンサ32の充電電圧は非線形抵抗33の動作電圧にてクランプされ、第1のインダクタ11および電流制御用インダクタ22−1の蓄積エネルギーは非線形抵抗33にて消費される。なお、エネルギー蓄積部32および非線形抵抗33については、上述のような直流コンデンサ32の充電および非線形抵抗33による消費の一連の動作を行うものであれば他の素子で実現してもよく、例えば、2次電池あるいは電気二重層キャパシタなどに置き換えてもよい。
【0037】
第2のユニット13は、1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器21−2と、該半導体電力変換器21−2に対して直列に接続される電流制御用インダクタ22−2とからなる。第2のユニット13は、その一端が第1の外部接続端子T1に接続される。
【0038】
半導体電力変換器21−1の場合と同様、半導体電力変換器21−2が1個の場合は電流制御用インダクタ22−2が接続される側を「第1の直流側」と称し、複数個の半導体電力変換器21−2が互いにカスケード接続される場合は当該半導体電力変換器21−2とは異なる他の半導体電力変換器21−2が接続される側を同じく「第1の直流側」と称する。また、「第1の直流側」とは反対側の直流側を、「第2の直流側」と称する。一例として、図1では、複数個(N個、ただしNは2以上の整数)の半導体電力変換器21−2が第1の直流側にて互いにカスケード接続された場合を示している。カスケード接続する半導体電力変換器21−2の個数を適宜調整するだけで回路遮断器1の高耐圧化を容易に実現できる。
【0039】
半導体電力変換器21−2は、半導体電力変換器21−1と同様、DCDCコンバータ31と、エネルギー蓄積部32と、非線形抵抗33と、を有し、DCDCコンバータ31の内部に設けられた半導体スイッチを指令に応じてスイッチング動作させることにより所定の直流電流を出力する。
【0040】
半導体電力変換器21−2内のDCDCコンバータ31は、双方向DCDCコンバータとして構成される。一例として、図2に示す例では、半導体電力変換器21−2内のDCDCコンバータ31を2象限双方向DCDCコンバータ(チョッパセル)として構成する。すなわち、半導体電力変換器21−2内のDCDCコンバータ31は、半導体スイッチのスイッチング動作により、第1の直流側および第2の直流側のうち一方から入力された直流電流を所望の大きさおよび極性の直流電流に変換してもう一方に出力するものであり、直流電流の入出力方向は、第1の直流側と第2の直流側との間で双方向に切換え可能である。半導体電力変換器21−2内のDCDCコンバータ31を双方向DCDCコンバータとして構成することにより、直流電流の振幅および極性に関わりなく電流路を遮断することができる。半導体スイッチは、オン時に一方向に電流を通す半導体スイッチング素子Sと、この半導体スイッチング素子Sに逆並列に接続された帰還ダイオードDとで構成される。半導体スイッチング素子Sの例としては、IGBT、サイリスタ、GTO(Gate Turn−OFF thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがあるが、スイッチング素子の種類自体は本発明を限定するものではなく、その他の半導体素子であってもよい。なお、代替例として、半導体電力変換器21−2内のDCDCコンバータ31として、図2に示す2象限双方向DCDCコンバータの代わりに4象限双方向DCDCコンバータを用いてもよい。4象限双方向DCDCコンバータは、一般的な単相フルブリッジインバータと等価である。
【0041】
半導体電力変換器21−2内のエネルギー蓄積部32は、DCDCコンバータ31の第2の直流側に並列に接続される。エネルギー蓄積部32の例としては、直流コンデンサがある。直流コンデンサの場合、回路遮断器1を動作させる際にはDCDCコンバータ31を動作させて初期充電しておく。
【0042】
半導体電力変換器21−2内の非線形抵抗33は、エネルギー蓄積部32に並列に接続され、エネルギー蓄積部32に印加された直流電圧が、予め設定された電圧(以下、「動作電圧」と称する。)以下の場合は所定の抵抗値を示し、それ以外の場合は所定の抵抗値よりも低い抵抗値を示す素子である。非線形抵抗33の例としては、MOV(Metal Oxide Variable Resistor)(「バリスタ」あるいは「アレスタ」とも称する)がある。非線形抵抗33の動作電圧VRは、使用するパワーデバイスの電圧定格に制限される。例えば、3.3[kV]耐圧のパワーデバイスを使用する場合、非線形抵抗33の動作電圧VRは3.3[kV]以下に設定する必要がある。
【0043】
直流コンデンサ32と非線形抵抗33とは並列に接続されているので、後述する第2のインダクタ15および電流制御用インダクタ22−2の蓄積エネルギーによって直流コンデンサ32が充電される際には、直流コンデンサ32の充電電圧が徐々に上昇して非線形抵抗33の動作電圧に達すると、その後は直流コンデンサ32の充電電圧は非線形抵抗33の動作電圧にてクランプされ、第2のインダクタ15および電流制御用インダクタ22−2の蓄積エネルギーは非線形抵抗33にて消費される。なお、エネルギー蓄積部32および非線形抵抗33については、上述のような直流コンデンサ32の充電および非線形抵抗33による消費の一連の動作を行うものであれば他の素子で実現してもよく、例えば、2次電池あるいは電気二重層キャパシタなどに置き換えてもよい。
【0044】
図3は、本発明の第1の実施例および第2の実施例による回路遮断器における電流制御用インダクタの配置例を説明する回路図である。第1のユニット12において、電流制御用インダクタ22−1は、互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器21−1のうちのいずれかの半導体電力変換器21−1に直列に接続される。同様に、第2のユニット13において、電流制御用インダクタ22−2は、互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器21−2のうちのいずれかの半導体電力変換器21−2に直列に接続される。例えば、図3(A)および図3(B)に示すように、電流制御用インダクタ22−1および22−2は、カスケード接続の両端に位置する半導体電力変換器21−1および21−2のうちのいずれかの半導体電力変換器21−1および21−2の、当該半導体電力変換器21−1および21−2が接続されていない側にそれぞれ設置される。また例えば、図3(C)に示すように、電流制御用インダクタ22−1および22−2は、互いに隣接した半導体電力変換器21−1および21−2の間にそれぞれ設置される。なお、半導体電力変換器21−1および21−2がそれぞれ1個の場合は、電流制御用インダクタ22−1および22−2は単に当該半導体電力変換器21−1および21−2に直列にそれぞれ接続される。
【0045】
半導体電力変換器21−1および21−2が複数個カスケード接続される場合および半導体電力変換器21−1および21−2が1個のみの場合のいずれの場合であっても、電流制御用インダクタ22−1および22−2は、互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器21−1および21−2と同一の配線上のいずれかの位置に設けられることになる。本発明の第1の実施例では、互いに直列接続された第1のインダクタ11および第1のユニット12の組と、互いに直列接続された第2のインダクタ15および第2のユニット13の組とが並列に接続される。
【0046】
機械的遮断器14は、その一端が第1のインダクタ11と第1のユニット12との接続点P1に接続される。また、機械的遮断器14は、第1のインダクタ11および第1のユニット12との接続される側(すなわち接続点P1がある側)とは反対側に、第2の外部接続端子T2を有する。機械的遮断器14は、固定接触子と、固定接触子に接触する閉路位置と固定接触子から分離される開路位置との間を移動可能な可動接触子と、を有し、指令に応じて可動接触子が開路位置に移動することにより開極して電流路を遮断する。機械的遮断器14の例としては、真空遮断器、ガス遮断器もしくは空気吹付遮断器などがある。第2の外部接続端子T2には負荷側の回路が接続される。
【0047】
事故電流制限用インダクタとして機能する第2のインダクタ15は、第1のユニット12の、第1のインダクタ11が接続される側(すなわち接続点P1がある側)とは反対側の端子P2と、第2のユニット13の、第1の外部接続端子T1が接続される側とは反対側の端子P3と、の間に接続される。
【0048】
図4は、本発明の第1の実施例および第2の実施例による回路遮断器における第1のインダクタおよび第2のインダクタの変形例を説明する回路図である。上述の第1の実施例では、事故電流制限用インダクタとしてそれぞれ機能する第1のインダクタ11および第2のインダクタ15を、それぞれ別個独立した非結合インダクタとして構成したが、この変形例として、図4に示すようにこれらを結合インダクタ16として構成してもよい。図4に示すように第1のインダクタ11および第2のインダクタ15を結合インダクタ16として構成すれば、別個独立の第1のインダクタ11および第2のインダクタ15を構成する場合に比べて必要鉄心数を2個から1個に低減することができる。
【0049】
本発明の第1の実施例では、上述のように第1のインダクタ11、第1のユニット12、第2のユニット13、機械的遮断器14および第2のインダクタ15を結線することにより、第1のユニット12の第1のインダクタ11が接続される側(すなわち接続点P1がある側)とは反対側の端子P2が、第1の外部接続端子T1に対応する第1のグランド端子G1となる。また、第2のユニット13と第2のインダクタ15との接続点P3が、第2の外部接続端子T2に対応する第2のグランド端子G2となる。
【0050】
なお、本実施例では、回路遮断器1が直流遮断器として動作する場合について説明したが、回路遮断器1は交流遮断器としても動作可能であり、この場合は、第1のユニット11の、接続点P1が接続される側とは反対側の端子P2を、第1の外部接続端子T1の極性とは反対の極性の端子G1とする。また、第2のユニット13と第2のインダクタ15との接続点P3を、第2の外部接続端子T2の極性とは反対の極性の端子G2とする。回路遮断器1が直流遮断器として動作する場合は、半導体電力変換器21−1および2内のDCDCコンバータ31を2象限双方向DCDCコンバータまたは4象限双方向DCDCコンバータのいずれで構成してもよいが、回路遮断器1が交流遮断器として動作する場合は、半導体電力変換器21−1および2内のDCDCコンバータ31を4象限双方向DCDCコンバータとして構成する。
【0051】
図1に示す例では、第1の外部接続端子T1およびグランド端子G1からなる側を電源側とし、第2の外部接続端子T2およびグランド端子G2からなる側を負荷側としたが、この変形例として、第1の外部接続端子T1およびグランド端子G1からなる側を負荷側とし、第2の外部接続端子T2およびグランド端子G2からなる側を電源側としてもよい。
【0052】
これ以降、電源側直流電圧をVdc、負荷電圧をvL、機械的遮断器14の両端に現れる電圧をvCBで表す。また、半導体電力変換器21−1のN個カスケード接続される側の半導体電力変換器21−1の合計電圧をvaHB、半導体電力変換器21−2のN個カスケード接続される側の半導体電力変換器21−2の合計電圧をvbHBで表す。また、各半導体電力変換器21−1に並列に接続された直流コンデンサの電圧をそれぞれvaC1、・・・、vaCNで表し、各半導体電力変換器21−2に並列に接続された直流コンデンサの電圧をそれぞれvbC1、・・・、vbCNで表す(ただし、Nは自然数)。また、第1の外部接続端子T1から回路遮断器1へ流れ込む電源電流をiSとし、第1の外部接続端子T1から接続点P1に流れる電流をiaSとし、接続点P1から第2の外部接続端子T2に流れる電流を負荷電流iLとし、接続点P1から半導体電力変換器21−1へ流れる電流を変換器電流iaHBとし、第1の外部接続端子T1から接続点P3に流れる電流を変換器電流ibHBとし、接続点P3から接続点P1に流れる電流をibSとする。なお、図中の電圧および電流については、それぞれ矢印の向きを正としている。
【0053】
図5は、本発明の第1の実施例による回路遮断器における制御系を説明するブロック図である。回路遮断器1は、その制御系として、過電流検知部41および制御部42を有する。
【0054】
過電流検知部41は、回路遮断器1の第2の外部接続端子T2に接続された負荷側の外部配線上において過電流が発生したか否かを検知する。過電流発生の検知は公知の方法で実現すればよい。例えば、地絡や短絡などの事故が発生すると第1のインダクタ11を流れる電流iaSが増加するので、電流検出器(図示せず)を用いて電流iaSを常時監視し、電流iaSが定格電流より所定の値大きくだけなった場合に「過電流発生」と判定する。過電流発生の判断に用いられる基準電流値は、例えば定格電流120%に設定するなど、必要に応じて適宜設定すればよい。
【0055】
制御部42は、機械的遮断器14に対する開極動作および半導体電力変換器21−1および21−2の電力変換動作を制御する。すなわち、制御部42は、過電流検知部41が過電流を検知したとき、機械的遮断器14に対して開極動作の開始を指令する開極指令を出力する第1の指令手段51と、開極指令が出力されてから機械的遮断器14の開極動作が完了するまでの間に機械的遮断器14に流れる電流をゼロに収束させる直流電流を、半導体電力変換器21−1および21−2に出力させる電力変換指令を出力する第2の指令手段52と、機械的遮断器14の開極動作が完了した時に、半導体電力変換器21−1および21−2内の半導体スイッチSをオフする指令を出力する第3の指令手段53と、を有する。
【0056】
第1の指令手段51、第2の指令手段52および第3の指令手段53は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばこれらの手段をソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、制御部42内の演算処理装置はこのソフトウェアプログラムに従って動作することで上述の各手段の機能が実現される。
【0057】
図6は、本発明の第1の実施例による回路遮断器の動作フローを示すフローチャートである。また、図7図10は、本発明の第1の実施例による回路遮断器の動作を説明する等価回路を示す図である。ここでは一例として、時刻t0で負荷側に地絡もしくは短絡の事故が発生して過電流が発生した場合を考える。
【0058】
回路遮断器1は、回路遮断器1の第2の外部接続端子T2に接続された負荷側の外部配線上において過電流が発生していないとき、正常動作を行う(ステップS101)。すなわち正常時では機械的遮断器14はオンされ、電源側から第1の外部接続端子T1、第1のインダクタ11および機械的遮断器14を介して負荷側に電力が供給される。このとき、半導体電力変換器21−1および21−2内の各ダイオードDが機能することにより、半導体電力変換器21−1および21−2そのものはダイオードとして動作し、変換器電流iaHBおよびibHBはゼロとなる。したがって、正常時の回路遮断器1の定常損失はゼロである。
【0059】
また、電源側直流電圧Vdcと半導体電力変換器13内の直流コンデンサ電圧vC(=vC1=vCN)は式1の関係を満足する必要がある。Nは半導体電力変換器21−1または21−2の個数(換言すれば直流コンデンサの個数)を示す。
【0060】
【数1】
【0061】
図7に示すように、正常時においては、キルヒホッフの電流則より、電源電流iSと負荷電流iLと第1のインダクタ11を流れる電流iaSと第2のインダクタ15を流れる電流ibSとは等しく、すなわち式2の関係式が成り立つ。
【0062】
【数2】
【0063】
また、第1のインダクタL1における電圧降下は、正常時ではゼロとなるため、負荷電圧vLと電源側直流電圧Vdcとは等しく、すなわち「vL=Vdc」である。
【0064】
ステップS102において、過電流検知部41は、第2の外部接続端子T2に接続された負荷側の外部配線上において過電流が発生したか否かを検知する。過電流検知部41が過電流を検知しなかったときはステップS101に戻り正常動作を継続する。過電流検知部41が過電流を検知したときはステップS103へ進む。
【0065】
例えば時刻t0で過電流検知部41が過電流の発生を検知したとすると、負荷側の事故発生直後である時刻t0の回路遮断器1の等価回路は図8のように表される。機械的遮断器14における電圧降下を無視すると、式3に示される回路方程式が成立する。なお、式3において、「iS=iaS=ibS=iL」とする。
【0066】
【数3】
【0067】
式3より、iSおよびiLは式4のように表せる。式4において、時刻t0における電源電流iSおよび負荷電流iLの初期電流をI0とする。
【0068】
【数4】
【0069】
式4から分かるように、電源電流iSおよび負荷電流iLは「Vdc/2L1」の傾きで1次関数的に増加する。すなわち、第1のインダクタ11のインダクタL1を増加させれば事故時の電流増加率を抑制できる。短絡や地絡事故が発生すると電源電流iSは増加するため、過電流検知部41は、電流検出器(図示せず)を用いて電源電流iSを常時監視し、電源電流iSが定格電流より所定の値大きくだけなった場合(例えば定格電流120%)に「過電流発生」と判定する。事故発生から事故判断に要する時間「t1−t0」は電源側直流電圧Vdc、第1のインダクタのインダクタンスL1、負荷、基準電流値などに依存する。
【0070】
ステップS102において過電流検知部41が過電流を検知したとき、ステップS103において、制御部42の第1の指令手段51は、機械的遮断器14に対して開極動作の開始を指令する開極指令を出力する。
【0071】
機械的遮断器14に開極指令を与えても機械的遮断器14は直ちに開極動作を完了するのではなく、機械的遮断器14の機械的構造に起因する遅れ時間が発生し、実際には少し遅れて開極動作を完了する。例えば、直流電圧が数10[kV]クラスでは1[ms]以下、数100[kV]クラスでは2[ms]程度の遅れ時間が発生する。機械的遮断器14はゼロ電流時のみ電流路を遮断することが可能であるため、機械的遮断器14を流れる負荷電流iLをゼロにする必要がある。そこで、ステップS104において、制御部42の第2の指令手段52は、開極指令が出力されてから機械的遮断器14の開極動作が完了するまでの間に機械的遮断器14に流れる電流をゼロに収束させる直流電流を、半導体電力変換器21−1および21−2に出力させる電力変換指令を出力する。半導体電力変換器21−1および21−2内のDCDCコンバータ31内にある半導体スイッチの半導体スイッチング素子Sは受信した電力変換指令に基づいてPWMスイッチング動作を行う。これにより、図9に示すように、半導体電力変換器21−1はvaHBを出力する制御電圧源として動作することと等価になり、半導体電力変換器21−2はvbHBを出力する制御電圧源として動作することと等価になる。したがって、図9において、式5および式6のような回路方程式が成立する。
【0072】
【数5】
【0073】
【数6】
【0074】
本発明の第1の実施例では、制御電圧源については、一例としてPI制御にて実現し、vaHBを式7で与え、vbHBを式8で与える。式7および式8において、Kpは比例ゲインを表し、KIは積分ゲインを表し、ia*HBおよびib*HBは変換器電流の指令値を表す。なお、本実施例ではPI制御を適用したが、PI制御以外の電流制御を適用してもよい。
【0075】
【数7】
【0076】
【数8】
【0077】
式7および式8において、右辺第1項および第2項はフィードフォワード制御に相当し、右辺第3項はフィードバック制御(PI)に相当する。式7を式5に代入すると式9が得られ、式8を式6に代入すると式10が得られる。
【0078】
【数9】
【0079】
【数10】
【0080】
式9に示すように変換器電流iaHBはその指令値ia*HBに対して2次遅れで応答し、式10に示すように変換器電流ibHBはその指令値ib*HBに対して2次遅れで応答する。このとき、変換器電流の指令値ia*HBをiaSに設定して変換器電流iaHBを第1のインダクタ11に流れる電流iaSに一致させ、かつ変換器電流の指令値ib*HBをibSに設定して変換器電流ibHBを第2のインダクタ15に流れる電流ibSに一致させる制御を行えば、キルヒホッフの電流則により負荷電流iLをゼロにすることができる。負荷電流iLをゼロにするのに要する時間(すなわち、変換器電流iaHBおよびibHBをそれぞれ電流iaSおよびibSに一致させるのに要する時間)は、半導体電力変換器21−1および21−2のキャリア周波数、等価スイッチング周波数、ディジタル制御手法に依存する。例えば低損失かつ高スイッチング周波数動作を実現可能な高圧SiC MOSFETを用いれば、負荷電流iLをゼロにするのに要する時間を1[ms]以下に実現することは十分可能である。
【0081】
以上を踏まえ、式7および式8に基づく電力変換指令の生成原理を説明すると次の通りである。図11は、本発明の第1の実施例による回路遮断器内の半導体電力変換器における変換器電流を制御するための電力変換指令を説明する制御ブロック図であって、(A)は第1のユニットを流れる変換器電流を制御するための電力変換指令を説明する図であり、(B)は第2のユニットを流れる変換器電流を制御するための電力変換指令を説明する図である。変換器電流の制御では、フィードバック制御とフィードフォワード制御を併用する。
【0082】
第1のユニット12を流れる変換器電流iaHBについては、図11(A)に示すように、フィードバック制御に係るブロックB1−aでは、電流検出器(図示せず)によって検出された変換器電流iaHBと電流検出器(図示せず)によって検出された第1のインダクタ11を流れる電流iaSの差分に対しPI制御を適用することで偏差(iaHB−iaS)を抑制する。一方、フィードフォワード制御に係るブロックB2−aでは、半導体電力変換器21−1の両端に現れる電圧vaHBと電流制御用インダクタ22−1の両端に現れる電圧との総和vafを利用することで、電流制御性向上を実現する。vafは、直流電源側電圧Vdc、第1のインダクタ11を流れる電流iaS、および第1のインダクタ11のインダクタンスL1を用いて算出するか、あるいは電圧センサ(図示せず)を用いて直接検出することで得ればよい。ブロックB1−aの出力とブロックB3−aの出力とが加算されて各半導体電力変換器21−1に対する電力変換指令va*jが生成される。各半導体電力変換器21−1に対する電力変換指令va*jは、ブロックB4j−aにて直流コンデンサ電圧vaCj(ただし、j=1〜N)で規格化した後、一般的なPWM変調法(三角波比較)を適用して各半導体電力変換器21−1内の半導体スイッチの半導体スイッチング素子Sへ与えられる。
【0083】
同様に、第2のユニット13を流れる変換器電流ibHBについては、図11(B)に示すように、フィードバック制御に係るブロックB1−bでは、電流検出器(図示せず)によって検出された変換器電流ibHBと電流検出器(図示せず)によって検出された第2のインダクタ15を流れる電流ibSの差分に対しPI制御を適用することで偏差(ibHB−ibS)を抑制する。一方、フィードフォワード制御に係るブロックB2−bでは、半導体電力変換器21−2の両端に現れる電圧vbHBと電流制御用インダクタ22−2の両端に現れる電圧との総和vbfを利用することで、電流制御性向上を実現する。vbfは、直流電源側電圧Vdc、第2のインダクタ15を流れる電流ibS、および第2のインダクタ15のインダクタンスL1を用いて算出するか、あるいは電圧センサ(図示せず)を用いて直接検出することで得ればよい。ブロックB1−bの出力とブロックB3−bの出力とが加算されて各半導体電力変換器21−2に対する電力変換指令vb*jが生成される。各半導体電力変換器21−2に対する電力変換指令vb*jは、ブロックB4j−bにて直流コンデンサ電圧vbCj(ただし、j=1〜N)で規格化した後、一般的なPWM変調法(三角波比較)を適用して各半導体電力変換器21−2内の半導体スイッチの半導体スイッチング素子Sへ与えられる。
【0084】
なお、半導体電力変換器21−1および2内のDCDCコンバータ31を2象限双方向DCDCコンバータとして構成したときは、PWM制御に用いられる三角波キャリアの初期位相を360°/N移相する「位相シフトPWM手法」を各半導体電力変換器21−1および21−2のDCDCコンバータ31の制御に適用すれば、等価スイッチング周波数を増加できる。具体的には、キャリア周波数をfCとすると、等価スイッチング周波数はNfCとなる。あるいは半導体電力変換器21−1および2内のDCDCコンバータ31を4象限双方向DCDCコンバータとして構成したときは、PWM制御に用いられる三角波キャリアの初期位相を180°/N移相する「位相シフトPWM手法」を各半導体電力変換器21−1および21−2のDCDCコンバータ31の制御に適用すれば、等価スイッチング周波数を増加できる。具体的には、キャリア周波数をfCとすると、等価スイッチング周波数は2NfCとなる。等価スイッチング周波数を高く設定することで、電流制御系の向上と電流制御用インダクタ22−1および22−2のインダクタンスの低減を実現できる。
【0085】
一般に、高圧用途の半導体電力変換器のスイッチング周波数は、スイッチング損失低減の観点から数100[Hz]に設定される。一方、本発明の第1の実施例による回路遮断器1内の半導体電力変換器21−1および21−2は事故発生時のみPWM動作を行うため、スイッチング損失の増大は問題とならない。半導体電力変換器21−1および21−2として例えば3.3[kV]/1500[A]のSiCパワーモジュール(SiC MOSFETとSiC SBD(Schottky Barrier Diode)を使用した場合、PWM変調には数[kHz]のキャリア周波数適用が想定され、電流制御性の向上が期待できる。同一キャリア周波数を想定した場合、半導体電力変換器21−1および21−2のカスケード数が多くなるような高圧用途における電流制御性が向上する。
【0086】
以上、ステップS104における電力変換指令の出力について説明したが、ステップS104における処理は、ステップS103における開極指令の出力と同時に実行されてもよい。
【0087】
図6に戻ると、ステップS105において、機械的遮断器14は、制御部42内の第2の指令手段52からの開極指令に応じて開極動作を開始する。上述のように機械的遮断器14はゼロ電流時のみ動作可能であるが、ステップS104における機械的遮断器14に流れる電流をゼロにする処理は、開極指令が出力されてから機械的遮断器14の開極動作が完了するまでに要する時間よりも十分短い時間に実行される。
【0088】
機械的遮断器14の開極動作が完了したとき(ここでは時刻t2とする)、ステップS106において、制御部42内の第3の指令手段53は、半導体電力変換器21−1および21−2内の全ての半導体スイッチSをオフする指令を出力する。半導体電力変換器21−1および21−2の電力変換動作開始から機械的遮断器14の開極動作完了までに要する時間「t2−t1」は、機械的遮断器14に対して開極指令を与えてから機械的遮断器14が実際に開極動作を完了するまでの遅れ時間と等しく、その時間は例えば2[ms]である。
【0089】
制御部42内の第3の指令手段53によるオフ指令を受信して半導体電力変換器21−1および21−2内の全ての半導体スイッチSはターンオフし、電力変換動作は終了する。これにより、図10に示すように、半導体電力変換器13内の各ダイオードDのみが機能することになる。このとき、第1のインダクタ11および電流制御用インダクタ22−1の蓄積エネルギーは、半導体電力変換器21−1内において帰還ダイオードDを介して直流コンデンサ32および非線形抵抗33に放出される。同様に、第2のインダクタ15および電流制御用インダクタ22−2の蓄積エネルギーは、半導体電力変換器21−2内において帰還ダイオードDを介して直流コンデンサ32および非線形抵抗33に放出される。半導体電力変換器21−1内の直流コンデンサ32と非線形抵抗33とは並列に接続されているので、半導体スイッチの半導体スイッチング素子Sのターンオフ後(すなわち時刻t2以降の期間)は、第1のインダクタ11および電流制御用インダクタ22−1の蓄積エネルギーによって、直流コンデンサ32が充電されて電圧vcは徐々に上昇した後、非線形抵抗33の動作電圧VRでクランプされる。直流コンデンサ32が当該動作電圧まで充電された後は、蓄積エネルギーは非線形抵抗33にて消費される。同様に、半導体電力変換器21−2内の直流コンデンサ32と非線形抵抗33とは並列に接続されているので、半導体スイッチの半導体スイッチング素子Sのターンオフ後(すなわち時刻t2以降の期間)は、第2のインダクタ15および電流制御用インダクタ22−2の蓄積エネルギーによって、直流コンデンサ32が充電されて電圧vcは徐々に上昇した後、非線形抵抗33の動作電圧VRでクランプされる。直流コンデンサ32が当該動作電圧まで充電された後は、蓄積エネルギーは非線形抵抗33にて消費される。
【0090】
第1のインダクタ11および電流制御用インダクタ22−1の蓄積エネルギーによって直流コンデンサ32が非線形抵抗33の動作電圧まで充電されるまでは、式11に示す回路方程式が成立する。
【0091】
【数11】
【0092】
式11より、直流コンデンサ32の電圧vCおよび第1のインダクタ11を流れる電流iaS(=iaHB)は2階定数係数線形微分方程式を解くことで算出できる。
【0093】
直流コンデンサ32が当該動作電圧まで充電された後は、式12に示す回路方程式が成立する。式12において、非線形抵抗33の動作電圧をVRとする。
【0094】
【数12】
【0095】
式12より、第1のインダクタ11を流れる電流iaSおよび変換器電流iaHBは1階定数係数線形微分方程式を解くことで算出できる。
【0096】
同様に、第2のインダクタ15および電流制御用インダクタ22−2の蓄積エネルギーによって直流コンデンサ32が非線形抵抗33の動作電圧まで充電されるまでは、式13に示す回路方程式が成立する。
【0097】
【数13】
【0098】
式13より、直流コンデンサ32の電圧vCおよび第2のインダクタ15を流れる電流ibS(=ibHB)は2階定数係数線形微分方程式を解くことで算出できる。
【0099】
直流コンデンサ32が当該動作電圧まで充電された後は、式14に示す回路方程式が成立する。式14において、非線形抵抗33の動作電圧をVRとする。
【0100】
【数14】
【0101】
式14より、第2のインダクタ15を流れる電流ibSおよび変換器電流ibHBは1階定数係数線形微分方程式を解くことで算出できる。
【0102】
次に、本発明の第1の実施例による回路遮断器のシミュレーション結果について説明する。図12は本発明の第1の実施例による回路遮断器のシミュレーションに用いた回路図であり、(A)は回路遮断器にRL負荷を接続したときに回路遮断器の至近端で短絡事故が発生した場合の回路図を示し、(B)は回路遮断器に回生負荷を接続したときに回路遮断器の至近端で短絡事故が発生した場合の回路図を示す。ただし、図12(B)において、回生負荷は直流電流源で模擬している。また、図13は、図12に示すシミュレーション回路図の回路パラメータを説明する図である。シミュレーションには「PSCAD/EMTDC」を使用した。高圧用途への適用を想定し定格容量Pは7.5[MW]、定格直流電圧Vdcは15[kV]、定格電源電流ISは500[A]、定格負荷電流ILは500[A]とした。第1および第2のインダクタ(事故時電流制限用インダクタ)のインダクタンスL1は、電流増加率Vdc/L1が3.0[kA/ms]となるよう5[mH]とした。また、3.3[kV]耐圧の半導体スイッチング素子を想定し、初期直流コンデンサ電圧は1.5[kV]、各半導体電力変換器21−1および21−2の個数Nはそれぞれ10とし、キャリア周波数fCは2[kHz]とした。単位静電定数Hは、直流コンデンサの全静電エネルギーを変換器容量で規格化した値(単位は[s])であり、式15で表せる。
【0103】
【数15】
【0104】
また、シミュレーションでは、制御遅延がゼロであるアナログ制御系を想定して半導体スイッチング素子のデッドタイムはゼロとした。また、電流発生の判断に用いられる基準電流値は定格電流120%に設定した。また、非線形抵抗33は、動作電圧を2[kV]とし、印加される電圧が2[kV]以下の場合無限大の抵抗値を示し、2[kV]以上は抵抗値がゼロを示すものとした。また、機械的遮断器14は、インピーダンスがゼロの理想スイッチとして模擬し、開極指令受信から開極動作完了までの遅れ時間(=t2−t1)を1.5[ms]とした。
【0105】
図14は、本発明の第1の実施例による回路遮断器を図12(A)のシミュレーション回路にて動作させた場合のシミュレーション波形を示す図である。回路遮断器1にRL負荷(7.5[MW])を接続したときに時刻t0の時点で回路遮断器1の至近端で短絡事故が発生した場合を考える。
【0106】
短絡事故が発生する時刻t0以前における半導体電力変換器21−1および21−2は、半導体電力変換器21−1および21−2内の各ダイオードDが機能することにより、半導体電力変換器21−1および21−2そのものはダイオードとして動作する。この場合は、負荷電流iL、第1のインダクタ11を流れる電流iaSおよび第2のインダクタ15を流れる電流ibSは、いずれも500[A]となり、キルヒホッフの電流則より変換器電流iaHBおよびibHBはともに0[A]となる。したがって、直流側電源電圧Vdc、変換器電圧vaHBおよび変換器電圧vbHBは等しくなり、いずれも15[kV]である。この間、各半導体電力変換器21−1および21−2内の直流コンデンサ32の電圧(Vdc/N)はそれぞれ1.5[kV]に充電される。
【0107】
時刻t0において短絡事故が発生すると、電源電流iS、第1のインダクタ11を流れる電流iaS、第2のインダクタ15を流れる電流ibSおよび負荷電流iLは1.5[kA/ms](=Vdc/2L1)の傾きで増加する。式3、式5および式6ならびに「iaHB=ibHB=0」の関係式より、変換器電圧vaHBおよびvbHBはVdc/2に減少する。
【0108】
時刻t1において、機械的遮断器14に開極指令を与える。同時に、機械的遮断器14に流れる電流をゼロに収束させる直流電流を半導体電力変換器21−1および21−2に出力させる電力変換指令を出力する。これにより半導体電力変換器21−1および21−2内の半導体スイッチの半導体スイッチング素子Sは受信した電力変換指令に基づいてPWMスイッチング動作を行う。なお、本シミュレーションでは、PWM動作開始および開極指令受信から機械的遮断器14の開極完了までの時間「t2−t1」を1.5[ms]と設定した。図14に示すように、電流制御適用後0.35[ms]で、負荷電流iLはゼロとなり、第1のインダクタ11を流れる電流iaSと変換器電流iaHBは等しくなり、また第2のインダクタ15を流れる電流ibSと変換器電流ibHBとは等しくなるので、機械的遮断器14により電流路の遮断が可能な状態となる。キルヒホッフの電流則より「is=iaS+ibS」であるため、電源電流iSの電流増加率は、第1のインダクタ11を流れる電流iaSの電流増加率(もしくは第2のインダクタ15を流れる電流ibSの電流増加率)の2倍(=3.0[kA/ms])となる。変換器電力pHBは常に正であるので、直流コンデンサ32の電圧vaC1は増加し、最終的には非線形抵抗33の動作電圧VRである2[kV]でクランプされる。
【0109】
時刻t2において機械的遮断器14の開極動作が完了し、同時に半導体電力変換器21−1および21−2内の全ての半導体スイッチの半導体スイッチング素子Sをターンオフする。第1のインダクタ11を流れる電流iaS、第2のインダクタ15を流れる電流ibS、変換器電流iaHBおよび変換器電流ibHBは一次関数的に減少し、時刻t3においてゼロとなる。本シミュレーション結果によれば、短絡事故発生から電流遮断完了までの所要時間「t3−t0」は4.5[ms]であり、回路遮断器1により高速遮断を実現できることがわかる。
【0110】
図15は、本発明の第1の実施例による回路遮断器を図12(B)のシミュレーション回路にて動作させた場合のシミュレーション波形を示す図である。回路遮断器1に回生負荷(7.5[MW])を接続したときに時刻t0の時点で回路遮断器1の至近端で短絡事故が発生した場合を考える。
【0111】
本シミュレーションでは回生負荷を想定しているため、短絡事故が発生する時刻t0以前の正常時は電源電流iSおよび負荷電流iLはともに−500[A]となる。各部波形は、図14と同様となる。本シミュレーション結果によれば、短絡事故発生から電流遮断完了までの所要時間「t3−t0」は5.2[ms]であり、回路遮断器1により高速遮断を実現できることがわかる。
【0112】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図16は、本発明の第2の実施例による回路遮断器における半導体電力変換器を説明する回路図である。上述の第1の実施例による回路遮断器1は、適用される直流給電システムに対して第1のユニット12および第2のユニット13が並列になるよう設置されたが、本発明の第2の実施例による回路遮断器2は、直流給電システムに対して第1のユニット12および第2のユニット13が直列になるよう設置される。本発明の第2の実施例による回路遮断器2は、第1の実施例同様、第1のインダクタ11と、第1のユニット12と、第2のユニット13と、機械的遮断器14と、第2のインダクタ15と、を備える。互いに直列接続された第1のインダクタ11および第2のユニット13の組と、互いに直列接続された第1のユニット12および第2のインダクタ15の組と、機械的遮断器14とは、並列に接続される。以下、各構成について説明する。
【0113】
事故電流制限用インダクタとして機能する第1のインダクタ11は、一端に第1の外部接続端子T1を有する。第1の外部接続端子T1には電源側の回路が接続される。また、本発明の第2の実施例では、第1の外部接続端子T1の極性とは反対側の端子として第3のグランド端子G3が設けられる。第1のインダクタ11の構成については第1の実施例において説明したものと同様である。
【0114】
第1のユニット12は、第1の実施例の場合と同様、1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器21−1と、該半導体電力変換器21−1に対して直列に接続される電流制御用インダクタ22−1とからなる。第1のインダクタ11の、第1の外部接続端子T1とは反対側の端子Q1に、第1のユニット12は接続される。すなわち、半導体電力変換器21−1は、第1のインダクタ11と機械的遮断器14との接続点Q1から分岐した配線上に、単独でもしくは複数個が互いにカスケード接続された状態で設けられる。また、本発明の第2の実施例では、第1のユニット12の、第1のインダクタ11および第1のユニット12が接続される側(すなわち接続点Q1がある側)とは反対側の端子を、第3の外部接続端子T3とする。第3の外部接続端子T3には負荷側の回路が接続される。なお、第3の外部接続端子T3の極性とは反対側の端子として第4のグランド端子G4が設けられるが、本発明の第2の実施例では第3のグランド端子G3と第4のグランド端子G4とが同電位となる。第1のユニット12の構成については第1の実施例において説明したものと同様である。
【0115】
第2のユニット13は、1個もしくは互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器21−2と、該半導体電力変換器21−2に対して直列に接続される電流制御用インダクタ22−2とからなる。第2のユニット13は、その一端が第1の外部接続端子T1に接続される。第2のユニット13の構成については第1の実施例において説明したものと同様である。
【0116】
第1の実施例の場合と同様、半導体電力変換器21−1が1個の場合は電流制御用インダクタ22−1が接続される側を「第1の直流側」と称し、複数個の半導体電力変換器21−1が互いにカスケード接続される場合は当該半導体電力変換器21−1とは異なる他の半導体電力変換器21−1が接続される側を同じく「第1の直流側」と称する。また、「第1の直流側」とは反対側の直流側を、「第2の直流側」と称する。半導体電力変換器21−2についても同様である。
【0117】
一例として、図16では、複数個(N個、ただしNは2以上の整数)の半導体電力変換器21−1および21−2がそれぞれ第1の直流側にて互いにカスケード接続された場合を示している。カスケード接続する半導体電力変換器21−1および21−2の個数を適宜調整するだけで回路遮断器1の高耐圧化を容易に実現できる。半導体電力変換器21−1および21−2の構成については第1の実施例において説明したものと同様である。ただし、半導体電力変換器21−1および21−2内のエネルギー蓄積部32を直流コンデンサとした場合は、第1の実施例の場合とは異なり、初期充電回路(図示せず)を別途設ける必要がある。
【0118】
第1の実施例の場合と同様、第1のユニット12において、電流制御用インダクタ22−1は、互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器21−1のうちのいずれかの半導体電力変換器21−1に直列に接続され、第2のユニット13において、電流制御用インダクタ22−2は、互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器21−2のうちのいずれかの半導体電力変換器21−2に直列に接続される。電流制御用インダクタ22−1および22−2の配置例については、図3を参照して説明した通りである。なお、半導体電力変換器21−1および21−2がそれぞれ1個の場合は、第1の実施例の場合と同様、電流制御用インダクタ22−1および22−2は単に当該半導体電力変換器21−1および21−2に直列にそれぞれ接続される。すなわち、第1の実施例の場合と同様、複数個の半導体電力変換器21−1および21−2がカスケード接続される場合および半導体電力変換器21−1および21−2が1個の場合いずれの場合であっても、電流制御用インダクタ22−1および22−2は、互いにカスケード接続された複数個の半導体電力変換器21−1および21−2と同一の配線上のいずれかの位置に設けられることになる。
【0119】
機械的遮断器14は、その一端が第1のインダクタ11と第1のユニット12との接続点Q1に接続される。また、機械的遮断器14の、第1のインダクタ11および第1のユニット12が接続される側(すなわち接続点Q1がある側)とは反対側の接続点Q2には、第2のユニット13の、第1の外部接続端子T1が接続される側とは反対側の端子が接続される。機械的遮断器14の構成については第1の実施例において説明したものと同様である。
【0120】
事故電流制限用インダクタとして機能する第2のインダクタ15は、第1のユニット12の、第1のインダクタ11が接続される側(すなわち接続点Q1がある側)とは反対側にある第3の外部接続端子T3と、第2のユニット13の、第1の外部接続端子T1が接続される側とは反対側の端子Q2と、の間に接続される。第2のインダクタ15の構成については第1の実施例において説明したものと同様である。
【0121】
なお、上述の第2の実施例では、事故電流制限用インダクタとしてそれぞれ機能する第1のインダクタ11および第2のインダクタ15を、それぞれ別個独立した非結合インダクタとして構成したが、この変形例として、図4に示すようにこれらを結合インダクタ16として構成してもよい。図4に示すように第1のインダクタ11および第2のインダクタ15を結合インダクタ16として構成すれば、別個独立の第1のインダクタ11および第2のインダクタ15を構成する場合に比べて必要鉄心数を2個から1個に低減することができる。
【0122】
本発明の第2の実施例では、上述のように第1のインダクタ11、第1のユニット12、第2のユニット13、機械的遮断器14および第2のインダクタ15を結線することにより、互いに直列接続された第1のインダクタ11および第2のユニット13の組と、互いに直列接続された第1のユニット12および第2のインダクタ15の組と、機械的遮断器14とが、並列に接続された構成となる。なお、回路遮断器2は直流遮断器として動作するほかに交流遮断器としても動作可能であり、この場合は、端子G3は第1の外部接続端子T1の極性とは反対の極性を有する端子となり、端子G4は第2の外部接続端子T2の極性とは反対の極性を有する端子となる。
【0123】
なお、図16に示す例では、第1の外部接続端子T1および第3のグランド端子G3からなる側を電源側とし、第3の外部接続端子T3および第4のグランド端子G4からなる側を負荷側としたが、この変形例として、第1の外部接続端子T1および第3のグランド端子G3からなる側を負荷側とし、第3の外部接続端子T3および第4のグランド端子G4からなる側を電源側としてもよい。
【0124】
ここで、電源側直流電圧をVdc、負荷電圧をvL、機械的遮断器14の両端に現れる電圧をvCBで表す。また、半導体電力変換器21−1のN個カスケード接続される側の半導体電力変換器21−1の合計電圧をvaHB、半導体電力変換器21−2のN個カスケード接続される側の半導体電力変換器21−2の合計電圧をvbHBで表す。また、各半導体電力変換器21−1に並列に接続された直流コンデンサの電圧をそれぞれvaC1、・・・、vaCNで表し、各半導体電力変換器21−2に並列に接続された直流コンデンサの電圧をそれぞれvbC1、・・・、vbCNで表す(ただし、Nは自然数)。また、第1の外部接続端子T1から回路遮断器2へ流れ込む電源電流をiSとし、第1の外部接続端子T1から接続点Q1に流れる電流をiaSとし、接続点Q1から半導体電力変換器21−1へ流れる電流を変換器電流iaHBとし、第1の外部接続端子T1から接続点Q2に流れる電流を変換器電流ibHBとし、接続点Q2から第3の外部接続端子T3に流れる電流をibSとする。また、接続点Q1から接続点Q3に流れる電流(すなわち機械的遮断器14を流れる電流)については「iL」と表記するが、説明を簡明にするために、第2の実施例でも機械的遮断器14を流れる電流「iL」を「負荷電流」と呼称する。また、上述の通り第3のグランド端子G3と第4のグランド端子G4とは同電位となる。なお、図中の電圧および電流については、それぞれ矢印の向きを正としている。
【0125】
本発明の第2の実施例による回路遮断器2の制御系は、図5を参照して説明した第1の実施例による回路遮断器1の制御系と同様の構成を有する。この制御系の下、本発明の第2の実施例による回路遮断器2の動作も、図6を参照して説明した第1の実施例による回路遮断器1の動作フローと同様に動作する。すなわち、時刻t0で負荷側に地絡もしくは短絡の事故が発生して過電流が発生し、時刻t1において機械的遮断器14に開極指令を与えると同時に各半導体電力変換器21−1および21−2内のDCDCコンバータ31の電力変換動作を開始させる。また、時刻t2において機械的遮断器14の開極動作が完了すると同時に全ての半導体スイッチの半導体スイッチング素子Sをターンオフし、時刻t3において電源電流iSと変換器電流iaHBおよびibHBがゼロとなり電流遮断が完了する。より詳しくは次の通りである。
【0126】
短絡事故が発生する時刻t0以前の正常時の回路遮断器2の動作は、第1の実施例による回路遮断器1の動作と同じである。すなわち正常時では機械的遮断器14はオンされて電源側から負荷側に電力が供給される。このとき、半導体電力変換器21−1および21−2内の各ダイオードDが機能することにより、半導体電力変換器21−1および21−2そのものはダイオードとして動作する。この場合、変換器電流iaHBおよびibHBはゼロとなる。つまり、短絡事故が発生する時刻t0以前の正常時では、第1の外部接続端子T1から流入した電流は、第1のインダクタ11、閉路した機械的遮断器14、および第2のインダクタ15を順次経由して、第3の外部接続端子T3から流出する。したがって、短絡事故が発生する時刻t0以前の正常時では、電源電流iSと、負荷電流iLと、第1のインダクタ11を流れる電流iaSと、第2のインダクタ15を流れる電流ibSとは全て同一となる。すなわち、短絡事故が発生する時刻t0以前の正常時における機械的遮断器14を流れる電流iLは、上記呼称の通りの「負荷電流」となる。なお、第1の実施例と同様、電源側直流電圧Vdcと半導体電力変換器21−1および21−2内の直流コンデンサ電圧vC(=vC1=vCN)は式1の関係を満足する必要がある。
【0127】
時刻t0で過電流検知部41が過電流の発生を検知した直後の回路遮断器2の動作も、第1の実施例による回路遮断器1の動作と同じである。このとき、電源電流iS、第1のインダクタ11を流れる電流iaS、第2のインダクタ15を流れる電流ibSおよび負荷電流iLは式3に示すように「Vdc/2L1」の傾きで1次関数的に増加する。
【0128】
時刻t1から時刻t2までの間の回路遮断器2の動作も、第1の実施例による回路遮断器1の動作と同じである。すなわち、図11を参照して説明した変換器電流を制御するための電力変換指令の生成原理を適用することで、変換器電流iaHBを第1のインダクタ11を流れる電流iaSに一致させ、変換器電流ibHBを第2のインダクタ15を流れる電流ibSに一致させる制御を行い、負荷電流iLがゼロになるようにする。
【0129】
時刻t2で機械的遮断器12の開極動作が完了したときの回路遮断器2の動作も、第1の実施例による回路遮断器1の動作と同じである。すなわち半導体電力変換器21−1および21−2内のDCDCコンバータ31内の全ての半導体スイッチング素子Sをオフすることで、第1のインダクタ11および電流制御用インダクタ22−1の蓄積エネルギーは、半導体電力変換器21−1内において帰還ダイオードDを介して直流コンデンサ32および非線形抵抗33に放出され、第2のインダクタ15および電流制御用インダクタ22−2の蓄積エネルギーは、半導体電力変換器21−2内において帰還ダイオードDを介して直流コンデンサ32および非線形抵抗33に放出される。この期間において成立する電圧方程式や電流の関係式は、第1の実施例の場合と同一である。
【符号の説明】
【0130】
1、2 回路遮断器
11 第1のインダクタ
12 第1のユニット
13 第2のユニット
14 機械的遮断器
15 第2のインダクタ
21−1、21−2 半導体電力変換器
22−1、22−2 電流制御用インダクタ
31 DCDCコンバータ
32 エネルギー蓄積部
33 非線形抵抗
41 過電流検出部
42 制御部
51 第1の指令手段
52 第2の指令手段
53 第3の指令手段
1 第1のグランド端子
2 第2のグランド端子
3 第3のグランド端子
4 第4のグランド端子
1 第1の外部接続端子
2 第2の外部接続端子
3 第3の外部接続端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17