【実施例1】
【0013】
図1は本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態を備えたダンプトラックを示す側面図である。
図1に示すダンプトラック(自車両)1は、頑丈なフレーム構造で形成された車体2と、車体2上に起伏可能に搭載されたベッセル(荷台)3と、車体2に装着された左前輪4A(L)及び左後輪4B(L)を主に備えている。
【0014】
車体2には、後輪4Bを駆動するエンジン(図示せず)が配設されている。エンジンは、例えば、エンジン制御装置(以下ECUという)を有し、ECUからの指令信号によって、供給される燃料流量が制御されることで、その回転数が制御されている。
【0015】
ベッセル3は、砕石物等の荷物を積載するために設けられた容器であり、ピン結合部5等を介して車体2に対して起伏可能に連結されている。ベッセル3の下部には、車両の幅方向に所定の間隔を介して2つの起伏シリンダ6が設置されている。起伏シリンダ6に圧油が供給・排出されると、起伏シリンダ6が伸長・縮短してベッセル3が起伏される。また、ベッセル3の前側上部には庇部7が設けられている。
【0016】
庇部7は、その下側(すなわち車体2の前部)に設置された運転室8を岩石等の飛散物から保護するとともに、車両転倒時等に運転室8を保護する機能を有している。運転室8の内部には、車体外部移動物体検知システムを構成する制御装置の車体外部移動物体検知装置100(
図4参照)と、操舵用のハンドル(図示せず)と、アクセルペダル及びブレーキペダル等(図示せず)とが設置されている。
【0017】
図2は本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態における周囲映像入力部を構成するカメラの配置を説明する概念図、
図3は本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態を構成するカメラが撮影した映像を示す概念図である。
【0018】
図2において、ダンプトラック1の車体2の前側面と後側面とには、ダンプトラック1の前方を広角で撮影する前方カメラ301と、ダンプトラック1の後方を広角で撮影する後方カメラ303とが設けられている。また、車体2の左側面と右側面とには、ダンプトラック1の左方向を広角で撮影する左方向カメラ302と、ダンプトラック1の右方向を広角で撮影する右方向カメラ304とが設けられている。これらのカメラ301〜304は、それぞれの地表面を主に撮影できるように、車体2の各面に俯角をつけて取付けられている。また、ダンプトラック1の車体2には、右前輪4A(R)と右後輪4B(R)と左前輪4A(L)と左後輪4B(L)とが装着されている。
【0019】
図3はこれらのカメラ301〜303が撮影した周囲映像の例を示す。401は前方カメラ301が撮影した前方映像の例を示す。402は左方向カメラ302が撮影した左方向映像の例を示す。403は後方カメラ303が撮影した後方映像の例を示す。404は右方向カメラ304が撮影した右方向映像の例を示す。
【0020】
周囲映像401〜404は、それぞれ広角で撮影されるため遠方、すなわち各映像の上部に映し出されている地平線が湾曲して見えている。また、近傍、すなわち各映像の下部に車体2の一部が映っている。例えば、前方映像401には、車体2のフロント部分の一部が、左方向映像402には、車体2の左サイド部分と左前輪4A(L)及び左後輪4B(L)がそれぞれ映っている。右方向映像404には、車体2の右サイド部分と右前輪4A(R)及び右後輪4B(R)が、後方映像403には、車体2のリア部分と左後輪4B(L)と右後輪4B(R)、並びに映像内の上部に自車両1のベッセル3の一部がそれぞれ映っている。
【0021】
なお、この例ではカメラに広角レンズを用いているため、ベッセル3の映っている箇所のような特に映像の辺縁部では歪みが大きくなっている。また、同一の車輪が複数のカメラに映る場合がある。前方映像401、左方向映像402、後方映像403、右方向映像404を合わせたものが本実施の形態における周囲映像である。
【0022】
図4は本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。
図4において、車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態は、車体外部移動物体検知装置100を備えている。
【0023】
車体外部移動物体検知装置100は、周囲映像入力部101と合成映像構築部102と可動領域設定部103と移動物体検知部104と出力部105とを備えている。
【0024】
周囲映像入力部101は、ダンプトラック1の周囲の様子をそれぞれ撮影する複数のカメラ301〜304を備えている。周囲映像入力部101は、撮影結果である複数の周囲映像401〜404を合成映像構築部102と移動物体検知部104とへ送信する。
【0025】
合成映像構築部102は、周囲映像入力部101の送信した複数の周囲映像401〜404と、移動物体検知部104から移動物体の位置を示す検知位置座標信号とを入力する。合成映像構築部102は、合成映像を生成するために入力した周囲映像の中から必要な部分を切り出し座標変換後に合成を行うと共に、入力した検知位置座標を基に移動物体の検知位置検知結果抽出映像を合成し、得られた合成映像を出力部105へ送出する。
【0026】
可動領域設定部103は、自車両1の可動部の位置関係の情報を保持し、周囲映像入力部101のカメラの撮影する映像の中に可動部が映り込んでいる場合は該当する領域を、それ以外の場合は可動部の領域が無いことを示す情報を送出する。具体的には、自車両1を構成する各部分における形状情報と属性情報と可動部に関する情報とカメラの属性情報とを保持し、これらの情報から映像内に可動部が映り込む場合に、その領域を算出して移動物体検知部104へ出力する。ここで、可動部領域とは、自車両1の構造物において動く部分がカメラに写り込む際、この動く部分が映像内で占める領域をいう。
【0027】
移動物体検知部104は、周囲映像入力部101の送出する周囲映像401〜404に関して、可動部領域設定部103の送出する可動部領域を除いた領域に対して移動物体の検知処理を行い、移動物体が映像中に存在するかどうかを検知する。移動物体を検知した場合は検知した位置を示す検知位置座標を周囲映像とともに合成映像構築部102へ送出する。
【0028】
出力部105は、ディスプレイ等を備え、合成映像構築部102から入力した合成映像を利用者に対して出力する。
【0029】
次に、本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態における移動物体の検知と表示の処理内容について
図5乃至
図9を用いて説明する。
図5は本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態における処理内容を示すフローチャート図、
図6は本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態における可動部領域の設定の一例を示す概念図、
図7は本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態における検知対象領域の設定の一例を示す概念図、
図8は本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態における移動物体の検知の一例を示す概念図、
図9は本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態における移動物体検知の結果表示の一例を示す概念図、
図10は本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態における移動物体検知の結果表示の他の例を示す概念図である。
図5乃至
図10において、
図1乃至
図4に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0030】
図5において、車体外部移動物体検知装置100は、周囲映像入力を行う(ステップS201)。具体的には、周囲映像入力部101で撮影した周囲映像401〜404を入力する。
【0031】
車体外部移動物体検知装置100は、可動部領域設定部103に可動部領域が設定されているか否かを判断する(ステップS202)。可動部領域とは、自車両1の構造物において動く部分がカメラに写り込む際、この動く部分が映像内で占める領域をいう。
【0032】
可動部領域の設定の一例を
図6を用いて説明する。
図6では後方映像403における可動領域の設定の一例を示すものである。この映像の中で、左後輪4B(L)及び右後輪4B(R)は、自車両1の移動時に車軸に沿って回転する可動部である。例えば、映像内でタイヤの溝などが移動する。このため、映像内でこれらの部分を囲む領域を、後輪4Bに対する可動部領域501と設定する。
【0033】
図5に戻り、車体外部移動物体検知装置100は、このような可動部領域が設定されていると判断した場合は、(ステップS203)へ進み、それ以外の場合は、(ステップS206)へ進む。
【0034】
車体外部移動物体検知装置100は、可動部領域を取得する(ステップS203)。具体的には、可動領域設定部103において、映像内での可動部領域の形状及び配置の情報を取得する。ここでは、後方カメラ303の設置位置や設置方向等の可動領域設定部103が保持するカメラの属性情報から、自車両1のどの部分が後方カメラ303に映り込むかを算出することで、
図6のような自車両1の後部と後輪4Bの一部が映像内の下方に映り込む結果が得られる。また、後輪4Bが可動部であるという情報を用いて、映像内の後輪4Bの映り込んでいる領域を可動部領域501として取得する。更なる詳細については、後述する。
【0035】
車体外部移動物体検知装置100は、検知対象領域を作成する(ステップS204)。具体的には、映像内における、移動物体が存在するかどうかを検知する領域(検知対象領域)を作成する。ここでは、
図7に示す後方映像403の中で、後輪4Bに対する可動部領域501を除いたすべての領域を検知対象として作成し、この領域を後方の検知対象領域601としている。
【0036】
車体外部移動物体検知装置100は、検知対象領域が空集合Φであるかどうかを判断する(ステップS205)。具体的には、(ステップS204)にて、検知対象領域を作成する際に、例えば映像の全面にわたって自車両1の可動部領域が存在する場合は、検知対象領域は空集合Φと判断される。したがって、
図7に示す例においては、後方映像403の全面ではなく、後方映像403の一部にのみ可動部領域501が存在しているため、空集合Φと判断しない。検知対象領域が空集合Φである場合と判断した場合は、(ステップS207)へ進み、それ以外の場合は、(ステップS206)へ進む。
【0037】
車体外部移動物体検知装置100は、移動物体検知部104にて移動物体検知処理を実行する(ステップS206)。この検知処理を行う映像内での領域は、ステップS204にて作成した検知対象領域である。
【0038】
検知処理の一例を
図8を用いて説明する。
図8は、後方映像403における移動物体検知処理を示すものであって、上から順に(a)ある時刻t
0−1における映像、(b)ある時刻t
0−1より後の別の時刻t
0における映像、(c)検知結果映像を示している。これら映像内で検知処理を行うのは、検知対象領域601の内部である。またこれら映像内には、移動物体として人物が存在している。
【0039】
ここで、
図8(a)には、ある時刻t
0−1における移動物体701が後方映像403上に撮影されている様子が示され、
図8(b)には、それよりも後である別の時刻t
0における移動物体702が後方映像403上に撮影されている様子が示されている。これらの移動物体は同一のものであり、時間の推移に伴って移動している様子が後方カメラ304によって撮影されている。
【0040】
図4に示す移動物体検知部104は、周囲映像入力部101から入力するこれらの映像を比較し、時間の推移に伴って映像に変化が発生した箇所を算出する。算出により得られた、検知対象領域601内の検知結果703は後方映像403上での座標情報を保持している。なお、映像に変化が発生していない場合はこのような検知結果は得られない。
【0041】
図5に戻り、車体外部移動物体検知装置100は、未処理映像があるか否かを判断する(ステップS207)。具体的には、複数のカメラからの周囲映像において、検知処理を適用していない映像が残っているか否かを判断する。例えば、本実施の形態においては、対象となる映像を切換えながら、前方カメラ301、左方向カメラ302、後方カメラ303、右方向カメラ304が撮影した映像について、1フレームにつき合計4回の検知処理を行なう。車体外部移動物体検知装置100は、未処理映像があると判断した場合は、(ステップS202)へ進み、それ以外の場合は、(ステップS208)へ進む。
【0042】
車体外部移動物体検知装置100は、合成映像構築部102において合成映像を構築する(ステップS208)。具体的には、前方映像401、左方向映像402、後方映像403、右方向映像404それぞれの縦および横の長さを半分にして面積を縮小し、この4種類の映像をタイル状に隣接させて配置することにより、4方向の映像を1枚の画面で表示させる。
【0043】
このような移動物体検知の結果表示の一例を
図9に示す。ここでは合成映像構築部102で構築したタイル状合成映像801を示している。移動
物体検知部104における算出結果にもとづく座標値を用いて、移動物体を検知した部分に検知対象領域内の検知結果703を描画している。
【0044】
図5に戻り、車体外部移動物体検知装置100は、合成映像を出力する(ステップS209)。具体的には、合成映像構築部102において構築したタイル状合成映像801を、出力部105に対して出力する。この映像内において、検知対象領域内の検知結果703を表示する。
【0045】
車体外部移動物体検知装置100は、検知処理が終了するか否かを判断する(ステップS210)。例えば、作業が終了したり、外部移動体の検知が不要となって、処理終了を指示する信号が入力された場合には終了し、それ以外のときには最初の手順(ステップS201)に戻る。
【0046】
なお、タイル状合成映像801を出力に用いる例を説明したが、これに限るものではない。合成映像構築部102において前方映像401、左方向映像402、後方映像403、右方向映像404の映像を変換して合成し、自車両1とその周囲を俯瞰するような映像を構築して出力部103に対して出力することも可能である。このような移動物体検知の結果表示の他の例を
図10に示す。変換した前方映像901、変換した左方向映像902、変換した後方映像903、変換した右方向映像904をそれぞれ上方向、左方向、下方向、右方向に配置し、中央に自車両アイコン905を配置した俯瞰合成映像906を合成する。この映像内において、検知対象領域内の検知結果703を表示する。
【0047】
これらの移動物体検知の結果表示から、左後輪4B(L)や右後輪4B(R)が回転していたとしても、その部分は移動物体として検知せず、時刻t
0における移動物体702のような対象を検知することが可能になる。この結果、利用者は本来注意を向けるべき時刻t
0における移動物体702のような対象の存在を効率よく知ることができる。
【0048】
次に、車体外部移動物体検知装置100を構成する可動部領域設定部103の詳細の構成及び動作について
図11乃至
図14を用いて説明する。
図11は本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態における可動部領域設定部の構成を示すブロック図、
図12は本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態における自車両形状属性保持部に保持される文字データの一例を示す表図、
図13は本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態における可動部領域取得ステップの処理内容を示すフローチャート図、
図14は本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態における可動部領域の算出の一例を示す概念図である。
図11乃至
図14において、
図1乃至
図10に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0049】
図11に示すように、可動部領域設定部103は、自車両形状属性保持部103Aと座標変換部103Bと可動部領域検出部103Cとを備えている。
【0050】
自車両形状属性保持部103Aは、
図2に示す自車両1を構成する各部分における形状情報と属性情報と可動部に関する情報とカメラの属性情報とを保持し、これらを座標変換部103Bへ送出する。ここで、自車両1の形状情報とは、自車両1の空間的構成を3次元空間上の点と線、面により表すものであって、例えば、CAD向けの形状データのようなものである。
【0051】
カメラの属性情報とは、例えば、前方カメラ情報として前方カメラ301の空間的な設置位置と方向並びに画角や焦点距離といったカメラに付随する情報がある。同様に左方向カメラ302の左方向カメラ情報、後方カメラ303の後方カメラ情報、右向カメラ304の右方向カメラ情報等が構成される。
【0052】
自車両1の可動部とは、利用者の操作により移動や回転を行なう自車両1に属する部分をいう。可動部に関する情報としては、左前輪情報として
図2に示す左前輪4A(L)の形状や配置、操舵や走行といった自車両1の操作によってどのように映像上の形状や配置が変化するかといった情報がある。同様に構成される左後輪4B(L)の左後輪情報、右前輪4A(R)の右前輪情報、右後輪4B(R)の右後輪情報、ベッセル3のベッセル情報等が構成される。
【0053】
図12は、自車両形状属性保持部103Aに保持される文字データの一例を示す表図である。ここで、自車両1は、各部分の形状情報や属性情報等の集合で示される。
図12には、左前輪4A(L)に関する情報である左前輪情報や前方カメラ301に関する属性情報である前方カメラ情報の記述を例示している。
【0054】
左前輪情報は、まず属性情報として左前輪4A(L)の属性(Attribute)が可動部であることを記述している。次に、形状情報として左前輪4A(L)の形状(Shape)をCAD向けの形状データとして記述している。そして可動部に関する情報として、可動部である左前輪4A(L)の移動や回転の中心となる位置(Pivot)や可動範囲(Range)、角度(Angle)等を併せて記述している。
【0055】
前方カメラ情報は、前方カメラ301の設置位置(Position)や中心の方向(Direction)、画角(FOV)等を記述している。
このように、自車両1を構成する各部分の情報を組合せることで、自車両1の形状を表現する。なお、本実施の形態においては、各カメラに映り込む可能性のある物体に関してのみ処理を行なうので、移りこむ可能性のない形状、例えば自車両1の屋根等についての情報は、自車両形状属性保持部103Aに保持しなくても良い。
【0056】
次に、可動部領域取得ステップの処理内容を
図13を用いて説明する。可動部領域取得ステップは、
図5に示す処理フローチャート図の(ステップS203)の処理内容をさらに詳しく説明するものである。
【0057】
車体外部移動物体検知装置100は、
図5の(ステップS202)にて、可動部領域が設定されていると判断した場合、可動部領域を取得するために、
図13に示す自車両形状を取得する(ステップS2031)。具体的には、自車両形状属性保持部103Aが保持している自車両1の形状の情報を取得する。
【0058】
車体外部移動物体検知装置100は、カメラ情報を取得する(ステップS2032)。具体的には映像を撮影するカメラに関する情報を取得する。例えば、前方カメラ301で映像を撮影する場合、前方カメラ情報を取得する。
【0059】
車体外部移動物体検知装置100は、座標変換を実行する(ステップS2033)。具体的には、
図11に示す座標変換部103Bにおいて、前のステップで取得した自車両1の形状の情報とカメラの属性情報とを用いて、座標変換を行い、カメラで撮影した映像を表す2次元平面内において、3次元形状がどのように射影されるかを算出する。この結果は、
図3に示すカメラが撮影した映像と類似のものであり、2次元平面上の領域内に自車両1の形状の一部が存在する。
【0060】
車体外部移動物体検知装置100は、可動部領域を算出する(ステップS2034)。具体的には、
図11に示す可動部領域検出部103Cにおいて、座標変換後の2次元平面上に存在する可動部領域を算出する。
【0061】
可動部領域の算出処理の一例を
図14を用いて説明する。
図14は自車両1の形状情報と後方カメラ情報とを用いて座標変換したものである。座標変換後の2次元平面には、自車両形状のうち、車体2の後部の一部と左後輪4B(L)と右後輪4B(R)とベッセル3を表す形状が存在している。この中で、属性として可動部であることが設定されている形状が占有する領域を算出する。
【0062】
図14において、左後輪情報H37と右後輪情報H38とベッセル情報H3とが、属性情報として可動であることを設定している。但し、ここでは、説明の簡便化のため、左後輪情報H37と右後輪情報H38の属性についてのみ取り扱う。
図11に示す可動部領域検出部103Cは、左後輪情報H37と右後輪情報H38より、2次元平面上でこれらが占有する領域、すなわち後輪4Bに対する可動部領域501を算出する。
【0063】
図13に戻り、車体外部移動物体検知装置100は、可動部領域を出力する(ステップS2035)。具体的には、可動領域検出部103Cが算出した可動部領域を
図4に示す移動物体検知部104へ出力する。本実施の形態においては、後輪4Bに対する可動部領域501を出力する。本処理を実行後、
図5に示す処理フローチャート図の(ステップS204)へ進む。
【0064】
上述した本発明の車体外部移動物体検知システムの第1の実施の形態によれば、周囲映像の中から自車両可動構造物の可動領域を除いた領域に対して移動物体の検知を行なうので、自車両可動構造物に対する誤検知を防止できると共に、利用者が自車両を操作する上で最も注意を払うべき部位である自車両近傍部における検知対象物の見落としを防止できる。これにより、利用者は作業に必要な移動物体検知結果のみを取得できる。この結果、作業全体の運用効率を向上することができる。
【実施例2】
【0065】
以下、本発明の車体外部移動物体検知システムの第2の実施の形態を図面を用いて説明する。
図15は本発明の車体外部移動物体検知システムの第2の実施の形態の構成を示すブロック図、
図16は本発明の車体外部移動物体検知システムの第2の実施の形態における車両情報入力部の処理内容を示すフローチャート図、
図17は本発明の車体外部移動物体検知システムの第2の実施の形態における操舵角と映像の関係を示す概念図、
図18は本発明の車体外部移動物体検知システムの第2の実施の形態における操舵角と可動部領域の形状の関係を示す概念図である。
図15乃至
図18において、
図1乃至
図14に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0066】
本実施の形態における車両周囲移動物体検知システムは、その構成及び運用方法は第1の実施の形態と大略同様である。第2の実施の形態においては、自車両1の可動部が時間推移に伴って移動し、映像内の可動部領域が増減する場合であっても、これらの可動部領域を除外した領域で移動物体の検知ができる点が第1の実施の形態と異なる。
【0067】
具体的には、
図15に示すように車体外部移動物体検知装置100Aにおいて、車両情報入力部1001をさらに備えている。
車両情報入力部1001は、自車両1の可動部に関係する情報を入力するものであって、例えば、自車両1の操舵角度やベッセル3の作動量などの情報を、CAN(Control Area Network)等を用いて入力する。車両情報入力部1001は、入力した車両情報を基に可動部の形状を算出し、この形状が映像内に含まれる場合には、その車両情報等を可動部領域設定部103へ出力する。
【0068】
車両情報として使用する操舵角と映像の関係を
図17を用いて説明する。
図17の左側は、元の操舵角が0度のときの右方向映像404を示す。
図17の右側は、利用者がステアリングを右方向へ30度回転させて、操舵角を30度としたときの右方向映像404を示す。ステアリングの回転に伴い、右前輪4A(R)は映像内で時計回りに回転し、見かけ上の形状を変化させている。
【0069】
ここで、左側の元の状態においては、操舵角0度を車両情報入力部1001から取得し、操舵後の右側の状態においては、操舵角30度を車両情報入力部1001から取得する。
【0070】
次に、本実施の形態における可動部領域取得ステップの処理内容を、
図16を用いて説明する。本実施の形態における処理の流れは、
図5に類似するが、(ステップS203)の前に処理を追加する点が異なるため、この部分に関して説明する。
【0071】
車体外部移動物体検知装置100Aは、
図5の(ステップS202)にて、可動部領域が設定されていると判断した場合、車両情報を取得する(ステップS1101)。具体的には、車両情報入力部1001より車両に関する情報を入力する。例えば、上述したような操舵角の情報を入力する。
【0072】
車体外部移動物体検知装置100Aは、車両形状を算出する(ステップS1102)。具体的には、入力した車両情報を基に車両1の可動部の形状を算出する。上述したように、操舵角の大きさに応じて、右前輪4A(R)の配置が変化している。
図17に示すように、操舵角が30度の場合は、操舵角か0度の場合に比べて右前輪4A(R)の前方部分が車体2の外側に相当する右側にはみ出す形状となる。また、右前輪4A(R)の後方部分は、車体2の内側に相当する左側に入り込む形状になる。
【0073】
図16に戻り、車体外部移動物体検知装置100は、映像領域外か否かを判断する(ステップS1103)。具体的には、入力した車両情報に基づいて算出した自車両1の可動部の形状が、対象としている映像の中に含まれるか否かを判断する。自車両1の可動部の形状が映像領域外の場合は、(ステップS204)へ進み、それ以外の場合は、(ステップS203)へ進む。
【0074】
車体外部移動物体検知装置100Aは、可動部領域設定部103において可動部領域を取得する(ステップS203)。具体的には、入力した車両情報に基づいて算出した自車両1の形状の映像内における形状と配置を取得する。
【0075】
この可動部領域の取得の一例を
図18を用いて説明する。
図18の左側は、操舵角が0度のときの右方向映像404であって、破線部は映像内の可動領域1301を示す。
図18の右側は、操舵角が30度のときの右方向映像404であって、破線部は映像内の可動領域1302を示す。
【0076】
車体外部移動物体検知装置100Aは、これらの可動部領域を用いて、第1の実施の形態と同様の手法により移動物体の検知を行なう。このことにより、自車両1の状態が変化した場合であっても、それに合わせた可動部領域が取得できるため、自車両1の可動部が検知対象領域に入ることを回避できる。この結果、不要な誤検知を抑制できる。さらに、本来検知対象領域に含めるべき領域が、可動部領域に含まれたままとなることを回避できるので、的確な移動物体検知が実施できる。特に、安全性の確保に重要となる自車両1の近傍で、必要な検知対象領域を可能な限り広く確保することができる。
【0077】
なお、本実施の形態においては、車両情報の入力経路としてCANを用いた場合を例に説明したが、これに限るものではない。また、入力する車両情報として操舵角を用いた場合を例に説明したが、これに限るものではない。例えば、自車両1の車輪の回転速度を車両情報として入力し、映像内での車輪の回転による誤検知を回避することが可能になる。同様に、ベッセル3の作動量を車両情報として入力し、映像内でのベッセル3の移動による誤検知を回避することが可能になる。
【0078】
上述した本発明の車体外部移動物体検知システムの第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
また、上述した本発明の車体外部移動物体検知システムの第2の実施の形態によれば、自車両1の状態が変化した場合であっても、それに合わせた可動部領域が設定されるので、必要な検知対象領域を可能な限り広く確保することができる。