(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動水栓10を備えたキッチンの概略図である。キッチン100にはシンク102が設けられ、シンク102の後側には、天面に対して段差を有するカウンタ104が設けられている。カウンタ104の左側には自動水栓10が設置され、カウンタ104の右側には浄水自動水栓106が設置されている。自動水栓10は水道管に接続され通常の水道水を供給するのに対し、浄水自動水栓106はシンク102の下方に設置される浄水装置に接続されており、浄化された水を供給する。
【0013】
以下、本明細書において「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「内」、「外」、「手前」、「奧」等の方向を表す用語が用いられる場合、それらは自動水栓10がキッチン等に取り付けられたときの姿勢における方向を意味する。
【0014】
図2は、
図1の自動水栓10の全体斜視図である。自動水栓10は、基端部24と、ハンドルレバー22と、基端部24の上端面から延出した、吐水部としての吐水管12と、を主に備える。
図3は、基端部24から取り外した状態の吐水管12の側面図である。
【0015】
吐水管12は、その中間部12aが湾曲して逆U字状に形成され、その先端12bが斜め下方に延び出した、いわゆるグースネック状に形成される。吐水管12は、金属材料を素材とする鋳物により形成される。詳細は後述するが、吐水管12の先端12bには、吐水口38を有する吐水口部材30と、吐水口38からの吐水を制御するための自動吐水用センサ40とが設けられている。
図3に示すように、吐水管12の基端部側には、基端部24と連結するための連結部材26が設けられている。
【0016】
図1に示したように、基端部24は、キッチンのカウンタ104の上面に配置される。基端部24の上端には、ハンドルレバー22が設けられている。
【0017】
基端部24の内部には、冷水および温水の供給源とそれぞれ接続された冷水管および温水管(図示せず)が延在している。冷水管および温水管と、吐水管12内に収納され吐水口38に給水するための給水ホースとの間には、電磁弁(図示せず)が設けられる。この電磁弁は、図示しない制御部による制御のもと弁を開閉して、冷水管および温水管から給水ホースへの水の流れを制御できるようになっている。
【0018】
基端部24の内部には、水と湯とを所定比率で混合して適温の温水とする混合弁(図示せず)が設けられている。ハンドルレバー22はこの混合弁を操作するレバーであり、左右回動操作によって水と湯との混合比率を調節し、すなわち混合水の温度を調節し、また上下回動操作によって温水の吐水流量を調節する。
【0019】
吐水管12の先端12bには、自動吐水用センサ40が設けられている。自動吐水用センサ40は、例えば、発光部と受光部を有する赤外線式測距センサである。自動吐水用センサ40は、発光部から吐水口部材30の吐水口38の下方に光を投光し、投光した光による使用者の手または食器等の被検知物からの反射光を受光部で受光し、所定の検知エリア内に被検知物があるか否かを検知する。自動吐水用センサ40は、被検知物の検知結果を示す信号を制御部に出力する。
【0020】
吐水管12の手前側、すなわちキッチンに立つ使用者と面する側には、手かざしセンサ14が設けられている。手かざしセンサ14は、発光部と受光部を有する赤外線式光量センサである。手かざしセンサ14は、センサ14の斜め上方に光を投光し、投光した光による使用者の手等の被検知物からの反射光を受光部で受光し、所定の検知エリア内に被検知物があるか否かを検知する。手かざしセンサ14は、被検知物の検知結果を示す信号を制御部に出力する。
【0021】
制御部は、マイコンを搭載した回路基板により構成される。制御部は、自動吐水用センサ40または手かざしセンサ14からの出力信号に基づき電磁弁を開閉し、吐水口部材30の吐水口38からの給水の有無を切り替える。なお、制御部は、コンピュータのCPU、メモリをはじめとする素子や回路を組み合わせて実現されていればよい。
【0022】
なお、自動吐水用センサ40では、検知エリア内で被検知物が検知されている間だけ、吐水口38から給水を行うように制御されるのに対し、手かざしセンサ14では、一旦検知エリア内で被検知物が検知されると、その後被検知物が検知されなくなっても吐水口38からの給水が継続される。検知エリア内でもう一度被検知物が検知されると、吐水口38からの給水が停止される。
【0023】
吐水管12の使用者から見て手前側、かつ手かざしセンサ14よりも下側(吐水管12の先端12b側)には、押しボタン式のオンオフスイッチ16が設けられている。オンオフスイッチ16がオフにされているときは、自動吐水用センサ40は作動せず、センサ40の下方に物体が存在しても吐水口38から給水されることはない。
【0024】
図3から分かるように、本実施形態では、吐水管12は一定の曲率となるように形成されている。さらに、吐水管12の中間部12aの頂点に近い部分から吐水管の先端12bにかけて、吐水管12の下側に向けて膨らんだ中空の張出部18が形成されている。この張出部18の下面は、吐水管12自体よりも曲率が小さいが、吐水管12の基端部24側から連続的な滑らかな曲線でつながるように形成されている。張出部18の先端18aは、吐水管12の先端12bよりも吐水管の軸方向の奧側(吐水管12の上流側、
図3では右斜め上側)に位置している。このような吐水管の製造方法としては、バルジ加工、亜鉛ダイキャスト、樹脂成形等がある。
【0025】
自動吐水用センサ40よりも、使用者から見て吐水管12の奥側には、引き出し自在に構成された吐水口部材30が取り付けられている。
図3から分かるように、吐水口部材30は、張出部18の先端、および吐水管12の先端12bよりも使用者から見て奧側に取り付けられる。吐水口部材30が取り付けられた状態で、吐水口部材30の湾曲の内周側は、吐水管12の基端部24および張出部18の内周側の面と連続的に滑らかな曲線でつながるように形成されている。
【0026】
図4は、吐水管12の先端12b付近の拡大斜視図であり、
図5は、吐水口部材30を引き出した状態を示す図である。
【0027】
吐水口部材30は、カバー部32と、切替操作部34と、吐水口38とを有している。
【0028】
図5に示すように、吐水口部材30には、可撓性のある金属製の給水ホース50が接続されている。給水ホース50の他端は、上述の電磁弁に接続されている。給水ホース50は、吐水管12および張出部18の内部を管軸方向に所定の長さだけ移動自在に収納されている。したがって、吐水口部材30を吐水管12から引き出すと、給水ホース50もそれにつれて引き出される。吐水口部材30を引き出す方向は、吐水管12の軸方向とほぼ同じ方向である。吐水口部材30を吐水管12に取り付けるとき、給水ホース50は張出部18および吐水管12の中を基端部24側に向けて移動する。給水ホース50内を流れる水は、吐水口38を通して吐出される。
【0029】
カバー部32は、給水ホース50と切替操作部34を接続するとともに、吐水口部材30を吐水管12から取り外すときに使用者が把持する部分を構成している。また、カバー部32は、吐水口部材30を吐水管12に対して容易に着脱可能とするアタッチメントとしての機能も有している。
【0030】
吐水管12の先端12bには、管の内側に向けて凹んだ端面42が形成されており、この端面42と面一になるように自動吐水用センサ40が配置されている。吐水管12の管壁12cにより、自動吐水用センサ40の周囲が奥まったかたちとなるので、センサ40に使用者の手が接触することによるセンサ発光面および受光面の汚染や、食器がぶつかることによる損傷を防止することができる。
【0031】
吐水管12の先端12bでは、管壁12cの一部が切り欠かれて、切り欠かれた部分には、吐水口部材30の収納時にガイドとして機能する凹み形状の保持部44が設けられている。吐水口部材30のカバー部32の上面(使用者から見て手前側の面)には、吐水口部材30の収納時に保持部44と対向する凸部31が形成されている。
【0032】
上述したように、張出部18と吐水管12の下面は滑らかに連続しており、管の内部に角や大きな曲率変化が存在しないようにされている。このため、吐水口部材30を引き出したり収納したりするときに、吐水口部材30に接続されている給水ホース50が吐水管12および張出部18内で引っかかることがないので、吐水口部材30の操作がしやすい。また、屈曲部がないため、吐水管12および張出部18の外面の清掃が容易になる。
【0033】
収納状態にある吐水口部材30の後端が接する張出部18の先端18aは、吐水管12の先端12bよりも吐水管の軸方向の奧側(吐水管12の上流側)に位置している。このため、吐水口部材30が収納された状態では、吐水口部材30の吐水口38は自動吐水用センサ40の比較的近傍に位置するようになる。このように、吐水口部材30を自動吐水用センサ40よりも管軸方向の吐水管の軸方向の奧側すなわちセンサ40の背後から引き出す構造とすることで、センサ40の発光部に対する吐水口部材の下方への突出量を小さくしてセンサの発光部と吐水口の距離を近づけることができる。よって、吐水口の下に手を出した際にセンサが反応しやすくなり、使用感が向上する。また、吐水口部材の下方への突出量を小さくすることで、吐水口下方の空間を広く確保することができる。
【0034】
吐水口部材30の切替操作部34は、給水ホース50から流れる水をシャワー吐水またはストレート吐水に切り替えるための部材である。切替操作部34は、カバー部32の外周の下面側と滑らかに連続する形状となっており、全体として円筒形をなしている。切替操作部34は、カバー部32に対して中心軸回りに所定の角度(例えば90度)だけ回転するように構成されている。切替操作部34の円筒面には、使用者が指を掛けるためのつまみ部36が形成されている。つまみ部36の位置を所定の角度回転させると、シャワー吐水とストレート吐水を切り替えることができる。
【0035】
図6は、吐水管12をその中心軸を含む平面で切断した側面方向の断面図である。
【0036】
本実施形態では、手かざしセンサ14とオンオフスイッチ16は、薄いシート状の保持部材70上に一体的に固定されている。手かざしセンサ14とオンオフスイッチ16は、ハーネスによって上述の制御部に接続されている。なお、本明細書において「ハーネス」とは、複数の電線が束にされたものを指す。ハーネスを用いる代わりに、1本の電線で手かざしセンサ14とオンオフスイッチ16とを制御部に接続してもよい。
【0037】
吐水管12および張出部18の内部には、センサホルダ64が挿入されている。センサホルダ64は、吐水管の内面に沿って吐水管の軸方向に延びる、樹脂製の一体成形部材である。センサホルダ64は、手かざしセンサ14と自動吐水用センサ40、およびこれらセンサから延びるコネクタとハーネスを、吐水管内で適所に保持するための部材である。
【0038】
図7〜9は、それぞれ異なる方向から見たセンサホルダ64の斜視図である。センサホルダ64は、その上面に手かざしセンサ14が載置されるセンサ載置面64eを有している。
【0039】
センサホルダ64は、吐水口38側の先端に、自動吐水用センサ40が検出面を下向きにして収納されるセンサ収納部64bを有している。また、センサホルダ64は、センサ収納部64bの後方、すなわち吐水管12の基端部に向かう方向に、自動吐水用センサ40と制御部から延びるハーネスとを接続するためのコネクタ43が収納されるコネクタ収納部64cを有している。
図9から分かるように、コネクタ収納部64cは、三方が囲まれたコの字状に延びる空間であるが、開口側にはコネクタの飛び出しを抑える爪部64fが設けられている。コネクタ収納部64cは、センサホルダ64が吐水管内に装着されたときに、張出部18の先端18aの近傍に位置する。このとき張出部18によって、コネクタを収納するために必要な空間が自然に作られるため、コネクタ収納部を無理なく設けることができる。
【0040】
センサホルダ64は、コネクタ収納部64cのさらに後方、すなわち吐水管12の基端部に向かう方向に、ハーネスを保持するためのハーネス収納部64gを有している。コネクタ収納部64cと同様に、ハーネス収納部64gも三方が囲まれたコの字状に延びる空間であり、開口側にはハーネスの飛び出しを抑える三つの爪部64g1〜64g3が設けられている。
【0041】
上記のように、センサ収納部64b、コネクタ収納部64c、ハーネス収納部64gが吐水管の軸方向に並べて設けられたセンサホルダ64を使用することで、自動吐水用センサ40、コネクタおよびハーネスを、吐水管内の比較的小さい空間に収まり良く収納することが可能になる。また、手かざしセンサ14が載置されるセンサ載置面64eとは分けて収納ができるため、複雑な構造にならずにそれぞれを比較的小さい空間に収まり良く収納することが可能になる。
【0042】
センサホルダ64は、吐水口部材30の収納時に吐水口部材30を保持するための円筒状の吐水口保持部64aと、吐水口部材30に連結される給水ホース50を収納するホース収納部64hと、をさらに備えている。吐水口保持部64aには、給水ホース50が挿通される穴64jが形成されている。センサホルダ64が吐水管12内に装着された状態では、
図5に示すように、吐水口保持部64aが張出部18の先端18aから突出する。
【0043】
図示しないが、吐水口部材30の張出部18に面する後端には、吐水口保持部64aと嵌合する凹部が形成されている。吐水口部材30を収納する場合、吐水口保持部64aの穴64jの中に給水ホース50が押し込まれることにより、吐水口部材30の後端が吐水口保持部64aに導かれる。吐水口部材30をそのまま押し込んでいくと、吐水口部材30の上面に形成された凸部31が吐水管12の保持部44により誘導され、吐水口部材30と吐水口保持部64aとが嵌合することにより、吐水口部材30が吐水管12に対して保持される。吐水口部材30を引き出す場合は、吐水口部材30を斜め下方に向けて引くと、凸部31が保持部44により誘導されて引き出される。
【0044】
このように、吐水口保持部64aをセンサホルダ64と一体化したことによって、吐水口部材周りがすっきりとしたコンパクトな外観となり、したがって清掃性も向上する。
【0045】
吐水口保持部64aに吐水口部材30が嵌合しているとき、センサホルダ64のセンサ収納部64bとコネクタ収納部64cは、吐水口部材30と並列に並ぶことになる。また、異なる方向から観察した
図8と
図9をともに参照して分かるように、ハーネス収納部64gとホース収納部64hとは、センサホルダ64の軸方向に延びる隔壁64iを挟んで並んで設けられている。
【0046】
図10は、
図6中のA−A線に沿った断面図である。但し、
図10では、センサ載置面64e上の空間にはハッチングを付して示し、内部構造を省略している。
図10から分かるように、ハーネス収納部64gとホース収納部64hとが並列するようにセンサホルダ64を構成することによって、センサ載置面64e上に配置される手かざしセンサ14とコネクタ、ハーネス収納部64g内のハーネス72およびホース収納部64h内の給水ホース50がお互いに干渉することなく、吐水管12内にコンパクトに収納することが可能になる。
【0047】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0048】
実施の形態では、自動吐水用センサが収納されるセンサ収納部がセンサホルダの先端に配置されていたが、これに限られず、センサ収納部がセンサホルダの先端以外に位置してもよい。センサ収納部が手かざしセンサを収納してもよい。
【0049】
実施の形態では、吐水口部材が自動吐水用センサよりも使用者から見て奧側(カウンタ側)に設けられているが、張出部を吐水管の手前側(シンク側)に形成して吐水口部材を自動吐水用センサよりも手前側に設けてもよい。また、吐水口部材が引き出し式でなく固定されている自動水栓でも、実施の形態に係るセンサホルダを使用することができる。
【0050】
本発明に係る自動水栓は、建物、船舶等に設置される設備に用いることができ、キッチンの他に、洗面台、手洗器、浴室等に用いられてもよい。また、自動水栓の基端部が固定される基体としてカウンタを例示したが、基体は、浴室等の設備の外内を区画する壁部材等であってもよい。
【0051】
また、吐水部の形状はグースネック状の吐水管に限定されず、直線状の吐水管などの他の形状に形成されていてもよい。センサホルダは、吐水部の形状に合わせて成形される。