【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の光透過拡散部材として、それぞれ異なる拡散角度を有する複数種類の光透過拡散部材から一の光透過拡散部材が選択されることにより、前記第1の面内における前記スクリーンによる各光線の拡散角度が前記目標角度に調整された、請求項1記載の立体画像表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[1]第1の実施の形態
以下、本発明の第1の実施の形態に係る立体画像表示装置について図面を参照しながら説明する。
【0025】
(1)立体画像表示装置の構成
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る立体画像表示装置の模式的断面図である。
図2は、
図1の立体画像表示装置100の模式的平面図である。
図3は、
図1および
図2の立体画像表示装置100のスクリーンの斜視図である。
図1に示すように、立体画像表示装置100は、円筒形状のスクリーン110、複数の光線発生器120、制御装置130、記憶装置140およびカバー部材150を含む。
【0026】
図1および
図2の立体画像表示装置100は、視聴会場200に設置される。本例において、視聴会場200は、例えば野球場である。視聴会場200は、グラウンド210および観客席220を含む。グラウンド210は略円形状を有する。立体画像表示装置100のスクリーン110は、グラウンド210の略中央に配置される。
【0027】
観客席220は環状を有し、グラウンド210を取り囲むように設けられる。観客席220の上面はグラウンド210の上面よりも十分に高い。観客席220には、複数の観客310が存在する。なお、
図1には、1人の観客310のみが図示されている。また、
図1および
図2においては、観客310の寸法が実際の寸法よりも大きく図示されている。
【0028】
観客席220の観客310の視点と略等しい高さを有する水平面(仮想面)上に環状の視域300が定義される。視域300の半径はr1であり、グラウンド210からの視域300まで高さはh1である。本例においては、半径r1は例えば60mであり、高さh1は例えば15mである。
【0029】
図3に示すように、スクリーン110は、軸Zを中心として回転対称な円筒形状を有する。スクリーン110の半径はr2であり、スクリーン110の高さはh2である。本例においては、半径r2は例えば13mであり、高さh2は例えば5mである。複数の観客310(
図2)は、スクリーン110の斜め上方の観客席220(
図1)からスクリーン110の上方および内周面を観察することができる。
【0030】
スクリーン110は、複数の光透過拡散部材が積層された構成を有する。本例においては、2つの光透過拡散部材が積層される。一方の光透過拡散部材を基本拡散部材111と呼び、他方の光透過拡散部材を調整用拡散部材112と呼ぶ。スクリーン110の構成の詳細については後述する。互いに直交する稜線方向Tおよび円周方向Rにおいて、スクリーン110の光透過拡散特性は互いに異なる。
【0031】
図1に示すように、複数の光線発生器120は、スクリーン110の軸Zを中心にスクリーン110を取り囲むように環状に配置される。スクリーン110と各光線発生器120との間の最短の距離はdである。本例においては、距離dは例えば10mである。また、複数の光線発生器120の外方および上方を覆うようにカバー部材150が配置される。これにより、複数の光線発生器120は、観客席220の観客310から視認されない。カバー部材150の高さはスクリーン110の高さと略等しい。
【0032】
各光線発生器120は、光線を出射するとともにその光線を水平面内および垂直面内で偏向させることができる。ここで、光線とは、拡散しない直線で表される光をいう。各光線発生器120は、光線で斜め下方からスクリーン110の外周面を走査するように設けられる。これにより、各光線発生器120は、スクリーン110の外周面に複数の光線からなる光線群を出射することができる。
【0033】
各光線発生器120は、例えば走査型プロジェクタである。光線発生器120は、空間光変調器および複数のレンズからなるレンズアレイ等の投影系を備えた一般的なプロジェクタであってもよい。ここで、投影系のアパーチャ(開口)が十分に小さい場合には、走査型プロジェクタと同様に光線群を形成することができる。空間光変調器は、例えばDMD(Digital Micromirror Device)、LCD(Liquid Crystal Display)またはLCOS(Liquid Crystal on Silicon)である。
【0034】
制御装置130は、例えばパーソナルコンピュータからなる。記憶装置140は、例えばハードディスクおよびメモリカード等からなる。記憶装置140には、立体画像1を提示するための立体形状データが記憶される。制御装置130は、記憶装置140に記憶される立体形状データに基づいて複数の光線発生器120を制御する。それにより、スクリーン110の上方の空間に立体画像1が提示される。観客席220に存在する多数の観客310は、立体画像1を視域300の任意の位置から観察することができる。
【0035】
本実施の形態においては、スクリーン110の上方の空間に立体画像1が提示されるが、本発明はこれに限定されない。スクリーン110の内部の空間に立体画像1が提示されてもよい。内部の空間に立体画像1を提示するように構成されたスクリーン110の半径r2は、上方の空間に立体画像1を提示するように構成されたスクリーン110の半径r2(本例では13m)よりも小さくすることができる。
【0036】
(2)スクリーンの構成および製造方法
図4(a)〜(d)は、スクリーン110の基本拡散部材111の構成および機能を説明するための図である。
図4(a)は、基本拡散部材111を構成する光透過拡散膜の正面図を示す。
図4(b),(c)は、それぞれ
図4(a)の光透過拡散膜111Aの側面図および上面図を示す。
図4(d)は、円筒形状の基本拡散部材111の斜視図を示す。
【0037】
以下、互いに直交する2つの方向をそれぞれX方向およびY方向と呼ぶ。
図4(a)に示すように、光透過拡散膜111Aが準備される。光透過拡散膜111Aは一方向に延びる矩形状を有する。光透過拡散膜111Aの長手方向および幅方向は、それぞれX方向およびY方向に一致する。X方向における光透過拡散膜111Aの一端部および他端部をそれぞれ左端部111Lおよび右端部111Rと呼ぶ。
【0038】
光透過拡散膜111Aは、異方性拡散部材であり、互いに直交するX方向およびY方向において異なる構成を有する。光透過拡散膜111Aは、レンチキュラシートであってもよいし、ホログラフィックスクリーンであってもよい。光透過拡散膜111Aは、透光性を有する平坦なシート状部材の表面上に、微小な光拡散材料を含む樹脂層が形成された構成を有してもよい。この場合、微小な光拡散材料は、例えば楕円形状または繊維形状を有する。
【0039】
Y方向に平行でかつ光透過拡散膜111Aに直交する面をY平面Fyと呼び、X方向に平行でかつ光透過拡散膜111Aに直交する面をX平面Fxと呼ぶ。
図4(b)にはY平面Fyが一点鎖線で図示され、
図4(c)にはX平面Fxが一点鎖線で図示される。光透過拡散膜111Aに入射した光線は、
図4(b)に示すように、Y平面Fy内でY方向において大きく拡散して透過し、
図4(c)に示すように、X平面Fx内でわずかに拡散しつつほぼ直進して透過する。
【0040】
このように、X平面Fx(第1の面の例)における拡散角度(第1の角度の例)は、Y平面Fy(第2の面の例)における拡散角度(第2の角度の例)よりも小さい。X方向における拡散角度は、Y方向における拡散角度の1/10以下であってもよい。本実施の形態においては、Y方向における拡散角度は例えば60度であり、X方向における拡散角度は例えば1度である。X方向における拡散角度は、これに限定されず、例えば1度より小さくてもよい。
【0041】
光透過拡散膜111Aの左端部111Lと右端部111Rとは、互いに接合される。これにより、
図4(d)に示すように、円筒形状を有する基本拡散部材111が作製される。この構成においては、基本拡散部材111は、入射した光線が稜線方向Tにおいては大きく拡散して透過しかつ円周方向Rにおいてはほとんど拡散せずに直進して透過するように形成される。
【0042】
本実施の形態においては、光透過拡散膜111Aは1つの大面積の異方性拡散部材により構成されるが、本発明はこれに限定されない。光透過拡散膜111Aは複数の小面積の異方性拡散部材により構成されてもよい。例えば、透明な円筒状部材の内周面または外周面に複数の光透過拡散膜111Aが取り付けられることにより基本拡散部材111が作製されてもよい。
【0043】
また、本実施の形態においては、基本拡散部材111は光透過拡散膜111Aを用いて作製されるが、本発明はこれに限定されない。基本拡散部材111は、透明な円筒状部材の内周面または外周面にエッチング加工、機械加工、レーザ加工または放電加工等が行なわれることにより作製されてもよい。この場合におけるスクリーン110の光透過拡散特性も、
図4(d)のスクリーン110の光透過拡散特性と同様である。
【0044】
図5(a)〜(d)は、スクリーン110の調整用拡散部材112の構成および機能を説明するための図である。
図5(a)は、調整用拡散部材112を構成する光透過拡散膜の正面図を示す。
図5(b),(c)は、
図5(a)の光透過拡散膜112Aの上面図を示す。
図5(d)は、円筒形状のスクリーン110の斜視図を示す。
【0045】
図5(a)に示すように、光透過拡散膜112Aが準備される。光透過拡散膜112Aは、
図4(a)の光透過拡散膜111Aと同様の形状および機能を有する。以下、光透過拡散膜112Aで定義される互いに直交する2方向をそれぞれX’方向およびY’方向と呼び、X’方向およびY’方向に平行な平面をZ平面と呼ぶ。
【0046】
光透過拡散膜112Aを透過した光線のY’方向における拡散角度は、
図4(b)の光透過拡散膜111Aを透過した光線のY方向における拡散角度と同様である。また、光透過拡散膜112Aを透過した光線のX’方向における拡散角度は、
図4(c)の光透過拡散膜111Aを透過した光線のX方向における拡散角度と同様である。すなわち、X’方向に平行な面(第3の面の例)における拡散角度(第
4の角度の例)は、Y’方向に平行な面(第4の面の例)における拡散角度(第
5の角度の例)よりも小さい。
【0047】
図5(a)に実線で示すように、光透過拡散膜112AのX’方向およびY’方向がそれぞれ
図4(a)のX方向およびY方向に一致する状態を未調整状態と呼ぶ。スクリーン110の製造工程においては、光透過拡散膜112Aの配置角度がZ平面内で調整される。ここで、配置角度は光透過拡散膜112AのX’方向がX方向に対してなす角度であり、光透過拡散膜112AのY’方向がY方向に対してなす角度である。
【0048】
光透過拡散膜112Aが未調整状態からZ平面内で時計周りに一定の角度だけ回転される。それにより、
図5(a)に点線で示すように、光透過拡散膜112Aの配置角度が第1の調整角度に調整される。光透過拡散膜112Aが未調整状態からZ平面内で時計周りに他の一定の角度だけ回転される。それにより、
図5(a)に一点鎖線で示すように、光透過拡散膜112Aの配置角度が第2の調整角度に調整される。第2の調整角度は第1の調整角度よりも大きい。
【0049】
図5(b)の光透過拡散膜112Aの配置角度は第1の調整角度である。
図5(a)の点線の状態に配置された光透過拡散膜112Aを透過した光線のX方向における拡散角度は、
図5(b)に示すように、未調整状態の光透過拡散膜112Aを透過した光線のX方向における拡散角度(
図4(c)参照)よりもわずかに大きい。なお、
図5(a)の点線の状態に配置された光透過拡散膜112Aを透過した光線のY方向における拡散角度は、未調整状態の光透過拡散膜112Aを透過した光線のY方向における拡散角度(
図4(b)参照)よりもわずかに大きい。
【0050】
図5(c)の光透過拡散膜112Aの配置角度は第2の調整角度である。
図5(a)の一点鎖線の状態に配置された光透過拡散膜112Aを透過した光線のX方向における拡散角度は、
図5(c)に示すように、
図5(a)の点線の状態に配置された光透過拡散膜112Aを透過した光線のX方向における拡散角度(
図5(b)参照)よりもわずかに大きい。なお、
図5(a)の一点鎖線の状態に配置された光透過拡散膜112Aを透過した光線のY方向における拡散角度は、
図5(a)の点線の状態に配置された光透過拡散膜112Aを透過した光線のY方向における拡散角度よりもわずかに大きい。
【0051】
このように、光透過拡散膜112Aの配置角度が変化すると、光透過拡散膜112Aを透過した光線のX方向における拡散角度が変化する。そこで、スクリーン110の製造作業者は、
図2の光線発生器120の位置および数ならびに視域300の位置等の多数のパラメータを考慮して、試行錯誤を重ねながら光透過拡散膜112Aの配置角度を適切に調整する。これにより、光透過拡散膜112Aを透過した光線のX方向における拡散角度が後述する目標角度に一致するような配置角度を決定することができる。
【0052】
光透過拡散膜112Aの配置角度が決定された後、
図5(d)に示すように、決定された配置角度が維持された状態で光透過拡散膜112Aが基本拡散部材111の内周面に積層される。調整用拡散部材112の上端面は、基本拡散部材111の上端面と面一になるように整形されることが好ましい。これにより、基本拡散部材111の内周面に調整用拡散部材112が形成され、スクリーン110が完成する。この構成においては、スクリーン110は、入射した光線が稜線方向Tにおいては大きく拡散して透過しかつ円周方向Rにおいては適切な角度で微小に拡散して透過する。
【0053】
本実施の形態においては、光透過拡散膜112Aは基本拡散部材111の内周面に積層されるが、本発明はこれに限定されない。光透過拡散膜112Aは基本拡散部材111の外周面に積層されてもよい。これにより、基本拡散部材111の外周面に調整用拡散部材112が積層される。
【0054】
また、本実施の形態においては、光透過拡散膜112Aは1つの大面積の異方性拡散部材により構成されるが、本発明はこれに限定されない。光透過拡散膜112Aは複数の小面積の異方性拡散部材により構成されてもよい。さらに、光透過拡散膜112Aは、光透過拡散膜111Aと同様の形状および機能を有するが、本発明はこれに限定されない。光透過拡散膜112Aは、光透過拡散膜111Aとは異なる形状または機能を有してもよい。
【0055】
(3)光線発生器の動作
図6は、光線発生器120の動作を説明するための模式的平面図である。
図6には1つの光線発生器120のみが示される。上記のように、光線発生器120は、レーザ光からなる光線を出射するとともにその光線を水平面内および垂直面内で偏向させることができる。
【0056】
光線発生器120が光線を水平面内で偏向させることにより、スクリーン110の外周面を水平方向に走査することができる。また、光線発生器120が光線を垂直面内で偏向させることにより、スクリーン110の外周面を垂直方向に走査することができる。それにより、光線発生器120は、光線でスクリーン110の対向する面を走査することができる。また、光線発生器120は、光線の方向ごとに光線の色を設定することができる。それにより、光線発生器120は、擬似的に複数の光線からなる光線群を出射する。
【0057】
図6において、光線発生器120は、複数の光線L1〜L11をスクリーン110に照射する。光線L1〜L11は、それぞれ任意の色に設定される。それにより、スクリーン110の複数の位置P1〜P11をそれぞれ設定された色の光線L1〜L11が透過する。
【0058】
スクリーン110は、円周方向において光線L1〜L11を適切な角度で微小に拡散させて透過させるので、観客は、ある位置で略一本の光線のみを視認することができる。また、スクリーン110は、光線L1〜L11を稜線方向(垂直方向)において拡散させて透過させるので、観客は、略一本の光線を上下方向の任意の位置から視認することができる。
【0059】
(4)立体画像提示方法
図7は、立体画像提示方法を説明するための模式的平面図である。
図7においては、3つの光線発生器120が示される。
図7の3つの光線発生器120をそれぞれ光線発生器120A,120B,120Cと呼ぶ。
【0060】
例えば、スクリーン110の上方の位置PRに赤色の画素を提示する場合には、光線発生器120Aから位置PRを通る方向に赤色の光線LA0を出射し、光線発生器120Bから位置PRを通る方向に赤色の光線LB0を出射し、光線発生器120Cから位置PRを通る方向に赤色の光線LC0を出射する。それにより、赤色の光線LA0〜LC0の交点に点光源となる赤色の画素が提示される。この場合、観客の眼が位置IA0にある場合、位置IB0にある場合および位置IC0にある場合に、位置PRに赤色の画素が見える。
【0061】
同様にして、スクリーン110の上方の位置PGに緑色の画素を提示する場合には、光線発生器120Aから位置PGを通る方向に緑色の光線LA1を出射し、光線発生器120Bから位置PGを通る方向に緑色の光線LB1を出射し、光線発生器120Cから位置PGを通る方向に緑色の光線LC1を出射する。それにより、緑色の光線LA1,LB1,LC1の交点に点光源となる緑色の画素が提示される。この場合、観客の眼が位置IA1にある場合、位置IB1にある場合および位置IC1にある場合に、位置PGに緑色の画素が見える。
【0062】
このように、複数の光線発生器120の各々から立体画像1の各位置を通る方向に提示すべき色の光線が出射される。複数の光線発生器120が環状に密に並べられており、それらの複数の光線発生器120から照射される光線群によってスクリーン110の内部の空間が十分に密に交点群で満たされている。
【0063】
この構成によれば、視域300上のいずれの方向からスクリーン110の内部を観察しても位置PR,PGを通過する適切な光線が目に入射することになり、人の目はそこに点光源があるように認識する。実物体の表面にて反射または拡散した照明光を人は物体として認識するので、物体の表面は点光源の集合とみなすことができる。すなわち、物体の表面としたいある位置PR,PGの色を複数の光線発生器120より飛来する光線によって適切に再現することにより、スクリーン110の内部および上方の空間に立体画像1を提示することができる。
【0064】
本実施の形態においては、スクリーン110は十分に大きく形成される。そのため、多数の観客は、視域300上の異なる位置で同一の立体画像1をそれぞれ異なる方向から視認することができる。
【0065】
図8は、立体画像提示方法を説明するための模式的断面図である。
図8においては、1つの光線発生器120が示される。
図8に示すように、光線発生器120から出射された光線は、スクリーン110により拡散角度αで垂直方向において拡散される。それにより、複数の観客は、拡散角度αの範囲内において垂直方向の異なる位置で光線発生器120から出射される同じ色の光線を見ることができる。
【0066】
例えば、ある観客311が基準の位置Eから立体画像1の部分を見ているときに、別の観客312が基準の位置Eの上方の位置E’から立体画像1の同じ部分を見ることができる。このように、光線発生器120から出射された光線がスクリーン110で垂直方向において拡散されるため、複数の観客
が上下方向に異なる位置から立体画像1の同一部分を観察することができる。
【0067】
また、光線発生器120から出射された光線は、スクリーン110により拡散角度が目標角度になるように円周方向において微小に拡散される。ここで、目標角度は、視域300に対して、円周方向において立体
画像1に欠落部分が発生しない各光線の拡散角度である。それにより、観客310は、X方向において欠落部分が発生しない立体画像1を視域300から観察することができる。それにより、観客は、円周方向において欠落部分がない立体画像1を観察することができる。
【0068】
図1の複数の光線発生器120により出射される光線群の各光線の色は、記憶装置140に記憶される立体形状データに基づいて制御装置130により算出される。具体的には、制御装置130は、立体形状データとして予め定義される三次元の立体画像の面と各光線との交点を求め、光線に与えるべき適切な色を算出する。
【0069】
制御装置130は、算出した光線群の各光線の色に基づいて複数の光線発生器120を制御する。それにより、スクリーン110の上方に立体画像1が提示されるように、各光線発生器120から算出された色をそれぞれ有する光線群が出射される。このようにして、本実施の形態に係る立体画像表示装置100によれば、立体画像1の指向性表示が可能となる。
【0070】
(5)全周囲から観察可能な立体画像の生成原理
図9は、本実施の形態に係る立体画像表示装置100における全周囲から観察可能な立体画像の生成原理を説明するための模式的平面図である。
図9には、4つの光線発生器120a,120b,120c,120dが示される。
【0071】
図9において、観客311,312がスクリーン110の点P31を見た場合には、観客311の眼に光線発生器120aから出射された光線Laが入射し、観客312の眼に光線発生器120bから出射された光線Lbが入射する。また、観客311,312がスクリーン110の点P32を見た場合には、観客311の眼に光線発生器120cから出射された光線Lcが入射し、観客312の眼に光線発生器120dから出射された光線Ldが入射する。
【0072】
ここで、光線Laの色と光線Ldの色とは同じであり、光線Lbの色は光線Laの色と異なり、光線Lcの色は光線Ldの色とは異なるとする。この場合、スクリーン110上の点P31の色は見る方向により異なる。また、スクリーン110上の点P32の色も見る方向により異なる。
【0073】
光線Laにより立体画像1の点Paが作られ、光線Lbにより立体画像1の点Pbが作られ、光線Lcにより立体画像1の点Pcが作られ、光線Ldにより立体画像1の点Pdが作られる。複数の光線発生器120はスクリーン110を取り囲むように配置されるので、いずれかの光線発生器120の光線により立体画像1の全周囲の点が作られる。
【0074】
この構成によれば、観客が視域300上の全周囲のいずれの位置からスクリーン110の内部を観察しても、立体画像1が提示されるべき位置を通過する光線が観客の眼に入射することになる。この場合、観客の眼は、その位置に点光源があるように認識する。実物の表面にて反射または拡散した照明光を観客は物体として認識するので、物体の表面は点光源の集合とみなすことができる。すなわち、物体の表面としたいある位置の色を複数の光線発生器120より出射
される光線によって適切に再現することにより、全周囲から観察可能な立体画像1をスクリーン110の内部および上方の空間に提示することができる。
【0075】
なお、
図9の例では、立体画像1の点Paと点Pdとが同じ位置にある。すなわち、光線Laと光線Ldとの交点に立体画像1の点Pa,Pdが作られる。この場合でも、観客311,312はそれぞれ異なる方向から立体画像1の同一部分を観察することができる。
【0076】
(6)第1の変形例
本実施の形態におけるスクリーン110は円筒形状を有するが、本発明はこれに限定されない。スクリーン110は円錐形状、円錐台形状、多角柱形状、多角錐台形状または多角錐形状等の他の形状を有してもよい。なお、本実施の形態における円筒形状のスクリーン110は大型であるため、多角柱形状に近似することができる。
【0077】
また、スクリーン110は、複数の分割された部材を組み合わせることにより構成されてもよい。例えば、複数の円弧柱形状の部材を組み合わせることにより円筒形状または曲面形状のスクリーン110が構成されてもよい。あるいは、平面形状の部材を組み合わせることにより多角形状または平面形状のスクリーン110が構成されてもよい。
【0078】
図10は、第1の変形例におけるスクリーン110の構成を示す模式図である。
図10に示すように、第1の変形例におけるスクリーン110は、軸Zを中心として回転対称な円錐台形状を有する。スクリーン110の大径の底部および小径の底部は開口している。
【0079】
第1の変形例におけるスクリーン110は、
図3のスクリーン110と同様に、基本拡散部材111および調整用拡散部材112が積層された構成を有する。光透過拡散膜112Aの配置角度は、光透過拡散膜112Aを透過した光線の円周方向R(X方向)における拡散角度が目標角度に一致するように決定されている。これにより、スクリーン110は、入射した光線が稜線方向Tにおいては大きく拡散して透過しかつ円周方向Rにおいては適切な角度で微小に拡散して透過する。
【0080】
図11(a)〜(c)は、第1の変形例におけるスクリーン110の第1の製造方法を説明するための模式図である。
図11(a)に示すように、光透過拡散膜111Bが準備される。光透過拡散膜111Bは、例えばホログラフィックスクリーンまたはフレネルレンズであり、入射した光線を放射方向に拡散させる機能を有する。フレネルレンズは、円周方向に溝を有するシート状レンズである。
【0081】
図11(b)に示すように、光透過拡散膜111Bが扇形状に切り取られる。次に、
図11(c)に示すように、扇形状の光透過拡散膜111Bの端部111aと端部111bとが接合されることにより、円錐台形状の基本拡散部材111が作製される。
図11(c)の基本拡散部材111に調整用拡散部材112が積層されることにより、第1の変形例におけるスクリーン110が製造される。
【0082】
図12(a)〜(c)は、第1の変形例におけるスクリーン110の第2の製造方法を説明するための模式図である。
図12(a)に示すように、光透過拡散膜111Cが準備される。光透過拡散膜111Cは、
図4(a)の光透過拡散膜111Aと同様の形状および光透過拡散特性を有する。
【0083】
図12(b)に示すように、光透過拡散膜111Cが複数に切り取られる。各光透過拡散膜111Cは三角形状を有する。次に、
図12(c)に示すように、複数の三角形状の光透過拡散膜111C
が透明な円錐台形状部材の外周面または内周面に貼り付けられることにより、円錐台形状の基本拡散部材111が作製される。
図12(c)の基本拡散部材111に調整用拡散部材112が積層されることにより、第1の変形例におけるスクリーン110が製造される。
【0084】
(7)第2の変形例
本実施の形態においては、光線発生器120がスクリーン110を取り囲むように配置されるが、本発明はこれに限定されない。光線発生器120は、スクリーン110の内方に配置されてもよい。
図13は、第2の変形例に係る立体画像表示装置100の模式的断面図である。
図13の立体画像表示装置100について、
図1の立体画像表示装置100と異なる点を説明する。
【0085】
図13に示すように、第2の変形例に係る立体画像表示装置100は、
図1のカバー部材150に代えて、円筒形状の反射部材160を含む。反射部材160は、例えばミラーである。反射部材160の内周面にスクリーン110が積層される。
【0086】
スクリーン110の軸Zを中心にスクリーン110の内方で環状に複数の光線発生器120が配置される。スクリーン110と各光線発生器120との間の最短の距離はdである。なお、本例においては、距離dはスクリーン110の半径r2よりも小さいが、距離dはスクリーン110の半径r2よりも大きくてもよい。
【0087】
各光線発生器120は、スクリーン110の内周面に複数の光線からなる光線群を出射する。スクリーン110を透過した光線群は、反射部材160の内周面により反射され、再度スクリーン110を透過して視域300まで到達する。
【0088】
この構成によれば、光線発生器120をスクリーン110の外方に配置する必要がない。また、光線発生器120は視域300から視認されないので、立体画像表示装置100にカバー部材150を設ける必要がない。これらにより、立体画像表示装置100を小型化することができる。
【0089】
(8)効果
本実施の形態に係る立体画像表示装置100においては、スクリーン110は、基本拡散部材111および調整用拡散部材112の積層構造を有する。基本拡散部材111は、光線発生器120からの各光線をX方向に平行な面内で第1の角度拡散させかつY方向に平行な面内で第1の角度よりも大きい第2の角度拡散させて透過させる。調整用拡散部材112は、光線発生器120からの各光線をX’方向に平行な面内で第
4の角度拡散させかつY’方向に平行な面内で第
4の角度よりも大きい第
5の角度拡散させて透過させる。
【0090】
X方向に対してX’方向がなす角度を調整するように基本拡散部材111に対する調整用拡散部材112の相対的な傾きが変更される。その後、基本拡散部材111および調整用拡散部材112が積層されることにより、簡単な構成で、第1の面内におけるスクリーン110による各光線の拡散角度が目標角度に調整される。ここで、目標角度は、視域300に対して、X方向において
立体画像1に欠落部分が発生しない各光線の拡散角度である。それにより、観客310は、X方向において欠落部分が発生しない立体画像1を視域300から観察することができる。
【0091】
この構成においては、視域300ならびに光線発生器120の位置および数等を考慮して、試行錯誤を重ねながらスクリーン110による各光線の拡散角度を調整する際に、基本拡散部材111および調整用拡散部材112の積層態様を変更すればよく、スクリーン110の製造および試験を繰り返す必要がない。そのため、スクリーン110を大型化する場合でも、スクリーン110のコストおよび製造時間が増加することが抑制される。その結果、広い空間で多数の観客310に立体画像1を提示することが可能になる。
【0092】
また、本実施の形態においては、X方向は水平方向であり、スクリーン110は、垂直方向に延びる軸Zの周囲を取り囲む形状を有する。視域300は、スクリーン110を取り囲むように水平面上に定められる。光線発生器120は、スクリーン110の外側から光線群をスクリーン110の外周面に照射するようにスクリーン110の周囲に配置される。そのため、観客310は、スクリーン110を取り囲むように水平面上に定められた視域300から、スクリーン110の上方または内部の空間に提示される立体画像1を裸眼で観察することができる。
【0093】
[2]第2の実施の形態
(1)スクリーンの構成および製造方法
第1の実施の形態においては光透過拡散膜112Aの配置角度がZ平面内で調整されることによりスクリーン110の円周方向Rにおける光線の拡散角度が調整されたが、本発明はこれに限定されない。以下、第2の実施の形態に係る立体画像表示装置100について、第1の実施の形態に係る立体画像表示装置100と異なる点を説明する。第2の実施の形態においては、調整用拡散部材112を形成するために、光透過拡散特性が異なる複数種類の光透過拡散膜が準備される。
【0094】
図14(a)〜(c)は、一の種類の光透過拡散特性を有する光透過拡散膜を示す図である。
図14(a)の光透過拡散膜112Bは等方性拡散部材であり、互いに直交するX方向およびY方向において等しい構成を有するように形成されている。
【0095】
図14(a)の光透過拡散膜112Bに入射した光線は、
図14(b)に示すように、Y平面Fy内でY方向において拡散して透過し、
図14(c)に示すように、X平面Fx内において拡散して透過する。光透過拡散膜112Bを透過した光線のY方向における拡散角度とX方向における拡散角度とは互いに等しい。
【0096】
図15(a)〜(c)は、他の種類の光透過拡散特性を有する光透過拡散膜を示す図である。
図14(a)の光透過拡散膜112Bと同様に、
図15(a)の光透過拡散膜112Bは等方性拡散部材であり、互いに直交するX方向およびY方向において等しい構成を有するように形成されている。
【0097】
図15(a)の光透過拡散膜112Bに入射した光線は、
図15(b)に示すように、Y平面Fy内でY方向において拡散して透過し、
図15(c)に示すように、X平面Fx内において拡散して透過する。
図15(a)の光透過拡散膜112Bを透過した光線のY方向における拡散角度とX方向における拡散角度とは互いに等しい。また、
図15(a)の光透過拡散膜112Bを透過した光線のY方向およびX方向における拡散角度は、
図14(a)の光透過拡散膜112Bを透過した光線のY方向およびX方向における拡散角度よりも大きい。
【0098】
このように、光線のX方向における拡散角度は複数種類の光透過拡散膜112Bごとに異なる。そこで、スクリーン110の製造作業者は、
図2の光線発生器120の位置および数ならびに視域300の位置等の多数のパラメータを考慮して、試行錯誤を重ねながら
光線のX方向における拡散角度が目標角度に一致する光透過拡散膜112Bを決定することができる。
【0099】
決定された光透過拡散膜112Bが
図4(d)の基本拡散部材111の内周面にまたは外周面に積層される。これにより、基本拡散部材111の内周面または外周面に調整用拡散部材112が形成され、スクリーン110が完成する。この構成においては、スクリーン110は、入射した光線が稜線方向Tにおいては大きく拡散して透過しかつ円周方向Rにおいては適切な角度で微小に拡散して透過する。
【0100】
本実施の形態においては、複数種類の光透過拡散膜112Bが等方性拡散部材により構成されるが、本発明はこれに限定されない。X方向における光透過拡散特性が異なれば、複数種類の光透過拡散膜112Bの一部または全部が異方性拡散部材により構成されてもよい。
【0101】
(2)効果
本実施の形態に係る立体画像表示装置100においては、第1の面内におけるスクリーン110による各光線の拡散角度が目標角度と等しくなるように複数種類の光透過拡散膜112Bが選択される。その後、基本拡散部材111および調整用拡散部材112が積層されることにより、第1の面内におけるスクリーン110による各光線の拡散角度が目標角度に調整される。これにより、簡単な構成で、第1の面内におけるスクリーン110による各光線の拡散角度を目標角度に調整することができる。その結果、観客310は、X方向において欠落部分が発生しない立体画像1を視域300から観察することができる。
【0102】
[3]他の実施の形態
(1)上記実施の形態においては、スクリーン110は回転対称な形状を有するが、本発明はこれに限定されない。スクリーン110は大型の平面形状または曲面形状等の他の形状を有してもよい。この場合、スクリーン110の後方に複数の光線発生器120が配置され、スクリーン110の前方に観客席220が設けられる。観客席220上にスクリーン110と略平行な視域300が定義される。また、スクリーン110と観客席220との間に図示しないフレネルレンズ等の集光部材が配置されることが好ましい。
【0103】
この構成によれば、スクリーン110の前方または後方の空間に立体画像1が提示される。スクリーン110の前方の観客席220に存在する多数の観客310は、平面形状または曲面形状のスクリーン110により提示された立体画像1を視域300の任意の位置から観察することができる。
【0104】
本実施の形態においては、複数の光線発生器120がスクリーン110の後方に配置されるが、本発明はこれに限定されない。第1の実施の形態の第2の変形例と同様に、スクリーン110の後方に反射部材が配置される場合には、複数の光線発生器120は、スクリーン110の前方からスクリーン110に光線を出射するように配置されてもよい。
【0105】
(2)上記の実施の形態においては、スクリーン110は2つの光透過拡散部材が積層された構成を有するが、本発明はこれに限定されない。スクリーン110は3つ以上の光透過拡散部材が積層された構成を有してもよい。例えば、1つの基本拡散部材111上に2つ以上の調整用拡散部材112が積層されてもよい。
【0106】
ここで、2つ以上の調整用拡散部材112の光透過拡散特性は、互いに異なる波長依存性を有してもよい。この場合、スクリーン110を透過する光のうち、赤色波長領域、緑色波長領域または青色波長領域のように特定の波長領域の光線の拡散角度のみを個別に調整することができる。それにより、光の波長特性により立体画像1の特定の色がにじむプリズム効果を除去することができる。
【0107】
(3)上記の実施の形態においては、スクリーン110の上部は開口されているが、本発明はこれに限定されない。スクリーン110の上部近傍にガラス板等の透明部材が配置されることにより閉塞されていてもよい。あるいは、スクリーン110の内部に略水平な透明部材が配置されてもよい。
【0108】
この場合、透明部材上に実物を配置することができる。これにより、スクリーン110の上方または内部に実物と立体画像1とを並べて提示することができる。例えば、ダンサー等の実物の実演家と立体画像1の実演家とをスクリーン110の上部で
共演させることができる。また、透明部材が内部に配置されたスクリーン110の半径r2は、透明部材が上部に配置されたスクリーン110の半径r2よりも小さくすることができる。
【0109】
(4)上記の実施の形態においては、スクリーン110および光線発生器120はグラウンド210上に配置されるが、本発明はこれに限定されない。スクリーン110および光線発生器120は、グラウンド210に埋設されるように配置されてもよい。この場合、グラウンド210と略同一の高さに立体画像1を提示することができる。そのため、グラウンド210上の実物と立体画像1とを並べて提示することができる。
【0110】
(5)上記実施の形態においては、各光線発生器120は、斜め下方からスクリーン110に光線を出射するように配置されるが、本発明はこれに限定されない。各光線発生器120は、水平にスクリーン110に光線を出射するように配置されてもよい。
【0111】
(6)上記実施の形態においては、
図2に示すように、立体画像表示装置100が複数の光線発生器120を含むことが好ましいが、本発明はこれに限定されない。立体画像表示装置100は、移動または回転可能に設けられた1つの光線発生器120を含んでもよい。この場合、光線発生器120は、位置に応じて任意の色に設定された光線を時分割でスクリーン110の外周面に出射する。
【0112】
(7)上記実施の形態においては、第1の実施の形態の第2の変形例を除いて、立体画像表示装置100は複数の光線発生器120の外方および上方を覆うカバー部材150を含むが、本発明はこれに限定されない。複数の光線発生器120が観客310から視認されないように配置される場合、または複数の光線発生器120が観客310から視認されてもよい場合には、立体画像表示装置100はカバー部材150を含まなくてもよい。
【0113】
[4]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0114】
上記実施の形態においては、視域300が視域の例であり、観客310〜312が観察者の例であり、立体画像1が立体画像の例であり、立体画像表示装置100が立体画像表示装置の例である。基本拡散部材111および調整用拡散部材112がそれぞれ第1および第2の光透過拡散部材の例であり、スクリーン110がスクリーンの例であり、光線発生器120が光線発生器の例であり、制御装置130が制御部の例である。
【0115】
円周方向RまたはX方向が第1の方向の例であり、稜線方向TまたはY方向が第2の方向の例であり、X’方向が第3の方向の例であり、Y’方向が第4の方向の例である。X平面Fxが第1の面の例であり、Y平面Fyが第2の面の例であり、X’方向に平行な面が第3の面の例であり、Y’方向に平行な面が第4の面の例である。
【0116】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。